「融資を受けたら、通帳に入った金額で借入金を計上していいの?」「毎月の返済額は全部経費になるの?」。借入金の仕訳は、経営者や経理担当の方が迷いやすいところです。結論からお伝えすると、借入金の仕訳が必要になるのは「借りる・返す・締める」の3つの場面だけです。毎月の返済や決算の答えは、金融機関からもらう返済予定表に書いてあります。この記事では、日本政策金融公庫と銀行(信用保証協会付き)の実際の流れに沿って解説します。保証料・収入印紙・手数料の処理から、毎月の返済、決算での確認まで、数字の例を使って順番に見ていきましょう。
1. 借入金の仕訳は「借りる・返す・締める」の3場面だけ
借入金は、知人から10万円を借りて毎月1万円ずつ返す約束と同じ仕組みです。借りた10万円は収入(売上)ではありませんし、毎月返す1万円も経費ではありません。お礼として上乗せして払う分、つまり利息だけが「お金を借りたことの費用」になります。
会計では、借りたお金は「返す義務」として貸借対照表の負債に載せます。借りるときの契約で返済期間が1年を超えるものが長期借入金、1年以内のものが短期借入金です。仕訳の左側を「借方」、右側を「貸方」といい、借入れの仕訳が必要になるのは次の3つの場面です。
図1:借入金の仕訳が必要になる3つの場面。作図=ジェイスタート会計事務所
覚えるのは3つの鉄則だけ
通帳の入金額は、保証料や手数料が差し引かれた後の金額かもしれません。借入金は契約書の借入額で計上します。
元金の返済は借入金が減るだけで、経費ではありません。経費になるのは利息の部分だけです。
決算のたびに、帳簿の借入金の残高と、返済予定表の残高を照合します。
返済予定表は「仕訳の答え」が書かれた表
融資を受けると、金融機関から返済予定表が届きます(返済明細表、償還予定表などとも呼ばれます)。毎回の返済額が元金と利息に分けて書かれ、返済後の残高まで載っています。毎月の返済の仕訳に必要な数字は、すべてこの表にあります(借入時の内訳は、契約書や融資実行の計算書で確認します)。
図2:返済予定表の各列と、仕訳で使う勘定科目の関係(後述の銀行借入の例)。作図=ジェイスタート会計事務所
利息が毎月少しずつ違うのは、利息が一般に「残高×年利率×日数÷365」の日割りで計算されるためです。月によって日数(28〜31日)が違い、残高も返済のたびに減っていきます。自分で計算し直す必要はなく、返済予定表の金額をそのまま使えば足ります。
2. 借りたときの仕訳(3つのパターン)
借入時の仕訳は、お金の入り方によって3つのパターンに分かれます。以下の例はいずれも、3月決算の会社が2026年10月に借り入れたと想定した架空の数字です。返済日は約定日で示しており、休日による引落日のずれは考えていません。
パターン1:シンプル(借りた額がそのまま入金される)
保証料や手数料が差し引かれず、借りた額がそのまま通帳に入るパターンです。仕訳の基本形なので、まずこれを押さえましょう。例として、B信用金庫から3,600,000円を借り入れたとします(36回払い・毎月の元金100,000円・年2.0%・毎月末日返済)。電子契約のため、収入印紙もかからなかったとします。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 3,600,000 | 長期借入金 | 3,600,000 |
借入の実行(対象外)
普通預金が増えると同時に、同じ額の長期借入金(返す義務)が増えます。売上でも収入でもないので、この時点では利益に影響しません。
パターン2:日本政策金融公庫
日本政策金融公庫(以下、公庫)は、信用保証協会を通さない政府系の金融機関です。融資金は全額が指定の口座に振り込まれ、保証料が差し引かれることはありません。仕訳で気をつけるのは次の2点です。
- 収入印紙:書面の借用証書で契約する場合は、借入額に応じた収入印紙が必要です(800万円なら1万円)。公庫の電子契約サービスを使えば、電子データの契約書は課税文書に当たらないため、印紙は不要です。
- 据置期間:返済の最初の数か月から数年は、利息だけを払う「据置期間」が設けられることがあります。この間の引落しは、全額が支払利息です。
例として、公庫から8,000,000円を借り入れたとします(元金均等返済で毎月の元金100,000円・年2.5%・毎月20日返済・書面で契約)。借りたときの仕訳は、据置期間があってもなくても同じです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 8,000,000 | 長期借入金 | 8,000,000 |
公庫融資金の入金(全額・対象外)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 租税公課 | 10,000 | 普通預金 | 10,000 |
借用証書の収入印紙(不課税)
返済の仕訳は、据置期間があるかどうかで変わります。同じ借入れで、据置期間がない場合と、4か月ある場合を比べてみましょう。
据置期間がない場合:第1回から元金と利息を返す
第1回から毎月100,000円ずつ元金を返し、80回(6年8か月)で返し終わります。第1回の返済額116,986円を、元金100,000円と利息16,986円に分けて仕訳します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 長期借入金 | 100,000 | 普通預金 | 116,986 |
| 支払利息 | 16,986 |
第1回:元金(対象外)/第1回:利息(非課税)
| 回 | 返済日 | 返済額 | うち元金 | うち利息 | 返済後の残高 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2026/11/20 | 116,986 | 100,000 | 16,986 | 7,900,000 |
| 2 | 2026/12/20 | 116,232 | 100,000 | 16,232 | 7,800,000 |
| 3 | 2027/01/20 | 116,561 | 100,000 | 16,561 | 7,700,000 |
| 4 | 2027/02/20 | 116,349 | 100,000 | 16,349 | 7,600,000 |
| 5 | 2027/03/20 | 114,575 | 100,000 | 14,575 | 7,500,000 |
据置期間がある場合:最初の4回は利息だけ
据置期間を4か月とすると、第1回〜第4回は利息だけを払い、元金は第5回から同じく毎月100,000円×80回で返します。据置期間を含めた返済期間は7年(84回)です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払利息 | 16,986 | 普通預金 | 16,986 |
第1回の利息(非課税)。第2回〜第4回も予定表のその回の利息額で同じ形
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 長期借入金 | 100,000 | 普通預金 | 115,342 |
| 支払利息 | 15,342 |
第5回:元金(対象外)/第5回:利息(非課税)
| 回 | 返済日 | 返済額 | うち元金 | うち利息 | 返済後の残高 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2026/11/20 | 16,986 | 0 | 16,986 | 8,000,000 |
| 2 | 2026/12/20 | 16,438 | 0 | 16,438 | 8,000,000 |
| 3 | 2027/01/20 | 16,986 | 0 | 16,986 | 8,000,000 |
| 4 | 2027/02/20 | 16,986 | 0 | 16,986 | 8,000,000 |
| 5 | 2027/03/20 | 115,342 | 100,000 | 15,342 | 7,900,000 |
据置期間中の引落しを、うっかり「借入金の返済」にしてしまうミスがよくあります。返済予定表で元金が0円の回は、支払利息だけの仕訳です。
同じ借入れでも、据置期間の有無で次のように変わります(3月決算で、初年度は2027年3月期)。
| 項目 | 据置期間なし | 据置期間あり(4か月) |
|---|---|---|
| 返済期間 | 6年8か月(80回) | 7年(84回) |
| 元金の返済開始 | 第1回(2026/11/20) | 第5回(2027/03/20) |
| 毎回の元金 | 100,000円×80回 | 100,000円×80回(第5〜84回) |
| 第1回の返済額 | 116,986円 | 16,986円(利息のみ) |
| 初年度の支払利息 | 80,703円 | 82,738円 |
| 初年度末の残高 | 7,500,000円 | 7,900,000円 |
| 利息の合計(完済まで) | 675,489円 | 742,182円 |
パターン3:銀行(信用保証協会付き)
銀行の融資や、北海道・札幌市などの制度融資(自治体が金融機関・信用保証協会と連携して行う融資)の多くには、信用保証協会の保証が付きます。信用保証協会は、中小企業の借入れを保証する公的な機関です。保証協会に払う信用保証料は、融資の実行時に銀行を通じて支払うのが基本です。このとき、保証料や手数料が融資金から差し引かれて入金されることがよくあります。
例として、A銀行から12,000,000円を借り入れたとします(60回払い・毎月の元金200,000円・年1.8%・毎月末日返済)。信用保証料330,000円、収入印紙20,000円、融資事務手数料33,000円(税込)が差し引かれ、通帳には11,617,000円が入金されました。
図3:借入額と通帳への入金額の関係。作図=ジェイスタート会計事務所
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 11,617,000 | 長期借入金 | 12,000,000 |
| 長期前払費用 | 330,000 | ||
| 租税公課 | 20,000 | ||
| 支払手数料 | 33,000 |
差引後の入金額(対象外)/信用保証料(非課税)/収入印紙(不課税)/融資事務手数料(課税10%)
ポイントは、長期借入金を通帳の11,617,000円ではなく、契約書の12,000,000円で計上することです。入金額で計上すると、借入金が383,000円少ないまま返済が進み、完済間近に借入金がマイナスになって初めて気づくことになります。
保証料や手数料が入金とは別に引き落とされた場合は、明細ごとに「長期前払費用/普通預金」「支払手数料/普通預金」と仕訳します。どちらの形でも、借入金は12,000,000円です。
保証料は「前払費用」か「長期前払費用」か
信用保証料は、保証してもらう期間の分をまとめて前払いするお金です。払った年に全額を経費にするのではなく、期間の経過に合わせて少しずつ費用(支払保証料。支払手数料で処理する会社もあります)にします。どの科目で受けるかは、保証期間の長さで決まります。
図4:信用保証料の勘定科目の決め方。作図=ジェイスタート会計事務所
パターン3の銀行借入の保証料330,000円は、保証期間60か月分の一括前払いなので長期前払費用です。1か月あたり330,000円÷60か月=5,500円で、3月決算なら初年度(10月〜3月の6か月)は33,000円を費用にします。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払保証料 | 33,000 | 長期前払費用 | 33,000 |
当期6か月分=330,000÷60か月×6(振替のため対象外)
保証期間が1年を超える保証料を、払った年に全額費用にすることはできません。国税不服審判所も、保証期間中は保証という役務(サービス)が続いているとして、期間に応じて損金(税金の計算上の経費)に算入すべきと判断しています(平成19年2月27日裁決)。保証料を分割で支払う取扱いもありますが、各回の支払額は1年分の保証の対価ではないため、払ったときの費用にはしません。
繰上返済で借入金を完済すると、保証料の一部が戻ってくることがあります(返戻保証料)。このときは、長期前払費用に残っている金額を取り崩し、戻ってきた額との差額を支払保証料にします。借入れから24か月たって残りが198,000円、戻ってきた額が150,000円なら、次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 150,000 | 長期前払費用 | 198,000 |
| 支払保証料 | 48,000 |
繰上完済による保証料の返戻(不課税)/未償却残高と返戻額の差額
戻ってきたお金は売上ではないので、消費税の区分は「不課税」(会計ソフトでは「対象外」)とし、非課税売上にしないよう注意してください。非課税売上にすると、課税売上割合(売上全体に占める、消費税のかかる売上の割合)がずれ、消費税の計算に影響することがあります。借換えで古い借入れを完済したときも、古い保証料の残りを同じように取り崩します。
借入時にかかる費用の早見表
| 費用 | 勘定科目 | 消費税 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 収入印紙 | 租税公課 | 不課税 | 契約書の金額で税額が決まる。電子契約なら不要 |
| 信用保証料 | 長期前払費用(1年以内は前払費用) | 非課税 | 保証期間に応じて少しずつ費用にする |
| 融資事務手数料 | 支払手数料 | 課税 | 利息ではなく役務の対価なので課税 |
| 抵当権設定の登録免許税 | 租税公課 | 不課税 | 不動産担保を付けるときだけかかる |
| 司法書士報酬 | 支払手数料 | 課税 | 個人の司法書士への報酬は源泉徴収の対象(給与を支払っていない個人事業主は不要) |
| 利息 | 支払利息 | 非課税 | 返済予定表の利息欄の金額 |
国税庁の質疑応答事例によると、融資の際に受け取る事務手数料は、お金を貸す対価である「利子」には当たらず、役務の対価として消費税の課税対象です。利息や保証料と同じ非課税だと思い込まないようにしましょう。
| 契約書の記載金額 | 印紙税額 |
|---|---|
| 100万円を超え500万円以下 | 2,000円 |
| 500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 |
| 1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 |
| 5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 |
3. 返すときの仕訳
毎月の返済は「元金」と「利息」に分ける
毎月の引落しは、返済予定表のその回の行を見て、元金と利息に分けて仕訳します。パターン3の銀行借入の第1回(10月31日)の引落額217,753円は、元金200,000円と利息17,753円です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 長期借入金 | 200,000 | 普通預金 | 217,753 |
| 支払利息 | 17,753 |
第1回:元金(対象外)/第1回:利息(非課税)
元金均等返済と元利均等返済の違い
返済方法には、毎回の元金を一定にする「元金均等返済」と、毎回の返済額(元金+利息)を一定にする「元利均等返済」があります。3,000,000円を60回(5年)で返す場合で比べると、次のようになります(比べやすいよう、利息は年3.0%の月割りで計算しています)。
図5:3,000,000円を60回で返す場合(年3.0%の月割り)の1回ごとの返済額。青が元金、橙が利息。作図=ジェイスタート会計事務所
- 元金均等返済:元金は毎回50,000円で一定です。残高が減るにつれて利息が減るので、返済額は第1回の57,500円から最終回の50,125円まで少しずつ小さくなります。事業向けの融資でよく使われる方法です。
- 元利均等返済:返済額は毎回53,906円で一定です(最終回だけ端数を調整)。最初は利息の割合が大きく、後半ほど元金の割合が増えます。利息の総額は234,333円で、元金均等返済の228,750円よりやや多くなります。
どちらの返済方法でも、仕訳の形は同じです。「元金は長期借入金、利息は支払利息」と覚えておけば迷いません。
通帳の金額が返済予定表とずれるとき
- 返済日が土日祝日のときは、翌営業日に引き落とされます。利息が1日分変わることがあり(パターン3の銀行借入の初回なら約590円)、その場合は実際の引落額(金融機関の返済明細)で計上します。
- 変動金利の借入れは、金利が見直されるたびに返済予定表が新しくなります。古い予定表のまま仕訳しないようにしましょう。
- 会計ソフトの自動仕訳ルールで毎月同じ金額を登録していると、元金と利息の内訳が毎月ずれていきます。ルールを使う場合も、内訳は毎回返済予定表で直します。
繰上返済・借換えをしたとき
元金の一部を前倒しで返す「一部繰上返済」は、「長期借入金/普通預金」の仕訳です。手数料がかかれば支払手数料にします。以後は、金融機関からもらう新しい返済予定表で仕訳します。
新しい借入れで古い借入れを返す「借換え」では、新しい借入額から古い借入れの残高や新しい保証料が差し引かれて入金されることがよくあります。この場合も、新しい借入金は総額で計上し、古い借入金の完済と差し引かれた費用を借方に並べます。詳しい仕訳例は、会計事務所 実務ハンドブック「長期借入金」にまとめています。
4. 決算のときに確認すること
決算では、1年分の仕訳が正しかったかを返済予定表で答え合わせします。次の項目を確認してください。
- 借入先・借入ごとの残高が、返済予定表の決算日時点の残高と1円まで一致しているか
- 支払利息の1年分の合計が、返済予定表の利息の合計と一致しているか
- 信用保証料の当期分を費用にしたか(長期前払費用の残高が、残りの月数分と一致するか)
- 据置期間の利息を、元金の返済にしていないか
- 繰上返済・借換え・返済条件の変更があった借入れは、新しい返済予定表で照合したか
- 繰上完済・借換えをした借入れの保証料が、長期前払費用に残ったままになっていないか
- 戻ってきた保証料を、非課税売上にしていないか
例で確認:公庫の借入れを1年分たどる
パターン2の公庫の借入れ(据置期間ありの例・3月決算)を例に、初年度の動きと決算での照合を通しで見てみます。
| 日付 | 内容 | 長期借入金 | 支払利息 |
|---|---|---|---|
| 2026/10/20 | 8,000,000円の入金 | 8,000,000 | |
| 11/20〜2/20 | 第1回〜第4回(据置期間・利息のみ) | 67,396 | |
| 2027/3/20 | 第5回(元金の返済開始) | −100,000 | 15,342 |
| 3/31(決算) | 当期の合計 | 残高 7,900,000 | 合計 82,738 |
決算で確かめるのは2点です。1つ目は、長期借入金の残高7,900,000円が、返済予定表の第5回返済後の残高と一致しているか。2つ目は、支払利息の合計82,738円が、予定表の第1回〜第5回の利息の合計と一致しているかです。どちらも一致すれば、1年分の仕訳はおおむね正しく入っていると判断できます。
よくあるミス5つ
| ミス | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 通帳の入金額で借入金を計上した | 借入金が保証料などの分だけ少なくなり、完済間近にマイナスになる | 契約書の借入額と突き合わせる |
| 返済額の全額で借入金を減らした | 支払利息がゼロになり、借入金も合わなくなる | 返済予定表の元金と利息に分ける |
| 保証料を払った年に全額費用にした | 費用の計上時期が早すぎ、保証期間が1年を超えるものは税務上も認められない | 長期前払費用にして期間で按分する |
| 据置期間の利息を元金の返済にした | 借入金が少なすぎ、支払利息も漏れる | 元金0円の回は利息だけの仕訳にする |
| 返戻された保証料を非課税売上にした | 課税売上割合がずれ、消費税の計算に影響することがある | 不課税(対象外)で処理する |
「1年内返済予定の長期借入金」は、実務上は長期借入金のままでよい
長期借入金のうち、決算日の翌日から1年以内に返す元金(パターン3の銀行借入なら翌期の12回分・2,400,000円)を、「1年内返済予定長期借入金」として流動負債に組み替える方法があります。1年基準という考え方にもとづく表示方法です。
ただ、これは貸借対照表の表示だけの問題で、税金の額は変わりません。中小企業の決算書では、組み替えずに長期借入金のまま載せている例が多く、実務上はそれで足ります。金融機関から求められた場合など、必要に応じて対応すれば十分です。返済予定表があれば、1年以内の返済額はいつでもすぐに拾えます。
未払利息と、申告書の添付書類
返済日が月末でない借入れは、最後の返済日の翌日から決算日までの利息を、まだ払っていない状態です。たとえば例の公庫の借入れ(据置期間ありの例。3月20日返済・残高7,900,000円)なら、3月21日から31日までの11日分で5,952円です。会計の原則では「未払費用」として計上しますが、金額が小さければ、毎期同じやり方で支払日に計上しても差し支えありません(費用の計上が翌期にずれるだけです)。
法人の場合は、法人税の申告書に添付する勘定科目内訳明細書の「借入金及び支払利子の内訳書」に、借入先ごとの期末の残高・1年間の支払利子・利率などを書きます。会計ソフトで借入先・借入ごとに補助科目(科目の中の内訳)を分けておくと、そのまま転記できて便利です。個人事業主の場合は、青色申告決算書の「借入金」と「利子割引料」に反映します。
5. 短期借入金の仕訳
借りた日から1年以内に返す約束の借入金は、短期借入金で処理します。元金と利息の分け方や、印紙の扱いは長期借入金と同じです。保証料は、保証期間も1年以内になるので前払費用で受けます。形は主に次の3つです。
短期の証書借入(賞与資金・納税資金など)
契約書を交わして、数か月で返す借入れです。仕訳は長期借入金と同じで、科目が短期借入金になるだけです。例として、賞与資金3,000,000円を6回払いで借り入れ、保証料10,500円が差し引かれて入金された場合です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 2,989,500 | 短期借入金 | 3,000,000 |
| 前払費用 | 10,500 |
賞与資金の借入(保証料差引後・対象外)/信用保証料(非課税)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 租税公課 | 2,000 | 普通預金 | 2,000 |
契約書の収入印紙(不課税)
前払費用にした保証料10,500円は、保証期間の6か月で1,750円ずつ「支払保証料/前払費用」と振り替えます。決算日をまたぐ場合は、決算日までの経過分を振り替えます。毎期続けて同じ処理をするなら、支払ったときに全額を支払保証料としても構いません(短期前払費用)。
手形借入(利息を前払いする借入れ)
金融機関に約束手形を差し入れて借りる方法です。利息を借入時に先に差し引く「前取り」が一般的で、手形には金額に応じた収入印紙を貼ります。例として、5,000,000円を181日間、年2.0%で借り入れた場合、前取りの利息は49,589円です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 4,950,411 | 短期借入金 | 5,000,000 |
| 支払利息 | 49,589 |
手形借入:利息前取り後の入金(対象外)/前取利息181日分(非課税)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 租税公課 | 1,000 | 普通預金 | 1,000 |
約束手形の収入印紙(不課税)
借入期間が決算日をまたぐ場合、翌期分の利息(例で決算日に未経過の日数が106日なら29,041円)は前払費用に繰り延べ、翌期の期首に戻します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 前払費用 | 29,041 | 支払利息 | 29,041 |
未経過106日分の繰延べ
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払利息 | 29,041 | 前払費用 | 29,041 |
前期末の繰延べを戻す
ただし、支払日から1年以内の分を毎期続けて支払時の費用にしているなら、繰延べを省略できます(法人税基本通達2-2-14の短期前払費用。個人事業主は所得税基本通達37-30の2)。借入金を預金や有価証券で運用しているなど、収益と対応させる必要がある利息は対象外です。
当座貸越(当座預金のマイナス)
当座貸越は、契約した限度額まで、残高を超えてお金を引き出せる仕組みです。当座預金の残高がマイナスのまま決算を迎えたら、そのマイナス分を短期借入金に振り替え、翌期の期首に元へ戻します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 1,500,000 | 短期借入金 | 1,500,000 |
期末の当座貸越残高を振替(対象外)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 短期借入金 | 1,500,000 | 当座預金 | 1,500,000 |
再振替
6. よくある質問
元金の返済は、経費になりますか。
なりません。借入金(負債)が減るだけです。経費になるのは利息と、期間に応じて費用にする保証料などです。
信用保証料を、払った年に全額経費にできますか。
保証期間が1年を超える保証料はできません。長期前払費用に計上し、保証期間の月数で按分(期間で割り振ること)して費用にします。分割で支払う場合も同じです。払ったときの費用にできるのは、保証期間が1年以内の保証料を、毎期続けて同じ処理をしている場合に限られます。
日本政策金融公庫の借入れでも、収入印紙は必要ですか。
書面の借用証書で契約する場合は必要です。800万円の借入れなら1万円です。公庫の電子契約サービスで契約すれば、印紙は不要です。
通帳に入金された金額で、借入金を計上してもいいですか。
保証料や手数料が差し引かれて入金された場合は、入金額で計上してはいけません。借入金は契約書の借入額(総額)で計上し、差し引かれた保証料・印紙・手数料を借方に分けて記録します。
返済予定表をなくしてしまいました。
借りた金融機関に再発行を依頼してください。公庫は「日本公庫ダイレクト」でも返済予定や残高を確認できます。元金均等返済なら毎回の元金は一定なので、届くまでの間も、引落額から元金を差し引いた額を利息として計上できます。
個人事業主の場合、仕訳は変わりますか。
基本は同じです。事業用の口座以外(生活費の口座など)から返済したときは、貸方を普通預金ではなく「事業主借」(事業主個人のお金を事業に入れたときの科目)にします。利息は、青色申告決算書に合わせて「利子割引料」の科目で処理するのが一般的です。経費にできる利息は、事業のための借入金に係るものだけです。
まとめ
- 借入金の仕訳が必要になるのは「借りる・返す・締める」の3場面だけで、答えは返済予定表に書いてあります。
- 借入時は、通帳の入金額ではなく契約書の借入額(総額)で計上し、差し引かれた保証料・印紙・手数料を分けて記録します。
- 毎月の返済は元金と利息に分けます。経費になるのは利息だけで、元金の返済は経費になりません。
- 信用保証料は、保証期間が1年を超えるなら長期前払費用に計上し、期間に応じて少しずつ費用にします。
- 決算では残高を返済予定表と1円まで照合します。1年内返済予定額の組替えは、実務上は必要に応じてで足ります。
借入れの仕訳や返済計画、融資を受ける前の資金繰りの整理でお困りの際は、ジェイスタート会計事務所へお気軽にご相談ください。会計事務所の職員向けには、仕訳例をさらに詳しくまとめた会計事務所 実務ハンドブック「長期借入金」も公開しています。
主な参照元:国税庁「印紙税額一覧表」「No.5380 短期前払費用として損金算入ができる場合」「質疑応答事例 金銭の貸付時に収受する契約締結料及び事務手数料」、国税不服審判所 平成19年2月27日裁決、日本政策金融公庫「日本公庫電子契約サービス」、東京信用保証協会・千葉県信用保証協会「信用保証料の計算方法」、全国銀行協会(2026年6月18日公表)、北洋銀行「紙の手形・小切手の電子化」(いずれも2026年9月22日確認)
※本記事は2026年9月時点の法令・情報に基づく一般的な解説であり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の適用にあたっては税理士等の専門家にご相談ください。
