社会保険料控除は、その年に支払った健康保険・年金・介護保険・雇用保険などの保険料を、全額所得から差し引ける所得控除です。上限はなく、生計を一にする家族の保険料も自分が支払えば対象になります。会社員は年末調整、個人事業主は確定申告で控除を受けます。
この記事の結論
社会保険料控除は、本人や生計を一にする家族の社会保険料を、実際に支払った人がその年に全額控除できる制度です。
- 対象は健康保険・国民健康保険・介護保険・後期高齢者医療・厚生年金・国民年金・雇用保険など
- 控除額に上限はなく、支払った金額の全額が所得から差し引かれる
- 家族の年金から天引きされた保険料は、その家族本人しか控除できない
- 国民年金保険料と国民年金基金の掛金は、控除証明書が必要
- 申告し忘れても、確定申告(還付申告)なら5年以内は取り戻せる
社会保険料控除とは?所得税・住民税が軽くなる仕組み
社会保険料控除は、所得税と住民税の計算で、支払った社会保険料の全額を所得から差し引く「所得控除」の一つです。税額から直接引くのではなく、税率をかける前の所得を減らす仕組みのため、軽くなる税額は控除額に自分の税率をかけた金額になります。
所得税の税率は課税所得に応じて5%から45%までの7段階で、住民税の所得割は一律10%です。同じ控除額でも、課税所得が多い人ほど軽くなる税額は大きくなります。
| 課税所得 | 所得税率 |
|---|---|
| 195万円以下 | 5% |
| 195万円超330万円以下 | 10% |
| 330万円超695万円以下 | 20% |
| 695万円超900万円以下 | 23% |
| 900万円超1,800万円以下 | 33% |
| 1,800万円超4,000万円以下 | 40% |
| 4,000万円超 | 45% |
計算例:個人事業主が国民年金・国民健康保険を支払った場合
例えば、課税所得が195万円超330万円以下(所得税率10%)の個人事業主が、国民年金保険料と国民健康保険料を合わせて年間500,000円支払った場合の軽減額の目安です。
- 所得税:500,000円×10%=50,000円
- 復興特別所得税:50,000円×2.1%=1,050円
- 住民税(所得割):500,000円×10%=50,000円
- 合計:50,000円+1,050円+50,000円=101,050円
控除によって課税所得の区分が変わる場合や、もともと所得税がかからない場合は、軽減額がこの目安と異なります。
ツール所得税額を速算表で自動計算する控除後の課税所得を入れると、速算表に沿って所得税額の目安を計算できます。計算する
対象になる保険料・ならない保険料は?
対象になるのは、法律に基づく公的な医療保険・年金・介護保険・雇用保険の保険料です。名前が似ていても、iDeCoや民間の保険は別の控除で扱います。
| 保険料・掛金 | 扱い |
|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)、任意継続の保険料、国民健康保険料(税)、後期高齢者医療保険料 | 社会保険料控除 |
| 介護保険料 | 社会保険料控除 |
| 厚生年金保険料、国民年金保険料(付加保険料を含む)、国民年金基金・厚生年金基金の掛金、共済組合の掛金 | 社会保険料控除 |
| 雇用保険料(本人負担分) | 社会保険料控除 |
| iDeCo・小規模企業共済の掛金 | 小規模企業共済等掛金控除(社会保険料控除ではない) |
| 民間の生命保険・医療保険・個人年金保険 | 生命保険料控除 |
| 会社が負担した社会保険料 | 本人の控除にはならない |
| 個人事業主が負担した従業員の社会保険料 | 事業の必要経費(法定福利費) |
個人事業主本人の国民年金・国保は経費ではない
個人事業主が自分のために支払う国民年金保険料や国民健康保険料は、事業の必要経費ではなく社会保険料控除で差し引きます。従業員を雇っている場合の事業主負担分は、必要経費として処理します。両者を混同すると、経費と控除の二重計上や計上漏れにつながります。
家族の保険料は誰が控除できる?
社会保険料控除は、自分の保険料だけでなく、生計を一にする配偶者やその他の親族が負担すべき保険料でも、自分が支払っていれば控除できます。判断のポイントは「誰の口座・財布から支払ったか」です。
| ケース | 控除できる人 | ポイント |
|---|---|---|
| 学生の子の国民年金保険料を親が支払った | 支払った親 | 子の名前の控除証明書を使って親が申告する |
| 配偶者の国民健康保険料を本人の口座から支払った | 支払った本人 | 生計を一にしていることが前提 |
| 親の介護保険料・後期高齢者医療保険料が親の年金から天引きされた | 親本人 | 子が負担したことにはならない |
| 親の後期高齢者医療保険料を子の口座振替で支払った | 支払った子 | 年金天引きから口座振替に変えると、支払った子が控除できる |
| 別居している家族の保険料を支払った | 生計を一にしていれば支払った人 | 仕送りなどで生活費を負担している実態が必要 |
家族の中で所得税率が高い人が支払うと、世帯全体の税負担は軽くなりやすくなります。ただし、控除できるのは実際に支払った人だけなので、名義と支払いの記録を一致させておくことが大切です。
いつ支払った分が対象?前納・追納・未納分の扱い
控除の対象になるのは、その年に実際に支払った保険料と、その年に支払われた給与から天引きされた保険料です。何月分の保険料かではなく、支払った日で年を判定します。
| 支払いの形 | 控除する年 |
|---|---|
| 過去の未納分をまとめて支払った | 支払った年 |
| 学生納付特例や納付猶予を受けた保険料を後から追納した | 追納した年 |
| 国民年金保険料を前納した | 支払った年に全額控除するか、対象期間に応じて各年に分けるかを選べる |
| 12月分の保険料が翌年1月に口座から引き落とされた | 引き落とされた翌年 |
| 給与から天引きされた | その年に支払われた給与から控除された分 |
学生時代に納付を猶予した国民年金保険料を社会人になってから追納すると、追納した年の社会保険料控除になります。追納の額が大きい年は、税負担を軽くする効果も大きくなります。
会社員は年末調整でどう申告する?
給与から天引きされた健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料は、会社が年末調整で自動的に控除するため、本人の申告は不要です。申告が要るのは、自分で直接支払った保険料がある場合です。
- 入社前や退職後の期間に、自分で国民年金・国民健康保険を支払った
- 生計を一にする家族の国民年金・国民健康保険などを支払った
- 過去の未納分や、猶予を受けた分を追納した
- 国民年金基金の掛金を支払っている
これらは「給与所得者の保険料控除申告書」の社会保険料控除の欄に、保険料の種類・支払先・本人が支払った金額を書いて会社に提出します。国民年金保険料と国民年金基金の掛金は、日本年金機構などから届く控除証明書の添付が必要です。
令和8年分の年末調整では、基礎控除や給与所得控除の改正も12月の精算で反映されます。社会保険料控除の仕組みそのものは変わらないため、例年どおり支払額を確認して記入します。
計算例:給与から天引きされる保険料の月額(協会けんぽ北海道)
例えば、40歳未満で標準報酬月額・給与がともに300,000円の会社員が、2026年4月分以後に負担する月額の目安です。
- 健康保険料:300,000円×10.28%÷2=15,420円
- 子ども・子育て支援金:300,000円×0.23%÷2=345円
- 厚生年金保険料:300,000円×18.3%÷2=27,450円
- 雇用保険料(一般の事業の本人負担):300,000円×5÷1000=1,500円
- 合計:15,420円+345円+27,450円+1,500円=44,715円
40歳以上65歳未満の人は、介護保険料(1.62%の折半)も加わります。1年間の控除額は、源泉徴収票の「社会保険料等の金額」欄で確認できます。
ツール社会保険料の月額を等級表から計算する給与の額を入れると、等級表に沿って社会保険料の月額の目安を確認できます。計算する
個人事業主・年金受給者は確定申告でどう書く?
個人事業主や、年末調整を受けていない人は、確定申告で社会保険料控除を申告します。申告書の第二表に保険料の種類と支払額を書き、その合計を第一表の社会保険料控除の欄に記入します。
| 保険料 | 金額を確認する資料 | 証明書の添付 |
|---|---|---|
| 国民年金保険料・国民年金基金の掛金 | 控除証明書 | 必要(添付または提示) |
| 国民健康保険料(税)・介護保険料・後期高齢者医療保険料 | 市区町村からの通知、領収書、通帳の引落し記録 | 不要(金額の記載は必要) |
| 年金から天引きされた保険料 | 公的年金等の源泉徴収票 | 源泉徴収票の金額を転記する |
| 給与から天引きされた保険料 | 給与所得の源泉徴収票 | 源泉徴収票の金額を転記する |
e-Taxでマイナポータル連携を使うと、国民年金保険料の控除証明書などのデータを申告書に取り込める場合があります。紙の証明書を探す手間が減り、転記の誤りも防げます。
令和8年分(2026年分)の確定申告期間は、2027年2月16日(火)から3月15日(月)までです。払いすぎた税金を取り戻すだけの還付申告は、2027年1月1日から提出できます。申告の時期は個人事業主の年間スケジュールでも確認できます。
控除を受け忘れたときは?還付申告と更正の請求
社会保険料控除を受け忘れても、後から手続きをすれば払いすぎた税金を取り戻せます。どの手続きになるかは、すでに確定申告をしたかどうかで変わります。
| 状況 | 手続き | 期限 |
|---|---|---|
| 年末調整で家族分や国民年金を申告し忘れた | 確定申告(還付申告) | 翌年1月1日から5年間 |
| 確定申告をしたが、社会保険料の一部を書き漏らした | 更正の請求 | 法定申告期限から5年以内 |
| 会社の年末調整のやり直しに間に合う | 会社に再計算を依頼 | 会社の手続きの締切まで |
漏れに気づいたら、まず控除証明書や引落しの記録を年ごとにそろえます。家族分の支払いや前納の扱いなど、どの年に誰が控除するかで迷う場合は、申告前に確認しておくと手戻りを防げます。
家族の保険料を誰が控除するか、前納分をどの年に入れるかは、世帯の状況で有利な方法が変わります。初回無料で確認できます。
無料で相談する個人事業主の方は、社会保険料控除を含めた所得控除の整理を毎年の決算とあわせて行うと漏れが防げます。当事務所では、記帳から確定申告までを継続して支える会計・税務顧問で対応しています。
よくある質問
退職した年の国民健康保険料や国民年金保険料はどうなりますか?
退職後に自分で支払った保険料は、年末調整を受けていなければ確定申告で控除します。年の途中で再就職し、新しい会社で年末調整を受ける場合は、保険料控除申告書に退職後に支払った分を記入します。
任意継続の健康保険料も対象になりますか?
対象になります。退職後に任意継続被保険者として支払った健康保険料は、自分で支払った社会保険料として、年末調整の保険料控除申告書か確定申告で控除します。
iDeCoの掛金も社会保険料控除で申告しますか?
iDeCoや小規模企業共済の掛金は、社会保険料控除ではなく小規模企業共済等掛金控除で申告します。どちらも支払額の全額が控除対象ですが、申告書の記入欄と必要な証明書が異なります。
社会保険料控除が増えると、ふるさと納税の上限額は変わりますか?
社会保険料控除が増えると住民税の所得割の計算のもとになる所得が減るため、ふるさと納税で控除を受けられる上限額の目安は下がります。追納や前納で控除額が大きく増える年は、寄附額を決める前に見直しておくと安心です。
国民健康保険料の領収書をなくしてしまいました。申告できますか?
国民健康保険料は証明書の添付が不要なため、通帳の引落し記録や市区町村からの通知で金額を確認して申告できます。金額が分からない場合は、お住まいの市区町村の窓口で前年中の納付額を確認してください。
まとめ
社会保険料控除は、本人や生計を一にする家族の社会保険料を、実際に支払った人がその年に全額控除できる所得控除です。家族の年金から天引きされた分は家族本人しか控除できず、国民年金保険料と国民年金基金の掛金には控除証明書が必要です。受け忘れても還付申告や更正の請求で5年以内なら取り戻せるため、控除証明書と引落しの記録を年ごとに保管しておきましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
