運送業の経営で見る3つの管理指標|車両別採算・燃費・稼働率の出し方

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運送業の経営は、会社全体の損益だけでなく「車両別・荷主別の採算」「燃費」「稼働率(実車率・積載率)」の3つの指標を毎月見ると、どの車両・荷主が利益を生み、どこが赤字かが見えてきます。運賃交渉や配車の見直し、車両の入替えも、この数字を根拠に判断できます。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

運送業の利益管理は、車両別・荷主別の採算、燃費、稼働率の3つの指標に集約できます。1台ごと・1時間あたりの粗利で判断し、燃料費や外注費の変化を運賃に転嫁するルールを整えることが、利益を確保する土台です。

  • 車両ごとに売上と燃料・人件費・修繕・保険・償却・高速代をひも付け、利益車と赤字車を分ける
  • 荷主は売上の大きさではなく、待機や附帯作業を含めた「時間あたりの粗利」で比べる
  • 燃費と実車率・積載率は毎月定点観測し、燃料サーチャージなど転嫁のルールを決めておく
  • 免税事業者への傭車費・委託費は、2026年10月1日から2028年9月30日まで仕入税額控除が70%になる
  • 時間外労働の上限(年960時間)のもとでは、1台あたり・時間あたりの粗利が判断の軸になる
目次

運送業の経営で毎月見るべき指標は?

会社全体の損益だけを見ていても、どの車両・どの荷主が利益を生み、どこが赤字かは見えにくいものです。ドライバー不足と労働時間の規制が定着したいま、限られた車両と人員で利益を出すには、次の3つの指標を毎月同じ形で確認する仕組みが欠かせません。

指標出し方わかること主な打ち手
車両別・荷主別の採算車両(荷主)ごとの売上から、燃料・人件費・修繕・保険・償却・高速代などを差し引く利益車と赤字車、優先すべき荷主と交渉すべき荷主運賃交渉、配車の見直し、撤退の判断
燃費車両ごとの走行距離を給油量で割るエコドライブの定着度、整備不良の兆候運転指導、点検・整備、車両の入替え
稼働率(実車率・積載率)実車率は実車距離を総走行距離で割る。積載率は積んだ量を最大積載量で割る帰り便の空車、荷待ちによるロス帰り便の確保、共同配送、配車の組み替え
運送業で毎月見る3つの管理指標

3つの指標はばらばらではなく、つながっています。燃費が悪い車両や実車率の低い車両は、そのまま車両別の採算に表れます。まず採算表をつくり、その原因を燃費と稼働率で掘り下げる順番が効率的です。

車両別の採算表はどう作る?

車両ごとに売上とコストをひも付けると、例えば月の粗利が10万円に満たない車両や、実質赤字の荷主が見えてくることがあります。会社全体では黒字なのに資金が残らない場合、原因の一つは車両ごとの採算を見ていないことです。

項目(月額)A車(往復で荷物あり)B車(帰り便が空車)
運送売上120万円90万円
燃料費25万円24万円
ドライバー人件費45万円45万円
修繕・保険・税10万円10万円
リース・償却15万円15万円
高速代10万円12万円
営業利益+15万円−16万円
具体例:トラック1台ごとの月次採算(説明のための仮の数字)

同じ1台でも、帰り便の積載を確保できるかで月30万円超の差がつくことがあります。B車は運賃交渉・配車見直し・共同配送で帰りの空車を埋めることを優先課題とし、その判断はこの採算表があって初めて根拠を持てます。

  • ドライバー人件費は、給与に会社負担の社会保険料・雇用保険料を含めて計算する
  • 車検やタイヤ交換などの修繕・整備費は、年間の見込みを月割にして載せる(実施月だけ赤字に見えるのを防ぐ)
  • 高速道路料金は、荷主負担か自社負担かを案件ごとに区分する
  • 事務所家賃や配車担当の人件費などの共通費は、最初は配賦せず、車両ごとの貢献利益を先に見る

計算例:赤字のB車は手放すべきか

  • 例えば、B車の費用のうち走行に比例して増える燃料費と高速代だけを売上から差し引くと、900,000円−240,000円−120,000円=540,000円です。
  • この540,000円は、人件費・修繕・保険・償却などの固定費を回収する原資(限界利益)になっています。
  • B車を手放しても固定費がなくならない場合は、かえって会社全体の利益が減ることがあります。
  • 撤退より先に、帰り便の確保や運賃の見直しで売上を上げられないかを検討します。

原価の考え方や、固定費・変動費の分け方は原価率改善の実践解説も参考になります。

荷主別の採算はどう比べる?

車両別の採算表ができたら、同じデータを荷主別に組み替えます。例えば月間売上100万円の荷主でも、待機時間が長く実車率が低ければ、売上80万円で回転のよい荷主より手残りが少ないということが起こり得ます。

計算例:時間あたりの粗利で荷主を並べ替える

  • 例えば、荷主Xは月の売上が1,000,000円、直接かかる費用が700,000円、待機を含む拘束時間が200時間とします。
  • 荷主Xの粗利は、1,000,000円−700,000円=300,000円です。
  • 1時間あたりでは、300,000円÷200時間=1,500円です。
  • 荷主Yは売上800,000円、直接費550,000円、拘束時間100時間とすると、粗利は800,000円−550,000円=250,000円です。
  • 1時間あたりでは、250,000円÷100時間=2,500円となり、売上の小さい荷主Yのほうが効率よく利益を生んでいます。

運賃単価だけでなく、待機・附帯作業・走行距離まで含めた「時間あたりの粗利」で並べ替えると、優先すべき荷主と交渉すべき荷主が整理しやすくなります。荷待ちや積み込みの手伝いが恒常化しているのに運賃に反映されていない場合は、実態を記録し、契約更新時の交渉材料にします。運賃の水準を説明するときは、国が示す標準的な運賃も根拠の一つになります。

燃費と稼働率はどう改善する?

燃料は運送業の主要な変動費の一つです。車両別の燃費を毎月記録するだけで、エコドライブの定着度や整備不良の兆候が見えてくる場合があります。同じ車種・同じルートで燃費が急に落ちた車両は、運転の癖かタイヤ・エンジンの状態を確認するきっかけになります。

稼働率(実車率・積載率)は、帰り便の確保や共同配送で改善が図れる場合があります。2024年4月からドライバーの時間外労働の上限規制(年960時間)が適用され、1台あたりの稼働時間は実質的に縮小する傾向があります。だからこそ1台あたり・時間あたりの粗利を指標に据え、空車で走る時間と荷待ちの時間を減らすことが利益に直結します。

転嫁のルールを先に決めておく

仕入価格の変動を運賃改定や燃料サーチャージに反映する時期が遅れるほど、差額は自社の負担になります。基準となる燃料価格と見直しの周期をあらかじめ荷主と取り決めておくと、交渉が担当者任せにならず、毎回の説明も簡単になります。

経理面では、軽油の請求書に軽油引取税が区分して書かれている場合、その部分は消費税の対象外(不課税)として仕訳を分けます。燃料費の消費税を正しく区分しておくと、車両別の燃料費と消費税の計算の両方がぶれません。運送業特有の仕訳は運送業の仕訳事例集で確認できます。

傭車・委託ドライバーの費用で注意することは?

他の運送会社への傭車や、軽貨物の個人事業主への委託は、採算表では外注費として車両や荷主にひも付けます。委託先がインボイスに登録していない免税事業者の場合、支払った消費税相当額の全額は控除できず、経過措置の割合だけが控除の対象になります。

課税仕入れの日控除できる割合
2026年9月30日まで80%
2026年10月1日〜2028年9月30日70%
2028年10月1日〜2030年9月30日50%
2030年10月1日〜2031年9月30日30%
2031年10月1日以後0%
免税事業者等からの仕入れの経過措置(本則課税の場合。帳簿に「80%控除対象」などの記載が必要)

計算例:免税事業者への委託費が月330,000円の場合

  • 例えば、免税事業者の軽貨物ドライバーに毎月税込330,000円を支払う場合、消費税相当額は330,000円×10/110=30,000円です。
  • 控除できる額の目安は、80%なら30,000円×80%=24,000円です。
  • 70%なら30,000円×70%=21,000円です(実際の計算は国税・地方税の内訳ごとに行います)。
  • 差額は月3,000円で、1年では3,000円×12=36,000円の負担増になります。

割合は運送が完了した日(課税仕入れの日)で判定するため、月をまたぐ委託は日付の管理が必要です。また、毎日同じ指示のもとで働く委託ドライバーは、実態によって給与と判断されることがあり、その場合は源泉徴収や社会保険の問題も生じます。契約の形と働き方が合っているかも定期的に確認しましょう。

トラックの入替えと資金繰りはどう判断する?

車両別の採算表で修繕費が年々増えている車両は、入替えを検討する目安になります。判断では、新車・中古車それぞれの購入額と、その後の修繕費・燃費・稼働率の見込みを比べます。中古のトラックは、残りの使用可能期間をもとに耐用年数を短く見積もれるため、購入当初の減価償却費が大きくなります。法人の車両は、届出をしなければ定率法で償却します。

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トラックの減価償却費を定率法で計算する取得価額と耐用年数を入れると、毎年の償却費と期末の帳簿価額がわかります。計算する

デジタコやドライブレコーダーなどの車載機器は、取得価額が40万円未満なら、青色申告の中小事業者は少額減価償却資産の特例で取得した年に全額を経費にできます(2026年4月1日以後の取得から。それより前は30万円未満。年300万円まで、2029年3月31日までの取得)。

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車載機器の処理方法を3択で比較する即時の経費化・一括償却・少額減価償却資産の特例のどれが有利か、金額を入れるだけで比較できます。計算する

借入でトラックを買う場合は、返済期間を車両を使う年数に合わせるのが基本です。元本の返済は経費にならないため、毎年の返済額が「減価償却費+税引後の利益」を上回ると、黒字でも資金が減っていきます。採算表とあわせて、車両ごとの返済予定も一覧にしておきましょう。

車両の入替えの時期や、借入と償却のバランスは会社ごとに答えが変わります。採算表の作り方から初回無料で確認できます。

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数字を毎月回す仕組みはどう作る?

採算表は最初から完璧を目指さず、売上・燃料・人件費の三項目だけでも十分に傾向が見えてきます。慣れてきたら修繕・保険・償却を加えて精度を上げていく進め方が現実的です。

  1. 会計ソフトに車両の区分を作る部門や補助科目を車両番号ごとに設定し、売上・燃料費・修繕費などを車両別に記帳します。
  2. 明細を車両別に集める燃料カードやETCの利用明細、デジタコの走行距離・実車距離・拘束時間を、車両ごとに月単位で集計します。
  3. 月次で採算表を更新する会計データと運行データを突き合わせ、車両別・荷主別の採算、燃費、実車率を同じ様式で並べます。
  4. 現場と共有する燃費や実車率は経営者だけが見る数字にせず、ドライバーにも共有します。努力が数字で見えると、改善が定着しやすくなります。

明細の分類や表の整形といった集計の下準備には、AIを使う方法もあります。その場合は、ドライバーの個人情報や荷主との契約条件など外部に出せない情報を入力しない、出てきた数字を元の明細と照合する、といったルールを先に決めておきます。具体的な使い方はClaude Cowork 経理活用ガイド、経理全体の効率化は経理効率化の進め方で紹介しています。

北海道の運送業で採算を見るときの注意点は?

冬の採算は前年の同じ月と比べる

冬は暖機運転や雪道の走行で燃費が落ちやすく、スタッドレスタイヤへの交換や車庫・駐車場の除雪の費用もかかります。夏と冬を単純に比べると判断を誤りやすいため、燃費や修繕費は前年の同じ月と比べ、季節の影響と車両固有の問題を分けて見ましょう。冬季の費用の増加分を、燃料サーチャージや冬季の運賃にどう反映するかも、荷主と事前に話し合っておきたい点です。

人件費の計算で使う数字内容(2026年10月時点)
北海道の最低賃金2026年10月1日から1,131円。歩合給でも、時間あたりに換算して下回ることはできない
協会けんぽ北海道健康保険10.28%、介護保険1.62%(令和8年3月分から。労使折半)
子ども・子育て支援金0.23%(令和8年4月分から。労使折半)
厚生年金保険18.3%(労使折半)
雇用保険料率(一般の事業)1,000分の13.5(うち事業主1,000分の8.5。2026年4月1日〜2027年3月31日)
北海道の事業者がドライバー人件費を計算するときの主な数字

車両の購入資金を借りる場合は、日本政策金融公庫や民間金融機関のほか、札幌市や北海道の制度融資も選択肢になります。札幌市の融資制度は、2026年10月1日以降に実行される分から利率が0.3%引き上げられているため、最新の利率を確認してから計画に入れましょう。

よくある質問

車両別の採算は会計ソフトだけで管理できますか?

多くの会計ソフトは、部門や補助科目を使って車両別に集計できます。ただし走行距離や拘束時間は会計データに含まれないため、デジタコや配車システムのデータと組み合わせて、表計算ソフトなどで採算表にまとめるのが現実的です。

燃料サーチャージにも消費税はかかりますか?

国内の運送であれば、燃料サーチャージは運送の対価の一部なので、運賃と同じく消費税の課税対象です。請求書には運賃とサーチャージを分けて記載し、合計に対して消費税を計算します。

黒字なのに資金が残らないのはなぜですか?

主な原因は、借入金の元本返済が経費にならないこと、運賃の入金が月末締め翌月以降になる一方で燃料費や給与は先に出ていくこと、そして車両別の赤字が全体の利益に埋もれていることです。返済予定と入出金の時期を一覧にすると原因が見えます。

ドライバーにも数字を見せたほうがいいですか?

燃費や実車率など、ドライバーの行動で改善できる数字は共有すると効果的です。個人の給与や荷主ごとの運賃など、共有の範囲に注意が必要な情報は、見せる数字を決めてから始めましょう。

まとめ

運送業の利益管理は、車両別・荷主別の採算を土台に、燃費と稼働率を毎月定点観測することから始まります。時間外労働の上限があるいまは、1台あたり・時間あたりの粗利で判断し、燃料費や外注費の変化を転嫁するルールを荷主と整えておくことが重要です。まずは売上・燃料・人件費の三項目で車両別の採算表をつくり、現場と数字を共有していきましょう。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

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