空き家の固定資産税は、市町村から「特定空家等」や「管理不全空家等」として勧告を受けると、土地の住宅用地特例が外れて大きく上がります。判定は毎年1月1日時点の状況で行われ、勧告後に迎える1月1日を基準に、その年度分から負担が増えます。勧告を待たず、管理・活用・売却・解体の方針を早めに決めることが対策です。
この記事の結論
勧告を受けると、住宅用地特例(200㎡以下の部分は固定資産税の課税標準が6分の1)が外れ、土地の税負担が大きく増えます。勧告の前に、管理・活用・売却・解体のどれを選ぶかを決めて手を打つことが、負担増を防ぐ方法です。
- 対象は「特定空家等」と、2023年12月13日施行の改正空家法で加わった「管理不全空家等」。いずれも勧告を受けると特例が外れる
- 判定は毎年1月1日(賦課期日)時点。勧告後に迎える1月1日を基準に、その年度分から上がる
- 「最大6倍」は特例の軽減割合から見た目安で、実際の上がり方は負担調整措置などで変わる
- 解体して更地にしても特例は外れるため、解体の時期は売却・活用の計画とセットで決める
- 相続した空き家を売るなら、2027年12月31日までの譲渡が対象の3,000万円特別控除(相続人が3人以上なら2,000万円)を確認する
空き家の固定資産税が上がるのはどんなとき?勧告と住宅用地特例の関係
住宅が建っている土地(住宅用地)は、固定資産税と都市計画税の課税標準が軽減されています。古い家でも建物が建っていればこの特例が効くため、「壊すと税金が上がる」という理由で空き家が残されることがあります。その対策として設けられたのが、空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)による特例の解除です。
| 区分 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 評価額の6分の1 | 評価額の3分の1 |
| 一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 評価額の3分の1 | 評価額の3分の2 |
空家法では、倒壊のおそれや著しい衛生上の問題がある「特定空家等」に加え、2023年12月13日施行の改正で、放置すれば特定空家等になるおそれのある「管理不全空家等」が設けられました。市町村長からいずれかの勧告を受けると、その敷地は住宅用地特例の対象から外れます。改正によって、いわば「放置予備軍」の段階から対象が広がった点が重要です。
| 区分 | どのような状態か | 市町村の措置の流れ | 住宅用地特例 |
|---|---|---|---|
| 特定空家等 | 倒壊など著しく保安上危険となるおそれ、著しく衛生上有害となるおそれ、著しく景観を損なっている、周辺の生活環境の保全のために放置が不適切、のいずれかの状態 | 助言・指導→勧告→命令→代執行 | 勧告を受けると外れる |
| 管理不全空家等 | そのまま放置すれば特定空家等になるおそれがある状態 | 指導→勧告 | 勧告を受けると外れる |
判定は、毎年1月1日(賦課期日)の状況で行われます。勧告を受けた後に迎える1月1日の時点で勧告が続いていれば、その年度分から特例がなくなります。勧告を受けてから対策を考え始めると、次の課税に間に合わないことがあります。
勧告がなくても特例が外れる場合がある
住宅用地特例は、人が住むための家屋の敷地に適用されるものです。建物が傷んで住める状態でない、取り壊す予定で今後住む見込みがないなど、住宅と認められないと市町村が判断した場合は、勧告がなくても住宅用地として扱われないことがあります。扱いは、土地のある市町村の固定資産税の担当窓口で確認してください。
固定資産税はいくら上がる?計算例と「最大6倍」の見方
特例が外れると課税標準の軽減がなくなるため、土地の税額は大きく上がります。札幌市の場合、税率は固定資産税が1.4%、都市計画税が0.3%です。
計算例:評価額1,200万円の土地(200㎡以下)の場合
例えば、評価額1,200万円・面積200㎡以下・市街化区域内の土地にある空き家が、勧告を受けて住宅用地特例が外れた場合を、特例の有無だけで比べた単純計算です。
- 特例ありの固定資産税:1,200万円×1/6×1.4%=28,000円
- 特例なしの固定資産税:1,200万円×1.4%=168,000円
- 特例ありの都市計画税:1,200万円×1/3×0.3%=12,000円
- 特例なしの都市計画税:1,200万円×0.3%=36,000円
- 固定資産税の増加:168,000円−28,000円=140,000円
- 都市計画税の増加:36,000円−12,000円=24,000円
- 合計の増加:140,000円+24,000円=164,000円
税率は2026年10月時点の札幌市の値です。負担調整措置などの影響は考慮していません。
特例の軽減割合だけで見ると、固定資産税は6倍、都市計画税は3倍になる計算です。ただし実際の課税標準額は、評価額そのものではなく、税額の急な上昇を抑える負担調整措置などを反映して決まるため、勧告後の税額はこの単純計算より低くなる場合があります。正確な金額は、納税通知書に同封される課税明細書の課税標準額で確認します。
課税明細書には、土地ごとに評価額(価格)と課税標準額、住宅用地の面積が記載されています。届いたら毎年、住宅用地として扱われているかを確かめておくと、変化に早く気づけます。なお、評価額は評価替えで定期的に見直され、次の評価替えは令和9年度です。固定資産税と都市計画税の仕組み全体は、固定資産税・都市計画税の基礎知識と計算方法で解説しています。
無料ツール住宅用地の特例を反映した固定資産税を試算する土地の評価額などを入れると、住宅用地の特例を反映した固定資産税の目安を確認できます。計算する
勧告を受ける前に何をすべき?管理・活用・売却・解体の選び方
負担増を避けるには、勧告の前に「管理を続ける・活用する・売却する・解体する」のどれかを選び、手を打っておくことが大切です。選択肢ごとに、固定資産税と将来の税金への影響が異なります。
| 選択肢 | 固定資産税への影響 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 管理を続ける(換気・点検・草刈り・除雪を委託) | 住宅用地特例を保ちやすい | 将来住む・使う予定がある | 管理の費用と手間が続く。遠方なら管理サービスを利用する |
| 活用する(修繕して貸す) | 住宅として使われれば特例は続く | 立地がよく、修繕すれば使える | 修繕費がかかる。家賃収入は不動産所得として確定申告が必要 |
| 売却する(建物付き、または解体して) | 売った後は買主の負担になる(1月1日時点の所有者に課税) | 使う予定がない | 譲渡所得税がかかる。相続した家なら3,000万円特別控除を検討 |
| 解体して更地にする | 土地の特例が外れて土地の税額は上がるが、建物の税はなくなる | 売却や建替えの予定が決まっている | 解体費用がかかる。1月1日をまたぐ時期の選び方に注意 |
解体を選ぶ場合は、住宅用地特例が失われて更地になることを踏まえ、解体後の土地活用や売却の計画もあわせて検討します。固定資産税は1月1日時点の状況で決まるため、建物が住宅として使える状態であれば、年明けの1月2日以降に解体すると、その年度は特例のある税額のままです。反対に年内に解体すると、翌年1月1日には更地として扱われ、その年度から土地の税額が上がります。
住宅を建て替える場合は、一定の要件を満たせば、建築中の土地も住宅用地として扱われることがあります。解体と建替えの時期が決まったら、市町村の窓口で扱いを確認しておきます。
管理・売却・解体のどれを選ぶかで、固定資産税と売却時の税金の両方が変わります。初回無料で、税額の比較から一緒に確認できます。
無料で相談する相続した空き家を売るときの税金は?3,000万円特別控除の要件
相続した空き家を売る場合、要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」があります。2024年1月1日以後の譲渡で、その家と敷地を相続した相続人が3人以上いる場合は、1人あたり2,000万円になります。主な要件は次のとおりです。
- 相続の開始の直前に、被相続人が一人で住んでいた家屋とその敷地であること(老人ホームなどに入所していた場合も、一定の要件で対象)
- 1981年5月31日以前に建築された家屋であること(マンションなどの区分所有建物は対象外)
- 耐震改修をしてから売るか、取り壊して土地を売ること(2024年1月1日以後の譲渡は、買主が一定の期限までに耐震改修や取壊しをする場合も対象)
- 売却代金が1億円以下であること
- 2027年12月31日までに売り、かつ相続の開始から一定の期間内であること(期間は国税庁のタックスアンサーで確認)
- 市区町村の「被相続人居住用家屋等確認書」などを添付して、確定申告をすること
この特例は、相続税の取得費加算の特例とは併用できないため、相続税を納めた人はどちらが有利かを比べます。期限の延長は決まっておらず、令和9年度税制改正の内容を確かめる必要があるため、2027年12月31日という期限を前提に売却の時期を検討します。
相続した不動産の所有期間は、被相続人が取得した時から数えます。長く住んでいた実家であれば、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超える長期譲渡所得になるのが通常で、税率は所得税・復興特別所得税・住民税をあわせて20.315%です。売却時の税金全般は、譲渡所得税の仕組みで解説しています。
無料ツール土地・建物の譲渡所得と税額を計算する売却代金・取得費・譲渡費用と所有期間を入れると、譲渡所得と税額の目安を計算できます。計算する
札幌・北海道の空き家で特に注意したいこと
雪の重みと冬の管理
積雪の多い地域では、屋根に積もった雪の重みで屋根や家屋が傷んだり、落雪が周囲に危険を及ぼしたりすることが、指導のきっかけになる場合があります。冬が来る前に屋根や外壁を点検し、遠方に住んでいる場合は除雪や見回りを委託しておくと安心です。
雪の多い時期は、解体工事や売却前の内覧の日程を組みにくくなることがあります。冬の前後に解体や売却を考えている場合は、1月1日の判定日も意識して、雪が降る前に段取りを決めておくと進めやすくなります。
相続で引き継いだ空き家は、2024年4月に始まった相続登記の義務化とあわせて、早めに方針を確認する必要があります。相続人が遠方に住んでいる場合は、管理の担い手と費用の負担を相続人の間で決めておきます。空き家の扱いは、ほかの財産を含めた相続全体の中で決めることになるため、次の点も早めに整理しておきます。
- 財産の一覧(不動産・預貯金・有価証券・保険)
- 借入金・未払金などの債務
- 法定相続人の確認と、空き家を誰が相続して管理・売却するか
- 遺言の有無
- 自社株がある場合の評価と承継の方針
相続した実家の扱いに迷ったら、相続対策の全体像とあわせて検討すると、売却・活用・保有の判断がしやすくなります。
よくある質問
勧告を受けた後に改善すれば、特例は元に戻りますか?
必要な措置をとって勧告が撤回され、その後の1月1日時点で住宅用地の要件を満たしていれば、特例が再び適用されます。どの措置で勧告が撤回されるかは市町村の判断によるため、勧告の内容を確かめて早めに対応します。
空き家を解体すると、固定資産税は高くなりますか?
土地は住宅用地特例が外れて税額が上がりますが、建物の固定資産税はかからなくなります。合計で増えるか減るかは土地と建物の評価額で変わるため、課税明細書の数字で試算してから決めます。すでに勧告を受けて土地の特例が外れている場合は、解体しても土地の税額は増えません。
相続登記をしていない空き家の固定資産税は誰が払いますか?
相続登記が済んでいなくても、相続人が固定資産税を負担します。遺産分割が終わるまでは相続人全員で負担する形になり、相続人の代表者に納税通知が届くのが一般的です。相続登記は2024年4月から義務になっているため、分割の話合いとあわせて登記も進めます。
空き家を売った年の固定資産税は、売主と買主のどちらが払いますか?
固定資産税は1月1日時点の所有者に1年分が課税されるため、納税義務は売主にあります。実務では、引渡し日を基準に日割りで買主から精算金を受け取る取り決めが一般的です。この精算金は、税金の計算では売却代金の一部として扱われます。
管理不全空家等の勧告は、いきなり届きますか?
管理不全空家等の場合、まず市町村から指導があり、それでも改善されないときに勧告に進みます。指導を受けた段階で修繕や管理の計画を伝え、改善を進めることが大切です。
まとめ
空き家は、特定空家等や管理不全空家等として勧告を受けると、土地の住宅用地特例が外れて固定資産税が大きく上がります。判定は毎年1月1日時点で行われるため、勧告を待たずに管理・活用・売却・解体の方針を早めに決めることが対策です。売却するなら、2027年12月31日までの譲渡が対象の3,000万円特別控除も含めて、税金の全体を比べて判断しましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
空き家・相続した不動産の税金のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂
