有価証券・保険積立金の時価評価と含み損益

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中小企業の貸借対照表には、取得したときの金額(取得原価)のまま長年動いていない有価証券や保険積立金が計上されていることがあります。財務デューデリジェンス(財務DD)では、これらの資産が現在の時価でいくらの価値を持つのか、含み損益はどの程度あるのかを確認することが欠かせません。この記事では、有価証券と保険積立金の時価評価をどのように進めるか、実務上の考え方を解説します。

目次

なぜ時価評価の確認が必要なのか

有価証券や保険積立金は、取得時の金額のまま帳簿に計上され続けることが多い資産です。しかし株式や投資信託は市場価格が変動しますし、保険商品も解約時に戻ってくる解約返戻金は時間の経過とともに変わっていきます。取得原価のままの帳簿価額と、実際に売却・解約した場合に得られる時価には差があるのが通常です。この含み損益を把握しないままM&Aの価格交渉を行うと、実態の純資産を見誤ってしまう可能性があります。

資産の種類ごとの確認方法

資産の種類時価の確認方法
上場株式・投資信託決算日時点の市場価格(証券会社の残高報告書や取引所の終値)で確認する
非上場株式(取引先株式・関係会社株式など)発行会社の直近の決算書をもとに、純資産価額などの方法で概算する
養老保険・逓増定期保険などの保険積立金保険会社が発行する解約返戻金証明書で確認する
ゴルフ会員権・その他の会員権取引相場(業者の買取価格情報など)を参考に確認する

非上場株式は市場価格が存在しないため、発行会社の決算情報を入手できるかどうかが評価の精度を左右します。取引先との関係性によっては入手が難しいこともあるため、可能な範囲での概算にとどめる判断も必要です。

検証の進め方(確認の手順)

  • ①貸借対照表に計上されている有価証券・保険積立金・会員権などを種類別に一覧化する
  • ②それぞれの取得時期・取得金額(帳簿価額)を確認する
  • ③保険であれば保険会社に解約返戻金証明書を依頼し、決算日時点の解約返戻金額を確認する
  • ④上場株式であれば決算日時点の市場価格を、非上場株式であれば入手可能な範囲で発行会社の直近の財務情報を確認する
  • ⑤帳簿価額と時価を比較し、含み益・含み損の一覧表を作成する

保険積立金は特に、契約から時間が経つほど解約返戻金の水準が変化する商品もあるため、証明書を取得しないと正確な金額がわからないことが多いです。早めに保険会社へ照会しておくとスケジュールに余裕が生まれます。

見落としやすい確認ポイント

時価評価の検証では、保険契約の被保険者が退任予定の役員になっていないか、名義変更や契約者変更の予定がないかを確認しておきたいところです。あわせて、非上場株式が実質的に売却できない(流動性がない)状態になっていないか、会員権のように保有していても利用実態がなく維持コストだけがかかっている資産がないかも見ておく必要があります。含み益がある資産は魅力的に見えますが、実際に換金できるかどうかという視点も忘れずに持つことが大切です。

具体例|含み損益の計算パターン

たとえば、帳簿価額が仮に500万円の有価証券について、決算日時点の時価が仮に800万円だったとします。この場合の含み益は、800万円から500万円を差し引いた300万円です。一方、帳簿価額が仮に300万円の保険積立金の解約返戻金が仮に250万円だったとすると、含み損は50万円になります。資産ごとに含み益と含み損を算出したうえで、合算した純額で全体の含み損益を把握することが大切です。

実務でつまずきやすいポイント

  • 契約者貸付の有無を確認/保険契約者貸付を受けている場合、解約返戻金証明書の金額から貸付残高を差し引かないと、実際に受け取れる金額を過大に見積もってしまいます。
  • 名義保険の整理/契約者が役員個人、被保険者が別の人物になっているなど、名義関係が実態と一致しているかも確認しておくと後のトラブルを防げます。
  • 外貨建て資産の扱い/外貨建ての有価証券や保険がある場合、決算日時点の為替レートによって円換算額が変わるため、時価評価の基準日をそろえておく必要があります。
  • 保有目的による評価の違い/短期的な売買を目的とした保有か長期保有かによって、評価の考え方や重視するポイントが変わってきます。

準備しておきたいこと

時価評価をスムーズに進めるには、有価証券の取引残高報告書や保険証券、直近の決算書類などをあらかじめ手元にそろえておくことが大切です。資産の一覧と根拠資料がそろっていると、確認作業や第三者への照会もスピーディーに進みます。

時価評価を依頼するタイミング

M&Aや事業承継の話が具体化する前の段階から、有価証券や保険積立金の時価を把握しておくと、いざ交渉が始まったときに慌てずに対応できます。決算のタイミングに合わせて定期的に含み損益を確認しておくと、資産の変動にも早く気づけます。

  • 決算のタイミングで確認する/決算日を基準日として毎年時価を確認しておくと、含み損益の推移を把握しやすくなります。
  • 保険の見直し時期に合わせる/保険の更新や見直しのタイミングは、解約返戻金証明書を取得するよい機会にもなります。
  • 専門家に早めに相談する/非上場株式の評価など判断が難しい資産がある場合は、税理士等の専門家に早い段階で相談すると、精度の高い評価につながります。

まとめ

  • 有価証券・保険積立金は取得原価のまま計上され続けやすく、時価との差(含み損益)の確認が必要
  • 上場株式は市場価格、保険は解約返戻金証明書、非上場株式は発行会社の財務情報で時価を確認する
  • 保険会社への照会には時間がかかることがあるため早めの依頼が望ましい
  • 被保険者の状況や契約者変更の予定など、保険契約特有の論点にも注意する
  • 含み益があっても実際に換金できるかという流動性の視点も併せて確認する

個別のご相談は当事務所へお気軽にどうぞ。

※本記事は2026年7月時点の法令・情報に基づく一般的な解説であり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の適用にあたっては税理士等の専門家にご相談ください。

出典・参考情報(公的機関)

本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の税務判断・アドバイスを行うものではありません。税制・法令は改正される場合があります。実際の申告・手続の際は、上記の公的機関が公表する最新情報をご確認のうえ、税理士など専門家へご相談ください。

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