贈与税申告の代行費用は、申告書作成の基本報酬に、土地や非上場株式の評価、相続時精算課税や住宅取得等資金の非課税といった特例の手間を加算して決まります。現金だけで特例を使わないなら自分でも申告しやすく、評価や特例が絡むほど税理士に頼む価値が大きくなります。
この記事の結論
費用は「基本報酬+財産評価・特例の加算」で決まるため、一律の相場では判断できません。現金のみ・特例なしなら自分で、土地・非上場株式・特例ありなら税理士へ、が大きな目安です。
- 費用を押し上げるのは、土地・建物と非上場株式の評価、特例の適用、贈与の件数や関係者の多さ
- 現金だけの贈与は計算が単純で、国税庁の作成コーナーを使えば自分でも申告しやすい
- 相続時精算課税や住宅取得等資金の非課税は、税額がゼロでも期限内の申告・届出が前提
- 2026年中に受けた贈与の申告・納付は2027年2月1日〜3月15日
- 見積りでは、評価・電子申告・税務署対応・実費が含まれるかを確認する
贈与税申告の代行費用はどう決まる?
多くの事務所では、申告書作成の基本報酬に、財産評価や特例適用の手間に応じた加算を積み上げる料金体系をとっています。贈与財産の金額に応じた段階制にしている事務所もあります。
同じ贈与税の申告でも、現金100万円と土地の持分では作業量がまったく違います。費用を比べるときは総額だけでなく、どの作業にいくらかかっているのかを見積りの内訳で確認すると、納得して依頼できます。
| 費用を左右する要素 | 費用が抑えめになりやすい場合 | 費用が上がりやすい場合 |
|---|---|---|
| 財産の種類 | 現金・預金、上場株式 | 土地・建物、非上場株式、借地権 |
| 評価の手間 | 残高や終値で金額が決まる | 路線価・倍率による評価、形状の補正、株価の算定 |
| 特例の適用 | 暦年課税の基礎控除だけ | 相続時精算課税、住宅取得等資金の非課税、配偶者控除、事業承継税制 |
| 贈与の件数・関係者 | 1人から1回 | 複数の贈与者・受贈者、年内に複数回、過去の贈与の整理が必要 |
| 資料のそろい方 | 契約書・通帳・評価資料がそろっている | 資料を一から集める、預金の名義の確認が必要 |
| 期限までの時間 | 贈与の直後や年明け早々に依頼 | 期限の直前、または期限後の申告 |
インターネットで見かける料金の目安は、含まれる作業の範囲がそろっていないため、単純には比べられません。当事務所の料金の考え方と契約までの流れは、料金・契約・業務フローでご確認いただけます。
費用が上がりやすいのはどんな贈与?
費用が上がる要因に共通するのは、「評価」と「特例」に手間がかかることです。裏を返せば、現金や上場株式だけで特例も使わない申告であれば、代行費用は比較的抑えられる傾向にあります。
土地・建物の贈与
土地は、路線価が定められた地域では路線価に奥行や形状などの補正を加えて評価し、それ以外の地域では固定資産税評価額に国税局が定める倍率を掛けて評価します。持分の贈与なら、評価額に持分割合を掛けます。建物は固定資産税評価額をもとに評価しますが、賃貸中の土地・建物は評価の方法が変わります。
不動産を贈与で受けると、贈与税のほかに不動産取得税(北海道:土地・住宅3%、住宅以外の家屋4%。宅地は2027年3月31日までの取得なら課税標準が2分の1)と、名義を変える登記の登録免許税もかかります。相続で取得した場合は不動産取得税がかからないため、贈与と相続のどちらで渡すかで負担が変わります。
小規模宅地等の特例は贈与では使えない
自宅や事業用の土地の評価を最大80%減らす小規模宅地等の特例は、相続や遺贈で取得した土地だけが対象です。贈与には使えず、相続時精算課税で贈与した土地も、相続のときにこの特例の対象になりません。自宅の土地を生前に渡すかどうかは、相続税への影響まで見て決めます。
非上場株式の贈与
自社株などの非上場株式は、会社の規模や受け取る人の立場によって、類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式などから評価方法を判定し、直前の決算書や法人税申告書をもとに株価を計算します。会社の資産に土地や保険があると、その時価の確認も必要になります。
後継者への贈与で事業承継税制(特例措置)を使う場合は、特例承継計画の提出期限が2027年9月30日、贈与の期限が2027年12月31日です。認定の申請や継続届出も続くため、通常の贈与税申告とは別の手間と費用がかかります。
自分で申告できるのはどんな場合?
大きな目安としては、現金のみ・特例なしなら自分で、不動産・非上場株式・特例ありなら専門家へ、と考えるとよいでしょう。現金の贈与は財産の評価という工程がないため、国税庁の確定申告書等作成コーナーで申告書を作り、e-Taxで送信するか印刷して提出する方も多いケースです。
自分で申告しやすいケース
- 親や祖父母から現金・預金をもらった
- 上場株式を移管してもらった
- 暦年課税で、特例を使わない
- 贈与者が1人で、年内の贈与が1回か少ない
税理士に頼んだほうがよいケース
- 土地・建物、その持分をもらった
- 自社株など非上場株式をもらった
- 相続時精算課税や住宅取得等資金の非課税を使う
- 複数の人から贈与を受けた、過去の贈与も整理したい
- 将来の相続税まで見て贈与の方法を決めたい
計算例:父から現金300万円の贈与を受けた場合(暦年課税)
例えば、その年に受けた贈与がこの300万円だけの場合です。
- 基礎控除後の課税価格:300万円−110万円=190万円
- 贈与税:190万円×10%=19万円(190万円は速算表で最も低い税率10%の区分)
計算は単純ですが、同じ年に別の人からも贈与を受けていれば、合計してから基礎控除を差し引きます。
ツール暦年課税の贈与税額を自動計算する贈与を受けた金額と贈与者との関係を入れると、一般税率・特例税率で贈与税額を確認できます。計算する
特例を使う申告は何が難しい?
特例は、要件を1つ満たさないだけで適用できず、後からやり直しがきかないものが多くあります。書類の添付漏れひとつが大きな税額の差になることもあるため、特例を使う申告は、迷ったら申告前に相談しておくのが安全です。
| 特例 | 主な内容 | 申告で注意する点 |
|---|---|---|
| 相続時精算課税 | 60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与。年110万円の基礎控除と累計2,500万円の特別控除、超えた部分は一律20% | 最初の年の申告期限までに選択届出書を出す。一度選ぶと暦年課税に戻せず、贈与した財産は相続のときに加算される |
| 住宅取得等資金の非課税 | 2026年12月31日までの贈与で、省エネ等住宅は1,000万円、それ以外は500万円まで非課税 | 受贈者の合計所得2,000万円以下、床面積40〜240㎡などの要件。期限内の申告と証明書類の添付が必要。2027年以後の扱いは2026年10月時点で決まっていない |
| 贈与税の配偶者控除 | 婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産やその取得資金を贈与した場合、基礎控除とは別に最高2,000万円を控除 | 同じ配偶者からは一生に一度。登記事項証明書などの添付が必要 |
| 事業承継税制(特例措置) | 後継者が非上場株式の贈与を受けた場合に、贈与税の納税を猶予 | 特例承継計画の提出期限は2027年9月30日、贈与の期限は2027年12月31日。猶予が続く間も届出が続く |
計算例:住宅取得等資金として1,200万円の贈与を受けた場合
例えば、父から省エネ等住宅の購入資金として1,200万円の贈与を受け、要件を満たして住宅取得等資金の非課税と暦年課税の基礎控除を使う場合です。
- 非課税枠を超える部分:1,200万円−1,000万円=200万円
- 基礎控除後の課税価格:200万円−110万円=90万円
- 贈与税:90万円×10%=9万円
期限内に申告をしないと非課税枠そのものが使えず、1,200万円全体に贈与税がかかる計算になります。
暦年課税で贈与した財産は、贈与者が亡くなったときに一定期間内のものが相続財産に加算されます。相続開始が2026年12月31日までなら3年以内、2027年1月1日〜2030年12月31日は2024年1月1日以後の贈与、2031年1月1日以後は7年以内が対象で、延びた期間の贈与は総額100万円まで加算しません。贈与税の申告は、こうした相続への影響を見直すよい機会でもあります。
無料ツール暦年贈与と相続時精算課税を比較する贈与の金額と年数を入れて、2つの制度の贈与税と相続時の負担の違いを試算できます。計算する
特例は要件が1つ欠けても使えないことがあります。贈与の前でも後でも、初回無料で要件を確認できます。
無料で相談する申告の期限はいつ?遅れるとどうなる?
贈与税の申告と納付の期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。2026年中に受けた贈与なら、2027年2月1日(月)〜3月15日(月)が申告期間になります。所得税の確定申告と時期が重なるため、税理士に頼むなら年明け早めの依頼が安心です。
期限を過ぎると、納める税額に対して無申告加算税(原則15%、50万円を超える部分は20%、300万円を超える部分は30%)と延滞税がかかることがあります。税務署の調査の通知を受ける前に自主的に申告すれば、加算税が軽くなる場合があります。
期限後の申告では使えない特例がある
住宅取得等資金の非課税は期限内の申告が前提で、相続時精算課税も最初の年の申告期限までに選択届出書を出さないと選べません。期限を過ぎてから気づくと、税額がゼロになるはずだった贈与にも税金がかかることがあります。
見積りを取るときに確認することは?
同じ「贈与税申告の代行」でも、事務所によって含まれる作業の範囲が違います。見積りの段階で次の点を確認しておくと、後から追加の費用で驚くことを防げます。
- 財産の評価(土地・建物・非上場株式)が基本報酬に含まれるか、別の加算か
- 特例の要件確認と添付書類の準備まで含まれるか
- 電子申告での提出と、申告後の税務署からの問い合わせ対応が含まれるか
- 登記事項証明書・評価証明書などの取得費用(実費)の扱い
- 財産が追加になった場合や、期限が近い場合の追加費用の条件
- 翌年以降の贈与や相続への影響について、助言を受けられるか
依頼の前に次の資料をそろえておくと、見積りが正確になり、作業も早く進みます。
- 贈与契約書(作っていれば)と、振込の記録が分かる通帳の写し
- 不動産:登記事項証明書、固定資産税の課税明細書または評価証明書、公図や測量図
- 非上場株式:直前の決算書・法人税申告書、株主名簿
- 住宅取得等資金:売買契約書や工事請負契約書、新しい住宅の登記事項証明書、省エネ等の基準を満たす証明書
- 過去の贈与税の申告書や、相続時精算課税選択届出書の控え
- 贈与を受けた人のマイナンバーが分かる書類と本人確認書類
当事務所に贈与税の申告を相談する場合
当事務所では、決算や申告だけを単発でお受けするスポットのご依頼は承っていません。贈与税の申告は、贈与の進め方や将来の相続税への備え、事業や不動産を含めた資産全体の継続的なサポートとあわせてご相談いただいています。顧問契約での支援の内容は会計・税務顧問のサポート内容をご覧ください。
札幌市内にお住まいの場合の提出先
贈与税の申告書は、贈与を受けた人の住所地を所轄する税務署に提出します。市内は区ごとに5つの税務署(札幌中・札幌北・札幌南・札幌西・札幌東)に分かれ、中央区は西側の地域が札幌西税務署の管轄になるなど区の中で分かれる所もあるため、個別の住所は国税庁の管轄区域の案内で確認します。
2026年7月10日からは、市内の5署あての書面の申告書は札幌業務センターへ郵送する扱いになりました。e-Taxでの送信や窓口への持参は、従来どおり所轄の税務署で受け付けています。
よくある質問
毎年110万円以下の贈与なら、申告は不要ですか?
暦年課税で、その年に受けた贈与の合計が110万円以下なら、贈与税はかからず申告も不要です。ただし相続時精算課税を選んだ贈与者からの贈与は別の計算になり、暦年課税でも贈与者が亡くなったときに一定期間内の贈与は相続財産に加算されます。贈与の事実を示せるよう、契約書と振込の記録は残しておきます。
税理士報酬は、贈与税の計算で差し引けますか?
差し引けません。贈与税は受け取った財産の価額をもとに計算するため、税理士報酬や登記の費用は課税価格から差し引く対象になりません。
不動産の名義変更(登記)も一緒に頼めますか?
登記の申請は司法書士の業務です。税理士は財産の評価と贈与税の申告を担当し、登記は司法書士と連携して進めるのが一般的です。登記に使う書類は評価にも使うため、早めに共有すると手続きが重なりません。
贈与をする前に相談したほうがよいですか?
できれば贈与の前が理想です。贈与の時期や金額、暦年課税と相続時精算課税のどちらにするか、特例の要件を満たすかは、贈与した後では変えられないことが多いためです。
税理士への依頼は、いつまでにすればよいですか?
現金だけの申告なら期限の前でも対応しやすいものの、土地や非上場株式がある場合は、資料の取り寄せと評価に時間がかかります。贈与を受けた年の年内か、遅くとも年明け早々に依頼すると、特例の要件や添付書類を落ち着いて確認できます。
まとめ
贈与税申告の代行費用は、基本報酬に財産評価と特例の手間を加算して決まり、土地・非上場株式・特例の有無で大きく変わります。現金のみで特例を使わない申告は自分でもしやすい一方、住宅取得等資金の非課税や相続時精算課税は期限内の手続きが前提で、やり直しがききません。見積りでは作業の範囲と実費を確認し、特例を使うなら贈与の前の段階で相談しておくと安心です。
札幌の公認会計士・税理士事務所
贈与税の申告と生前贈与のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
- 国税庁 タックスアンサー「贈与税の申告と納税」
- 国税庁 タックスアンサー「相続時精算課税の選択」
- 国税庁 タックスアンサー「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
- 国税庁 タックスアンサー「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
