一人親方が税理士を選ぶときは、外注費と給与の区分、労災特別加入の保険料、インボイスと消費税、青色申告、法人化と建設業許可の5つを、自分の働き方に当てはめて説明できるかで見極めます。顧問料は相場の金額より、記帳の分担や消費税申告の有無といった依頼範囲で比べます。
この記事の結論
一人親方の税理士選びは、建設業ならではの税務論点を具体的に説明できるかで判断し、顧問料は金額ではなく依頼範囲で比べます。
- 外注費か給与かは、契約書の名前ではなく、指揮監督や材料・工具の負担などの実態で判断される
- 労災の特別加入の保険料は、必要経費ではなく社会保険料控除として申告する
- インボイスの経過措置は2026年10月1日〜2028年9月30日が70%。登録するかは元請の負担と自分の納税額で判断する
- 2割特例は個人は令和8年分まで。令和9・10年分は3割特例を使える場合がある
- 顧問料は、記帳の分担、消費税申告の有無、外注先や従業員の有無などで決まる
一人親方の税務で税理士に確認したい5つの論点
一人親方の税務は、一般の個人事業主と共通する部分も多い一方で、建設・工事業ならではの論点があります。税理士を選ぶ前に、自分の事業でどれが重要になるかを把握しておきましょう。
論点1:外注費と給与の区分
元請から受け取る報酬が、請負の対価(事業所得)なのか、雇用の対価(給与所得)なのかは、契約の名前ではなく働き方の実態で判断されます。自分が応援の職人に支払う場合も同じで、給与にあたれば源泉徴収が必要になり、外注費なら消費税の仕入税額控除の対象になるなど、税金の扱いが大きく変わります。
国税庁の通達「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」では、主に次のような点を総合的に見て判断します。
| 判断のポイント | 外注(請負)に近い | 給与(雇用)に近い |
|---|---|---|
| 代わりの人が作業してよいか | 自分の判断で別の職人を手配できる | 本人が作業しなければならない |
| 時間的な拘束 | 作業時間を自分で決め、報酬は出来高で決まる | 作業時間を指定され、報酬が時間単位で計算される |
| 指揮監督 | 作業の進め方を自分で決める | 作業の内容や方法を細かく指示される |
| 引渡し前の事故などの扱い | 完成品が引渡し前に壊れたら、報酬を請求できない | 作業した分の報酬を請求できる |
| 材料・用具 | 材料や工具を自分で用意する | 材料や工具を支払う側から支給される |
請負契約書や注文書、請求書を残し、実態と書類を一致させておくことが、税務調査で説明するときの土台になります。区分を誤ると、源泉徴収漏れや消費税の計算の誤りにつながり、調査で指摘されやすくなります。
論点2:労災保険の特別加入の保険料
一人親方は、特別加入団体を通じて労災保険に特別加入できます。現場に入る条件として、加入を求められることもあります。経理の処理を見落としやすいのが、この保険料です。
保険料は「必要経費」ではなく「社会保険料控除」
一人親方本人の特別加入の保険料は、事業所得の必要経費ではなく、確定申告で社会保険料控除(所得控除)として申告します。団体に支払う会費や事務手数料は、内容によって必要経費になる場合があります。領収書を保険料と会費に分けて保管しておくと、申告で迷いません。
論点3:インボイスと消費税の計算方法
一人親方の取引先は元請などの事業者が中心のため、インボイス(適格請求書)の発行を求められることがあります。免税事業者のままだと、元請は支払った消費税を全額は控除できず、その割合は期間によって変わります。
| 元請が仕入れた時期 | 免税事業者からの仕入れで控除できる割合 |
|---|---|
| 2026年9月30日まで | 80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以後 | 控除できない |
登録して課税事業者になると、納税額の計算方法を選べます。売上の消費税額の2割を納める2割特例は、個人は令和8年分で終わります。令和9・10年分は、登録しなければ免税事業者になる個人を対象に、売上の消費税額の3割を納める3割特例が設けられました(届出は不要。基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合などは使えません)。
簡易課税では、建設業は原則として第3種(みなし仕入率70%)です。ただし、材料を元請から無償で支給され、手間賃だけを受け取る「手間請け」は、第4種(60%)として扱われる場合があります。同じ一人親方でも、仕事の受け方で有利な計算方法が変わります。
計算例:税抜売上800万円の一人親方の消費税(概算)
例えば、税抜売上が800万円なら、売上の消費税額は800万円×10%=80万円です。計算方法ごとの納税額は次のとおりです。
- 2割特例(令和8年分まで):80万円×20%=16万円
- 3割特例(令和9・10年分):80万円×30%=24万円
- 簡易課税・第3種(みなし仕入率70%):80万円×30%=24万円
- 簡易課税・第4種(手間請け、みなし仕入率60%):80万円×40%=32万円
実際の計算では国税と地方消費税を分けて端数を処理するため、金額は多少前後します。手間請けが中心なら、令和9・10年分は3割特例のほうが納税額が少なくなる計算です。
簡易課税を選ぶ場合は、原則として適用を受けたい課税期間の初日の前日までに届出が必要です。2割特例や3割特例を使った年の翌年から簡易課税に移る場合は、その翌年分の確定申告期限までに届け出ればよい扱いがあります。制度の全体像はインボイス制度 完全実務ガイドで整理しています。
無料ツール本則課税・簡易課税・2割特例の納税額を比べる売上と仕入れの金額から、計算方法ごとの消費税の納税額を比較できます。計算する
論点4:青色申告特別控除と帳簿の付け方
青色申告特別控除は、令和8年分までは最大65万円、令和9年分からは要件を満たすと75万円になります。現場ごとの売上や材料費を会計ソフトで複式簿記により記帳し、期限内にe-Taxで申告する体制を整えておくと、控除を最大限に受けやすくなります。
| 区分 | 令和8年分 | 令和9年分以後 |
|---|---|---|
| 最大の控除 | 65万円(正規の簿記+期限内申告+e-Taxまたは優良な電子帳簿の保存) | 75万円(65万円の要件に加え、仕訳帳・総勘定元帳を電子帳簿保存法の要件に沿った電子データで保存するなど) |
| 中間の控除 | 55万円(正規の簿記+貸借対照表・損益計算書の添付+期限内申告) | 65万円(旧55万円の要件+期限内のe-Tax申告) |
| 簡易な控除 | 10万円 | 10万円(簡易な簿記で、前々年の収入が1,000万円を超える人は除く) |
令和8年分の確定申告の期間は2027年2月16日(火)〜3月15日(月)で、個人の消費税の申告・納付期限は3月31日(水)です。開業時の届出がまだ整っていない場合は、一人親方の開業届と税務の届出一覧で確認できます。
論点5:法人化と建設業許可
所得が増えてくると、法人化が選択肢になります。法人は役員1人だけでも健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所になり、赤字でも法人住民税の均等割がかかります(札幌市内で資本金等1,000万円以下・従業者50人以下なら年7万円)。税率の差だけでなく、社会保険料と固定費を含めて判断します。
一定の金額以上の工事を請け負う場合や、元請から求められる場合は、建設業許可が必要になります。許可を受けると、毎事業年度の終了後4か月以内に工事経歴書や財務諸表などを届け出る必要があり、建設業法の様式に沿った決算書づくりに慣れた専門家がいると安心です。法人化すると許可の手続きも必要になるため、時期は許可の申請や更新とあわせて検討します。判断の目安は一人親方の法人化のタイミングと判断基準で詳しく解説しています。
無料ツール法人成りした場合の手取りを試算する個人事業のままと法人化した場合の税金・社会保険料の負担を比べられます。計算する
外注費と給与の区分や消費税の計算方法は、契約と働き方の実態で変わります。初回無料で確認できます。
無料で相談する一人親方に「強い」税理士の見極め方
建設業・一人親方の実態を理解している税理士かどうかは、初回相談で具体的な質問をしてみると見極めやすくなります。答えが一般論で終わらず、自分の働き方に当てはめて説明してくれるかがポイントです。
- 外注費と給与の判断基準を、契約書の有無、指揮命令、材料や工具の負担関係に当てはめて説明できるか
- インボイスの登録判断と、2割特例・3割特例・簡易課税の比較を、自分の売上で試算してくれるか
- 建設業の決算書や、許可の届出に使う財務諸表に対応できるか(将来の法人化や許可の取得を考えている場合)
- 繁忙期の連絡の取りやすさや、確定申告までのスケジュールを事前に示してくれるか
- 自分で記帳する場合に、会計ソフトの使い方や月ごとの確認方法を教えてくれるか
初回相談で聞いてみたい質問の例
- 手間請けの仕事が多いのですが、簡易課税の事業区分はどうなりますか?
- 応援に来てもらう職人への支払いは、外注費として処理してよいですか?
- 労災の特別加入の保険料は、申告書のどこに書けばよいですか?
- インボイスに登録した場合、令和9年分以後の消費税はいくらくらいになりますか?
顧問料はどう決まる?依頼範囲と費用の要素
一人親方が税理士に依頼する場合の料金は、依頼内容や事務所によって異なります。相場の金額だけで比べるより、何がどこまで含まれるかを比べるほうが、依頼した後のずれを防げます。
| 費用が決まる要素 | 費用への影響 |
|---|---|
| 取引の量(現場の数、請求書・領収書の枚数) | 多いほど記帳と確認の手間が増える |
| 記帳を誰が行うか | 自分で会計ソフトに入力するか、記帳代行を含めるかで変わる。記帳代行を含む場合は費用が加わるのが一般的 |
| 消費税の申告の有無と計算方法 | インボイス登録で課税事業者になると、消費税の申告が加わる |
| 外注先・従業員の有無 | 源泉徴収、給与計算、法定調書の作成などが加わる |
| 相談の頻度 | 確定申告前だけか、毎月の確認や面談を含むかで変わる |
| 法人化・建設業許可の支援 | 法人化の試算や、許可の届出に使う決算書の準備などで範囲が広がる |
当事務所は、確定申告だけのスポットのご依頼は受けておらず、継続的な顧問契約で記帳の仕組みづくりから申告まで支援しています。料金の考え方と契約までの流れは料金・契約の流れでご確認いただけます。
初回相談をうまく使うコツ
初回相談を無料にしている事務所もあり、当事務所も初回相談は無料です。限られた時間を活かすために、次の資料や情報を整理しておくと、論点を早く絞り込めます。
- 直近の年間売上・利益の概算(正確でなくてよい)
- 前年の確定申告書の控え(申告している場合)
- 元請との契約書・注文書・請求書の控え
- 外注先や応援の職人の有無、人数、支払い方法
- 現在の帳簿・会計ソフトの利用状況
- インボイス登録の有無と、元請からの要望
- 労災の特別加入の状況と、保険料・会費の領収書
- 車両や工具など、大きな買い物の予定
札幌・北海道で活動する一人親方の場合
季節の資金繰りと、手続きの窓口
北海道では冬の間に屋外の工事が減り、収入が季節で偏る場合があります。所得税の予定納税(予定納税基準額が15万円以上の場合)は7月と11月に納める仕組みで、令和8年分は2026年7月31日と11月30日が期限でした。住民税や国民健康保険料も含め、仕事の多い時期に納税資金を分けて確保しておくと、冬場の資金繰りが安定します。
札幌市内は住所地によって所轄の税務署が分かれ、書面の申告書を郵送する場合の送り先は、2026年7月10日から札幌業務センターに集約されています。e-Taxなら送り先を気にせずに提出できます。
市内で会社を設立する場合、札幌市の特定創業支援等事業の支援を受けると、会社設立の登録免許税が半分(株式会社15万円→7.5万円、合同会社6万円→3万円)になります。証明書の有効期限は2027年3月31日です。対象になるかは事業を始めた時期などの条件で変わるため、窓口で確認してください。
よくある質問
売上が少ないうちは、自分で確定申告してもよいですか?
取引が少なく、消費税の申告もない段階なら、会計ソフトを使って自分で申告することもできます。一方、インボイス登録後の消費税申告、応援の職人への支払い、法人化の検討などが加わると、判断を誤ったときの影響が大きくなります。その段階で一度相談すると、記帳を続けるか任せるかも含めて整理できます。
元請から「インボイス登録をしないなら単価を下げる」と言われたら、どうすればよいですか?
建設工事の請負では、建設業法で、注文者が取引上の地位を利用して不当に低い請負代金を押し付けることが禁止されています。登録するかどうかは、経過措置で元請の負担がどう変わるか(2026年10月1日〜2028年9月30日は70%を控除可能)と、登録した場合の自分の納税額を比べて判断します。話し合いの前に数字を試算しておくと、交渉がしやすくなります。
車や工具は経費になりますか?
仕事に使う車両や工具は経費になります。10万円未満なら買った年に全額を経費にでき、それ以上は原則として減価償却します。青色申告の中小事業者は、2026年4月1日以後に取得した40万円未満の資産を、年300万円まで買った年に全額経費にできる特例があります。私用と兼ねる車は、仕事で使った割合で按分します。
税理士は年の途中でも変えられますか?
年の途中でも変更できます。過去の申告書の控え、帳簿や会計ソフトのデータ、提出済みの届出書(青色申告の承認申請やインボイスの登録など)の控えを引き継げば、新しい税理士も状況を把握しやすくなります。確定申告の直前は避け、余裕のある時期に切り替えるのが安心です。
まとめ
一人親方の税理士選びは、外注費と給与の区分、労災特別加入の保険料、インボイスと消費税、青色申告、法人化と建設業許可という5つの論点を、自分の働き方に当てはめて説明できるかで見極めます。顧問料は相場の金額ではなく、記帳の分担や消費税申告の有無など依頼範囲で比べましょう。初回相談の前に契約書や請求書の控えを整理しておくと、短い時間でも具体的な答えが得られます。
札幌の公認会計士・税理士事務所
一人親方の税務・インボイスのご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
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- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
