中小企業向けの税制優遇は数が多く、毎年の改正で中身も動くため、「使えるのに知らなかった」が最も起きやすい分野です。結論から言うと、まず押さえるべきは7つ——①軽減税率15%、②少額減価償却資産の特例、③賃上げ促進税制、④中小企業投資促進税制、⑤経営強化税制、⑥欠損金の繰越控除・繰戻し還付、⑦固定資産税の特例——です。この記事では、札幌の税理士・公認会計士事務所が、各制度の効き方と適用のツボ、決算前に確認すべきタイミングを一覧で解説します。
7つの優遇の全体マップ

| 制度 | 効き方 | 適用のツボ |
|---|---|---|
| ① 軽減税率15% | 所得800万円以下の法人税率が15%(本則19%) | 令和9年3月31日までに開始する事業年度まで延長(所得10億円超は17%) |
| ② 少額減価償却資産の特例 | 30万円未満(令和8年4月以後取得は40万円未満)を一括経費化 | 年300万円上限・青色申告が前提 |
| ③ 賃上げ促進税制 | 給与増加額の最大45%を税額控除(中小・教育訓練等の上乗せ込み) | 控除しきれない分は5年繰越可。決算前に賃上げ実績を集計 |
| ④ 中小企業投資促進税制 | 一定の機械等の取得で特別償却30%or税額控除7% | 対象設備・金額要件の事前確認 |
| ⑤ 経営強化税制 | 認定計画に基づく設備で即時償却or税額控除 | 取得「前」の計画認定が原則。順番厳守 |
| ⑥ 欠損金の繰越・繰戻し | 赤字を10年繰越、または前期の税金の還付 | 青色申告の継続が条件 |
| ⑦ 固定資産税の特例 | 一定の設備投資で固定資産税が軽減 | 市町村の導入計画との連動を確認 |
※2026年6月12日時点。適用期限・要件は改正で動くため、適用前に最新を確認してください(賃上げ税制は2026年度改正で中小向けへの重点化が進む方向です)。
「税率・赤字」の優遇:①⑥は自動では効かない
軽減税率15%は申告すれば適用されますが、効果を最大化するには利益計画側の工夫があります。たとえば役員報酬や決算賞与で課税所得を800万円前後にコントロールできる会社は、税率の段差を意識した設計が可能です。欠損金の繰越控除は青色申告の継続が大前提で、申請期限を逃して白色になった期の赤字は繰り越せません(開業時の届出記事参照)。また、前期黒字・当期赤字の場合は繰戻し還付(前期に納めた法人税の還付)という選択肢もあり、資金繰りが厳しい局面ほど検討価値があります。
「投資」の優遇:②④⑤は順番がすべて
設備投資系の優遇で最も多い失敗は、「買ってから調べる」ことです。経営強化税制は原則として取得前に経営力向上計画の認定を受ける必要があり、投資促進税制も対象設備かどうかの確認が先です。少額特例(②)だけは事後の申告対応で使えますが、それ以外は「見積もり段階で税理士に共有→適用ルートを決めてから発注」が鉄則です。同じ1,000万円の機械でも、使う制度によって初年度の経費化額が数百万円単位で変わることがあります。補助金と併用する場合は圧縮記帳との関係も絡むため(製造業の記事参照)、投資計画はまとめて設計するのが効率的です。
「賃上げ」の優遇:③は集計の精度で差がつく
賃上げ促進税制(中小企業向け)は、雇用者全体の給与支給額が前期比1.5%以上増えると増加額の15%、2.5%以上で30%、教育訓練費の増加等の上乗せを合わせて最大45%の税額控除が受けられる制度です(現行制度。控除は法人税額の20%が上限、控除しきれない分は5年間の繰越が可能)。ポイントは集計の正確さです。対象となる給与の範囲(役員・親族の除外)、教育訓練費の範囲、前期との比較——ここを決算後に慌てて集計すると漏れが出ます。給与データをクラウドで持ち、期中から増加率をモニタリングしておくと、「あと少しで2.5%に届く」ような年に決算賞与で要件を満たす、といった打ち手も取れます。
決算前チェックの習慣化
優遇の多くは「決算が締まってからでは遅い」制度です。実務では、決算月の2〜3カ月前に①利益着地の見込み、②当期の投資・賃上げの実績、③来期の投資計画を並べ、使える優遇を棚卸しするのが標準動作です。制度の存在を知るところまでは本記事で足ります。自社が要件を満たすかの判定、複数制度の選択(特別償却か税額控除か等)、計画認定の段取りからは専門家の領域です。当事務所は税務顧問にとどまらず、決算前検討会を顧問業務に組み込み、AIで制度と自社データの突合を高速化する形で支援しています。
当事務所での実例
実例:機械加工業の法人で、決算3カ月前の検討会から設備投資の適用ルート設計を行いました。投資リストと各制度の要件突合はAI(Claude)が下準備し、経営力向上計画の認定スケジュールと特別償却・税額控除の有利判定は有資格者が担当。発注時期を1カ月調整して認定を先行させたことで、適用を取り逃さずに済みました。「買う前に聞く」が習慣になった、と評価いただいています。
自社で使える優遇の棚卸しを希望する方は、お問い合わせからご相談ください。状況を伺ったうえで、対応範囲と概算をご提示します。
よくある質問
特別償却と税額控除はどちらが得ですか?
特別償却は課税の繰り延べ、税額控除は税額そのものの減少です。長期で見ると税額控除が有利なことが多い一方、当期の資金繰りを重視するなら特別償却という選択もあります。利益水準と資金計画で決める論点です。
優遇を使うと税務調査で不利になりませんか?
適法な制度の適用が調査で不利に働くことはありません。重要なのは要件充足の証拠(計画認定書・集計資料・対象設備の証明書等)を保存しておくことです。
赤字の年でも関係ある制度はありますか?
あります。欠損金の繰越(10年)と繰戻し還付は赤字の年こそ出番です。また賃上げ税制の繰越控除(5年)により、赤字年の賃上げが黒字化後に効く設計になっています。
相談には何を用意すればよいですか?
直近の決算書・申告書、当期の投資と賃上げの予定メモをご用意ください。お問い合わせフォームから「税制優遇の棚卸し相談」とご連絡ください。料金・契約・業務フローはこちらです。
まとめ
- 優遇は税率・投資・賃上げ・赤字資産の4カテゴリ7制度でまず押さえる
- 投資系は「買う前」が勝負。計画認定→発注の順番を守る
- 賃上げ税制は集計精度と期中モニタリングで差がつく(繰越5年)
- 青色申告の継続が多くの優遇の土台になる
- 決算2〜3カ月前の棚卸しを習慣化する
当事務所(札幌市)は、税制優遇の適用設計・決算前検討・税務顧問を一体で支援しています。料金・契約・業務フローをご確認のうえお問い合わせください。
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※本記事は2026年6月時点の法令・情報に基づく一般的な解説であり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の適用にあたっては税理士等の専門家にご相談ください。
