資産管理会社とは、不動産や株式などの個人資産を法人で保有・管理し、所得の分散や相続への備えに使う会社です。税負担が軽くなるのは所得が一定以上ある場合で、設立・維持のコストや、資産を移すときの譲渡所得税・不動産取得税なども含めて判断します。
この記事の結論
資産管理会社は、所得の高い資産オーナーが、法人の税率の活用、家族への所得の分散、相続財産の管理をするための器です。赤字でも毎年かかる均等割などの固定費があり、資産の移し方で税金が大きく変わるため、目的と収支を試算してから設立します。
- 法人税は、中小法人の所得800万円以下の部分が15%(2027年3月31日までに開始する事業年度)。個人の所得税は最高45%で、所得が高いほど差が出やすい
- 家族を役員にして報酬を払えば所得を分散できるが、職務の実態と相当な金額が前提
- 個人の不動産を移すと、譲渡所得税・不動産取得税・登録免許税がかかる。建物だけを移す方法もある
- 相続では会社の株式として評価され、取得して間もない不動産は通常の取引価額で評価されるなど、評価が下がるとは限らない
- 資産の保有・運用が中心の会社は、一定の事業実態がない限り事業承継税制の対象外
資産管理会社とは?主な3つの形(管理委託・サブリース・所有)
資産管理会社は、個人が持つ不動産や金融資産を法人で保有・管理するための会社です。法律上の特別な会社ではなく、株式会社や合同会社として設立し、一般の会社と同じく会計記帳と法人税の申告を行います。不動産オーナーが賃貸物件を管理する会社、会社オーナーが自社株を持たせる会社など、目的によって形はさまざまです。
不動産を扱う資産管理会社は、物件と収入の持ち方によって、次の3つの形に分かれます。
| 形 | 仕組み | 会社に移る所得 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 管理委託方式 | 物件は個人のまま。会社が管理業務を受託し、管理料を受け取る | 管理料の分だけ(小さい) | 管理料は実際の業務に見合う水準にする。過大な管理料は経費と認められないおそれがある |
| サブリース方式 | 会社が物件を一括で借り上げ、入居者に転貸する | 入居者からの家賃と、個人に払う借上げ賃料の差額 | 借上げ賃料が低すぎると問題になる。空室のリスクは会社が負う |
| 所有方式 | 会社が建物(や土地)を所有し、家賃収入を直接受け取る | 家賃収入の全部 | 個人から移す場合は、譲渡所得税などの移転コストがかかる |
所得を移す効果は「管理委託→サブリース→所有」の順に大きくなり、移すときのコストも同じ順に大きくなります。どの形が合うかは、物件の数と収入、借入金の状況、相続の予定によって変わります。不動産の管理会社をつくる時期の考え方は、不動産管理会社の法人化のタイミングと判断基準でも整理しています。
資産管理会社のメリットは?税率・所得の分散・相続の3点
個人と法人の税率の違い
個人の所得税は、課税所得が増えるほど税率が上がる累進課税で、最高45%です(このほか住民税10%)。法人税は23.2%で、中小法人は所得800万円以下の部分が15%(2027年3月31日までに開始する事業年度)になります。所得が大きいオーナーほど、所得の一部を法人に移すことで税率の差を生かせます。
| 区分 | 主な税率(2026年10月時点) |
|---|---|
| 個人の所得税 | 課税所得195万円以下の5%から4,000万円超の45%までの7段階。別に復興特別所得税(所得税額×2.1%。2027年分以後は復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%) |
| 個人の住民税(所得割) | 10%(政令指定都市は市民税8%・道府県民税2%) |
| 法人税(中小法人) | 所得800万円以下の部分は15%(2027年3月31日までに開始する事業年度)、800万円を超える部分は23.2% |
| 法人の地方税など | 地方法人税(法人税額×10.3%)、法人住民税、法人事業税・特別法人事業税。法人住民税の均等割は赤字でもかかる |
ツール不動産所得を計算する家賃収入と経費から不動産所得を計算し、個人のまま続けた場合の所得の目安をつかめます。計算する
家族への所得の分散
資産管理会社では、配偶者や子どもを役員にして報酬を支払えます。報酬を受け取った家族は給与所得控除を差し引けるため、同じ所得をオーナー1人が受け取るより、家族全体の税負担が軽くなることがあります。ただし、報酬は職務の実態に見合う金額であることが前提で、名前だけの役員への報酬や、職務に比べて高すぎる報酬は、会社の損金にならないおそれがあります。
計算例:配偶者に役員報酬を年400万円支払う場合の給与所得
例えば、資産管理会社が配偶者に役員報酬を年400万円支払う場合、令和8年分・令和9年分の給与所得控除で計算すると次のとおりです。
- 給与所得控除:400万円×20%+44万円=124万円
- 給与所得:400万円-124万円=276万円
124万円分は所得から差し引かれるため、オーナーが同じ額を不動産所得として受け取る場合より、課税される所得は小さくなります。一方で、会社が報酬を払うと社会保険料の負担が生じるため、保険料も含めて試算します。
相続への備え
資産を会社で持つと、相続人に引き継ぐ財産は不動産そのものではなく会社の株式になります。株式は分けやすく、少しずつ生前に贈与することもできます(贈与税の基礎控除は年110万円)。また、家賃収入が会社に入り、家族に報酬として分配されるため、オーナー個人に現金がたまって相続財産が増え続けることを抑えられます。
デメリット・注意点は?設立と維持にかかるコスト
資産管理会社は、利益が出ていない年でも維持費がかかります。設立の前に、毎年の固定費が税負担の軽減額を上回らないかを試算します。
| 費用・負担 | 内容(2026年10月時点) | 注意点 |
|---|---|---|
| 設立の登録免許税 | 資本金の0.7%(最低 株式会社15万円・合同会社6万円) | 株式会社は定款の認証の手数料も必要。特定創業支援等事業の証明を受けて設立すると半分になる場合がある(下の囲みを参照) |
| 法人住民税の均等割 | 資本金等1,000万円以下・従業者50人以下なら年7万円(札幌市内の場合) | 赤字でもかかる |
| 決算・申告などの事務 | 記帳、決算・法人税の申告、給与計算など | 申告は事業年度終了の日の翌日から2か月以内。専門家に頼む費用は依頼の範囲で変わる |
| 社会保険 | 法人は役員1人でも健康保険・厚生年金保険の強制適用 | 役員報酬を払うと、会社と本人に保険料の負担が生じる |
| 消費税 | 住宅の家賃は非課税、事務所・店舗などの家賃は課税 | 事業用の物件が多いと、課税事業者やインボイス登録の判断が必要 |
設立にかかる費用の内訳と見積りの取り方は、資産管理会社の設立費用の内訳で詳しく取り上げています。事務所や店舗の入居者が事業者の場合は、インボイスを求められることもあるため、インボイス制度の実務ガイドで登録の要否を確認しておきます。
無料ツール消費税の課税事業者かどうかを判定する基準期間の課税売上高などから、消費税の納税義務があるかを確認できます。判定する
税務の面では、同族会社(株主の大半を親族などが占める会社)とオーナー個人との取引に注意が必要です。税負担を不当に減らす取引と判断されると、税務署は実際の取引と異なる計算で課税できます(同族会社等の行為計算の否認)。管理料・借上げ賃料・家族への報酬は、相場や業務の実態に基づいて決め、契約書や業務の記録を残しておきます。
また、個人で賃貸経営をしていれば、不動産所得の赤字を給与所得などと損益通算できますが、会社で物件を持つと、会社の赤字を個人の給与所得と通算することはできません。建物の減価償却費や借入金の利息で赤字になりやすい時期は、個人のまま持つほうが有利な場合もあります。
個人の不動産を資産管理会社に移すときの税金は?
すでに個人で持っている物件を会社に移す場合、移し方によってかかる税金が変わります。新しく購入する物件を最初から会社の名義で買えば、移転のコストはかかりません。
| 税金 | かかる人 | 内容(2026年10月時点) |
|---|---|---|
| 譲渡所得の所得税・住民税 | 売った個人 | 売却益に対して、その年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば所得税15%・住民税5%(復興特別所得税を含め合計20.315%)、5年以下なら30%・9%(合計39.63%) |
| 消費税 | 売った個人(課税事業者の場合) | 建物の売却代金は課税、土地は非課税 |
| 不動産取得税(北海道) | 取得した会社 | 土地・住宅は3%、住宅以外の建物は4%(土地・住宅の3%と、宅地の課税標準を2分の1にする特例は2027年3月31日までの取得) |
| 登録免許税 | 取得した会社 | 土地の売買による移転登記は1.5%(2029年3月31日まで)。建物の移転登記は別の税率 |
建物だけを会社に移す方法
実務では、土地は個人のまま、建物だけを会社に売る方法がよく検討されます。建物の売買代金は土地を含めるより小さく済み、家賃収入は建物の所有者である会社に入るため、移転のコストを抑えながら所得を移せます。
この場合、会社が個人の土地の上に建物を持つことになるため、借地権の扱いに注意が必要です。権利金を払わずに土地を借りると、会社が借地権を無償で受け取ったとして課税される問題が生じます。これを避けるため、「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出する方法や、相当の地代を支払う方法で対応します。
建物の売買価額は時価を基準にします。時価より著しく低い価額で会社に売ると、時価で売ったものとみなして個人に課税される場合があるため、帳簿上の価額(未償却残高)だけで決めず、根拠を残しておきます。
計算例:建物を会社に売ったときの譲渡所得の税金
例えば、所有期間が5年を超える賃貸建物を、時価3,000万円で資産管理会社に売る場合です。取得費(取得価額から減価償却費の累計を引いた額)が2,500万円で、譲渡費用はないものとします。
- 譲渡所得:3,000万円-2,500万円=500万円
- 所得税・住民税(復興特別所得税を含む):500万円×20.315%=1,015,750円
このほか、会社の側に不動産取得税と登録免許税がかかります(特例や控除は考慮していません)。
移す資産の範囲や方式、売買価額の決め方で、移転のときの税金と将来の相続税が大きく変わります。初回無料でご相談いただけます。
無料で相談する相続対策として有効?資産管理会社の株式の評価の注意点
会社に資産を移すと、相続のときは会社の株式(取引相場のない株式)として評価されます。資産の保有が中心の会社は、土地や株式の保有割合が高い会社として、会社の純資産をもとに評価する方法(純資産価額方式)が中心になることが多くあります。
純資産価額方式では、会社の資産と負債を相続税評価額に置き直して評価します。評価額が帳簿上の価額を上回る含み益の部分は、法人税等に相当する額を差し引けるため、個人で直接持つより評価が下がる場合があります。一方、会社が取得してから間もない土地・建物は、相続税評価額ではなく通常の取引価額で評価する決まりがあるため、購入直後の相続では評価が下がらないこともあります。
| 論点 | 個人で直接持つ場合 | 資産管理会社で持つ場合 |
|---|---|---|
| 相続する財産 | 土地・建物などの不動産 | 会社の株式 |
| 評価の方法 | 路線価や固定資産税評価額など。貸家・貸家建付地の評価減がある | 会社の純資産をもとにした評価が中心。含み益について法人税等相当額を差し引ける |
| 小規模宅地等の特例 | 貸付事業用宅地等として200㎡まで50%減額できる場合がある | 会社に貸している個人の土地は、相当の地代を受けていれば貸付事業用宅地等の対象になり得る |
| 分けやすさ・生前の移転 | 不動産は分けにくく、共有になりやすい | 株式は分けやすく、年110万円の基礎控除などを使って少しずつ贈与できる |
小規模宅地等の特例は、相続開始前3年以内に新たに貸付事業に使い始めた宅地等を原則として対象外としています。生前に株式を贈与した場合も、相続開始前の一定期間の贈与は相続財産に加算されます。加算の対象は、相続開始が2026年12月31日までなら3年以内、2027年1月1日から2030年12月31日までは2024年1月1日以後の贈与、2031年1月1日以後は7年以内です。
資産管理会社の株式に事業承継税制は原則として使えない
非上場株式の相続税・贈与税の納税を猶予する事業承継税制は、資産の保有や運用が中心の会社(資産保有型会社・資産運用型会社)を、一定の事業実態がある場合を除いて対象外としています。資産管理会社の株式を後継者に引き継ぐ計画は、この制度を前提にしないで立てます。
貸付用不動産の評価の見直しにも注意
令和8年度税制改正の大綱では、貸付用不動産の相続税評価を見直す方針が示されています(2026年10月時点で通達の改正内容は未確認)。購入して間もない賃貸物件で評価を下げるような対策は、今後の取扱いを確認してから判断します。
会社員が資産管理会社をつくるときの注意点は?
会社員が副業として不動産投資をしている場合も、資産管理会社をつくることはできます。ただし、勤務先との関係や、社会保険・確定申告の扱いが個人で賃貸経営をする場合とは変わります。
- 勤務先の就業規則で、副業や他の会社の役員への就任が制限されていないかを確認する
- 自分が役員報酬を受け取ると、勤務先と資産管理会社の両方で社会保険の加入を調整する届出(二以上事業所勤務届)が必要になる場合がある
- 給与を2か所以上から受け取ると、確定申告が必要になることがある
- 配偶者を役員にして報酬を払う場合は、配偶者控除(令和8年分は配偶者の給与が136万円以下)や配偶者特別控除(207万円未満)の要件への影響を確認する。本人の合計所得金額の要件もある
- 物件の購入資金を借りる場合は、会社の名義で融資を受けられるか、個人の保証を求められるかを金融機関に確認する
物件の規模が小さいうちは、会社の固定費(均等割や専門家への報酬など)が税負担の軽減額を上回りやすい点に注意します。不動産所得の赤字を給与所得と損益通算できる間は個人のまま持ち、所得が増えた段階で会社を検討する、という順番も選択肢です。
設立の手順と、設立前に試算しておくこと
- 目的と対象の資産を決める所得の分散、相続への備え、新しい物件の取得など、何のための会社かを決め、移す資産の範囲を絞ります。
- 方式を選ぶ管理委託・サブリース・所有のどの形にするか、建物だけを移すかを決めます。
- 税負担と手取りを試算する個人のまま続けた場合と会社をつくった場合で、所得税・住民税・法人税等・社会保険料・移転のコストを複数年で比べます。
- 会社の形と基本事項を決める株式会社か合同会社か、役員、資本金、事業年度を決め、定款を作成して登記します。
- 税務の届出をする税務署に、法人設立届出書(設立の日以後2か月以内)と青色申告承認申請書を出します。青色申告承認申請書の期限は、設立の日以後3か月を経過した日と最初の事業年度終了の日の早い日の前日までです。給与を払うなら給与支払事務所等の開設届出書(開設の日から1か月以内)も出し、道・市への届出も行います。
- 契約と資産の移転を行う管理委託契約・賃貸借契約・売買契約を結び、土地の無償返還に関する届出書など必要な届出を済ませます。
資本金の額によっては、設立した期から消費税の課税事業者になります。家賃に課税の物件が含まれる場合は、資本金を決める前に消費税の扱いも確認しておきます。
札幌市内で設立する場合の地方税と登録免許税
札幌市の法人市民税の法人税割は、資本金1億円以下かつ法人税額1,000万円以下なら6.0%、北海道の法人道民税は1.0%です(2019年10月1日以後に開始する事業年度)。均等割は、資本金等1,000万円以下・従業者50人以下なら年7万円(道2万円+市5万円)です。
特定創業支援等事業(札幌中小企業支援センター・札幌商工会議所で1か月以上・4回以上の支援)の証明書を受けて市内で設立すると、登録免許税が半分になります。株式会社は15万円→7.5万円、合同会社は6万円→3万円です。証明書の有効期限は2027年3月31日で、対象になるかは窓口で確認します。
よくある質問
資産管理会社は、株式会社と合同会社のどちらがよいですか?
合同会社は登録免許税の最低額が6万円(株式会社は15万円)で定款の認証も不要なため、設立と維持の手間が少なく済みます。一方、合同会社では出資者(社員)が亡くなると原則として退社となり、相続人は持分を引き継がず払戻しを受ける形になります。相続人が地位を引き継げるよう、定款で定めておくことが重要です。
上場株式や投資信託を資産管理会社で運用するメリットはありますか?
会社では運用益をほかの所得と合算して法人税等を計算し、受け取る配当の一部を益金に算入しない仕組みもあります。一方、運用益を個人で使うには役員報酬や配当で受け取る必要があり、その段階で再び課税されます。運用額と目的に照らして判断します。
資本金はいくらにすればよいですか?
株式会社は資本金1円からでも設立できますが、資本金の額は消費税の納税義務や均等割の区分に影響します。物件の取得資金や当面の運転資金、金融機関からの見え方も考えて決めます。
資産管理会社をやめたいときは、どうなりますか?
解散・清算の登記と、解散・清算の申告が必要です。残った財産を株主に分配すると、会社の資本金等の額を超える部分は配当とみなされて課税されることがあります。不動産を個人に戻す場合も譲渡の税金がかかるため、つくる前に出口まで考えておきます。
まとめ
資産管理会社は、法人の税率の活用、家族への所得の分散、相続財産の管理に使える一方、均等割などの固定費や、資産を移すときの譲渡所得税・不動産取得税・登録免許税がかかります。相続の評価が下がるとは限らず、事業承継税制も原則として使えません。管理委託・サブリース・所有のどの形にするか、建物だけを移すかを含め、個人のまま続けた場合と複数年で比べてから判断しましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
資産管理会社の設立・税務のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
- 国税庁 タックスアンサー No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
- 国税庁 タックスアンサー No.7191 登録免許税の税額表
- 北海道「不動産取得税」
- 札幌市「法人市民税」
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
