ドラッグストア・調剤併設店の開業では、薬局開設許可や保険薬局の指定と並行して、開業届・青色申告承認申請書などの税務の届出を期限内に出します。調剤は非課税・物販は課税という消費税の区分、在庫と調剤報酬の計上の仕方まで、初年度に押さえたい点を一覧で確認できます。
この記事の結論
許認可(薬局開設許可・保険薬局の指定)と税務の届出を1枚のスケジュール表で管理し、期限のある青色申告承認申請書を最優先で出します。税務の設計で最も大事なのは、調剤と物販の売上を最初から分けて集計することです。
- 開業届は開業の日から1か月以内、青色申告承認申請書は原則その年の3月15日まで(1月16日以後の開業は開業の日から2か月以内)
- 保険調剤の収入は消費税が非課税。免税・課税の判定や簡易課税を選べるかは、物販などの課税売上で判断する
- 調剤用の医薬品の仕入れにかかる消費税は差し引けず、店の負担になりやすい
- 年末時点の調剤報酬の未収分、期末の在庫、期限切れ品の廃棄記録が決算の要になる
開業時に出す税務の届出は?個人・法人別の一覧
個人で開業するか、会社を設立して開業するかで、出す書類が変わります。まず個人の場合の主な届出です。
| 届出書類(個人) | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 個人事業の開業届出書 | 税務署 | 開業の日から1か月以内 |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 税務署 | その年の3月15日まで(1月16日以後の開業は開業の日から2か月以内) |
| 青色事業専従者給与に関する届出書(家族に給与を払う場合) | 税務署 | 青色申告承認申請書と同じ期限 |
| 給与支払事務所等の開設届出書(人を雇う場合) | 税務署 | 開設の日から1か月以内 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(常時10人未満) | 税務署 | 随時。提出した月の翌月末日までに通知がなければ、翌々月の納付分から適用 |
| 棚卸資産の評価方法の届出書(任意) | 税務署 | 開業した年の確定申告期限まで。出さなければ最終仕入原価法 |
| 消費税簡易課税制度選択届出書(選ぶ場合) | 税務署 | 適用を受ける課税期間の初日の前日まで(開業した課税期間は、その期間中) |
| 事業開始等の届出(個人事業税) | 道税事務所 | 開業後すみやかに |
青色申告承認申請書は開業届と同じ日に出すのが安全です。期限を過ぎるとその年は白色申告になり、青色申告特別控除(令和8年分は最大65万円、令和9年分からは要件を満たすと最大75万円)や赤字の繰越しが使えません。開業した年の確定申告は翌年の2月16日〜3月15日(土日の場合は翌平日)で、令和8年分は2027年2月16日〜3月15日です。
会社を設立して開業する場合は、次の届出が中心になります。法人は役員1人だけでも健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所になります。また札幌市内の法人は、資本金等1,000万円以下・従業者50人以下でも、赤字の年を含めて道と市の均等割が合わせて年7万円かかります。
| 届出書類(法人) | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 法人設立届出書 | 税務署 | 設立の日以後2か月以内 |
| 青色申告の承認申請書 | 税務署 | 設立の日以後3か月を経過した日と、最初の事業年度終了の日のうち早い日の前日まで |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 | 開設の日から1か月以内 |
| 棚卸資産の評価方法の届出書(任意) | 税務署 | 最初の事業年度の確定申告期限まで |
| 法人設立の届出 | 道税事務所・市町村 | 設立後すみやかに(様式・期限は各窓口で確認) |
| 健康保険・厚生年金保険の新規適用の届出 | 年金事務所 | 役員1人だけでも対象 |
薬剤師・登録販売者を雇う場合
人を雇うと、給与支払事務所等の開設届出書に加えて、労働基準監督署での労災保険、ハローワークでの雇用保険の手続きが開業前後に集中します。ドラッグストアは物品販売の事業に当たり、個人事業所でも常時5人以上を使用すると健康保険・厚生年金保険が強制適用になります。パートの時給は北海道の最低賃金(2026年10月1日から時間額1,131円)を下回らないように決めます。
許認可と税務の届出はどの順番で進める?
保険調剤を始められる日は、保険薬局の指定の時期で決まります。開業日はそこから逆算し、税務の届出は開業日が固まった時点でまとめて出すと、出し忘れを防げます。
- 物件と内装の事前相談薬局には構造設備の基準があるため、物件の契約や内装工事の前に保健所へ図面を持って相談します。
- 薬局開設許可の申請調剤を行う店舗は薬局開設許可、調剤を行わず一般用医薬品だけを売る店舗は店舗販売業の許可を、保健所に申請します。
- 保険薬局の指定と保険薬剤師の登録保険調剤を行うには、北海道厚生局で保険薬局の指定を受け、勤務する薬剤師も保険薬剤師として登録します。
- 税務の届出開業日が決まったら、開業届と青色申告承認申請書を同じ日に提出します。法人は設立後すぐに法人設立届出書と青色申告の承認申請書を準備します。
- 雇用と給与の手続き薬剤師・登録販売者の雇用に合わせて、労働保険・社会保険と給与支払事務所等の開設届出書を済ませます。
| 許認可 | 窓口 | 必要になる場面 |
|---|---|---|
| 薬局開設許可(医薬品医療機器等法) | 保健所 | 処方箋による調剤を行う |
| 店舗販売業の許可(同法) | 保健所 | 調剤を行わず一般用医薬品を販売する |
| 保険薬局の指定 | 北海道厚生局 | 保険調剤を行う |
| 麻薬小売業者の免許 | 都道府県知事(申請窓口は事前に確認) | 麻薬を含む処方箋を受ける |
| 一般酒類小売業免許 | 税務署 | ビールなどの酒類を販売する |
酒類の販売免許は税務署が窓口で、許認可のなかでも見落としやすい手続きです。酒類を棚に並べる予定があるなら、開店日に間に合うよう早めに相談しておきます。
調剤と物販で消費税はどう分かれる?
調剤併設店の税務で最大の特徴は、非課税の売上と課税の売上が混ざることです。保険調剤の収入(調剤報酬と患者の一部負担金)は消費税が非課税、一般用医薬品・化粧品・日用品・食品の販売は課税売上になります。
| 売上の種類 | 消費税 | 集計のポイント |
|---|---|---|
| 保険調剤(調剤報酬・一部負担金) | 非課税 | レセコンの請求データで集計 |
| 一般用医薬品・化粧品・日用品 | 課税(10%) | レジの税率設定を確認 |
| 飲食料品(酒類を除く) | 課税(軽減税率8%) | 健康食品・飲料の税率区分に注意 |
| 酒類 | 課税(10%) | 販売には酒類の販売免許が必要 |
消費税の納税義務の判定(基準期間の課税売上高1,000万円以下なら免税)や、簡易課税を選べるか(基準期間の課税売上高5,000万円以下)は、非課税の調剤収入を除いた課税売上で判断します。年商が大きくても、調剤の比率が高い店は免税事業者や簡易課税の対象になることがあります。
計算例:調剤4,000万円・物販2,000万円の店の消費税
例えば、年商6,000万円のうち保険調剤の収入が4,000万円、物販が2,000万円(税抜)、物販の商品の仕入れが1,400万円(税抜)、調剤用の医薬品の仕入れが2,800万円(税抜)の店の場合です。計算を単純にするため、税率はすべて10%とします。
- 課税売上高は物販の2,000万円(調剤の4,000万円は含めない)
- 売上にかかる消費税:2,000万円×10%=200万円
- 簡易課税(第2種・みなし仕入率80%)で差し引ける額:200万円×80%=160万円、納付税額は200万円−160万円=40万円
- 本則課税で差し引ける額:物販の仕入れ分1,400万円×10%=140万円、納付税額は200万円−140万円=60万円
- 調剤用の医薬品の仕入れにかかる消費税:2,800万円×10%=280万円(非課税の売上に対応するため差し引けない)
この例では簡易課税の方が納付税額は少なくなりますが、仕入れの比率や設備投資の有無で結果は変わります。
本則課税では、物販の商品の仕入れは全額、調剤用の医薬品の仕入れは差し引けず、家賃や光熱費などの共通の経費は課税売上割合(売上全体に占める課税売上の割合)に応じた分だけを差し引きます。仕入れの段階から「物販用・調剤用・共通」を区分して記帳できるよう、会計ソフトの科目や補助科目を開業時に設計しておきます。
簡易課税では、消費者への物販は第2種事業(みなし仕入率80%)、医療機関や施設など事業者への販売は第1種事業(90%)に当たります。選ぶには届出が必要で、2年間は継続して適用されます。
無料ツール簡易課税・本則課税・2割特例の納税額を比較する物販の売上と仕入れの金額を入れると、どの計算方法で納税額が少なくなるかを比べられます。計算する
調剤と物販の比率、設備投資の予定によって、簡易課税と本則課税のどちらが有利かは変わります。届出の期限前に試算できます。
無料で相談するインボイス登録は必要?客層と売上の構成で判断する
来店客の多くが一般の消費者なら、インボイス(適格請求書)を求められる場面は限られ、免税事業者でいられる間は登録しない選択もあります。保険調剤は非課税なので、インボイスの対象になりません。一方、介護施設や企業などへまとめて販売する取引がある場合や、課税売上が増えて課税事業者になる見込みがある場合は、登録を前向きに検討します。
小売業は、買い手の名前を省いた「適格簡易請求書」(レシート)を交付できます。登録したら、登録番号と、税率ごとに区分した合計額・税率などがレシートに印字されるよう、レジの設定を確認します。
- 個人の2割特例は令和8年分で終わる
- 令和9・10年分は、登録しなければ免税事業者になる個人に「3割特例」(納付税額=売上税額の3割)がある
- 消費者向けの物販が中心なら、簡易課税の第2種(納付税額は売上税額の2割)の方が3割特例より納付税額は少なくなる
- 免税事業者からの仕入れは、2026年10月1日〜2028年9月30日の間は消費税の70%だけを差し引ける
ツール消費税の課税事業者になるかを判定する基準期間・特定期間の課税売上などを入れると、納税義務があるかを確認できます。判定する
登録の判断や請求書の記載事項は、インボイス制度の実務ガイドで登録の判断と記載事項を確認するで詳しく整理しています。
開業前の支出や内装・設備は経費になる?
開業前の支出は、中身によって処理が分かれます。薬剤師・スタッフの研修費、開店の広告費、開業準備の打合せ費用などは「開業費」として資産に計上し、開業後に利益の状況に合わせて任意の時期に経費にできます。一方、内装工事や調剤機器・レジ・陳列棚などは開業費ではなく、固定資産として減価償却します。
| 取得価額 | 処理 | ドラッグストアでの例 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | その年の経費 | 小型の備品、事務用品 |
| 20万円未満 | 一括償却資産として3年で均等に経費にすることも選べる | 陳列棚の一部、パソコン |
| 40万円未満 | 青色申告の中小事業者は全額をその年の経費にできる(年300万円まで) | レジ、薬用の保冷庫 |
| 上記以外 | 耐用年数に応じて減価償却 | 内装工事、分包機などの調剤機器 |
元の見積書や契約書で、内装工事のうち建物附属設備に当たる部分と、器具・備品に当たる部分を分けておくと、耐用年数の判断がしやすくなります。開業前の支出の領収書は、開業後の帳簿とは別にまとめて保管しておきましょう。
最初の1年の記帳と資金管理で気をつけることは?
調剤報酬は請求から入金までに時間がかかるため、年末時点でまだ入金されていない調剤報酬も、その年の売上として計上します。入金ベースで記帳していると、初年度の売上が少なく計算され、翌年に修正が必要になります。
医薬品には使用期限があり、期限切れによる廃棄は避けられません。廃棄の日付・品目・数量を記録し、処分を委託した場合はその書類も残しておくと、廃棄損として経費にする根拠になり、税務調査でも説明しやすくなります。期末には医薬品と物販商品の在庫を数え、評価方法の届出がなければ最終仕入原価法で評価します。
具体例:在庫金額が資金繰りに与える影響
例えば期末の在庫が800万円、月商が500万円の店舗なら、800万円÷500万円=1.6か月分の売上に当たる在庫を抱えていることになります。仕入れの支払いが先行し、販売してようやく資金が戻るため、在庫が多いほどその分の資金を長く立て替えている状態です。
保険調剤の報酬は入金が後になる分、物販の現金収入とタイミングがずれます。品ぞろえを優先しがちな開業当初こそ、在庫金額の目安を決めて資金繰り表に反映させておくと安定します。
- レジの現金過不足を毎日確認し、記録を残す
- レセコン・レジ・会計ソフトの連携方法を開業前に決め、手作業の転記をなくす
- 仕入れを「物販用・調剤用・共通」に分けて記帳する
- 共通ポイントや自社ポイントを導入する前に、値引きとして扱うか別に処理するかを決める
- 麻薬・向精神薬などの記録が求められる品目があるか、開業前に確認する
月次で在庫と売上の区分を確認する仕組みは、中小企業の経理・会計処理のガイドで基本を確認できます。会社で開業する場合の決算や給与計算の支援は、会計・税務顧問のサポート内容で紹介しています。
札幌で開業する場合の窓口は?
税務署は、個人なら原則として住所地、法人なら本店の所在地で決まります。店舗の所在地ではない点に注意しましょう(個人は届出により店舗の所在地を納税地にすることもできます)。
| 住所地(法人は本店所在地) | 所轄の税務署 |
|---|---|
| 中央区(おおむね西10丁目より東) | 札幌中税務署 |
| 中央区(大通西11丁目より西・円山・宮の森など)・西区・手稲区 | 札幌西税務署 |
| 北区・東区・石狩市・石狩郡 | 札幌北税務署 |
| 豊平区・南区・清田区・千歳市・恵庭市・北広島市 | 札幌南税務署 |
| 白石区・厚別区・江別市 | 札幌東税務署 |
2026年7月10日から、市内5署の内部事務が札幌業務センターに集約されました。書面を郵送する場合は〒060-8510の同センター宛てに送り、窓口に持参する場合とe-Taxで提出する場合は所轄の税務署が提出先です。薬局開設許可・店舗販売業の許可は市の保健所、保険薬局の指定は北海道厚生局が窓口です。
よくある質問
調剤をしない(登録販売者だけの)ドラッグストアでも、届出は同じですか?
税務の届出は同じです。許認可は薬局開設許可ではなく店舗販売業の許可になります。売上はすべて課税売上なので消費税の区分は単純になり、簡易課税を選ぶ場合は消費者への販売が第2種事業の中心になります。
調剤報酬の返戻や減額査定があったときは、どう処理しますか?
返戻は再請求するまで未収の報酬として管理し、減額査定は通知を受けた時点で売上を減らす処理が一般的です。請求額・入金額・査定額を月ごとに突き合わせる表を作っておくと、未収金の残高が合わない原因をすぐに見つけられます。
個人で開業して、後から会社にすることはできますか?
できます。ただし薬局開設許可や保険薬局の指定は開設者ごとに受けるものなので、開設者が個人から会社に変わると、許可や指定を新たに取り直す手続きが必要になるのが一般的です。会社にする時期は、保健所と北海道厚生局の手続きの日程も含めて検討します。
ポイントカードを導入すると、売上の計上は変わりますか?
自社ポイントか共通ポイントか、ポイントを値引きとして扱うかで、売上や経費の計上方法が変わります。レジの設定にも関係するため、導入前に処理のルールを決めておきましょう。
まとめ
ドラッグストア・調剤併設店の開業は、許認可と税務の届出を同じスケジュールで管理し、青色申告承認申請書を開業届と同じ日に出すのが基本です。税務では、調剤は非課税・物販は課税という売上の区分と、仕入れの区分を開業時に設計しておくと、消費税の判定や簡易課税の試算がスムーズになります。調剤報酬の未収計上と在庫・廃棄の記録も、初年度から習慣にしておきましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
ドラッグストア・調剤併設店の開業のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
- 国税庁 タックスアンサー No.2090 新たに事業を始めたときの届出など
- 国税庁 タックスアンサー No.6505 簡易課税制度
- 国税庁「インボイス制度(令和8年度改正関係)」
- 国税庁「札幌国税局管内の税務署の所在地・管轄」
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
