内科クリニックの開業届と税務の届出一覧|健診・予防接種の消費税も確認

  • URLをコピーしました!

内科クリニックを個人で開業するときの税務の届出は、開業届・青色申告承認申請・給与関係の3系統が柱です。保健所や厚生局の手続きとは別に税務署への提出が必要で、青色申告の期限を逃すと初年度の赤字を繰り越せません。期限の一覧と、健診・予防接種の消費税など内科特有の注意点を整理します。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

最優先は、開業の日から1か月以内の開業届と、青色申告承認申請書(1月16日以後の開業なら開業の日から2か月以内)です。看護師や受付スタッフを雇うなら、給与支払事務所等の開設届と源泉所得税の納期の特例もあわせて出します。

  • 診療所開設届や保険医療機関の指定申請を出しても、税務署への届出は別に必要
  • 青色申告なら最大65万円の特別控除(令和8年分)と、赤字の繰越しが使える
  • 保険診療は消費税が非課税、健診・予防接種・診断書料は課税
  • 社会保険診療報酬は個人事業税がかからず、措置法26条の概算経費の特例も選べる
  • レセプトは診療月のおよそ2か月後に入金。年末の未入金分は売掛金に計上する
目次

内科の開業で税務署に出す届出は?期限の一覧

個人で内科クリニックを開業する場合、税務署に出す届出は次のとおりです。期限があるのは開業届と青色申告・給与関係の届出で、中でも青色申告承認申請書は期限を過ぎると、その年は青色申告ができません。

届出書類期限内科クリニックでの注意点
個人事業の開業届出書開業の日から1か月以内開業日は診療を始めた日を基準にし、保険医療機関の指定日とのずれを確認する
所得税の青色申告承認申請書その年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は、開業の日から2か月以内)初年度の赤字の繰越しと青色申告特別控除に直結する最重要の届出
青色事業専従者給与に関する届出書原則その年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合や、新たに専従者が加わった場合は、その日から2か月以内)配偶者が受付や経理を担う場合。届け出た金額の範囲内でしか経費にならない
給与支払事務所等の開設届出書開設の日から1か月以内看護師・医療事務・非常勤医師に給与を払う場合
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書提出した月の翌月末日までに通知がなければ、翌々月の納付分から適用給与を支払う人が常時10人未満なら、源泉所得税の納付を年2回(7月10日・翌年1月20日)にまとめられる
所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書開業した年分の確定申告期限まで出さなければ減価償却は定額法。内視鏡やエコーなどを定率法で償却したい場合に出す
消費税簡易課税制度選択届出書(選ぶ場合)適用したい課税期間の初日の前日まで(開業した課税期間は、その期間中)自費の収入が多く、課税事業者になる見込みがある場合に検討する
個人で内科クリニックを開業する場合の主な税務の届出(2026年10月時点)

開業初年度は、内装工事や医療機器への投資、スタッフの採用で赤字になりやすい時期です。青色申告なら赤字(純損失)を翌年以後に繰り越して黒字と相殺できるほか、青色申告特別控除は令和8年分で最大65万円(e-Taxでの申告か電子帳簿保存が要件)、令和9年分以後は要件を満たすと最大75万円になります。開業後1年のスケジュールは個人事業主の年間スケジュールで確認できます。

保健所・厚生局の手続きと税務の届出はどう関係する?

診療所開設届(保健所)や保険医療機関の指定申請(地方厚生局。北海道は北海道厚生局)は医療側の手続きで、これらを済ませても税務署には何も伝わりません。保険医療機関の指定を受けるまでは保険診療ができず、その間の収入は自費だけになる点も、開業日の決め方と資金計画に関わります。

医療側の手続き提出先税務との関係
診療所開設届開設地の保健所(提出書類や時期は窓口で確認)開設日が税務上の開業日の目安になる
保険医療機関の指定申請地方厚生局(北海道厚生局)指定日から保険診療の収入が発生し、入金は約2か月後になる
生活保護・労災保険などの指定医療機関の申請各制度の窓口制度ごとに消費税・事業税の扱いが異なるため、収入を分けて管理する
健診・予防接種の委託契約市町村・保険者など(医師会を通じた集合契約を含む)委託料は消費税の課税売上。入金は後日のため売掛金の管理が必要
内科の開業で並行する医療側の手続きと税務の関係

医療と税務は担当窓口も期限も違うため、別々のチェックリストで管理すると漏れを防げます。

  • 開業日(診療開始日)と保険医療機関の指定日を一覧にした
  • 開業届・青色申告承認申請書の提出日を、開業日から逆算して決めた
  • スタッフの雇用開始日と、給与支払事務所等の開設届の期限を確認した
  • 健診・予防接種の委託料の入金時期を、資金繰り表に入れた

開業前の支出と医療機器はどう処理する?

内覧会の準備費用、開業前に契約した物件の家賃、求人広告やスタッフ研修の費用などは、開業前に支払っていても「開業費」として整理すれば、開業後に任意の時期に経費にできます。領収書や請求書を開業前・開業後に分けて保管しておくと、集計の手間が大きく減ります。

一方、内視鏡・超音波診断装置(エコー)・心電計・X線装置などの医療機器は開業費ではなく、使い始めた時点から減価償却する資産です。機器の搬入や据付けにかかった費用は、開業費ではなく機器の取得価額に含めます。取得価額によって処理が変わります。

取得価額処理内科での例と注意点
10万円未満消耗品費などとしてその年に全額を経費にできる聴診器・血圧計・待合室の備品など
20万円未満一括償却資産として3年で均等に経費化することも選べる償却資産の申告の対象外
40万円未満少額減価償却資産の特例で全額を経費にできる(年300万円まで)青色申告の中小事業者が対象。2026年4月1日以後の取得から(2026年3月31日までは30万円未満)。償却資産の申告の対象
上記以外耐用年数に応じて減価償却内視鏡システム・エコー・X線装置など。定率法を選ぶなら届出が必要
取得価額による医療機器の処理の違い(2026年10月時点)

高額な機器は、購入とリースで資金繰りへの影響が大きく変わります。購入は減価償却で費用化が数年に分かれ、リースは月々の支払いが平準化されて手元資金を残しやすい一方、総支払額は増えるのが通常です。医療機器や内装は毎年1月31日(休日の場合は翌開庁日)までに市町村へ償却資産の申告が必要で、札幌市の免税点は令和9年度分から180万円(それまでは150万円)に上がります。

無料
ツール
少額資産の処理方法を3択で比較する即時の経費化・一括償却・少額減価償却資産の特例のどれが有利か、金額を入れるだけで比較できます。計算する
無料
ツール
医療機器の減価償却を定率法で計算する取得価額と耐用年数を入れると、定率法による毎年の償却費を確認できます。計算する

内科の収入はどう区分する?消費税と個人事業税の扱い

内科は保険診療のほかに、健康診断・予防接種・診断書の作成など、税金の扱いが違う収入が混ざりやすい診療科です。開業時から収入の種類ごとに科目を分けて記帳すると、消費税と個人事業税の申告を正確にできます。

収入の種類消費税個人事業税計上と入金
保険診療(社保・国保・後期高齢者)非課税かからない診療月で計上。入金は診療月のおよそ2か月後
患者の一部負担金(窓口収入)非課税かからない診療日に計上
生活保護の医療扶助非課税かからない保険診療と同じく診療月で計上
労災保険の診療非課税社会保険診療に含まれず、課税の対象請求先が異なるため、別の科目で管理
健康診断・人間ドック・企業健診課税課税の対象実施日に計上。企業や保険者からの入金は後日
予防接種(任意接種、市町村からの委託分を含む)課税課税の対象接種日に計上
診断書・証明書などの文書料、産業医の報酬課税課税の対象交付日や契約に基づく月ごとに計上
内科クリニックの収入の区分と税金の扱い(2026年10月時点)

例えば社保収入3,000万円・自費等300万円という内科なら、消費税の課税売上は300万円だけで、当面は免税の範囲に収まることが多い構造です。個人の場合、開業した年と翌年は基準期間(前々年)の売上がないため原則として免税ですが、2年目は前年1〜6月の課税売上と給与の額によって課税事業者になる場合があります。課税事業者になるかを自動判定するツールで早めに確認してください。

個人事業税は、社会保険診療報酬にはかからず、自由診療の部分に課税されます。税率は業種で決まり、事業主控除290万円があります。所得税では、社会保険診療報酬が一定額以下の場合に、実際の経費に代えて段階的な概算経費率で所得を計算できる特例(措置法26条)があり、経費の少ないクリニックでは有利になることがあります。開業直後は減価償却費や開業費で実額の経費が大きくなる場合もあるため、毎年両方を計算して有利なほうを選びます。適用要件は申告する年分ごとに国税庁の案内で確認します。

企業健診や産業医契約があるならインボイスも検討

患者は個人なので、保険診療や一般の自費診療ではインボイスは求められません。一方、企業健診・職域の予防接種・産業医契約の相手は事業者で、登録番号を求められることがあります。登録すると自費分の消費税の申告が必要になるため、事業者向けの売上の大きさを見て判断します。制度の全体像はインボイス制度の実務ガイドにまとめています。

措置法26条を使うか、インボイスに登録するかは、収入の構成と経費の額で答えが変わります。開業前の試算も初回無料で承ります。

無料で相談する

最初の1年の記帳と資金管理で気をつけることは?

保険診療の報酬は、レセプトを請求してから診療月のおよそ2か月後に入金されます。開業直後は家賃や人件費の支払いが先に始まり、収入の入金が遅れて始まるため、その間の運転資金を開業資金に含めておくことが欠かせません。

  • 売上は入金日ではなく診療月で計上し、年末時点で未入金のレセプト分(11月・12月の診療分など)を売掛金にする
  • 返戻や査定で入金額が請求額と違ったときは、入金時に差額を調整するルールを決めておく
  • 接種シーズンの途中で年末を迎えるワクチンや、院内処方の医薬品の在庫は、12月31日時点で数えて棚卸資産に計上する
  • 窓口の現金は日ごとにレジを締めて記録し、事業用の口座に入金する
  • 2年目からは、前年分の所得税額をもとに7月と11月の予定納税(予定納税基準額が15万円以上の場合)がある前提で資金を残す

令和8年分の確定申告は2027年2月16日(火)から3月15日(月)まで、消費税の課税事業者は3月31日(水)が期限です。青色申告特別控除65万円を受けるには、会計ソフトで正規の簿記の帳簿をつけ、e-Taxで期限内に申告するのが現実的です。ネット通販などで受け取った請求書・領収書の電子データは、2024年1月1日以後は電子のまま保存する必要があります。

スタッフを雇うときの手続きは?源泉徴収・社会保険・最低賃金

看護師や医療事務を雇うと、給与からの源泉徴収と納付が始まります。源泉所得税は原則として支払った月の翌月10日までに納付し、納期の特例の承認を受ければ1〜6月分を7月10日、7〜12月分を翌年1月20日にまとめて納付できます。

論点内容と対策
非常勤医師への支払い給与か外注費かで源泉徴収の扱いが変わる。勤務の実態に合わせて契約時に区分をはっきりさせる
配偶者の給与青色事業専従者給与の届出をしていないと、支払った給与を経費にできない
社会保険個人の診療所は、常時5人以上を雇うと健康保険・厚生年金の強制適用事業所になる
雇用保険2026年4月1日〜2027年3月31日の料率は一般の事業で13.5/1000(労働者5/1000・事業主8.5/1000)
最低賃金北海道の最低賃金は2026年10月1日から1,131円。受付・医療事務の時給設定で確認する
内科クリニックでスタッフを雇うときの主な論点(2026年10月時点)

開業地の税務署と書面の提出先

税務署は開業地の住所で決まり、札幌市内には5つの税務署があります。中央区はおおむね西10丁目以東が札幌中税務署、大通西11丁目以西や円山・宮の森などが札幌西税務署の管轄です。区の名前と税務署の名前が一致しない地域もあるため、個別の住所は国税庁の管轄区域表で確認します。

2026年7月10日からは5署の内部事務が札幌業務センターに集約され、書面の届出書は同センターへ郵送します。e-Taxでの提出や窓口への持参は、所轄の税務署です。

よくある質問

届出を出し忘れたら、どうなりますか?

開業届や給与支払事務所等の開設届は、期限を過ぎても気づいた時点で提出します。影響が大きいのは青色申告承認申請書で、期限を過ぎるとその年は白色申告になり、特別控除や赤字の繰越しが使えません。青色事業専従者給与も、届出前に支払った分は経費にできません。

開業届や青色申告承認申請書は、e-Taxで出せますか?

どちらもe-Taxで提出できます。控えが電子データで残り、提出日も記録されるため、期限の管理がしやすくなります。書面で出す場合の送付先は、前の節の「開業地の税務署と書面の提出先」を参照してください。

開業した年から消費税の申告は必要ですか?

個人の場合、開業した年と翌年は基準期間がないため、インボイスに登録しなければ原則として免税です。保険診療は非課税なので、3年目以降も、基準期間の自費診療や文書料などの課税売上が1,000万円を超えなければ免税のままです。登録した場合は、令和8年分は2割特例、令和9・10年分は3割特例も選べます。

医療法人にするかどうかは、いつ考えればよいですか?

医療法人化は、所得の水準、措置法26条を使えるかどうか、役員報酬や退職金、事業承継の設計を合わせて判断します。開業当初は個人で始め、損益が安定して比較ができる段階で検討するのが現実的です。

まとめ

内科クリニックの開業では、開業届・青色申告承認申請・給与関係の届出を、保健所や厚生局の手続きとは別のチェックリストで管理するのが基本です。収入は保険診療・健診・予防接種・文書料などに分けて記帳し、レセプトの売掛金とワクチンの在庫を年末に漏れなく計上しましょう。措置法26条やインボイスの判断は収入の構成で変わるため、開業前に一度試算しておくと安心です。

札幌の公認会計士・税理士事務所

内科クリニックの開業・税務のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ

  • 初回相談は無料(オンライン対応可)
  • フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
  • その場でご契約を迫ることはありません

対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り

出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次