融資審査のポイント|金融機関が見る5項目と決算書・資料の準備

公認会計士・税理士 監修

この記事は、公認会計士・税理士が代表を務める札幌の会計事務所「ジェイスタート会計事務所」が監修しています。

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融資審査のポイントは、金融機関が「貸したお金が約束どおり返ってくるか」をどう確かめるかにあります。見られるのは利益(返済原資)、資金繰り、自己資本、経営者の信頼性、資金使途の5項目で、返済原資は「税引後利益+減価償却費」が基本です。審査前の点検と資料の準備を整理します。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

審査の中心は返済能力です。金融機関は、決算書の利益と減価償却費から返済原資を、借入残高との比較から債務償還年数を確認します。公私混同や税金の滞納は大きなマイナスで、資金使途は見積書や資金繰り表の数字で説明します。

  • 見られるのは利益・資金繰り・自己資本・経営者・使途の5項目
  • 返済原資(税引後利益+減価償却費)が年間の返済額を上回っているかが最初の関門
  • 債務償還年数は10年以内が一つの目安(算式は金融機関により異なる)
  • 役員貸付金などの公私混同や、債務超過は大きなマイナス
  • 準備資料は決算書・試算表・資金繰り表・借入一覧・事業計画の5点
目次

融資審査で見られる5項目と主な資料

融資審査で見られているのは「貸したお金が約束どおり返ってくるか」という点です。具体的には、次の5項目に整理できます。この5つを審査前に自分で点検しておくと、面談での説明がスムーズになる場合があります。

項目金融機関が見ること主な資料
利益(返済原資)税引後利益+減価償却費が、年間の返済額を継続して上回っているか決算書(損益計算書)、試算表
資金繰り入金と支払いの時期のずれで資金が詰まらないか、手元資金が回っているか資金繰り表、預金残高
自己資本債務超過になっていないか、純資産が積み上がっているか決算書(貸借対照表)
経営者の信頼性会社と個人の財布が混ざっていないか、納税や他行借入の返済が約束どおりか勘定科目内訳明細書、納税証明書
資金使途何に使い、いつ・どのように返すかを数字で説明できるか見積書、資金繰り表、事業計画
融資審査で見られる5項目と、説明に使う主な資料

返せるかは「返済原資」と「債務償還年数」で見られる

金融機関は「税引後利益+減価償却費」を返済原資と見ます。減価償却費を足すのは、費用として計上されても現金が出ていかないためです。例えば年間返済額300万円の借入を希望するなら、それを上回る返済原資が継続的に出ているかが最初の関門です。

計算例:返済原資と年間返済額を比べる

例えば、税引後利益が220万円、減価償却費が130万円の会社の場合です。

220万円+130万円=350万円

返済原資は350万円で、希望する借入の年間返済額300万円を上回っています。ここから既存の借入の返済額も差し引いて、余裕が残るかを確認します。

もう一つの代表的な指標が債務償還年数で、「有利子負債÷(経常利益+減価償却費)」で求める算式があります。今の利益水準で借入金を何年で返し終えるかを示すもので、金融機関により算式が異なる場合があります。

具体例:借入残高3,000万円の企業の債務償還年数

  • A社(借入3,000万円、経常利益+減価償却費が500万円/年):3,000万円÷500万円=6年。10年以内で良好
  • B社(借入3,000万円、経常利益+減価償却費が200万円/年):3,000万円÷200万円=15年。要注意先と見られるリスク

※一般的な目安の概算イメージです。金融機関により算式や判断基準が異なります(2026年時点の参考)。

金融機関の審査では、債務償還年数が「10年以内」かどうかが一つの目安とされています。10年を超えると要注意先と判断されるリスクが高まり、追加担保の要求や融資条件の厳格化につながる場合があります。利益水準を上げるか、借入残高を計画的に圧縮するかが対策の二本柱です。

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減価償却費を定額法で計算する取得価額と耐用年数を入れると、毎年の減価償却費を確認できます。返済原資の試算に使えます。計算する

赤字決算であっても、原因と改善策を数字で説明できれば評価が変わる場合があります。一時的な赤字なのか、事業の構造による赤字なのかを分けて示し、改善後の試算表や受注の見込みを添えると説得力が増します。青色申告の中小法人なら、赤字の年に前期の法人税の還付(欠損金の繰戻し還付)を受けて資金繰りを補える場合もあります。

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欠損金の繰戻し還付を試算する赤字になった事業年度に、前期に納めた法人税の還付をどれくらい受けられるかの目安を確認できます。計算する

利益を良く見せる処理は逆効果

減価償却費を計上しない、在庫を実態より多く計上する、売上を前倒しで計上するといった処理は、金融機関が決算書を読み替えて実態を見ることがあり、信頼を大きく損ねます。数字は実態どおりに作り、悪い数字には理由と対策を添えるほうが審査では有利です。

自己資本と決算書の中身:債務超過・役員貸付金を点検する

債務超過でないか、役員貸付金のような「会社と個人の財布の混同」がないかは、金融機関が重視するポイントです。回収できない売掛金や売れ残りの在庫、説明できない仮払金は、資産としての価値を割り引いて見られることがあります。役員貸付金の整理の仕方は役員貸付金のリスクと解消法で解説しています。

  • 役員貸付金・仮払金:残高の理由と返済の計画を説明できるか
  • 売掛金:長く回収できていない取引先の残高が残っていないか
  • 在庫:実在しない在庫や、売れる見込みのない在庫を計上していないか
  • 借入金:決算書の残高が金融機関の残高と一致しているか
  • 税金・社会保険料:未払いや滞納が残っていないか

納税状況や他行借入の返済履歴も、信用情報として見られます。社長個人から会社への借入金(役員借入金)は、返済を急がない約束があれば自己資本に近いものとして評価されることもあるため、経緯を説明できるようにしておきましょう。

資金使途と経営者の信頼性:数字で説明する

設備資金は見積書と投資効果の試算、運転資金は資金繰り表で「なぜ必要か・いつ返せるか」を示します。前向きな計画でも、数字の裏付けがないと審査は進みにくくなります。

資金の種類説明に使う資料説明のポイント
設備資金見積書、投資効果の試算設備で売上や経費がどう変わり、何年で投資を回収できるか
運転資金資金繰り表、売掛金・在庫の推移入金と支払いのずれがなぜ生じ、いつ解消するか
創業資金創業計画書、自己資金が分かる通帳自己資金をどう準備したか、売上見込みの根拠
資金使途ごとの説明の仕方

経営者の信頼性は、公私混同がないこと、約束した返済や納税を守っていること、数字を自分の言葉で説明できることで判断されます。経営者保証については、信用保証協会の事業者選択型経営者保証非提供制度(2024年3月15日開始)があります。上乗せの保証料(0.25%または0.45%)を負担すれば、経営者保証を付けない選択もできます。面談での伝え方は融資面談のコツと準備も参考にしてください。

返済原資や資金使途の説明の組み立ては、決算書の内容と借入の状況で変わります。融資の前に初回無料で確認できます。

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申込み先で何が変わる?公庫・信用保証付き融資・制度融資

審査で見られる5項目はどこでも共通ですが、申込み先によって重視される点や条件が変わります。創業期・新規事業なら日本政策金融公庫の制度も選択肢の一つです。

申込み先特徴確認したいこと
日本政策金融公庫(新規開業・スタートアップ支援資金)開業前からおおむね7年以内が対象で、限度は7,200万円。創業融資には利率の引下げがある自己資金は審査の重要な要素(公庫のFAQでは平均2割程度)
信用保証付きの融資(制度融資を含む)信用保証協会の保証が付く。原則は責任共有で保証割合80%、創業関連保証などは全額を保証保証料の負担と、経営者保証の有無
金融機関独自の融資(プロパー融資)保証協会の保証を付けずに金融機関が直接貸す取引の実績と財務内容がより重視される
主な申込み先の違い(2026年10月時点。条件は各機関の案内で確認)

自己資金比率については、申請総額の2〜3割を自己資金で用意できているかどうかが実務上の目安になります。特に新規融資・増額申請時は、試算表・資金繰り表と合わせて数値の根拠を説明できる状態で臨むことが、審査を進めるうえで重要です。公庫の創業融資の進め方は公庫の創業融資の流れで確認できます。

札幌市・北海道の制度融資を使う場合

札幌市の融資制度(マル札資金・特別資金)は、2026年10月1日以降に実行される分から利率が0.3%上乗せされています。年度初めの利率の表記のまま比べず、申込み時点の案内で確認してください。北海道中小企業総合振興資金の創業貸付【スタートアップ】は、経営者の個人保証が不要です(2026年10月1日現在)。

既存の借入がある場合:借換えで返済負担は軽くなる?

金利の高い借入や返済期間の短い借入が返済原資を圧迫しているときは、借換えで毎月の返済額を下げられる場合があります。金利の差がどれくらいの効果になるかは、次のように試算できます。

具体例:借換えで総返済額はどれだけ変わる?(試算例・概算)

借入残高1,000万円・残り5年(60回)を、金利2.5%から1.5%へ借り換えた場合の試算です。

  • 金利2.5%:毎月の返済 約177,500円、総返済額 約1,065万円、利息合計 約65万円
  • 金利1.5%:毎月の返済 約173,100円、総返済額 約1,039万円、利息合計 約39万円
  • 差額:毎月177,500円−173,100円=4,400円、総返済額では1,065万円−1,039万円=26万円の減少

※元利均等返済での概算です。実際は借換え時の手数料・保証料・印紙代等で実質的なメリットは変わります。

借換えでは、金利だけでなく、新たにかかる保証料や手数料、返済期間の変化もあわせて比べます。返済期間を延ばす借換えは、毎月の負担が下がる代わりに利息の総額が増えることがあるため、資金繰りの改善と総負担のどちらを優先するかを決めてから相談しましょう。

補助金を使うときは「後払い」に備えたつなぎ資金を

補助金は原則として事業の完了後に支払われる後払いで、採択されても入金までは自己資金か借入れで立て替える必要があります。採択は事業計画の評価材料になりますが、つなぎの融資でも返済原資と資金繰りは同じように見られます。

補助金(2026年度の名称)受付・締切(2026年10月3日時点)
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金第1回の受付は2026年9月30日〜10月30日18時
デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)第6次の締切は2026年10月30日17時
小規模事業者持続化補助金一般型・通常枠の第20回と創業型の第4回は、受付が2026年11月5日〜12月15日17時
主な補助金の公募状況(日程は変わるため、最新の公募要領で確認)

受け取った補助金は収益として計上し、固定資産の取得に充てた場合は圧縮記帳で課税を先送りできる場合があります。入金の時期と納税の時期がずれることも、資金繰り表に織り込んでおきましょう。資金調達の全体像は融資・資金調達ガイドにまとめています。

審査前の準備:5点セットと面談までの流れ

直近の決算書・試算表・資金繰り表・借入一覧・事業計画の5点を整え、説明の一貫性を持たせておくことが大切です。5つの資料の数字が互いに合っていることが、そのまま信頼につながります。

  • 決算書(勘定科目内訳明細書を含む)
  • 直近の月までの試算表
  • 資金繰り表(実績と今後の見込み)
  • 借入一覧(金融機関・残高・金利・毎月の返済額・期限)
  • 事業計画(資金使途・投資効果・返済の計画)
  1. 使い道と金額を決める何にいくら必要か、見積書や資金繰り表で根拠をそろえます。
  2. 返済の計画を作る返済原資と、既存の借入を含めた年間返済額を比べます。
  3. 資料の数字を突き合わせる決算書・試算表・借入一覧の残高が一致しているかを確認します。
  4. 聞かれそうな点の答えを用意する赤字の理由、役員貸付金の経緯、売上見込みの根拠などを整理します。
  5. 追加資料にすぐ応じる面談後に求められた資料を早く出すことも、審査の印象を左右します。

当事務所では、融資用資料のたたき台づくりにAIを活用し、税理士が数字の整合性を最終確認する運用で、準備期間の短縮を支援しています。

よくある質問

決算から時間がたっている場合は、何を見せればよいですか?

決算書に加えて、直近の月までの試算表を出します。決算後に業績が変わっている場合は、その理由と今後の見込みを資金繰り表で示すと、今の実力を判断してもらいやすくなります。

社長個人のクレジットやローンの支払い状況も見られますか?

中小企業では会社と経営者が一体で見られることが多く、経営者個人の借入れや支払いの状況も確認されることがあります。とくに創業融資では、個人の支払いの遅れが判断に影響しやすいため注意が必要です。

融資を断られたら、すぐ別の金融機関に申し込んでもよいですか?

まず断られた理由をできる範囲で確認し、資料や計画を見直してから申し込むのが近道です。同じ資料のまま申込み先だけを変えても、同じ点で止まりやすくなります。

個人事業主も同じ項目で審査されますか?

見られる項目は同じで、確定申告書と青色申告決算書が決算書の代わりになります。個人事業主の場合、事業の利益から生活費もまかなうため、返済原資は生活費を差し引いた残りで見られる点が法人と異なります。

融資の相談は、どのタイミングでするのがよいですか?

資金が足りなくなる前に、余裕をもって相談するのが基本です。設備資金なら発注や契約の前に、運転資金なら資金繰り表で不足が見えた時点で相談すると、選べる手段が広がります。

まとめ

融資審査で見られるのは、利益(返済原資)・資金繰り・自己資本・経営者の信頼性・資金使途の5項目です。返済原資=税引後利益+減価償却費と債務償還年数を自社で試算し、役員貸付金などの公私混同を整理したうえで、使途を数字で語れるように準備資料の5点セットをそろえましょう。補助金を使う場合は後払いを前提に、つなぎ資金まで含めて資金繰りを組み立てておくと安心です。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り

出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。融資・補助金の条件や日程は変わることがあり、個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申込み・手続きは各機関の案内を確認し、税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂

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