青色申告の承認が取り消されるのは、帳簿書類の備付け・記録・保存が法令どおりでない場合、帳簿書類について税務署長の指示に従わない場合、取引の隠ぺい・仮装がある場合です。取消しを受けると青色申告特別控除や赤字の繰越控除などを失い、再び承認を受けるまで白色申告が続きます。
この記事の結論
個人の青色申告の承認は、帳簿書類の不備(税務調査で提示しない場合を含む)、税務署長の指示違反、隠ぺい・仮装のいずれかがあると、その年分までさかのぼって取り消されることがあります。法人は、期限内に申告書を出さないことが2期続く場合も取消しの対象です。
- 取り消されると、青色申告特別控除・青色事業専従者給与・純損失の繰越控除・少額減価償却資産の特例などが使えなくなる
- 個人の期限後申告は所得税法上の取消事由ではないが、その年分の青色申告特別控除は最大10万円になる
- 取消しの対象年より前の青色の年に生じた赤字は、確定申告を続けていれば繰越控除を続けられる
- 取消しの通知から1年以内の再申請は却下されることがあり、申請期限との関係で白色の期間が長くなることもある
- 予防の基本は、期限内申告、日々の記帳、証憑と電子取引データの保存、税務調査での帳簿の提示
青色申告の承認が取り消されるのはどんなケース?
青色申告は、帳簿をきちんとつけて保存することを条件に、税金の特典を認める制度です。そのため取消事由も、帳簿書類の扱いに関するものが中心で、個人については所得税法で次の3つが定められています。
| 取消事由 | 具体的な例 | 対象 |
|---|---|---|
| 帳簿書類の備付け・記録・保存が法令どおりに行われていない | 帳簿を作っていない、記載が不十分で所得を正しく計算できない、税務調査で帳簿書類を提示しない | 個人・法人 |
| 帳簿書類について税務署長の指示に従わない | 記帳の方法について指導を受けても改めない | 個人・法人 |
| 取引の全部または一部を隠ぺい・仮装して記載している | 売上の除外、架空の経費の計上、二重帳簿の作成 | 個人・法人 |
| 確定申告書を期限内に提出しない | 2事業年度続けて期限後申告または無申告になる | 法人 |
取消しを受けると、取消しの対象となった年分(法人は事業年度)以後の申告は、青色申告書以外の申告書とみなされます。取消しは事由が生じた年までさかのぼって行われるため、税務調査の時点から見て数年前の年分から白色申告に変わることもあります。
2024年1月1日以後は、メールやネットで受け取った請求書・領収書などの電子取引データを、電子帳簿保存法の要件に沿って電子データのまま保存することが義務になっています。保存の要件を満たしていない場合も青色申告の承認の取消しの対象となり得るとされており、直ちに取り消されるわけではないものの、保存のルールを整えておく必要があります。
税務調査で帳簿を見せないと、それだけで取消しの理由になる
帳簿書類が手元にあっても、税務調査の際に提示しなければ、備付け・保存が行われていないものとして扱われるおそれがあります。調査の日程の調整や資料の準備が難しいときは、拒否するのではなく、調査官に事情を伝えて相談します。
期限後申告は取消しの対象になる?個人と法人の違い
法人は、期限内に確定申告書を提出しなかったことも取消事由で、国税庁の事務運営指針では2事業年度続けて期限内に申告書の提出がない場合に取り消す取扱いです。一方、個人の場合、所得税法上の取消事由に期限後申告そのものは挙げられていません。
ただし、個人が期限後申告をすると、その年分の青色申告特別控除は最大10万円になります。65万円・55万円の控除は、期限内に申告することが要件だからです。「取り消されないなら期限後でもよい」とは言えず、期限を守ることが青色申告の特典を生かす前提になります。
| 申告の状況 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 期限後申告が1回 | その年分の青色申告特別控除は最大10万円。無申告加算税・延滞税がかかる | 直ちに取消しにはならないが、無申告加算税・延滞税がかかる |
| 期限後申告・無申告が2年(2期)続く | 各年分とも控除は最大10万円。帳簿の不備などがあれば取消しの対象になる | 取消しの対象になる |
| 期限内に申告 | 要件を満たせば65万円(または55万円)の控除 | 青色申告の特典をそのまま使える |
期限後申告には無申告加算税(原則15%、50万円を超える部分は20%など)と延滞税もかかります。令和8年分の所得税の確定申告期間は2027年2月16日から3月15日までです。
取り消されるとどうなる?失う特典と税負担の目安
取消しを受けると白色申告になり、青色申告だけに認められている特典がまとめて使えなくなります。個人と法人で失う主な特典は次のとおりです。
| 特典 | 対象 | 取消し後の扱い |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除(令和8年分まで最大65万円、令和9年分から要件を満たせば75万円) | 個人 | 控除がなくなる |
| 青色事業専従者給与 | 個人 | 家族への給与は経費にできず、上限のある事業専従者控除に変わる |
| 純損失(法人は欠損金)の繰越控除 | 個人(3年)・法人(10年) | 取消しの対象年以後に生じた赤字は繰り越せない |
| 純損失・欠損金の繰戻しによる還付 | 個人・法人 | 使えない |
| 少額減価償却資産の特例(40万円未満、年300万円まで) | 個人・法人(中小企業者等) | 使えない(10万円未満の消耗品・20万円未満の一括償却のみ) |
| 特別償却・税額控除(賃上げ促進税制・中小企業経営強化税制など) | 個人・法人 | 使えない |
赤字の繰越控除は、赤字が生じた年分を青色申告で申告し、その後も連続して確定申告をしていれば使える仕組みです。そのため、取消しの対象年より前の青色の年に生じた赤字は、取消し後の年でも繰越控除を続けられます。一方、取消しが赤字の年までさかのぼると、その赤字は繰り越せなくなり、黒字に転じた年の所得が大きくなります。
計算例:65万円の控除を失った場合の負担増
例えば、青色申告特別控除65万円を適用して課税所得が400万円だった個人事業主が、取消しにより控除を受けられなくなった場合です。課税所得は400万円+65万円=465万円になり(所得税率20%の区分)、増える税額は次のとおりです。
- 所得税:650,000円×20%=130,000円
- 復興特別所得税:130,000円×2.1%=2,730円
- 住民税(所得割):650,000円×10%=65,000円
- 合計:130,000円+2,730円+65,000円=197,730円
年に約20万円の負担増になり、このほか所得をもとに計算する国民健康保険料も増えます。令和9年分以後に75万円の控除を受けられる場合は、失う額はさらに大きくなります。
ツール青色申告と白色申告の税額を比べる所得の金額を入れるだけで、青色申告の特典があるときとないときの税額の差を試算できます。計算する
過去の年分にさかのぼって取り消されると、特典を使っていた分の税額が増え、修正申告や更正とあわせて加算税・延滞税がかかります。隠ぺい・仮装が理由の場合は重加算税(過少申告の場合35%)の対象となり、さかのぼって課税できる期間も原則の5年から7年に延びます。加算税の仕組みは加算税・延滞税と修正申告の解説で確認できます。
取消しの影響額は、さかのぼる年数や赤字の繰越の状況で大きく変わります。帳簿や申告の状況を確認したうえで、初回無料でご相談いただけます。
無料で相談する取消しを防ぐには?期限内申告と帳簿の整備
取消事由のほとんどは帳簿書類の扱いに関するものなので、予防策も日々の記帳と保存に集約されます。次の点を習慣にしておけば、取消しのリスクは大きく下げられます。
- 確定申告は期限内に、できればe-Taxで提出する(65万円の控除は期限内申告とe-Taxなどが要件)
- 毎月、通帳・カード明細・領収書をもとに記帳し、決算期にまとめて作業しない
- 帳簿と決算関係書類・現金預金取引等関係書類は7年間保存する(前々年分の所得が300万円以下なら現金預金取引等関係書類は5年)
- 電子取引で受け取った請求書・領収書は、電子データのまま検索できる形で保存する
- 税務調査の連絡があったら、帳簿書類を提示できるよう準備し、日程は調査官と相談する
決算の前には、次の書類がそろっているかも確認しておきます。売上・仕入の請求書と入金記録、預金通帳と借入金の返済予定表、経費の請求書・領収書、固定資産の取得・売却の資料、棚卸表(在庫の数量と金額)です。手順は経理・決算セルフチェックで順に確認できます。
本業が忙しく記帳が滞りがちな場合は、会計ソフトの自動取込みを使うか、記帳を外部に任せる方法もあります。当事務所の記帳代行プランの内容と流れもあわせてご覧ください。青色申告の特典そのものの比較は青色申告のメリット・デメリットで整理しています。
取消しの通知が届いたら?不服申立てと再申請の流れ
取消しは書面で通知され、通知書には取消しの理由となった事実が記載されます。通知を受けてから再び青色申告に戻るまでは、次の流れで進みます。
- 通知書の理由と対象年を確認するどの事由で、いつの年分から取り消されたのかを確認し、影響する年分の税額を把握します。
- 不服があれば申立てを検討する取消しは処分のため、通知を受けた日の翌日から3か月以内に、再調査の請求か国税不服審判所への審査請求ができます。
- 取消し後の年分は白色で申告する修正申告が必要な年分があれば対応し、取消し後の年分は白色申告で期限内に申告します。
- 1年が過ぎてから承認申請書を出す取消しの通知を受けた日以後1年以内に提出した承認申請は、却下されることがあります。申請書は、青色申告を始めたい年の3月15日までに提出します。
- 記帳と保存の体制を立て直す取消しの原因になった点を改め、再び承認を受けたあとに同じ問題が起きないようにします。
例えば、2026年6月に取消しの通知を受けた場合、令和9年分の申請期限である2027年3月15日は通知から1年以内のため、この時期の申請は却下されることがあります。この場合、青色申告に戻れるのは早くて令和10年分(申請期限は2028年3月15日)からです。通知の時期によっては、白色申告の期間が数年に及ぶことを想定しておきます。
札幌市内の税務署に書面で申請する場合
青色申告承認申請書などを書面で郵送する場合、札幌市内の5つの税務署あての書類は、2026年7月10日から札幌業務センターが受け付けています。e-Taxで提出する場合や窓口に持参する場合は、これまでどおり所轄の税務署あてです。
よくある質問
自分から青色申告をやめることはできますか?
できます。青色申告をやめようとする年の翌年3月15日までに「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出します。ただし、取りやめの届出をした日以後1年以内に再び承認申請をすると却下されることがあるため、取消しと同様に、すぐには青色に戻れない点に注意します。
白色申告になったら、記帳や帳簿の保存は不要になりますか?
不要にはなりません。白色申告の事業所得者などにも、記帳と帳簿書類の保存の義務があります。再び青色申告の承認を受けるためにも、白色の期間中から複式簿記での記帳を続けておくと移行がスムーズです。
法人が青色申告を取り消されると、何が一番困りますか?
影響が大きいのは欠損金の繰越控除です。青色申告の法人は欠損金を10年間繰り越せますが、取消しの対象となった事業年度以後に生じた欠損金は繰り越せなくなります。中小法人の少額減価償却資産の特例や、賃上げ促進税制などの税額控除も使えなくなります。
申告期限に間に合いそうにないときは、どうすればよいですか?
まずは期限内に申告書を提出することを優先します。期限後になると、その年分の青色申告特別控除は最大10万円になるためです。計上漏れなどの誤りに後から気づいた場合は、修正申告や更正の請求で直せます。間に合わない理由が災害などのやむを得ない事情なら、期限の延長を申請できる場合もあります。
まとめ
青色申告の承認の取消しは、帳簿書類の不備や調査での不提示、隠ぺい・仮装が中心で、法人は期限後申告が2期続く場合も対象です。取り消されると控除や赤字の繰越などの特典を失い、再申請にも1年の制限があるため、期限内申告と日々の記帳・保存で取消しを防ぐことが最も確かな対策です。
札幌の公認会計士・税理士事務所
青色申告・記帳のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
