株主総会とは、株主が会社の基本的な事項を決める株式会社の機関です。中小企業でも毎年の定時株主総会で決算の承認や役員報酬を決め、議事録を残しておくことが、法人税の申告や役員報酬を損金にする前提になります。一人会社や家族経営なら、書面決議で手続きを簡略化できます。
この記事の結論
株主総会は、決算・役員・報酬・配当など会社の基本事項を株主が決める場です。中小企業は開催の形式より、決議の内容を議事録として毎年残すことが大切です。
- 定時株主総会は毎事業年度の終了後に開き、計算書類(決算)の承認、役員の選任、役員報酬の総額などを決める
- 法人税は株主総会で承認を受けた決算に基づいて申告する。期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内
- 株主全員の同意があれば、招集手続きの省略や書面決議(みなし決議)で開催を簡略化できる
- 議事録は本店に10年間備え置く。役員報酬の改定は期首から3か月以内に決議するのが原則
株主総会とは?何を決める場なのか
株主総会は、会社の所有者である株主が会社の基本的な事項を決める機関です。取締役会を置かない会社では会社に関する一切の事項を決議でき、取締役会を置く会社では、会社法と定款で定めた事項に限って決議します。
毎事業年度の終了後に開くものを定時株主総会、必要に応じて開くものを臨時株主総会といいます。中小企業では、決算の承認とあわせて役員報酬や配当を決める定時株主総会が中心です。
| 主な決議事項 | 決議の方法 | 税務・実務との関係 |
|---|---|---|
| 計算書類(決算)の承認 | 普通決議 | 承認された決算に基づいて法人税を申告する |
| 役員の選任 | 普通決議 | 任期が満了するたびに選任し、変更の登記をする |
| 役員報酬の総額(上限) | 普通決議(定款で定めることも可) | 定期同額給与・事前確定届出給与の前提になる |
| 役員の退職慰労金 | 普通決議 | 決議で金額が確定した事業年度に損金にするのが原則 |
| 剰余金の配当 | 普通決議 | 支払いのときに源泉徴収が必要 |
| 定款の変更(決算期・事業目的・商号など) | 特別決議 | 決算期を変えた場合は税務署などへの届出も必要 |
普通決議は、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数の賛成で成立します(出席の要件は定款で変えられます)。特別決議は、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
株主総会は税務とどう関係する?決算承認・役員報酬・配当
中小企業にとって株主総会が大切なのは、税務上の重要な手続きの多くが株主総会の決議を前提にしているためです。決議の記録がないと、税務調査で手続きの有無を説明できなくなるおそれがあります。
決算の承認と法人税の申告期限
法人税は「確定した決算」、つまり株主総会で承認を受けた決算に基づいて申告します。申告期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内のため、定時株主総会もこの期限に間に合う日程で開くのが基本です。
2か月以内に決算が確定しない事情があるときは、申告期限の延長の特例を申請できます(延長は原則1か月)。定款で定時株主総会を事業年度終了後3か月以内に開くと定めている場合などが当たります。延長した期間には利子税がかかるため、見込みの税額を本来の期限までに納めておく方法もあります。
役員報酬の決定と損金算入
役員報酬は、定款か株主総会の決議で総額(上限)を決め、その範囲で各役員への配分を決めます。法人税で損金にするには、毎月同じ額を支払う定期同額給与とするのが基本で、金額の改定は期首から3か月以内に行うのが原則です。決算後の定時株主総会で改定を決議するのが一般的な流れです。
例えば、役員報酬を月50万円から60万円に増やしたのに決議の記録がない場合、税務調査で手続きを欠くとして増額分の損金算入が否認されるおそれがあります。報酬の水準の考え方は「役員報酬の適正額」で解説しています。
特定の時期に決まった額を支給する事前確定届出給与を使う場合は、税務署への届出が必要です。期限は、株主総会などの決議の日から1か月を経過する日と、期首から4か月を経過する日のいずれか早い日です。株主総会の日付が届出の期限を左右します。
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配当と役員の退職慰労金
剰余金の配当を決議したら、支払いのときに源泉徴収をします。非上場会社の配当は、原則として20.42%を源泉徴収し、支払った月の翌月10日までに納めます。配当を決議したまま1年たっても支払わない場合は、支払ったものとみなして源泉徴収が必要になります。
無料ツール配当の源泉徴収税額を計算する配当の金額から、源泉徴収する所得税と復興特別所得税の額を計算できます。計算する
役員の退職慰労金は、株主総会の決議で金額が確定した事業年度に損金にするのが原則です。実際に支払った事業年度に損金経理する方法も認められていますが、いずれの場合も決議の記録が根拠になります。
中小企業は簡略化できる?招集の省略・書面決議・報告の省略
株主が少ない中小企業では、会社法が認める簡略化の方法を使えば、全員が一か所に集まらなくても株主総会の手続きを済ませられます。
| 方法 | 要件 | 向いている会社 | 残すもの |
|---|---|---|---|
| 招集手続きの省略 | 株主全員の同意(書面投票・電子投票を定めた場合を除く) | 家族経営で株主が集まれる会社 | 議事録 |
| 書面決議(みなし決議) | 提案された事項に、議決権を持つ株主全員が書面か電磁的記録で同意 | 一人会社、遠方に住む株主がいる会社 | 同意書(本店に10年間備え置く)と議事録 |
| 報告の省略 | 取締役が報告事項を株主全員に通知し、全員が報告を不要と同意 | 事業報告などの報告事項がある会社 | 議事録 |
招集通知は、株式の譲渡に会社の承認が必要な会社(非公開会社)なら、原則として総会の日の1週間前までに出します。取締役会を置かない会社は、定款でこの期間を短くすることもできます。株主が1人だけの会社は、その株主が出席すれば、招集の手続きがなくても株主総会が成立すると考えられています。
書面決議は「全員の同意」が条件
書面決議は、議決権を持つ株主のうち1人でも同意しない、または回答しない場合には成立しません。親族が株主になっている会社や、名義だけの株主(名義株)がいる会社は、株主名簿で株主と持株数を確かめてから進めます。株主が誰か分からない状態は、事業承継のときにも問題になります。
書面決議の場合も、決議があったとみなされた日や提案の内容を記載した議事録を作ります。議事録の書き方は「法人議事録の解説」で整理しています。
議事録には何を書き、どう保管する?
議事録は「誰が、何を、どう決めたか」を、後から第三者が追える形で残すことが目的です。記載する事項は、会社法の省令で決められています。
- 開催の日時と場所(書面決議では、決議があったとみなされた日)
- 議事の経過の要領と、議案ごとの結果(賛成多数・全員一致など)
- 出席した取締役・監査役などの氏名と、議長の氏名
- 議事録の作成にかかわる職務を行った取締役の氏名
- 実務上は、出席した株主の数と議決権の数も記載する(出席の要件を満たしたことが分かるように)
会社法上、株主総会議事録への署名や押印は求められていません。ただし、定款で署名や押印を定めている場合や、登記の申請に添付する場合には、押印が必要になることがあります。誰が押印するかは、定款と登記の要件で確かめておきます。
議事録は総会の日から10年間、本店に備え置きます(支店には写しを5年間)。株主や債権者は閲覧や写しの交付を請求できるため、年度ごとにまとめ、紙と電子データの保存場所を決めておきます。
| よくある不備 | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 毎年同じ雛形の使い回し | 実際の議題や決定内容、報酬額が反映されない | 決算書・申告書の数字と突き合わせてから作る |
| 署名・押印の後回し | 登記や金融機関への提出のときに使えない | 作成と同時に、押印する人と期限を決める |
| 保管場所がばらばら | 必要なときに取り出せず、過去の決議を確認できない | 年度別のファイルにまとめ、電子データの保存場所も決める |
| 役員の任期切れの見落とし | 改選と変更登記が遅れ、過料の対象になることがある | 任期の一覧を作り、改選の年を決算の予定に入れる |
| 報酬の決議日と支給額のずれ | 定期同額給与の要件を外れ、損金にならない部分が出るおそれがある | 改定する月と議事録の日付・金額を合わせる |
議事録の不備や役員報酬の手続きは、過去の決議の状況によって整え方が変わります。決算・申告とあわせて、初回無料で確認できます。
無料で相談する年間スケジュールはどう組む?決算・申告と一体で回す
株主総会は毎年同じ時期に行う手続きなので、決算・申告の流れに組み込むと漏れがなくなります。取締役の任期は原則2年で、株式の譲渡に承認が必要な会社は定款で最長10年まで延ばせます。改選の年を一覧にしておくと、見落としを防げます。
- 決算日(期末)決算を締め、役員の任期満了の有無と、翌期の役員報酬の方針を確認します。
- 決算書と議案の準備計算書類と事業報告の案を作り、議題(決算の承認、役員の選任、報酬、配当)を洗い出します。
- 招集または書面決議の提案非公開会社は総会の日の1週間前までに招集通知を出します。書面決議なら、提案書と同意書を株主に送ります。
- 定時株主総会の開催・決議法人税の申告期限(事業年度終了の日の翌日から2か月以内)に間に合う日程で決議します。
- 議事録の作成と後続の手続き議事録を作って保管し、役員の変更登記(変更から2週間以内)、事前確定届出給与の届出、配当の源泉所得税の納付、法人税の申告を進めます。
ひとり社長や少人数の会社ほど、株主総会は形式的な手続きに感じられて後回しになりがちです。毎年、決算作業と同じタイミングで「今期はこれを決める」という項目を先に決めておくと、直前に慌てずに済みます。役員報酬の基本的な考え方は「役員報酬の基本と税務」も参考にしてください。
札幌・北海道の会社が届出をするときの提出先
申告期限の延長や事前確定届出給与の届出先
申告期限の延長の特例の申請書や事前確定届出給与の届出は、本店所在地を管轄する税務署に提出します。札幌市内は区ごとに5つの税務署に分かれ、中央区はおおむね西10丁目以東が札幌中、大通西11丁目以西などが札幌西の管轄です。
書面で郵送する場合は、2026年7月10日から札幌業務センター(市内5署の内部事務を集約)が送付先です。e-Taxで提出する場合や窓口に持参する場合は、所轄の税務署あてになります。法人事業税(道税)の申告期限の延長は、法人税とは別に北海道への申請が必要になる場合があるため、道の案内で確認します。
よくある質問
株主が社長1人だけの会社でも、株主総会は必要ですか?
必要です。決算の承認や役員報酬の決定は株主総会の権限で、一人会社でも変わりません。社長が株主として決議する書面決議か、その場で決議する形をとり、議事録を残しておきます。
過去に株主総会を開いていない年や、議事録がない年があります。どうすればよいですか?
事実と異なる日付で議事録を作り直すことは避けてください。実際に決めた内容と日付を確認し、今後の総会で必要な決議をし直すなど、状況に応じた整え方を顧問税理士や司法書士に相談します。役員の任期が切れている場合は、改選と変更登記も必要です。
融資やM&Aのときに、議事録を見られることはありますか?
あります。金融機関の審査や、M&A・事業承継での調査(デューデリジェンス)では、役員の選任、役員報酬、配当、株式の移動の手続きが議事録で確認されます。記録が欠けていると、手続きが有効だったかの確認に時間がかかります。
取締役会議事録と株主総会議事録は、何が違いますか?
取締役会を置く会社では、代表取締役の選定や各取締役への報酬の配分などを取締役会で決め、その議事録を作ります。取締役会議事録には、出席した取締役と監査役の署名か記名押印が必要です。株主総会議事録とは決める事項も作成のルールも異なるため、別に作って保管します。
まとめ
株主総会は、決算の承認・役員報酬・配当など、税務の土台になる事項を決める場です。中小企業は招集の省略や書面決議を使って手続きを簡略化しながら、議事録を毎年残し、本店に10年間保管することが大切です。決算・申告のスケジュールに組み込み、役員の任期や報酬の改定時期とあわせて管理しましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂
