青色申告特別控除が最高75万円に|令和9年分からの要件と準備

  • URLをコピーしました!

青色申告特別控除は、令和9年分(2027年分)以後、e-Taxでの期限内申告に加えて仕訳帳・総勘定元帳を電子帳簿保存法の要件どおりに保存すると、最高75万円になります。現行の55万円区分はe-Taxを要件とする65万円に組み替わるため、紙で申告している人や、電子帳簿の保存だけで65万円を受けている人は準備が必要です。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

令和9年分以後の青色申告特別控除は75万円・65万円・10万円の3区分になり、75万円は「65万円の要件(期限内のe-Tax)」に「帳簿の電子保存」を上乗せした区分です。令和8年分までは、現行の65万円・55万円・10万円の体系が続きます。

  • 75万円:正規の簿記、決算書の添付、期限内のe-Tax、仕訳帳・総勘定元帳の電子保存等
  • 65万円:旧55万円区分の要件に期限内のe-Taxを加えたもの(電子帳簿の保存だけでは足りない)
  • 10万円:簡易簿記で前々年の収入が1,000万円を超える人は対象外になる
  • 65万円との差の10万円は、所得税率20%・住民税10%の人で年3万円程度の軽減
  • 令和9年分の帳簿は2027年1月から対象になるため、2026年中にソフトと運用を整える
目次

結論:令和9年分以後、控除は3区分に再編される

個人事業主の節税の柱である青色申告特別控除は、令和8年度税制改正(所得税法等の一部を改正する法律、2026年3月31日公布)で見直され、令和9年分以後の所得税から新しい区分が適用されます。令和8年分までは、現行の65万円・55万円・10万円の体系のままです。

75万円令和9年分以後の最高額(e-Tax+帳簿の電子保存等)
65万円令和9年分以後は期限内のe-Taxが要件
10万円簡易簿記などの区分
控除額令和8年分まで令和9年分以後
75万円区分なし65万円の要件に加えて、仕訳帳・総勘定元帳を電子帳簿保存法の要件どおりに電磁的記録で保存すること等
65万円正規の簿記、貸借対照表・損益計算書の添付、期限内申告に加えて、電子帳簿保存またはe-Tax正規の簿記、貸借対照表・損益計算書の添付、期限内申告に加えて、期限内のe-Tax
55万円正規の簿記、貸借対照表・損益計算書の添付、期限内申告区分としては残らない(e-Taxを要件に加えて65万円へ)
10万円上記以外の青色申告者上記以外の青色申告者。ただし簡易簿記で前々年の収入が1,000万円を超える人は対象外
2026年10月時点の法令(令和8年度税制改正)に基づく整理。不動産所得で10万円を超える控除を受けるには、貸付けが事業的規模であることが前提です。

令和9年分以後の65万円は、e-Taxが要件

令和8年分までは「電子帳簿の保存」でも65万円の控除を受けられましたが、令和9年分以後は、65万円・75万円のどちらも、e-Taxによる期限内申告が要件になります。電子帳簿を保存していても、紙で申告する場合は65万円の要件を満たしません。紙で申告した場合の控除額は、今後の政省令や国税庁の案内で確認が必要です。

影響を受けるのは誰?いまの区分ごとの対応

改正の影響は、いまどの区分で控除を受けているかで変わります。令和8年分までの状況ごとに、令和9年分以後に必要な対応を整理します。

令和8年分までの状況令和9年分以後に必要な対応
e-Taxで申告して65万円同じ要件のままなら65万円。75万円を目指すなら、帳簿の電子保存等を追加する
電子帳簿の保存と紙の申告で65万円e-Taxでの期限内申告への切り替えが必要。切り替えれば75万円の対象になり得る
紙の帳簿・紙の申告で55万円e-Taxで期限内に申告すれば65万円。紙のままの扱いは今後の案内で確認する
簡易簿記で10万円前々年の収入が1,000万円を超えると対象外。複式簿記への移行を検討する
白色申告青色申告の承認申請が必要(原則としてその年の3月15日まで。1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内)
現行の区分別に見た、令和9年分以後への対応

電子帳簿の保存だけで65万円を受けている人は、見落としやすい立場です。帳簿の体制はすでに整っているため、e-Taxに切り替えるだけで75万円の対象になり得る一方、紙の申告を続けると要件を満たさなくなります。令和8年度改正の全体像は令和8年度税制改正のポイントで確認できます。

「優良な電子帳簿」とは何か

75万円のカギとなる帳簿の電子保存で、代表的なのが「優良な電子帳簿」です。電子帳簿保存法に定められた上位ランクの帳簿で、主な要件は次の3点に整理できます。

  • 訂正・削除の履歴が残ること(確定後の修正は履歴付きで行う)
  • 帳簿間で記録の相互関連性が確認できること(仕訳帳と総勘定元帳などがつながっている)
  • 日付・金額・取引先で検索できること

手作りのExcel帳簿でこれを満たすのは難しく、実務上は対応した会計ソフト(クラウド会計を含む)を正しい設定で使うことが前提になる場合が多いです。ソフトを使っているから自動的に要件を満たすわけではなく、設定・運用と必要な手続きがそろって初めて75万円の対象になり得ます。

優良な電子帳簿は、あらかじめ届出書を出しておくと、申告漏れがあった場合の過少申告加算税が5%軽減される措置もあります。75万円の適用に必要な電子保存の方法(優良な電子帳簿以外の方法を含む)や届出などの細かな手続きは、今後の政省令や国税庁の案内で確認しましょう。

証憑の電子データ保存はすでに義務

請求書や領収書を電子データで受け取った場合の保存(電子取引データの保存)は、2024年1月1日以後すでに義務になっています。帳簿の電子保存とあわせて、証憑データの保存ルールも整えておきましょう。具体的な保存方法は電子帳簿保存法への対応の解説で確認できます。

いくら変わるか:65万円と75万円の差

控除が10万円増えると、所得税と住民税の計算のもとになる所得がそれぞれ10万円減ります。税負担の軽減額は、その人に適用される税率で変わります。

計算例:控除が10万円増えた場合の軽減額

例えば、課税所得に応じた所得税率と住民税10%で計算すると、次のとおりです(復興特別所得税を除く概算)。

  • 所得税率20%(課税所得330万円超695万円以下)の人:10万円×30%=3万円
  • 所得税率5%(課税所得195万円以下)の人:10万円×15%=1.5万円

令和8年分まで55万円だった人が、e-Taxでの申告により令和9年分以後65万円になる場合も、控除は同じく10万円増えます。

金額として大きくはありませんが、クラウド会計の年間利用料の一部を回収できる水準で、デジタル化の費用負担を軽くする効果があると捉えられます。一方、紙の帳簿のままでは65万円側の要件も満たしにくくなるため、早めの見直しが有効です。

無料
ツール
青色申告と白色申告の節税効果を比較する所得の金額を入れると、控除の区分ごとに所得税・住民税がどれだけ変わるかを比較できます。計算する

自分の税率を確かめたい場合は、課税所得から所得税額を計算すると、控除が増えたときの効果を具体的に見積もれます。

無料
ツール
所得税額を速算表で計算する課税所得金額を入れると、速算表にもとづく所得税額と適用される税率を確認できます。計算する

令和9年分に向けた準備:3ステップ

令和9年分の帳簿は、2027年1月1日からの取引が対象です。年の途中から要件を満たそうとすると帳簿の移行が複雑になるため、次の3つを令和8年中に済ませておくと安心です。

  1. 会計ソフトを確認する使用中のソフトが帳簿の電子保存(優良な電子帳簿)の要件に対応しているか、対応プランと設定を確認します。主要なクラウド会計は対応しているものが多いです。
  2. 運用を整える訂正履歴が残る運用(確定後の修正は履歴付きで行う)と、証憑データの保存ルールをセットで整えます。銀行・カードの明細連携を使うと、記帳の手間を増やさずに移行しやすくなります。
  3. 届出とe-Taxの体制をつくる適用する年分に向けて必要な届出を行い、申告はe-Taxで期限内に行う体制にします。マイナンバーカードがあれば自宅から手続きできます。
時期やること
令和8年中(2026年12月まで)ソフトの対応状況と設定の確認、運用ルールづくり、マイナンバーカードとe-Taxの準備
2027年1月1日から令和9年分の帳簿を、要件どおりに電子で記帳・保存する
2027年2月16日(火)〜3月15日(月)令和8年分の確定申告(現行の65万円・55万円・10万円で判定)。e-Taxに慣れておく機会にもなる
2028年の確定申告期間(原則2月16日〜3月15日)令和9年分をe-Taxで期限内に申告し、75万円または65万円を適用する
令和9年分の75万円に向けたスケジュールの目安(2026年10月時点)

自分でできること・専門家に確認したいこと

ソフトの設定確認と運用づくりまでは、自分でも進められます。専門家に相談すると有用なのは、帳簿体制が要件を満たしているかの点検、届出のタイミング、そして65万円と75万円のどちらを目指すのが合理的かの判断です。ご相談の際は、次の点をよく確認します。

  • 使用中の会計ソフトとプラン、訂正・削除の履歴が残る設定になっているか
  • 銀行・カードの明細連携と、証憑データの保存方法
  • 直近の申告方法(e-Taxか紙か)と、いま受けている控除の区分
  • 前々年の収入金額(10万円控除の見直しの対象になるか)
  • 不動産所得がある場合は、貸付けが事業的規模かどうか

当事務所は税務顧問にとどまらず、クラウド会計の導入設計からAIを使った記帳の省力化まで、帳簿体制づくりを実務で支援しています。導入の進め方はクラウド会計の導入支援:依頼から完了までの流れで紹介しています。

いまの帳簿体制で75万円の要件を満たせるかは、ソフトの設定と運用で変わります。初回無料で確認できます。

無料で相談する

札幌・北海道の個人事業主が確認すること

青色申告の承認申請や電子帳簿に関する届出は、納税地(通常は住所地)を所轄する税務署に提出します。市内と近郊の管轄は次のとおりです。

税務署管轄区域
札幌中税務署中央区の一部(おおむね西10丁目以東)
札幌北税務署北区・東区・石狩市・石狩郡
札幌南税務署豊平区・南区・清田区・千歳市・恵庭市・北広島市
札幌西税務署中央区の一部(大通西11丁目以西・円山・宮の森・伏見など)・西区・手稲区
札幌東税務署白石区・厚別区・江別市
2026年10月時点。中央区の個別の住所は、国税庁の管轄区域表で確認してください。

書面の送付先と、冬の確定申告

2026年7月10日から、上の5署の内部事務は札幌業務センターに集約されています。届出書などを書面で郵送する場合は同センター(〒060-8510 中央区大通西10丁目 札幌第2合同庁舎)へ送り、e-Taxでの提出と窓口への持参は所轄の税務署です。

確定申告の時期は積雪期にあたります。e-Taxに切り替えておけば、税務署へ出向かずに自宅から期限内に申告でき、令和9年分以後の65万円・75万円の要件にもそのまま対応できます。

よくある質問

令和8年分(2026年分)の申告から75万円を受けられますか?

受けられません。75万円の区分は令和9年分以後の所得税からで、令和8年分は現行の65万円・55万円・10万円で判定します。令和8年分の確定申告は、2027年2月16日(火)〜3月15日(月)です。

freeeやマネーフォワードを使っていれば、自動的に75万円になりますか?

なりません。対応ソフトの利用に加えて、帳簿の電子保存の要件を満たす設定・運用、必要な届出、e-Taxでの期限内申告がそろって初めて適用されます。設定の点検をおすすめします。

アパート経営などの不動産所得でも、75万円の対象になりますか?

貸付けが事業として行われている(事業的規模である)場合に限られます。事業的規模に当たらない不動産所得は、帳簿や申告の方法にかかわらず10万円の控除です。

住民税・国民健康保険料・個人事業税にも影響しますか?

住民税の所得割と、国民健康保険料の計算のもとになる所得は、控除が増えた分だけ下がります。一方、個人事業税の計算では青色申告特別控除を差し引かないため、事業税の額は変わりません。

移行の相談はどう進めればよいですか?

使用中の会計ソフト名、記帳の方法、直近の申告の状況をお問い合わせフォームからお知らせください。要件のチェックと、令和9年分に向けた移行の計画をご提案します。

まとめ

令和9年分以後、青色申告特別控除は75万円・65万円・10万円の3区分になり、65万円と75万円のどちらもe-Taxでの期限内申告が要件になります。75万円にはさらに仕訳帳・総勘定元帳の電子保存等が必要で、ソフトの対応・正しい設定・必要な手続きがそろって初めて対象になり得ます。令和9年分の帳簿は2027年1月から始まるため、令和8年中にソフトの確認と運用づくり、e-Taxの準備を済ませておきましょう。

札幌の公認会計士・税理士事務所

青色申告・帳簿体制のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ

  • 初回相談は無料(オンライン対応可)
  • フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
  • その場でご契約を迫ることはありません

対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り

出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次