塗装業に強い税理士かどうかは、業種特有の論点を具体的に説明できるかで見分けられます。材料費と外注費の原価管理、一人親方とのインボイス対応、工事ごとの売上計上、建設業許可の決算変更届との連携が代表例です。顧問料は安さではなく、任せる範囲と業務量で決まる点を押さえて比べましょう。
この記事の結論
塗装業の税理士選びでは、業種特有の論点に具体的に答えられるかと、任せる範囲に見合った料金体系かの2点を確かめます。
- 材料費・外注費の区分と工事ごとの原価管理を、現場の流れに合った帳簿のルールにできるか
- 免税事業者の一人親方への外注は、2026年10月1日〜2028年9月30日の仕入れで控除が70%になる。この影響と取引条件の見直しを助言できるか
- 期末をまたぐ工事の売上計上と、建設業許可の決算変更届に使う財務諸表まで見られるか
- 顧問料は記帳の量・申告の種類・面談の頻度などで決まる。月額顧問料・決算料・記帳代行費を分けて見積もってもらう
札幌で税理士をお探しの方は、札幌市10区の税務の窓口や顧問料の決まり方、ご相談から契約までの流れをまとめた「札幌の税理士|公認会計士・税理士が対応する会計事務所」もご覧ください。
塗装業の会計・税務で税理士に確認したい5つの論点
塗装業には、他の業種と異なる会計・税務の論点があります。面談では「建設業の顧問経験はありますか」と聞くだけでなく、次の5つの論点について具体的な説明を求めると、業種への理解の深さが分かります。
1. 材料費・外注費の区分と工事ごとの原価管理
塗装業はコストに占める材料費と外注費の割合が大きい業種です。これらを工事ごとに正しく区分し、原価として管理できるかどうかが、利益の把握と見積りの精度を左右します。経費の計上漏れや区分の誤りは、納税額にも直結します。
| 支出の例 | 主な区分 | 注意点 |
|---|---|---|
| 塗料・シンナー・養生材 | 材料費 | 工事ごとに振り分ける。期末に残った塗料が多い場合は在庫として扱う |
| 足場の組立て・解体 | 外注費(足場材をレンタルして自社で組む場合は賃借料) | 工事ごとの原価に含める |
| 職人・一人親方への支払い | 外注費または給与 | 働き方の実態で判断する。給与と判断されると源泉所得税と消費税に影響 |
| 高圧洗浄機・塗装機などの機械 | 消耗品費または減価償却資産 | 取得価額10万円・20万円・40万円未満で処理が変わる |
| 施主の指定で立て替えた材料 | 立替金または売上・仕入れ | 契約の内容に合わせて処理を統一する |
たとえば外壁塗装の現場では、材料を立て替えで購入し、後から精算する場面があります。こうした実務の流れを理解している税理士なら、帳簿づけのルールを現場に合わせて整えてくれます。機械の購入は、青色申告の中小事業者であれば、2026年4月1日以後に取得した40万円未満の資産を年300万円まで一括で経費にできる特例もあります。
2. 一人親方への外注とインボイスの経過措置
外注先の一人親方が免税事業者(インボイス未登録)の場合、支払った消費税の仕入税額控除は制限されます。経過措置で一定割合は控除できますが、その割合は時期によって次のように縮小していきます。
| 仕入れの時期 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 2026年9月30日まで | 80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以後 | 控除なし |
以前は「2026年10月から50%」と案内されていましたが、令和8年度の改正で70%の期間が設けられています。経過措置を使うには、帳簿に「80%控除対象」「70%控除対象」などと記載する必要があります。この扱いを正しく処理できる税理士であれば、外注先との単価や登録の相談まで含めて乗ってくれます。
職人への支払いを日当で計算し、道具や材料をこちらで用意し、作業時間も指示している場合は、名目が外注でも給与と判断されやすくなります。外注先との取引の実態を整理したうえで、経過措置の影響を見積もりましょう。
無料ツールインボイスの経過措置による控除額を計算する免税事業者への支払額と時期を入れて、控除できる消費税の額を確かめられます。計算する
塗料店での小口の購入など、税込1万円未満の仕入れには少額特例があります。基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間の課税売上高が5,000万円以下)なら、2029年9月30日までは、インボイスがなくても帳簿の記載だけで控除できます。
3. 工事の売上計上時期と未成工事支出金
請負工事の売上は、工事が完成して引き渡した日に計上するのが原則です。着手金を受け取っていても、その時点では売上ではなく前受金(未成工事受入金)として扱います。期末に施工中の工事があれば、そこまでにかかった材料費や外注費は未成工事支出金として翌期に繰り越し、完成した期の原価にします。
期末の直前に完成した工事の売上を翌期にずらす、施工中の工事の原価をその期の経費にしてしまう、といった誤りは税務調査で指摘されやすい論点です。工事台帳と帳簿を結びつけて管理できるかを確認しましょう。
4. 消費税の申告方法の選び方
簡易課税を選ぶと、塗装工事は建設業として第3種(みなし仕入率70%)が原則です。ただし、元請けや施主から塗料の支給を受けて施工だけを請け負う場合は、第4種(60%)になることがあります。インボイス登録をした小規模な事業者向けの2割特例は、2026年9月30日を含む課税期間で終わり、個人は令和8年分が最後です。
その後、登録しなければ免税事業者になる個人事業者を対象に、令和9・10年分の3割特例(納付税額を売上税額の3割とする特例)が設けられています。法人はこの特例を使えません。本則課税・簡易課税・特例のどれが有利かを、外注の割合を踏まえて試算してくれるかがポイントです。
無料ツール簡易課税・本則課税・2割特例を比較する売上と仕入れの額を入れて、申告方法ごとの納付税額の違いを確かめられます。計算する
5. 建設業許可の決算変更届と社会保険
請負代金500万円以上(税込)の塗装工事を受けるには建設業許可が必要です。許可を持つ事業者は、毎事業年度の終了後4か月以内に決算変更届を出し、建設業の様式に組み替えた財務諸表を添付します。届出の作成・提出は行政書士の業務ですが、元になる決算の数字を建設業の勘定科目に組み替えやすい形で用意できるかは、税理士の対応力で変わります。
適切な社会保険への加入は、許可の申請・更新の要件でもあります。職人を雇う場合の給与計算や社会保険の手続きを、どこまで一緒に見てもらえるかも確認しておきましょう。
税理士に任せる範囲の決め方
顧問契約で何を任せるかによって、料金も日々の負担も変わります。現場に出る時間が長い塗装業では、事務にかけられる時間と、数字をどこまで自分で把握したいかで範囲を決めるのが現実的です。
| 業務 | 自社で行う場合 | 税理士に任せる場合 | 判断の目安 |
|---|---|---|---|
| 記帳 | 会計ソフトに入力し、税理士が月次でチェック | 領収書・通帳・請求書を渡して記帳を代行してもらう | 事務を担う家族やスタッフがいるか |
| 工事ごとの原価管理 | 工事台帳を自社で作り、帳簿と照合してもらう | 台帳の様式づくりから相談する | 見積りの精度を上げたいか |
| 給与計算・年末調整 | 給与ソフトで計算し、年末調整だけ確認してもらう | 毎月の計算と源泉所得税の納付まで任せる | 常時雇う職人・スタッフの人数 |
| 申告 | — | 所得税・法人税・消費税の申告書を作成してもらう | 申告は専門家に任せる方が誤りを防ぎやすい |
| 資金繰り・融資 | 入出金の予定表を自社で管理する | 試算表をもとに資金繰り表や融資の資料を一緒に作る | 入金サイトが長い元請けとの取引が多いか |
記帳を任せる場合の進め方は記帳代行プランで、法人の月次の流れは中小企業の経理・会計処理ガイドで確認できます。
顧問料はどう決まる?見積りで確認すること
税理士の顧問料は、事業の規模や取引の量、任せる範囲によって決まるため、一律の金額では比べられません。見積りを取るときは、次の要素を伝えたうえで、月額顧問料・決算料(申告書の作成報酬)・記帳代行費を分けて示してもらうと比較しやすくなります。
| 料金が決まる要素 | 塗装業で伝えておきたいこと |
|---|---|
| 年間の売上と取引の量 | 現場の数、外注先・仕入先の数、請求書の枚数 |
| 記帳を誰が行うか | 自社で入力するか、資料を渡して代行してもらうか |
| 申告の種類 | 個人か法人か、消費税の課税事業者か、簡易課税か |
| 給与計算・年末調整 | 雇っている職人・スタッフの人数 |
| 面談の頻度と方法 | 毎月か、四半期ごとか。訪問かオンラインか |
| 業種特有の対応 | 工事台帳の整備、決算変更届用の財務諸表、融資の資料づくり |
料金の安さだけで選ぶと、必要な助言が受けられず後悔することがあります。塗装業の論点に対応できるかという質と、料金のバランスで判断しましょう。なお、当事務所は継続的な顧問契約での支援を前提としており、決算・申告だけのスポットのご依頼はお受けしていません。日々の記帳や工事の状況を把握していないと、決算で正確な判断ができないためです。
契約前の面談で確認したいこと
初回相談では、自社の売上規模や外注の状況を伝え、対応内容と概算の料金を示してもらうのが効率的です。あわせて次の点を確認しておくと、契約後の行き違いを防げます。
- 建設業・塗装業の会計を担当した経験があるか
- 工事台帳と帳簿を結びつけた原価管理の方法を提案してもらえるか
- 一人親方の経過措置や、外注費と給与の区分について具体的に説明できるか
- 本則課税・簡易課税・特例の比較試算をしてもらえるか
- 建設業許可の更新や決算のスケジュール管理まで相談できるか
- メールやチャットで気軽に質問でき、返信の目安が決まっているか
- 担当者は誰で、税理士が直接見る範囲はどこまでか
現場が忙しい塗装業では、連絡手段とレスポンスの早さが日々の使い勝手を左右します。説明の分かりやすさも含めて、長く付き合える相手かを見極めましょう。
外注の割合や工事の規模によって、最適な消費税の申告方法も任せる範囲も変わります。現状を伺い、対応内容とお見積りを初回無料でご提示します。
無料で相談する北海道で塗装業を営む場合に確認したいこと
冬期の売上の落ち込みと納税資金
道内では、低温や降雪の時期は外部の塗装工事がしにくく、売上が春から秋に集中しやすくなります。冬期も職人の給与や車両・倉庫の費用はかかるため、繁忙期の利益から納税と冬の運転資金を確保しておくことが大切です。個人事業の予定納税(予定納税基準額15万円以上)の第2期は11月30日で、入金が細る時期と重なりやすい点にも注意します。
決算月を繁忙期の直後に置くと、利益の見通しが立ってから決算対策を検討できます。札幌市内の5税務署へ書面で届出や申告書を出す場合、2026年7月10日からは札幌業務センターへの郵送になりました(e-Taxや所轄署への持参も可)。
よくある質問
外注先の一人親方にインボイス登録をお願いすべきですか?
登録するかどうかは外注先が決めることです。未登録の外注先との取引では控除の割合が下がるため、単価の見直しを話し合うことはあります。ただし、一方的な値下げや登録の強要は、取引上の問題になることがあります。外注先の売上規模や今後の取引量を踏まえて、話し合いで決めましょう。
決算と申告の時期だけ税理士に頼めますか?
当事務所では、決算・申告だけのスポットのご依頼はお受けしていません。工事の売上計上や原価の区分は日々の記帳の積み重ねで決まるため、継続的な顧問契約で月次から状況を把握したうえで、決算と申告を担当しています。
記帳を自分でやれば、顧問料を抑えられますか?
記帳代行の費用がかからない分、総額は抑えやすくなります。その場合も、勘定科目や工事ごとの振り分けのルールを最初に決めておくことが大切です。ネットで受け取った請求書や領収書は、電子取引のデータとして保存する必要があります。
塗料をまとめ買いした場合、全額をその年の経費にできますか?
期末に使い切れずに残った塗料は、原則として在庫(貯蔵品)として翌期に繰り越します。毎年おおむね一定の量を買って経常的に使っているものは、購入した年の経費にする処理を継続して行う方法も認められています。期末に多めに買う場合は、処理の方法を税理士と決めておきましょう。
まとめ
塗装業に強い税理士かどうかは、業種特有の論点を具体的に説明できるかで見分けられます。材料費・外注費の原価管理、一人親方との取引の経過措置(2026年10月1日〜2028年9月30日は70%)、工事の売上計上、決算変更届との連携がその代表です。顧問料は任せる範囲と業務量で決まるため、要素を伝えて内訳ごとに見積もってもらい、質とのバランスで判断しましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
塗装業の会計・税務のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
