経営者保証ガイドラインの残存資産|保証債務の整理で残せる財産と進め方

公認会計士・税理士 監修

この記事は、公認会計士・税理士が代表を務める札幌の会計事務所「ジェイスタート会計事務所」が監修しています。

  • URLをコピーしました!

経営者保証ガイドラインを使うと、会社の借入の連帯保証を自己破産せずに整理でき、一定の生計費や華美でない自宅などを残存資産として手元に残せる場合があります。前提は、財産の誠実な開示と、破産より債権者の回収が多くなる経済合理性です。範囲は債権者との協議で決まるため、早めの着手が結果を左右します。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

経営者保証ガイドラインは、保証人が破産をせずに保証債務を整理するための準則です。誠実な開示と経済合理性を前提に、破産よりも多くの財産を残存資産として残せる余地があります。

  • 会社が法的整理か、第三者が関与する私的整理を進めていることが利用の前提になる
  • 財産を正直に開示し、破産した場合より債権者の回収が増える見込みが必要
  • 残存資産は、生計費・華美でない自宅・事業継続に必要な資産などを債権者と協議して決める
  • ガイドラインで整理した事実は、信用情報機関に登録されない扱いになっている
  • 税金・社会保険料は減免の対象外。自宅などを売る場合は所得税の特例も確認する
目次

経営者保証ガイドラインとは?自己破産との違い

経営者保証ガイドライン(正式名称「経営者保証に関するガイドライン」)は、中小企業の経営者などが会社の借入に付けている個人保証について、保証を求める場面と整理する場面のルールを定めた自主的な準則です。日本商工会議所と全国銀行協会を事務局とする研究会が策定したもので、法律ではありませんが、金融機関や信用保証協会などが尊重して運用しています。

会社を整理するときに保証債務を払いきれない場合、以前は保証人も自己破産するのが一般的でした。ガイドラインを使うと、裁判所の破産手続ではなく債権者との協議(私的整理)で保証債務を整理し、弁済しきれない残りの免除を受けられる場合があります。経営者の再出発を後押しすることが目的です。

項目自己破産経営者保証ガイドライン
手続き裁判所の手続き債権者との協議(私的整理)
手元に残る財産自由財産の範囲自由財産に加え、協議により生計費や華美でない自宅などを残せる余地がある
信用情報登録される整理した事実は登録されない
官報への掲載掲載される掲載されない
資格・職業の制限手続中は一部の資格・職業に制限がある制限はない
債権者の同意不要(裁判所が判断する)原則として対象となる債権者全員の同意が必要
自己破産とガイドラインによる保証債務の整理の主な違い

利用できる条件は?押さえたい4つの要件

ガイドラインで保証債務を整理するには、主に次の4つを満たす必要があります。どれか一つが欠けると債権者の同意が得られにくくなるため、相談の初期段階で見通しを立てます。

要件内容実務で確認すること
対象となる保証契約か主たる債務者が中小企業、保証人が個人(経営者等)で、双方が返済に誠実に取り組み、財産の状況を適時適切に開示している。反社会的勢力ではない返済が滞った後の対応や、金融機関への決算書の提出状況
会社の整理手続きが進んでいるか会社が法的整理(破産・民事再生・会社更生・特別清算)か、中立公正な第三者が関与する私的整理(中小企業活性化協議会・事業再生ADR・特定調停など)を申し立てている、または係属・終結している会社の整理方法と保証債務の整理をどう組み合わせるか
経済合理性があるか破産手続による配当よりも多くの回収が見込めるなど、債権者にとっても合理的である破産した場合の配当見込みと比べる資料
免責不許可事由がないか財産の隠匿や一部の債権者だけへの返済など、破産法の免責不許可事由が生じておらず、そのおそれもない整理の直前に財産を家族名義に移していないか
保証債務の整理に使う場合の主な要件(ガイドラインの考え方を要約)

会社が法的整理を選ばずに廃業する場面については、「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方」が公表され、廃業時にもガイドラインを活用できるよう運用の考え方が示されています。どの手続きを組み合わせるかで要件の満たし方が変わるため、会社の整理方針を決める段階から検討します。

整理直前の財産移転は逆効果

整理を考え始めてから預金を家族の口座に移したり、自宅の名義を変えたりすると、財産の隠匿と受け取られ、ガイドラインを使えなくなるおそれがあります。財産を正直に開示することが、結果として残せる財産を広げる近道です。

残存資産として何を残せる?範囲の決まり方

残存資産とは、保証債務の弁済に充てずに保証人の手元に残すことが認められる財産です。範囲は、保証人の返済能力や保証債務の履行の状況、経営者としての責任、破産手続の自由財産の考え方との整合性などを総合的に考え、債権者との協議で決まります。

検討される主な財産考え方
破産手続でも自由財産になる財産一定額の現金や差押えが禁止されている財産など。破産しても手元に残る範囲が出発点になる
一定期間の生計費に相当する現預金雇用保険の給付期間の考え方を参考に、年齢などに応じて検討する
華美でない自宅当面住み続けられるよう検討する。担保の有無や評価額、債権者の回収見込みとの兼ね合いで決まる
会社の事業継続に最低限必要な資産保証人名義の工場・店舗など、事業を続けるために欠かせないもの
その他の資産個別の事情に応じて協議する
残存資産の範囲の考え方(実際の範囲は事案ごとに異なる)

早い段階で事業再生や廃業に着手したことで会社の弁済額が増えた場合には、その増えた分を目安に残存資産を広げる考え方もあります。資金が尽きる前に動き始めるほど残せる財産の余地が生まれやすいのは、このためです。

自宅を手放したくない場合は、売却する代わりに自宅の「公正な価額」に相当する額を分割で弁済し、住み続ける方法が検討されることもあります。自宅に会社の借入の担保が付いているか、個人の住宅ローンが残っているかで、取り得る方法が変わります。

具体例:会社を清算する経営者の自宅

例えば、長年地域で事業を続けてきた経営者が会社を清算し、会社の借入の連帯保証が残る場合を考えます。自宅に会社の借入の担保が付いておらず、評価額も華美とはいえない水準であれば、生計費に相当する預金とあわせて残存資産として協議の対象になり得ます。

一方、預金を整理の直前に家族名義へ移していた場合は、誠実な開示という前提が崩れ、残せる範囲を協議する以前に、ガイドラインの利用そのものが難しくなります。どこまで残せるかは評価額・担保・債権者の回収見込みで変わるため、財産の一覧を作ってから具体的な見通しを判断します。

合意の際には、保証人が開示した財産の内容が正しいことを表明し、支援専門家がその適正性を確認します。後から開示していない財産が見つかった場合には、免除を受けた保証債務に延滞利息を付けて追加で弁済する取り決めを結びます。

残せる財産の範囲は、財産の評価額や担保の状況、会社の整理方法によって大きく変わります。財産の一覧づくりから、初回無料でご相談いただけます。

無料で相談する

整理はどう進む?相談から保証債務の免除までの流れ

手続きは、会社の整理と保証債務の整理を一体で設計するところから始まります。会社の私的整理と同時に保証債務も整理する方法(一体型)と、会社の法的整理などに合わせて保証債務だけを整理する方法(単独型)があり、単独型では特定調停や中小企業活性化協議会の手続きが使われることがあります。

  1. 専門家に相談し、方針を決める会社の資金繰りと財産・負債を把握し、会社の整理方法(再生・廃業・清算)と保証債務の整理をどう組み合わせるかを決めます。
  2. 支援専門家を選び、返済の一時停止を求める弁護士・公認会計士・税理士など、債権者が適格性を認める専門家の支援を受け、主要な債権者に返済の一時停止などを申し入れます。
  3. 財産を調べ、財産目録を作る預貯金、保険の解約返戻金、不動産、車両、有価証券、会社への貸付金などを洗い出し、評価額を整理します。
  4. 弁済計画案を作る残存資産の範囲、弁済する額と方法、免除を求める額を示し、破産した場合の回収見込みと比べて経済合理性を説明します。
  5. 債権者と協議し、合意する原則として対象となる債権者全員の同意を得て、弁済計画を成立させます。
  6. 弁済し、残りの免除を受ける計画どおりに弁済したうえで、残った保証債務の免除を受けます。資産を売った年は、確定申告で税金の特例も確認します。

信用保証協会付きの融資では、会社が返済できなくなると協会が金融機関に代位弁済し、協会が会社と保証人に対する求償権を持つ債権者になります。協会との協議の進め方は信用保証協会の求償権と代位弁済後の対応で整理しています。

公認会計士・税理士は、財務状況の客観的な整理、財産の評価と破産した場合の配当見込みの試算、債権者に示す資料の作成支援、会社の清算や資産の売却に伴う税務を担います。法的な手続きの代理は弁護士の業務のため、事案に応じて弁護士や中小企業活性化協議会と連携して進めます。

税金はどうなる?自宅を売る場合の特例と会社側の注意

保証債務のために資産を売ったときの特例

保証債務を払うために自宅や土地などを売った場合、会社に請求する権利(求償権)が回収できなくなった部分については、譲渡所得がなかったものとみなす所得税の特例があります。主な要件は次の3つです。

  • 会社がすでに返済できない状態になってから保証したものではないこと
  • 保証債務を履行するために資産を売っていること
  • 履行した金額の全部または一部が、会社から回収できなくなったこと

対象となる金額には上限があり、確定申告で適用を受ける特例です。売却の前に譲渡益の見込みを計算し、会社から回収できないことを示す資料(会社の決算書や整理手続きの書類など)をそろえておきます。

税金・社会保険料は減免されない

ガイドラインで整理できるのは、金融機関などの債権者に対する保証債務です。会社や個人の税金・社会保険料は対象になりません。会社の財産を役員が無償で譲り受けた場合などは、会社の滞納税金について第二次納税義務を負うことがあるため、整理の前に滞納の状況を確認します。払えない税金への対応は税金未納によるリスクと防ぐための対策も参考にしてください。

会社側の債務免除益と欠損金

会社が金融機関から債務の免除を受けると、会社に債務免除益が生じ、法人税の課税所得になります。清算する会社で残余財産がないと見込まれる場合は、期限切れの欠損金も損金に算入できる規定があります。清算の申告まで見通して、思わぬ課税が生じないかを試算しておきます。

札幌・北海道で進める場合の相談先と再出発の資金

地元の金融機関・保証協会との協議

道内の中小企業では、地元の金融機関と北海道信用保証協会が主な債権者になっていることが多く、早い段階で誠実に状況を説明することが協議を円滑にします。公的な相談先として、中小企業活性化協議会が都道府県ごとに設置されており、再生や廃業の私的整理の手続きを支援しています。

法的な判断は弁護士、財務と税務は公認会計士・税理士と、誰にいつ何を相談するかを早めに決めておくことが、結果を左右します。

整理の後に新たに事業を始める場合は、経営者保証に頼らない資金調達の選択肢も確認しておきます。主な制度は次のとおりです。

制度内容
日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金申告2期未了は原則無担保・無保証人。経営者保証免除特例は上乗せ利率なし
スタートアップ創出促進保証経営者保証を不要とする創業時の保証で、3,500万円まで(2023年3月15日〜)
北海道中小企業総合振興資金 創業貸付【スタートアップ】経営者の個人保証が不要
事業者選択型経営者保証非提供制度上乗せ保証料(0.25%/0.45%)を負担して、経営者保証を提供しない選択ができる(2024年3月15日開始)
経営者保証に頼らない主な資金調達の制度(2026年10月時点。要件は各機関の最新の案内で確認)

日本政策金融公庫には、廃業歴のある人の再起業を対象にした再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)もあります。資金調達の全体像は融資・資金調達ガイドで確認できます。

よくある質問

金融機関が整理に応じてくれない場合はどうなりますか?

ガイドラインは法的な拘束力のない準則で、債権者の同意が前提です。合意が難しい場合は、裁判所の特定調停で調整する方法や、最終的に破産などの法的手続きを選ぶこともあります。支援専門家を交えて早い段階から協議するほど、合意の可能性は高まります。

会社の事業を続けたまま、保証債務だけを整理できますか?

会社が法的整理か、第三者が関与する私的整理を進めていることが前提です。事業を続けながら会社の債務を見直す場合は、会社の事業再生の手続きと保証債務の整理を一体で進める方法が検討されます。

事業承継のとき、後継者は保証を引き継ぐ必要がありますか?

「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」では、前の経営者と後継者の双方から二重に保証を求めないことを原則とし、後継者の保証が本当に必要かを改めて判断するよう示しています。承継の前に、金融機関と保証の扱いを協議しておきます。

経営者が会社に貸しているお金(役員借入金)はどうなりますか?

会社に対する貸付金は保証人の財産の一つとして財産目録に載せ、会社の整理の中で回収できる見込みを評価します。会社に返済の余力がなければ回収できない部分が生じるため、弁済計画を作る段階で扱いを整理しておきます。

まとめ

経営者保証ガイドラインは、誠実な財産の開示と経済合理性を前提に、自己破産をせずに保証債務を整理し、生計費や華美でない自宅などを残存資産として残す道を開く準則です。残せる範囲は債権者との協議で決まり、早く着手するほど選択肢は広がります。会社の整理方法、資産を売るときの税金の特例、再出発の資金まで一体で設計しましょう。

札幌の公認会計士・税理士事務所

経営者保証・事業の整理のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ

  • 初回相談は無料(オンライン対応可)
  • フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
  • その場でご契約を迫ることはありません

対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り

出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次