青色申告のメリット・デメリット|白色との違いと65万円控除の要件

公認会計士・税理士 監修

この記事は、公認会計士・税理士が代表を務める札幌の会計事務所「ジェイスタート会計事務所」が監修しています。

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青色申告のメリットは、最大65万円の青色申告特別控除、家族への給与を経費にできる青色事業専従者給与、赤字を3年間繰り越せる純損失の繰越控除など、白色申告にない特典がそろうことです。デメリットは複式簿記の記帳と期限の管理で、令和9年分からは控除の要件も変わります。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

事業所得のある個人事業主は、原則として青色申告を選ぶのが一般的です。特別控除・専従者給与・赤字の繰越など白色申告にない特典が多く、クラウド会計を使えば複式簿記の負担も小さくできます。

  • 令和8年分の特別控除は、複式簿記と期限内申告に加えてe-Taxか電子帳簿保存で65万円、それがなければ55万円、簡易な記帳なら10万円
  • 令和9年分以後は75万円・65万円・10万円の3区分になり、65万円以上はどちらも期限内のe-Taxが要件
  • 家族への給与(青色事業専従者給与)を届出の範囲で経費にでき、赤字は翌年以後3年間繰り越せる
  • デメリットは複式簿記の記帳と書類の保存、期限の管理。期限後の申告では65万円・55万円の控除を受けられない
  • 承認申請の期限は、その年の3月15日(1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内)
目次

青色申告と白色申告は何が違う?特典と手間の比較

個人事業主・フリーランスの確定申告には、青色申告と白色申告の2つの方法があります。青色申告は、税務署の承認を受けて一定の帳簿をつける代わりに、税負担を軽くする特典を受けられる制度です。白色申告でも記帳と帳簿・書類の保存は必要で、「白色なら帳簿がいらない」わけではありません。

項目青色申告白色申告
事前の手続き青色申告承認申請書の提出が必要不要
帳簿正規の簿記(複式簿記)が原則。簡易な記帳も可(控除は10万円)簡易な記帳でよい
特別控除令和8年分は最大65万円なし
家族への給与届け出た範囲で、仕事に見合った額を経費にできる(青色事業専従者給与)定額の事業専従者控除のみ
赤字の扱い翌年以後3年間繰り越せる。前年分に繰り戻して還付を受ける方法もある原則として繰り越せない(被災した事業用資産の損失などを除く)
少額の設備の購入40万円未満の資産を年300万円まで一度に経費にできる(2026年4月1日以後の取得)この特例は使えない
期限後に申告した場合65万円・55万円の控除は受けられない(加算税・延滞税は別にかかる)控除への影響はない(加算税・延滞税は青色と同じくかかる)
青色申告と白色申告の主な違い(2026年10月時点の法令・所得税)

青色申告ができるのは、事業所得・不動産所得・山林所得がある人です。副業の収入が雑所得に当たる場合は、青色申告の対象になりません。また、不動産所得で65万円・55万円の控除を受けるには、貸付けが事業的規模であることが前提です。

青色申告の主なメリットは?特別控除・専従者給与・赤字の繰越

国税庁のタックスアンサー(No.2070 青色申告制度)が示すとおり、青色申告者はさまざまな特典を受けられます。個人事業主にとって効果が大きいものから順に整理します。

① 青色申告特別控除:令和8年分は最大65万円

控除額令和8年分までの要件令和9年分以後の要件
75万円区分なし65万円の要件に加えて、仕訳帳・総勘定元帳を電子帳簿保存法の要件どおりに電子保存すること等
65万円正規の簿記、貸借対照表・損益計算書の添付、期限内申告に加えて、e-Taxでの申告か電子帳簿保存正規の簿記、貸借対照表・損益計算書の添付に加えて、期限内のe-Tax
55万円正規の簿記、貸借対照表・損益計算書の添付、期限内申告区分としては残らない(e-Taxを加えて65万円へ)
10万円上記以外の青色申告者上記以外の青色申告者。ただし簡易簿記で前々年の収入が1,000万円を超える人は対象外
青色申告特別控除の区分(2026年10月時点の法令。令和9年分以後は令和8年度税制改正による)

令和8年分までの55万円と65万円の差は、e-Taxでの申告(または電子帳簿の保存)の有無だけです。クラウド会計ソフトとe-Taxを使えば手間の差は小さいため、65万円を前提に準備するのが合理的です。

計算例:申告方法による所得税の違い

例えば、令和8年分の事業収入が600万円、必要経費が300万円で、所得控除は基礎控除(104万円)だけのフリーランスの場合です(復興特別所得税は除く)。

  • 白色申告:300万円−104万円=196万円、196万円×10%−97,500円=98,500円
  • 青色・10万円控除:300万円−10万円−104万円=186万円、186万円×5%=93,000円
  • 青色・55万円控除:300万円−55万円−104万円=141万円、141万円×5%=70,500円
  • 青色・65万円控除:300万円−65万円−104万円=131万円、131万円×5%=65,500円

65万円控除と白色申告の所得税の差は、98,500円−65,500円=33,000円です。住民税(所得割10%)も65万円×10%=65,000円軽くなり、国民健康保険料の計算のもとになる所得も下がります。

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青色申告と白色申告の節税効果を比較する所得の見込みを入れると、控除の区分ごとの税負担の違いを比べられます。計算する

② 青色事業専従者給与:家族への給与を経費にできる

生計を一にする配偶者や親族で、その年を通じて一定期間を超えて専ら事業に従事する人(年齢の要件もあります)に支払う給与は、届け出た範囲内で、仕事の内容に見合った金額を必要経費にできます。白色申告の事業専従者控除には定額の上限があるため、家族が事業を手伝っている場合は青色申告の効果が大きくなります。

「青色事業専従者給与に関する届出書」は、経費にしたい年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した場合や、新たに専従者ができた場合は、その日から2か月以内)に提出します。専従者になった家族は、配偶者控除や扶養控除の対象から外れる点に注意します。

③ 純損失の繰越控除と繰戻し還付

事業の赤字(純損失)は、翌年以後3年間の黒字と相殺できます。開業初期に設備投資や広告費がかさんで赤字になっても、翌年以後の税負担を軽くできます。赤字の年に青色申告をし、その後も毎年続けて確定申告をすることが条件です。前年も青色申告をしていれば、赤字を前年の所得に繰り戻して所得税の還付を受ける方法もあります。

④ そのほかの特典

  • 少額減価償却資産の特例:2026年4月1日以後に取得した40万円未満の資産を、年300万円まで一度に経費にできる(2026年3月31日までの取得は30万円未満、2029年3月31日までの取得が対象)
  • 貸倒引当金(一括評価):年末の売掛金などの残高に一定の割合を掛けた額を、回収できなくなる場合に備えて必要経費にできる
  • 中小企業経営強化税制などの特別償却・税額控除や、賃上げ促進税制(個人は令和7年分〜令和9年分)を使える
  • 税務署が所得を更正するときは帳簿の調査にもとづいて行われ、推計による更正を受けない

青色申告のデメリットは?記帳・保存・期限の負担と対処法

青色申告のデメリットは、特典と引き換えに求められる記帳・保存・期限の管理です。どれも仕組みで負担を減らせるため、対処法とセットで確認しておきましょう。

デメリット内容対処法
複式簿記の記帳65万円・55万円の控除には正規の簿記が必要クラウド会計で銀行・カードの明細を連携すると、仕訳の多くを自動で起こせる
決算書の作成貸借対照表・損益計算書を作り、残高を合わせる月次で預金残高と帳簿を照合しておくと、年末の作業が軽くなる
帳簿・書類の保存帳簿と決算関係書類・現金預金取引等関係書類は7年(前々年分の所得が300万円以下なら現金預金取引等関係書類は5年)、その他の書類は5年電子で受け取った請求書・領収書は電子データのまま保存する(2024年1月1日以後は義務)
期限の管理期限後の申告では65万円・55万円の控除を受けられない申告期間の前半に申告することを目標に、記帳を月次で進める
承認の取消し帳簿の不備や期限後の申告が続くと、承認が取り消されることがある記帳と保存のルールを決めて守る
青色申告の主なデメリットと対処法(2026年10月時点)

デメリットの中心は複式簿記の記帳ですが、クラウド会計ソフトの普及でハードルは下がっています。銀行口座やカードを連携すれば、仕訳の多くは自動で起票されます。当事務所でもクラウド会計とAI(Claude)を組み合わせ、勘定科目の分類候補やチェックリストの作成を任せたうえで、税理士が最終確認する体制をとっています。

記帳・保存がずさんになると、承認取消しのリスクもあります。取消しになる具体的なケースと影響は青色申告の承認が取り消しになるケースで解説しています。簿記の基本は複式簿記入門も参考にしてください。

白色申告のままでよいケースはある?

事業の所得がごく小さく、控除による税負担の差が記帳の手間に見合わない場合は、白色申告を続ける選択もあります。ただし、所得が増えてから切り替えようとすると、承認申請の期限の関係で翌年分からになることがあります。事業を続ける見込みがあるなら、早めに青色申告へ移行しておくほうが有利です。

青色申告ではどんな帳簿・書類が必要?

必要な帳簿は、受けたい控除の区分で変わります。65万円・55万円の控除には、すべての取引を借方・貸方に分けて記録する正規の簿記が必要です。10万円の控除なら、現金出納帳などの簡易な帳簿でも認められます。

帳簿・書類内容必要になる区分
仕訳帳・総勘定元帳すべての取引を日付順に仕訳し、勘定科目ごとに集計した主要な帳簿65万円・55万円(令和9年分以後は75万円・65万円)
現金出納帳・預金出納帳現金・預金の出入りと残高の記録すべての区分(会計ソフトでは仕訳から自動で作られることが多い)
売掛帳・買掛帳・経費帳取引先ごとの売上・仕入の残高、経費の内訳簡易な記帳で10万円の控除を受ける場合の中心
固定資産台帳設備・車両などの取得日・取得価額・減価償却の記録すべての区分
青色申告決算書損益計算書と貸借対照表。確定申告書に添付する65万円・55万円は貸借対照表の添付が要件
青色申告で使う主な帳簿・書類(2026年10月時点)

会計ソフトで仕訳を入力すれば、総勘定元帳や出納帳、決算書はソフトの中で作られます。手作業で負担になるのは、領収書の整理と、預金残高・売掛金残高を帳簿と照合する作業です。月に一度、通帳と帳簿の残高が一致しているかを確かめる習慣をつけておくと、年末の決算が大幅に軽くなります。

令和9年分から何が変わる?75万円控除と準備すること

令和8年度税制改正で、令和9年分(2027年分)以後の青色申告特別控除は75万円・65万円・10万円の3区分になります。75万円は、65万円の要件(期限内のe-Tax)に加えて、仕訳帳・総勘定元帳を電子帳簿保存法の要件どおりに電子保存するなどの要件を満たす場合です。

令和8年分までは電子帳簿の保存だけでも65万円を受けられましたが、令和9年分以後は65万円にも期限内のe-Taxが要件になります。紙で申告している人は、e-Taxへの切り替えを検討しましょう。紙で申告した場合の控除額は、今後の国税庁の案内で確認が必要です。

令和9年分の帳簿は2027年1月1日からの取引が対象です。それまでに会計ソフトの対応状況と設定、e-Taxの準備を済ませておくと安心です。要件と準備の詳細は青色申告特別控除が最高75万円に(令和9年分からの要件と準備)で解説しています。

青色申告に切り替えた場合の効果や、65万円・75万円の要件を満たせるかは、記帳の方法とソフトの設定で変わります。初回無料で確認できます。

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青色申告を始めるには?承認申請の期限と手続きの流れ

青色申告は、申請の期限を過ぎるとその年分には使えません。開業時と切り替え時の手続きは次の流れです。

  1. 開業届を出す個人事業の開業届出書は、開業の日から1か月以内に納税地の税務署へ提出します。
  2. 青色申告承認申請書を出す青色申告をしたい年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した場合は、開業の日から2か月以内)に提出します。開業届と同時に出すと、出し忘れを防げます。
  3. 専従者給与の届出を出す家族に給与を払う場合は、青色事業専従者給与に関する届出書もあわせて提出します。
  4. 帳簿の仕組みを整える会計ソフトを選び、事業用の口座とカードを生活用と分けて、明細を連携します。
  5. 承認を確認する原則として、提出した年の12月31日までに却下の通知がなければ、承認されたものとみなされます。

帳簿の付け方や科目の選び方は、中小企業の経理・会計処理ガイドでも整理しています。

よくある質問

すでに白色申告で事業をしていますが、年の途中から青色申告に切り替えられますか?

その年の3月15日までに青色申告承認申請書を出せば、その年分から青色申告になります。3月16日以後に提出した場合は、翌年分からの適用です。年の途中から一部の月だけ青色申告にすることはできません。

会社員の副業でも青色申告はできますか?

副業の所得が事業所得や不動産所得に当たる場合はできます。継続性や規模、帳簿の有無などから雑所得に当たる場合は、青色申告の対象外です。副業の位置づけに迷う場合は、取引の実態を整理してから判断しましょう。

青色申告をやめたいときは、どうすればよいですか?

やめようとする年の翌年3月15日までに「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出します。取りやめると特別控除や赤字の繰越しなどの特典がなくなるため、記帳の負担だけを理由にやめる前に、ソフトの見直しや記帳の外部委託も検討する価値があります。

法人の青色申告にもメリットはありますか?

あります。青色申告の法人は、欠損金を10年間繰り越せ(2018年4月1日より前に開始した事業年度の分は9年)、中小法人等は所得の全額まで控除できます。承認申請書は、設立の日以後3か月を経過した日と最初の事業年度終了の日のうち、早い日の前日までに提出します。

まとめ

青色申告は、特別控除・専従者給与・赤字の繰越などの特典が大きく、事業所得のある個人事業主にとっては原則として選ぶ価値のある制度です。デメリットの記帳・保存・期限の管理は、クラウド会計とe-Taxで負担を小さくできます。令和9年分からは65万円以上の控除にe-Taxが要件になるため、令和8年分の申告とあわせて準備を進めておきましょう。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

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