防水工事業の税務調査で重点的に見られるのは、工期の短い改修工事の売上の計上時期(期ズレ)、一人親方への手間請けが外注費か給与か、期末の材料在庫と未成工事支出金の3点です。小口の補修の現金売上や保証工事の補修費も確認されます。現場ごとの工事台帳で売上と原価を対応させておくことが、最も効く備えです。
この記事の結論
防水工事業の調査では、売上の計上時期、外注費と給与の区分、材料と未成工事の期末処理が中心に確認されます。日付のそろった見積書・完了報告書・施工写真と、現場ごとの工事台帳が最大の備えです。
- 売上は請求日や入金日ではなく、完成・引渡しの日で計上する
- 手間請けの外注費は、契約書の形式ではなく働き方の実態で判断される
- 期末の材料在庫と、着工済み・未完成の現場の原価(未成工事支出金)は資産に計上する
- 小口の補修も見積書か請求書を作り、元請からの差引き入金は総額で売上に計上する
- 調査で指摘を受けて修正申告をすると過少申告加算税(原則10%)と延滞税がかかり、さかのぼるのは原則5年、不正があれば7年
防水工事業の税務調査で見られやすい論点は?
防水工事は、1件あたりの工期が短く件数が多いのが特徴です。マンションの大規模修繕のように元請から受ける工事と、個人宅の雨漏り補修のように施主から直接受ける小口の工事が混在するため、調査で確認される論点には次のような傾向があります。
| 論点 | 防水工事業で起きやすい場面 | 照合される主な資料 |
|---|---|---|
| 売上の期ズレ | 工期の短い改修工事が期末をまたぐ、完了後の請求を翌期に回す | 見積書・注文書・完了報告書・施工写真の日付と売上帳 |
| 小口の現金売上 | 雨漏りの応急補修、ベランダの部分補修、雨漏りの調査 | 見積書・請求書の控え、通帳、作業日報 |
| 元請からの差引き入金 | 安全協力会費や振込手数料、立替えの材料代が差し引かれて入金される | 注文書・支払通知書と売上の計上額 |
| 外注費と給与の区分 | 一人親方への手間請け、仕事のない月の定額払い | 契約書・請求書・作業日報、材料や道具の負担 |
| 材料在庫と未成工事支出金 | ウレタン材・シート材・シーリング材の期末残、着工済みで未完成の現場 | 仕入伝票・工事台帳・棚卸表 |
| 保証工事と少額の機械 | 引渡し後の無償補修、決算直前の機械の購入 | 保証書・補修の記録、納品書と使用開始日 |
| 消費税の区分 | 材料込みか手間請けか(簡易課税の事業区分)、インボイス未登録の外注先 | 注文書・請求書、外注先の登録番号 |
調査官は、帳簿の数字そのものより、見積書・注文書・完了報告書・施工写真・通帳といった資料の日付と金額が帳簿と合っているかを見ていきます。現場ごとの売上と原価を対応させた工事台帳があれば、どの論点にも説明がしやすくなります。業界の制度の動きは塗装・防水工事業の経営に役立つ最新情報にまとめています。
売上はいつ計上する?完成・引渡しの日と期末をまたぐ現場
工事の売上は、原則として工事が完成し、相手に引き渡した日に計上します。請求書を発行した日や、入金のあった日ではありません。ウレタン防水やシート防水は工期が数日から数週間と短いため、決算期末の直前に終わった現場がどちらの期の売上かが、最も指摘されやすい論点です。
調査では、見積書・注文書・完了報告書・施工写真の日付と、請求書や売上帳の計上日が突き合わされます。期末の直前に完成した工事の請求を翌期に回している場合、意図的でなくても売上の計上漏れとして指摘されるおそれがあります。
具体例:3月決算で期末をまたいだ屋上防水
例えば、3月決算の会社が、3月25日に完了報告を出した屋上防水の工事代金を4月に請求し、翌期の売上にしていた場合です。完了報告書と施工写真の日付から当期の売上と判断され、修正を求められます。完了報告を出した現場は、請求が翌月になっても期末に売掛金として計上します。
引渡しの日はどう判定する?
元請から受ける工事では、作業が終わった日、元請の検査(検収)が終わった日など、引渡しの日の判断基準がいくつか考えられます。工事の実態に合う基準を選び、毎期同じ基準で計上することが大切です。期によって基準を変えると、利益を調整していると見られかねません。
マンションの大規模修繕のように、棟ごと・工区ごとに引き渡して、その部分ごとに代金を受け取る取り決めがある契約では、引き渡した部分ごとに売上を計上します。契約書と工程表で、引渡しの単位を確認しておきます。
下地の補修など、追加工事の金額が期末後に決まる場合
既存の防水層をはがしてから下地の傷みが見つかり、追加の補修をすることがあります。追加工事が期末までに終わっていれば、金額の合意が翌期になっても、見積額など合理的な金額で当期の売上に計上し、確定した期に差額を調整するのが一般的な考え方です。追加の指示を受けた日付と内容は、メールや打合せの記録で残しておきます。
小口の補修工事と、元請からの差引き入金はどう見られる?
雨漏りの応急補修やベランダの部分補修、散水による雨漏りの調査などは、金額が小さく現金で受け取ることも多いため、計上漏れが起きやすい項目です。調査官は、作業日報や施工写真、材料の使用量と売上を突き合わせ、取引先に照会(反面調査)することもあります。
対策はシンプルで、どんな小口工事でも見積書か請求書を作り、入金を通帳に通すことです。現金で受け取った場合も入金伝票を起こし、誰が見ても流れが追える状態にしておけば、調査で無用な疑いを持たれずに済みます。
元請からの入金が差し引かれている場合
元請からの入金では、安全協力会費や振込手数料、元請が立て替えた材料代や廃材の処分費などが差し引かれていることがあります。入金額だけを売上にすると、売上と経費の両方が少なく計上され、消費税の計算もずれます。注文書や支払通知書の金額で売上を総額で計上し、差し引かれた分は内容に応じて経費などとして計上します。
北海道の防水工事は季節の偏りに注意
冬期は気温や積雪の影響で、屋外の防水工事ができない期間が生じる場合があります。一方、雪解けの3〜4月には雨漏りの補修依頼が集中しやすく、繁忙期の現金売上ほど記録を残す仕組みが必要です。
法人の場合、決算月を現場の少ない冬に置くと、期末をまたぐ現場や棚卸の対象となる材料が少なくなり、期ズレの論点を減らせます。決算月の変更は、定款の変更と税務署・北海道・市町村への届出で行います。
一人親方への手間請けは外注費?給与?
防水工事では一人親方への手間請けが多く、外注費として処理するのが一般的です。ただ、外注費なら消費税の仕入税額控除の対象になり源泉徴収も原則不要、給与なら源泉徴収と社会保険の対象になるという違いがあるため、調査では支払いの実態が細かく確認されます。判断のポイントは次のとおりです。
| 確認される点 | 外注費(請負)と見られやすい | 給与(雇用)と見られやすい |
|---|---|---|
| 仕事の代わり | 本人の判断で他の職人に任せられる | 本人以外が作業することは認められない |
| 指揮監督 | 施工の方法や手順を職人が決める | 作業の内容や方法を会社が細かく指示する |
| 時間の拘束 | 作業する時間を職人が決められる | 始業・終業の時刻を会社が指定する |
| 材料・道具 | 職人が材料や攪拌機・トーチなどの道具を用意する | 材料も道具も会社が支給する |
| 完成前のやり直し | 施工中の雨で塗膜がだめになっても、やり直しの代金は請求できない | やり直した日も含め、働いた日数分の日当を受け取れる |
| 報酬の決め方 | 面積や工事ごとの請負金額 | 日当・時間給、仕事がない月も定額 |
契約書の形式が請負でも、実態が雇用に近ければ給与と認定されます。その場合、源泉所得税の追徴と不納付加算税、支払った消費税の仕入税額控除の否認(給与は控除の対象外)が同時に起こり、社会保険の加入を求められることもあります。
冬に仕事が減りやすい地域では、職人を確保するために仕事のない月にも定額を払うことがあります。こうした払い方は、請負の対価というより雇用に近いと見られやすくなります。支払う場合は、名目と根拠を契約書で明らかにしておきます。
- 一人親方ごとの請負契約書(工事内容・金額・材料と道具の負担・やり直しの責任)
- 現場ごとの請求書(面積や工事の単位で金額がわかるもの)
- 作業日報(出面表)と施工写真
- インボイスの登録番号の有無と、確認した日
- 本人の事業者としての実態(屋号、他社からの受注、自前の道具)
一人親方への支払いが外注費として認められるかは、契約と働き方の実態で判断が分かれます。契約書の見直しから、初回無料でご相談いただけます。
無料で相談する材料の在庫・未成工事支出金・保証工事の補修費はどう扱う?
ウレタン材・シート材・シーリング材・プライマーなどの期末在庫は、棚卸資産として計上が必要です。倉庫の在庫だけでなく、現場や車両に置いたままの材料、使いかけの缶も対象です。使用期限が過ぎて使えなくなった材料は、廃棄した日付と数量を記録し、処分の証拠を残したうえで処理します。
未完成の現場の原価は未成工事支出金に
期末時点で着工済み・未完成の現場にかかった材料費や外注費は、未成工事支出金として資産に計上し、完成した期の原価にするのが原則です。足場の設置費や荷揚げの費用、撤去した既存防水層の処分費も、未完成の現場の分はここに含めます。
具体例:期末に着工中だった現場の材料費
例えば、3月決算の会社が、3月20日に着工し4月10日に完成する現場の材料費60万円を、3月の経費に入れていたとします。売上は翌期なのに原価だけを当期に計上していることになり、調査では利益の繰延べとして指摘される典型例です。この60万円は当期末の未成工事支出金とし、完成した翌期の原価にします。
保証期間中の無償補修と、少額の機械
防水工事には、引渡し後に保証を付けるものもあります。保証期間中の無償補修の費用は、実際に補修をした期の経費です。将来の補修に備えて見積額を引当金として計上しても、税務上の経費(損金)にはなりません。決算書に引当金を計上する場合は、申告書で加算して調整します。
攪拌機や送風機、シート溶接用の熱風機などの機械は、取得価額で処理が変わります。10万円未満はその期の経費、20万円未満は3年で均等に経費にする一括償却資産も選べます。青色申告の中小企業者等が使える少額減価償却資産の特例は、2026年4月1日以後の取得から40万円未満(年300万円まで、2029年3月31日までの取得)に広がりました。決算の直前に買っても、期末までに使い始めていなければその期の経費にはならない点は、調査で確認されやすいところです。
消費税で確認されやすい点は?手間請けの事業区分とインボイス
手間請けは簡易課税の第4種
簡易課税では、建設業は第3種(みなし仕入率70%)ですが、材料を元請から支給され、施工だけを請け負う手間請けは第4種(60%)になります。材料込みの「材工」の工事と手間請けが混在する事業者は、注文書や請求書で区分を確認できるようにしておきます。
計算例:手間請けを第3種で計算していた場合
例えば、簡易課税の事業者が、手間請けの売上(税抜400万円)を第3種で計算していたとします(地方消費税を含めた概算)。売上の消費税額は400万円×10%=40万円です。
納付税額は、第3種なら40万円×30%=12万円、正しい第4種なら40万円×40%=16万円で、差額の4万円が納付不足になります。
ツール簡易課税・本則課税・2割特例を比べる売上と経費の見込みから、消費税の納付額を計算方法ごとに比較できます。計算する
インボイス未登録の一人親方への外注費
インボイス発行事業者でない一人親方への外注費は、経過措置により一定の割合だけ仕入税額控除ができます。割合は課税仕入れの日(工事の完了日)で判定し、2026年9月30日までは80%、2026年10月1日から2028年9月30日までは70%、2028年10月1日から2030年9月30日までは50%です。2026年9月に始まり10月に完了した工事は70%で計算します。帳簿には「80%控除対象」などの記載が必要で、割合の誤りや記載の漏れは調査で確認されます。
2割特例は2026年9月30日を含む課税期間で終わり(個人は令和8年分、3月決算法人は2027年3月期まで)、個人事業者には令和9年分・令和10年分の3割特例があります。どの課税期間にどの計算方法を使ったかも確認される点です。経過措置の全体像はインボイス制度の実務ガイドで整理しています。
税務調査はどう進む?事前通知から終了までと準備する資料
- 事前通知税務署から電話などで、調査を始める日時・場所・目的・税目・対象期間・対象となる帳簿書類などが通知されます。合理的な理由があれば日程の変更を相談できます。現金取引が多い場合などは、事前通知なしに調査が行われることもあります。
- 実地調査事務所などで、事業の内容や取引の流れの聞き取りと、帳簿・工事台帳・請求書・通帳などの確認が行われます。
- 追加の確認持ち帰った論点について追加資料の提出を求められたり、元請や外注先に照会(反面調査)が行われたりします。
- 結果の説明問題がなければ、更正決定等をすべきと認められない旨の通知を受けて終わります。指摘があれば内容の説明を受け、修正申告を勧められます。
- 修正申告と納付修正申告書を提出し、本税と加算税・延滞税を納めます。修正申告に応じない場合は、税務署が更正をします。
準備しておく資料
- 総勘定元帳・仕訳帳と、対象期間の決算書・申告書
- 現場ごとの工事台帳(売上・材料費・外注費・経費の対応)
- 見積書・注文書(注文請書)・完了報告書・施工写真
- 請求書・領収書の控えと通帳
- 外注先との契約書・請求書・作業日報
- 材料の仕入伝票と期末の棚卸表
- 保証書と補修の記録
- 電子で受け取った請求書などのデータ(2024年1月1日以後は電子データのまま保存が必要)
税理士は、税務代理権限証書を提出すれば調査に立ち会い、論点の説明を代わりに行えます。立会いの進め方は税務調査の立会いを依頼してから完了するまでの流れで説明しています。
指摘を受けたら?修正申告・加算税とさかのぼる期間
調査で申告漏れを指摘されて修正申告をすると、増えた本税に加えて加算税と延滞税がかかります。主な加算税と、さかのぼって調べられる期間は次のとおりです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 過少申告加算税 | 原則10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%) |
| 重加算税 | 売上の除外や架空の外注費など、仮装・隠蔽がある場合。過少申告は35%、無申告は40% |
| 延滞税 | 本来の納期限の翌日から納付する日までの日数に応じてかかる |
| さかのぼる期間 | 原則として法定申告期限から5年。偽りその他不正の行為がある場合は7年。法人税の欠損金額に係る更正は10年 |
計算例:期ズレで法人税が増えた場合
例えば、中小法人が売上200万円の期ズレを指摘され、増えた所得に15%の税率がかかる場合(所得が年800万円以下の部分と仮定)、増える法人税は200万円×15%=30万円です。増えた税額が50万円以下なので、過少申告加算税は30万円×10%=3万円です。
このほか地方法人税(30万円×10.3%=30,900円)、法人住民税・法人事業税と、それぞれの延滞税がかかります。翌期の所得はその分少なくなりますが、当期分の加算税と延滞税は残ります。
ツール延滞税・加算税の概算を計算する増えた税額と納付までの日数から、延滞税と加算税の目安を計算できます。計算する
調査の通知を受ける前に自分で誤りに気づいて修正申告をすれば、加算税が軽くなる、またはかからない場合があります。優良な電子帳簿の要件を満たして事前に届出をしておくと、過少申告加算税が5%軽減される制度もあります。個人事業主の場合は、所得税の修正に伴って住民税や個人事業税、国民健康保険料も変わります。
帳簿書類の保存期間は、法人は7年(欠損金が生じた事業年度は10年)、個人の青色申告者は帳簿と決算関係書類などが7年です。さかのぼって調べられる期間に合わせて、工事台帳や外注の契約書も保存しておきます。
よくある質問
一人親方として防水工事をしている個人事業主にも税務調査は来ますか?
個人事業主も調査の対象です。元請側の外注費の記録と自分の売上が照合されることもあるため、元請ごとの売上を請求書と入金に対応させておきます。私用と兼用している車両や携帯電話の費用は、事業に使った割合の根拠を残しておきます。
施主から現金で受け取った補修代は、領収書を出していなくても売上ですか?
売上です。領収書を出したかどうかに関係なく、工事が完了して代金を受け取る権利が確定した時点で売上になります。入金伝票を起こし、できるだけ通帳に入金して記録を残します。
税務調査の連絡が来たら、最初に何をすればいいですか?
通知された対象期間と税目を控え、日程が合わなければ理由を伝えて調整を相談します。税理士に依頼する場合は、調査の前に帳簿と工事台帳、外注の契約書をひととおり確認し、説明が必要な取引を洗い出しておきます。
外注先がインボイスの登録をやめたら、外注費の扱いは変わりますか?
登録の効力がなくなった日以後の取引は、インボイスによる仕入税額控除ができず、経過措置の割合での控除になります。外注先の登録状況は国税庁の公表サイトで確認できるため、取引を始めるときと定期的に確認しておくと安心です。
まとめ
防水工事業の税務調査では、売上の計上時期、手間請けの外注費と給与の区分、材料在庫と未成工事支出金の3点が中心に確認されます。小口の補修の現金売上、元請からの差引き入金、保証工事の補修費、消費税の事業区分も見られる点です。現場ごとの工事台帳と、日付のそろった書類を日頃から整えておくことが、調査への最大の備えになります。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
