相続対策の基本|生前贈与・生命保険・小規模宅地の特例と進める順番

  • URLをコピーしました!

相続対策の基本は、①財産の把握と税額の試算→②分割対策(遺言など)→③納税資金対策→④節税対策の順で進めることです。相続税は遺産が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合にかかるため、まず自分の家の財産が基礎控除を超えるかを確かめます。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

試算で相続税が「かかるかどうか」を確かめ、遺言で分け方を決め、納税資金を用意したうえで、生前贈与・生命保険・特例で税額を抑える順番が基本です。分け方が決まらないと使えない特例があるため、節税より先に分割対策を考えます。

  • 基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数。相続人が配偶者と子2人なら4,800万円
  • 暦年贈与の持ち戻しは、2026年12月31日までの相続開始なら3年。2027年1月1日以後は段階的に延び、2031年1月1日以後の相続開始は7年
  • 死亡保険金は500万円×法定相続人の数まで非課税
  • 自宅の土地は小規模宅地等の特例で330㎡まで80%減額。分割の確定と申告が前提
  • 配偶者の税額軽減は大きいが、二次相続まで見ると配偶者に寄せすぎないほうがよい場合がある
目次

相続対策は何から始める?4つの対策と進める順番

相続対策というと節税が注目されがちですが、順番を誤ると逆効果になることがあります。贈与で預金を減らしすぎて納税資金が足りなくなったり、遺言がないまま分割がまとまらず特例が使えなかったりするためです。

対策目的主な手段
①現状把握相続税がかかるか、いくらかかるかを知る財産と債務の一覧、評価額の確認、税額の試算
②分割対策争いを防ぎ、特例を使える状態にする遺言書、家族での話し合い、代償分割の準備
③納税資金対策申告期限(相続の開始を知った日の翌日から10か月以内)までに納める現金を用意する生命保険、預金の確保、不動産の活用や売却の検討
④節税対策税額を適法に抑える生前贈与、生命保険の非課税枠、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減
相続対策の4つの柱(①から順に検討する)

①の試算で相続税がかからないと分かれば、対策の中心は②の分割対策になります。相続税がかかる場合も、②と③を固めてから④に進むと、特例の使い漏れや納税資金の不足を防げます。

相続税はいくらからかかる?基礎控除と財産の棚卸し

国税庁のタックスアンサー(No.4102)によると、相続税は、遺産総額から債務・葬式費用などを差し引き、相続開始前の一定の贈与を加えた正味の遺産額が、基礎控除額を超える場合にかかります。例えば相続人が配偶者と子2人なら、4,800万円までは相続税がかかりません。

計算例:法定相続人の数と基礎控除

  • 法定相続人1人:600万円×1人+3,000万円=3,600万円
  • 法定相続人2人:600万円×2人+3,000万円=4,200万円
  • 法定相続人3人:600万円×3人+3,000万円=4,800万円
  • 法定相続人4人:600万円×4人+3,000万円=5,400万円

※相続を放棄した人も法定相続人の数に含めます。養子は、実子がいる場合は1人、いない場合は2人まで数に含めます。

土地は路線価(路線価が定められていない地域は固定資産税評価額に倍率を掛ける方法)、建物は固定資産税評価額をもとに評価するため、時価より低くなるのが一般的です。財産リストを作り、概算でよいので税額の試算までしておくと、対策の要否がはっきりします。

  • 不動産:土地・建物の所在と面積、固定資産税の課税明細書
  • 預貯金・有価証券:金融機関ごとの残高。家族名義でも実質的に本人の預金(名義預金)は相続財産になる
  • 生命保険・死亡退職金:契約者・被保険者・受取人と金額
  • 自社株・事業用の資産:会社を経営している場合の株式の評価と承継方針
  • 債務:借入金・未払金・預り敷金など、差し引ける債務
無料
ツール
相続税の詳細シミュレーション財産の内訳と家族構成を入れると、相続税の総額と各人の負担の目安を試算できます。計算する

生前贈与はどう使う?持ち戻し期間の延長と2つの課税方式

暦年課税の贈与は、受け取る人1人につき年110万円の基礎控除があります。ただし、相続や遺贈で財産を取得した人が相続開始前の一定期間に受けた贈与は、相続財産に加算(持ち戻し)されます。この加算期間は改正で延びますが、2026年12月31日までの相続開始では、まだ3年です。

相続開始の時期相続財産に加算される贈与
2026年12月31日まで相続開始前3年以内の贈与
2027年1月1日〜2030年12月31日2024年1月1日以後の贈与(加算期間が段階的に延びる)
2031年1月1日以後相続開始前7年以内の贈与
暦年贈与の加算期間。延びた期間(3年より前)の贈与は、合計100万円まで加算しません(2027年1月2日以後の相続開始)。

加算期間が延びるほど、亡くなる直前の駆け込み贈与は効果が薄れます。早く始めて長く続けること、そして相続や遺贈で財産を取得しない孫などへの贈与を組み合わせることが、より重要になっています。

計算例:年200万円を贈与した場合の贈与税

例えば、父から18歳以上の子へ、1年に200万円を贈与する場合です。

  • 基礎控除後の金額:200万円−110万円=90万円
  • 贈与税:90万円×10%=9万円

※200万円以下の部分に適用される税率10%で計算した概算です。贈与税の申告は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに行います。

まとまった財産を移すなら、相続時精算課税も選択肢です。60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で選べ、特別控除の2,500万円に加えて年110万円の基礎控除があります(2024年1月1日以後の贈与)。基礎控除の範囲の贈与は相続財産に加算されませんが、一度選ぶと暦年課税に戻れません。仕組みは相続時精算課税制度のメリット・デメリットで整理しています。2つの方式の違いは暦年贈与と相続時精算課税の比較計算ツールでも確かめられます。

贈与の特例2026年10月時点の内容
住宅取得等資金の非課税省エネ等の住宅は1,000万円、その他は500万円まで。2026年12月31日までの贈与が対象(受贈者の合計所得金額2,000万円以下、床面積40〜240㎡)。期限後の延長は未定
教育資金の一括贈与2026年3月31日で終了
結婚・子育て資金の一括贈与2027年3月31日までの拠出が対象、1,000万円まで
生前贈与で使われる主な非課税の特例(期限に注意)

生命保険の非課税枠はどう使う?

被相続人が保険料を負担していた死亡保険金を相続人が受け取ると、相続税の対象になりますが、「500万円×法定相続人の数」までは非課税です。預金の一部を一時払い終身保険に変えることで課税価格を圧縮でき、納税資金や代償分割の原資にもなり得ます。

計算例:非課税枠の金額

例えば、法定相続人が配偶者と子2人の3人の場合、非課税枠は500万円×3人=1,500万円です。受け取った保険金のうち、この金額までは相続税の課税価格に含めません。

保険料を負担した人被保険者受取人かかる税金
父父子(相続人)相続税(非課税枠あり)
子父子所得税(一時所得)
父母子贈与税
死亡保険金の契約形態とかかる税金

死亡保険金は受取人固有の財産で、遺産分割の対象になりません。自宅を継ぐ子が他の相続人に代償金を払う「代償分割」の原資にするなど、分け方とあわせて受取人を決めると効果的です。保険を使った対策の詳細は保険を活用した相続対策で解説しています。

小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減はどう効く?

小規模宅地等の特例は、相続税対策の中でも効果の大きい制度です。自宅(特定居住用宅地等)なら330㎡まで評価額を80%減額できるため、土地の評価が高いほど効果が大きくなります。

宅地の種類限度面積減額割合
特定居住用(自宅の敷地)330㎡80%
特定事業用・特定同族会社事業用400㎡80%
貸付事業用(賃貸住宅・駐車場など)200㎡50%
小規模宅地等の特例(2026年10月時点)。居住用と事業用は併用で最大730㎡。相続開始前3年以内に新たに事業や貸付に使い始めた宅地は、原則として対象外です。

自宅の敷地は、配偶者が取得すれば要件なく使えます。同居していた親族は申告期限まで住み続けて持ち続けること、別居の親族は自分の持ち家がないことなど、取得する人によって要件が変わります。配偶者には「1億6,000万円または法定相続分のどちらか多い金額」までの税額軽減があります。どちらの制度も、税額が0円になる場合でも申告が必要で、申告期限までに遺産分割がまとまっていることが前提になる場面が多くあります。

計算例:財産1億円(自宅330㎡を含む)・相続人3人の場合

例えば、父の財産が自宅の土地(評価額5,000万円・330㎡)、建物1,000万円、預金4,000万円の合計1億円で、相続人が母と子2人の場合です。

  • 小規模宅地等の特例(特定居住用):5,000万円×80%=4,000万円を減額
  • 特例適用後の課税価格:1億円−4,000万円=6,000万円
  • 基礎控除:600万円×3人+3,000万円=4,800万円
  • 課税遺産総額:6,000万円−4,800万円=1,200万円
  • 法定相続分で分けた税額:母は1,200万円×1/2=600万円で600万円×10%=60万円、子は1人あたり1,200万円×1/4=300万円で300万円×10%=30万円
  • 相続税の総額:60万円+30万円+30万円=120万円
  • 母が自宅(特例適用後2,000万円)、子2人が預金を2,000万円ずつ取得すると、各人の税額は120万円×2,000万円÷6,000万円=40万円
  • 母の40万円は配偶者の税額軽減で0円になり、納める相続税は子2人で40万円×2人=80万円

※国税庁の速算表で、法定相続分に応じた取得金額が1,000万円以下の部分の税率10%を使った概算です。特例を使わなければ課税遺産総額は1億円−4,800万円=5,200万円となり、税率の区分も上がるため税額は大きく増えます。

無料
ツール
小規模宅地等の特例の減額を計算する宅地の種類・面積・評価額を入れると、特例でいくら減額できるかの目安を計算できます。計算する

特例の適用漏れは取り返しがつかない場合があります。相続が起きたら、遺産分割の方向性と特例の適用可否を早期に確認し、申告期限に間に合うよう準備を進めましょう。要件の詳細は小規模宅地等の特例の解説を参照してください。

二次相続まで考えると何が変わる?

一次相続(父の相続)で配偶者の税額軽減を最大限に使うと、その時点の税額は小さくなります。しかし、母が亡くなる二次相続では配偶者の税額軽減が使えず、相続人が減るため基礎控除も小さくなります。一次相続で母に寄せた財産は、母自身の財産と合わせて二次相続で課税されます。

計算例:一次相続と二次相続の基礎控除

  • 一次相続(母と子2人):600万円×3人+3,000万円=4,800万円
  • 二次相続(子2人):600万円×2人+3,000万円=4,200万円

同じ家族でも、二次相続では基礎控除が600万円小さくなり、配偶者の税額軽減もありません。

自宅を母が取得した場合、二次相続でその自宅を継ぐ子が同居していないと、小規模宅地等の特例が使えないこともあります。一次相続では、母の生活資金を確保したうえで子にも一定の財産を取得させるなど、二次相続まで通した税額で比べるのが基本です。

一次相続と二次相続のどちらで、誰が何を取得すると負担が小さくなるかは、財産の構成と家族の状況で変わります。初回無料で試算の進め方をご相談いただけます。

無料で相談する

分割対策:遺言はなぜ節税にもつながる?

小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減は、申告期限までに遺産分割がまとまっていることが適用の前提になる場面が多くあります。分割で揉めると特例が使えず税負担が重くなる場合があるという意味で、遺言書の準備はそれ自体が節税対策の一つになり得ます。

遺言は、公証役場で作る公正証書遺言のほか、自分で書く自筆証書遺言でも作れます。自筆証書遺言は法務局の保管制度を使うと、家庭裁判所の検認が不要になります。兄弟姉妹以外の相続人には最低限の取り分(遺留分)があるため、偏った分け方をする場合は代償金の原資もあわせて考えます。

  • 自宅を誰が取得し、誰が住み続けるか
  • 事業用の資産や自社株を誰に引き継ぐか
  • 預金の分け方と、代償金を払う場合の原資(生命保険など)
  • 遺言の内容を実現する人(遺言執行者)
  • 家族への思いを伝える付言事項

生前から誰が自宅を取得するかを家族で話し合い、遺言書に反映しておくと、申告期限内に分割が確定しやすくなります。

札幌・北海道で相続対策をする場合は?

申告先・土地の評価・不動産の税金

  • 相続税の申告書は、亡くなった人の住所地を管轄する税務署に提出します。札幌市内は区によって札幌中・北・南・西・東の各税務署に分かれ、中央区は西側と東側で管轄が異なるため、国税庁の管轄区域表で確認します。
  • 2026年7月10日から、郵送で提出する書面は札幌業務センター宛てになりました。窓口に持参する場合は所轄の税務署です。
  • 路線価が定められていない郊外や農村部の土地は、固定資産税評価額に倍率を掛けて評価します。
  • 価額が100万円以下の土地の相続登記は、2027年3月31日まで登録免許税が免除されます。
  • 不動産を生前に贈与すると北海道の不動産取得税(土地・住宅は3%、宅地は2027年3月31日までの取得なら課税標準が2分の1)がかかりますが、相続による取得にはかかりません。

よくある質問

相続税がかからない家庭でも、相続対策は必要ですか?

税金がかからなくても、分け方をめぐる争いや手続きの負担は起こり得ます。遺言書で分け方を決めておく、財産の一覧を家族と共有しておくといった分割対策は、財産の規模にかかわらず役立ちます。不動産の相続登記は法律で義務になっているため、名義の整理も早めに確認しておきましょう。

生前贈与は孫にしたほうが有利ですか?

相続や遺贈で財産を取得しない孫への暦年贈与は、相続財産への加算の対象になりません。ただし、遺言で孫に財産を遺したり、孫を死亡保険金の受取人にしたりすると加算の対象になり、孫が取得した分の相続税は2割加算されます。孫を含めた家族全体の分け方の中で考えましょう。

申告期限までに遺産分割がまとまらないと、どうなりますか?

いったん法定相続分で分けたものとして申告・納税し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、期限から3年以内に分割がまとまった後で、更正の請求により小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を受けられます。見込書を出していないと特例が使えなくなるおそれがあるため注意が必要です。

生命保険の非課税枠は、相続を放棄した人も使えますか?

相続を放棄した人が受け取った死亡保険金には、非課税枠は使えません。ただし、非課税枠の計算に使う「法定相続人の数」には、放棄した人も含めて数えます。受取人をだれにするかは、分割の方針とあわせて決めておきましょう。

まとめ

相続対策は、試算で相続税がかかるかを確かめ、遺言で分け方を決め、納税資金を用意してから、生前贈与・生命保険・小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減で税額を抑える順に進めます。暦年贈与の加算期間は2027年以後の相続開始から段階的に延びるため、贈与は早めに始めて長く続けるのが基本です。特例の多くは分割の確定と申告が前提になるため、二次相続まで含めた試算をもとに、家族で方針を共有しておきましょう。

札幌の公認会計士・税理士事務所

相続対策・相続税のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ

  • 初回相談は無料(オンライン対応可)
  • フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
  • その場でご契約を迫ることはありません

対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り

出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(生前贈与加算の経過措置などを反映)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次