会計監査とは、会社や団体が作った決算書が会計のルールどおりに正しく作られているかを、作成者から独立した立場で確かめることです。上場会社などの法定監査は公認会計士・監査法人が行い、町内会や自治会では総会で選ばれた監事が、通帳や領収書と帳簿を照合して確かめます。
この記事の結論
会計監査は、決算書が正しく作られているかを第三者が確かめ、その結果を意見として示す手続きです。会社の法定監査は公認会計士・監査法人だけが行え、町内会などの監査は会員から選ばれた監事が担います。
- 上場会社や会社法上の大会社などは、法律で会計監査を受けることが義務づけられている
- 結果は「監査意見」で示され、無限定適正・限定付適正・不適正・意見不表明の4種類がある
- 税務調査は税金の計算が正しいかを見るもので、会計監査とは目的も行う人も違う
- 町内会・自治会の監査は、繰越金・期末残高・領収書・予算の4点を照合するのが基本
会計監査とは?目的と誰が行うのか
会計監査は、決算書(財務諸表)が会計の基準に沿って適正に作られているかを、独立した第三者が確かめ、その結果を意見として表明する手続きです。決算書を作る責任は経営者にあり、監査人は決算書が適正かどうかについて意見を述べる責任を負います。この役割分担を「二重責任の原則」といいます。
目的は、株主や金融機関、取引先、会員など決算書を使う人が、その数字を信頼して判断できるようにすることです。不正の摘発そのものが目的ではありませんが、監査の途中で重要な誤りが見つかれば、決算書の修正を求めます。
会社の法定監査(監査証明業務)は、公認会計士法に基づき、公認会計士と監査法人だけが行える業務です。一方、町内会や自治会、PTAなどの会計監査は、会則(規約)に基づいて会員の中から選ばれた監事が行います。同じ「会計監査」でも、行う人と確かめる深さが大きく異なります。
会計(経理)と会計監査の違い
会計は、日々の取引を記録・集計して決算書を作る仕事で、会社の経理部門や団体の会計担当者が行います。会計監査は、できあがった決算書と、その元になった帳簿・証拠書類を突き合わせて正しさを確かめる仕事です。作る人と確かめる人を分けることで、数字の信頼性が保たれます。決算書ができる仕組みは複式簿記の基本をまとめた入門ガイドで確認できます。
会計監査は「誤りゼロ」の証明ではない
公認会計士の監査が与えるのは「合理的な保証」で、決算書に誤りが一つもないことの証明ではありません。監査人は、利用者の判断を誤らせるほどの誤り(重要な虚偽表示)がないかに焦点を当て、取引の一部を抽出して調べる「試査」を中心に確かめます。
会計監査が義務づけられるのはどんな会社・団体?
法律で受けることが義務づけられている監査を「法定監査」、義務はないものの会社や団体の判断で受ける監査を「任意監査」といいます。主な法定監査は次のとおりです。
| 根拠となる法律 | 主な対象 | 監査する人 |
|---|---|---|
| 金融商品取引法 | 上場会社など、有価証券報告書を提出する会社(決算書に加えて内部統制報告書も監査の対象) | 公認会計士・監査法人 |
| 会社法 | 大会社(資本金または負債の額が一定以上の株式会社)、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社 | 会計監査人(公認会計士・監査法人) |
| 医療法 | 一定規模以上の医療法人 | 公認会計士・監査法人 |
| 社会福祉法 | 一定規模以上の社会福祉法人 | 会計監査人(公認会計士・監査法人) |
| 私立学校振興助成法 | 国や都道府県から経常費の補助金を受ける学校法人 | 公認会計士・監査法人 |
上場しておらず大会社にも当たらない中小企業は、法定監査の対象外です。ただし、監査役を置いている株式会社では、監査役が決算書(計算書類)を監査します。株式の譲渡に制限がある会社では、定款で監査役の監査の範囲を会計に限っている場合もあります。
中小企業が任意で監査を検討する場面
- 株式の上場(IPO)を目指すとき:上場を申請する前の期から、監査法人などの監査を受ける必要があります
- M&Aで会社を売買するとき:買い手は財務デューデリジェンス(買収前の財務調査)を行い、決算書の信頼性を確かめます
- 経営者以外の出資者がいるとき:株主への説明責任を果たすため、第三者の確認を求められることがあります
- 金融機関や取引先から、決算書の信頼性を示すよう求められたとき
監査ほど負担の重くない方法として、税理士や公認会計士が取締役と共同で決算書を作る「会計参与」を置く方法や、「中小企業の会計に関する基本要領」に沿って決算書を整え、金融機関に説明する方法もあります。
任意監査まで必要か、決算書の作り方と説明を整えれば足りるかは、資金調達や事業承継の予定によって変わります。初回無料で確認できます。
無料で相談する会計監査と税務調査・内部監査・監査役監査は何が違う?
「監査」や「調査」と名のつくチェックはいくつもあり、混同されがちです。誰が、何の基準で、何を確かめるのかで区別すると整理できます。
| 種類 | 行う人 | 確かめること | 結果の示し方 |
|---|---|---|---|
| 会計監査(外部監査) | 公認会計士・監査法人 | 決算書が会計の基準に沿って適正に作られているか | 監査報告書で監査意見を表明 |
| 監査役監査 | 監査役(会社の機関) | 取締役の職務の執行と、計算書類などの内容 | 監査役の監査報告 |
| 内部監査 | 社内の内部監査部門など | 業務が社内規程どおり効率よく行われているか、不正や誤りを防ぐ仕組みが働いているか | 経営者への報告と改善の提案 |
| 税務調査 | 税務署・国税局の職員 | 申告した税額が税法に沿って正しく計算されているか | 申告是認、または修正申告・更正(加算税がかかる場合あり) |
| 町内会・自治会などの会計監査 | 総会で選ばれた監事 | 会費などが会則・予算・総会の決議どおりに使われ、正しく記録されているか | 総会での監査報告 |
とくに混同されやすいのが、会計監査と税務調査です。会計監査は「決算書が会社の実態を正しく表しているか」を見るのに対し、税務調査は「税法に沿って税金を正しく計算・申告しているか」を見ます。会計上は正しい費用でも、税法上は損金(税金計算上の経費)にならない支出があるため、監査を受けている会社でも税務調査で指摘を受けることはあります。調査の進み方と備えは税務調査の重要性と事前の対策にまとめています。
内部監査は、内部統制(不正や誤りを防ぐ社内の仕組み)が働いているかを確かめる役割を担います。外部の会計監査も、会社の内部統制の状況を踏まえて、どこを重点的に調べるかを決めます。中小企業での整え方は中小企業の内部統制の4つの基本で紹介しています。
監査意見の4つの種類と監査報告書の読み方
公認会計士の監査の結論は、監査報告書の「監査意見」で示されます。監査意見は次の4種類です。
| 監査意見 | 意味 | 決算書の受け止め方 |
|---|---|---|
| 無限定適正意見 | すべての重要な点で、決算書が適正に表示されている | そのまま信頼して利用できる |
| 限定付適正意見 | 一部に不適切な処理、または確かめられなかった事項があるが、影響は限定的で、それを除けば適正 | 除外された事項の内容と影響を確かめてから利用する |
| 不適正意見 | 不適切な処理の影響が重要かつ広い範囲に及び、決算書全体として適正に表示されていない | 決算書として信頼できない |
| 意見不表明 | 重要な監査手続ができず、意見の根拠となる証拠を得られなかった | 監査人が適正かどうかを判断していない |
「条件付きで適正」は正式な用語ではない
監査意見を「条件付きで適正」と説明する資料もありますが、正式な名称は「限定付適正意見」です。また「意見不表明」は「問題がなかった」という意味ではなく、監査人が判断を示せなかったことを表します。融資や取引の判断で決算書を受け取る側は、意見の種類まで確かめましょう。
監査報告書の主な構成
監査報告書は、最初に結論である監査意見を示し、その後に根拠と責任の所在が続く構成です。
- 監査意見:決算書が適正に表示されているかどうかの結論
- 監査意見の根拠:監査の基準に従って監査を行い、意見の基礎となる十分で適切な証拠を得たこと
- 監査上の主要な検討事項(KAM):上場会社などの監査で、監査人が特に重要と判断した事項とその対応
- 経営者・監査役等の責任と監査人の責任:決算書を作る責任と、意見を述べる責任の区別
- 利害関係:会社と監査人の間に、法律で記載が求められる利害関係がないこと
公認会計士の会計監査はどう進む?流れと会社側の準備
会社が受ける会計監査は、決算日の後に一度だけ行うものではなく、期中から決算後まで1年を通して進みます。初めて監査を受ける会社は、契約の前に「ショートレビュー(予備調査)」を受け、会計処理や管理体制の課題を洗い出すのが一般的です。
- 監査契約監査人が会社と利害関係がないこと(独立性)を確かめ、監査の範囲・日程・報酬を決めて契約します。
- リスクの評価と監査計画事業の内容や内部統制を理解し、誤りが起きやすい項目を見極めて、重点的に調べる範囲と方法を決めます。
- 期中の手続内部統制が実際に運用されているかを確かめ、取引の記録を請求書や契約書などの証拠書類と突き合わせます。
- 期末の手続在庫の棚卸への立会い、銀行や取引先への残高の確認、決算整理の内容の検討などを行います。
- 審査と監査報告書の発行監査チームとは別の公認会計士による審査を経て、監査報告書を発行します。
監査報酬は、会社の規模や拠点の数、取引の複雑さ、内部統制の整い具合、初めての監査かどうかなどで決まります。帳簿や証拠書類がそろい、決算を早く締められる会社ほど監査人の作業が少なくなり、日程も組みやすくなります。
監査を受ける前に整えておきたい資料
- 試算表・総勘定元帳など、決算書の元になる帳簿
- 請求書・契約書・領収書などの証拠書類を、取引ごとにたどれる状態にしておく
- 預金・借入金・売掛金・買掛金の明細と、残高の根拠になる資料
- 在庫の明細と、棚卸の手順を定めた書類
- 固定資産台帳と減価償却の計算資料
- 取締役会・株主総会の議事録と社内規程
監査初年度に何をどの順番で準備するかは、はじめての会計監査:監査初年度の準備と1年の流れで詳しくまとめています。
町内会・自治会・PTAの会計監査はどうやる?手順とチェックリスト
町内会や自治会、PTA、子供会などの会計監査は、会則に基づいて総会で選ばれた監事(会によっては「会計監査」という役職名)が行います。簿記の資格は求められません。「帳簿の数字が通帳・現金・領収書と一致しているか」「予算や総会の決議どおりに使われているか」を順に確かめることが、役割の中心です。
会計担当者から受け取る資料
- 収支計算書(決算報告書)と、その年度の予算書
- 現金出納帳などの会計帳簿
- 預金通帳の原本と、手元にある現金
- 領収書・レシートの綴り
- 会費を集めた名簿(世帯数や会員数がわかるもの)
- 市区町村などからの補助金の交付決定通知と実績報告
- 前年度の決算報告書と、積立金・備品の一覧
監査の手順
- 繰越金のつながりを確かめる前年度の決算報告書の「次年度繰越金」と、今年度の「前年度繰越金」が一致しているかを見ます。
- 期末の残高を照合する期末日の通帳残高と、数えた手元現金の合計が、収支計算書の「次年度繰越金」と一致するかを確かめます。
- 収入を確かめる会費は会員数と会費の額から見込める金額と実際の入金を比べ、補助金は交付決定の額と入金額を照合します。
- 支出を確かめる出納帳の一件ごとに、領収書の日付・宛名・金額・ただし書きを突き合わせます。金額の大きい支出は、役員会などで承認された記録も確かめます。
- 予算と比べる予算を大きく超えた科目や、予算にない支出がないかを確かめ、理由を会計担当者に聞きます。
- 指摘事項をまとめる不一致や不備はその場で会計担当者に確認し、改善が必要な点を監査報告書に書きます。
計算例:期末残高と繰越金の照合
例えば、前年度繰越金が152,300円、今年度の収入合計が980,000円、支出合計が905,800円の場合、次年度繰越金は次のとおりです。
152,300円+980,000円−905,800円=226,500円
期末日の通帳残高が214,000円、手元現金が12,500円なら、214,000円+12,500円=226,500円で一致します。差額が出たときは、出納帳への記帳漏れや、通帳に記帳していない入出金から探します。
団体ごとに重点を置きたい点
| 団体 | 収支の特徴 | 重点的に確かめる点 |
|---|---|---|
| 町内会・自治会 | 会費と補助金が収入の中心。防犯灯の電気料金や行事の費用、雪の多い地域では除排雪の費用が大きな支出になることがある | 会費収入と世帯数の整合、補助金の使いみち、積立金の残高、大きな支出の承認 |
| PTA | 会費のほか、委員会や学年ごとに活動費を使う | 委員会ごとに渡した現金の精算、年度途中の役員交代時の引継ぎ、学校が集める教材費などとの区別 |
| 子供会 | 行事ごとに参加費を集めて精算する。保険料の支払いもある | 行事ごとの収支、立替払いの精算、現金で受け取った参加費の記録 |
あわせて、次年度の予算案が会費や補助金の見込みで無理なく賄えるかも見ておくと、総会での質問に答えやすくなります。
領収書のない支出は「支払証明」で補う
自動販売機や交通機関など領収書が出ない支出は、支払証明書(出金伝票)に日付・支払先・金額・目的を書いておきます。会長など会計担当者以外の承認を受ける運用にしておくと、確かめやすくなります。説明のつかない支出や、個人のお金との混同が見つかったときは、監査報告書に記載し、役員会で事実関係を確認します。
監査報告書の文例と総会での報告のしかた
町内会や自治会の監査報告書に決まった様式はありません。「どの期間の会計を、どの資料で確かめ、どういう結果だったか」を書き、日付と監事の署名を入れて、総会資料の決算報告のあとに添えるのが一般的です。
具体例:会計監査報告書の文例
会計監査報告書
○○町内会 会長 ○○○○ 様
私たちは、○○町内会の令和○年度(令和○年○月○日から令和○年○月○日まで)の会計について、収支計算書、現金出納帳、預金通帳、領収書その他の関係書類を照合し、監査を行いました。
その結果、収支計算書は会計帳簿および預金残高・現金残高と一致し、会計は適正に処理されていることを認めます。
令和○年○月○日 監事 ○○○○(署名) 監事 ○○○○(署名)
指摘事項がある場合は、結果の文に続けて「ただし、次の点について改善を求めます」と書き、「領収書のない支出は、支払証明書による承認の手続きを徹底すること」のように、具体的な改善点を箇条書きにします。指摘は会計担当者を責めるためではなく、次の年度の会計をよくするための記録です。
総会での報告の話し方
- 最初に「会計は適正に処理されていました」と結論を伝える
- いつ、誰が、どの資料を確かめたかを一言で添える
- 指摘事項があれば、内容と改善のお願いを具体的に伝える
- 「照合」「証憑」などの言葉は、「突き合わせ」「領収書」と言い換える
- 細かな数字の質問は、会計担当者と分担して答える
具体例:総会での監査報告のあいさつ
「監事の○○です。令和○年度の会計監査の結果をご報告します。○月○日に監事○名で、収支計算書と預金通帳、現金出納帳、領収書を突き合わせて確認しました。その結果、会計は適正に処理されていることを確認しましたので、ご報告いたします。」
よくある質問
監事を頼まれましたが、簿記の知識がなくても務まりますか?
町内会などの監査で求められるのは、帳簿の数字と通帳・現金・領収書が一致しているか、予算どおりに使われているかの確認で、簿記の資格は要りません。わからない処理は会計担当者に説明を求め、確かめた内容をメモに残しておくと、総会で質問を受けたときにも答えられます。
会計監査はいつ行えばよいですか?
会計年度が終わって帳簿を締めた後、総会資料を印刷する前に行います。指摘があった場合に収支計算書を直す時間も見込み、総会の日から逆算して日程を決めましょう。
会計担当者と監事が同じ世帯でも問題ありませんか?
会則で禁止されていなくても、避けたほうが無難です。監査は会計担当者から独立した立場で確かめることに意味があり、同じ世帯や近い関係の人が担当すると、会員から見た監査の信頼性が下がります。
税理士が関わった決算書なら、会計監査を受けたことになりますか?
なりません。税理士の主な業務は、税法に沿って税額を計算し、申告書を作ることです。決算書が適正かどうかについて監査意見を述べる法定監査は、公認会計士と監査法人だけが行えます。
監査で不正の疑いが見つかったらどうすればよいですか?
一人で判断せず、まず会長や役員会に報告し、会計担当者から事情を聞いて事実を確かめます。総会では確認できた事実と今後の対応を報告し、推測で個人を責める表現は避けます。金額が大きい場合や返還を求める場合は、弁護士など専門家への相談も検討します。
まとめ
会計監査は、決算書が正しく作られているかを独立した立場で確かめ、意見を示す手続きです。会社の法定監査は公認会計士・監査法人が行い、結果は4種類の監査意見で示されます。町内会や自治会の監査は、繰越金のつながり・期末残高・領収書・予算の4点を順に照合すれば、要点を押さえた確認ができます。会社として監査への対応や経理体制の整備を考えるときは、決算期の前から準備を始めましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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- その場でご契約を迫ることはありません
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出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂
