会社設立の基礎知識として押さえたいのは、登記までの手続きの流れと、設立後すぐに来る税務の届出の期限です。登記の完了がゴールではありません。法人設立届出書は設立の日以後2か月以内、青色申告の承認申請は原則3か月以内など、期限を逃すと使えなくなる制度があります。
この記事の結論
会社設立は「登記まで」より「設立後の届出と資金計画」で差がつきます。決める項目・費用・期限を最初に一覧にして進めると、届出漏れや想定外の納税を防げます。
- 流れは定款の作成→(株式会社は公証人の認証)→資本金の払込み→法務局への登記申請。申請した日が設立日になる
- 登録免許税は株式会社が最低15万円、合同会社が最低6万円。特定創業支援等事業の証明を受けて札幌市内で設立すると半額になる
- 青色申告の承認申請は、設立の日以後3か月を経過した日と最初の事業年度終了の日のいずれか早い日の前日まで
- 資本金1,000万円以上で設立すると、1期目から消費税の課税事業者になる
- 法人は役員1人でも社会保険の強制適用事業所。赤字でも法人住民税の均等割がかかる
会社設立の流れは?登記までの手順
株式会社の設立は、定款の作成、公証人による定款の認証、資本金の払込み、法務局への登記申請の順に進みます。合同会社は定款の認証が不要なため、手続きが少なく済みます。
- 基本事項を決める商号・本店所在地・事業目的・資本金・事業年度・役員構成を決めます(次の節で整理します)。
- 定款を作成する株式会社は公証役場で定款の認証を受けます。紙の定款には4万円の収入印紙が必要で、電子定款なら印紙は不要です。
- 資本金を払い込む発起人(合同会社は社員)の口座に出資金を払い込み、払込みを証明する書面を用意します。
- 登記を申請する本店所在地を管轄する法務局に申請します。申請した日が会社の設立日になるため、法務局が開いていない土日・祝日は設立日にできません。
- 設立後の届出を出す税務署・都道府県・市町村・年金事務所などへ届け出ます(後の節で一覧にします)。
手続きごとの所要日数の目安は「設立の流れと必要日数」で解説しています。
設立前に決める項目は?商号・資本金・決算月・役員
設立前に決めた内容は定款と登記に載り、後から変えるには費用と手間がかかります。とくに資本金と決算月は、消費税や住民税の扱いにも関係します。
| 決める項目 | 主な検討ポイント |
|---|---|
| 商号(会社名) | 同じ所在場所で同じ商号は登記できない。「株式会社」「合同会社」の文字を入れる |
| 本店所在地 | 自宅・賃貸事務所のどちらでもよい。賃貸の場合は、契約上、法人の本店として登記できるか確認する |
| 事業目的 | 定款に記載する。許認可が必要な業種は、許可の要件に合う書き方かを事前に確認する |
| 資本金 | 1円以上で設立できる。1,000万円以上なら1期目から消費税の課税事業者。融資の審査や取引先の与信にも影響する |
| 事業年度(決算月) | 1年以内で自由に決められる。繁忙期と決算・申告の時期が重ならない月にする |
| 役員構成と任期 | 株式会社は取締役1名以上(取締役会を置く場合は3名以上)。取締役の任期は原則2年で、非公開会社は定款で最長10年まで延ばせる |
決算月は消費税の免税期間にも関係する
資本金1,000万円未満で設立した会社は、基準期間がない1期目は原則として消費税の納税義務がありません。2期目は、1期目の期首から6か月間(特定期間)の課税売上高と給与等の支払額がいずれも1,000万円を超えると課税事業者になります。
1期目が7か月以下の場合などは、2期目に特定期間による判定が行われません。決算月を決めるときは、繁忙期だけでなく、消費税がいつから課税になるかもあわせて検討します。なお、インボイスの登録をすると、免税の期間中でも登録日から課税事業者になります。
無料ツール課税事業者かどうかを判定する基準期間・特定期間の課税売上高などから、消費税の納税義務があるかを確認できます。判定する
資本金は運転資金と住民税の区分も見て決める
資本金は1円から設定できますが、設立直後は売上の入金より支払いが先になりがちです。初期費用に加えて数か月分の運転資金を見込んでおくと、資金繰りに余裕が生まれます。
法人住民税の均等割は、資本金等の額で変わります。札幌市の場合、資本金等1,000万円以下(従業者50人以下)なら市民税は年5万円、1,000万円を超え1億円以下なら年13万円です。資本金をちょうど1,000万円にすると、均等割は1,000万円以下の区分のままですが、消費税は1期目から課税事業者になります。
株式会社と合同会社、どちらを選ぶ?
株式会社は対外的な信用や資金調達の選択肢の広さが強みです。合同会社は定款の認証が不要で登録免許税も安く、小規模に始めるには十分な選択肢です。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税(最低額) | 15万円 | 6万円 |
| 定款の認証 | 必要 | 不要 |
| 出資者と経営者 | 分けられる(株主と取締役) | 原則として出資者(社員)が経営する |
| 役員の任期 | あり(原則2年、非公開会社は最長10年) | なし |
| 決算公告 | 必要 | 不要 |
| 利益の配分 | 原則として持株数に応じる | 定款で自由に決められる |
| 後からの変更 | 合同会社への変更も可能 | 組織変更の手続きで株式会社になれる |
ツール登録免許税を登記の種類別に計算する会社設立や役員変更など、登記の種類と金額から登録免許税を計算できます。計算する
設立の費用は?法定費用と市の軽減制度
どの会社でもかかる法定費用は、登録免許税と定款に関する費用が中心です。株式会社と合同会社では、次のように差があります。
| 費用 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 資本金の額×0.7%(最低15万円) | 資本金の額×0.7%(最低6万円) |
| 定款の収入印紙 | 紙の定款は4万円(電子定款なら不要) | 紙の定款は4万円(電子定款なら不要) |
| 定款の認証手数料 | 必要(資本金の額などで変わるため公証役場で確認) | 不要 |
| 登記事項証明書・印鑑証明書など | 必要な通数に応じた実費 | 必要な通数に応じた実費 |
専門家に手続きを頼む場合の報酬は依頼する範囲で変わるため、見積りで内訳を確かめてください。費用の内訳は「株式会社設立の費用解説」で詳しく整理しています。
特定創業支援等事業と創業促進補助金
札幌市の特定創業支援等事業(札幌中小企業支援センター・札幌商工会議所で、1か月以上・4回以上、経営・財務・人材育成・販路開拓の4分野の支援を受けるもの)の証明書があると、市内での会社設立の登録免許税が半分になります。株式会社は最低15万円が7.5万円、合同会社は6万円が3万円です。証明書の有効期限は2027年3月31日です。
証明を受けると、日本政策金融公庫の創業融資の利率の引下げや、創業関連保証を開業の6か月前から使えるといった効果もあります。また、さっぽろ新規創業促進補助金(募集期間2026年4月1日〜2027年3月31日)は、株式会社75,000円・合同会社30,000円で、設立から90日以内か2027年3月31日のいずれか早い日までに申請します。
設立後に出す届出は?期限つきの手続き一覧
会社設立で差がつくのは、設立後の届出です。とくに青色申告の承認申請は、期限を過ぎると1期目を白色申告で申告することになり、使えない制度が出てきます。
| 届出 | 提出先 | 期限 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 法人設立届出書 | 税務署 | 設立の日以後2か月以内 | 定款の写しなどを添付する |
| 青色申告の承認申請書 | 税務署 | 設立の日以後3か月を経過した日と、最初の事業年度終了の日のいずれか早い日の前日まで | 間に合わないと1期目は白色申告。欠損金の10年繰越や、40万円未満の少額減価償却資産の特例が使えない |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 | 開設の日から1か月以内 | 役員報酬だけを支払う場合も提出する |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 税務署 | 任意(給与の支払いを受ける人が常時10人未満の場合) | 提出した月の翌月末日までに通知がなければ翌々月の納付分から適用。1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日にまとめて納付 |
| 法人設立・設置の届出 | 都道府県・市町村 | 各自治体が定める期限(案内で確認) | 法人住民税・法人事業税の申告の前提になる |
| 健康保険・厚生年金保険の新規適用届 | 年金事務所 | 設立後すみやかに(事実が発生した日から5日以内) | 役員1人だけの会社でも加入が必要 |
| 消費税の届出(必要な場合) | 税務署 | 課税事業者や簡易課税を選ぶ場合は、適用を受けたい課税期間の初日の前日まで(設立した期はその期中) | インボイスに登録する場合は登録の申請も行う |
税務署への届出は、本店所在地を管轄する税務署に出します。札幌市内の5署あてに書面で郵送する届出は、2026年7月10日から札幌業務センターが送付先で、e-Taxで出す場合や窓口に持参する場合は所轄の税務署あてです。
資本金・決算月の決め方と届出の期限は、事業の計画によって最適な形が変わります。設立前の段階から初回無料で確認できます。
無料で相談する設立後の税金・社会保険・役員報酬で気をつけることは?
法人の税金は、所得に応じてかかる法人税・地方税と、所得に関係なくかかる均等割に分かれます。中小法人の法人税率は、所得のうち年800万円以下の部分が15%(2027年3月31日までに開始する事業年度)、超える部分が23.2%です。均等割は赤字でもかかり、資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の法人なら、北海道2万円と札幌市5万円の年7万円です。
法人の事業所は、役員1人だけでも健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所です。保険料は会社と本人で折半するため、役員報酬を決めるときは会社の負担分も含めて資金計画を立てます。
役員報酬は、設立の日から3か月以内に金額を決め、毎月同額で支給するのが基本です(定期同額給与)。途中で自由に増減すると、損金にならない部分が出ることがあります。特定の時期に決まった額を支給する事前確定届出給与を使う場合、設立したばかりの会社は設立の日以後2か月以内などの期限までに届け出ます。
2024年1月1日以後の電子取引で受け取った請求書や領収書は、電子データのまま保存する必要があります。1期目から会社名義の口座とカードで取引を分け、代表者が立て替えた費用は領収書をそろえて精算しておくと、記帳と決算がスムーズです。
個人事業から会社にする場合は、何に気をつける?
個人事業から法人化する場合は、会社の設立手続きに加えて、個人事業の廃業の手続きも必要です。個人事業の開業・廃業等届出書は、廃業の日から1か月以内に税務署へ提出します。個人で消費税の課税事業者だった場合は、事業廃止届出書も出します。
個人の資産や負債を会社に引き継ぐときは、売買にするか、出資(現物出資)にするかで手続きと税金が変わります。個人事業の最後の年の所得は、翌年の確定申告で申告します。法人化の判断基準は「法人化のタイミングと判断基準」も参考にしてください。
- 個人で契約している賃貸借・リース・電話・口座の名義の変更
- 許認可の取り直しや変更届の要否
- 取引先への通知と、請求書の名義・振込先の変更
- 個人の青色申告や消費税に関する届出の整理
- 従業員の雇用契約と、社会保険・労働保険の切替え
よくある質問
設立日は自由に決められますか?
登記を申請した日が設立日になるため、法務局が開いている日の中から選べます。設立日は1期目の事業年度の初日になります。法人住民税の均等割は事務所を置いていた月数で計算し、1か月に満たない端数は切り捨てるため、月の初日以外を設立日にすると、1期目の月数が1か月少なくなることがあります。
自宅を本店にしても問題ありませんか?
自宅を本店にすることはできます。賃貸住宅の場合は、契約で事務所としての使用や法人の登記が認められているかを確かめます。本店の住所は登記簿に記載され、第三者が確認できる情報になる点も考えておきます。
設立前に支払った費用は、会社の経費になりますか?
定款の作成や登記にかかった費用は創立費、設立後から開業までに開業準備のために特別に支出した費用は開業費として、繰延資産に計上できます。どちらも任意の時期に償却して損金にできます。代表者が立て替えた費用は、領収書をそろえて会社が精算します。
会社を作ったら、税理士に依頼しないといけませんか?
義務ではありませんが、法人の決算と申告は個人の確定申告より論点が多く、届出の期限も続きます。当事務所は決算・申告だけのスポットのご依頼はお受けしておらず、記帳から決算・申告まで継続的な顧問契約で支援しています。
まとめ
会社設立の基礎知識は、登記までの流れと、設立後の届出・税金・社会保険に分けて押さえると整理できます。資本金と決算月は消費税の免税期間や均等割に影響し、青色申告の承認申請は期限を過ぎると1期目に使えない制度が出ます。登記の完了ではなく事業の本格的な稼働をゴールに、設立前から全体のスケジュールを組み立てましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
