旅行業・ツアー会社の税理士選び|前受金・総額純額・消費税の論点と顧問料

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旅行業・ツアー会社の税理士選びは、業界特有の論点に面談で即答できるかで見極めます。主な論点は、前受金と催行日基準の売上計上、総額・純額の区分、営業保証金などの登録制度、国内・海外・訪日旅行で分かれる消費税の区分です。顧問料は相場の金額ではなく、任せる業務の範囲をそろえて比べます。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

旅行業の経理は、前受金・総額と純額・保証金の3点と、取引ごとに区分が分かれる消費税が特殊です。これらを具体的に説明でき、季節変動の大きい資金繰りまで助言できる税理士を選び、顧問料は業務範囲をそろえて比べます。

  • ツアー代金は出発前に入金されても、売上は旅行の催行時点で計上するのが原則で、それまでは前受金
  • 自社企画の募集型企画旅行は代金の総額、他社商品の代売は受取手数料だけが売上
  • 海外パック旅行は国内部分が課税・国外部分が不課税、訪日客向けの国内ツアーは相手が海外の会社でも課税
  • 免税事業者からの仕入れの控除は、2026年10月1日〜2028年9月30日は70%
  • 顧問料は売上規模・記帳代行の有無・面談の頻度でおおむね決まる
目次

旅行業の経理はなぜ特殊?前受金・総額と純額・保証金の3点

ツアー会社や旅行代理店の経理には、他業種にない論点が集中します。一般的な業種に慣れた税理士でも、旅行業となると勝手が違う場面は少なくありません。どの税理士と組むかが、日々の経理の手間と決算の精度を左右します。

前受金は、旅行を催行した時点で売上に振り替える

第一の論点は前受金の管理です。ツアー代金は出発前に入金されますが、売上に計上するのは旅行が催行された時点が原則で、それまでは前受金(負債)として管理します。出発日と帰着日のどちらを基準にするかは取引の実態に合わせて決め、毎期同じ基準で処理します。

期末をまたぐ申込みが多いほど前受金の残高管理は重くなり、誤ると利益も納税額もずれます。宿泊や交通の仕入れも、対応する旅行の時期に合わせて計上することで、旅行ごとの粗利が正しく見えるようになります。

具体例:3月決算の会社が、2月に4月出発のツアー代金を受け取った場合

入金した2月の時点では前受金として負債に計上し、3月期の売上には含めません。4月に旅行を催行した時点で、翌期の売上に振り替えます。仕入先に前払いした宿泊代なども、前払金として同じ時期まで繰り越します。

総額計上か純額計上かで、売上高と粗利率が変わる

第二の論点は、売上の総額計上と純額計上の区分です。自社企画の募集型企画旅行は代金全体を売上に計上する一方、他社商品の代売では受取手数料だけが売上になります。同じ入金額でも売上高と粗利率がまるで変わるため、金融機関への決算説明にも直結します。

計算例:同じ粗利でも売上高が変わる

例えば代金100万円のツアーで、宿泊・交通の仕入れが85万円の場合です。自社企画として総額で計上すると、売上100万円、粗利は100万円−85万円=15万円で、粗利率は15%です。

同じ15万円を他社商品の代売の手数料として受け取る場合は、売上は15万円だけになり、売上の全額が粗利として表示されます。決算書の見え方が大きく変わるため、契約の形に合わせた計上が欠かせません。

上場企業などに適用される収益認識の会計基準では、自社が「本人」として旅行を提供しているか、「代理人」として手配しているかで総額・純額を判断します。中小企業でも、契約書や旅行条件書の内容と会計の処理をそろえておくと、説明に一貫性が出ます。

営業保証金・弁済業務保証金分担金と、登録の財務要件

第三に、登録制度と会計が結びついている点も旅行業ならではです。旅行業の登録では、営業保証金を供託するか、旅行業協会の保証社員として弁済業務保証金分担金を納付します。いずれも将来戻ってくる性質のお金なので、費用ではなく資産として計上します。

また、登録の種別ごとに、決算書をもとに計算する基準資産額の最低額が決められており、新規登録や更新登録の際に満たしている必要があります。赤字で純資産が減ると登録の維持に影響するため、決算の数字を早めに見込んでおくことが欠かせません。

消費税の判定はなぜ複雑?国内・海外・訪日旅行の区分

国内ツアーの代金は基本的に課税売上ですが、海外旅行になると様相が変わります。ひとつの商品の中に、課税・免税・不課税の区分が混在するためです。主な取引の区分は次のとおりです。

取引の例消費税の区分ポイント
国内ツアーの代金課税国内の宿泊・交通の仕入れは課税仕入れ
訪日客向けの国内ツアー課税相手が海外の旅行会社でも、国内での宿泊・飲食・輸送は輸出免税にならない
海外パック旅行の国内部分(国内の輸送、旅券の申請の代行など)原則として課税国内部分と国外部分に分けて扱う
海外パック旅行の国外部分(国際輸送、海外での宿泊・観光)不課税(国内取引に当たらない)課税売上割合の計算にも入れない
国内で行う代売・手配の手数料原則として課税国際輸送に関するものなど、内容で扱いが変わる場合がある
取消料(キャンセル料)損害賠償の性質なら不課税、事務手数料なら課税旅行条件書の定め方で判断する
旅行業の主な取引と消費税の区分(2026年10月時点の一般的な取扱い。個別の取引は契約内容で判断)

航空会社が行う国際輸送そのものは輸出免税の対象ですが、旅行会社が主催する海外パック旅行では、国際輸送を含む国外部分を「国内取引に当たらない(不課税)」ものとして扱います。同じ国際輸送でも、取引の形によって免税と不課税が分かれ、課税売上割合の計算での扱いも変わります。

札幌は国内外から観光客が集まる街で、海外の旅行会社から訪日客向けのツアーを受託する場面もあります。相手が海外の会社でも、国内での宿泊・飲食・輸送のように国内で便益を受けるサービスは輸出免税にならず、課税売上になる点に注意が必要です。

区分を誤ると、納税額も税務調査の結果も変わる

課税・免税・不課税の区分を誤ると納税額の計算が狂い、税務調査でも指摘されやすくなります。具体的な区分は取引形態によって変わるため、商品ごとに契約書や旅行条件書を確認し、社内の区分ルールを文書にしておくと処理がぶれません。

基準期間の課税売上高が5,000万円以下なら簡易課税も選べ、旅行業はサービス業として第5種(みなし仕入率50%)です。ただし、宿泊や交通の仕入れが多い旅行業では本則課税のほうが有利なこともあるため、両方の納税額を比べて選びます。

社員旅行や団体旅行など事業者向けの取引が多い会社は、取引先がインボイスを求めるため、登録が前提になりやすい業種です。仕入れ側では、免税事業者の宿泊施設やガイドなどからの仕入れの控除が、2026年10月1日〜2028年9月30日は70%、2028年10月1日からは50%に縮小します。実務の整理はインボイス制度の実務ガイドにまとめています。

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簡易課税と本則課税の納税額を比べる課税売上と課税仕入の見込みを入れると、第5種の簡易課税と本則課税のどちらが有利かの目安が分かります。計算する

海外・訪日旅行や取消料の消費税の区分は、商品と契約の形で変わります。今の処理で問題がないか、初回無料で確認できます。

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旅行業に強い税理士を見極めるポイントは?面談で聞きたい質問

候補の事務所との面談では、次のような質問を投げると、力量と相性が分かります。業界特有の処理を具体的に質問し、即答できるかどうかが最初の関門です。

  • 前受金と催行日基準の売上計上を、どう管理するか
  • 総額計上と純額計上の判断基準を説明できるか
  • 海外パック旅行・訪日旅行・取消料の消費税の区分を説明できるか
  • 旅行業登録の更新で求められる財務要件を踏まえた決算を組めるか
  • 繁忙期と閑散期の資金繰りまで助言できるか
  • 添乗員やガイドへの支払いが外注か給与か、源泉徴収が必要かを確認してくれるか

北海道の旅行業は、季節で売上が大きく波打つ

雪まつりや冬のスキー需要、夏の道内周遊と、季節によって売上が大きく動きます。前受金が積み上がる時期と、仕入先への支払いが集中する時期がずれるため、月次の数字を追いながら資金繰りに踏み込んでくれる税理士かどうかが重要な分かれ目です。

前受金で手元の預金は増えますが、旅行の催行後に仕入先へ支払うお金です。前受金の残高と預金の残高を並べて管理し、運転資金に回しすぎていないかを確認すると安全です。

旅行業界の制度や需要の動きは、旅行業の経営に役立つ最新情報でも整理しています。

顧問料はどう決まる?任せる範囲と見積りの比べ方

税理士の顧問料は、売上規模・記帳代行を任せるかどうか・面談の頻度の三要素でおおむね決まります。旅行業は取引件数が多く、前受金の管理も必要なため、記帳の手間が見積りに反映されやすい業種です。

決まる要素旅行業で確認したいこと
売上規模と取引件数ツアーの本数、個人客と法人客の割合、海外・訪日旅行の有無
記帳代行の有無前受金の振替や仕入れの対応付けを、自社と税理士のどちらが行うか
面談・報告の頻度月次で前受金残高と資金繰りを確認するか、決算前の税額予測が含まれるか
給与計算・年末調整繁忙期の臨時スタッフや添乗員の給与計算まで任せるか
決算と登録の資料登録の更新で必要な財務の資料づくりまで支援が含まれるか
顧問料が決まる主な要素(金額は業務範囲によって異なります)

例えば年商8,000万円のツアー会社が記帳代行まで依頼する場合と、自社で入力して月次確認だけ受ける場合とでは、月額が大きく変わります。安さだけで選ぶと、業界特有の処理を毎回一から説明する手間が自社側に残ります。金額の比較は、どこまでの業務が含まれるかをそろえたうえで行うのが失敗しないコツです。

当事務所は、継続的な顧問契約で月次の数字の確認から決算・申告まで一貫して支援しており、決算や申告だけのスポットのご依頼はお受けしていません。料金の決まり方は料金・契約の流れでご確認いただけます。

税務調査で見られやすいのはどこ?

旅行業の税務調査では、売上の計上時期と消費税の区分が中心になりやすく、どちらも日々の処理のルールで差が出ます。事前に備えておきたい論点は次のとおりです。

論点見られやすい点備え
売上の計上時期期末前に催行した旅行の売上が、前受金のまま翌期に回っていないか旅行ごとの催行日・入金・売上の対応表
総額・純額自社企画と代売の区分が、契約の内容と合っているか契約書・旅行条件書と会計の科目をそろえる
消費税の区分海外・訪日旅行・取消料の区分、免税事業者からの仕入れの控除割合取引ごとの区分ルールを文書にする
外注費と給与添乗員・ガイドへの支払いの区分と、源泉徴収の要否契約書と、指揮命令や時間の拘束の実態を確認する
交際費取引先の招待旅行や会食の費用の区分参加者・目的の記録を残す
旅行業の税務調査で確認されやすい主な論点

調査で指摘を受けて修正申告をすると、原則として過少申告加算税10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)と延滞税がかかります。仮装・隠蔽があった場合は重加算税35%です。さかのぼる期間は、原則として法定申告期限から5年(偽りその他不正の行為がある場合は7年)です。

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延滞税・加算税の概算を計算する追加で納める税額と期間を入れると、加算税と延滞税のおおよその負担が分かります。計算する

よくある質問

ツアー代金をクレジットカードで受け取った場合、売上はいつ計上しますか?

売上の計上時期は、現金で受け取る場合と同じく旅行を催行した時点です。カード会社からの入金までは未収入金として管理し、差し引かれる決済手数料は支払手数料として処理します。カードの決済手数料は消費税が非課税なので、仕入税額控除の対象になりません。

海外の現地手配会社(ランドオペレーター)への支払いに消費税はかかりますか?

海外で行われる宿泊・観光の手配や現地での役務の提供は国内取引に当たらないため、原則として消費税はかからず、仕入税額控除の対象にもなりません。海外送金の明細と現地の請求書を、どのツアーの仕入れかが分かる形で保存しておきます。

前受金が多いと、決算書の見え方や融資の審査に影響しますか?

前受金は負債なので、多いほど自己資本比率は低く見えます。旅行業では前受金が先に積み上がるのが通常の姿なので、決算の説明では、前受金の残高が翌期のどの旅行の売上になるかを示すと、金融機関に実態が伝わりやすくなります。

個人で旅行業を営んでいますが、法人化はいつ検討すればよいですか?

所得が増えて税率の差が大きくなったとき、法人の取引先から法人格を求められるとき、人材の採用や登録の種別を見直すときなどが検討のきっかけです。判断の目安は旅行業・ツアー会社の法人化のタイミングと判断基準で整理しています。

まとめ

旅行業の経理は、前受金・総額と純額・保証金の3点が特殊で、海外・訪日旅行では課税・免税・不課税が混在するため、消費税の難度も高い業種です。面談では業界特有の論点を質問して即答できるかを確かめ、顧問料は売上規模・記帳代行の有無・面談の頻度をそろえて比べましょう。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

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