適格合併とは?要件・非適格との税額の違いと欠損金の引継ぎ制限

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適格合併とは、法人税法の要件を満たす合併で、被合併法人の資産・負債を帳簿価額のまま引き継ぎ、含み益への課税を繰り延べられます。要件を外れた非適格合併では時価で譲渡したものとして課税されるため、合併の前に適格かどうかと、欠損金の引継ぎ制限を確認しておくことが欠かせません。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

合併の税務は「適格か非適格か」で大きく変わります。適格なら帳簿価額で引き継いで課税を繰り延べ、非適格なら含み益に課税されます。ただし適格でも、繰越欠損金がそのまま使えるとは限りません。

  • 適格要件は、完全支配関係・支配関係・共同事業の3つの類型ごとに定められている
  • どの類型でも、合併の対価に株式以外の資産(金銭など)を交付しないことが基本の要件
  • 非適格になると、被合併法人の最後の事業年度で含み益に課税され、株主にもみなし配当が生じうる
  • 適格でも、支配関係が生じた時期などによって、欠損金の引継ぎ・使用や含み損の利用が制限される
  • 株主構成図・含み損益の一覧・欠損金の年度別一覧をそろえ、基本合意の前に検討を始める
目次

適格合併とは?非適格合併との違いを一覧で比較

合併は、被合併法人(消滅する会社)の資産・負債を、合併法人(存続する会社)がまとめて引き継ぐ組織再編です。法人税では原則として、被合併法人が資産・負債を時価で合併法人に譲渡したものとして扱います。そのうえで、法人税法の要件を満たす合併を「適格合併」とし、帳簿価額での引継ぎを認めて課税を繰り延べます。

項目適格合併非適格合併
資産・負債の引継ぎ帳簿価額のまま引き継ぐ時価で譲渡したものとして扱う
被合併法人の課税譲渡損益は生じない(課税の繰延べ)含み益・含み損が最後の事業年度の所得になる
合併法人の受入れ帳簿価額で受け入れ、利益積立金も引き継ぐ時価で受け入れる。対価との差額は資産調整勘定(税務上ののれん)などとして扱う
繰越欠損金引き継げる(制限あり)引き継げない
株主のみなし配当生じない生じることがある
株主の株式の譲渡損益合併法人の株式だけを受け取れば生じない株式だけを受け取れば生じない。金銭などを受け取ると生じる
適格合併と非適格合併の主な違い(法人税法の考え方を整理。2026年10月時点)

適格合併は「税金がかからない合併」ではなく、含み益への課税を先送りする仕組みです。合併法人が引き継いだ土地を将来売却すれば、引き継いだ帳簿価額をもとに譲渡益が計算され、そのときに課税されます。

適格要件は?3つの類型と満たすべき条件

適格要件は、合併の当事者の関係に応じて、完全支配関係・支配関係・共同事業の3つの類型で段階的に定められています。当事者の資本関係が薄くなるほど、満たすべき要件が増えます。

要件完全支配関係支配関係共同事業
当事者の関係発行済株式の全部を直接・間接に保有する関係(親子・兄弟会社)発行済株式の過半数を直接・間接に保有する関係資本関係が薄い、またはない会社どうし
株式以外の資産を交付しない(対価要件)必要必要必要
合併後も関係が続く見込み同一の者が支配する兄弟会社の合併では必要同一の者が支配する兄弟会社の合併では必要―
従業者の引継ぎ不要必要必要
主要な事業の継続不要必要必要
事業の関連性不要不要必要
事業の規模が近い、または特定役員の引継ぎ不要不要必要
株式の継続保有不要不要被合併法人に支配株主がいる場合に必要
適格合併の要件の整理(従業者の割合や規模の比較方法などの細目は、法人税法と同法施行令で定められている)

従業者の引継ぎは、被合併法人の従業者の大部分(法令で定める割合以上)が合併後も合併法人の業務に従事する見込みであること、主要な事業の継続は、被合併法人の主な事業が合併後も合併法人で続けられる見込みであることを指します。いずれも「見込み」で判定するため、合併の時点の計画と、その後の実態が食い違わないように記録を残しておきます。

金銭を交付しても対価要件を満たせる例外

合併に反対する株主の買取請求に応じて支払う代金、1株に満たない端数の代わりに交付する金銭、被合併法人の株主に剰余金の配当として交付する金銭は、株式以外の資産の交付に含めません。また、合併法人が被合併法人の株式の大部分(法令で定める割合以上)を持つ場合は、ほかの株主に金銭を交付しても対価要件を満たせる特例があります。

グループ内の合併でも非適格になることがある

同じ株主が支配する兄弟会社どうしの合併で、合併後に合併法人の株式を手放す予定がある場合は、関係が続く見込みの要件を満たさず、非適格になることがあります。対価の一部を金銭で支払う設計も、例外に当たらなければ非適格になります。グループ内だから大丈夫と考えず、類型ごとの要件を一つずつ確認します。

非適格だと税金はいくら?含み益のある土地での計算例

非適格合併では、被合併法人が資産を時価で譲渡したものとして、合併の日の前日までの最後の事業年度で含み益が課税されます。その税金を納めるのは、被合併法人の納税義務を引き継いだ合併法人です。

計算例:簿価1,000万円・時価3,000万円の土地を持つ会社を吸収合併する場合

例えば、被合併法人が帳簿価額1,000万円・時価3,000万円の土地を持っているとします。非適格合併になると、含み益3,000万円−1,000万円=2,000万円が最後の事業年度の所得になります。この所得がすべて年800万円を超える部分として課税される場合、法人税だけで2,000万円×23.2%=464万円です。

さらに地方法人税が4,640,000円×10.3%=477,920円かかり、国税の合計は4,640,000円+477,920円=5,117,920円(約512万円)になります。これに法人住民税と法人事業税が加わります。適格合併に該当すれば、土地は帳簿価額1,000万円のまま引き継がれ、この時点の課税は繰り延べられます。

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要件を満たすかどうかで、合併のコストが数百万円単位で変わることがあります。反対に、含み損のある資産が多い会社では、非適格のほうが損失を計上できる面もあります。資産の含み損益を一覧にして、どちらになった場合の税額も事前に試算しておきます。

なお、完全支配関係にある会社どうしの非適格合併では、グループ法人税制により、一定の資産の譲渡損益が繰り延べられる場合があります。グループ内の取引全般のルールはグループ法人税制の解説で確認できます。

適格合併でも欠損金を使えない?引継ぎ制限と判定の順番

適格合併では、被合併法人の繰越欠損金を合併法人が引き継げます。ただし、支配関係ができてからの期間が短い場合などは、引継ぎや使用が制限されます。「赤字会社を買って欠損金だけ使う」ような組織再編を防ぐためのルールです。

制限内容制限を受けない主な場合
被合併法人の欠損金の引継ぎ制限支配関係が生じる前の事業年度の欠損金や、支配関係の後でも含み損の実現に由来する欠損金は引き継げない一定期間より前から支配関係が続いている、設立のときから支配関係が続いている、みなし共同事業要件を満たす
合併法人自身の欠損金の使用制限合併法人がもともと持っていた欠損金にも、同様の制限がかかる同上
含み損の利用制限(特定資産譲渡等損失)支配関係の前から持っていた資産の含み損を、合併後の一定期間に実現させても、損金にならない部分がある同上
適格合併に伴う欠損金・含み損の主な制限(支配関係のない会社どうしの合併には、この制限はかからない)

見落としやすいのは、制限が被合併法人の欠損金だけでなく、合併法人の欠損金や含み損にも及ぶ点です。判定は次の順番で進めると整理しやすくなります。

  1. 支配関係の有無と発生時期を確かめる株主名簿や過去の株式の移動の記録から、いつ支配関係が生じたかを確認します。法令で定める期間より前から続いていれば、制限はかかりません。
  2. 設立のときから支配関係が続いているかを見るグループ内で設立した会社は、設立のときから支配関係が続いていれば、原則として制限の対象外です(例外があります)。
  3. みなし共同事業要件を検討する事業の関連性、事業の規模、特定役員の引継ぎなどの要件を満たせば、制限を受けません。
  4. 時価純資産による特例を検討する支配関係が生じた時点の含み益の状況によって、引き継げる欠損金の範囲が広がる場合があります。
  5. 使える金額と時期を試算する繰越期間(10年。2018年4月1日より前に開始した事業年度の分は9年)と控除の上限(中小法人等は所得の全額、それ以外は所得の50%)を当てはめ、何年でいくら使えるかを計算します。

計算例:欠損金1,000万円の子会社を吸収合併する場合

例えば、繰越欠損金1,000万円を持つ子会社を適格合併で吸収し、引継ぎの制限を受けないとします。合併法人の所得1,000万円と相殺でき、その所得が年800万円を超える部分として課税される場合は、法人税だけで1,000万円×23.2%=232万円の負担が減ります。

制限を受けると、この効果は見込めません。合併の効果を比べるときは、引き継げる金額と使える時期を先に検証します。

適格要件と欠損金の制限は、株式の移動の経緯や事業の内容で判定が分かれます。株主構成図と決算書をもとに、初回無料で論点を整理できます。

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株主・消費税・登記で見落としやすい論点は?

合併は会社の法人税だけの話ではありません。検討の初期に、次の論点もあわせて確認しておきます。

論点確認すること
株主側の課税非適格合併でみなし配当が生じる場合や、株主が金銭などを受け取る場合は、被合併法人の株主に課税が生じる。オーナー個人の税負担まで含めて全体を設計する
消費税合併による資産の移転は包括的な承継のため、消費税の課税対象外(不課税)。合併法人の納税義務の判定では、被合併法人の課税売上高も考慮する特例がある
インボイス被合併法人の登録番号は合併後に使えない。合併法人が適格請求書発行事業者の登録を受けているかを確認する
合併期日と事業年度被合併法人は、事業年度開始の日から合併の日の前日までが最後の事業年度になり、その申告は合併法人が行う。期日によって申告の回数や時期が変わる
登記・不動産の費用課税が繰り延べられる場合でも、合併の登記や不動産の所有権移転登記には登録免許税がかかる(不動産の移転は売買より低い税率)。合併による不動産の取得には不動産取得税がかからない
許認可の承継業種によっては合併で許認可を引き継げず、再取得や事前の認可・届出が必要になる。建設業や運送業などは、税務と並行して所管の窓口に確認する
合併で見落としやすい論点(2026年10月時点)

インボイスの登録や消費税の届出の基本は、消費税インボイス制度の基本で整理しています。取引先に請求書を出す会社どうしの合併では、効力発生日以後の請求書の発行者と登録番号を、取引先に早めに知らせておきます。

合併の検討はどう進める?初期にそろえる資料と手順

合併は税務だけでなく、登記・契約・許認可・雇用の論点が絡むため、効力発生日から逆算してスケジュールを組むのが一般的です。検討の初期には、次の資料をそろえるところから始めると議論が具体的になります。

  • グループ全体の株主構成図(過去の株式の移動の経緯と時期を含む)
  • 各社の直近の貸借対照表と、資産の含み損益の一覧
  • 繰越欠損金の発生年度別の一覧
  • 主要な契約・許認可・従業員の雇用条件の一覧

特に株式の持ち分の関係と取得の時期は、適格要件と欠損金の制限の判定に直結します。そのうえで、一般的には次の流れで進めます。

  1. 目的と方式の整理合併・事業譲渡・会社分割などから、目的に合う方式を選びます。受皿会社を新たに作る場合は、会社設立の基礎知識も確認しておきます。
  2. 税務の判定と試算適格要件、欠損金・含み損の制限、株主の課税、消費税を確認し、適格・非適格それぞれの税額を試算します。
  3. 合併契約と株主総会合併契約を結び、原則として各社の株主総会の特別決議で承認します(簡易合併・略式合併の例外があります)。総会の基本は株主総会の基本と進め方で確認できます。
  4. 債権者保護手続官報への公告と、知れている債権者への個別の催告を行い、異議を述べられる期間を設けます。
  5. 効力発生と登記合併契約で定めた効力発生日に合併の効力が生じ、その後に合併の登記を申請します。
  6. 届出と申告税務署・自治体へ異動の届出を出し、被合併法人の最後の事業年度の申告を期限までに済ませます。

専門家に早めに相談したいサイン

合併の対価に金銭を交付したい、少数株主がいる、直近の数年内にグループ内で株式の移動があった、赤字の会社が含まれる、といった事情がある場合は、要件の判定と欠損金の制限を個別に検証する必要が生じやすくなります。スキームが固まってからの手戻りは登記や契約のやり直しにつながるため、基本合意の前の段階で税務の検討を始めます。

札幌市内の会社が合併するときの届出先と地方税は?

合併後の届出は、合併法人の本店所在地を管轄する税務署と、北海道・札幌市の地方税の窓口に行います。札幌市内の税務署は区ごとに管轄が分かれているため、被合併法人と合併法人で所轄署が異なることもあります。

項目札幌での取扱い(2026年10月時点)
税務署の管轄札幌中(中央区の一部)、札幌北(北区・東区・石狩市・石狩郡)、札幌南(豊平区・南区・清田区・千歳市・恵庭市・北広島市)、札幌西(中央区の一部・西区・手稲区)、札幌東(白石区・厚別区・江別市)。中央区は、おおむね西10丁目以東が札幌中、大通西11丁目以西や円山・宮の森などが札幌西
書面の提出先2026年7月10日から、5署の内部事務は札幌業務センターに集約。書面は〒060-8510 札幌市中央区大通西10丁目 札幌第2合同庁舎の同センターへ郵送し、e-Taxや窓口への持参は所轄署
法人市民税の均等割資本金等の額と従業者数で決まる。従業者50人以下の場合、資本金等1,000万円以下は年5万円、1,000万円超1億円以下は年13万円。合併で資本金等の額が増えると区分が上がることがある
法人税割の税率資本金1億円以下かつ法人税額1,000万円以下の法人は、法人道民税1.0%・法人市民税6.0%(それ以外は1.8%・8.2%)。合併後の規模で適用される税率が変わることがある
不動産取得税(北海道)合併による不動産の取得にはかからない
札幌市内の会社が合併するときの届出先と地方税(個別の住所の管轄は国税庁の管轄区域表で確認)

被合併法人の法人住民税・事業税は、最後の事業年度の申告で精算します。合併法人の側では、資本金等の額や事業所の数が変わるため、均等割の区分と申告先を合併の前に確認しておくと、初年度の申告で慌てずに済みます。

よくある質問

完全子会社を吸収合併すれば、適格合併になりますか?

親会社が子会社の発行済株式をすべて持つ合併で、対価に株式以外の資産を交付しなければ、原則として適格合併になります。親会社が子会社を吸収する場合は対価を交付しない(無対価の)合併も多く、この形でも適格になり得ます。ただし、欠損金の引継ぎ制限は別に判定が必要です。

合併と事業譲渡は、税金の面でどう違いますか?

合併は会社をまるごと引き継ぐため、適格なら課税を繰り延べられ、資産の移転に消費税もかかりません。事業譲渡は資産ごとの売買になるため、譲渡益に課税され、建物や設備などの譲渡には消費税がかかり、不動産取得税も原則としてかかります。一方で事業譲渡は、引き継ぐ資産・負債や契約を選べるという利点があります。

適格合併にすれば節税になりますか?

適格合併は課税を将来に繰り延べる仕組みで、税金そのものがなくなるわけではありません。また、税負担を不当に減らすことを主な目的とした組織再編は、組織再編成に係る行為計算の否認規定によって否認されることがあります。事業上の目的を、合併契約書や議事録で説明できるようにしておきます。

合併の後に株式を売却する予定がある場合、注意点はありますか?

同じ株主が支配する兄弟会社どうしの合併では、合併後もその株主による関係が続く見込みであることが適格要件の一つです。合併の時点で株式の売却が予定されていると要件を満たさず、非適格になることがあります。M&Aを控えた再編は、売却の予定まで含めて事前に検討します。

まとめ

適格合併は、資産・負債を帳簿価額のまま引き継いで含み益への課税を繰り延べる仕組みで、要件は完全支配関係・支配関係・共同事業の3つの類型ごとに定められています。非適格になると含み益に課税され、株主にもみなし配当などの課税が及ぶことがあります。適格でも欠損金や含み損の利用には制限があるため、株主構成図・含み損益・欠損金の一覧をそろえ、基本合意の前に検討を始めましょう。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂

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