障害福祉サービスの法人化|指定申請から逆算する設立時期と法人格の選び方

公認会計士・税理士 監修

この記事は、公認会計士・税理士が代表を務める札幌の会計事務所「ジェイスタート会計事務所」が監修しています。

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障害福祉サービスの法人化は、「利益が出てから」ではなく指定申請から逆算して決めます。就労継続支援やグループホームなどの指定は、法人でなければ受けられないためです。法人格の選び方、NPO法人や一般社団法人でもかかる税金、設立日と資金繰りの組み立て方を順に整理します。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

障害福祉サービスは個人事業のままでは指定を受けられません。法人化の時期は所得の水準ではなく、指定申請の受付時期と開所日から逆算して決めます。

  • 就労継続支援・生活介護・グループホーム・放課後等デイサービスなどの指定は、法人であることが要件
  • NPO法人や一般社団法人でも、障害福祉サービスの収入は法人税の課税対象になるのが一般的
  • 報酬は消費税が非課税。ただし就労支援の生産活動の売上や自費サービスは課税売上になる
  • 設立から指定まで2〜3か月、開所から国保連の入金までさらに約2か月。運転資金と役員報酬を設立前に設計する
目次

障害福祉サービスは個人で始められる?指定には法人格が必要

障害者総合支援法や児童福祉法に基づく障害福祉サービスの指定は、法人でなければ受けられません。就労継続支援(A型・B型)、生活介護、共同生活援助(グループホーム)、放課後等デイサービス、児童発達支援など、いずれも個人事業のままでは開業できない仕組みです。

そのため、ほかの業種のように「まず個人で始め、利益が安定したら法人化する」という順番はとれません。検討の中心は「法人化するかどうか」ではなく、どの法人格で、いつ設立するかです。

定款の事業目的には、指定を受ける事業がわかる記載が求められます。将来ほかのサービスにも広げる予定があるなら、関連する事業を設立時に入れておくと、後から目的を変更する登記の手間を省けます。

法人化を考える場面は大きく2つ

  • これから障害福祉に参入する人:指定申請の受付時期に合わせて、新しく法人を設立する
  • すでに個人で事業をしている人:福祉事業を行う法人に既存の事業も移すか、個人に残すかを決める

前者は「いつ・どの法人格で」が論点で、後者はそれに加えて「税負担がどう変わるか」の試算が必要になります。

どの法人格を選ぶ?株式会社・合同会社・NPO法人・一般社団法人の違い

障害福祉サービスで選ばれる法人格は、主に次の4つです。設立の手間と期間、税金の扱い、意思決定の仕組みがそれぞれ違います。

法人格設立の手続き法人税の扱い向くケース
株式会社定款認証と登記。設立が速いすべての所得に課税規模拡大や多角化、融資や外部資本の受け入れを視野に入れる場合
合同会社定款認証が不要で登記だけ。設立費用を抑えられるすべての所得に課税小規模で、身内中心に始める場合
NPO法人所轄庁の認証が必要で、設立に時間がかかる。設立登記の登録免許税はかからない収益事業の所得に課税。障害福祉サービスは収益事業に当たるのが一般的地域活動と一体で進める場合
一般社団法人定款認証と登記。所轄庁の認証や認可は不要非営利型は収益事業の所得に課税、普通型はすべての所得に課税福祉色を出しつつ、機動的に設立したい場合
障害福祉サービスで選ばれる主な法人格の比較(2026年10月時点)

株式会社と合同会社は、すべての所得に法人税がかかる点は同じです。融資や出資、将来の多角化を考えるなら株式会社、身内中心で小さく始めるなら合同会社が選ばれやすい形です。

NPO法人や一般社団法人は、社員総会など株式会社とは異なる意思決定の仕組みを持ちます。誰が社員・理事になり、重要なことをどの機関で決めるのかを、設立前にすり合わせておくと運営で迷いません。

社会福祉法人という選択肢

社会福祉法人は法人税の優遇が大きい一方、所轄庁の認可が必要で、資産の要件や運営のルールも厳しく定められています。これから参入する事業者が最初の法人格として選ぶには、ハードルが高い形です。

NPO法人や一般社団法人なら税金はかからない?法人税と消費税の扱い

法人税:非営利の法人格でも障害福祉の収入には課税される

NPO法人や非営利型の一般社団法人は、法人税法で定める「収益事業」から生じた所得にだけ法人税がかかります。障害福祉サービスの事業はこの収益事業に当たると扱われるのが一般的で、「非営利だから税金がかからない」という思い込みは禁物です。

普通型の一般社団法人は、株式会社と同じくすべての所得が課税対象です。NPO法人などが収益事業を始めたときは、税務署に収益事業開始届出書を出し、収益事業とそれ以外の事業で収入と費用を分けて経理します。

消費税:報酬は非課税、生産活動の売上は課税

国保連から入る給付費も、利用者が支払う自己負担分も、障害福祉サービスの報酬は消費税が非課税です。収入の大半が非課税のため消費税の影響は小さい事業所が多いものの、次の収入は課税売上になります。

  • 就労継続支援などの生産活動で作った製品の販売(菓子・弁当・農作物など)や、企業から受託した作業の対価
  • 保険の枠外で提供する自費サービス
  • 物品の販売や、法人として受け取る研修講師の謝金

消費税の納税義務は、基準期間(法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下なら原則として免除され、非課税の報酬はこの金額に含めません。設立1期目・2期目は基準期間がないため、資本金1,000万円未満の法人は原則として免税事業者です(特定期間の課税売上高などで課税になる場合があります)。

生産活動の売上が大きい事業所では、販売先の企業からインボイス(適格請求書)を求められることがあります。課税売上高の推移と販売先の顔ぶれを見て、登録するかを判断します。

生産活動の収支は報酬と分けて管理する

就労継続支援B型は、生産活動の収入から必要な経費を引いた額を工賃として支払う仕組みです。生産活動の売上・経費と障害福祉サービスの報酬が混ざると、工賃の計算も消費税の集計も難しくなります。口座や勘定科目の分け方は、開所前に決めておきましょう。

すでに個人で事業をしている場合は?所得分散と役員報酬の考え方

介護・福祉関連の業務委託などを個人で受けている人が指定事業へ進む場合は、既存の事業を法人に移すかどうかで税負担が変わります。法人では役員報酬による所得の分散と、給与所得控除が使えるためです。

個人の所得税は所得が増えるほど税率が上がる累進税率で、住民税(所得割10%)も加わります。一方、中小法人の法人税率は、所得800万円以下の部分が15%(2027年3月31日までに開始する事業年度)、800万円を超える部分が23.2%です。

課税所得の区分所得税の税率住民税と合わせた税率
195万円以下5%5%+10%=15%
195万円超330万円以下10%10%+10%=20%
330万円超695万円以下20%20%+10%=30%
695万円超900万円以下23%23%+10%=33%
900万円超1,800万円以下33%33%+10%=43%
個人の所得税(平成27年分以後の速算表の税率)と住民税。1,800万円超は所得税40%・45%。復興特別所得税等と個人事業税は別

計算例:個人の利益800万円を、役員報酬500万円と法人の利益300万円に分けた場合

例えば、個人事業の利益が800万円の人が法人を設立し、役員報酬を年500万円、残りの300万円を法人の利益として残すとします(札幌市内、資本金1,000万円以下の株式会社・合同会社の場合)。

  • 役員報酬の給与所得控除(令和8・9年分):500万円×20%+44万円=144万円
  • 個人の給与所得:500万円−144万円=356万円
  • 法人税:300万円×15%=45万円
  • 地方法人税:45万円×10.3%=46,350円
  • 法人住民税の法人税割:45万円×1.0%=4,500円(北海道)、45万円×6.0%=27,000円(札幌市)
  • 法人事業税:300万円×3.5%=105,000円、特別法人事業税:105,000円×37%=38,850円
  • 均等割:北海道2万円と札幌市5万円で年7万円

法人の税金の合計は、450,000円+46,350円+4,500円+27,000円+105,000円+38,850円+70,000円=741,700円です。このほか役員報酬には社会保険料がかかり、会社負担分も法人の費用になります。実際の比較は、社会保険料と所得控除まで含めた手取りで行います。

役員報酬を極端に高くすると個人側の税負担が重くなり、低すぎると法人側に利益が偏ります。役員報酬は事業年度の開始から3か月以内に決めた額を、原則としてその年度中は変えられない(定期同額給与)ため、複数のパターンで試算してから決めます。

開所の前後は報酬の入金がないため、最初の事業年度は無理のない額で始め、入金が安定した翌期に見直す方法もあります。既存の個人事業を法人に移さず個人に残す場合は、個人と法人の両方で申告が続く点も比較に入れます。

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役員報酬の額をシミュレーションする役員報酬をいくらにすると、法人と個人を合わせた負担のバランスがよいかを試算できます。計算する
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設立日はいつにする?指定申請から逆算するスケジュール

設立日は、指定申請の受付時期から逆算して決めます。指定の申請先は事業所の所在地の自治体で、申請の締切や事前相談の要否は自治体ごとに異なります。物件と職員の確保に見込みが立った段階で、受付時期を確認しておきましょう。

2〜3か月設立から指定までの目安
約2か月開所から国保連の入金までの目安
半年近く設立から最初の入金までの、収入の乏しい期間
  1. 事業計画を固めるサービスの種類と定員、物件、人員基準を満たす職員の確保、開所までの資金を整理し、指定の申請先に受付時期を確認します。
  2. 法人を設立する定款の事業目的に指定を受ける事業を入れ、役員と決算月を決めて登記します。登記を申請した日が設立日です。
  3. 税務署・年金事務所に届け出る株式会社・合同会社などは法人設立届出書(設立の日以後2か月以内)、NPO法人などは収益事業開始届出書を出します。青色申告の承認申請書と給与支払事務所等の開設届出書(開設の日から1か月以内)を出し、社会保険の新規適用の手続きもします。
  4. 指定を申請する人員・設備・運営の基準を満たす書類をそろえて申請します。設立から指定まで2〜3か月かかる前提で日程を組みます。
  5. 開所して報酬を請求するサービスを提供した翌月に国保連へ請求し、入金はその後になります。開所から最初の入金まで約2か月は、手元資金と借入れで家賃と人件費を払います。

設立から指定までに2〜3か月、開所から国保連の入金までにさらに約2か月かかると、半年近く収入の乏しい期間が生じます。その間の家賃・人件費・役員報酬をどう賄うかが、設立前に決めておくべき現実的な論点です。

計算例:最初の入金までに必要な運転資金

例えば、家賃15万円、職員の人件費(社会保険料を含む)120万円、役員報酬20万円が毎月かかり、開所の準備から最初の入金まで5か月かかる場合です。

  • 毎月の支出:15万円+120万円+20万円=155万円
  • 入金までの支出:155万円×5か月=775万円

このほかに、物件の契約金や備品の購入費がかかります。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金(限度額7,200万円、運転資金は10年以内)など、開業前から相談できる融資とあわせて資金計画を立てます。

決算月は、処遇改善加算の実績報告や報酬改定への対応で忙しい時期と重ならない月にすると、事務の負担を分散できます。指定を受けた直後は運営体制の整備に追われるため、最初の決算がその時期にぶつからないようにしておくと、初年度の申告作業が楽になります。開業時の届出の全体像は「障害福祉サービス事業所の開業時の税務手続きと届出一覧」にまとめています。

個人事業の廃業届とのずれに注意

すでに個人で関連する業務を行っている場合、法人設立後に個人事業の廃業届を出す時期がずれると、個人と法人の両方で収入が発生する期間の整理が煩雑になります。業務委託の契約先には、いつから法人との契約に切り替えるかを早めに伝えておきます。

法人化でかかるコストは?社会保険・均等割・設立費用

法人になると、利益が出ていなくても毎年かかる費用があります。設立前の資金計画に、次の項目を入れておきます。

項目内容
社会保険法人は役員1人だけでも健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所。役員報酬と職員の給与に応じて、保険料の会社負担分がかかる
法人住民税の均等割赤字でもかかる。札幌市内で資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の区分なら、北海道と市を合わせて年7万円
設立の登録免許税株式会社は資本金の0.7%(最低15万円)、合同会社は最低6万円。NPO法人の設立登記にはかからない
決算・申告の事務法人税等の申告、決算書の作成、源泉所得税の納付と年末調整。NPO法人などは収益事業の区分経理も必要
防衛特別法人税2026年4月1日以後に開始する事業年度から、(基準法人税額−500万円)×4%。税額が0円でも申告が必要
法人化で増える主なコストと事務(2026年10月時点)

なかでも大きいのが社会保険です。指定を受けるには基準を満たす職員の配置が要るため、開所前の採用の時期から人件費と保険料の会社負担が発生します。職員の雇用計画と保険料の見込みをあわせて、人件費の計画を先に固めておきましょう。

札幌で障害福祉の法人を設立するときに使える制度は?

市内で株式会社・合同会社を設立する場合は、設立費用や資金調達で使える市の制度があります。指定申請の窓口とは別に、次の点を確認しておきましょう。

市内で設立する場合に確認したいこと

  • 特定創業支援等事業:札幌中小企業支援センターや札幌商工会議所で1か月以上・4回以上の支援を受けて証明書を取得すると、市内で設立する会社の登録免許税が半額(株式会社15万円→7.5万円、合同会社6万円→3万円)になります。証明書の有効期限は2027年3月31日です。
  • さっぽろ新規創業促進補助金:証明を受けて設立した会社は、株式会社75,000円・合同会社30,000円の補助を申請できます。設立から90日以内か、2027年3月31日の早い日までの申請が必要です。
  • 市の融資制度:2026年10月1日以降に実行される分から、利率が0.3%上乗せされています。借入れを申し込む時点の利率は窓口で確認します。
  • 税務署への書面の提出:2026年7月10日から、書面は札幌業務センターへ郵送します。e-Taxで送るか窓口に持参する場合は、本店所在地を管轄する税務署が提出先です。

すでに個人で事業をしている人の法人成りが特定創業支援等事業の対象になるかは、事業を始めてからの期間などの要件で決まるため、窓口で確認してください。

よくある質問

設立したばかりの法人でも、指定は受けられますか?

指定の審査は、法人の業歴よりも、人員・設備・運営の基準を満たしているかが中心です。事前相談の要否や申請の受付時期は自治体ごとに決まっているため、設立前に確認し、設立日をそこから逆算します。

NPO法人と一般社団法人では、税金面でどちらが有利ですか?

障害福祉サービスの収入は、どちらでも法人税の課税対象になると考えておく必要があるため、税金だけで大きな差はつきにくいといえます。一般社団法人は普通型だとすべての所得が課税対象になる点、NPO法人は所轄庁の認証に時間がかかる点など、設立の手間と運営のルールで選びます。

合同会社で始めて、あとから株式会社に変えられますか?

組織変更の手続きで株式会社に変えられます。ただし債権者を保護するための手続きや登記が必要で、指定を受けた後なら、指定の申請先への変更の届出も必要になります。将来の拡大が見えているなら、最初から株式会社にしておくほうが手間は少なく済みます。

家族を役員にして報酬を払ってもよいですか?

実際に法人の業務に携わっているなら、役員として報酬を支払えます。ただし勤務の実態に見合わない高額な報酬は、法人の損金(税金計算上の経費)にならないことがあります。家族の社会保険の扶養や、人員基準上の配置との関係もあわせて確認しましょう。

まとめ

障害福祉サービスは指定に法人格が必要なため、法人化の時期は指定申請の受付時期と開所日から逆算して決めます。法人格は設立の手間と運営のルールで選び、NPO法人や一般社団法人でも障害福祉の収入には法人税がかかる前提で計画します。開所から入金までの運転資金と役員報酬の額は、設立前に複数のパターンで試算しておきましょう。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

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