クラフトビール・酒類製造業の開業手続きと届出一覧|製造免許・酒税申告も確認

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クラフトビールの醸造所(ブルワリー)の開業は、飲食店や小売業と比べて手続きが重く、最大の関門は製造場ごと・品目ごとに受ける酒類製造免許です。免許の後は毎月の酒税の申告・納付が続き、開業届や青色申告などの通常の届出も並行して進めます。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

酒類製造免許の取得が手続き全体の起点で、免許の後は毎月の酒税申告と数量の記帳が続きます。物件や設備の検討と並行して早めに税務署へ相談し、通常の税務届出と資金計画を同時に進めます。

  • 酒類製造免許は製造場ごと・品目ごとに必要で、申請から免許まで数か月単位の期間を見込む
  • 年間の最低製造数量の基準があり、小規模ブルワリーは基準の低い発泡酒の免許から始める例も多い
  • 免許後は原則として毎月の酒税の申告・納付と、製造・貯蔵・移出の数量の記帳が続く。併設のタップルームで提供する分も移出として扱われる
  • 開業届・青色申告・給与の届出やインボイス登録も並行して行う。販売先が酒販店や飲食店なら登録はほぼ前提
  • 減価償却と借入の返済、毎月の酒税納付のずれを踏まえた資金計画を、開業前に作る

免許の取得、開業後の酒税申告、開業時の税務届出と周辺の許認可、設備投資と資金繰りは、時系列で一続きになっています。免許の審査には時間がかかるため、物件や設備の検討と並行して早めに税務署へ相談するのが鉄則です。

目次

最大の関門「酒類製造免許」はどう取る?

酒類を製造するには、製造場ごと・品目ごとに、所轄税務署を通じて酒類製造免許を受ける必要があります。免許を受ける前に酒類を製造することはできないため、試作の段階から免許の取得時期を前提にスケジュールを組みます。

免許には年間の最低製造数量基準が定められており、ビールよりも発泡酒のほうが基準が低いため、小規模ブルワリーは発泡酒免許から始める例が多くあります。麦芽の使用比率や副原料の種類によっては、同じビール系の飲料でもビールではなく発泡酒に区分されます。レシピの段階から品目を意識してください。

審査では、申請者の経歴などの人的要件、製造場の場所、経営の基礎となる資金、製造技術と設備が確認されます。申請から免許まで数か月単位の期間を見込み、事業計画書や資金繰り表を整えて臨むことが大切です。

審査で確認される点主な中身準備しておくもの
人の要件申請者や役員の経歴、過去の法令違反や税の滞納の有無履歴書、納税の状況がわかる書類
場所の要件製造場の場所や区画が製造に適しているか物件の図面、賃貸借契約や使用の承諾の書面
経営の基礎事業を続けられる資金と計画があるか、最低製造数量を満たす見込みがあるか事業計画書、資金繰り表、自己資金や融資の見込みがわかる資料
技術・設備酒類を製造する技術と、十分な設備があるか醸造の経験や研修の記録、設備の一覧と配置図
酒類製造免許の審査で確認される主な点。必要書類と基準の詳細は所轄税務署で確認してください
  1. 税務署に事前相談する造りたい品目、製造場の候補、製造の見込み数量を伝え、必要書類と審査の進め方を確認します。
  2. 物件と設備の計画を固める製造場の図面と設備の配置、仕込みから貯蔵・出荷までの流れを決めます。
  3. 事業計画と資金計画を作る販売先と価格、製造数量、酒税、借入の返済を織り込んだ数年分の計画と資金繰り表を用意します。
  4. 免許を申請し、審査を受ける審査中に追加の資料や説明を求められることがあるため、開業予定日には余裕を持たせます。
  5. 免許を受けてから製造を始める製造開始の時点から、数量の記帳と毎月の酒税申告が始まります。

基準数量や要件は変わる可能性があるため、最新は国税庁サイトや所轄税務署で確認してください。

免許後は毎月続く「酒税の申告・納付」

酒税は、製造場からビールなどを移出した数量に応じてかかり、原則として毎月申告・納付します。製造・貯蔵・移出の数量を記帳する義務もあり、在庫管理がそのまま税務に直結します。併設のタップルームで提供する分も移出として扱われる点は見落としがちです。

  • 麦芽・ホップ・副原料の受入れと使用の数量
  • 仕込み・発酵・貯蔵の数量と、タンクや容器ごとの在庫
  • 製造場から移出した数量(取引先への出荷と、タップルームでの提供の分)
  • 品目とアルコール分ごとの区分
  • 返品などで製造場に戻した数量(戻入れ)

帳簿の数量と実際のタンク・倉庫の在庫が合わないと、酒税の申告そのものの正しさが説明できなくなります。仕込みの記録と出荷の記録を同じ仕組みで管理し、月末に在庫を締める流れを、製造開始の前に決めておきます。

酒税の税率は品目ごとに定められ、ビール系飲料では段階的な見直しが行われてきた経緯があります。最新の税率は国税庁サイトで確認してください。

売上の入金より先に酒税の納付が来る

酒税は移出した数量にかかるため、取引先からの代金の回収を待たずに納付の時期が来ることがあります。売掛金の回収が遅い取引先が多いほど、酒税の分だけ手元の資金が先に出ていきます。酒税は資金繰り計画に組み込み、仕込みの量と出荷の時期を決めるときの前提にします。

通常の税務届出と周辺の許認可:何をいつまでに出す?

酒類製造業でも、開業時の通常の税務届出は他の業種と同じように必要です。法人で設立するなら法人設立届出書と青色申告の承認申請、個人なら開業届と青色申告承認申請を、それぞれ期限内に提出します。

開業時に出す税務の届出と期限

届出個人で開業する場合法人で設立する場合
開業・設立の届出個人事業の開業届出書:開業の日から1か月以内法人設立届出書:設立の日以後2か月以内
青色申告青色申告承認申請書:その年の3月15日まで(1月16日以後の開業は開業の日から2か月以内)青色申告の承認申請書:設立の日以後3か月を経過した日と最初の事業年度終了の日のいずれか早い日の前日まで
給与の支払給与支払事務所等の開設届出書:開設の日から1か月以内個人と同じ
源泉所得税の納期の特例給与の支払を受ける人が常時10人未満なら申請できる。翌月末日までに通知がなければ翌々月の納付分から年2回の納付になる個人と同じ
地方税道税事務所・市町村へ事業開始の申告道税事務所・市町村へ法人設立の届出
社会保険製造業は法定の業種のため、常時5人以上を使用すると強制適用役員1人でも強制適用
開業時の主な税務・社会保険の届出(2026年10月時点)。酒類製造免許の申請とは別に必要です

スタッフを雇えば給与支払事務所等の開設届出書を出し、給与の支給人員が少なければ源泉所得税の納期の特例も検討します。納期の特例を受けると、源泉所得税は1〜6月分を7月10日、7〜12月分を翌年1月20日にまとめて納めます。

消費税とインボイス登録の考え方

販売先が酒販店や飲食店なら、相手が仕入税額控除をするためにインボイスが要るため、登録はほぼ前提になります。酒類は軽減税率の対象外で、消費税は10%です。新しく設立した法人は資本金が1,000万円未満なら設立当初は原則として免税ですが、登録するとその期間から消費税を納めることになります。

売上の内容簡易課税の事業区分みなし仕入率
自社で醸造したビール・発泡酒の販売(酒販店・飲食店への出荷を含む)第3種(製造業)70%
タップルームでの飲食の提供第4種(飲食店業)60%
仕入れた他社の酒類やグッズをそのまま個人に販売第2種(小売業)80%
仕入れた商品をそのまま事業者に販売第1種(卸売業)90%
簡易課税を選ぶ場合の主な事業区分(2026年10月時点)。複数の事業がある場合は区分ごとに売上を分けて記録します

設備を多く買う開業の年は、本則課税なら設備にかかった消費税の還付を受けられる場合がありますが、簡易課税では還付は受けられません。個人で登録した人は、令和8年分までの2割特例と、令和9・10年分の3割特例を使える場合があります。法人は、2割特例が2026年9月30日を含む課税期間までで終わり、3割特例もないため、これから設立する法人はどちらも使えません。

地元の農家から果実やホップを仕入れる場合、相手が免税事業者だと、インボイスがない仕入れの消費税は全額を控除できません。2026年10月1日〜2028年9月30日は70%、2028年10月1日からは50%を控除できる経過措置があります。制度の全体はインボイス制度の実務ガイドで整理しています。

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免税事業者からの仕入れの控除額を計算する仕入れの日と金額を入れると、経過措置の割合に応じて控除できる消費税額を計算できます。計算する

製造免許とは別に必要な許認可

どの売り方をするかで、製造免許とは別に必要な許認可が変わります。

売り方必要な許認可窓口
併設のタップルームで飲用に提供する飲食店営業許可保健所
製造場で、製造免許を受けた品目と同じ品目の酒類を瓶や缶で販売する酒類販売業免許は不要とされている所轄税務署で確認
それ以外の品目の酒類を売る、製造場以外の店舗で売る販売の方法に応じた酒類小売業免許(一般酒類小売業免許など)所轄税務署
通信販売で全国に売る販売の方法と品目により免許の要否が変わる所轄税務署で確認
売り方と主な許認可(2026年10月時点)。販売の計画が固まった段階で、所轄税務署に確認してください

製造場の外にある直営店や催事での販売、他の醸造所の酒類の仕入販売を予定しているなら、免許の申請と同じ時期に販売業免許の要否も確認しておきます。どの売り方をするかで必要な免許が変わるため、開業形態を早めに固めることが手続き全体の近道です。

個人で始めるか法人で始めるか、インボイスをどの時点で登録するかで、届出と税負担の組み立てが変わります。免許の相談と並行して、初回無料で整理できます。

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設備投資と資金繰りの考え方

例えば醸造設備一式に2,000万円を投資した場合、経費になるのは減価償却を通じて毎年少しずつです。一方、借入金の返済や毎月の酒税の納付は現金で出ていくため、損益と資金繰りにはずれが生じます。

計算例:2,000万円の醸造設備の償却費と借入の返済

例えば、2,000万円の醸造設備を借入でまかない、10年で返済する場合です。耐用年数は設備の種類ごとに省令で決まるため、ここでは仮に10年(定額法の償却率0.100、200%定率法の償却率0.200)とします。

  • 定額法の毎年の償却費:2,000万円×0.100=200万円
  • 定率法の初年度(1年分)の償却費:2,000万円×0.200=400万円
  • 毎年の元金の返済:2,000万円÷10年=200万円

定率法では初年度の経費が返済額を上回りますが、年数がたつと償却費は返済額を下回り、利益が出ているのに手元の資金が減る年が出てきます。返済期間を設備の使用期間に合わせる、運転資金を別枠で用意するといった手当てを計画の段階で考えます。

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定率法(200%)の減価償却費を計算する取得価額と耐用年数を入れると、醸造設備の年ごとの償却費を定率法で計算できます。計算する

法人の機械設備は、届出をしなければ定率法、個人は定額法で償却します。中小企業の設備投資には、中小企業経営強化税制(即時償却か税額控除10%、資本金3,000万円超の法人は7%)と、中小企業投資促進税制(特別償却30%か税額控除7%)があります。どちらも2027年3月31日までに取得して事業に使った設備が対象です。経営強化税制は経営力向上計画の認定などが要件になるため、設備を発注する前に確認します。

開業直後で利益が小さい年は、即時償却をしても赤字が膨らむだけになりやすく、税額控除にも法人税額に応じた上限があります。どちらが有利かは数年分の利益の見込みで比べます。これらの制度の期限が延長されるかは、2026年10月時点では決まっていません。

ケグなどの容器や小型の器具は、1個ごとの取得価額で判定します。10万円未満なら消耗品費、青色申告の中小事業者なら40万円未満(2026年4月1日以後の取得)の資産を年300万円まで、その年の経費にできます。仕込みから出荷までの原価の記帳は製造業の仕訳事例集が参考になります。

資金の調達先には、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金(融資限度額7,200万円、設備資金20年以内・運転資金10年以内、据置5年以内)や、道・市町村の制度融資があります。設備投資系の補助金も含めて組み合わせ、開業前に数年分の資金計画を作っておくと安全です。補助金は原則として設備の支払いの後に入金されるため、採択されても、つなぎの資金は別に用意します。

札幌・北海道でブルワリーを開く場合は?

酒類製造免許の申請と酒税の申告は、製造場の所在地を所轄する税務署が窓口です。市内と近郊の税務署の管轄は次のとおりです。

税務署主な管轄区域
札幌中税務署中央区の一部(おおむね西10丁目以東)
札幌北税務署北区・東区・石狩市・石狩郡
札幌南税務署豊平区・南区・清田区・千歳市・恵庭市・北広島市
札幌西税務署中央区の一部(大通西11丁目以西・円山・宮の森など)・西区・手稲区
札幌東税務署白石区・厚別区・江別市
市内と近郊の税務署の管轄(2026年10月時点)。中央区の個別の住所は国税庁の管轄区域表で確認してください

2026年7月10日から、市内5署の内部事務は札幌業務センターに集約され、開業届などの書面の届出は同センターへ郵送します。免許の相談や窓口への持参は、所轄の税務署に事前に確認してから行います。

創業の支援制度と季節の変動

特定創業支援等事業の証明を受けて札幌市内で会社を設立すると、登録免許税が株式会社15万円→7.5万円、合同会社6万円→3万円に軽減されます。証明があると、公庫の融資の利率の引下げや、開業6か月前からの創業関連保証の利用にもつながります。証明書の有効期限は2027年3月31日です。

北海道中小企業総合振興資金の創業貸付は、2026年10月1日現在で融資限度額3,500万円・固定1.8〜2.4%です。雪国では冬季の観光動向で売上が変動しやすく、タップルームの人件費も北海道の最低賃金(2026年10月1日から1,131円)を前提に見積もります。季節ごとの売上と仕込みの量を、資金計画に織り込んでおきます。

よくある質問

製造免許を取る前に、自社ブランドのビールを売ることはできますか?

免許を持つ醸造所に製造を委託し、自社のブランドで販売する方法があります。この場合、自社は製造者ではないため、販売の方法に応じた酒類販売業免許が必要です。市場の反応を確かめてから自前の製造場を持つ手順にすると、設備投資の判断材料が増えます。

免許の申請前に、物件や設備を契約してもよいですか?

審査では製造場の場所や設備も確認されるため、物件と設備の計画は申請の前提になります。一方で、免許が下りる前に多額の契約をすると、審査の結果や時期のずれで負担だけが残るおそれがあります。税務署に事前相談したうえで、賃貸借の開始日や設備の納期を免許の見込み時期とあわせて交渉します。

酒税がかかったビールにも、消費税はかかりますか?

かかります。酒税は商品の価格に含まれ、消費税は酒税を含めた売値に対して10%で計算します。酒類は軽減税率の対象外です。価格表を作るときは、酒税と消費税の両方を織り込みます。

個人で始めて、後から法人にすることはできますか?

できますが、酒類製造免許は製造者ごとに受けるものなので、法人化すると原則として法人であらためて免許を受ける必要があります。法人化の時期は、売上の規模や採用の計画とあわせて早めに決めておくと手続きの重複を避けられます。判断の目安はクラフトビール・酒類製造業の法人化のタイミングと判断基準で整理しています。

開業前の研修や市場調査の費用は、経費になりますか?

開業の準備のために支出した研修費、市場調査の費用、広告費などは開業費として資産に計上し、開業後の任意の時期に経費にできます。醸造設備や内装は開業費ではなく、事業に使い始めた時から減価償却します。

まとめ

ブルワリーの開業は、酒類製造免許・酒税・資金計画が絡む長丁場のプロジェクトです。免許は製造場ごと・品目ごとに必要で取得まで数か月かかり、免許の後は毎月の酒税申告と数量の記帳が続きます。開業届や青色申告、インボイスなどの通常の手続きと、減価償却・返済・酒税のずれを踏まえた資金計画を、構想の段階から並行して進めましょう。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

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