買収候補の探し方|ロングリストの作り方と情報源・絞り込み手順

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買収候補の探し方の基本は、最初から1社に絞らず、条件に合いそうな会社を幅広く並べた「ロングリスト」を作り、情報開示を受けながら段階的に絞り込むことです。情報源はマッチングサイト、仲介会社・FA、金融機関、税理士、公的機関、取引先網、自社での洗い出しの7系統があり、性格の違いを踏まえて併用します。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

買収の目的と条件を先に決め、複数の情報源から集めた候補をロングリストで一元管理し、ノンネームシート→秘密保持契約→企業概要書の順に情報を深めながらショートリストへ絞り込みます。

  • 条件は「目的・業種・所在地・規模・投資額・譲れない条件」で整理し、最初はやや広めに設定する
  • 公開型(マッチングサイト)と紹介型(仲介会社・金融機関・税理士・公的機関)を併用して出会いを増やす
  • 管理表には入手元・入手日・情報の段階・除外理由まで記録する
  • 絞り込みは財務・事業・人・譲渡条件の4つの観点で行い、決算書は「実態」に直して比べる
  • 仲介会社・FAと契約する前に、手数料の体系・専任条項・テール条項を確認する
目次

ロングリストとは?ショートリストとの違い

ロングリストとは、買収候補になり得る会社を、業種・所在地・規模感といった外形的な条件で幅広く並べた一覧です。この段階では社名や詳しい財務内容が分からないことも多く、売り手が社名を伏せて出す概要資料(ノンネームシート)や公開情報をもとに候補を集めます。

そこから関心の高い会社と秘密保持契約を結び、詳しい資料の開示を受けて、具体的に検討・打診する少数の候補に絞ったものがショートリストです。段階ごとに、手元にある情報と判断する内容が変わります。

段階手元にある情報主に判断すること次のアクション
ロングリストノンネームシート、ホームページなどの公開情報業種・地域・規模・譲渡理由が自社の条件に合うか関心の表明、秘密保持契約(NDA)の締結
ショートリスト企業概要書、決算書、事業内容の資料買収の目的に合うか、財務・事業・人に大きな問題がないかトップ面談、意向表明書の提出
交渉先面談の内容、追加資料、デューデリジェンスの結果価格・スキーム・引継ぎの条件基本合意、デューデリジェンス、最終契約
買い手から見た候補の段階(一般的な流れ。案件によって順番が前後します)

初めての買収では、最初に紹介された1社と交渉を進めたくなりがちです。しかし候補が1社しかないと、条件面で譲歩せざるを得なくなったり、破談になったときに振り出しに戻ったりします。複数の候補を比べることで、価格や条件が妥当かどうかを判断する物差しも持てます。

用語メモ

  • ノンネームシート:社名を伏せ、業種・地域・規模・譲渡理由などを簡潔にまとめた売り手の概要資料
  • 企業概要書(IM):秘密保持契約の締結後に開示される、事業・財務・組織の詳しい説明資料
  • 意向表明書(LOI):買い手が買収の意向と、価格の目安・スキーム・スケジュールなどを示す書面
  • デューデリジェンス(DD):買収の前に財務・税務・法務・労務などを調べ、リスクと価値を確かめる調査

候補探しの前に決めておく条件は?

候補探しを始める前に、自社がどのような会社を求めているのかを整理しておくと、情報源への伝え方も絞り込みの判断も速くなります。出発点は買収の目的です。人材の獲得が目的なら技術者の人数や年齢構成、販路の拡大が目的なら商圏と取引先というように、目的によって見るべき項目が変わります。

整理の軸決めること決め方のポイント
買収の目的人材・技術の獲得、販路・商圏の拡大、新規事業への参入、仕入先・外注先の確保など目的は1〜2個に絞り、優先順位をつける
業種・事業内容同業か、隣接する業種か自社の強みと組み合わせて伸ばせる部分(シナジー)を言葉にしておく
所在地札幌市内に限るか、道内全域か、道外も含めるか買収後に自社から管理・支援できる距離かどうかで決める
規模感売上高・従業員数・拠点数のおおよその範囲自社の管理体制で引き受けられる大きさにする
投資額と資金自己資金と借入でどこまで出せるか金融機関への相談を候補探しと並行して始める
譲れない条件許認可の引継ぎ、主要取引先の継続、従業員の雇用、前経営者の引継ぎ期間など満たさない候補は早い段階で外す
条件整理の軸(最初はやや広めに設定し、情報を集めながら明確にします)

条件を厳しくしすぎると候補が極端に少なくなり、緩すぎると絞り込みに時間がかかります。最初はやや広めの条件でロングリストを作り、情報を集めながら条件を明確にしていく進め方が現実的です。

条件を1枚の「買収方針シート」にまとめる

仲介会社や金融機関に相談するときは、目的・条件・投資額の目安・社内の判断者・希望する時期を1枚にまとめて渡すと、紹介される候補の精度が上がります。

売り手も「誰に会社を託すか」を見ています。自社の会社概要と直近の決算書もあわせて準備しておくと、紹介や面談の話が進みやすくなります。

買収資金を借入でまかなう場合は、返済の原資になる買収後の利益と資金繰りの見通しが問われます。金融機関との進め方は融資の申込みと資金調達の進め方で整理しています。

買収候補はどこで探す?7つの情報源と使い分け

候補企業の情報は、自分で検索する「公開型」、窓口から持ち込まれる「紹介型」、狙う会社を自社で洗い出す「自社発掘型」の3つのルートから集まります。情報の量と質、競合する買い手の多さがそれぞれ違うため、複数を組み合わせて使います。

情報源情報の特徴向いている使い方注意点
M&Aマッチングサイト売却希望企業の匿名情報(ノンネーム情報)を自分で検索できる小規模な案件を探す、業種ごとの売り案件の傾向をつかむ競合する買い手が多い。掲載内容は売り手の申告で、裏付けは後で確認する
M&A仲介会社・FA非公開の案件を紹介してもらえることがある条件整理から交渉まで専門家に伴走してほしい契約の形と手数料の体系で、支援者の立場が変わる(次の項目)
金融機関(取引銀行・信用金庫など)事業承継に悩む取引先の情報を持っていることがある買収資金の融資の相談と一体で進めたい紹介を受けるには、自社の財務内容と買収方針を伝えておく必要がある
顧問税理士・会計事務所関与先の事業承継の悩みを把握していることがある第三者として間に入ってもらう守秘義務があり、紹介は売り手の同意が前提になる
公的機関(事業承継・引継ぎ支援センター、商工会議所など)地域の事業承継の相談窓口で、公的な立場から情報提供を受けられる中立的な窓口に相談しながら進めたい紹介の範囲や進め方は窓口ごとに異なる
業界団体・取引先のネットワーク同業・関連業種のつながりから、直接話が持ち込まれることがある業界内での評判や実態を知ったうえで検討したい話が広まりやすいため、秘密の扱いに注意する
自社での洗い出し(直接の打診)取引先・仕入先・同業者などから、狙いたい会社を自社でリストにする欲しい会社が具体的に決まっている相手は売却を考えていないことが多く、打診のしかたに配慮が要る
主な情報源の比較(2026年10月時点の一般的な特徴)

地方では、公開されているマッチングサイトの情報だけでなく、金融機関や商工会議所、顧問税理士など地域に根ざしたネットワークを通じて話が持ち込まれることも少なくありません。複数の窓口に買収方針を伝えておくことで、候補に出会う機会を増やせます。

仲介会社とFAの違いと、契約前に確認すること

仲介会社は売り手と買い手の間に立ち、双方と契約して成約を目指します。FA(ファイナンシャル・アドバイザー)は一方とだけ契約し、その依頼者の利益のために助言・交渉します。仲介は双方の事情を調整しやすい反面、利益相反(一方に有利にすると他方に不利になる関係)が生じ得るため、中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」でも、支援者が依頼者に説明し適切に対応することが求められています。

  • 手数料の体系(着手金・月額報酬・中間金・成功報酬の有無と、それぞれが発生する時点)
  • 成功報酬の基準となる金額の定義(株式の譲渡価額か、負債を含めた総額か)
  • 専任条項(他の仲介会社・FAへの依頼を制限するか、その期間)
  • テール条項(契約終了後に、紹介を受けた相手と成約した場合にも手数料がかかるか、その期間)
  • 売り手への直接の接触を禁じるなど、交渉中のルール
  • 中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録している支援機関か

自社で候補を洗い出すときの注意

取引先や仕入先、外注先、同業者の中から「この会社と一緒になれたら」という候補を自社で書き出す方法もあります。業界団体の会員名簿や展示会の出展者一覧のほか、許可が必要な業種の一部では行政が許可業者の情報を公表しており、地域と業種で候補を拾う手がかりになります。

売却を考えていない会社への打診は慎重に

いきなり買収を持ちかけると、相手の警戒を招いたり、取引関係が悪くなったり、社内外にうわさが広がったりするおそれがあります。打診は経営者本人に限り、金融機関や顧問税理士など信頼できる第三者を通じて意向を確かめる方法も検討します。

ロングリストの管理表には何を書く?

候補企業が増えてきたら、一覧表で進捗を管理すると混乱を防げます。表計算ソフトで十分ですが、社名が分かる前から管理番号で整理し、誰がどの情報を持っているかを明確にしておくことが大切です。

項目記入する内容記録する理由
管理番号・仮称「A-01 道央・設備工事業」のような仮の名前社名を出さずに社内で話せるようにする
業種・所在地・規模感事業内容、エリア、売上高・従業員数のおおよその範囲条件との一致を一目で確認する
入手元・入手日どの窓口から、いつ紹介を受けたか同じ案件が複数の窓口から届いたときの整理と、手数料の取り決めの確認に使う
情報の段階ノンネーム/NDA締結済み/概要書受領/面談済み受け取った資料と、次の判断に足りない情報を把握する
評価A(優先して検討)・B(保留)・C(除外)判断の基準を社内でそろえる
次のアクション・期限概要書の依頼、NDAの締結、面談の調整など返答の遅れで機会を逃さない
除外理由規模が合わない、許認可を引き継げない など後で条件を見直すときの材料にする
ロングリスト管理表の項目例

ロングリストの段階では、多くの候補が条件不一致で除外されていくのが通常です。除外の理由を残しておけば、候補が集まらないときに条件のどこを緩めるべきかが見えます。件数を追うより、自社の買収目的に照らして筋の良い候補を見極める視点が重要です。

開示を受けた資料の扱い

秘密保持契約にもとづいて受け取った企業概要書や決算書は、閲覧できる人を限定して管理します。検討をやめたときは契約に従って返却・廃棄し、その記録も残します。管理表そのものも社外秘として扱います。

ショートリストへの絞り込みは何をどの資料で判断する?

ロングリストからショートリストへは、開示される情報が増えるのに合わせて、段階的に判断を深めていきます。一般的な流れは次のとおりです。

  1. ノンネームシートで一次選別業種・地域・規模・譲渡理由・希望するスキーム(株式譲渡か事業譲渡か)を、自社の条件と照らし合わせます。
  2. 秘密保持契約を結ぶ関心の高い候補に絞って締結します。開示の範囲、目的外利用の禁止、返却・廃棄の義務を確認します。
  3. 企業概要書と決算書で二次評価下の表の4つの観点で、買収の目的に合うか、大きな問題がないかを確かめます。
  4. トップ面談売却の理由、譲渡後の関与の希望、従業員や取引先にいつ伝えるかの考えを、経営者本人から聞きます。
  5. 意向表明書を出す価格の目安、スキーム、スケジュール、デューデリジェンスで確認したい範囲を示し、交渉先として選ばれることを目指します。
観点確認する資料初期段階で見るポイント
財務決算書・勘定科目内訳書・法人税申告書(3期分程度)売上と利益の推移、借入金と返済の負担、役員報酬やオーナー個人との取引、純資産の中身(回収できない売掛金・滞留在庫など)
事業企業概要書、取引先別・商品別の売上特定の取引先への依存、許認可を引き継げるか、設備の更新時期
人組織図、社員の構成(匿名)、社長の担当業務社長や特定の社員への依存、年齢構成、未払いの残業代などの労務リスク
譲渡条件企業概要書、トップ面談希望価格の根拠、株式譲渡か事業譲渡か、経営者の個人保証や担保の扱い、引継ぎの期間
二次評価の観点(詳しい検証はデューデリジェンスで行います)

決算書は「実態」に直して比べる

中小企業の決算書には、オーナー個人の費用、相場と離れた役員報酬、一時的な利益や損失が含まれていることがあります。そのままでは候補同士の収益力を比べられないため、初期段階でも大まかに調整して見ておくと、絞り込みの判断がぶれにくくなります。

数字の裏付けは、基本合意の後に行う財務デューデリジェンスで確かめます。調査の範囲と進め方は財務デューデリジェンス(財務DD)の進め方で詳しく説明しています。業種によって見るべき論点も変わり、例えば美容室・サロンのM&Aで確認したい財務論点のように、人や顧客への依存の度合いが価値を左右する業種もあります。

売り手がどの段階で何を開示するのかを知っておくと、資料の依頼のしかたも工夫できます。売り手側の準備の流れはデータルームの作り方と段階的な開示の実務が参考になります。

候補企業の決算書の読み方や、ショートリストへの絞り込みで迷ったら、公認会計士の目で確認できます。初回無料でご相談いただけます。

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札幌・北海道で候補を探すときに意識したいこと

北海道は地域ごとに経済圏が分かれ、拠点間の移動にも時間がかかります。所在地の条件は、候補の数だけでなく、買収後に自社からどれだけ目を配れるかを左右します。「本社から日帰りで通えるか」「既存の拠点から応援を出せるか」など、具体的な基準で決めておくと判断がぶれません。

地域の金融機関や商工会議所、国が各都道府県に設けている事業承継・引継ぎ支援センターなど、地域に根ざした窓口には、後継者のいない会社の相談が持ち込まれることがあります。買収方針を伝えておき、紹介を受けられる関係をつくっておくことが、道内で候補に出会う機会を広げます。

冬の季節変動を確認する

冬に工事量や来客が落ちる業種では、年単位の決算書だけでは資金繰りの波が見えません。候補を絞り込む段階で月次の売上推移を確認し、除雪費や暖房費など冬の費用も含めて、買収後に必要な運転資金を見積もっておきます。

候補探しにかかる費用と使える補助金は?

買収の検討では、マッチングサイトの利用料、仲介会社・FAの報酬(着手金・月額報酬・中間金・成功報酬など)、デューデリジェンスの費用、契約書の作成費用などがかかります。金額は支援機関や案件の規模で大きく変わるため、見積りの段階で「どの時点で、何に対して、いくらかかるか」を一覧にしてもらうと比較しやすくなります。

費用の一部には、中小企業庁の事業承継・M&A補助金を使える場合があります。2026年10月時点では16次の公募が案内されており、受付は2026年10月2日〜11月6日17時(予定)、申請は電子申請システムのJグランツで行います。

枠買い手に関係する主な用途上限額(16次)
専門家活用枠M&Aの仲介・FA・デューデリジェンスなど専門家の活用にかかる費用450万〜2,000万円(類型・条件で異なる)
PMI推進枠買収後の統合(PMI)の取組みにかかる費用150万〜1,000万円(類型・条件で異なる)
事業承継・M&A補助金(16次)のうち買い手に関係する主な枠(2026年10月時点。詳細は最新の公募要領で確認)

補助金は後払い、契約の時期にも決まりがある

補助金は事業を実施して報告した後に支払われるのが原則で、採択されても入金までの資金は自社で用意します。対象となる経費の契約・支払の時期には決まりがあるため、仲介会社・FAと契約する前に最新の公募要領を確認します。仲介・FAの費用は、登録されたM&A支援機関によるものであることなどの要件もあります。

よくある質問

買い手も仲介会社と契約しないと、案件を紹介してもらえませんか?

マッチングサイトや公的機関、金融機関を通じて候補に出会う方法もあり、仲介会社との契約は前提ではありません。ただし非公開の案件は、仲介会社やFAと契約した買い手にだけ紹介されることがあります。契約する場合は、手数料の体系や専任条項を確認してからにします。

ノンネームシートから社名の見当がついたら、直接連絡してもよいですか?

避けるべきです。売り手は従業員や取引先に知られないよう社名を伏せており、直接の連絡は信頼を損ないます。仲介契約や秘密保持契約で直接の接触が禁じられていることも多く、交渉から外される原因になります。

個人で会社を買う場合も、進め方は同じですか?

候補を広く集めて段階的に絞る流れは同じです。個人の場合は、自己資金と借入の計画、経営の経験、借入に伴う個人保証の扱いが特に問われます。売り手は「誰に託すか」を重視するため、経歴と買収後の事業計画を書面にしておくと話が進みやすくなります。

買収資金の目途が立つ前に、候補探しを始めてもよいですか?

並行して進めるのが現実的です。意向表明書を出す段階では、資金の裏付けを問われることがあります。候補探しを始めた時点で取引金融機関に買収方針を伝えておくと、融資の相談と候補の紹介を一体で進められる場合があります。

まとめ

買収候補は、目的と条件を先に整理し、マッチングサイト・仲介会社・金融機関・税理士・公的機関など複数の情報源から集めてロングリストで一元管理します。ノンネームシート、秘密保持契約、企業概要書と情報が深まるのに合わせて、財務・事業・人・譲渡条件の観点で絞り込みます。仲介会社・FAとの契約条件や補助金の要件は、契約の前に確認しておきましょう。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り

出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂

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