福祉用具貸与・販売の開業手続きと届出一覧|指定申請・消費税の区分も整理

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福祉用具貸与・販売の開業では、介護保険の指定申請と税務の届出を並行して進めます。指定を受けられるのは法人だけで、法人設立届出書は設立の日以後2か月以内、青色申告の承認申請書は遅くとも設立から3か月以内が期限です。品目で分かれる消費税の区分と、国保連からの入金が遅れる資金繰りも開業前に押さえます。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

介護保険の指定(法人のみ)と、税務署・道・市への届出は別の手続きです。指定の準備と並行して、期限のある税務の届出を設立直後に済ませておきます。

  • 法人設立届出書は設立の日以後2か月以内、青色申告の承認申請書は設立から3か月以内(1期目が短い場合はそれより前)
  • 保険外の販売・レンタルだけなら個人事業でも始められ、開業届は開業の日から1か月以内
  • 車いすや特殊寝台など身体障害者用物品の貸与・販売は非課税、それ以外は課税で、介護食品は軽減税率8%
  • 介護保険の給付分は提供月のおおむね2か月後に入金されるため、運転資金を厚めに用意する
目次

福祉用具の事業を始めるには、どんな手続きが必要?

福祉用具の貸与(レンタル)や特定福祉用具の販売を介護保険の給付対象として行うには、介護保険法に基づく事業者の指定が必要です。指定を受けられるのは法人に限られるため、株式会社や合同会社などを設立することが前提になります。

指定とは別に、税務署・北海道・市町村への税務の届出と、人を雇う場合の社会保険・労働保険の手続きがあります。窓口も期限も系統ごとに別々なので、指定申請の準備に追われて税務の期限を逃さないよう、一つの予定表で管理します。

手続きの系統主な内容窓口時期の目安
介護保険の指定福祉用具貸与・特定福祉用具販売の事業者の指定申請(人員・設備・運営の基準を満たす)事業所の所在地の自治体(市内の事業所は札幌市)指定を受けたい日から逆算し、窓口の締切を確認
税務の届出法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与関係の届出など税務署・北海道・事業所のある市町村設立・開業の直後(書類ごとに期限あり)
社会保険・労働保険健康保険・厚生年金保険、労災保険・雇用保険の加入年金事務所・労働基準監督署・ハローワーク設立後・雇用開始後すみやかに
福祉用具の事業の開業で必要になる手続きの全体像(2026年10月時点)

指定の基準には、福祉用具専門相談員を常勤換算で2名以上置くといった人員の基準のほか、設備や運営の基準があります。申請窓口や必要書類は自治体によって異なるため、市内で開業する場合は札幌市の公式サイトで最新の案内を確認してください。

法人で指定を受けて始める

  • 介護保険の給付対象の貸与・販売ができる
  • 税務署には法人設立届出書と青色申告の承認申請書を出す
  • 役員1人だけでも社会保険の強制適用事業所になる
  • 赤字でも法人住民税の均等割がかかる

個人で保険外から始める

  • 自費の販売・レンタルに限られ、介護保険の給付は扱えない
  • 税務署には開業届と青色申告承認申請書を出す
  • 後から指定を受けるには法人を設立して事業を移す
  • 設立費用や均等割がかからず、小さく始めやすい

最初から保険内の事業を見込んでいるなら、法人を設立してから始めるほうが、届出や契約の二度手間を避けられます。相談員を雇えば開業の月から給与の支払いが始まるため、給与関係の届出も指定の日より前に整えておきます。

法人で開業するとき、税務署・道・市に出す届出と期限は?

法人を設立したら、まず税務署に法人設立届出書と青色申告の承認申請書を出します。福祉用具専門相談員などを雇って給与を払う場合は、給与関係の届出も加わります。

書類提出先期限・ポイント
法人設立届出書税務署設立の日以後2か月以内
青色申告の承認申請書税務署設立の日以後3か月を経過した日と、最初の事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日まで
給与支払事務所等の開設届出書税務署開設の日から1か月以内
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書税務署給与の支給人員が常時10人未満なら提出できる。提出した月の翌月末日までに通知がなければ、翌々月の納付分から適用
適格請求書発行事業者の登録申請書税務署任意。設立した課税期間中に出せば、設立日から登録を受けられる特例がある
消費税簡易課税制度選択届出書税務署任意。設立した課税期間中に出せば、その期から適用できる
法人設立の届出(道民税・事業税)北海道(道税の窓口)設立後すみやかに(期限・様式は窓口で確認)
法人設立の届出(市町村民税)事業所のある市町村設立後すみやかに(期限・様式は窓口で確認)
法人で開業する場合に出す主な届出(2026年10月時点)

青色申告の承認申請は、期限を過ぎると1期目に青色申告ができません。青色申告の法人は、赤字(欠損金)を翌期以後10年間繰り越して黒字と相殺できます。用具の購入や人件費が先行して赤字になりやすい1期目ほど、この効果は大きくなります。

源泉所得税は、原則として給与を払った月の翌月10日が納付期限です。納期の特例の承認を受けると、1〜6月分を7月10日、7〜12月分を翌年1月20日にまとめて納められるため、少人数の事業所では事務の負担が軽くなります。

市内で会社を設立して開業する場合

届出の提出先は、本店所在地を管轄する税務署です。市内は区ごとに5つの税務署(中・北・南・西・東)に分かれ、中央区はおおむね西10丁目以東が中署、西11丁目以西が西署の管轄です。2026年7月10日からは内部事務が札幌業務センターに集約され、書面の届出は同センターへ郵送し、e-Taxや窓口への持参は所轄の税務署で受け付けています。

市の特定創業支援等事業で1か月以上・4回以上の支援を受けて証明書を得ると、市内で設立する会社の登録免許税が0.7%から0.35%に下がります(株式会社は15万円→7.5万円、合同会社は6万円→3万円)。証明書の有効期限は2027年3月31日です。

保険外の販売・レンタルを個人で始める場合の届出は?

自費の販売・レンタルだけを個人事業として始める場合は、税務署に開業届と青色申告承認申請書を出すのが中心です。北海道には、個人事業税のための事業開始の申告をします。

書類提出先期限
個人事業の開業届出書税務署開業の日から1か月以内
所得税の青色申告承認申請書税務署その年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内)
給与支払事務所等の開設届出書税務署人を雇う場合、開設の日から1か月以内
事業開始の申告(個人事業税)北海道(道税の窓口)開業後すみやかに
個人で開業する場合に出す主な届出(2026年10月時点)

青色申告特別控除は、令和8年分までは最大65万円です。令和9年分からは、仕訳帳・総勘定元帳を電子帳簿保存法の要件で保存するなどの要件を満たすと最大75万円になります。開業届と同時に青色申告承認申請書を出しておくのが確実な段取りです。

物品の販売や貸付けは個人事業税の対象となる業種で、税率は多くの業種と同じ5%、事業主控除は290万円です。所得税とは別に納付するため、納税資金の見込みに入れておきます。

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青色申告と白色申告の税額を比べる所得の見込みを入れると、青色申告特別控除によって税額がどれだけ変わるかを確認できます。計算する

消費税はどうなる?品目で課税・非課税が分かれる

訪問介護など多くの介護保険サービスは消費税が非課税ですが、福祉用具の貸与・販売は扱いが異なります。介護保険の給付対象かどうかではなく、その品目が消費税法上の「身体障害者用物品」に当たるかどうかで、課税・非課税が決まります。

区分主な例消費税
身体障害者用物品に当たる用具の貸与・販売車いす、特殊寝台、歩行器など(国が告示で指定した品目で、形状や機能の要件を満たすもの)非課税
それ以外の用具・日用品身体障害者用物品に当たらない用具、介護用の日用雑貨など課税(10%)
飲食料品介護食品など(酒類を除く)課税(軽減税率8%)
福祉用具の事業で混在しやすい消費税の区分(2026年10月時点。品目ごとの判定は告示と国税庁の情報で確認)

例えば同じ事業所で、車いすのレンタル料(非課税)と介護用の日用雑貨(課税)、介護食品(軽減税率)を扱うなら、売上を区分して経理する必要があります。請求システムに品目ごとの課税区分を登録しておくと、申告時の集計が楽になります。

非課税となる品目の範囲は告示の改正で変わることがあり、同じ品目名でも要件を満たすかで判断が分かれる場合があります。取扱品目を増やすときは、仕入先の資料と国税庁の情報で課税区分を確認してから登録します。

免税事業者の判定に使うのは課税売上高だけ

消費税の納税義務は、基準期間(法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下なら原則として免除されます。非課税となる車いすなどのレンタル料はこの課税売上高に含めないため、売上全体が大きくても免税事業者という場合があります。

ただし、資本金1,000万円以上で設立した法人は1期目から課税事業者です。1期目の最初の6か月(特定期間)の課税売上高と給与等の支払額がともに1,000万円を超えた場合も、2期目から課税事業者になります。

課税事業者になると、非課税売上がある分だけ、仕入れにかかった消費税を全額は控除できない場合があります。簡易課税(基準期間の課税売上高5,000万円以下で選択可)を使う場合の事業区分は、取引の形で次のように分かれます。

  • 課税となる用具のレンタル:サービス業等として第5種(みなし仕入率50%)
  • 消費者への販売:小売業として第2種(80%)
  • 介護施設などの事業者へ、仕入れた商品をそのまま販売:卸売業として第1種(90%)
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消費税の課税事業者になるかを判定する基準期間・特定期間の課税売上高などを入れて、納税義務の有無を確認できます。判定する

取扱品目の課税区分や、本則課税と簡易課税のどちらが有利かは、品目と取引先の構成で変わります。開業前の段階から初回無料でご相談いただけます。

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インボイス登録は必要?取引先の構成で判断する

インボイス(適格請求書)は、取引の相手が仕入税額控除を受けるために必要な書類です。在宅の利用者やその家族は消費者なので、利用者向けの取引が中心ならインボイスを求められる場面は多くありません。

主な取引先インボイス登録の考え方
在宅の利用者(介護保険・自費)が中心相手が消費者のため、登録しなくても取引への影響は小さい
介護施設・医療機関への販売やレンタルが多い相手が事業者のため、インボイスの発行を求められやすい
ほかの福祉用具事業者との卸やレンタルが多い相手も事業者のため、登録を前提に考える
取引先の構成によるインボイス登録の判断の目安

登録すると、その日から課税事業者として消費税を申告します。インボイス登録をきっかけに課税事業者になった事業者の2割特例は、2026年9月30日を含む課税期間で終わり、法人には後継の特例がありません。個人事業者に限り、令和9・10年分は売上税額の3割を納める特例(届出不要)があります。

仕入れの側では、免税事業者からの仕入れにかかる消費税の一部を控除できる経過措置があり、2026年10月1日〜2028年9月30日の仕入れは70%、2028年10月1日〜2030年9月30日は50%です。小規模な仕入先から用具や消耗品を買う場合は、相手の登録状況を確認しておきます。請求書の記載や帳簿の書き方はインボイス制度の実務ガイドにまとめています。

国保連の入金は約2か月後:開業資金と貸与用の用具の扱いは?

介護保険の給付費は、サービスを提供した月の翌月に国民健康保険団体連合会(国保連)へ請求し、入金はおおむね提供月の2か月後です。売上は入金の時ではなく提供した月に計上し、入金までは売掛金として管理します。

計算例:開業直後に入金を待つ金額

例えば、介護保険の給付分の売上が開業初月から毎月150万円ある場合、最初の入金までに2か月分がたまります。150万円×2か月=300万円が、入金を待つ売掛金になります。

この間も、相談員の給与、用具の仕入代金、事務所の家賃は先に出ていきます。開業資金は、設備や用具の購入額に加えて、入金が始まるまでの経費を賄える額で見込みます。

国保連の審査で返戻(差戻し)になった請求は、再請求の分だけ入金が遅れます。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金(融資限度7,200万円)や、札幌市・北海道の制度融資など、運転資金の手当ては開業前に相談しておきます。札幌市の融資制度は、2026年10月1日以降に実行される分から利率が0.3%上がっている点にも注意が必要です。

貸与用の用具は「自社で保有」か「レンタル卸から借りる」か

貸与する用具を自社で買って保有する場合は、取得価額に応じて資産に計上し、減価償却します。自社で保有せず、レンタル卸の事業者から借りて利用者に貸し出す形なら、仕入先に払うレンタル料がその月の経費になります。

1点あたりの取得価額処理の原則ポイント
10万円未満消耗品費などとして全額をその期の経費使用可能期間が1年未満のものも同様
20万円未満一括償却資産として3年で均等に経費にすることも選べる償却資産税の申告対象外
40万円未満少額減価償却資産の特例で全額を経費(年300万円まで)青色申告の中小企業者等が対象。2026年3月31日までの取得は30万円未満
上記以外耐用年数に応じて減価償却償却資産税の申告対象
貸与用の用具を自社で取得した場合の処理(2026年10月時点)

貸付け用の資産と少額の特例

上の表の少額の特例は、貸付けの用に供した資産を原則として対象外としていますが、主要な事業として行う貸付けは除かれています。福祉用具の貸与を本業とする場合の扱いは、まとまった数の用具を買う前に確認しておくと安心です。

開業1年目の経理で整えておくことは?

福祉用具の事業は、品目ごとの課税区分、給付分と利用者負担分の売掛金、貸与中の用具の所在と、管理する情報が多い業種です。開業時に次の仕組みを作っておくと、1期目の決算と申告の負担が軽くなります。

  • 取扱品目の一覧に、非課税・課税(10%)・軽減税率(8%)の区分を登録する
  • 売上を「貸与」と「販売」、「介護保険」と「自費」に分けて集計する
  • 売掛金を給付分と利用者負担分に分け、国保連の入金と毎月照合する
  • 自社保有の用具は、管理番号ごとに貸与先・回収日・廃棄日を台帳で管理する
  • 仕入先やレンタル卸からPDFなどで届く請求書は、電子データのまま保存する
  • 事業用の口座とカードを分け、会計ソフトと連携して月ごとに締める

介護保険では一部の用具について、利用者が貸与と購入を選べる仕組みもあります。同じ商品でも貸与なら毎月の売上、販売なら一度きりの売上になるため、売上の区分は商品ではなく取引ごとに付けます。

2024年1月1日以後にメールやWebで受け取った請求書などは、紙に印刷するだけでは足りず、電子帳簿保存法の要件に沿って電子データで保存する必要があります。日々の記帳を外部に任せる場合は、記帳代行プランの内容と流れも参考にしてください。

開業前にそろえておくこと

  • 事業計画と収支の見通し(入金が遅れる期間を含めて)
  • 開業資金と自己資金の額
  • 法人設立・指定申請・税務の届出の日程
  • 会計ソフト・記帳の体制
  • 事業用口座と、指定に必要な人員・設備の確認

よくある質問

指定を受ける前に、法人設立届出書や青色申告の申請を出してもよいですか?

出して問題ありません。法人設立届出書と青色申告の承認申請書の期限は設立の日から数えるため、指定の時期とは関係なく進みます。指定を待ってから出そうとすると、青色申告の期限を過ぎてしまうことがあります。

社長の役員報酬はいつまでに決めればよいですか?

毎月同額で支払う役員報酬(定期同額給与)は、事業年度の開始から3か月以内に金額を決めれば損金にできます。入金が遅れる1期目は資金繰りを見て無理のない額から始め、見直しは次の事業年度の開始から3か月以内に行います。

開業1年目が赤字でも、税金はかかりますか?

法人税は所得がなければかかりませんが、法人住民税の均等割は赤字でもかかります。市内の資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の法人は、道2万円+市5万円=年7万円です。消費税も、課税事業者であれば赤字でも申告と納付が必要です。

個人で保険外のレンタルを始め、後から法人で指定を受けることはできますか?

できます。法人を設立して指定を受け、個人の事業は廃業の届出をします。個人で持っていた用具を法人に移すときは、売買にするか貸し付けるかで税金の扱いが変わるため、移す前に方法を決めておきます。

まとめ

福祉用具貸与・販売の開業は、介護保険の指定(法人のみ)と税務の届出を並行して進めるのが基本です。法人設立届出書と青色申告の承認申請書は設立日から期限が進むため、指定を待たずに提出します。品目ごとの課税区分と、国保連の入金までの運転資金を開業前に固めておくと、1期目の決算と申告が楽になります。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

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