足場工事業の税務調査|調査官が見る外注費・売上・日当と事前の備え

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足場工事業の税務調査では、一人親方への外注費が実態は給与ではないか、決算日をまたぐ現場の売上が漏れていないか、現金で払う日当の記録が残っているかが重点的に確認されます。資材の資産計上やスクラップ売却収入も含め、調査官が見るポイントと日頃の備え、指摘を受けたときの加算税までをまとめました。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

足場工事業の調査で押さえるべきは、外注費と給与の区分、売上の計上時期、現金払いの記録の三点です。現場台帳・出面帳・契約書を日頃からそろえておけば、調査を過度に恐れる必要はありません。

  • 一人親方への支払いは、契約書・本人の請求書・本人の道具・出来高精算で外注の実態を整える
  • インボイス未登録の一人親方への支払いは、2026年10月1日〜2028年9月30日は消費税の控除が70%になる
  • 決算日をまたぐ現場は、組立日・解体日・引渡日・請求日を現場台帳で説明できるようにする
  • 現金の日当は、出面帳と支払記録をセットで残す
  • 資材の資産計上と、スクラップ売却収入の計上漏れにも注意する
目次

足場工事業の税務調査で見られやすいポイントは?

足場工事業は、一人親方への外注、日当の現金払い、資材の売買と、調査で確認されやすい取引が集中している業種です。「うちは規模が小さいから来ない」とは言い切れず、日頃の記録の積み重ねが調査の結果を大きく左右します。

論点調査で確認されること日頃の備え
外注費と給与の区分一人親方が会社の指揮命令や時間の拘束を受けていないか請負契約書・本人の請求書・出来高による精算
外注先の消費税インボイス未登録の一人親方への支払いの控除割合と帳簿の記載登録の有無の確認、経過措置の記載
売上の計上時期決算日をまたぐ現場の組立分・解体分の計上漏れ現場台帳に組立日・解体日・引渡日・請求日
現金の日当出面帳と支払記録が一致しているか支払日・相手・金額・現場名の記録と受領のサイン
足場資材資産にすべき資材を消耗品として経費にしていないか購入単位の確認、資材台帳と固定資産台帳の照合
スクラップ・中古資材の売却売却収入の計上漏れ買取業者の計算書を保存し、入金と照合
元請けへの接待・贈答交際費の区分と私的な支出の混入相手・目的・人数の記録
簡易課税の事業区分人工だけを提供する工事などの区分の誤り契約ごとに材料の負担者を確認
足場工事業の税務調査で論点になりやすい項目(2026年10月時点)

元請けとの付き合いにかかる飲食や贈答は交際費として区分します。中小法人は、年800万円までの定額控除と接待飲食費の50%の損金算入のどちらかを選べ(2027年3月31日までに開始する事業年度)、1人10,000円以下の飲食費は交際費から除けます(2024年4月1日以後の支出)。相手と人数の記録がないと、こうした扱いの根拠を示せません。

一人親方への支払いは外注費?給与?

足場工事では一人親方に応援を頼む場面が多く、その支払いを外注費として処理するのが一般的です。しかし、毎日決まった時間に会社の指示で動き、道具も会社持ちで、報酬が日給のように固定されていると、実態は給与だと指摘されるおそれがあります。

判断は契約書の名前ではなく働き方の実態で行われます。国税庁の通達「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」では、他の人が代わりに作業できるか、時間の拘束や指揮監督を受けるか、材料や用具を支払者から提供されているか、などを総合的に見て判断するとされています。

外注費として扱いやすい払い方

  • 現場ごとに請負契約書や注文書を交わす
  • 本人が発行した請求書を受け取って支払う
  • 本人の道具・装備で作業してもらう
  • 完了した工事の出来高や現場ごとの請負金額で精算する

実態が給与に近いとされやすい払い方

  • 毎日決まった時間に会社の指示で稼働してもらう
  • 道具や装備を会社が用意する
  • 月ごとに一定額を支払う
  • 本人の都合で他の職人に代わってもらうことができない

同じ顔ぶれの職人に同じ金額を払っていても、両者の違いは契約書の有無だけでなく、指揮命令の実態や報酬の決め方に表れます。外注費が給与と認定されると、源泉所得税の徴収漏れと、消費税の仕入税額控除の否認が同時に発生し、数年分まとまると影響は小さくありません。

計算例:外注費が給与と認定されたときの消費税

例えば、本則課税の会社が、インボイス登録をしている一人親方に年間で税込330万円を外注費として払い、その消費税を控除していたとします。控除していた消費税は330万円×10/110=30万円です。

給与と認定されると、給与は課税仕入れに当たらないため、この30万円の控除が認められません。これとは別に、給与として源泉徴収すべきだった所得税の納付も求められます。

なお、簡易課税を選んでいる会社は、みなし仕入率で控除額を計算するため、仕入税額控除の否認という形の影響は生じません。ただし、源泉所得税の問題は残ります。一人親方が労災保険に特別加入しているかどうかも、独立した事業者として働いている実態の説明に関わるため、契約前に確認しておくと安心です。

インボイス未登録の一人親方への支払い

一人親方がインボイスの登録をしていない免税事業者の場合、支払った消費税相当額のうち控除できるのは、2026年9月30日までは80%、2026年10月1日から2028年9月30日までは70%です。2028年10月1日からは50%に下がります。

どの割合になるかは、課税仕入れの日(作業が完了した日など)で判定します。割合が切り替わる日をまたぐ現場は、作業の完了日を現場台帳で確認できるようにしておきます。帳簿には「80%控除対象」のように経過措置の適用を受ける旨の記載が必要で、記載漏れも調査で確認されます。帳簿の書き方はインボイス制度の実務ガイド(経過措置の帳簿記載)で確認できます。

決算日をまたぐ現場の売上はいつ計上する?

足場は組立てから解体までが一連の工事です。決算日をまたぐ現場について、引渡しが済んでいるのに売上を翌期に回していないか、締め日以降に完了した現場の売上を拾い漏れていないかは、「期ズレ」として重点的に確認されます。

代金が組立分・解体分などに分けて決められ、区切りごとに請求する取引では、それぞれの作業が終わった時点で売上を計上するのが一般的な考え方です。足場を設置したまま期末を迎えた現場では、組立分を当期の売上に含めているかが見られやすい点です。

現場ごとの台帳に組立日・解体日・引渡日・請求日を記録しておけば、計上時期の説明は難しくありません。元請けからの入金をもとに売上を計上している会社は、少なくとも決算期には、期末までに完了した作業を拾い直して売上に加えましょう。組立・解体の状況を撮影した写真や作業日報も、計上時期の裏付けになります。

「翌期に計上したから同じ」ではない

売上を翌期に回していた場合、翌期の所得は減額されますが、当期分の不足税額には過少申告加算税と延滞税がかかります。毎期同じ処理を続けていると、さかのぼって複数年分を直すことになります。

現金で払う日当は何を記録すればいい?

応援の職人に現金で日当を払う商習慣が残っている会社では、出面帳(職人の出勤の記録)と支払いの記録が一致しているかが見られます。少額でも毎日の支払いが積み上がるため、記録の有無で経費として認められるかが変わります。

計算例:現金日当の月額

例えば、日当15,000円で月に延べ20人の応援を頼むと、15,000円×20人=300,000円です。記録のない現金支出が毎月これだけ積み上がると、経費として認められないリスクを常に抱えることになります。

  • 支払日・相手の氏名・金額・現場名を、支払ったその日に記録している
  • 受領のサインか受領書をもらっている
  • 出面帳の日付・人数と支払記録が一致している
  • 同じ人が同じ日に別の現場にも記録されていない
  • 雇用として払う日当は、源泉徴収の要否を確認している

領収書をもらいにくい相手でも、支払日・相手・金額・現場名を記録しておくだけで証拠力は大きく変わります。雇用契約で働く日雇いの職人に払う日当は給与となり、日額表による源泉徴収が必要になる場合があります。一人親方として請負で働く人への支払いとは扱いが違うため、人ごとにどちらに当たるかを整理しておきます。

北海道の足場工事業の場合

北海道では冬期に工事が減る会社も多いため、閑散期に現場台帳と資材の記録をまとめて整備しておくと、決算も調査対応も楽になります。繁忙期は応援の人数と現金の日当が一気に増えるため、記録の抜けが出やすい時期です。

従業員として日給で働く職人は、日給を1日の所定労働時間で割った額が北海道の最低賃金(2026年10月1日から時間額1,131円)を下回っていないかもあわせて確認します。

足場資材・スクラップ・リースで指摘されやすい点は?

足場資材を自社で保有している場合、本来は資産として計上し減価償却すべきものを、消耗品として一括で経費にしていないかが論点になります。取得価額が基準未満かどうかは、通常1組・1そろいとして取引される単位ごとに判定するため、セットで買った資材を部材1本ずつの単価に分けて判断していないかが確認されます。

取得価額処理注意点
10万円未満消耗品費などとして全額経費判定の単位(1組・1そろい)に注意
20万円未満一括償却資産として3年で均等に経費化も選べる償却資産の申告の対象外
40万円未満少額減価償却資産の特例で全額経費(年300万円まで)青色申告の中小企業者等が対象。2026年4月1日以後の取得から(2026年3月31日までは30万円未満)。償却資産の申告の対象
上記以外耐用年数に応じて減価償却資産の種類ごとに耐用年数を確認
足場資材の取得価額による処理の違い(2026年10月時点)
無料
ツール
資材の処理方法を3択で比較する即時の経費化・一括償却・少額減価償却資産の特例のどれが有利か、金額を入れて比較できます。計算する

少額減価償却資産の特例で経費にした資材は、市町村への償却資産の申告(毎年1月31日まで)の対象になる点も見落としやすいところです。資材を資産計上する場合は、現場管理用の資材台帳と会計上の固定資産台帳の情報がずれていないか、定期的に照合しておきます。

使わなくなった資材やスクラップの売却収入の計上漏れは、調査側が買取業者の資料から把握していることもある項目です。現金で受け取った場合も買取業者の計算書を保存し、入金と照合して収入に計上します。リース資材と自社資材が混在している会社は、契約と在庫の区分も整理しておきましょう。

消費税で簡易課税を選んでいる会社は、事業区分にも注意が必要です。足場工事は建設業として第3種(みなし仕入率70%)が基本ですが、材料を元請けが用意して人工だけを提供する工事は第4種(60%)、足場材を貸すだけの収入は第5種(50%)などに当たる場合があります。

税務調査はどう進み、何を準備する?

税務調査は、原則として事前に税務署から連絡があり、調査の日時・場所・対象の税目と期間などが伝えられます(事前通知)。現金取引が多い業種では、事前の連絡なしに調査が始まる場合もあります。

  1. 事前通知を受ける日程はその場で即答せず、顧問税理士がいれば早めに共有して都合を調整します。
  2. 資料を確認する帳簿・請求書・契約書・現場台帳を見直し、説明が必要な取引を洗い出します。
  3. 実地調査を受ける会社の概況の聞き取りの後、帳簿と証拠書類が照合されます。現場台帳・出面帳・通帳はよく見られる資料です。
  4. 取引先への確認元請けや一人親方、買取業者に取引の内容が確認されること(反面調査)もあります。
  5. 調査結果の説明を受ける指摘があれば内容と理由が説明されます。納得できない点は、根拠となる資料を示して説明します。
  6. 修正申告か更正で終了指摘がなければ、更正決定等をすべきと認められない旨の通知を受けて終わります。
  • 総勘定元帳・仕訳帳と決算書・申告書の控え
  • 元請けとの請負契約書・注文書、一人親方との契約書と請求書
  • 現場台帳(組立日・解体日・引渡日・請求日)と写真・作業日報
  • 出面帳、現金出納帳、日当の支払記録
  • 資材台帳、固定資産台帳、リース契約書、スクラップの売却計算書
  • 預金通帳と、メール等で受け取った注文書・請求書の電子データ

税務署が更正・決定できる期間は、原則として法定申告期限から5年です。偽りその他不正の行為がある場合は7年、法人の欠損金額に係る更正は10年になります。法人の帳簿書類の保存期間も7年(欠損金が生じた事業年度は10年)です。日頃の記帳の点検には経理・決算セルフチェックも使えます。

指摘を受けたら税金はどうなる?

指摘に納得すれば修正申告を出し、納得できなければ税務署が更正を行います。どちらの場合も、不足していた税額に加えて加算税と延滞税がかかります。

加算税割合かかる場面
過少申告加算税原則10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)申告した税額が少なかった
無申告加算税原則15%(50万円超の部分は20%、300万円超の部分は30%)期限までに申告していなかった
重加算税35%(無申告の場合は40%)売上の除外や架空の外注費など、仮装・隠ぺいがあった
加算税の割合(無申告加算税の300万円超の区分は2024年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの)

架空の外注費や売上の除外と判断されると重加算税の対象になり、さかのぼる期間も7年に延びます。日頃の記録が「単なる誤り」と「仮装・隠ぺい」を分ける材料になります。

調査の通知を受ける前に自分で誤りに気づいて修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。通知を受けた後でも、調査で指摘される前に修正すれば負担は軽くなります。

無料
ツール
延滞税・加算税の概算を計算する追加で納める税額と期間を入れると、加算税と延滞税の目安がわかります。計算する

外注費の区分や売上の計上時期に不安がある場合は、調査の連絡が来る前に確認しておくと選べる対応が増えます。初回無料でご相談いただけます。

無料で相談する

よくある質問

一人親方本人にも税務調査は来ますか?

来ることがあります。一人親方は個人事業主として自分で確定申告をしており、その申告内容が調査の対象になります。発注した会社の調査で支払額を確かめるために一人親方へ照会が行われることもあり、双方の請求書と支払記録が一致しているかが見られます。

税務調査の日程は変更できますか?

調査そのものを断ることはできませんが、繁忙期の現場や体調などの合理的な理由があれば、日程の変更を相談できます。事前通知の段階で、顧問税理士と都合を調整してから回答するとよいでしょう。

元請けからメールで受け取った注文書は、印刷して保存すればよいですか?

メールやWebで受け取った注文書・請求書は「電子取引」に当たり、2024年1月1日以後は電子データのまま保存する必要があります。改ざん防止や検索の要件があり、基準期間の売上高が5,000万円以下などで、税務署のダウンロードの求めに応じる場合は検索の要件が不要になります。

税理士が調査に立ち会うと何が変わりますか?

税務代理の権限を示す書面を提出しておくと、事前通知は税理士にも届き、日程調整や当日の説明を任せられます。指摘を受けた点について、法令や通達に照らして処理の根拠を説明するのも立会いの役割です。流れは税務調査の立会い:依頼から完了までの流れで紹介しています。

まとめ

足場工事業の税務調査では、一人親方への外注費と給与の区分、決算日をまたぐ現場の売上計上時期、現金日当の記録が中心に確認されます。資材の資産計上やスクラップ売却収入、インボイス未登録の外注先の控除割合も含めて、現場台帳・出面帳・契約書を日頃からそろえておけば、調査を過度に恐れる必要はありません。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

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