粗利と営業利益の違いは、どこまでの費用を差し引くかにあります。粗利(売上総利益)は売上高から売上原価だけを引いた商品そのものの稼ぐ力、営業利益は粗利から人件費や家賃などの販管費も引いた本業全体のもうけです。値決めには粗利、会社全体の目標には営業利益を使います。
この記事の結論
会社全体の目標は営業利益で立て、その達成に必要な粗利を、商品や部門ごとの目標に落とし込むのが基本です。どちらか一方ではなく、両方を月次で並べて見ます。
- 粗利(売上総利益)=売上高−売上原価。商品・サービスそのものの稼ぐ力を示す
- 営業利益=粗利−販売費及び一般管理費。人件費や家賃まで含めた本業のもうけを示す
- 値決め・仕入・商品構成の判断は粗利、黒字の維持や固定費の点検は営業利益で見る
- 「固定費+目標の営業利益」から、必要な粗利と売上を逆算できる
- 粗利率が下がったら値決めと仕入、営業利益率だけが下がったら固定費を点検する
粗利と営業利益はどう違うのか
粗利(売上総利益)は、売上高から売上原価(仕入や製造にかかった直接的なコスト)を差し引いた金額です。一方、営業利益は、粗利からさらに人件費や家賃、広告宣伝費といった販売費及び一般管理費(販管費)を差し引いた金額です。
つまり、粗利は「商品やサービスそのものがどれだけ稼いでいるか」を示します。営業利益は「会社を運営するための経費まで含めて、本業がどれだけ利益を残せているか」を示します。「粗利は出ているのに、なぜか手元にお金が残らない」と感じるときは、この2つの差を見ると原因の手がかりがつかめます。
| 指標 | 計算方法 | 示すもの |
|---|---|---|
| 粗利(売上総利益) | 売上高−売上原価 | 商品・サービス単体の稼ぐ力 |
| 営業利益 | 粗利−販売費及び一般管理費 | 会社の運営費まで含めた本業の利益 |
| 粗利率 | 粗利÷売上高 | 値決めや原価管理の良し悪し |
| 営業利益率 | 営業利益÷売上高 | 本業全体の効率 |
計算例:売上1,000万円の会社の粗利と営業利益
例えば、売上1,000万円、売上原価600万円、人件費や家賃などの販管費が350万円の会社です。
- 粗利:1,000万円−600万円=400万円
- 粗利率:400万円÷1,000万円=40%
- 営業利益:400万円−350万円=50万円
- 営業利益率:50万円÷1,000万円=5%
粗利は売上の4割ありますが、販管費が重いため、営業利益として残るのは売上の5%です。
このように、粗利が大きくても、販管費が重ければ営業利益はわずかしか残らないことがあります。
経常利益・当期純利益との関係
損益計算書には、粗利と営業利益のほかにも段階ごとの利益が並んでいます。粗利と営業利益は「本業」の成績で、借入金の利息や臨時の損益はその下の段階で反映されます。
| 利益 | 計算 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 売上総利益(粗利) | 売上高−売上原価 | 商品・サービスの稼ぐ力 |
| 営業利益 | 売上総利益−販売費及び一般管理費 | 本業のもうけ |
| 経常利益 | 営業利益+営業外収益−営業外費用 | 借入金の利息なども含めた、通常の活動による利益 |
| 税引前当期純利益 | 経常利益+特別利益−特別損失 | 固定資産の売却損益など、臨時の損益も含めた利益 |
| 当期純利益 | 税引前当期純利益−法人税等 | 最終的に会社に残る利益 |
粗利を目標にすべき場面
粗利は、値決めや商品構成、原価管理の良し悪しを直接反映する数字です。次のような場面では、粗利を重点的に管理すると効果的です。
- 新商品や新サービスの価格設定を検討しているとき
- 仕入先の見直しや原価削減に取り組んでいるとき
- 部門やメニューごとの採算性を比較したいとき
- 値引きやセールをするかどうかを決めるとき
粗利率(粗利÷売上高)を商品やメニューごとに把握しておくと、どの商品を優先的に売るべきかを判断しやすくなります。とくに値引きは、売上の減り方以上に粗利を減らす点に注意が必要です。
計算例:1割の値引きで粗利はどれだけ減るか
例えば、売価1,000円・原価600円の商品を、1割引きの900円で売る場合です。
- 値引き前の1個あたりの粗利:1,000円−600円=400円
- 値引き後の1個あたりの粗利:900円−600円=300円
- 同じ粗利の総額を確保するのに必要な販売数:400円÷300円=約1.33倍
売価は1割しか下がっていないのに、1個あたりの粗利は4分の1減り、販売数を3割以上増やさないと元の粗利に戻りません。
営業利益を目標にすべき場面
営業利益は、会社全体の経営効率を測る指標です。次のような場面では、営業利益を重視することが会社の実態把握につながります。
- 会社全体として黒字を維持できているかを確認したいとき
- 人件費や家賃などの固定費が経営を圧迫していないか点検したいとき
- 金融機関に業績を説明する資料を作成するとき
- 人を増やす、店舗を出すなど、固定費が増える判断をするとき
粗利がどれだけ大きくても、販管費がそれ以上に膨らんでいれば営業利益は赤字になります。会社全体が続けていけるかを判断するには、営業利益まで確認することが欠かせません。営業利益を伸ばす具体策は、営業利益を高める4つの打ち手で整理しています。
営業利益が赤字になったら、税金はどうなる?
法人税は、営業利益ではなく税務上の所得に対してかかります。所得がマイナスなら法人税はかかりませんが、法人住民税の均等割は赤字でもかかります。札幌市内で資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の法人なら、北海道と札幌市の合計で 2万円+5万円=7万円 が毎年必要です。
青色申告の法人であれば、赤字(欠損金)は翌期以降10年間繰り越し、黒字になった年の所得から差し引けます。控除できる上限は、中小法人等なら所得の全額まで、それ以外の法人は所得の50%までです。前期に法人税を納めている中小法人等は、欠損金の繰戻し還付を受けられる場合もあります。
無料ツール繰越欠損金の控除限度を自動計算する過去の赤字を、黒字になった年の所得からいくら差し引けるかを確認できます。計算する
両方を見てはじめて経営判断ができる
粗利と営業利益は、どちらか一方だけを見ていれば十分というものではありません。粗利は「稼ぐ力」、営業利益は「稼いだ力をどれだけ残せているか」を示すため、両方を並べて見ることで経営の全体像がつかめます。
例えば、粗利率は業界の水準より高いのに営業利益率が低い場合は、人件費や家賃などの固定費に見直しの余地がある可能性があります。逆に粗利率そのものが低い場合は、値決めや原価に課題があると考えられます。
| 数字の動き | 考えられる原因 | まず点検すること |
|---|---|---|
| 粗利率が下がった | 値引き、仕入値の上昇、利益の薄い商品の比率が増えた | 価格、仕入先、商品ごとの粗利率 |
| 粗利率は横ばいで、営業利益率だけ下がった | 人件費・家賃・広告費などの固定費が増えた | 販管費の科目ごとの増減 |
| 両方とも下がった | 売上の減少に固定費が追いついていない | 売上の回復策と固定費の両方 |
目標の立て方としては、まず会社全体の営業利益の目標を決め、そこから必要な粗利と売上を逆算するのが実務的です。粗利率がおおむね一定で、販管費の多くが固定費の会社なら、次の手順で計算できます。
計算例:目標の営業利益から必要な粗利と売上を逆算する
例えば、販管費(固定費)が350万円、粗利率が40%の会社が、営業利益100万円を目標にする場合です。
- 必要な粗利:350万円+100万円=450万円
- 必要な売上:450万円÷40%=1,125万円
- 現在の売上1,000万円との差:1,125万円−1,000万円=125万円
売上を125万円増やすのが難しければ、粗利率を上げる(値決め・仕入の見直し)か、固定費を下げる方法を組み合わせて目標に近づけます。
目標の立て方や、粗利と固定費のどちらに手を打つべきかは、会社の状況で変わります。試算表をもとに、初回無料で一緒に確認できます。
無料で相談する業種によって粗利率の水準は異なる
粗利率の目安は業種によって大きく異なります。仕入れて販売する卸売業や小売業は粗利率が低めになりやすく、労働力が主な原価となるサービス業は粗利率が高めになりやすい傾向があります。
もう一つの理由は、売上原価に何を入れるかが業種で違うことです。同じ人件費でも、製造や工事の現場の人件費は原価に、事務や営業の人件費は販管費に入ります。原価に入る費用が多い業種ほど、粗利率は低く出ます。
| 業種 | 売上原価の主な中身 | 粗利率の出方 |
|---|---|---|
| 卸売業・小売業 | 商品の仕入れ | 低めになりやすい |
| 製造業 | 材料費、工場の人件費・経費(製造原価) | 人件費を原価に含むぶん、低く出やすい |
| 建設業 | 材料費、外注費、現場の人件費・経費(完成工事原価) | 外注の比率で大きく変わる |
| サービス業 | 原価をほとんど計上せず、人件費を販管費に入れる会社も多い | 高めになりやすい |
自社の粗利率を評価するときは、同業他社や業界の水準と比べることが大切です。異業種の数字とそのまま比べると、実態を見誤ることがあります。業種ごとの見方は業種別 財務指標の目安で確認できます。
見落としやすいポイント
粗利と営業利益を見る習慣があっても、次の点を見落とすと判断を誤ります。
| 見落とし | 何が起きるか | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 粗利率の改善だけに満足する | 粗利率が上がっても、その裏で固定費も増えていれば営業利益は伸びていない | 粗利と営業利益の推移を並べて確認する |
| 一時的な要因を実力と誤解する | 大口案件やセールで粗利が膨らんだ月を基準に目標を立てると、翌月以降とのギャップに戸惑う | 一時的な要因を除いた数字で目標を立てる |
| 部門・商品別の粗利を見ていない | 全社の粗利だけを見ていると、不採算の部門やメニューが埋もれる | 部門・商品ごとに粗利率を出す |
| 月末の在庫を反映していない | 売上原価は「期首の在庫+仕入−期末の在庫」で決まるため、在庫を数えないと月ごとの粗利がぶれる | 月末の在庫を把握し、試算表に反映する |
在庫の数え漏れは、粗利も税金も狂わせる
期末の在庫を少なく数えると、売上原価が大きくなり、粗利と利益が実際より小さく見えます。決算では所得の計算にも直結するため、税務調査でも確認されやすい項目です。棚卸の手順と記録を毎回そろえておきましょう。
具体例|粗利率が低くても営業利益を残せるケース
粗利率の高い・低いだけでは、収益力は判断できません。固定費とのバランスで、残る営業利益は大きく変わります。
具体例:粗利率20%の卸売業
例えば、売上3,000万円、売上原価2,400万円、固定費500万円の卸売業を考えます。
- 粗利:3,000万円−2,400万円=600万円
- 粗利率:600万円÷3,000万円=20%
- 営業利益:600万円−500万円=100万円
- 営業利益率:100万円÷3,000万円=約3.3%
粗利率は20%にとどまりますが、固定費を抑えられているため、営業利益は100万円残ります。粗利率40%で営業利益50万円だった最初の計算例の会社と比べると、営業利益の金額はこちらが大きく、営業利益率はあちらが高い、という関係です。
粗利率の水準だけで収益力を判断せず、固定費とのバランスまで確認することが大切です。また、金額と率のどちらを目標にするかも、会社の方針に合わせて決めておきます。
実務ワンポイント|二つの利益を月次で並べる
粗利と営業利益は、決算のときだけでなく、月次の試算表でも並べて確認する習慣をつけると変化に早く気づけます。粗利率が下がり始めたら値決めや仕入の見直しを、営業利益率だけが下がり始めたら固定費の内容を点検します。どちらの数字が動いたかで、確認すべき対象を絞り込めます。
- 毎月同じ形式で比較するグラフや表のフォーマットを固定し、売上・粗利・粗利率・販管費・営業利益・営業利益率を同じ並びで見ます。
- 前年同月と比べる季節要因のある業種では、前月比だけでなく前年同月比も確認すると、判断を誤りにくくなります。
- 動いた理由を書き留める大きく動いた数字について、理由を一言で記録します。一時的な要因か、続く要因かを区別できます。
- 数字の変化を税理士と共有する自分だけで抱え込まず、変化の背景を専門家と一緒に確認すると、対策を検討しやすくなります。
よくある質問
粗利と売上総利益は同じものですか?
同じものです。損益計算書での正式な表示が「売上総利益」で、実務では「粗利」「粗利益」と呼ぶことが多くあります。
粗利と限界利益は何が違いますか?
限界利益は、売上高から変動費(売上に比例して増える費用)だけを引いた利益です。粗利の計算に使う売上原価には、工場の人件費や減価償却費のように売上に比例しない費用も含まれることがあります。損益分岐点を正確に出すときは、限界利益を使います。
粗利率は何%を目指せばよいですか?
業種やビジネスモデルで水準が大きく異なるため、一律の目安はありません。自社の過去の推移と同業の水準を確認したうえで、「固定費+目標の営業利益」を賄える粗利率を逆算して決めるのが現実的です。
役員報酬を増やすと、営業利益はどうなりますか?
役員報酬は販管費に含まれるため、増やせばその分だけ営業利益は減ります。社長が一人で経営する会社では、営業利益に役員報酬を足し戻した金額で本業の実力を見ると、年ごとの比較がしやすくなります。
まとめ
粗利は売上から売上原価を引いた「商品・サービス単体の稼ぐ力」、営業利益は粗利から販管費も引いた「本業全体の利益」です。値決めや原価管理の検討には粗利、会社全体の黒字化には営業利益が向いており、営業利益の目標から必要な粗利と売上を逆算すると、両者を一つの計画につなげられます。粗利率と営業利益率を月次で並べて見れば、課題が値決めにあるのか固定費にあるのかが見えてきます。
札幌の公認会計士・税理士事務所
利益の管理と月次の数字の見方のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
- 国税庁 タックスアンサー No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除
- 国税庁 タックスアンサー No.5759 欠損金の繰戻しによる還付
- 札幌市「法人市民税」
- 国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年9月24日 公開/2026年10月 計算例・目標の逆算方法・赤字の税務を追加して改訂
