源泉所得税とは、給与や報酬を支払う会社・個人事業主が、支払額から所得税と復興特別所得税を差し引き、原則として翌月10日までに国へ納める税金です。2026年中の給与は令和8年分の税額表で計算し、令和8年度改正による基礎控除などの引上げは12月の年末調整で精算します。
この記事の結論
源泉所得税は支払う側が差し引いて納める税金で、給与は源泉徴収税額表、税理士などへの報酬は10.21%(100万円を超える部分は20.42%)で計算します。2026年中の毎月の給与は令和8年分の税額表で計算し、改正分は12月の年末調整でまとめて精算します。
- 納付期限は支払った月の翌月10日。給与の支給人員が常時10人未満なら、納期の特例で年2回(7月10日・翌年1月20日)にまとめられる
- 令和8年分の月額表(甲欄)では、社会保険料等を差し引いた後の給与が105,000円未満なら税額は0円
- 令和8年度改正(基礎控除・給与所得控除・扶養の所得要件など)は2026年12月1日施行で、年末調整で精算する
- 2027年1月1日以後に支払う給与は令和9年分の税額表で計算。報酬の10.21%・20.42%は変わらない
- 預かった税金なので、納付が遅れると不納付加算税や延滞税の対象になる
源泉所得税とは?誰が・どんな支払いで差し引くのか
源泉所得税は、給与や報酬を支払う人(源泉徴収義務者)が、支払いのときに所得税と復興特別所得税を差し引いて国に納める仕組みです。受け取る人の税金を前払いの形で納めるもので、給与を受け取る人の多くは、年末調整で1年分の税額が確定します。
源泉徴収義務者になるのは、給与や報酬を支払う会社(法人)と、従業員などに給与を支払っている個人事業主です。差し引いた税金は会社のお金ではなく預かっているお金なので、帳簿では「預り金」として処理し、期限までに納付します。納付の義務を負うのは、受け取る人ではなく支払う側です。
| 支払いの種類 | 計算の方法 | ポイント |
|---|---|---|
| 給与・賞与 | 源泉徴収税額表(月額表・日額表。賞与は算出率の表) | 扶養控除等申告書の提出があれば甲欄、なければ乙欄 |
| 日雇いの給与など | 日額表の丙欄 | 働いた日や時間で給与を支払う短期の雇用が対象 |
| 退職金 | 退職所得の受給に関する申告書の有無で計算が変わる | 申告書があれば退職所得控除を差し引いて計算 |
| 税理士・弁護士などの報酬 | 100万円以下の部分は10.21%、超える部分は20.42% | 消費税の額が区分して表示されていれば、税抜きの金額で計算できる |
| 司法書士などの報酬 | (支払額-1万円)×10.21% | 1回の支払いごとに1万円を差し引いて計算 |
| 原稿料・デザイン料・講演料など | 報酬の種類ごとに定められた方法(税理士報酬と同じ計算になるものが多い) | 個人に支払う場合が対象。法人への支払いは原則として対象外 |
給与を払っていない個人事業主は報酬の源泉徴収が不要
従業員や家族に給与を支払っていない個人事業主は、源泉徴収義務者に当たらないため、税理士などへの報酬を支払っても源泉徴収は必要ありません。一方、青色事業専従者給与を含めて給与を支払っているなら、報酬からの源泉徴収も必要になります。
給与の源泉徴収税額はどう求める?甲欄・乙欄・丙欄の使い分け
- 社会保険料等を差し引く支給額(非課税の通勤手当などを除く)から、健康保険・厚生年金保険・雇用保険などの保険料を差し引きます。社宅や食事などの現物給与も、課税される部分は支給額に含めます。
- 扶養親族等の数を確認する従業員から提出された扶養控除等申告書で、源泉控除対象配偶者や控除対象扶養親族などの数を確認します。
- 税額表の欄を選ぶ申告書の提出があれば甲欄、提出がない場合(掛け持ちの2か所目など)は乙欄、日雇いなどは丙欄を使います。
- 税額を読み取る月給なら月額表、日払いなら日額表で、手順1の金額と扶養親族等の数に当たる税額を読み取ります。
令和8年分の源泉徴収税額表は、令和7年度税制改正(基礎控除58万円、給与所得控除の最低保障額65万円)を反映して見直され、2026年1月1日以後に支払う給与から使われています。月額表の甲欄で税額がかかり始めるのは、社会保険料等を差し引いた後の給与が105,000円以上のときで、改正前は88,000円以上でした。
具体例:月給10万円のパート従業員の場合
例えば、扶養控除等申告書を提出しているパート従業員に、社会保険料等を差し引いた後で月10万円の給与を支払う場合です。令和8年分の月額表(甲欄)では105,000円未満のため、源泉徴収税額は0円です。改正前の税額表では、源泉徴収が必要な金額でした。
同じ人が扶養控除等申告書を出していない場合は乙欄になり、金額が小さくても税額がかかります。
賞与・役員報酬の源泉徴収
賞与は、前月の給与(社会保険料等を差し引いた後)と扶養親族等の数から「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で率を求め、社会保険料等を差し引いた賞与の額に掛けて計算します。前月に給与の支払いがない場合や、賞与が前月の給与に比べて大きい場合は、計算方法が異なります。
役員報酬も給与として同じ税額表で計算します。役員への賞与を事前確定届出給与として支払う場合も、賞与の計算方法で源泉徴収します。役員賞与の届出の仕組みは事前確定届出給与とはで解説しています。
令和8年分・令和9年分で何が変わる?税額表と年末調整の関係
令和8年度税制改正で、基礎控除・給与所得控除・扶養親族などの所得要件が見直されました。施行は2026年12月1日で、令和8年分の所得税から適用されます。ただし、2026年中に支払う毎月の給与・賞与の源泉徴収は改正前の税額表のままで、改正による減税分は12月の年末調整でまとめて精算します。
| 時期 | 源泉徴収・精算の方法 | 実務のポイント |
|---|---|---|
| 2026年中に支払う給与・賞与 | 令和8年分源泉徴収税額表(令和7年度改正を反映)で計算 | 改正に合わせて毎月の税額表を差し替える必要はない |
| 2026年12月の年末調整 | 改正後の基礎控除(合計所得489万円以下は104万円など)、給与所得控除(給与収入220万円以下は74万円)、扶養親族等の所得要件(62万円以下)、生命保険料控除の特例(23歳未満の扶養親族がいる場合)で年税額を計算 | 扶養控除等申告書の内容を、改正後の要件で確認し直す |
| 2026年11月30日以前に最後の給与を受けて退職した人 | 年末調整の対象外。改正の効果は本人の確定申告で精算 | 源泉徴収票を早めに交付する |
| 2027年1月1日以後に支払う給与 | 令和9年分源泉徴収税額表で計算 | 給与計算ソフトの税額表が更新されているか確認する |
基礎控除は一律の引上げではなく、令和8年分・令和9年分は合計所得489万円以下で104万円、655万円以下で67万円、2,350万円以下で62万円と、所得に応じた段階制です。「令和8年分から基礎控除が62万円に引き上げられる」という理解では、年末調整の年税額を正しく計算できません。
2027年1月1日からは、復興特別所得税の税率が2.1%から1.1%に下がり、新たに防衛特別所得税1%がかかります。合計は2.1%のままなので、給与や報酬の源泉徴収の税率は変わりません。改正の全体像は基礎控除の引上げと「178万円の壁」、令和8年度税制改正ガイドで解説しています。
無料ツール所得税額を速算表で計算する課税所得から所得税額の目安を計算でき、年末調整の年税額の確認に使えます。計算する
報酬・料金の源泉徴収はどう計算する?税理士・司法書士・外注先
個人の税理士・弁護士などに報酬を支払うときは、1回の支払額のうち100万円以下の部分は10.21%、100万円を超える部分は20.42%で計算します。司法書士などへの報酬は、支払額から1万円を差し引いた額に10.21%を掛けます。請求書で消費税の額が区分して表示されていれば、税抜きの金額を基準にできます。
計算例:報酬の源泉徴収税額
例えば、次の3つの支払いをする場合です(いずれも消費税は区分して表示されているものとします)。
- 税理士への報酬が税抜10万円(消費税1万円):10万円×10.21%=10,210円。実際の支払額は11万円-10,210円=99,790円
- 弁護士への報酬が税抜150万円:100万円×10.21%=102,100円、超える部分は50万円×20.42%=102,100円で、合計は102,100円+102,100円=204,200円
- 司法書士への報酬が税抜5万円:5万円-1万円=4万円、4万円×10.21%=4,084円
個人の外注先への支払いで注意すること
個人の外注先への支払いは、報酬の種類によって源泉徴収の要否が分かれます。原稿料・デザイン料・講演料などは対象になる一方、物品の購入代金や、多くの請負工事の代金は対象外です。「個人に支払うときは源泉徴収の要否を確認する」を社内のルールにしておくと、漏れを防げます。
契約の名目が外注でも、勤務の時間や場所を指定し、作業の指揮命令をしているなど、実態が雇用に近い場合は給与と判断されることがあります。給与と判断されると、源泉徴収のやり直しに加えて、消費税の仕入税額控除も認められなくなるため、契約の内容と働き方をそろえておきます。
外注費か給与か、源泉徴収が必要な報酬に当たるかは、契約と働き方の実態で判断が分かれます。初回無料でご相談いただけます。
無料で相談する納付期限はいつ?納期の特例と税額0円のときの手続き
| 区分 | 納付期限 | 日付の例 |
|---|---|---|
| 原則 | 給与などを支払った月の翌月10日(土日祝日に当たるときは翌営業日) | 2026年12月に支払った給与の分は2027年1月12日(火) |
| 納期の特例(給与の支給人員が常時10人未満) | 1月〜6月分は7月10日、7月〜12月分は翌年1月20日 | 2026年7月〜12月分は2027年1月20日(水) |
納期の特例を受けるには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出します。提出した月の翌月末日までに承認・却下の通知がなければ承認されたものとみなされ、翌々月の納付分から特例が適用されます。年2回の納付で事務は減りますが、半年分をまとめて払うため、1回の納付額が大きくなる点に注意が必要です。
納期の特例を受けている場合など、源泉徴収した税額がない期間でも、税額0円の所得税徴収高計算書(納付書)の提出が求められます。「払う税金がない=手続きもない」ではない点に注意します。
納付が遅れたときのリスク
源泉所得税は従業員などから預かった税金のため、法定納期限までに納付しないと、原則として不納付加算税と延滞税がかかります。1日の遅れでも対象になり得ます。税務署から指摘を受ける前に自主的に納付すると加算税は軽くなり、期限後まもなく納付して一定の要件を満たす場合は課されないこともあるため、遅れに気づいたらすぐに納付します。故意に納付しなかったと判断されると、重加算税(35%)の対象にもなります。
札幌市内の事業者が書面で提出する場合
2026年7月10日から、市内5つの税務署の内部事務は札幌業務センターに集約されています。納期の特例の申請書などを書面で出すときは、〒060-8510 中央区大通西10丁目の札幌第2合同庁舎にある同センターへ郵送します。e-Taxでの提出や窓口への持参は、所轄の税務署です。
年末調整から法定調書まで、年間の流れは?
| 時期 | やること |
|---|---|
| 年の最初の給与の支払いまで | 扶養控除等申告書を従業員から回収する(扶養人数が変わったら、その月から税額に反映) |
| 毎月 | 給与・報酬から源泉徴収し、翌月10日までに納付する(納期の特例なら7月10日と翌年1月20日) |
| 12月 | 年末調整で1年分の税額を確定し、過不足を精算する(令和8年分は改正後の控除で計算) |
| 2027年1月12日(火) | 2026年12月分の源泉所得税の納付期限(納期の特例は1月20日(水)) |
| 2027年2月1日(月) | 源泉徴収票の交付、給与支払報告書(市区町村)と法定調書(税務署)の提出期限 |
2027年1月1日以後は、市区町村に給与支払報告書を提出すれば、税務署への給与所得の源泉徴収票の提出をしたものとみなされます(従業員本人への交付は引き続き必要です)。また、退職所得の源泉徴収票は、2026年1月1日以後に支払う退職手当等から、居住者分はすべて税務署への提出が必要になりました。法定調書は、種類ごとの前々年の提出枚数が30枚以上なら、e-Taxなどによる電子提出が義務です。
退職金の源泉徴収で間違えやすいポイントは?
退職金は、受け取る人から「退職所得の受給に関する申告書」の提出があるかどうかで計算が大きく変わります。提出があれば、退職所得控除を差し引いたうえで税額を計算し、多くの場合は源泉徴収だけで課税が完了します。提出がないと控除を差し引かずに高い税率で源泉徴収され、本人が確定申告で精算することになります。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円) |
| 20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
退職金を受け取る前に、iDeCoや企業型DCの一時金を受け取っていた人は、退職所得控除の調整が必要な場合があります。調整の対象になる期間は、2026年1月1日以後に支払いを受ける退職手当等から、前年以前4年内から9年内に延びました。申告書の記載内容を確認し、詳しい計算は退職所得控除の解説をご覧ください。
無料ツール退職金の手取りを計算する退職金の額と勤続年数から、所得税・住民税を差し引いた手取りの目安を計算できます。計算する
よくある質問
パート・アルバイトにも源泉徴収は必要ですか?
必要です。扶養控除等申告書の提出があれば甲欄で計算し、令和8年分の月額表では社会保険料等を差し引いた後の給与が105,000円未満なら税額は0円です。他の勤務先に申告書を出している掛け持ちの人は乙欄、日雇いの人は丙欄で計算します。
源泉所得税はどう仕訳すればよいですか?
給与の支払時は、借方に給料手当、貸方に普通預金と預り金を記録し、納付したときに借方の預り金、貸方の普通預金で消し込みます。報酬の場合も同じく、差し引いた分を預り金にします。預り金の残高が納付額と一致しているかを毎月確かめると、納付漏れに気づけます。
源泉徴収をせずに給与を全額支払ってしまったら、どうなりますか?
納付の義務は支払った側にあるため、本来差し引くべきだった税額を納付する必要があります。その分は受け取った人に後から精算を求めることができます。期限を過ぎていれば不納付加算税や延滞税の対象になるため、気づいた時点で速やかに納付します。
年末調整で税金を返す(還付する)ときのお金はどこから出しますか?
年末調整で生じた還付分は、その月に納付する源泉所得税から差し引いて充てます。足りない場合は、翌月以降に納付する源泉所得税から順に充てていきます。令和8年分は改正の影響で還付が増えやすいため、納付書の記載に注意します。
まとめ
源泉所得税は、給与や報酬を支払う側が差し引いて預かり、原則として翌月10日(納期の特例なら年2回)に納める税金です。2026年中の毎月の給与は令和8年分の税額表で計算し、令和8年度改正の基礎控除などの引上げは12月の年末調整で精算します。2027年1月1日以後は令和9年分の税額表に切り替わりますが、報酬の10.21%・20.42%は変わりません。預り金の管理と納付の期日を仕組みにしておきましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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出典・参考(公的機関)
- 国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表」
- 国税庁 タックスアンサー No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例
- 国税庁 タックスアンサー No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金
- 国税庁「基礎控除等の改正に関するQ&A」
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
