決算書の活用方法|初心者が見るべき数字と融資・経営改善への生かし方

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決算書の活用は、貸借対照表と損益計算書で「どれだけ稼いだか」「お金と借入金がどれだけあるか」を確かめ、前期と比べることから始まります。流動比率や自己資本比率で安全性を確認しておけば、融資の準備や経費の見直しにもそのまま使えます。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

決算書は「過去の成績表」として眺めるのではなく、3期分を並べて資金繰り・融資・経営改善の判断材料として読むと役に立ちます。

  • 中小企業の決算書の中心は貸借対照表と損益計算書。キャッシュフロー計算書は作成義務がない
  • 最初に見るのは売上高・粗利・営業利益・現預金と借入金・純資産の5つ
  • 流動資産が流動負債より少ないと、1年以内に払う負債を流動資産だけで賄えない
  • 金融機関は返済能力と純資産に加え、役員貸付金などの資産の中身を見る
  • 個人事業主は青色申告決算書の貸借対照表まで整えると、控除と融資の両方に生きる
目次

決算書とは?中小企業と個人事業主の「決算書一式」の中身

決算書は、会社や個人事業の1年間の成績と、期末時点の財産・借金の状態をまとめた書類です。株式会社は定時株主総会で承認を受け、法人税の申告書に添付して税務署へ提出します。個人事業主は、青色申告決算書(白色申告は収支内訳書)を確定申告書と一緒に提出します。

書類わかること作成する人
貸借対照表期末時点の資産・負債・純資産(財政状態)法人。個人は青色申告で65万円・55万円の控除を受ける場合など
損益計算書1年間の収益・費用・利益(経営成績)法人・個人事業主
株主資本等変動計算書資本金や利益剰余金など純資産の1年間の増減法人(会社)
個別注記表採用した会計方針などの注記法人(会社)
勘定科目内訳明細書預金・売掛金・借入金などの相手先別の内訳法人(法人税の申告書に添付)
キャッシュフロー計算書1年間の現金の増減とその理由上場企業などは作成義務あり。中小企業は任意
決算書を構成する主な書類(2026年10月時点)

キャッシュフロー計算書は、上場企業などに作成が義務づけられた書類で、多くの中小企業は作っていません。その場合も、貸借対照表の現預金・売掛金・在庫・借入金を前期と比べれば、お金の流れのおおよそはつかめます。

決算書はまずどこを見る?初心者が押さえる5つの数字

決算書を細かい科目から読み始めると迷います。最初は次の5つの数字だけを、前期・前々期と並べて見ます。1期分だけでなく推移で見ることが、決算書を活用するいちばんのコツです。

見る数字決算書の場所何がわかるか
売上高損益計算書の一番上事業の規模と伸び。前期より増えたか減ったか
売上総利益(粗利)売上高から売上原価を引いた利益商品・サービスそのものの稼ぐ力。値上げや仕入値の変化が表れる
営業利益粗利から販売費及び一般管理費を引いた利益本業の利益。人件費や家賃などの固定費を払った後に残るか
現預金と借入金貸借対照表手元資金の余裕と、借入金の重さ
純資産貸借対照表の右下これまでの利益の蓄積。マイナスなら債務超過
初めて決算書を読むときに押さえる数字

損益計算書は5つの利益を順に見る

損益計算書には、売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益の5段階の利益があります。経常利益は、本業の利益に利息の受け払いなど本業以外の損益を加えたもので、金融機関がよく見る数字です。

土地の売却益や災害による損失など臨時の損益は、特別利益・特別損失に入ります。当期純利益だけで本業の好不調を判断せず、営業利益と経常利益の推移をあわせて確認します。

貸借対照表は「1年以内」で区切って読む

貸借対照表の資産と負債は、1年以内に現金化・支払いをする「流動」と、それ以外の「固定」に分かれています。流動資産と流動負債を比べると短期の支払能力が、純資産と総資産を比べると財務の安定性がわかります。

財務指標で安全性と収益性をどう判断する?

5つの数字を確認したら、割り算で指標にして見ます。指標にすると規模の違う会社や、売上が変わった前期とも比べやすくなります。

計算例:A社(製造業・年商1億円)の財務指標

例えば、A社の決算書が、貸借対照表は流動資産3,000万円・固定資産2,000万円・流動負債2,000万円・固定負債1,500万円・純資産1,500万円、損益計算書は売上高1億円・売上原価7,000万円・営業利益1,000万円だったとします。総資産は3,000万円+2,000万円=5,000万円、粗利は1億円−7,000万円=3,000万円です。

  • 流動比率:3,000万円÷2,000万円=150%
  • 自己資本比率:1,500万円÷5,000万円=30%
  • 売上高営業利益率:1,000万円÷1億円=10%
  • 売上高総利益率:3,000万円÷1億円=30%

仮定の数字による概算です。実際の判断には、複数期の推移や同業種との比較が必要です。

指標計算式わかること見方のポイント
流動比率流動資産÷流動負債短期の支払能力流動資産が流動負債より少ないと、1年以内に払う負債を流動資産だけで賄えない
自己資本比率純資産÷総資産財務の安定性前期より下がっていないか。純資産がマイナスなら債務超過
売上高営業利益率営業利益÷売上高本業の収益性業種による差が大きい。同業種や自社の過去と比べる
売上高総利益率売上総利益÷売上高商品・サービスの採算仕入値の上昇や値引きの影響が出やすい
債務償還年数借入金÷返済に回せるお金(税引後の利益+減価償却費など)借入金を何年で返せるか計算方法は金融機関によって異なる
主な財務指標と見方(目安の水準は業種・規模で大きく異なる)

指標は1期分だけで判断せず、前期・前々期との比較で見ます。自己資本比率が30%あっても、前期の40%から下がっているなら、赤字や借入金の増加など資金繰りに何らかの変化が起きているサインです。

黒字でもお金が足りなくなることがある

利益が出ていても、売掛金の回収が遅れたり、在庫が増えたり、借入金の返済額が利益より多かったりすると、手元の現預金は減ります。資金が詰まれば、黒字のまま倒産する黒字倒産に至ることもあります。損益計算書の利益だけでなく、貸借対照表の現預金・売掛金・在庫・借入金の増減を前期と比べて確認します。

決算書を融資に生かすには?金融機関が見るポイント

金融機関は決算書から、返済できるだけの利益とお金を生んでいるか、財務の安定性に問題がないかを見ます。きちんと記帳された決算書と、数字の増減を説明できる準備があれば、融資の相談を進めやすくなります。

  • 経常利益が出ているか。赤字なら理由と改善策を説明できるか
  • 毎年の借入金の返済額を、利益と減価償却費で賄えているか
  • 純資産がマイナス(債務超過)になっていないか
  • 役員への貸付金や仮払金、回収の見込みが薄い売掛金が残っていないか
  • 勘定科目内訳明細書の残高が、通帳や借入金の返済予定表と一致しているか
  • 決算から時間がたっている場合に、直近の試算表を出せるか

役員への貸付金や仮払金が多いと、金融機関はその分を回収できない資産とみなして評価を下げることがあります。決算の前に精算できるものは整理しておきます。融資を見据えた決算書の整え方は、銀行融資を有利に進める決算書の作り方と格付け対策で詳しく取り上げています。

札幌市・北海道の制度融資を申し込む場合

札幌市の融資制度(マル札資金など)や北海道の制度融資を申し込むときも、決算書や試算表をもとに返済の見通しを確認されるのが一般的です。札幌市の融資は、2026年10月1日以降に実行される分から利率が0.3%上乗せされているため、申込みの前に条件を窓口で確認してください。

決算書のどこを金融機関に説明すべきかは、借入の目的と財務の状況で変わります。決算書をお持ちいただければ、初回無料で一緒に確認できます。

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経営改善にどう生かす?固定費・変動費と月次の数字

決算書は年に1回しか作られないため、経営改善に使うなら毎月の試算表と組み合わせます。決算書で見つけた課題を、翌期の目標と毎月の確認に落とし込むのが基本の流れです。

  1. 3期分を並べる売上高・粗利・営業利益・現預金・借入金を前期・前々期と並べ、増減の大きい科目を探します。
  2. 費用を固定費と変動費に分ける仕入や外注費など売上に比例する変動費と、人件費や家賃など売上に関係なくかかる固定費に分けます。
  3. 損益分岐点を出す利益がゼロになる売上高を計算し、今の売上との差がどれだけあるかを確認します。
  4. 翌期の目標を決める粗利率・固定費・借入金の返済額から、必要な売上と利益を逆算します。
  5. 毎月の試算表で確かめる月次の数字を目標と比べ、ずれの大きい科目は早めに手を打ちます。

計算例:A社の損益分岐点売上高

例えば、A社の売上原価7,000万円を変動費、販売費及び一般管理費2,000万円を固定費とみなします。売上から変動費を引いた利益の割合(限界利益率)は3,000万円÷1億円=30%なので、損益分岐点売上高は2,000万円÷30%=6,666万円(1万円未満切り捨て)です。今の売上1億円は、損益分岐点を約3,300万円上回っています。

高コストの原因を探すときは、売上に対する割合が前期より大きくなった費用から見ます。月次の数字を使った資金繰り表や予算管理の進め方は、中小企業の財務コンサルティングガイドで紹介しています。

個人事業主は青色申告決算書をどう読む?

個人事業主の決算書にあたるのが青色申告決算書です。事業所得用(一般用)のほか、不動産所得用・農業所得用などの様式があり、損益計算書に加えて月別の売上、減価償却費の計算、貸借対照表などを記載します。

個人の貸借対照表には、法人にはない「元入金」「事業主貸」「事業主借」という科目があります。事業用の口座から生活費を出したときは事業主貸、個人のお金を事業に入れたときは事業主借で処理し、翌年の元入金に集約します。事業主貸が多い年は、事業の利益の多くを生活費に回していることを示します。

青色申告特別控除は、令和8年分までは最大65万円です。正規の簿記で記帳して期限内に申告し、電子帳簿保存かe-Taxでの提出を行うことが要件です。令和9年分からは、仕訳帳・総勘定元帳を電子帳簿保存法の要件で保存するなどの要件を満たすと75万円になります。貸借対照表まで整えておくと、控除だけでなく融資の際にも財産と借入金の状況を説明しやすくなります。

無料
ツール
青色申告と白色申告の節税効果を比較する所得を入れるだけで、青色申告特別控除による所得税・住民税の差額を試算できます。計算する

決算書を作る・提出するときの注意点は?

決算書は、日々の記帳の正確さ以上には正確になりません。よくある失敗と防ぎ方は次のとおりです。

よくある失敗起きること防ぎ方
決算の直前に1年分をまとめて記帳する証憑の紛失や入力ミスで数字が合わない毎月、通帳と帳簿の残高を合わせる
現預金・借入金の残高を照合しない記帳漏れや二重計上が残る期末残高を通帳・残高証明書・返済予定表で確認する
在庫を数えない利益が実態とずれる期末に数量と単価を記録する
減価償却費や未払費用を計上し忘れる利益が過大になる決算整理の項目を毎年同じ手順で確認する
提出期限の直前に作業を始める確認の時間がなく、ミスが残る決算月より前から資料を集める
決算書の作成で起きやすい失敗と防ぎ方

提出期限は、法人は事業年度終了の日の翌日から2か月以内(延長の特例を受けると原則1か月延長)です。個人事業主の確定申告は毎年3月15日までで、令和8年分は2027年2月16日(火)〜3月15日(月)です。資本金1億円超の法人などは、電子申告(e-Tax)が義務になっています。

決算の前には、次の資料をそろえておきます。

  • 売上・仕入の請求書と入金記録
  • 預金通帳と借入金の返済予定表
  • 経費の請求書・領収書(電子データを含む)
  • 固定資産の取得・売却の資料
  • 棚卸表(在庫の数量と金額)

自分で作るか専門家に頼むかは、事業の規模と経理にかけられる時間で判断します。当事務所では決算だけのスポット依頼はお受けしておらず、月々の記帳の確認から決算・申告、決算書の読み方のご説明までを、会計・税務顧問として継続的に支援しています。

よくある質問

自社の過去の決算書が手元にない場合はどうすればいいですか?

まず、申告を依頼していた税理士や、申告書の控えを保管している担当者に確認します。e-Taxで申告していれば、送信した申告データを確認できる場合があります。見つからない場合は、税務署で過去に提出した申告書等の閲覧を申請する方法もあります。

赤字の決算書だと融資は受けられませんか?

赤字というだけで一律に断られるわけではありません。赤字の理由が一時的なものか、改善の見通しがあるかが見られます。理由と対策、今後の資金繰りの見通しを資料にまとめ、数字で説明できるようにしておきます。

エクセルのテンプレートで決算書を作ってもいいですか?

管理用の資料として使うことはできます。ただ、青色申告で65万円や55万円の控除を受けるには、正規の簿記(複式簿記)による帳簿が必要です。会計ソフトや国税庁の確定申告書等作成コーナーを使うと、帳簿と決算書の数字がつながり、転記ミスも防げます。

自治会やサークルの決算報告書も同じ考え方で作れますか?

目的が違うため、形式は異なります。自治会などでは収支計算書の形で、会費・寄付金・イベント収入などの収入と、行事費・管理費などの支出、次期への繰越金を示すのが一般的です。予算や前年の実績と並べると、会員にも分かりやすくなります。

取引先から決算書の提出を求められたら、どう対応しますか?

提出の目的と、必要な範囲(何期分か、貸借対照表と損益計算書だけか、内訳明細書も含むか)を確認してから渡します。取引の審査に使われることが多いため、数字の増減を簡潔に説明できるよう準備しておくと、判断がスムーズになります。

まとめ

決算書は、貸借対照表と損益計算書の5つの数字を前期と並べて読むだけでも、資金繰りの変化や本業の稼ぐ力がつかめます。流動比率や自己資本比率で安全性を確かめ、融資の前には返済能力と資産の中身を説明できるようにしておきましょう。月次の試算表と組み合わせれば、決算書は翌期の経営改善の材料になります。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り

出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂

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