年末調整の代行を頼むかどうかは、従業員数、中途入退社や扶養の変動の多さ、担当者の時間で判断します。給与が固定的な数人規模なら自分でも対応できますが、令和8年分は基礎控除や扶養の所得要件が大きく変わるため、確認作業の負担が増えます。
この記事の結論
従業員が数人で給与が固定的なら自分で対応でき、人数が多い・入退社が多い・住宅ローン控除などの個別事情が多い会社は、代行の費用対効果が出やすくなります。
- 負担の中心は税額の計算ではなく、書類の回収、控除証明書との突き合わせ、毎年の改正対応
- 令和8年分は基礎控除の段階制、給与所得控除の最低74万円、扶養の所得要件62万円(給与のみ136万円)などが変わり、12月の年末調整でまとめて精算する
- 代行を頼んでも、書類の配布・回収と従業員への案内は社内に残るため、役割分担で考える
- 書類の提出期限は原則1月31日で、令和8年分は2027年2月1日(月)
年末調整でやることの全体像と期限
年末調整は、1年間に給与から差し引いた所得税の合計と、本来納めるべき年税額との差を精算する手続きです。書類の回収から始まり、源泉徴収票の交付と、税務署・市町村への提出までが一連の作業になります。
自分でやるか代行に頼むかを考えるときは、計算の部分だけでなく、この流れ全体のどこを誰が担うかで比べます。毎年おおむね次の順番で進みます。
| 時期 | 作業 | ポイント |
|---|---|---|
| 10〜11月 | 申告書の配布・回収 | 翌年分の扶養控除等申告書、基礎控除・配偶者控除等の申告書、保険料控除申告書、住宅ローン控除の申告書を集める |
| 11〜12月 | 内容の確認と集計 | 控除証明書との突き合わせ、1〜12月の給与・賞与、社会保険料、源泉徴収税額の集計 |
| 12月 | 年税額の計算と過不足の精算 | 12月(または翌年1月)の給与で、不足額の徴収や納めすぎの還付を行う |
| 翌年1月10日 | 12月分の源泉所得税の納付 | 納期の特例を受けている場合は1月20日。令和8年分は2027年1月12日(火)、特例は1月20日(水) |
| 翌年1月31日 | 源泉徴収票の交付と書類の提出 | 法定調書合計表は税務署へ、給与支払報告書は市町村へ。令和8年分は2027年2月1日(月) |
法定調書は、種類ごとに前々年の提出枚数(提出すべきだった枚数)が30枚以上なら、e-Taxなどで電子提出します。給与支払報告書は、従業員が翌年1月1日に住んでいる市町村ごとに提出します。
札幌市内の事業所が書類を出す場合
市内5つの税務署の内部事務は、2026年7月10日から札幌業務センターに集約されています。法定調書合計表などを書面で郵送するときは、同センター(〒060-8510 札幌市中央区大通西10丁目 札幌第2合同庁舎)宛てに送ります。e-Taxでの提出や窓口への持参は、従来どおり所轄の税務署です。
市外の石狩市や江別市などから通勤している従業員がいれば、給与支払報告書はその市町村にも提出します。住所の確認は、翌年1月1日時点で行います。
自分でやる場合の手順と、つまずきやすい点
給与計算ソフトを使っていれば、税額の計算そのものは自動化できます。実際の負担は、書類の回収を催促する手間、控除証明書との突き合わせ、住宅ローン控除がある人の書類確認、そしてほぼ毎年ある様式や制度の変更への対応です。
- 申告書を配る前年の様式を使い回さず、その年分の様式を国税庁のサイトで確認して配ります。社内の提出期限を決め、回収の日程を先に伝えておきます。
- 回収して記載内容を確かめる扶養親族の氏名・生年月日・所得の見積額、配偶者の所得、住所の変更を確認します。前年の申告書と見比べると、扶養から外れた人や新しく加わった人に気づけます。
- 控除証明書と突き合わせる生命保険料・地震保険料・国民年金保険料・iDeCoなどの掛金は、証明書と申告書の金額が一致しているかを見ます。住宅ローン控除の2年目以降は、申告書と金融機関の年末残高証明書がそろっているかを確認します。
- 1年分の給与と源泉税額を集計する1〜12月の給与・賞与の支給額、社会保険料の控除額、源泉徴収税額を源泉徴収簿で集計します。年の途中で入社した人は、前の勤務先の源泉徴収票の金額を合算します。
- 年税額を計算して過不足を精算する12月(または翌年1月)の給与で、不足額は追加で差し引き、納めすぎは還付します。還付は、その月に納める源泉所得税から差し引く形で行います。
- 納付と書類の提出を済ませる12月分の源泉所得税を納付し、源泉徴収票を本人に交付したうえで、法定調書合計表を税務署へ、給与支払報告書を市町村へ提出します。
かかる時間は会社によって大きく違います。例えば従業員5人の会社なら、慣れた担当者で書類確認から提出まで数時間から半日程度、初めての場合は調べながらで2〜3日かかることもあります(一般的な目安です)。経営者自身が担当しているなら、その時間で本業に何ができたかも含めて考えます。
無料ツール年末調整の過不足を自動計算する年間の給与・源泉徴収税額・控除額を入れると、年末調整で戻る額や不足する額の目安を確認できます。計算する
自分でやるときに誤りやすい点
- 年の途中で入社した人の前職分を合算していない(前職の源泉徴収票の回収漏れ)
- 配偶者や子のパート収入の見積りが古いまま、扶養の判定をしている
- 保険料控除の新契約・旧契約の区分や、証明書との金額の違いを見落とす
- 国外に住む親族を扶養に入れる場合の、親族関係書類や送金関係書類がそろっていない
- 2か所以上から給与を受けていて扶養控除等申告書を出していない人(乙欄の人)まで年末調整してしまう
令和8年分の年末調整は何が変わる?
令和8年度税制改正で、基礎控除や給与所得控除、扶養の所得要件が見直されました。施行は2026年12月1日で、令和8年分の所得税から適用されます。自分で年末調整をする場合、前年までの知識のままでは控除額や扶養の判定を誤るおそれがあります。
| 項目 | 令和7年分 | 令和8年分 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 合計所得132万円以下95万円、336万円以下88万円、489万円以下68万円、655万円以下63万円、2,350万円以下58万円 | 合計所得489万円以下(給与のみなら665万5,556円以下)104万円、655万円以下67万円、2,350万円以下62万円。さらに上は段階的に減り、2,500万円超は0円 |
| 給与所得控除の最低額 | 65万円 | 74万円(給与収入220万円以下。本則69万円+特例5万円) |
| 扶養親族・控除対象配偶者の所得要件 | 合計所得58万円以下(給与のみ123万円以下) | 合計所得62万円以下(給与のみ136万円以下) |
| 特定親族特別控除(19〜22歳の親族) | 合計所得58万円超123万円以下(給与188万円以下)が対象 | 合計所得62万円超123万円以下(給与197万円以下)が対象 |
| 勤労学生控除の所得要件 | 合計所得85万円以下(給与150万円以下) | 合計所得89万円以下(給与163万円以下) |
| 一般生命保険料控除(新契約)の上限 | 4万円 | 23歳未満の扶養親族がいれば6万円(合計の上限12万円は据置き) |
| 本人に所得税がかからない給与収入 | 160万円以下 | 178万円以下 |
注意したいのは精算のタイミングです。2026年中に毎月の給与から差し引く源泉所得税は改正前の税額表のままで、改正による減税分は12月の年末調整でまとめて精算します。そのため令和8年分は、年末調整の還付額が例年より大きくなりやすく、従業員から質問を受ける場面も想定しておきます。
最後の給与の支払が2026年11月30日以前の中途退職者は、年末調整ではなく本人の確定申告などで改正分を精算します。2027年1月1日以後に支払う給与からは、令和9年分の源泉徴収税額表を使います。改正の全体像は「令和8年度税制改正の全体像と実務への影響」で整理しています。
提出書類の取扱いも変わります
- 2027年1月1日以後に提出する給与所得の源泉徴収票は、市町村に給与支払報告書を提出すれば、税務署にも提出したものとみなされます(本人への交付は引き続き必要です)。
- 退職所得の源泉徴収票は、2026年1月1日以後に支払う退職手当等から、すべての居住者の分を税務署に提出します。
- 定額減税は令和6年分だけの制度で、令和8年分の年末調整にはありません。
ツール基礎控除の額を年分別に確認する合計所得金額を入れると、令和7〜10年分の基礎控除がいくらになるかを年分ごとに確認できます。計算する
税理士に代行を頼むと何を任せられる?
税理士に依頼すると、申告書の内容確認から年税額の計算、源泉徴収票・法定調書合計表・給与支払報告書の作成と提出までを任せられます。税務署に提出する書類の作成や提出の代理は、税理士法で税理士の業務とされているため、計算から提出まで一括で頼む場合の依頼先になります。
税理士に任せられる作業
- 申告書と控除証明書の内容確認
- 年税額と過不足額の計算
- 源泉徴収簿・源泉徴収票の作成
- 法定調書合計表・給与支払報告書の作成と電子提出
- 改正点を踏まえた扶養・控除の判定
社内に残る作業
- 申告書の配布・回収と社内期限の管理
- 従業員への記入方法の案内
- マイナンバーの収集と安全な管理
- 過不足額の給与での精算(給与計算を任せていない場合)
- 源泉所得税の納付
依頼するときは、次の資料をそろえて渡します。資料がそろう時期が遅れると、精算や提出の期限に間に合わなくなるため、受け渡しの日程を先に決めておきます。
- 1〜12月の賃金台帳(給与・賞与の支給額、社会保険料、源泉徴収税額)
- 回収した申告書と控除証明書(原本または電子データ)
- 年の途中で入社した人の前職の源泉徴収票
- 住宅ローン控除の申告書と借入金の年末残高証明書
- 年の途中で退職した人の一覧と退職日
- 翌年1月1日時点の従業員の住所
任せても、源泉徴収の責任は会社に残る
年末調整と源泉所得税の納付の義務は、給与を支払う会社(源泉徴収義務者)にあります。代行先の計算に誤りがあっても、不足分の納付や不納付加算税・延滞税は会社が負担するのが原則です。誰が最終確認をするか、資料をいつまでに渡すかを、依頼の時点で決めておきます。
当事務所では、決算・申告だけのスポットのご依頼はお受けしておらず、年末調整も顧問契約の中で、毎月の給与計算から法定調書の作成・提出までまとめてお受けしています。給与計算から通年で任せると、1年分の集計がそのまま年末調整につながるため、正確さと効率の両面で有利です。料金は従業員数と業務の範囲で決まり、考え方は「料金・契約の流れ」でご案内しています。
自分でやる場合と税理士に頼む場合の比較
手間・正確性・控除漏れ・調査対応・コストの5つの観点で並べると、違いは次のとおりです。どちらが正解というより、会社の人数と担当者の状況でどちらの弱点が問題になりやすいかを見ます。
| 観点 | 自分でやる | 税理士に頼む |
|---|---|---|
| 手間 | 配布・回収から計算・提出まで、すべて社内で行う | 配布・回収は社内に残り、確認・計算・提出を任せられる |
| 正確性 | 担当者の知識に左右され、改正の見落としが起きやすい | 改正を織り込んで確認でき、資料の不足も指摘を受けて補える |
| 控除漏れ(従業員の手取り) | 保険料・iDeCo・住宅ローン控除の申告漏れに気づきにくい | 証明書との突き合わせで漏れを拾いやすい |
| 調査対応 | 源泉所得税の調査で、扶養の判定や書類の保存状況を担当者が説明する | 計算の根拠と書類が整理され、説明の準備がしやすい |
| コスト | 担当者の時間(外部への支払いはない) | 外注費(人数に比例する料金体系が一般的。経費になる) |
| 向くケース | 数人規模で、給与が固定的 | 人数が多い、入退社が多い、個別事情のある人が多い |
| リスク | 担当者が1人だと、不在時に作業が止まる | 資料の提出が遅れると進まない |
書類の回収など社内でしかできない作業は、代行を頼んでも残ります。「全部丸投げ」ではなく、どこまでを社内で担い、どこからを任せるかという役割分担で考えると現実的です。税理士への代行費用は経費として計上できるため、社内でかかる時間のコストと並べて比べると判断しやすくなります。
自分でやるか頼むかの判断基準と、切り替えのタイミング
判断の軸は、従業員数、中途入退社や扶養の変動の多さ、住宅ローン控除など個別事情のある人の数、そして担当者の時間の価値です。次のどちらに当てはまる項目が多いかで考えます。
自分で対応しやすい会社
- 従業員が数人で、給与が毎月ほぼ固定
- 中途入退社や扶養の変動が少ない
- 住宅ローン控除や国外の扶養親族など、個別事情のある人が少ない
- 担当者が給与ソフトに慣れていて、改正情報を自分で確認できる
代行を検討したい会社
- 従業員が増えた、または増える見込みがある
- パート・アルバイトが多く、扶養の判定が毎年必要
- 前職分の合算や住宅ローン控除の確認が毎年ある
- 担当者が1人だけで、不在時に代わりがいない
- 経営者が自分で担当していて、本業の時間を確保したい
具体例:従業員数が急に増えた年に起きやすいこと
例えば、前年まで従業員3人で問題なく自分で対応できていた会社が、増員で10人前後になった年を考えます。書類の様式や確認する項目は一人ひとり同じだけ必要になるため、負担は人数にほぼ比例して増えます。
一方で、担当者の時間は増えません。これまでと同じやり方のままだと、回収漏れや計算ミスが起きやすくなります。増員のタイミングは、自分で続けるか代行に切り替えるかを見直す機会です。
迷ったときは、その年だけでなく、翌年以降も従業員が増える見込みかどうかも合わせて考えます。増員や中途入退社が続きそうな会社は、人数が増えてからではなく増え始めた時点で、給与計算からまとめて任せられる体制を整えておくと、年末調整の時期だけ慌てることが少なくなります。依頼するなら、申告書を配る前の秋の早い時期に相談しておくと、配布の段階から一緒に進められます。
自社で続けるか任せるかの分かれ目は、人数や入退社の状況で変わります。いまの体制で回るかどうかを、初回無料で一緒に確認できます。
無料で相談するよくある質問
年末調整だけを税理士に頼むことはできますか?
受け付けるかどうかは依頼先によって異なります。年末調整だけを頼む場合も、その年1月からの給与・賞与と源泉徴収税額のデータが必要です。当事務所は顧問契約の中で、給与計算から年末調整・法定調書までまとめてお受けしています。
代行費用は経費になりますか?支払うときの注意点は?
支払手数料などとして経費(法人は損金)になります。個人の税理士に報酬を支払う会社は、報酬から10.21%の所得税を源泉徴収して納める必要があります。税理士法人への支払いは源泉徴収の対象外です。
年末調整のあとに従業員が控除証明書を出してきたら?
源泉徴収票を提出する前、原則として翌年1月31日までなら年末調整をやり直せます。間に合わない場合は、従業員本人が確定申告をして控除を受けます。
年の途中で退職した人も年末調整の対象ですか?
年の途中で退職した人は原則として対象外で、本人が確定申告などで精算します。令和8年分は、最後の給与の支払が2026年11月30日以前の人は、改正による減税分も確定申告などで精算します。会社は退職時に源泉徴収票を交付しておきます。
まとめ
年末調整は、書類の回収から法定調書の提出まで一連の流れで考え、負担の中心である確認作業と改正対応を誰が担うかで判断します。給与が固定的な数人規模なら自分でも対応できますが、令和8年分は基礎控除や扶養の要件が変わり、12月の精算も大きくなります。人数や入退社が増えてきたら、給与計算からまとめて任せる体制を検討しましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
