創業計画書・事業計画書の書き方

日本政策金融公庫の創業計画書を中心に、10項目の書き方、売上予測の根拠、収支と資金計画、業種別の記入例(架空の事例)、既存企業の事業計画書・資金繰り表、提出前のチェックをまとめました(2026年9月25日時点)。

BUSINESS PLAN

創業計画書・事業計画書の書き方10項目の書き方・売上予測・業種別の記入例

日本政策金融公庫の創業計画書(10項目)を、審査担当者がどこを見るかという視点から項目ごとに解説します。売上予測の電卓、4業種の記入例(架空の事例)、提出前の40項目チェック付きです。

2026年9月25日時点売上予測の電卓・40項目チェック付き作成:ジェイスタート会計事務所
10項目公庫の創業計画書の記入項目(現行様式)日本政策金融公庫 書式
4業種オリジナルの記入例(架空の事例)当ページ
40項目提出前のセルフチェック当ページ
58.7%予想月商に到達した開業者の割合公庫「2025年度新規開業実態調査」
目次

創業計画書は何のために書く?審査担当者の読み方

創業計画書は、日本政策金融公庫(以下、公庫)が面談の時間を短くするために使う書類で、決算書のない創業者にとっては、事業の中身と数字を伝える中心の資料です。様式は10項目で、公庫のサイトからExcel版とPDF版を入手できます。読み手に伝わる計画書にするには、項目どうしの整合性、数字の根拠、無理なく返済できることの3点を意識します。

創業計画書の役割:面談の土台になる書類

公庫の創業計画書の様式には、面談の時間を短くするための書類であること、提出された書類は返却しないこと、書ける範囲で記入すればよいことが記されています。計画書は面談の前に読まれ、面談はその内容を確かめる場になる、と考えておきましょう。

すでに事業をしている会社なら、決算書で実績を示せます。創業前は決算書がないため、どんな経験を持つ人が、何を、誰に、いくらで売り、どう返済するのかを、計画書と見積書などの資料、そして面談で伝えることになります。公庫の新規開業・スタートアップ支援資金も、適正な事業計画を立て、それをやり遂げる力があると認められる方を対象とし、その確認に創業計画書などを使うとしています。

  • 面談の質問の材料になる:公庫は、面談で資金の使いみちと事業の状況(創業の場合は事業計画)を聞くと案内しています。計画書に書いたことが、そのまま質問の出発点になります。
  • 控えを手元に残す:提出書類は返却されません。提出したものと同じ版を保存し、面談の前に読み返しておきましょう。
  • 空欄にした項目も準備する:書ける範囲でよいとされていますが、空けた欄の内容は面談で確かめられると考え、答えを用意しておきます。
  • 開業後の物差しになる:計画書の売上・経費・利益は、開業後に毎月の実績と比べる目標値になり、資金繰りを判断する材料にもなります。

創業計画書は、これから事業を始める方と、始めて間もない方が使う様式です。すでに事業を続けている方が公庫をはじめて利用する場合は、企業概要書を使います(既存企業の計画)。

公庫の様式:10項目の構成と入手方法

現行の様式は、公庫の書式ダウンロード(国民生活事業)のページに、Excel版とPDF版が掲載されています。インターネット申込みでは、様式をダウンロードして作成し、ほかの必要書類と一緒にアップロードします。10項目の構成は次のとおりです。

項目主に書くこと
1 創業の動機創業を思い立ったきっかけ、この事業を選んだ理由、実現したいこと
2 経営者の略歴等略歴、過去の事業経験(3つから選択)、取得資格、知的財産権等
3 取扱商品・サービス内容と売上シェア、セールスポイント、販売ターゲット・販売戦略、競合・市場など
4 従業員常勤役員の人数(法人のみ)、従業員数(3か月以上継続して雇用する人)、うち家族従業員、うちパート従業員
5 取引先・取引関係等販売先・仕入先・外注先ごとの所在地、シェア、掛取引の割合、回収・支払の条件など
6 関連企業経営者などが経営している関連企業の名称、所在地、業種など
7 お借入の状況事業・住宅・車・教育・カード・その他の区分で、個人の借入も含めて記入
8 必要な資金と調達方法設備資金・運転資金の内訳と、自己資金・親族等からの借入・公庫・他の金融機関などの調達の内訳
9 事業の見通し(月平均)「創業当初」と「1年後又は軌道に乗った後」の売上高・売上原価・経費・利益と、その計算根拠
10 自由記述欄アピールポイント、事業を行ううえでの悩み、ほしいアドバイスなど

公庫の書式ダウンロードページに掲載されている現行様式をもとに要約。細かな欄の名前や配置は、作成するときに最新の様式で確認してください。

  • 業種別の記入例:同じページに9業種の記入例があります(洋風居酒屋、美容業、中古自動車販売業、婦人服・子供服小売業、ソフトウェア開発業、内装工事業、学習塾、歯科診療所、介護サービス)。書き込む細かさの感覚をつかむのに役立ちますが、文章を写すのではなく、自分の事業の事実と数字で書きましょう。このページの業種別の記入例もあわせてご覧ください。
  • ほかの様式:同じページには、月別収支計画書や資金繰り表などの様式もあります。季節で売上が大きく変わる事業は、月別の計画も用意すると説明しやすくなります。
  • 書き方の解説とセルフチェック:公庫は創業計画書の書き方を動画で解説し、提出前の見直しに使える創業計画書セルフチェックも公開しています。

古い様式に注意

インターネット上には、項目の数や順番が現行と違う古い様式も残っています。検索で見つけたファイルではなく、公庫の書式ダウンロードページから最新の様式を入手してください。

審査担当者はどこを読むか:公庫の冊子が示す観点

審査の具体的な基準(点数や比率など)は公表されていません。手がかりになるのは、公庫が創業者向けに出している冊子です。「創業の手引+」(2025年9月)などには、次のような観点が書かれています。

冊子に書かれている観点計画書で意識すること主な項目
事業計画が実現できるか売上・経費の数字に根拠があり、準備が具体的に進んでいること3・5・9
お金をきちんと管理できる人か自己資金をコツコツ貯めてきたこと、個人の借入を正直に書き、無理のない返済になっていること7・8
勤務経験の実績年数だけでなく、役職・担当業務・個人売上など、残した実績を書くこと2
日頃の支払い状況公共料金・家賃・住宅ローンなどを遅れずに払っていること(口座引落しにして通帳に記録を残すと示しやすい)7
無理なく返済できるか利益から借入の返済元金を払い、個人なら生活費も払えること8・9

公庫「創業の手引+」(2025年9月、飲食業版・美容業版)の記載を要約。

これらの観点を計画書に当てはめると、特に意識したいのは次の3点です。文章の上手さよりも、事実と数字が具体的で、互いに矛盾しないことが大切です。

整合性

項目どうしで話と数字がつながっているか。従業員の人数と人件費、見積書と設備資金、借入額と支払利息、取引先の回収条件と運転資金など。

根拠

売上や経費の数字がどこから来たか。前の勤務先での実績、予定地での調査、見込み客の数、取引先の書面など、確かめられる材料があるか。

返済可能性

軌道に乗った後の利益で、返済元金と(個人なら)生活費をまかなえるか。売上が計画を下回っても、すぐに行き詰まらないか。

書き始める前に:おすすめの作成順

様式は1から順に並んでいますが、1から順に書く必要はありません。数字の項目を先に固めると、文章の項目とのずれが起きにくくなります。

  1. 予定地・物件を決め、見積書を取る

    公庫は、創業予定地が決まっていないと立地を踏まえた売上や経費の予測が立たないとして、出店地を決めてから申し込むよう案内しています。内装や設備は見積書を取り、金額を固めます。

  2. 売上を予測する

    客単価・客数・営業日数などの式に、根拠のある数字を入れます(売上予測の根拠の作り方)。

  3. 事業の見通しと資金計画を行き来して固める

    原価と経費を積み上げて事業の見通し(9)を作り、その経費をもとに運転資金を見積もって、必要な資金と調達方法(8)を決めます。借入額が決まったら支払利息と返済元金を見通しに反映し、返済できるかを確かめます(事業の見通し、資金計画)。

  4. 文章の項目を書く

    数字と矛盾しないように、動機・略歴・商品・取引先・従業員・借入の状況・自由記述を書きます(10項目の書き方)。

  5. 見直す

    提出前のセルフチェックとよくある失敗で確認し、できれば第三者にも読んでもらいます。

会計事務所の視点

計画書づくりで手戻りが多いのは、文章を先に書き、あとから数字を合わせる進め方です。先に数字の表(売上・経費・資金計画)を作り、その数字を説明する形で文章を書くと、面談で数字を聞かれても自分の言葉で答えられます。作った表は、開業後に毎月の実績(試算表)と比べる予算としてそのまま使えます。

札幌で計画書の相談ができるところ

  • 札幌商工会議所:公庫の融資申込みに使う創業計画書の作成指導を無料で行っています(中小企業・創業支援課 011-231-1768)。
  • 札幌中小企業支援センター:札幌市の創業・雇用創出支援資金などについて、事業計画書の作成を予約制でサポートしています(011-200-5511)。
  • 公庫の各支店の創業サポートデスク:融資の申込み前から、創業計画書の立て方などの相談に応じています。

窓口の一覧は札幌で融資を相談できる窓口にまとめています。

10項目の書き方:項目ごとの要点と良い例・悪い例

創業計画書の10項目は、何を書くかが様式で決まっています。差がつくのは、それぞれを具体的な事実と数字で書き、項目どうしを矛盾させないことです。ここでは項目ごとに、書く内容、審査で見られる点、良い例と悪い例、チェックポイントを示します。

例文はすべて架空の事例で、業種は項目ごとに変えています。8と9は、事業の見通しと資金計画の数値例と同じラーメン店の事例です。様式の細かな欄の名前や配置は改定されることがあるため、実際に書くときは公庫の書式ダウンロードページで最新の様式を確かめてください。

1 創業の動機:なぜ自分が、なぜ今、この事業をするのか

何を書くか

  • 創業を考えたきっかけ(いつ、どんな経験から)
  • これまでの経験とのつながり(なぜ自分にこの事業ができるのか)
  • 事業で実現したいこと(誰の、どんな困りごとや需要に応えるのか)
  • なぜ今なのか、なぜその場所なのか(準備の経過と立地の理由)

審査で見られる点

動機は計画全体の出発点です。略歴(2)、商品・サービス(3)、立地の説明と一本の線でつながっていると、計画の実現可能性が伝わります。「好きだから」「独立したかったから」だけでは、事業として続けられる理由になりません。準備にかけてきた時間と中身も、計画の確かさを示す材料です。

前の仕事と違う業種で創業する場合は、なぜこの事業を選んだのかと、必要な技術やノウハウをどう身につけてきたか(修業、研修、副業での実績など)を、特に丁寧に書きましょう。長い自分史にする必要はなく、要点を絞って具体的に書くほうが伝わります。

良い例(パン店・架空)

製パン会社とベーカリーで通算14年勤務し、直近5年は店長として仕込みから販売、スタッフ6名の管理までを担当してきました。前の店で道産小麦の食パンを看板商品に育てた経験から、地元の小麦にこだわった店を自分の手で開きたいと考えるようになりました。予定地は住宅地にあり、徒歩圏内に焼きたてのパンを売る店がありません。3年前から開業資金を積み立て、昨年から物件探しと仕入先の選定を進めてきました。

経験と実績、きっかけ、立地の理由、準備の経過がそろっていて、計画の出発点がはっきりしています。

悪い例

昔からパンが好きで、いつか自分の店を持つのが夢でした。会社を辞めることになったので、この機会に開業することにしました。おいしいパンを作れば、お客さまは来てくれると思います。

経験の中身、なぜこの場所なのか、何を準備してきたのかが分かりません。「辞めたから」は動機というより事情で、見通しも希望にとどまっています。

チェック

  • きっかけが、これまでの経験と結びついているか
  • 「誰に、何を」提供したいのかを1文で言えるか
  • 立地とタイミングの理由を書いたか
  • 準備の経過(貯蓄、物件探し、取引先探しなど)が分かるか

2 経営者の略歴等:年数より「何をしてきたか」

何を書くか

略歴
勤務先、部署、役職、担当業務を、年月とともに時系列で書きます。事業に関係する経歴は、担当した仕事の中身と成果まで書きます。
過去の事業経験
「経営したことはない」「経営していて現在も続けている」「経営していたが既にやめている」の3つから選びます。
取得資格
事業に必要な資格と、関連する資格。取得した年月も書き、取得予定なら予定時期を書きます。
知的財産権等
特許や商標などがあれば書きます。出願中のものも説明できるようにしておきます。

審査で見られる点

公庫の冊子「創業の手引+」は、勤務経験について、年数だけでなく役職・担当業務・個人売上などの実績も評価のポイントだとして、具体的に書くよう勧めています。「何年勤めたか」より「どんな立場で、何を任され、どんな成果を出したか」を数字で示しましょう。

現行の新規開業・スタートアップ支援資金の要件に、何年以上の経験といった条件はありません。ただ、事業を任せられる技術やノウハウがあることは、実績で示す必要があります。経験が短い場合は、修業先での担当範囲、研修、資格などで補いましょう。

過去に事業をやめた経験がある場合は、事実どおりに選び、やめた理由と今回に生かす点を説明できるようにします。廃業歴がある方の扱い(再チャレンジ)は新規開業・スタートアップ支援資金の解説をご覧ください。

良い例(和食店・架空)

  • 2013年4月:市内で和食店3店を運営する会社に入社(調理担当)
  • 2018年4月:2号店の副料理長
  • 2021年10月:同店の料理長。仕入先の見直しで原価率を36%から32%に改善
  • 2024年4月:店長を兼務。月商約650万円の店で、スタッフ8名(うちパート5名)の採用・シフト・売上管理を担当
  • 2026年12月:退職予定

過去の事業経験:経営したことはない/取得資格:調理師(2015年取得)、食品衛生責任者

役職の移り変わりと、原価率・月商・人数など任された範囲が数字で分かり、料理だけでなく店の運営を担ってきたことが伝わります。

悪い例

  • 2013年4月〜2026年12月:飲食店勤務

過去の事業経験:(空欄)/取得資格:(空欄)

13年の経験があっても、何を担当し、どんな成果を出したかが分かりません。事業経験や資格の欄を空けると、面談で一から確かめることになります。

チェック

  • 年月が途切れずにつながっているか(空白の期間は理由を説明できるか)
  • 役職・担当業務・成果を数字で書いたか(売上、客数、人数、改善した率など)
  • 事業に必要な資格の取得状況(予定を含む)を書いたか
  • 過去の事業経験の選択が事実どおりか

3 取扱商品・サービス:選ばれる理由を具体的に

何を書くか

  • 内容と売上シェア:主な商品・サービスごとに、中身と価格、売上に占める割合(売上シェア)を書きます。価格は、売上予測の客単価とそろえます。
  • セールスポイント:競合ではなく自分の店・会社が選ばれる理由です。技術、品ぞろえ、価格、立地、営業時間、専門性など。
  • 販売ターゲット・販売戦略:誰に売るのか(年齢層、世帯、法人の業種など)と、どうやって知ってもらい、買ってもらい、また来てもらうのか。
  • 競合・市場など:近くの競合の数・価格帯・特徴、市場の動き、自分の弱みとその対策。

様式には、許認可や海外展開の状況を書く欄もあります。飲食店の営業許可のように許認可が必要な業種は、申込み時の必要書類に許認可証等が含まれます。公庫も、飲食店の保健所の許可や酒類販売の免許などを例に、事前の確認を呼びかけています(公庫 創業に関するよくある質問)。取得の見込み時期を答えられるようにしておきましょう。

審査で見られる点

この項目は、計画の実現可能性を伝える中心です。セールスポイントが「おいしい」「丁寧」のような誰でも書ける言葉だと、売上予測の説得力も弱くなります。競合と比べて何がどう違うのかを、事実で示しましょう。

ターゲットと販売戦略は、売上予測の客数に直結します。「地域の皆さま」のように広すぎる書き方では、何人来るのかの根拠になりません。競合を「なし」とするより、近い商品・サービスも含めて比べたほうが、市場を調べたことが伝わります。季節で客足が変わる業種は、冬期の対策(テイクアウト、配達、冬向けの商品など)も書いておくと、北海道ならではの季節変動への備えが伝わります。

セールスポイントが思い浮かばないときは、次の3つの問いに答えてみてください。

  • 近くの競合にはなく、自分にはあるものは何か
  • 前の職場で、お客さまや取引先から評価されてきたことは何か
  • その強みを、数字や事実(経験、実績、資格、価格、営業時間など)で示せるか

良い例(整体院・架空)

  • 内容:①整体コース(60分5,500円)売上シェア70%、②産後の骨盤ケア(45分4,400円)20%、③ストレッチ用品の販売10%
  • セールスポイント:整形外科クリニックでリハビリ助手として8年勤務した経験を生かし、姿勢の評価から自宅でできる体操の指導までを一人ひとりに行います。平日は20時まで営業し、Webで24時間予約できます。
  • 販売ターゲット・販売戦略:30〜50代のデスクワークの会社員と、産後の女性。開業前からSNSで体操の動画を発信し(フォロワー約800人)、近くの子育て支援施設にチラシを置き、回数券で継続来店を促します。
  • 競合・市場:半径1km以内に整体・マッサージ店が3店。いずれも60分6,000円前後で、平日は19時に閉まります。産後ケアを専門に掲げる店はありません。

価格・シェア・強み・ターゲット・集客方法・競合との違いが具体的で、売上予測の客数と客単価の根拠にもつながります。

悪い例

  • 内容:整体全般
  • セールスポイント:技術には自信があり、丁寧な施術を心がけます。
  • 販売ターゲット・販売戦略:地域の皆さま。口コミで広げます。
  • 競合・市場:競合は多いですが、負けないよう頑張ります。

価格も売上シェアもなく、強みやターゲットが誰にでも当てはまる書き方です。競合との違いが分からないため、客数の見込みの裏付けになりません。

チェック

  • 商品・サービスごとに価格と売上シェアを書いたか(シェアの合計は100%か)
  • セールスポイントを、競合と比べた事実で書いたか
  • ターゲットが具体的で、集客の手段が書いてあるか
  • 近くの競合の数・価格帯・特徴を調べて書いたか
  • 必要な許認可と、取得の見込み時期を確認したか

4 従業員:人数と人件費をそろえる

何を書くか

  • 常勤役員の人数(法人の場合のみ)
  • 従業員数:3か月以上続けて雇う予定の人を数えます。開店直後だけ手伝ってもらう人などは含めません。個人事業の事業主本人も含めません。
  • うち家族従業員:配偶者や親族など、家族で働く人の人数
  • うちパート従業員:パート・アルバイトの人数

審査で見られる点

人数は、事業の見通し(9)の人件費とつながっています。人数と人件費が合っているか、営業時間や席数に対して無理なく店を回せる人数か、採用のめどが立っているかがポイントです。これから採用する場合は、採用の時期と方法(求人媒体、知人の紹介など)も説明できるようにしておきます。家族に給与を払う場合は、その分も人件費に入れます。ただし個人事業で生計を一にする家族に払う給与は、原則として必要経費にならず、青色事業専従者給与の届出などの手続きが必要なので、税務上の扱いは事前に税理士などに確認しましょう。

個人事業の場合、事業主本人の生活費は人件費ではなく、利益の中からまかないます。法人の代表者の役員報酬は人件費に入れます(個人と法人の違い)。

良い例(焼き鳥店・架空)

常勤役員:なし(個人で開業)/従業員数:3人(うち家族従業員1人、うちパート従業員2人)

配偶者が週5日ホールを担当し、月10万円の給与を支払います。パート2名は前職の同僚から内諾を得ており、時給1,100円・1日4時間・月20日で見込んでいます。人件費は月27.6万円(10万円+1,100円×4時間×20日×2名)で、事業の見通しの人件費と一致させています。

人数の内訳と人件費の計算式がそろっていて、9の数字と照らし合わせられます。

悪い例

従業員数:0人

(一方で、事業の見通しでは人件費を月25万円としている)

人件費を見込んでいるのに従業員が0人では、誰に払うのかが分かりません。逆に、人数を書いたのに人件費が少なすぎる場合も、計画の確かさが疑われます。

チェック

  • 3か月以上続けて雇う予定の人だけを数えたか
  • 家族従業員・パート従業員の内訳を書いたか
  • 人数と9の人件費が合っているか(時給・時間・日数で計算できるか)
  • 営業時間・席数に対して無理のない人数か

5 取引先・取引関係等:回収と支払の条件が資金繰りを決める

何を書くか

販売先・仕入先・外注先のそれぞれについて、取引先の名称、所在地(市区町村)、取引全体に占める割合(シェア)、掛取引の割合、回収または支払の条件などを書く形式です。

掛取引
商品やサービスを先に渡し、代金を後で受け取る(または後で支払う)取引です。
回収・支払の条件
「末日締め翌月末入金」のように、いつまでの取引をまとめて、いつ入金・支払するかの約束です。

一般の個人客が相手の商売は、個別の名前ではなく「一般個人」などとまとめ、現金・カード・電子マネーなど支払方法の割合が分かるようにします。カードや電子マネーの売上も、入金まで日数がかかる場合があります。

取引を始めたばかりの仕入先からは、最初のうち現金払いや前払いを求められることもあります。掛取引ができるかどうかは、仕入先の候補と事前に確認しておきましょう。

審査で見られる点

取引先が具体的に決まっているかは、売上の確かさそのものです。公庫の記入例でも、販売先・仕入先との契約書や注文書などで取引関係の裏付けを示すことを勧めています。内諾の段階なら、その経緯を説明できるようにします。

もう一つは資金繰りです。売上の入金が翌月末や翌々月になる一方で、材料費・外注費・給与の支払いが先に来ると、その間のお金を立て替える運転資金が必要になります。回収・支払の条件は、必要な資金(8)の運転資金の根拠です(運転資金の考え方)。また、1社への依存度が高い場合は、その取引が止まったときの影響が大きいため、取引が続く見込みとその理由を説明できるようにしましょう。

良い例(電気工事業・架空)

  • 販売先:A建設株式会社(札幌市西区)シェア60%、掛取引100%、末日締め翌月末回収。前職で5年間担当した元請けで、開業後の発注について内諾あり(取引予定を示す書面を添付)
  • 販売先:B設備株式会社(石狩市)シェア30%、掛取引100%、20日締め翌々月10日回収
  • 販売先:一般個人(修理・小規模な工事)シェア10%、現金・振込
  • 仕入先:C電材株式会社(札幌市東区)シェア100%、掛取引100%、末日締め翌月末支払
  • 外注先:個人の電気工事士1名(札幌市北区)、末日締め翌月15日支払

取引先ごとのシェアと条件が分かります。入金が最も遅い取引で翌々月になることから、運転資金の必要額も説明できます。

悪い例

  • 販売先:元請けの建設会社など
  • 仕入先:ホームセンター、ネット通販
  • 回収・支払の条件:(空欄)

取引先が決まっているのかが分からず、入金の時期も書かれていません。運転資金をいくら用意すべきかの根拠がなくなります。

チェック

  • 販売先を具体的な名称まで書けるか(内諾・契約書・注文書はあるか)
  • 回収・支払の条件(締め日と、入金日・支払日)を書いたか
  • 入金より支払いが先になる期間を、運転資金に反映したか
  • 1社に偏っている場合、その理由と対策を説明できるか

6 関連企業:なければ「なし」、あれば取引まで説明

何を書くか

経営者本人や家族が経営している会社などがあれば、企業名、代表者名、所在地、業種などを書きます。該当がなければ「なし」と書きます。

審査で見られる点

関連企業がある場合は、新しい事業との取引関係(仕入・販売・家賃の支払いなど)とお金のやりとりを説明できるようにしておきます。融資は申し込んだ使いみちに使うことが前提なので、借りたお金が関連企業の資金繰りに回らない計画であることも大切です。取引の条件が相場とかけ離れていないことも、説明の要点になります。

良い例(雑貨店・架空)

株式会社D商事(代表者は父、札幌市南区、不動産賃貸業)。予定店舗の建物を所有しており、月12万円で賃貸借契約を結ぶ予定です(近隣の同じ広さの店舗と同程度の家賃)。それ以外の取引はありません。

関連企業との取引の中身と条件が書かれていて、家賃の支払先がはっきりしています。

悪い例

なし(実際には、父が経営する会社が店舗の建物を所有しており、そこへ家賃を払う予定)

賃貸借契約書や面談で関連企業との取引が分かると、ほかの記載まで疑われかねません。該当するものは書いたうえで説明しましょう。

チェック

  • 自分や家族が経営している会社がないか確認したか
  • 関連企業との取引(家賃・仕入・販売など)の条件を説明できるか

7 お借入の状況:個人の借入も正直に

何を書くか

事業用の借入だけでなく、住宅ローン、車のローン、教育ローン、カードローンなど、個人の借入も書きます。様式の使いみちの区分は、事業・住宅・車・教育・カード・その他です。書くときに迷わないよう、借入ごとに次の情報を整理しておきましょう。

  • 借入先(金融機関名、カード会社名など)
  • 使いみち(上の区分のどれに当たるか)
  • いまの残高
  • 毎月(年間)の返済額

カードのキャッシングやリボ払いの残高も借入です。法人で申し込む場合も、住宅・車・カードといった区分があるとおり、代表者個人の借入を書く前提で準備しておきます。

審査で見られる点

公庫の冊子は、お金をきちんと管理できる人かを審査のポイントに挙げ、公共料金・家賃・住宅ローンなどの支払いが遅れていないかを確認しているとしています。借入があること自体より、遅れずに返済できているか、毎月の返済が家計や事業の見通しに無理を生まないかが大切です。個人の借入の返済は、家計費に含めて手元に残るお金を計算します(収支の数値例)。

公庫の事業資金の申込みには、個人信用情報機関に関する同意事項があります(公庫はCICに加盟し、全国銀行個人信用情報センターと日本信用情報機構が提携機関です)。書かなかった借入があとで分かると、計画書全体の信頼を損ないます。支払いの記録に不安がある方は、申込み前に自分の信用情報を開示して確かめておきましょう(融資を申し込む前の準備)。

良い例(個人で開業・架空)

  • 住宅:E銀行、残高1,850万円、毎月の返済8.2万円
  • 車:F信販、残高96万円、毎月の返済3.2万円
  • カード:なし(利用分は毎月一括払い)

住宅ローンと車のローンの返済は、家計費に含めて事業の見通しを検討しています。

残高と毎月の返済額が分かり、家計への負担まで考えていることが伝わります。

悪い例

なし(実際には、車のローンとカードのキャッシングの残高がある)

申告と実際が食い違うと、借入の額より、正確に申告しなかったことのほうが信頼を損ないます。少額でも書いておきましょう。

チェック

  • 住宅・車・教育・カードなど、個人の借入をすべて書いたか
  • 残高と毎月の返済額を把握しているか
  • 個人の返済額を家計費に含めて、返済計画を確かめたか
  • 延滞や支払いの遅れがないか(あれば事情を説明できるか)

8 必要な資金と調達方法:見積書と合計を一致させる

何を書くか

  • 必要な資金:設備資金(店舗・工場・機械・車両など)と運転資金(商品の仕入、経費の支払いなど)の内訳と金額
  • 調達の方法:自己資金、親・兄弟・知人・友人等からの借入、公庫からの借入、他の金融機関等からの借入の内訳と金額

必要な資金の合計と調達の合計は、必ず同じ金額にします。

審査で見られる点

設備資金は見積書と金額が合っているか(設備資金を申し込む場合、見積書は申込み時の必要書類です)、運転資金は何か月分をどんな考えで見込んだか、自己資金は通帳などで出どころを説明できるか、がポイントです。親族からの借入は、返済の条件(いつから、月いくら)まで決めておきます。書き方の詳細と数値例は必要な資金と調達方法の書き方で解説しています。

良い例(ラーメン店・架空)

  • 設備資金:店舗内外装工事450万円(A工務店の見積書)、厨房機器280万円(B厨房設備の見積書)、券売機・客席の家具・備品70万円(C社ほかの見積書)、保証金90万円(家賃の6か月分)
  • 運転資金:開業前の食材・消耗品の仕入30万円、開店時の広告20万円、人件費・家賃・水道光熱費の約2か月分110万円
  • 必要な資金の合計:1,050万円
  • 調達の方法:自己資金250万円(6年間の積立預金)、父からの借入100万円(借用書あり、月1万円ずつ返済)、公庫からの借入700万円、他の金融機関等からの借入なし
  • 調達の合計:1,050万円

内訳ごとに根拠があり、必要な資金と調達の合計が一致しています。親からの借入も返済の条件まで決まっています。

悪い例

  • 設備資金:内装・設備一式800万円(添付した見積書の合計は740万円)
  • 運転資金:200万円(内訳なし)
  • 調達の方法:自己資金300万円、公庫からの借入650万円

見積書と金額が合わず、運転資金の根拠もありません。必要な資金1,000万円に対して調達は950万円で、50万円が足りないままです。

チェック

  • 設備資金の各項目が、見積書の金額と一致しているか
  • 運転資金の月数と中身を説明できるか
  • 必要な資金の合計と調達の合計が一致しているか
  • 自己資金の出どころを通帳で説明できるか

9 事業の見通し(月平均):計算根拠がいちばん大事

何を書くか

「創業当初」と「1年後又は軌道に乗った後」の2つの時点について、月平均の売上高、売上原価(仕入高)、経費(人件費、家賃、支払利息、その他)、利益を書きます。売上高・売上原価・経費の計算根拠を書く欄もあります。

審査で見られる点

公庫の冊子「創業の手引+」飲食業版は、この欄で確かめる点として、借入を無理なく返せる計画かどうかを挙げています。数字そのものより、どう計算したのかが伝わることが大切です。「軌道に乗った後」がいつ頃か(開業何か月目か)も、根拠と一緒に書いておきましょう。売上の組み立て方は売上予測の根拠の作り方、経費と返済の確かめ方は事業の見通しの作り方で解説しています。

良い例(ラーメン店・架空)

  • 売上高:創業当初は1日50人×平均客単価1,200円×25日=150万円。軌道に乗った後(開業8か月目以降)は1日80人で240万円。客数は前職の店の平日平均と、予定地の通行量の調査から見込んでいます
  • 売上原価:原価率35%(前職での実績と仕入先の見積りから)
  • 人件費:パート2名×時給1,100円×5時間×25日=27.5万円(軌道に乗った後はパート1名を1日4時間で追加し38.5万円)
  • 家賃:15万円(賃貸借の予定条件)
  • 支払利息:借入700万円×年3.8%÷12≒2.2万円

式と数字の出どころが書かれているので、読み手が自分で検算できます。

悪い例

  • 売上高:創業当初200万円、軌道に乗った後200万円(見込み)
  • 経費:50万円
  • 支払利息:(空欄)

計算根拠がなく、創業当初から軌道に乗った後と同じ売上を見込んでいます。経費の内訳も支払利息もないため、返済できるかを確かめられません。

チェック

  • 売上高を「客数×客単価×日数」などの式で示したか
  • 創業当初は軌道に乗った後より控えめにし、軌道に乗る時期も書いたか
  • 人件費・家賃・支払利息が、4・8や契約の条件と一致しているか
  • 利益と減価償却費の合計で、返済元金をまかなえるか

10 自由記述欄:計画を補強する材料と、悩み・課題

何を書くか

アピールポイント、事業を行ううえでの悩み、ほしいアドバイスなどを書く欄です。ほかの欄に書ききれなかった、計画の裏付けになる事実を書くのに向いています。

  • 準備の進み具合(物件の申込み、許認可の申請、予約や受注の見込み、特定創業支援等事業の証明の取得予定など)
  • 季節変動や競合などのリスクと、その対策
  • 開業後の管理の体制(会計ソフトでの記帳、毎月の数字の確認など)
  • 悩みや、相談したいこと

審査で見られる点

悩みやほしいアドバイスを書く欄として用意されているので、課題を書くこと自体を心配する必要はありません。課題には、どう手を打つつもりかを添えましょう。経歴書、物件の資料、取引先の書面、売上の根拠の資料などを補足資料として付け、この欄で「別紙参照」と示す方法もあります。公庫の記入例でも、経歴書などの補足資料を併せて提出することを勧めています。

札幌で創業する方へ

札幌市では、さっぽろ創業支援プラザで1か月以上にわたって4回以上の相談などを受けると、特定創業支援等事業の証明書が発行されます(発行は札幌中小企業支援センター)。この証明書は、公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の特別利率の要件の一つにもなっています。取得済みまたは取得予定なら、その旨と時期を書いておきましょう(特別利率の要件)。

良い例(整体院・架空)

開業前の予約受付を始め、すでに12件の予約をいただいています(予約表を添付)。予定地は冬期に人通りが減ると見込まれるため、12〜2月は回数券の販売とオンラインの体操教室で売上を補う計画です。開業後は会計ソフトで記帳し、毎月、計画と実績を比べます。ほしいアドバイス:開業後の資金繰りの管理方法。

計画の裏付け(予約)、リスクと対策(冬期)、管理の体制、相談したいことが具体的です。

悪い例

精一杯がんばりますので、よろしくお願いします。

意気込みは伝わりますが、計画を補強する情報がありません。せっかくの欄を生かしましょう。

チェック

  • 準備の進み具合を、日付や件数などの事実で書いたか
  • リスクと、その対策を書いたか
  • 補足資料を付ける場合、どの資料かを示したか

仕上げ:項目どうしのつながりを確かめる

10項目は、別々に書くものではありません。次の組み合わせで、数字や話が食い違っていないかを確かめましょう。

この項目の内容照らし合わせる先そろえる点
1 動機・2 略歴3 セールスポイント経験や実績が、強みの裏付けになっているか
3 価格・ターゲット9 売上高の計算根拠客単価と客数の見込みが同じ前提か
4 従業員9 人件費人数・時給・時間から計算した額と一致するか
5 回収・支払の条件8 運転資金入金と支払いのずれの分を用意しているか
7 お借入の状況家計費と返済元金個人の返済を含めても、生活と返済が成り立つか
8 公庫からの借入9 支払利息借入額×年利÷12の概算と合っているか
8 設備資金見積書金額と内容が一致しているか

会計事務所の視点

読み手が迷わない計画書には、共通する書き方があります。

  • 金額には単位(円・万円)と期間(月・年)を必ず付ける
  • 計算根拠は、文章ではなく「単価×数量×日数」のような式で書く
  • 補足資料には番号を振り、計画書の中で「資料2参照」のように示す
  • 数字を直したら、関係するほかの項目も同時に直す

書き終えたら、提出前のセルフチェックと計画書でよくある失敗で全体を見直してください。10項目がどうつながるかは、業種別の記入例で通して確認できます。

売上予測の根拠の作り方

売上予測は、公庫の冊子「創業の手引」が示す「客単価×客数×営業日数」のような式に、自分で集めた根拠のある数字を当てはめて作ります。創業当初は軌道に乗った後より控えめに置き、北海道の冬のような季節変動も織り込みます。式と数字の出どころを計算根拠の欄に書けば、読み手が検算できる予測になります。

売上予測は計画書全体の土台

売上が決まらないと、売上原価も、雇える人数も、必要な運転資金も、返済の計画も決まりません。売上予測は、事業の見通し(9)だけでなく、計画書全体の土台です。

ただし、予測どおりに売上が立つとは限りません。公庫の「2025年度新規開業実態調査」では、開業前に予想した月商に到達していた人は58.7%で、4割は届いていませんでした。根拠のある数字で、控えめに見積もることが大切です。

58.7%予想月商に到達した人の割合公庫「2025年度新規開業実態調査」
10.5%予想月商の50%未満だった人の割合公庫「2025年度新規開業実態調査」
6.4か月黒字化までにかかった期間の平均公庫「創業の手引」(2026年5月版)に掲載

新規開業実態調査は公庫の融資先を対象とした調査で、創業者全体の平均ではありません。予想月商の達成状況は、調査時点(開業から平均15.5か月)のものです。

公庫の「創業の手引」にある5つの計算式

公庫の冊子「創業の手引」(2026年5月版)は、売上予測の計算方法を5つの型で例示しています。自分の事業に近い型を選び、式の要素ごとに数字を入れます。

型計算式向いている業種の例計算例(架空)
サービス業客単価×設備単位数×回転数×営業日数整体院(ベッド数)、美容室(セット面数)、飲食店(席数)など整体院:5,000円×ベッド2台×1日4回転×24日=96万円
小売業1日の来店客数×客単価×営業日数パン店、雑貨店、花店など店頭で売る業種パン店:1日100人×800円×25日=200万円
EC月間集客数×CVR×客単価自社サイトやモールでの通信販売道産の加工食品の通販:月1万人×1.2%×4,000円=48万円
設備直結型生産能力×単価×設備数×営業日数食品製造、印刷、加工など、設備の能力で量が決まる業種菓子製造:1台1日300個×180円×2台×22日=237.6万円
商圏分析型世帯数×1世帯当たり消費額×シェア住宅地で、地域の家庭を相手にする店惣菜店:商圏4,000世帯×月2,000円×8%=64万円

計算式は公庫「創業の手引」(2026年5月版)の例示を要約。計算例の数字はすべて架空です。CVRは、サイトを訪れた人のうち実際に購入する人の割合(購入率)です。

小売業の式の「来店客数」は、実際に買い物をする人の数で考えると、客単価とかみ合います。商圏分析型の世帯数は国や自治体の統計、1世帯当たりの消費額は家計の統計などを使って調べる方法があります。

手引の5つの型のほかに、次のような組み立て方もできます。

  • 受注型(建設・制作など):月の受注件数×平均単価。例:電気工事で月4件×平均45万円=180万円。受注予定の書面や、前職での担当件数を根拠にします。
  • 月額契約型(保守・定期サービスなど):契約数×月額単価+スポットの売上。例:保守契約15社×月3万円+スポット20万円=65万円。契約数がいつまでに何社になるかの見込みも示します。

飲食店は、席数と回転数で考えるサービス業の式のほかに、1日の客数で考える小売業の式でも計算できます。2つの式で計算して大きくずれないかを見ると、数字の確かさを自分で点検できます。

式に入れる数字の根拠を集める

式が同じでも、入れる数字に根拠がなければ説得力はありません。公庫の「創業の手引」は、根拠の例として、前の勤務先での実績、出店予定地での調査、SNSのフォロワー数などの顧客候補の数を挙げています。

根拠の材料集め方計算根拠の書き方の例(架空)
前の勤務先での実績自分が担当した客数、指名数、個人売上、店の客単価など。自分の実績として説明できる範囲で使います前職での指名客は月平均70人、客単価6,800円
予定地での調査平日と休日、時間帯ごとの通行量や、競合店の客の入り・価格帯を実際に数えます平日11時〜14時の店前の通行量を3日間数え、平均1時間150人
見込み客の数SNSのフォロワー、来店を約束してくれた知人や前職のお客さま、予約や事前登録の件数開業案内の事前登録は45人。うち半数の来店を見込む
取引先の書面注文書、発注の内示、業務委託の契約書、取引の内諾を示す書面A社から月2件程度の発注の内示あり(書面を添付)

面談で根拠を聞かれたときに示せるよう、調査のメモや写真、書面は保管しておきましょう。

見込み客の数は割り引いて使う

SNSのフォロワーや事前登録の人数が、そのまま毎月の客数になるわけではありません。何割が実際に来るのか、どのくらいの頻度で来るのかを置き、その理由も書きましょう。前の勤務先のお客さまを見込む場合は、前職との約束(競業の禁止など)に反しないかも確かめておくと安心です。

客単価・客数・営業日数の置き方

どの型の式も、突き詰めると「いくらで・何人(何件)に・何日」売るかの掛け算です。それぞれの数字は、次の点に気をつけて置きます。

客単価
メニューや商品の価格ではなく、1人が1回に払う平均額です。トッピング・サイドメニュー・飲み物、ついで買いの物販なども含めて考えます。昼と夜、平日と休日で大きく違うなら分けて計算し、値引きやクーポンを使う予定なら、その分を差し引きます。
客数・件数
席数×回転数、通行量×入店率、見込み客×来店頻度など、別々の方法で計算して近い数字になるかを確かめます。受注型なら、自分一人で対応できる件数の上限も考えます。
営業日数
定休日を除いた日数です。年末年始や夏季の休業がある月、冬期に大雪などで臨時休業する可能性がある事業は、少なめに置きます。

創業当初と軌道に乗った後を分ける

計画書の事業の見通しは、「創業当初」と「1年後又は軌道に乗った後」の2列です。開業してすぐは知名度がなく、常連客もいないため、創業当初の売上は軌道に乗った後より低く置くのが自然です。

  • 軌道に乗った後の売上を先に決める:席数や設備、人員から見た「無理なく回せる上限」の範囲で、根拠のある数字を置きます。
  • 創業当初はその何割かで置く:たとえば軌道に乗った後の6〜7割から始まると置き、そう考える理由(予約の状況、前職での新店の立ち上がりなど)を書きます。割合に決まりはありません。
  • 軌道に乗る時期を書く:「開業8か月目以降」のように、いつ頃を想定しているかを明らかにします。上で見た黒字化までの平均6.4か月も一つの目安ですが、業種や立地で大きく違います。
  • 立ち上がりを早める取組みも書く:開業前からの告知、予約の受付、前職で縁のあったお客さまへの案内など、創業当初の売上を支える取組みは、立ち上がりの見込みの根拠になります。

実例:ラーメン店の売上予測を組み立てる

収支の見通しと資金計画の数値例と同じ、ラーメン店(札幌市白石区・個人で開業・18席)の架空の事例で、売上予測を組み立ててみます。

  1. 型を選ぶ

    飲食店なので、客数で考える式を中心にし、席数と回転数で無理がないかも確かめます。

  2. 客単価を決める

    昼はラーメンが中心で1,000円、夜はトッピング・サイドメニュー・飲み物が加わって1,400円と、前職の店の実績から置きます。

  3. 軌道に乗った後の客数を決める

    昼40人・夜40人の1日80人。前職の店の平日の客数と、予定地の通行量の調査から見込みます。18席なので、昼と夜でそれぞれ約2.2回転です。

  4. 営業日数を掛ける

    週1日の定休で月25日。(40人×1,000円+40人×1,400円)×25日=240万円で、1日平均の客単価は1,200円です。

  5. 創業当初を置く

    昼夜25人ずつの1日50人で、(25人×1,000円+25人×1,400円)×25日=150万円。軌道に乗った後の約6割で、開業8か月目に軌道に乗る想定です。

計算根拠の欄の書き方(架空)

売上高:昼40人×1,000円+夜40人×1,400円=1日9.6万円、25日営業で240万円(軌道に乗った後。開業8か月目以降)。創業当初は1日50人(昼夜25人ずつ)で150万円。客単価と客数は、前職の店の実績と予定地の通行量の調査による。

下の電卓では、型を選んで数字を入れると、軌道に乗った後と創業当初の月商、計画書に使える計算根拠の文章を作れます。

SALES FORECAST売上予測電卓業種の型を選んで数字を入れると、軌道に乗った後の月商・創業当初の月商・年商と、創業計画書の「計算根拠」に使える文章を作ります。

計算結果がここに表示されます。

公庫の冊子「創業の手引」の売上予測の考え方(客単価×設備単位数×回転数×営業日数など)に沿った概算の電卓です。月商は1円未満を切り捨てています。計画書には、数字の根拠(前職の実績、予定地での調査、見込み客の数など)もあわせて書きましょう。北海道では冬の季節変動も考え、月ごとの売上の波を見込んでおくと安心です。審査での見られ方や資金計画の条件は、金融機関で確認してください。

季節変動を織り込む(北海道の冬)

計画書の数字は月平均ですが、実際の売上は月ごとに上下します。北海道の事業では、次のような季節の影響を考えておく必要があります。

北海道で考えておきたい季節の影響

  • 冬期の積雪で、路面店の客足や、移動を伴うサービスの件数が落ちることがある
  • 観光客の多い時期と少ない時期で、売上の差が大きくなることがある
  • 建設業は、冬期に工事の量が変わることがある
  • 除雪や暖房設備の保守など、冬に仕事が増える業種もある

季節変動がある事業は、月ごとの売上を置いてから年間の合計を12で割り、月平均を出します。

計算例(架空)

通常の月の売上を100万円、冬期の3か月(12〜2月)を通常の8割の80万円と見込む場合、年間は100万円×9か月+80万円×3か月=1,140万円で、月平均は95万円です。通常の月の100万円をそのまま月平均にすると、年間で60万円多く見積もることになります。

月平均では黒字でも、売上の少ない月に資金が足りなくなることがあります。季節変動が大きい事業は、公庫の書式ダウンロードページにある月別収支計画書や資金繰り表で、月ごとのお金の動きも確かめておきましょう。作り方は既存企業の計画で解説しています。冬期の暖房費や除雪費のように季節で増える経費は、経費の積み上げで扱います。

控えめに見積もり、自分で検証する

できあがった売上予測は、次の3つの方法で点検します。

  1. 1日・1時間あたりに直す

    月商を営業日数と営業時間で割り、現実的かを見ます。例:ラーメン店(18席・架空)の月商240万円は、25日営業で1日9.6万円、客単価1,200円なら1日80人、営業10時間なら1時間に8人です。席数と人員でこなせるか、ピーク時に待ちが出すぎないかを考えます。

  2. 同業の水準と比べる

    回転数、客単価、1人あたりの売上などが、同業の水準から大きく外れていないかを確かめます。前の勤務先の実績はよい比較材料です。業種ごとの財務の目安は業種別の財務指標も参考になります。

  3. 売上が下振れしても返済できるか試す

    売上が計画の8割だった場合でも、利益から返済元金と生活費をまかなえるかを確かめます。試し方は収支の数値例で紹介しています。

会計事務所の視点

計画書に書く売上は一つですが、手元では「計画どおり」「控えめ(8割)」「厳しい(6割)」の3つを作っておくことをおすすめします。どこまで売上が下がると返済が苦しくなるかを知っていれば、売上が計画を下回ったときにどう対応するかを、面談でも開業後でも落ち着いて説明できます。

業種ごとの売上根拠の作り方は業種別の創業融資のポイント、売上予測から資金計画までの全体像は業種別の記入例で確認できます。

事業の見通し(月平均)の作り方:経費・利益・返済

事業の見通しは、売上から売上原価と経費を引いた利益で、借入の返済元金と(個人なら)生活費をまかなえるかを示す表です。原価は原価率で置き、経費は契約や見積りをもとに積み上げ、支払利息は借入額×年利÷12で概算します。最後に数値例で、返せる計画かどうかの確かめ方を見ていきます。

基本の式:「利益」と「手元に残るお金」

公庫の「創業の手引」(2026年5月版)は、収支計画の基本として次の2つの式を示しています。

収支の基本式

  • 売上高 − 売上原価 − 経費 = 利益
  • 利益 − 借入金の返済元金 − 家計費(個人の場合)= 手元に残るお金

ポイントは、借入の返済のうち利息は経費、元金は利益から払うという点です。元金の返済は費用ではないため、事業の見通しの経費には入りませんが、実際にはお金が出ていきます。利益が出ていても、返済元金と生活費を払うと手元にお金が残らない、ということが起こり得るのはこのためです。

計画書の様式の表は利益までを書く形なので、2つ目の式は自分で計算して確かめます。公庫の冊子「創業の手引+」飲食業版も、事業の見通しで確かめる点として、借入を無理なく返せる計画かどうかを挙げています。

個人の場合の家計費は、生活に必要な毎月の支出です。住居費、食費、水道光熱費、通信費、保険料、国民健康保険料や国民年金保険料、子どもの教育費、個人の借入の返済(7 お借入の状況)まで含め、家計簿や通帳の引落しの記録から実際の額をつかみます。少なく見積もると、返済できる計画に見えても生活が成り立ちません。

売上原価:原価率で置く

売上原価は、売れた商品や料理の仕入・材料の費用です。売上高に対する割合(原価率)で置くと、売上の見込みが変わっても計算し直しやすくなります。

  • 原価率の根拠:前の勤務先での実績、仕入先の見積り、メニューや商品ごとの原価計算。
  • サービス業の原価:美容室の薬剤や、制作業の外注費など、売上に比例してかかる費用を原価に入れるかどうかを決め、計画書の中で一貫させます。
  • 創業当初の原価率:仕入量が少ないうちは仕入単価が下がりにくく、食材のロスも出やすいため、軌道に乗った後よりやや高めに置く考え方もあります。

開業前の最初の仕入(在庫をそろえる分)は、売上原価ではなく運転資金で手当てします(運転資金の考え方)。

経費:4つの区分で積み上げる

様式の経費は、人件費・家賃・支払利息・その他の4つに分かれています。「一式」でまとめず、契約や見積りの金額をもとに積み上げます。

区分入れるもの根拠の例
人件費従業員・パートの給与、家族従業員の給与、法人の役員報酬。社会保険に加入する人がいれば、会社負担の保険料も見込みます人数×時給×時間×日数、雇用条件の予定
家賃店舗・事務所の賃料、共益費、駐車場代賃貸借契約(予定)の条件
支払利息借入の利息(元金は入れません)借入額×年利÷12の概算
その他水道光熱費、通信費、広告宣伝費、消耗品費、保険料、リース料、車両費・燃料費、除雪費、会計ソフトや専門家への報酬、減価償却費など見積り、料金表、前職の実績

個人事業の場合、事業主本人の生活費は人件費に入れず、利益の中からまかないます。基本式で家計費を利益から差し引くのはこのためです。「その他」は金額が大きくなりやすいので、主な内訳を計算根拠の欄に書いておきましょう。開店時だけかかる広告費や採用費は、毎月の経費ではなく運転資金(開業前の費用)として扱うと、月平均がゆがみません。

見落としやすい経費

  • キャッシュレス決済の手数料(売上に対して一定の率でかかります)
  • 火災保険や賠償責任保険などの保険料
  • 事業で出るごみの処理費、清掃や衛生の費用
  • 設備の修理・メンテナンス費、リース料
  • 車両の保険・車検・冬タイヤなどの費用
  • 会計ソフトの利用料、税理士など専門家への報酬、振込手数料

北海道の冬の経費

北海道では、冬期に暖房の燃料費や電気代が増え、店舗の前や駐車場の除雪費がかかることがあります。運送業のように燃料費の比重が大きい業種は、燃料価格の変動も考えておきましょう。月平均に均して「その他」に入れるだけでなく、冬の月に資金が足りるかを月別の計画で確かめると安心です。

支払利息・返済元金・減価償却費の扱い

支払利息は「借入額×年利÷12」で概算

事業の見通しの支払利息は、借入額×年利÷12で月あたりの概算を出すのが簡単です。例えば700万円を年3.8%で借りると、700万円×3.8%÷12≒2.2万円です。元金を返すにつれて利息は減っていくため、初年度の概算を使えば控えめな見積りになります。

このページの数値例は、年3.8%程度で概算しています。公庫の基準利率は、2026年9月1日現在、無担保で税務申告を2期終えていない方の区分で3.75〜5.35%です。税務申告を2期終えていない方などは、創業支援貸付利率特例により表の利率から原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)引き下げられ、特別利率の対象になる場合もあります。金利は毎月のように改定されるので、実際に適用される利率は申込み時に支店で確認してください(公庫の金利のしくみ)。

返済元金は「借入額÷返済回数」

元金均等返済なら、月々の返済元金は借入額を返済回数で割った額です。700万円を7年(84回)で返すなら、700万円÷84≒8.3万円です。

据置期間(元金を返さず利息だけを払う期間)を設けると、その間は元金の返済がなくなる代わりに、据置後の返済元金は大きくなります。元金が減らない期間が長くなる分、利息の総額も増えます。新規開業・スタートアップ支援資金は、据置期間を5年以内で設けられます。返済方法の違いは返済方法の基本で解説しています。

減価償却費は返済の原資に足し戻す

減価償却費は、内装や設備の購入額を使える年数に分けて、少しずつ費用にしたものです。経費には入りますが、毎月お金が出ていくわけではないので、返済できるかを見るときは利益に足し戻して考えるのが一般的です。事業の見通しの「その他」に含めるかどうかは、計算根拠に書いておくと読み手が迷いません。

数値例:返せる計画かを確かめる

ラーメン店を個人で開業する架空の事例です。必要な資金1,050万円のうち700万円を公庫から借り(返済期間7年・元金均等・据置なし、年3.8%程度で概算)、父から100万円を借りて月1万円ずつ返す計画です。資金計画の内訳は資金計画の数値例、売上の組み立ては売上予測の実例にあります。

数値例 ラーメン店(札幌市白石区・個人で開業・18席)架空の事例です
項目(月平均・万円)創業当初軌道に乗った後計算根拠
売上高150.0240.01日50人(軌道に乗った後は80人)×平均客単価1,200円×25日
売上原価52.584.0原価率35%
人件費27.538.5パート2名×1,100円×5時間×25日。軌道に乗った後は1名(1日4時間)を追加
家賃15.015.0賃貸借の予定条件
支払利息2.22.2700万円×3.8%÷12(初年度の概算のまま)
その他26.030.0水道光熱費14(16)、広告宣伝・通信3(3)、消耗品など3(5)、減価償却費6(6)。かっこ内は軌道に乗った後
利益26.870.3売上高−売上原価−経費
減価償却費の足し戻し6.06.0お金が出ていかない費用
借入金の返済元金9.39.3公庫8.3(700万円÷84回)+父1.0
家計費25.025.0国民健康保険料・国民年金保険料、車のローンの返済などを含む生活費
手元に残るお金−1.542.0利益+減価償却費−返済元金−家計費
ここがポイント返済元金(月9.3万円)は、利益と減価償却費の合計(創業当初32.8万円、軌道に乗った後76.3万円)を下回っていて、事業としては返済できる計画です。ただし創業当初は、家計費まで払うと月1.5万円足りません。軌道に乗る開業8か月目までの7か月分、約10.5万円は、事業に入れる自己資金とは別に生活費の蓄えとして用意しておきます。融資は事業の設備資金・運転資金として借りるものなので、生活費は別に確保しておくのが原則です。

表の「減価償却費の足し戻し」は、公庫の手引の基本式に、お金の出ていかない減価償却費を加えて手元のお金を見たものです。税金は考えていません。

売上が2割下振れしたら

軌道に乗った後の売上が計画の8割(192万円)にとどまった場合を試します。原価率は35%のまま(67.2万円)、ほかの経費は変わらないとすると、利益は39.1万円、手元に残るお金は10.8万円(39.1+6.0−9.3−25.0)です。売上が下振れしてもマイナスにならないことを確かめておくと、計画の強さを説明できます。

このような試算では、費用を2つに分けて考えます。売上に比例して増える変動費(売上原価、決済手数料など)と、売上が減っても変わらない固定費(家賃、人件費の多く、減価償却費など)です。売上が下がっても固定費は減らないため、固定費の大きい事業ほど、売上の下振れが利益に強く響きます。

逆算すると、この経費の構造のままでは、月の売上が約175万円(計画の約73%)を下回ると手元に残るお金がマイナスになります。この水準を知っておけば、開業後に売上が伸び悩んだとき、早めに手を打つ目安になります。

会計事務所の視点

事業の見通しの利益は、税金を引く前の数字です。個人なら所得税や住民税など、法人なら法人税などが、利益に応じて後からかかります。手元に残るお金がぎりぎりの計画は、納税の時期に資金が足りなくなりがちです。軌道に乗った後の手元に残るお金には、税金の分の余裕を持たせておきましょう。

また、減価償却費はお金の出ていかない費用ですが、いずれ設備を買い替えるときのためのお金でもあります。

個人と法人の違い

同じ事業でも、個人で開業するか法人を設立するかで、事業の見通しの書き方が変わります。公庫は、融資を受けるうえで個人と法人のどちらが有利ということはないと説明しています(公庫 創業に関するよくある質問)。形態に合った書き方をすることが大切です。

項目個人事業法人
経営者の収入利益がそのまま事業主の収入になる会社から役員報酬として受け取る
経営者の生活費経費に入れず、利益から家計費として差し引く役員報酬を人件費に入れ、生活費は役員報酬の中でまかなう
手元に残るお金利益+減価償却費−返済元金−家計費利益+減価償却費−返済元金
社会保険料事業主本人の社会保険料(国民健康保険・国民年金など)は家計費で負担役員報酬にも社会保険料がかかり、会社負担分を人件費に見込む

例えば上のラーメン店を法人で始め、代表者が月25万円の役員報酬を受け取る場合、軌道に乗った後の人件費は63.5万円(38.5万円+25万円)、利益は45.3万円になります。家計費の行はなくなり、手元に残るお金は42.0万円(45.3+6.0−9.3)と、個人の場合と同じです(社会保険料や税金の違いは考えていません)。法人の場合は、会社のお金と代表者個人のお金をきちんと分けて管理することも前提になります。

返済の原資の考え方は返済原資の考え方、借入額の決め方は借入額の決め方もあわせてご覧ください。

必要な資金と調達方法の書き方

必要な資金と調達方法の欄は、何にいくら使い、そのお金をどこから用意するかを示す表です。設備資金は見積書と一致させ、運転資金は何か月分をなぜ見込むのかを説明できるようにし、必要な資金の合計と調達の合計を必ず一致させます。

様式では、必要な資金を設備資金と運転資金に分けて内訳を書き、調達の方法を4つの区分で書いて、それぞれの合計を出します。公庫の新規開業・スタートアップ支援資金では、返済期間の上限が設備資金は20年以内、運転資金は10年以内(据置期間はいずれも5年以内)と、使いみちで異なります。設備と運転を正しく分けて書くことは、返済期間を考えるうえでも大切です。

設備資金:見積書と一致させる

設備資金は、店舗や事務所の内外装工事、機械・厨房機器、車両、備品など、事業のために買う設備の代金です。物件の保証金(敷金)も、この欄に含めて整理すると分かりやすくなります。

  • 見積書の金額とそろえる:設備資金を申し込む場合、見積書は申込み時の必要書類です(公庫 ご融資のお手続き(創業予定の方))。計画書の金額と見積書の金額(税込か税抜かも)をそろえ、内訳の行に見積先を書いておくと照合しやすくなります。
  • 複数社の見積りを比べる:公庫の「創業の手引」は、複数社の見積りの比較や、中古品、リース・レンタルの検討で初期投資を抑えることを勧めています。比べた結果を説明できると、金額の妥当性が伝わります。
  • 中古品・リースにする場合:中古品を買う場合も、販売店の見積書を用意します。リースにした設備は設備資金に入れず、毎月のリース料を事業の見通しの経費(その他)に入れます。
  • 変更したら差し替える:見積りのあとで内容を変えた場合は、新しい見積書に差し替え、計画書の金額も直します。融資を受けた後、見積りどおりに支払ったことを説明できるよう、契約書や請求書、領収書も保管しておきましょう。

運転資金:何か月分を、なぜ見込むのか

運転資金は、商品や材料の仕入、人件費・家賃・水道光熱費などの経費を払うためのお金です。事業が回り始めるまでの間、売上の入金より先に出ていくお金をまかないます。公庫の「創業の手引」も、代金が入る時期と仕入れの支払いの時期がずれることを考えに入れるよう求めています。

運転資金の額は、次の3つを足して考えると、根拠を説明しやすくなります。

  1. 開業前にかかる費用

    最初の仕入(在庫をそろえる分)、開店の広告、採用、消耗品など、開業前後に一度だけかかる費用です。

  2. 入金と支払いのずれの分

    掛取引で入金が翌月末や翌々月になる事業は、その間の仕入・外注費・給与を立て替える必要があります。入金が支払いより1か月遅いなら、少なくともその1か月分の支払いに相当する資金が要ります。取引先の回収・支払の条件(5 取引先・取引関係等)から見積もります。

  3. 立ち上がりの備え

    創業当初は売上が計画に届かないこともあります。人件費や家賃など、売上が少なくても出ていく固定的な支払いの数か月分を目安に備えます。

現金で代金を受け取る飲食店や小売店は、入金のずれは小さい一方、立ち上がりの備えが中心になります。建設業や制作業のように掛取引が中心の事業は、入金のずれの分が大きくなりがちです。運転資金を何か月分とするかに決まりはないので、自分の事業の入金と支払いの流れから説明できる額にしましょう。

入金のずれの計算例(架空)

売上の入金が翌月末、材料費・外注費の支払いも翌月末、給与や家賃など月60万円は当月払いという工事業を考えます。最初の入金がある開業2か月目の月末までに、給与や家賃の2か月分、120万円が先に出ていきます。この120万円が、入金のずれに備える運転資金の目安です。入金が翌々月になる取引先があれば、その分だけ必要額は増えます。

冬に売上が落ちる事業や、冬期に工事が減る建設業など、北海道で季節変動の大きい事業は、売上の少ない月の支払いに備える分も運転資金に含めて考えます。月ごとのお金の動きは、月別収支計画書や資金繰り表で確かめられます(既存企業の計画)。

会計事務所の視点

内装や設備にお金をかけすぎると、そのしわ寄せで運転資金が薄くなりがちです。開業後に資金が足りなくなると、追加の借入は創業時より説明が難しくなりがちです。内装や設備のグレードを見直してでも、運転資金は確保しておくほうが安全です。

調達の方法:4つの区分と書き方の注意

調達の区分書き方と注意点
自己資金事業に使える自分のお金です。通帳の履歴で、計画的に貯めてきたことを示せると説得力が増します。一時的に借りたお金を自己資金に見せる「見せ金」は、出どころを説明できず逆効果です(自己資金の考え方)。
親・兄弟・知人・友人等からの借入返す約束のお金はこの区分に書きます。借用書を作り、返済の条件(いつから、月いくら)を決めておき、返済額は事業の見通しの返済元金に含めます。返さなくてよいお金(贈与)は、贈与契約書などで出どころを示せるようにし、贈与税の扱いも確かめておきましょう。
日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入申し込む金額です。必要な資金の合計から、ほかの調達を差し引いた額になっているかを確かめます。
他の金融機関等からの借入札幌市の制度融資など、ほかの金融機関からも借りる場合に書きます。併用する場合は、公庫の面談でもその予定を説明できるようにしておきます(創業融資の3つの選択肢)。

自己資金は、手元の預金を全額つぎ込むのではなく、創業当初の生活費の蓄えを別に残したうえで決めます。収支の数値例では、軌道に乗るまでの7か月で約10.5万円の生活費が不足するため、その分を自己資金とは別に確保しています。

物件の申込金や設備の手付金など、申込み前にすでに支払った費用がある場合は、領収書や振込の記録を残し、計画書でどう扱うかを説明できるようにしておきましょう。

法人の資本金と融資

公庫は事業資金(設備資金・運転資金)の融資機関なので、会社の資本金の払込みに使う資金は融資の対象になりません。法人を設立して創業する場合は、設立登記を済ませた法人が融資の対象です(公庫 創業に関するよくある質問)。資本金として払い込んだ自分のお金を事業に使う場合は、払込みの経緯を通帳などで説明できるようにしておきます。

数値例:必要な資金と調達の方法

収支の見通しの数値例と同じ、ラーメン店を個人で開業する架空の事例です。

数値例 ラーメン店(札幌市白石区・個人で開業・18席)架空の事例です
必要な資金金額(万円)根拠
店舗内外装工事450A工務店の見積書(2社を比較)
厨房機器280B厨房設備の見積書(一部に中古品を含む)
券売機・客席の家具・備品70C社ほかの見積書
保証金90家賃15万円の6か月分(物件の募集条件)
設備資金の計890—
開業前の食材・消耗品の仕入30仕入先の見積り
開店時の広告20チラシ・Web広告の見積り
人件費・家賃・水道光熱費の約2か月分110創業当初の月56.5万円(人件費27.5+家賃15+水道光熱費14)の約2か月分
運転資金の計160—
必要な資金の合計1,050—
調達の方法金額(万円)内容
自己資金250会社員時代の6年間、毎月の給与から積み立てた預金
親・兄弟・知人・友人等からの借入100父から。借用書を作成し、月1万円ずつ返済
日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入700返済期間7年・元金均等・据置なしで試算(年3.8%程度で概算)
他の金融機関等からの借入0なし
調達の合計1,050必要な資金の合計と一致
ここがポイント必要な資金と調達の合計は、どちらも1,050万円で一致しています。自己資金の割合は約23.8%(250万円÷1,050万円)で、公庫の「2025年度新規開業実態調査」で資金調達額に占める自己資金の割合の平均22.9%と同程度です。公庫からの借入700万円は、事業の見通しの支払利息(月2.2万円)と返済元金(月8.3万円)の計算にそのまま使っています。

年3.8%は概算のための仮の値です。公庫の金利は2026年9月1日現在の金利表で区分ごとの幅が示されており、毎月のように改定されます(公庫の金利のしくみ)。

資金計画と事業の見通しをつなげる

必要な資金と調達方法(8)は、事業の見通し(9)とつながっています。どちらかを直したら、もう一方も必ず直しましょう。

合計が合わないときは、差額を借入で埋めて終わりにせず、原因から直します。調達が足りなければ、設備の内容や時期を見直すか、自己資金などの調達を増やせないかを考えます。調達が多すぎるなら、借入額を減らします。借入額を変えたら、支払利息と返済元金も計算し直します。

資金計画の数字影響する見通しの数字数値例での対応
公庫などからの借入額支払利息、返済元金700万円から、利息月2.2万円・元金月8.3万円
親族等からの借入返済元金月1.0万円を返済元金に加える
設備資金(内装・機器など)減価償却費(その他)月6.0万円
保証金と家賃の条件家賃家賃月15万円(保証金はその6か月分)
運転資金の月数人件費・家賃などの固定的な支払い創業当初の月56.5万円の約2か月分

借入額をいくらにするか、借りすぎ・借りなさすぎをどう避けるかは借入額の決め方で、同じ考え方の電卓とあわせて解説しています。記入の全体像は業種別の記入例、提出前の確認は提出前のセルフチェックをご覧ください。

業種別の記入例(架空の事例・4業種)

美容室・カフェ・内装工事業・Web制作の4つの架空の事例で、創業計画書の主な項目を記入してみます。売上は計算式で組み立て、必要な資金と調達方法、事業の見通し、返済の確認までの数字がすべてつながるようにしました。業種ごとの数字の置き方と、項目どうしのつなげ方の参考にしてください。

この章の記入例について

  • すべて架空の事例です。実在の店・会社・人物とは関係がなく、公庫が書式ダウンロードページで公開している業種別の記入例とも別のものです。
  • 数字は説明のために置いた仮の値で、業種の平均や目安ではありません。原価率・人件費・家賃などは、自分の見積りや実績の数字に置き換えてください。

記入例の前提と4つの事例の一覧

4つの記入例は、次の前提で計算しています。事業の見通しと資金計画の数値例と同じ考え方です。

  • 金額:必要な資金と調達方法は万円単位、事業の見通しは月平均の万円で小数第1位まで(四捨五入)示します。
  • 公庫からの借入:元金均等返済・据置期間なしとし、年利は3.8%前後を想定して、支払利息は「借入額×年3.8%÷12」、返済元金は「借入額÷返済回数」で概算しています。
  • 利益と手元に残るお金:利益は様式どおり「売上高−売上原価−経費」で、税金は考えていません。事業の見通しの表の「減価償却費の足し戻し」から下の行は、様式にはない確認用の計算で、「利益+減価償却費−返済元金−家計費(個人の場合)」で返済できるかを確かめます。
  • 様式の項目:各例では、1〜5と7の要点(記入例②は10も)と、8と9の数字を示します。6 関連企業はいずれも「なし」として省略しています。

年3.8%は概算のための仮の値です。公庫の基準利率は、2026年9月1日現在、無担保で税務申告を2期終えていない方の区分で3.75〜5.35%です。税務申告を2期終えていない方などは、創業支援貸付利率特例により表の利率から原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)引き下げられ、特別利率の対象になる場合もあります。金利は毎月のように改定されるので、実際に適用される利率は申込み時に支店で確認してください(公庫の金利のしくみ)。

記入例形態・所在地必要な資金うち自己資金(割合)公庫からの借入(返済期間)売上の組み立て
① 美容室個人・札幌市中央区900万円200万円(22.2%)700万円(7年)セット面の数×回転数×客単価×営業日数
② カフェ個人・札幌市豊平区880万円180万円(20.5%)600万円(7年)席数×回転数×客単価×営業日数+テイクアウト
③ 内装工事業法人・札幌市東区600万円150万円(25.0%)450万円(5年)工事の種類ごとの受注件数×平均単価
④ Web制作法人・札幌市北区350万円100万円(28.6%)250万円(5年)制作の件数×平均単価+保守の契約数×月額

すべて架空の事例です。返済期間は、設備資金と運転資金をまとめて1本で借りる前提の試算です。

記入例① 美容室:前職の実績から客数と客単価を組み立てる

記入例① 美容室(札幌市中央区・個人で開業・セット面3台)架空の事例です
1 創業の動機
美容師として14年勤め、うち5年余りは店長として店を運営してきました。白髪を生かすカラーの提案で40〜50代の指名客を増やした経験から、この年代が落ち着いて通える少人数の店を開きたいと考えました。予定地は地下鉄の駅から徒歩5分のビルの1階で、半径500m以内にこの年代向けを掲げる美容室はありません。3年前から物件探しと設備の比較を進めてきました。
2 経営者の略歴等
市内の美容室2店で計14年勤務。2021年4月から店長(スタッフ7名、店の月商約420万円)。直近1年の個人売上は月平均75万円(指名客100人×客単価7,500円)。資格:美容師免許、管理美容師。過去の事業経験:経営したことはない。
3 取扱商品・サービス
カラー(売上シェア50%)、カット(25%)、パーマ・トリートメント(20%)、店販品(5%)。客単価は7,500円(前職での自分の客の平均)。セールスポイントは、白髪を生かすカラーの提案と、予約から仕上げまで同じ担当者が施術する完全予約制です。販売ターゲットは40〜50代の女性と近隣のオフィスで働く人で、予約サイト、SNS、前職の店と取り決めた範囲での開業のお知らせで集客します。美容所の開設届は、図面の段階で保健所に相談したうえで開業前に提出し、検査を受ける予定です。
4 従業員
創業当初は従業員1人(スタイリスト。前職の後輩で内諾済み)。軌道に乗った後はパート従業員1人(アシスタント・受付)を加えて2人の予定。
5 取引先・取引関係等
販売先:一般個人(現金・カード・電子マネー)。仕入先:美容材料の卸売会社(札幌市中央区)、シェア100%、末日締め翌月末支払。
7 お借入の状況
車のローン 残高48万円(毎月2万円。家計費に含めて計算)。

8 必要な資金と調達方法

必要な資金金額(万円)根拠
店舗内装工事420内装業者の見積書(2社を比較)
セット面・シャンプー台・給湯器などの美容器具230美容機器の販売店の見積書
看板・予約システム・備品46各社の見積書
保証金84家賃14万円の6か月分(物件の募集条件)
設備資金の計780—
開業前の薬剤・材料の仕入16卸売会社の見積り
開店時の広告20チラシ・予約サイトの見積り
人件費・家賃・水道光熱費の2か月分84創業当初の月42万円(人件費22+家賃14+水道光熱費6)×2か月
運転資金の計120—
必要な資金の合計900—
調達の方法金額(万円)内容
自己資金2008年間、毎月の給与から積み立てた預金
親・兄弟・知人・友人等からの借入0なし
日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入700返済期間7年(84回)・元金均等・据置なしで試算
他の金融機関等からの借入0なし
調達の合計900必要な資金の合計と一致

9 事業の見通し(月平均)

項目(万円)創業当初軌道に乗った後計算根拠
売上高91.8135.0セット面3台×1日の回転数(創業当初1.7回転、軌道に乗った後2.5回転)×客単価7,500円×24日。軌道に乗るのは開業7か月目以降の想定
売上原価9.213.5薬剤・材料費。売上の10%(前職の店の実績)
人件費22.034.0スタイリスト1名(給与と事業主負担の保険料など)。軌道に乗った後はパート1名(1,200円×5時間×20日=12万円)を追加
家賃14.014.0賃貸借の予定条件(共益費を含む)
支払利息2.22.2700万円×3.8%÷12
その他19.522.0水道光熱費6.0(7.0)、広告・予約サイト3.0(3.0)、消耗品・リネン1.5(2.5)、決済手数料・通信・雑費2.0(2.5)、減価償却費7.0(7.0)。かっこ内は軌道に乗った後。水道光熱費は冬の給湯・暖房を含む年間の平均
利益24.949.3売上高−売上原価−経費
減価償却費の足し戻し7.07.0お金が出ていかない費用
借入金の返済元金8.38.3700万円÷84回
家計費20.020.0家計簿の実績。国民健康保険料・国民年金保険料、車のローンの返済を含む
手元に残るお金3.628.0利益+減価償却費−返済元金−家計費
ここがポイント
  • 売上の式の客単価と回転数は前職の実績に基づいていて、略歴に書いた個人売上(100人×7,500円=75万円)とも矛盾しません。軌道に乗った後の1日7.5人(3台×2.5回転)は、スタイリスト2人で無理なく施術できる人数です。
  • 創業当初の手元に残るお金は月3.6万円と薄いため、家計費の3か月分60万円を自己資金とは別に残しています。
  • 美容業は生活衛生関係の業種で、公庫の生活衛生貸付では設備資金の申込額が500万円を超えると推せん書が必要です(北海道では北海道生活衛生営業指導センターが推せん事務を受託)。設備資金が780万円のこの例では、使う融資制度とあわせて早めに確認します。

記入例② カフェ:冬の売上減を月平均に織り込む

記入例② カフェ(札幌市豊平区・個人で開業・20席)架空の事例です
1 創業の動機
カフェで11年働き、直近5年は自家焙煎の喫茶店の店長として、焼き菓子のテイクアウトを立ち上げました。ベビーカーでも入りやすく、焼きたての菓子を買える店を住宅地につくりたいと考えました。予定地は子育て世帯の多い住宅地を通る幹線道路沿いの路面店で、駐車場を2台分確保できます。
2 経営者の略歴等
2015年4月:市内のカフェチェーンに入社(2018年から副店長)/2021年4月:自家焙煎の喫茶店(22席、月商約190万円)の店長。焼き菓子のテイクアウトを始め、1日平均25個の販売に育てる/開業の2か月前に退職予定。資格:食品衛生責任者。過去の事業経験:経営したことはない。
3 取扱商品・サービス
ドリンク(売上シェア45%)、フード・スイーツの店内飲食(35%)、焼き菓子・コーヒー豆のテイクアウト(20%)。客単価は店内1,200円、テイクアウト800円。セールスポイントは、道産の小麦とバターを使う焼き菓子を店で毎日焼くことと、駐車場、ベビーカーで通れる広い通路です。半径1km以内のカフェは3店で、駐車場があるのは1店です。開業前からSNSで焼き菓子の試作を発信しています(フォロワー約600人)。飲食店営業の許可は、テイクアウトの焼き菓子に必要な手続きも含めて、図面の段階で保健所に相談済みです。
4 従業員
創業当初は従業員2人(うちパート従業員2人)。軌道に乗った後はパート従業員1人を加えて3人の予定。
5 取引先・取引関係等
販売先:一般個人(現金・カード・電子マネー)。仕入先:コーヒー豆の焙煎業者(札幌市白石区)シェア40%、製菓材料・食材の卸売会社(札幌市豊平区)シェア60%。いずれも末日締め翌月末支払。
7 お借入の状況
なし(カードは毎月の一括払いのみ)。
10 自由記述欄
冬期の対策として、12〜2月は年末の焼き菓子のギフトと、テイクアウトの予約販売に力を入れます。

8 必要な資金と調達方法

必要な資金金額(万円)根拠
店舗内外装工事400内装業者の見積書(2社を比較)
厨房機器・オーブン・エスプレッソマシン210厨房機器の販売店の見積書(一部に中古品)
客席の家具・食器・看板・備品68各社の見積書
保証金78家賃13万円の6か月分
設備資金の計756—
開業前の食材・包材の仕入25仕入先の見積り
開店時の広告15チラシ・Web広告の見積り
人件費・家賃・水道光熱費の2か月分84創業当初の月42万円(人件費24+家賃13+水道光熱費5)×2か月
運転資金の計124—
必要な資金の合計880—
調達の方法金額(万円)内容
自己資金1807年間の積立預金
親・兄弟・知人・友人等からの借入100親から。借用書を作成し、開業から1年は返済を待ってもらい、2年目から月2万円ずつ返済
日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入600返済期間7年(84回)・元金均等・据置なしで試算
他の金融機関等からの借入0なし
調達の合計880必要な資金の合計と一致

9 事業の見通し(月平均)

項目(万円)創業当初軌道に乗った後計算根拠
売上高116.0180.5創業当初:店内20席×1.6回転×1,200円×25日+テイクアウト1日10人×800円×25日(春に開業し、創業当初は冬期にかからない想定)。軌道に乗った後:通常月は店内2.5回転・テイクアウト1日20人で190万円、冬期(12〜2月)は通常月の8割の152万円とし、190万円×9か月+152万円×3か月=2,166万円を12で割った額。軌道に乗るのは開業8か月目以降の想定
売上原価37.157.8原価率32%(メニューごとの原価計算)
人件費24.036.0パート2名(軌道に乗った後は3名)×1,200円×5時間×20日
家賃13.013.0駐車場2台分を含む
支払利息1.91.9600万円×3.8%÷12
その他16.021.0水道光熱費5.0(7.0)、除雪委託0(1.0)、広告・通信2.0(2.0)、消耗品・包材2.5(3.5)、決済手数料・雑費1.5(2.5)、減価償却費5.0(5.0)。かっこ内は軌道に乗った後。軌道に乗った後の水道光熱費は冬期の月10万円・他の月6万円、除雪委託は冬期3か月の月4万円を、それぞれ年間で平均した額
利益24.050.8売上高−売上原価−経費
減価償却費の足し戻し5.05.0お金が出ていかない費用
借入金の返済元金7.19.1公庫7.1(600万円÷84回)。軌道に乗った後は親への返済2.0を加える
家計費18.018.0国民健康保険料・国民年金保険料を含む生活費
手元に残るお金3.928.7利益+減価償却費−返済元金−家計費
ここがポイント
  • 冬期の売上減は、通常の月と冬期の月に分けて年間の合計を出し、12で割って月平均にしています。暖房費と除雪費も年間の平均です。
  • ただし冬期の月だけで計算し直すと、売上が152万円に下がり暖房費と除雪費が増えるため、手元に残るお金は月3.4万円まで減ります。開業後最初の冬に資金が足りるかは、月別の資金繰り表で確かめておきます(季節変動の反映のしかた)。
  • 親への返済(2年目から月2万円)は、控えめに見て、軌道に乗った後の列の返済元金に入れています。
  • カフェも生活衛生関係の業種(飲食店営業・喫茶店営業)なので、推せん書の扱いは記入例①と同じく確認が必要です。

記入例③ 内装工事業:入金までの2か月を運転資金で支える

記入例③ 内装工事業(札幌市東区・勤務経験を生かして独立・法人を設立)架空の事例です
1 創業の動機
内装工事会社で17年働き、直近6年は工事主任として年間約150件の現場を管理してきました。前職では賃貸住宅の原状回復の依頼に施工が追いつかず、断る案件が月に数件ありました。依頼から着工までが早い施工会社をつくれば需要に応えられると考え、前職の会社とも協力関係を保ちながら独立します。会社の設立登記は済ませています。
2 経営者の略歴等
2009年4月:市内の内装工事会社に入社(クロス・床の施工)/2020年4月:工事主任。原状回復を中心に年間約150件、店舗内装を年10件ほど担当/2026年8月:退職し、会社を設立(代表者)。資格:1級内装仕上げ施工技能士、2級建築施工管理技士。過去の事業経験:経営したことはない。
3 取扱商品・サービス
賃貸住宅の原状回復工事(クロス・床の張替えなど。売上シェア約6割)と、店舗・事務所・住宅の内装工事(約4割)。平均単価は原状回復12万円、内装工事60万円(前職での担当工事の実績)。セールスポイントは、依頼から3営業日以内に現地調査と見積りを済ませる早さと、工事主任として身につけた工程管理です。販売ターゲットは賃貸管理会社・リフォーム会社・工務店です。建設業許可は、当面は許可の要らない軽微な工事の範囲で受注する計画で、受注予定の工事がその範囲に収まることを窓口で確認しました。
4 従業員
常勤役員1人(代表者)。従業員2人(うち家族従業員1人):職人1人(前職の後輩で内諾済み)と、事務・経理を週3日担当する配偶者。軌道に乗った後に職人1人を採用し、従業員3人とする予定。
5 取引先・取引関係等
販売先:前職の内装工事会社(札幌市白石区)シェア40%、繁忙期の工事の協力について内諾。賃貸管理会社(札幌市東区)シェア35%、開業後の発注について内諾(取引予定を示す書面あり)。この2社は掛取引100%・末日締め翌月末回収。工務店(江別市)シェア25%、掛取引100%・末日締め翌々月15日回収。仕入先:内装材の問屋(札幌市東区)シェア100%、末日締め翌月末支払。外注先:繁忙期のみ個人の職人(札幌市北区)、末日締め翌月20日支払。
7 お借入の状況
代表者の住宅ローン 残高1,600万円(毎月6.5万円。役員報酬から返済)。会社の借入はなし。

8 必要な資金と調達方法

必要な資金金額(万円)根拠
作業車(中古・1台)185自動車販売店の見積書(新車と比較)
工具・機械115電動工具・クロスの糊付機など。工具店の見積書
事務所兼倉庫の保証金24家賃8万円の3か月分
パソコン・事務機器・会計ソフト36販売店・ソフト会社の見積り
設備資金の計360—
開業時の材料・消耗品40問屋の見積り
人件費・家賃など固定的な支払いの2か月分200創業当初の月100万円(人件費75+家賃8+その他のうち減価償却費を除く17)×2か月。最初の入金が開業2か月目の月末のため
運転資金の計240—
必要な資金の合計600—
調達の方法金額(万円)内容
自己資金150資本金として払い込んだ額。代表者が10年間積み立てた預金から
親・兄弟・知人・友人等からの借入0なし
日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入450返済期間5年(60回)・元金均等・据置なしで試算
他の金融機関等からの借入0なし
調達の合計600必要な資金の合計と一致

9 事業の見通し(月平均)

項目(万円)創業当初軌道に乗った後計算根拠
売上高204.0312.0原状回復(創業当初月12件、軌道に乗った後月16件)×平均12万円+内装工事(月1件、軌道に乗った後月2件)×平均60万円。月16件は年間の見込み件数を12で割った数。軌道に乗るのは職人を1人増やす開業1年後の想定
売上原価81.6124.8材料費と外注費。売上の40%(前職での担当工事の実績)
人件費75.0104.0役員報酬30+職人27+配偶者(事務)8+会社負担の社会保険料など10。軌道に乗った後は職人(25)を加え、会社負担分は14
家賃8.08.0事務所兼倉庫(賃貸借の予定条件)
支払利息1.41.4450万円×3.8%÷12
その他22.025.0車両費(燃料・保険・冬タイヤなど)7.0(9.0)、工具・消耗品3.0(4.0)、通信・事務用品1.5(1.5)、広告1.0(1.0)、保険1.5(1.5)、税理士報酬・雑費3.0(3.0)、減価償却費5.0(5.0)。かっこ内は軌道に乗った後
利益16.048.8売上高−売上原価−経費
減価償却費の足し戻し5.05.0お金が出ていかない費用
借入金の返済元金7.57.5450万円÷60回
手元に残るお金13.546.3利益+減価償却費−返済元金(法人のため家計費の行はなし)
ここがポイント
  • 販売先の回収は早くても翌月末なので、最初の入金は開業2か月目の月末です。それまでに出ていく人件費・家賃など固定的な支払い(月100万円)の2か月分を運転資金にしました。
  • 代表者の生活費は役員報酬でまかなうため家計費の行はなく、会社として利益+減価償却費で返済元金を払えるかを確かめます。
  • 前職の実績では1〜2月に原状回復の依頼が少なく、転居の多い時期に集中したため、月16件は年間の見込み件数(約190件)を12で割って均した数です。受注の少ない月の資金は、月別の資金繰り表で確認します。
  • 最大の販売先でもシェアを40%にとどめていることも、取引が止まったときの備えとして説明できます。

記入例④ Web制作:保守の月額契約を積み上げる

記入例④ Web制作(札幌市北区・法人を設立・受託制作と保守の月額契約)架空の事例です
1 創業の動機
Web制作会社で12年働き、ディレクターとして道内の中小企業のサイトを年間約30件手がけてきました。前職では公開後の更新や集客の相談に十分応えられず、他社に移る顧客もいました。制作から公開後の運用までを同じ担当者が支える会社をつくりたいと考え、独立します。会社(合同会社)の設立登記は済ませています。
2 経営者の略歴等
2014年4月:市内のWeb制作会社に入社(コーディング担当)/2019年4月:ディレクター。道内の中小企業のサイト制作を年間約30件、保守契約の顧客約40社の窓口を担当/2026年7月:退職し、会社を設立(代表者)。資格:2級ウェブデザイン技能士。過去の事業経験:経営したことはない。
3 取扱商品・サービス
Webサイトの制作・リニューアル(売上シェア約7割、平均単価50万円)と、保守・運用の月額契約(約3割、月2.5万円。更新作業、サーバー管理、アクセス状況の月次報告)。セールスポイントは、制作した担当者がそのまま保守を受け持ち、月次報告に改善の提案を付けることです。販売ターゲットは道内の従業員50人以下の会社で、商工会議所の交流会や紹介、自社サイトの制作事例で集客します。前職の顧客には営業しないことを前職と取り決めています。仕事は受託の契約で受け、派遣に当たる働き方はとりません。
4 従業員
常勤役員1人(代表者)。従業員1人(うちパート従業員1人:在宅で働くデザイナー、週3日)。軌道に乗った後に正社員のエンジニア1人を採用し、従業員2人とする予定。
5 取引先・取引関係等
販売先:道内の中小企業(複数。1社のシェアは2割以下にとどめる方針)。制作は検収後に請求して末日締め翌月末入金、保守も末日締め翌月末入金。開業前に、前職と取引のない6社から保守契約の内諾を得ています。外注先:フリーランスのデザイナー・エンジニア(札幌市内)、検収後の末日締め翌月末支払。仕入先:サーバー会社(月額、カード払い)。
7 お借入の状況
なし。

8 必要な資金と調達方法

必要な資金金額(万円)根拠
パソコン・モニター・撮影機材・ソフトウェア95販売店の見積書
事務所の内装工事・家具37内装業者・家具店の見積書
保証金18家賃6万円の3か月分
設備資金の計150—
開業時の広告20自社サイトの制作事例ページ、交流会の参加費など
人件費・家賃など固定的な支払いの3か月分180創業当初の月60万円(人件費44+家賃6+その他のうち減価償却費を除く10)×3か月。最初の入金が開業3か月目のため
運転資金の計200—
必要な資金の合計350—
調達の方法金額(万円)内容
自己資金100資本金として払い込んだ額。8年間の積立預金から
親・兄弟・知人・友人等からの借入0なし
日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入250返済期間5年(60回)・元金均等・据置なしで試算
他の金融機関等からの借入0なし
調達の合計350必要な資金の合計と一致

9 事業の見通し(月平均)

項目(万円)創業当初軌道に乗った後計算根拠
売上高115.0180.0制作(創業当初月2件、軌道に乗った後月2.5件)×平均50万円+保守(6社、軌道に乗った後22社)×月2.5万円。保守は、制作したサイトの7割が契約に移るという前職の実績から見込み、控えめに22社とした。軌道に乗るのは、保守の契約が積み上がり正社員を採用する開業1年後の想定
売上原価33.048.5外注費(制作売上の30%)+サーバー費など(保守1社あたり月0.5万円)
人件費44.074.0役員報酬30+パート(1,500円×5時間×12日=9)+会社負担の社会保険料など5。軌道に乗った後は正社員(26)を加え、会社負担分は9
家賃6.06.0事務所(賃貸借の予定条件)
支払利息0.80.8250万円×3.8%÷12
その他12.014.0通信・ソフトウェア利用料3.0(4.0)、広告・営業2.0(2.0)、光熱費1.0(1.0)、旅費交通費1.0(1.5)、税理士報酬・保険・雑費3.0(3.5)、減価償却費2.0(2.0)。かっこ内は軌道に乗った後
利益19.236.7売上高−売上原価−経費
減価償却費の足し戻し2.02.0お金が出ていかない費用
借入金の返済元金4.24.2250万円÷60回
手元に残るお金17.034.5利益+減価償却費−返済元金(法人のため家計費の行はなし)
ここがポイント
  • 制作代金は検収後の翌月末入金で、制作に1〜2か月かかるため、最初の入金は開業3か月目の見込みです。そこで固定的な支払い(月60万円)の3か月分を運転資金にしました。着手金を受け取る契約にすれば、運転資金の必要額を減らせます。
  • 保守の月額は毎月入る安定した収入で、軌道に乗った後は保守の売上55万円で固定的な支払い(月92万円)の約6割をまかなえます。
  • 1社に頼らない方針や、前職の顧客に営業しない取り決めも、計画の確かさを伝える材料です。

4つの記入例に共通するポイント

業種は違っても、数字の組み立て方には共通の型があります。

観点記入例での書き方詳しい解説
売上の根拠客単価・回転数・件数・契約数など、式の要素ごとに前職の実績や取引先の内諾で裏付ける売上予測の根拠
創業当初と軌道に乗った後創業当初の売上は、4つとも軌道に乗った後の約6〜7割に置き、軌道に乗る時期を計算根拠に書く立ち上がりの置き方
運転資金現金で受け取る店は固定的な支払いの2か月分、掛取引の事業は最初の入金までの月数分を見込む運転資金の考え方
返済の確認返済元金が利益+減価償却費を下回り、個人は家計費を払っても手元にお金が残るかを両方の列で確かめる収支の数値例
北海道の季節冬期の売上減や暖房・除雪の費用は年間で平均して月平均に入れ、冬の月は資金繰り表で別に確かめる季節変動の反映
自己資金4つの例の自己資金の割合は20.5〜28.6%。公庫の調査では、資金調達額に占める自己資金の割合は平均22.9%自己資金の考え方

自己資金の割合の平均は、公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(公庫の融資先が対象)によります。

自分の計画書を5つの式で検算する

記入例の数字は、次の5つの式で検算してあります。自分の計画書も、提出前に同じ式で確かめてください。下の表は記入例①の創業当初の数字です。

確かめること式記入例①(創業当初)
資金計画の合計必要な資金の合計=調達の合計900=900
利益売上高−売上原価−経費=利益91.8−9.2−57.7=24.9(経費は22.0+14.0+2.2+19.5=57.7)
支払利息借入額×年利÷12700万円×3.8%÷12≒2.2
返済の原資返済元金<利益+減価償却費8.3<31.9
手元に残るお金利益+減価償却費−返済元金−家計費(個人の場合)24.9+7.0−8.3−20.0=3.6

会計事務所の視点

記入例の原価率や人件費を、自分の計画にそのまま当てはめるのは避けましょう。数字は、見積書、前職の実績、予定地での調査から自分で置くものです。表計算ソフトで「借入額→支払利息・返済元金→手元に残るお金」の式をつないでおくと、借入額や売上を1か所直すだけで、関係する数字がすべて連動して直ります。数字を直したら、上の5つの式で検算し直してください。

提出前の見直しは提出前のセルフチェックと計画書でよくある失敗で、業種ごとの許認可や審査で見られやすい点は業種別の創業融資のポイントで確認できます。

すでに事業をしている方:企業概要書・事業計画・資金繰り表

すでに事業をしている方がはじめて公庫を利用するときは、創業計画書ではなく企業概要書を出すのが基本です。追加の融資や設備投資では、決算書が示す実績に加えて、借入で何が変わり、どこから返すのかを事業計画と資金繰り表で示します。北海道で季節の波が大きい事業は、冬の月のお金の動きを資金繰り表で見せることが説明の要になります。

どの書類を使うか

公庫の案内では、国民生活事業をはじめて利用する方は、創業計画書か企業概要書のどちらかを出します。事業を始める前、または始めて間もない方は創業計画書、それ以外の方は企業概要書です。どちらに当たるか迷うときは、申込みの前に支店で確認しましょう。

書類主な中身使う場面
創業計画書動機・略歴、商品、資金計画、事業の見通し(月平均)など10項目事業を始める前、または始めて間もない方
企業概要書沿革・略歴、従業員、借入、商品、取引先などの6項目と、季節変動・設備などの欄すでに事業をしていて、はじめて公庫を利用する方
確定申告書・決算書これまでの実績。個人は確定申告書、法人は確定申告書・決算書の、いずれも直近2期分既存事業者の申込みの基本の書類
試算表決算後の最近の実績法人で決算から6か月以上たっている場合など
事業計画・資金繰り表借入後の見通しと、月ごとのお金の動き設備投資や追加の運転資金の説明、返済の相談など

必要書類は公庫 ご融資のお手続きをもとに要約。事業計画・資金繰り表は、状況に応じて説明に使う資料です。書類の一覧は公庫の必要書類チェックリストにまとめています。

企業概要書の書き方:決算書の数字に「理由」を添える

企業概要書は、決算書だけでは分からない事業の中身を伝える書類です。番号の付いた6項目と、番号のない欄でできています。決算書・申告書の数字と食い違わないように書くのが大前提です。

項目書くこと書き方のコツ
1 企業の沿革・経営者の略歴等創業からの主な出来事と経営者の経歴売上や取引先が大きく変わった年と理由を書くと、決算書の数字の動きが伝わる
2 従業員役員・従業員の人数など人数の増減を、決算書の人件費の推移と合わせる
3 関連企業経営者などが経営する会社取引やお金のやりとりがあれば、その中身も説明できるようにする
4 お借入の状況借入先ごとの残高と返済額。法人の場合は代表者の借入住宅・車・カードなど個人の借入も漏れなく書く。個人事業の事業用の借入は決算書の残高と合わせる
5 取扱商品・サービス等主な商品・サービス、売上シェア、強みどの商品が利益を生んでいるか、競合と比べた強みは何かを書く
6 取引先・取引関係等販売先・仕入先と、回収・支払の条件回収が延びたなど条件が変わった取引があれば、その影響も書く

番号のない欄には、売上の季節変動、客単価・営業日数・定休日・営業時間(飲食・小売など)、受注単価(建設・製造など)、主な設備、許認可等、知的財産権等、海外展開状況、競合・市場など、悩みや苦労している点・ほしいアドバイス、経理担当者、後継(予定)者などがあります。公庫の書式ダウンロードページには、企業概要書の記入例(各種食料品小売業、化粧品製造業、一般貨物自動車運送業の3業種)もあります。

企業概要書で伝えたいこと

  • 売上や利益が大きく動いた期の理由と、いま打っている手
  • 赤字の期があれば、一時的な要因か、どう改善しているか
  • 今回の借入で何を行い、事業がどう変わるのか
  • 季節で売上や資金が動く事業は、多い月・少ない月とその理由

良い例(売上の季節変動の欄・架空)

12〜2月は積雪で来店客が減り、売上が1年で最も少なくなります(過去3期の月別の売上を別紙で添付)。同じ時期に暖房費と駐車場の除雪費が増えるため、秋までに冬の3か月分の固定費を手元に残すようにしています。

少ない月、その理由、費用の増え方、備え方が分かり、数字は自社の実績の資料で裏付けています。

悪い例

冬は売上が少し落ちます。

どの月に、どのくらい、なぜ落ちるのかが分からず、資金繰りへの影響を読み取れません。

追加融資・設備投資の事業計画:投資の効果と返済の原資

追加の融資や設備投資の申込みでは、「何のために、いくら、いつ必要か」と「借りた後の利益でどう返すか」を示します。公庫の書式ページには、設備投資計画書や月別収支計画書の様式もあります。

  1. 使いみちと金額を固める

    設備は見積書で、運転資金は増える仕入や入金のずれなど、金額の根拠を示します。

  2. 投資の効果を数字にする

    増える売上(客数、受注件数、生産量など)と増える費用(人件費、燃料費、リース料、減価償却費など)を式で示します。出発点は、決算書・試算表の実績です。

  3. 返済の原資と比べる

    返済の原資は、一般に「税引後利益+減価償却費」で考えます。すでにある借入の返済と新しい借入の返済を合わせた年間の返済額が、この範囲に収まるかを確かめます。

  4. 返済期間を使いみちに合わせる

    設備資金は設備を使う期間、運転資金は資金が回収されるまでの期間が目安です。使いみちに比べて返済期間が短すぎると、毎月の返済が資金繰りを圧迫します。

返済の原資の確かめ方(架空の例)

税引後利益が年300万円、減価償却費が年200万円なら、返済の原資は年500万円です。すでにある借入の返済が年240万円で、新しく1,000万円を7年(84回)で借りると、返済元金は年約143万円増えます。合わせて年約383万円で、返済の原資の範囲に収まり、約117万円の余裕があります。この余裕が、売上が計画を下回ったときの備えになります。

金融機関が事業計画で見るポイント

  • 計画の出発点が、決算書・試算表の実績とつながっているか
  • 売上の伸びに、受注・契約・客数の実績などの根拠があるか
  • すでにある借入の返済を含めても、返済できるか
  • 計画を下回った場合の手当てを考えているか(控えめな場合の試算)
  • 決算書・試算表・企業概要書の数字が互いに一致しているか

返済の原資の考え方は返済原資の考え方、決算書の見られ方は銀行は決算書のどこを見るかで解説しています。

月別収支計画書と資金繰り表の作り方

利益が出ていても、売上の入金が遅れたり、借入の返済や設備の支払いが重なったりすると、手元のお金が足りなくなることがあります。この「利益とお金のずれ」を月ごとに見るのが、月別収支計画書と資金繰り表です。

月別収支計画書

売上高・売上原価・経費・利益を月ごとに並べます。売上は発生した月に入れるため、季節によって利益がどう動くかが分かります。返済元金や設備の購入代金は出てきません。

資金繰り表

月初の現預金に、その月の入金を足し、出金を引いて、月末の現預金を出します。お金が足りなくなる月と金額が分かります。減価償却費は、お金が出ていかないので出てきません。

資金繰り表の区分入れるもの数字の出どころ
前月からの繰越月初の現預金通帳、試算表の現預金
営業の収入現金売上、売掛金の回収売上の見込みと回収の条件(締め日・入金日)
営業の支出仕入・外注費の支払い、人件費、家賃、その他の経費、支払利息仕入の見込みと支払の条件、給与の支払日、契約書
設備などの支出設備の購入代金、保証金見積書、契約書
借入と返済借入金の入金、返済元金借入の予定、返済予定表
翌月への繰越月末の現預金(繰越+収入−支出)—

基本の形を示したもので、区分の名前や並びは様式によって違います。公庫の書式ページの資金繰り表を使う場合は、その様式の行に合わせて入れてください。

資金繰り表は、少なくとも半年から1年先まで作り、毎月、実績の数字に置き換えていくと、先の不足に早く気づけます。金融機関は、次のような点を見ています。

  • 月末の残高がいちばん少なくなる月と、その金額
  • 返済元金を払った後も、残高がマイナスにならないか
  • 入金と支払いの条件が、取引先との実際の条件と合っているか
  • 借入金が入る時期が、大きな支払いに間に合うか
  • 過ぎた月の数字が、試算表の実績と一致しているか

公庫は、返済が難しくなって返済条件を相談するときにも、税務申告書・決算書、資金繰り表、経営改善計画書などを求めることがあるとしています。日ごろから資金繰り表を作っておけば、いざというときにすぐ出せます。

北海道の季節変動を資金繰り表に反映する

冬期に売上が落ちる、暖房や除雪の費用がかさむ、観光のシーズンで売上の差が大きい、冬期に工事の量が変わるなど、北海道では季節で資金繰りが大きく動く事業があります。こうした波は、月平均の数字には表れません。一般的な割合を当てはめるのではなく、自社の実績の数字から月ごとに置くのが基本です。

  1. 月ごとの売上の実績を並べる

    試算表や会計ソフトの月次の推移から、過去2〜3年分の月別の売上を並べ、年間の売上に占める各月の割合を自社の実績で出します。大雪の年やイベントの有無など、年によって数字がぶれた理由もメモしておきます。

  2. 来期の月別の売上を置く

    来期の年間の売上の見込みに、月ごとの割合を掛けて月別の売上を出します。新しい取引や値上げなど、実績にない変化は別に足し引きします。

  3. 冬に増える費用を、払う月に入れる

    暖房の燃料費や電気代は前年の同じ月の請求書・検針票、除雪・排雪は業者との契約書、冬タイヤや車両の燃料費は前年の支払いの記録をもとに、実際に払う月に入れます。シーズン分を一括で払う契約なら、その月にまとめて入れます。

  4. 入金を回収の条件に合わせてずらす

    掛取引の事業では、冬に落ちた売上は翌月や翌々月の入金の減少として表れます。売上の月ではなく入金の月に入れると、お金が底をつく月が正しく見えます。

  5. いちばん苦しい月から借り方と返し方を考える

    月末の残高がいちばん少なくなる月と金額が分かれば、季節の不足分をいつまでに、いくら用意すればよいかを説明できます。

業種資金繰り表で特に確かめたいこと
飲食・小売・サービス大雪や冷え込みで客足が落ちる月の売上と、暖房費・駐車場の除雪費が重なる月の残高
観光・宿泊繁忙期と閑散期の売上の差。閑散期の固定費と返済を、繁忙期の入金でまかなえるか
建設冬期の工事の量の変化と、請求から入金までのずれ。春からの工事に向けた材料費・人件費の先払い
運送冬道での運行にかかる時間の増加と、燃料費・冬タイヤ・除雪の費用
除雪など冬が繁忙期の事業冬の入金で夏の固定費と返済をまかなえるか。冬の前に払う車両・機械の準備費用

季節の波に合わせた借り方・返し方

  • 公庫は返済方法として、元金均等・元利均等・ステップ返済に加えて季節変動返済も案内しています(公庫 はじめての方へ)。使えるかどうかは、資金繰り表を持って取扱支店に相談しましょう(公庫の返済)。
  • 札幌市の制度融資には、1年以内の運転資金向けの「短期サポート特別枠」(限度額5,000万円)があります。上限利率は令和8年9月30日までの実行分が年2.30%以内、10月1日以降の実行分が年2.6%以内です(札幌市中小企業融資制度)。
  • 企業概要書の「売上の季節変動」の欄には多い月・少ない月とその理由を書き、資金繰り表とあわせて説明すると伝わりやすくなります。

会計事務所の視点

毎月の試算表を翌月の早い時期に作る習慣があると、資金繰り表の実績の列をすぐに埋められ、計画とのずれに早く気づけます。計画と実績を並べた資料をそのまま金融機関に見せられることは、次の融資の相談でも信頼につながります。資金が足りなくなる月が見えたら、足りなくなってからではなく、その数か月前に取引金融機関へ相談しましょう(条件変更の進め方)。毎月の資金繰りの管理の進め方は、資金繰りの管理のページも参考にしてください。

提出前のセルフチェック(40項目)

書き終えた創業計画書は、提出する前に40項目で見直しましょう。項目は、全体、動機・経歴、商品・市場、取引先・従業員、資金計画、収支計画、添付資料の7つに分けています。チェックが付かない項目は、関連する章に戻って直してください。

見直しは3回に分けると漏れが減る

  1. 1回目:自分で読み通す

    下のチェックリストで、書き漏れや説明の足りない所を洗い出します。

  2. 2回目:数字だけを検算する

    電卓や表計算ソフトで、合計・利益・支払利息・返済元金・手元に残るお金を計算し直します。検算の式は記入例の章にまとめています。

  3. 3回目:第三者に読んでもらう

    事業を知らない人が読んで、誰に、何を、いくらで売り、どう返すのかが伝わるかを確かめます。質問されたところは、面談でも聞かれると考えて書き足します。

40項目のチェックリスト

当てはまる項目にチェックを入れてください。チェックの状態は、このブラウザに保存されます。

全体

動機・経歴

商品・市場

取引先・従業員

資金計画

収支計画

添付資料

会計事務所の視点:まず確かめたい5項目

時間がないときは、項目どうしで数字が合っているかを先に確かめてください。ここがずれていると、ほかの記載まで信頼されにくくなります。

  • 必要な資金の合計と調達の合計が一致している
  • 従業員の人数と人件費が一致している
  • 商品の価格と売上予測の客単価が一致している
  • 借入額と支払利息・返済元金が合っている
  • 返済元金を利益+減価償却費でまかなえる

チェックが付かなかった項目の直し方

チェックが付かない項目は、面談で確かめられやすい所でもあります。よくある原因と、見直す章は次のとおりです。

グループよくある原因見直す章
全体古い様式を使っている、単位が抜けている、計算根拠が文章だけ計画書の役割、項目どうしのつながり
動機・経歴経験と事業のつながりや、実績の数字が書けていない1 創業の動機、2 経営者の略歴等
商品・市場競合を調べていない、価格と客単価がずれている3 取扱商品・サービス、売上予測の根拠
取引先・従業員取引の条件を確かめていない、人数と人件費が合っていない4 従業員、5 取引先・取引関係等
資金計画見積書と金額が違う、運転資金の月数に理由がない必要な資金と調達方法の書き方
収支計画売上の式がない、返済元金と家計費まで確かめていない事業の見通しの作り方、業種別の記入例
添付資料根拠の資料を集めていない、見積書がそろっていない公庫の必要書類、創業融資の必要書類と準備物

公庫の「創業計画書セルフチェック」もあわせて

公庫も、申込み前の見直しに使える創業計画書セルフチェックをサイトで公開しています。この章の40項目とあわせて使うと、公庫の視点での見落としも確かめられます。公庫は支店の予約相談で計画書の見直しの相談にも応じており、札幌では札幌商工会議所も公庫の融資申込みに使う創業計画書の作成指導を無料で行っています(札幌の相談窓口)。

提出した後、面談の前にしておくこと

公庫は、面談で資金の使いみちと事業計画を聞くと案内しています(公庫 ご融資のお手続き(創業予定の方))。計画書は面談の土台になるので、提出した後も次の準備をしておきましょう。

  • 提出した計画書の控えを読み返し、数字の出どころを自分の言葉で説明できるようにする
  • 見積書、物件の資料、売上の根拠の資料、通帳など、計画書の裏付けになる資料をまとめておく
  • 提出後に変わったこと(見積りの金額、物件の条件、開業の時期など)があれば、面談で伝えられるよう整理する
  • 空欄にした欄や、書ききれなかった内容について、答えを用意しておく

面談で聞かれやすい質問と答え方は面談対策に、よくある書き方の失敗と直し方は次の計画書でよくある失敗10にまとめています。

計画書でよくある失敗10

計画書でつまずく原因の多くは、文章の上手さではなく、根拠のない数字と、項目どうしの食い違いです。よくある10の失敗について、なぜだめなのかと直し方をまとめました。自分の計画書に当てはまるものがないか、提出前に確かめてください。

  1. 売上の根拠がない
  2. 立ち上がりが楽観的すぎる
  3. 返済元金が利益を上回る
  4. 家計費を考えていない
  5. 見積書と金額が違う
  6. 運転資金がゼロ
  7. 個人の借入を書かない
  8. 許認可の確認が漏れている
  9. 競合を書かない
  10. 数字が項目の間で合わない

失敗1 売上の根拠がない

よくある書き方:「月商200万円(見込み)」とだけ書き、どう計算したかがない。

なぜだめか

売上は、原価・人件費・運転資金・返済の計画すべての出発点です。根拠がないと、計画全体の確かさを判断できません。公庫の冊子も、前職の実績や予定地での調査などを根拠の例に挙げています。

直し方

「客単価×客数×営業日数」などの式に分け、式の数字ごとに出どころ(前職の実績、通行量の調査、予約・受注の書面)を書きます(売上予測の根拠の作り方)。

直した例(架空):売上高=1日の客数60人(前職の店の平日の平均)×客単価1,100円×25日=165万円

失敗2 立ち上がりが楽観的すぎる

よくある書き方:創業当初から、軌道に乗った後と同じ売上を置いている。

なぜだめか

開業直後は知名度も常連客もなく、予想どおりに売上が立つとは限りません。公庫の「2025年度新規開業実態調査」では、予想月商に到達していた人は58.7%でした。立ち上がりを高く置くと、運転資金も生活費の備えも足りなくなります。

直し方

創業当初は軌道に乗った後より控えめに置き、軌道に乗る時期と、立ち上がりを支える取組み(開業前の告知、予約の受付など)を書きます。業種別の記入例では、軌道に乗った後の約6〜7割に置いています。

直した例(架空):創業当初は1日40人(軌道に乗った後の3分の2)で110万円。開業前の予約と告知を続け、開業8か月目に1日60人を見込む

失敗3 返済元金が利益を上回る

よくある書き方:支払利息を経費に入れただけで安心し、利益と減価償却費の合計が月6万円なのに、返済元金が月8.3万円(700万円÷84回)になっている。

なぜだめか

返済元金は経費ではなく、利益(と減価償却費)から払うお金です。利益+減価償却費が返済元金を下回ると、手元のお金を取り崩して返済することになり、いずれ資金が尽きます。

直し方

返済元金<利益+減価償却費になっているかを、創業当初と軌道に乗った後の両方で確かめます。足りなければ、借入額を減らす、使いみちに合う範囲で返済期間を延ばす、費用を見直すなど、計画そのものを直します(支払利息・返済元金の扱い)。

直した例(架空):設備の一部を中古にして借入を500万円に減らし、返済期間を10年(120回)にすると、返済元金は月約4.2万円で、利益+減価償却費の月6万円を下回る。個人の場合は、さらに家計費まで払えるかを確かめる

失敗4 家計費を考えていない

よくある書き方:個人で開業するのに、利益から返済元金を引いたところで確認を終えている。

なぜだめか

個人事業では、事業主の生活費は経費ではなく利益から払います。公庫の「創業の手引」(2026年5月版)の基本式も、利益から返済元金と家計費(個人の場合)を引いたものを手元に残るお金としています。生活費を払えない計画では、返済も続きません。

直し方

国民健康保険料・国民年金保険料や個人の借入の返済まで含めた家計費を、通帳や家計簿から出して差し引きます。創業当初に足りない月があれば、その分の生活費の蓄えを自己資金とは別に用意します(収支の数値例)。

直した例(架空):家計費は月22万円(住居費8、食費・日用品6、国民健康保険料・国民年金保険料4、車のローン2、その他2)。創業当初は手元に残るお金が月2万円足りないため、6か月分の12万円を生活費の蓄えとして別に確保

失敗5 見積書と金額が違う

よくある書き方:内装工事を「550万円」と書き、添付した見積書は税込480万円になっている。

なぜだめか

設備資金は見積書で金額を確かめる項目で、設備資金を申し込む場合は見積書が必要書類です。金額が合わないと、差額を何に使うのかを説明できず、計画書のほかの数字まで疑われます。

直し方

内訳ごとに見積書の金額(税込か税抜かも)とそろえ、見積先を書きます。見積りを取り直したら、計画書の金額と、支払利息・返済元金の計算も直します(設備資金の書き方)。

直した例(架空):店舗内装工事 480万円(内装業者の見積書・税込。2社を比較)

失敗6 運転資金がゼロ

よくある書き方:必要な資金を内装・設備だけで組み、運転資金の欄が空いている。

なぜだめか

開業直後は、売上の入金より先に仕入・人件費・家賃の支払いが来ます。運転資金がないと、売上が計画どおりでもお金が足りなくなることがあります。開業後に追加で借りるのは、創業時より説明が難しくなりがちです。

直し方

開業前の仕入・広告など一度きりの費用、入金と支払いのずれの分、立ち上がりの備えの3つを足し、何か月分をなぜ見込むのかを書きます(運転資金の考え方)。

直した例(架空):運転資金120万円=開業前の仕入20万円+人件費・家賃など固定的な支払い(月50万円)の2か月分100万円

失敗7 個人の借入を書かない

よくある書き方:事業の借入がないので「お借入の状況」を「なし」とした(実際には車のローンやカードのキャッシングの残高がある)。

なぜだめか

様式は、住宅・車・教育・カードなど個人の借入も書く形式です。公庫の事業資金の申込みには個人信用情報機関に関する同意事項があり、書かなかった借入があとで分かると、借入の額より、正確に申告しなかったことが信頼を損ないます。

直し方

借入先・残高・毎月の返済額を一覧にして書き、個人の返済は家計費に含めて手元に残るお金を計算します。支払いの記録に不安があれば、申込み前に自分の信用情報を開示して確かめます(7 お借入の状況)。

直した例(架空):車 信販会社、残高72万円、毎月3万円/カード カード会社、キャッシングの残高15万円、毎月1万円(開業前に完済の予定)

失敗8 許認可の確認が漏れている

よくある書き方:必要な許認可を調べないまま、物件の工事や開業日を決めている。

なぜだめか

許認可が必要な事業は、申込みの必要書類に許認可証等が含まれます(公庫 ご融資のお手続き(創業予定の方))。物件や設備が基準を満たさないと、工事のやり直しや開業の遅れで、資金計画そのものが崩れます。

直し方

必要な許認可と窓口を事前に確かめ、取得済みか、取得の見込み時期を計画書に書きます。飲食店や美容室なら、工事の前に図面を持って保健所に相談しておくと、やり直しを防げます(業種別の許認可)。

直した例(架空):飲食店営業許可は、図面の段階で保健所に相談済み。工事の完了後に申請し、開業前に取得する見込み

失敗9 競合を書かない

よくある書き方:競合・市場の欄に「なし」や「負けないよう頑張ります」とだけ書く。

なぜだめか

競合がいない市場は、需要が小さい市場かもしれません。競合を調べていないと、セールスポイントにも、売上予測の客数にも根拠がなくなります。

直し方

近い商品・サービスも含めて、近くの競合の数・価格帯・特徴を調べ、自分が選ばれる理由を事実で書きます。自分の弱みと対策も書くと、市場を冷静に見ていることが伝わります(3 取扱商品・サービス)。

直した例(架空):半径1km以内に同業が3店(価格帯は1,000〜1,300円、うち2店は19時閉店)。当店は21時まで営業し、仕事帰りの客を取り込む。駐車場がない点は、近くの提携駐車場の割引で補う

失敗10 数字が項目の間で合わない

よくある書き方:従業員は2人なのに人件費は1人分、借入額を変えたのに支払利息が前のまま、必要な資金と調達の合計が違う。

なぜだめか

読み手は、項目どうしを照らし合わせて計画の確かさを確かめます。数字が1か所でも合わないと、ほかの数字まで信頼されにくくなります。

直し方

数字を1つ直したら、関係する項目もすべて直します。表計算ソフトで式をつないでおくと、直し漏れを防げます。提出前に5つの式で検算し、項目どうしのつながりも確かめましょう。

直した例(架空):従業員3人(うちパート2人)に合わせ、人件費=正社員20万円+パート1,200円×5時間×20日×2人=44万円

会計事務所の視点

10の失敗の多くは、文章を先に書き、数字を後から合わせることから起きます。売上・経費・資金計画の表を先に作り、その数字を説明する形で文章を書けば、根拠の抜けも食い違いも減ります。

面談で指摘された点は、そのままにせず直しておきましょう。断られたり減額されたりしたときの考え方は断られた・減額されたときの対処法で解説しています。

計画書のよくある質問

創業計画書の作り方、数字の書き方、提出した後のことについて、よく寄せられる質問をまとめました。融資の制度や申込みの手続きについての質問は、公庫のよくある質問と創業融資のよくある質問もあわせてご覧ください。

作り方・様式

創業計画書は手書きでもよいですか?パソコンで作るべきですか?

様式は、公庫の書式ダウンロードページにExcel版とPDF版があります。インターネット申込みでは、様式をダウンロードして作成し、ほかの必要書類と一緒にアップロードします。

計画書は、見積りや売上の見込みが変わるたびに数字を何度も直すことになります。表計算ソフトで自分の計算表を作り、その数字を様式に写すと、直し漏れや計算の誤りを防げます。郵送で申し込む場合の書き方で迷ったら、支店に確認しましょう。書き方は、公庫の創業計画書の書き方のページで、項目ごとに動画でも解説されています。

関連:公庫の様式と入手方法

様式の欄に書ききれません。別紙を付けてもよいですか?

付けてかまいません。公庫の記入例でも、経歴書などの補足資料をあわせて提出することが勧められています。売上の根拠の資料、物件の資料、取引先の書面なども補足資料になります。

ただし、様式の欄にも要点は書いておきます。別紙には番号を振り、計画書の中で「別紙1参照」のように示すと、読み手が迷いません。

関連:10 自由記述欄

公庫の様式ではなく、自分で作った事業計画書を出してもよいですか?

公庫が創業の方の必要書類として挙げているのは、創業計画書です。独自の事業計画書を作った場合も、まず公庫の様式の10項目を埋め、独自の計画書は補足資料として付けるのが確実です。独自の書式だけで出したい場合の扱いは、申込み前に支店に確認してください。

関連:公庫の必要書類

開業して1年ほどたちます。創業計画書と企業概要書のどちらを使いますか?

公庫の案内では、事業を始める前、または始めて間もない方は創業計画書、それ以外の方は企業概要書です。どちらに当たるかで迷う場合は、申込み前に支店で確認しましょう。

決算を迎える前なら、試算表など、開業後の営業の状況が分かる資料もあわせて用意します。

関連:既存企業の計画

数字の書き方

「創業当初」と「軌道に乗った後」は、いつの時点の数字を書けばよいですか?

様式の列は「創業当初」と「1年後又は軌道に乗った後」です。創業当初は開業直後の立ち上がりの時期、軌道に乗った後は売上が安定した時期の、それぞれ月平均を書きます。

軌道に乗る時期は業種や立地で違うので、「開業7か月目以降」のように想定を計算根拠に書いておきます。公庫の「創業の手引」(2026年5月版)には、黒字化までにかかった期間の平均が6.4か月というデータ(2025年版新規開業白書から)が載っています。

関連:創業当初と軌道に乗った後を分ける

創業当初の利益がマイナスになる計画でもよいですか?

立ち上がりの時期に利益がマイナスになること自体は、珍しくありません。大切なのは、マイナスの期間をどうしのぐか(運転資金、生活費の蓄え)と、いつ、なぜ黒字になるのかを説明できることです。

そのうえで、軌道に乗った後の列では、利益+減価償却費で返済元金をまかなえ、個人なら家計費も払える計画にします。

関連:収支の数値例

金額は税込と税抜のどちらで書けばよいですか?税金は事業の見通しに入れますか?

税込か税抜かはどちらかにそろえ、どちらで書いたかを分かるようにしておきます。特に設備資金は、見積書と同じ基準にそろえないと、金額が合わないように見えてしまいます。必要な資金は、実際に支払う税込の金額で考えると、お金が足りなくなるのを防げます。

様式の利益は「売上高−売上原価−経費」で、税金の行はありません。ただし実際には、利益に応じて個人なら所得税や住民税など、法人なら法人税などが後からかかり、消費税の納税が必要になる場合もあります。軌道に乗った後の手元に残るお金には、税金の分の余裕を持たせておきましょう。扱いに迷ったら税理士に相談してください。

関連:設備資金の書き方/収支の数値例

売上や利益は、どのくらい控えめに見積もればよいですか?

何割控えめにするという決まりはありません。まず、根拠のある数字で無理なく達成できる水準を置き、創業当初は軌道に乗った後より低くします。

そのうえで、売上が計画の8割にとどまった場合でも、返済元金と(個人なら)家計費をまかなえるかを試算しておくと、計画の強さを説明できます。ただし、控えめにしすぎて、必要な運転資金や人員まで削らないように注意しましょう。

関連:控えめに見積もり、自分で検証する

売上予測の根拠に使える資料には、どんなものがありますか?

説得力が高いのは、前の勤務先での自分の実績(担当した客数、個人売上、担当件数など)と、予定地での調査(通行量、競合店の客の入りや価格帯)です。予約や受注の内諾を示す書面も有力な根拠になります。

商圏の世帯数は国や自治体の統計、1世帯当たりの消費額は家計の統計で調べる方法があります。公庫の「新規開業実態調査」は公庫の融資先を対象にした調査で、創業者全体の平均ではない点に注意します。業種ごとの財務の目安は業種別の財務指標も参考になります。

関連:式に入れる数字の根拠を集める

提出・開業後

札幌市の制度融資や信用保証協会にも、同じ計画書を使えますか?

中身の数字は共通にできますが、様式はそれぞれ違います。札幌市の制度融資は取扱金融機関に申し込み、主な提出書類に事業計画書があります。北海道信用保証協会の創業関連保証では、協会の所定の様式による創業計画書が必要書類の例に挙がっています。

公庫用に作った数字をもとに、それぞれの様式に書き直しましょう。同時に申し込む場合は、どの機関にも同じ数字と内容で説明し、公庫の計画書の「他の金融機関等からの借入」欄に制度融資の予定額を書きます。札幌市の制度融資の事業計画書は、札幌中小企業支援センターが作成をサポートしています(予約制)。

関連:札幌市中小企業融資制度/創業融資の3つの選択肢

融資を受けた後、実績が計画書の数字と違ってきたらどうなりますか?

計画は見込みなので、実績とずれることはあります。公庫の調査でも、予想月商に到達していた人は58.7%でした。大切なのは、毎月の試算表で計画と実績を比べ、ずれの原因をつかんで早めに手を打つことです。

返済が難しくなりそうなときは、遅れる前に取引している支店に相談しましょう。公庫は、税務申告書・決算書、資金繰り表、経営改善計画書などを求めることがあるとしています。

関連:条件変更(リスケジュール)の進め方

計画書づくりを相談するとき、何を持っていけばよいですか?

作りかけの計画書に加えて、見積書、物件の資料、前職での実績が分かるもの(担当した客数や売上など)、売上の根拠のメモ、家計の支出と個人の借入が分かるものを持っていくと、具体的な助言を受けやすくなります。

札幌では、札幌商工会議所が公庫の融資申込みに使う創業計画書の作成指導を無料で行っており(中小企業・創業支援課 011-231-1768)、公庫の支店の予約相談でも計画書の相談に応じています。税理士などの専門家に、数字の組み立てを見てもらう方法もあります。

関連:札幌で融資を相談できる窓口

CONSULTATION
融資・資金調達のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ

創業融資・運転資金の調達から、補助金の申請サポート、その後の資金繰りまで。日本政策金融公庫への融資のご紹介・申請サポートの実績があります。

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出典・参考資料(30件・2026年9月25日確認)

このページは、2026年9月25日時点で確認できた公式情報(日本政策金融公庫、札幌市、北海道、北海道信用保証協会、中小企業庁、金融庁、日本銀行、国税庁など)にもとづく一般的な解説です。金利や制度の内容は改定されることがあります。実際の融資条件は、各金融機関・制度の窓口で必ず確認してください。

個別の融資の可否や条件を保証するものではありません。記入例・数値例はすべて架空の設例です。

最終確認日:2026年9月25日 作成:ジェイスタート会計事務所(公認会計士・税理士)

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