不動産仲介業の税理士選びは、仲介手数料の計上時期、営業保証金や預り金の処理、課税売上となる手数料の消費税と簡易課税(第6種)の選択など、宅建業特有の論点に具体的に答えられるかで比べます。顧問料は金額だけでなく、繁忙期の対応や任せる範囲を含めて確認します。
この記事の結論
不動産仲介業の税理士は、手数料の計上時期・保証金と預り金・消費税の3つを面談で具体的に説明できるかで見極めます。季節変動の大きい業種なので、月次の数字で資金繰りと納税を見通せる体制かどうかも大切です。
- 仲介手数料は、原則として契約の効力が発生した日に計上する。売買・交換の仲介は、継続して取引の完了日に計上する方法もある
- 営業保証金・弁済業務保証金分担金は経費ではなく資産。賃貸仲介で預かる敷金・礼金・前家賃は売上ではない
- 土地の売買や住宅の賃貸の仲介でも、手数料は消費税の課税売上。簡易課税は第6種(みなし仕入率40%)
- 顧問料は売上規模・取引件数・記帳の分担・面談頻度で決まる。繁忙期の対応体制も確認する
- 当事務所は継続的な顧問契約で支援しており、申告だけのスポット依頼は受けていない
不動産仲介業の税務・会計の特徴
不動産仲介業(宅地建物取引業)は、手数料収入の季節集中、宅建業法にもとづく保証金、預り金の多さなど、小売業や飲食業とは異なる会計・税務の特徴を持ちます。主な論点を整理すると次のとおりです。
| 論点 | 内容 | 税理士に確認したいこと |
|---|---|---|
| 手数料収入の季節集中 | 春・秋の引越しシーズンに売上が偏る | 閑散期の固定費と納税資金をどう確保するか |
| 仲介手数料の計上時期 | 売買仲介と賃貸仲介で考え方が異なる | 契約の効力発生日と取引完了日のどちらで計上しているか |
| 営業保証金・弁済業務保証金分担金 | 宅建業法にもとづく供託・納付 | 経費ではなく資産として処理しているか |
| 預り金 | 賃貸仲介で受け取る敷金・礼金・前家賃など | 売上と混同していないか |
| 仲介手数料の消費税 | 土地の売買や住宅の賃貸の仲介でも、手数料は課税売上 | 簡易課税・本則課税・特例の選択 |
| 法人化後の役員報酬・福利厚生 | 法人化した場合の節税の主軸になりやすい | 役員報酬の水準と改定の時期 |
これらを理解している税理士であれば、申告書の作成だけでなく、季節変動に合わせた資金繰りの助言や、節税の提案まで期待できます。
仲介手数料はいつ売上にする?
法人税の通達(法人税基本通達2-1-11)では、仲介・あっせんの報酬は、原則として売買や賃貸借の契約の効力が発生した日の属する事業年度に計上します。売買・交換の仲介は、継続して取引の完了した日(引渡しの日など)に計上する方法も認められ、その場合も、完了前に受け取った金額は受け取った日の年度に計上します。
売買仲介では、手数料を契約時と決済時に分けて受け取ることがあります。期末をまたぐ取引ほど、どちらの基準で計上しているかを毎期同じにしておくことが大切です。賃貸仲介の手数料は、原則どおり賃貸借契約の効力が発生した日で計上します。
保証金と預り金は、売上でも経費でもない
宅建業を始めるときに供託する営業保証金や、保証協会に納める弁済業務保証金分担金は、事業をやめたときなどに取り戻せるお金です。支払った年の経費ではなく、差入保証金などの資産として計上します。保証協会や業界団体の入会金・年会費は、返還されるかどうかなど、性質に応じて処理を分けます。
賃貸仲介で入居者から受け取り、貸主に渡す敷金・礼金・前家賃は預り金で、自社の売上ではありません。一方、貸主から受け取る広告料(いわゆるAD)は自社の売上です。入金の多い繁忙期ほど、預り金と売上が混在しやすくなります。仕訳の具体例は不動産仲介業の仕訳事例集で設例つきで確認できます。
消費税とインボイスはどう判断する?
仲介手数料は、土地の売買や住宅の賃貸のように取引そのものが非課税でも、仲介という役務の対価なので、消費税の課税売上です。売上の大半が課税売上になるため、基準期間(個人は前々年)の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になります。
2026年10月1日からは、国内の不動産の仲介などは、相手が非居住者でも課税の対象になりました。海外に住む売主・買主との取引がある場合は、請求と申告の扱いを確認しておきます。
インボイス登録の必要性は、手数料を支払う相手で変わります。法人の貸主・買主や事業用物件の取引が多ければ登録が前提になりやすく、住宅を買う個人や入居者が中心なら、登録の影響は限られます。免税事業者に支払った事業者は、経過措置(2026年10月1日〜2028年9月30日は70%)の範囲でしか控除できません。
| 計算方法 | 対象・期間 | 納付税額の目安 |
|---|---|---|
| 2割特例 | 登録により課税事業者になった事業者。個人は令和8年分まで | 売上の消費税額×20% |
| 3割特例 | 個人事業者のみ。令和9年分・令和10年分(基準期間の課税売上高1,000万円以下など) | 売上の消費税額×30% |
| 簡易課税(第6種・不動産業) | 基準期間の課税売上高5,000万円以下で、届出をした事業者 | 売上の消費税額×(1−みなし仕入率40%) |
| 本則課税 | 上記以外 | 売上の消費税額−広告費・家賃などにかかった消費税額 |
計算例:仲介手数料が税抜1,200万円の場合
例えば、税抜の仲介手数料が年1,200万円、広告費・店舗家賃・車両費などの課税仕入れが税抜500万円の場合です(地方消費税を含めた10%で単純化した概算)。
- 売上の消費税額:1,200万円×10%=120万円
- 簡易課税(第6種):120万円×60%=72万円
- 本則課税:仕入れの消費税額は500万円×10%=50万円なので、120万円−50万円=70万円
不動産業の簡易課税はみなし仕入率が40%と低いため、ポータルサイトの掲載料や店舗家賃などの課税仕入れが多いと、本則課税のほうが有利になることがあります。
不動産管理やサブリースで住宅の家賃(非課税)も受け取っている場合は、課税売上割合や個別対応方式の計算も関係します。簡易課税は、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに届出が必要です。制度の全体像はインボイス制度の実務ガイドで整理しています。
無料ツール簡易課税・本則課税・2割特例を比べる売上と仕入れの金額から、計算方法ごとの消費税の納税額を比較できます。計算する
簡易課税と本則課税のどちらが有利かは、広告費や店舗家賃の額で変わります。手数料と経費の実績をもとに、初回無料で試算できます。
無料で相談する不動産仲介業に強い税理士の見極め方
候補は、ウェブサイトの専門分野に不動産業・宅建業の記載があるかや、同業の経営者からの紹介で探し、最後は初回面談での質問で見極めます。次のような不動産仲介特有の論点を質問し、回答が具体的かどうかを比べましょう。
| 面談で聞きたい質問 | 具体的な答えのポイント |
|---|---|
| 仲介手数料の計上時期はどう決めますか? | 契約の効力発生日と取引完了日の基準の違いと、毎期同じ基準で処理する必要性を説明できる |
| 営業保証金や保証協会の分担金はどう処理しますか? | 資産として計上し、取り戻すときの処理まで説明できる |
| 消費税は簡易課税と本則課税のどちらが有利ですか? | みなし仕入率40%と、広告費・家賃などの課税仕入れの量を比べて答えられる |
| 繁忙期の資金繰りはどう見通しますか? | 月次の試算表で、季節変動と納税の時期を示せる |
| 法人化するときの注意点は何ですか? | 税金の比較だけでなく、宅建業の免許や保証金の手続きまで視野に入っている |
最終的には面談での相性も大切です。毎月・毎期にわたって関わる長期的なパートナーとなるため、コミュニケーションのとりやすさも判断基準に加えてください。
顧問料はどう決まる?
顧問料は、事務所の規模やサービスの内容、依頼する会社の売上規模によって大きく変わります。不動産仲介業では、繁忙期の取引件数、預り金の多さ、店舗や担当者の数も作業量に影響します。
一般に、売上規模が大きくなるほど顧問料も上がる傾向があります。実際の金額は、次の要素と依頼する範囲によって大きく異なります。
| 顧問料を左右する要素 | 見積りで確認すること |
|---|---|
| 売上規模・取引件数 | 年間の成約件数と、月の仕訳の数 |
| 記帳の分担 | 自社で入力するか、記帳代行を頼むか |
| 預り金・保証金の管理 | 預り金の明細の確認まで頼むか |
| 面談の頻度 | 毎月の試算表の確認とコメントがあるか、決算のみか |
| 申告の種類 | 消費税の申告の有無。法人なら法人税・地方税の申告 |
| 給与・年末調整 | 従業員の給与計算や年末調整を含むか |
複数の事務所を比べるときは、同じ業務範囲で見積りを取り、年間の総額で比べるのが基本です。当事務所の料金と契約までの流れは料金・契約の流れで公開しています。
顧問税理士を選ぶときのチェック項目
費用だけでなく、次の点も契約前に確認しておきましょう。
- 不動産業・宅建業の顧問の経験があるか
- 対応している会計ソフトの種類(freee・弥生・マネーフォワードなど)
- 月次で試算表の提出とコメントがあるか、それとも決算のみか
- 担当者が毎回変わらないか(担当者の固定性)
- 法人化・事業承継など、将来の相談にも対応できるか
- 宅建業で備え付ける取引の台帳と、会計帳簿を突き合わせて確認してもらえるか
- 消費税の計算方法を、毎年の実績で比較してもらえるか
具体例|繁忙期と閑散期の資金繰りイメージ
不動産仲介業は、引越しシーズンに売上が集中し、閑散期は手数料収入が細くなる傾向があります。繁忙期にまとまった利益が出ても、その資金をすぐに使い切らず、閑散期の固定費(家賃・人件費など)に充てる分をあらかじめ取り分けておくと、資金繰りが安定しやすくなります。
具体例:閑散期に備えて取り分ける資金
例えば、毎月の固定費(家賃・人件費・広告費など)が300万円で、手数料収入が固定費を下回る閑散期が4か月続くと見込む場合です。
- 閑散期の固定費の合計:300万円×4か月=1,200万円
- 閑散期にも毎月150万円の手数料収入があるとすると、毎月の不足は300万円−150万円=150万円、4か月で150万円×4か月=600万円
- この600万円に、閑散期に重なる納税(予定納税や消費税の中間申告など)の資金を加えた額を、繁忙期の利益から取り分けておく
個人の予定納税(前年の基準額が15万円以上の場合。令和8年分は第1期が2026年7月31日、第2期が11月30日)や、消費税の中間申告(直前の課税期間の確定消費税額が48万円超で年1回、400万円超で年3回、4,800万円超で年11回)も資金繰り表に入れておきます。
税理士に月次で試算表を確認してもらいながら、繁忙期と閑散期の資金の動きを事前に把握しておくことが、季節変動への実務的な備えになります。
見落としやすいポイント
| ポイント | 起きやすいこと | 対策 |
|---|---|---|
| 売上計上のタイミング | 期をまたぐ取引で、契約日の基準と引渡し日の基準が混在する | 計上の基準を決め、毎期同じ基準で処理する |
| 広告宣伝費の区分 | 物件広告と会社全体の広告を同じ科目で処理し、物件ごとの収益性が見えにくい | 補助科目や部門で区分する方法を税理士と相談する |
| 営業車両 | 個人の車を営業に使い、私用との区分があいまいになる | 走行の記録をもとに按分し、根拠を残す |
| 接待交際費・紹介の謝礼 | 交際費が多くなりやすく、紹介者への謝礼の扱いにも迷いやすい | 交際費の基準を決め、謝礼は事前の契約と受けた役務の内容を記録する |
| 非居住者との取引 | 2026年10月1日以後の手数料の課税の扱いを見落とす | 相手の居住地を確認し、請求書と申告の区分を見直す |
| 法人化のタイミング | 売上や利益が拡大しても、判断を先送りにする | 税負担・社会保険・免許の手続きを合わせて試算する |
法人の交際費は、中小法人なら年800万円までの定額控除か、接待飲食費の50%の損金算入かを選べます(2027年3月31日までに開始する事業年度)。社外の人との1人10,000円以下の飲食費は、参加者などを記録すれば交際費から除けます(2024年4月1日以後の支出)。紹介を受けた相手への謝礼は、事前の契約にもとづき、受けた役務の内容が明らかで金額も相当であれば、交際費ではなく支払手数料として扱える場合があります。
法人化の判断は、不動産仲介業の法人化のタイミングと判断基準で詳しく整理しています。
無料ツール法人成りの損得をシミュレーションする個人事業のまま続けた場合と法人にした場合の税負担を比べられます。計算する
顧問契約前に確認したいこと
顧問契約を結ぶ前には、料金だけでなく、繁忙期の対応体制も確認しておくと安心です。引越しシーズンは経理処理や相談も増えやすいため、その時期の返信スピードや相談のしやすさを事前に聞いておくと、契約後のミスマッチを防ぎやすくなります。
また、宅建業の実務に詳しい税理士であれば、営業保証金や弁済業務保証金分担金の処理、預り金の管理についても、具体的な助言を受けやすくなります。
当事務所のご支援の形
当事務所は、日々の記帳の確認から決算・申告、資金繰りの相談までを継続して支援する顧問契約でお手伝いしています。確定申告や決算だけのスポットのご依頼はお受けしていません。
よくある質問
個人の宅建業者が法人化すると、免許はどうなりますか?
宅建業の免許は個人と法人で別のため、法人として新たに免許を受ける必要があります。営業保証金の供託や保証協会への加入も法人としてあらためて手続きするため、個人の廃業と法人の開業の間に空白が生じないよう段取りを組みます。
非居住者から物件を買う顧客には、どんな注意が必要ですか?
非居住者や外国法人から国内の不動産を買う場合、買主に代金の支払時の源泉徴収義務が生じることがあります。個人が自分の居住用に買う場合など一定の場合は対象外となるため、契約の前に売主の居住地と買主の用途を確認するよう案内します。
物件の広告費は、成約前でも経費になりますか?
広告宣伝費は、成約したかどうかにかかわらず、広告を出した年(事業年度)の経費になります。ただし、翌期分の掲載料を前払いした場合は前払費用となるため、期末をまたぐ掲載契約は期間で区分します。
自宅の一部を店舗や事務所にしている場合、家賃や光熱費は経費になりますか?
事業に使っている部分を、面積や使用時間など合理的な基準で按分すれば経費にできます。店舗部分の割合は、図面などで説明できるようにしておきます。
まとめ
不動産仲介業は、手数料収入の季節変動、仲介手数料の計上時期、保証金と預り金の処理、簡易課税のみなし仕入率40%といった特有の論点を持つ業種です。税理士はこれらを面談で具体的に説明できるかで見極め、顧問料は金額だけでなく繁忙期の対応や任せる範囲を含めて比べることで、長く相談できる関係を築けます。
札幌の公認会計士・税理士事務所
不動産仲介業の税務・会計のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
