帳簿をつけていない個人事業主でも、税理士に依頼すれば、通帳・カード明細・領収書から帳簿を作り直し、確定申告や申告していなかった年の期限後申告まで進められます。依頼後の流れ、用意する資料、放置したときのリスク、費用が決まる要素を順番に整理します。
この記事の結論
帳簿がなくても税理士への依頼はできます。通帳・カード明細・売上の記録が残っていれば帳簿は作り直せ、申告していない年があっても期限後申告で整理できます。
- 税理士は記帳代行として、領収書や通帳などの元の資料から帳簿を作るところから引き受けられる
- 資料が一部欠けていても、通帳とカード明細を軸に合理的に組み立てられる
- 放置すると無申告加算税・延滞税、推計課税、融資審査での不利などのリスクが膨らむ
- 税務調査の事前通知より前に自主的に申告すると、加算税が軽くなる仕組みがある
- 費用は対象期間・取引の件数・資料の整理状況で決まる
帳簿をつけていなくても税理士に依頼できる?
依頼できます。税理士事務所には「記帳代行」という業務があり、領収書や通帳の明細といった原始資料(取引の事実を示す元の資料)を預かって、帳簿の作成から引き受けます。帳簿ゼロからの相談は珍しくなく、途中まで入力して崩れた帳簿を直すより、ゼロから作るほうが早い場合もあります。
何年か申告していない状態でも対応できます。過去の分は期限後申告(申告期限を過ぎてから提出する申告)としてまとめて整理します。税務署から連絡が来た後では取れる選択肢が狭くなるため、気づいた時点で動くほど負担は小さく済みます。
税理士に任せられること
- 通帳・カード明細・領収書からの帳簿の作成(記帳代行)
- 減価償却や家事按分を含む決算の整理
- 確定申告書・青色申告決算書(白色申告は収支内訳書)の作成と電子申告
- 課税事業者の場合の消費税の申告
- 税務署からの問い合わせへの対応(税務代理)
本人にしかできないこと
- 通帳・カード明細・領収書などの資料を集める
- 支出が事業用か私用かを説明する
- 現金で受け取った売上や、資料のない取引を申し出る
- 国民年金や生命保険料など、所得控除の資料を用意する
- 翌年以降の記帳のルールを決めて続ける
当事務所では、決算・申告だけのスポットのご依頼はお受けしていません。帳簿の作り直しから始める場合も、翌年以降の記帳と申告まで継続して支援する顧問契約でお引き受けしています。記帳を任せる場合の進め方は記帳代行プランの内容と流れで確認できます。
依頼するとどう進む?相談から申告までの流れ
大きく分けると、ヒアリングで事業内容とお金の流れを確認し、資料を預かって帳簿を作り、申告書の作成へ進む三つの段階です。実際の作業は次の順番で進みます。
- 相談・ヒアリング事業の内容、売上の受け取り方(振込・現金・カード決済・販売サイト経由など)、申告していない年の有無、税務署からの連絡の有無を確認します。
- 資料の回収通帳・カード明細・領収書などを預かります。足りない明細は、再発行の依頼やデータの取得を並行して進めます。
- 帳簿の作成(復元)入出金を1件ずつ仕訳し、事業用と私用を分けます。売上の計上漏れがないかを、入金の記録や請求書と突き合わせて確認します。
- 決算の整理減価償却、家事按分、年末時点の売掛金・未払金を整理し、その年の所得を確定させます。
- 申告書の作成・提出所得税(必要に応じて消費税)の申告書を作成し、内容を確認していただいてから提出・納付します。
- 翌年以降の仕組みづくり事業用の口座・カードの分離や会計ソフトの明細連携など、帳簿がたまらない仕組みを整えます。
申告していない年が複数あるときは、古い年から順に作ります。減価償却の未償却残高や、青色申告で赤字を繰り越す場合の金額は前の年の数字を引き継ぐため、新しい年から作ると後で直しが出るからです。
税務署から書類が届いているときは最初に伝える
「お尋ね」の文書や調査の連絡が届いている場合は、相談の最初に現物を見せてください。回答の期限や、どの年から手を付けるかの優先順位が変わります。
札幌市内で申告書を提出する場合
提出先は、住所地を管轄する税務署です(例:北区・東区は札幌北税務署、豊平区・南区・清田区は札幌南税務署)。2026年7月10日以後、書面の申告書を郵送するときは、各署ではなく札幌業務センター宛てに送ります。e-Taxでの提出や窓口への持参は、従来どおり所轄の税務署です。
何を用意すればいい?資料のチェックリスト
最初にそろえたい資料は次のとおりです。完璧にそろってから相談する必要はなく、手元にあるものから預ければ、足りない部分は並行して集められます。
- 事業用・生活用の通帳(ネット銀行は明細データでも可)
- クレジットカードの利用明細
- レシート・領収書・請求書の控え
- 売上の分かる記録(振込履歴、予約台帳、販売サイトの管理画面など)
- 開業届や過去の申告書の控え(あれば)
- 車・パソコンなど高額な備品を買ったときの資料
- 自宅兼事務所の賃貸借契約書、事業用の借入の返済予定表
- 国民年金・国民健康保険・生命保険料などの支払いの記録や控除証明書
| 資料 | 手元にないときの入手先 | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 通帳の明細 | 銀行の窓口、ネットバンキングの明細データ | 生活用の口座から事業の支払いをしていることが多いため、両方を確認する |
| カードの利用明細 | カード会社の会員サイト | 過去の明細を見られる期間に限りがある場合があるため、早めに保存する |
| 領収書・請求書 | 取引先への再発行の依頼、通販サイトの購入履歴 | 電子で受け取ったものは、電子データのまま保存する |
| 売上の記録 | 振込履歴、販売サイト・決済サービスの管理画面 | 手数料を差し引かれた入金額ではなく、売上の総額で計上する |
| 過去の申告書 | 手元の控え、e-Taxの送信履歴、税務署の申告書等閲覧サービス | 開業届や青色申告の承認申請を出しているかもあわせて確認する |
具体例:帳簿ゼロ・開業3年目のフリーランスの場合
例えば、開業3年目・年商900万円のフリーランスで帳簿が一切ない場合でも、売上の入金が1つの口座に集約され、経費の多くをカードで払っていれば、通帳とカード明細だけで取引の大半を組み立てられます。
残りの現金払いをレシートで補えば、かなりの精度で帳簿を復元できます。取引先からの支払通知や販売サイトの履歴で売上の総額を確かめれば、資料が一部欠けていても合理的に組み立てられます。
帳簿はどうやって作り直す?売上・経費・資産の考え方
帳簿の作り直しは、売上、経費、資産の順に、資料の裏付けがあるものから組み立てます。迷う取引は推測で埋めず、本人に確認して記録を残します。
売上は入金の記録から漏れなく拾う
通帳への振込、決済サービスからの入金、現金売上をすべて拾い、請求書や販売サイトの履歴と突き合わせます。12月分の売上で入金が翌年1月になるものも、その年の売上(売掛金)に含めるのが原則です。家族名義の口座に入っている売上も、事業の売上として計上します。
経費は「事業のための支出か」を説明できるものを拾う
カード明細と通帳の引落しから支出を洗い出し、内容を確認して経費か私用かを分けます。領収書がない支出は、支払いの事実が分かる明細と、何のための支出かのメモで補います。自宅の家賃・通信費・車両費のように事業と生活の両方に使うものは、面積や使用時間など合理的な基準で按分します。
高額な備品や車は資産として扱う
取得価額によって、その年に全額を経費にできるか、数年に分けて減価償却するかが分かれます。帳簿がない期間に買った車やパソコンも、購入した年にさかのぼって処理を確定させます。仕組みは減価償却の仕組み(お金が出ていないのに費用になる理由)で詳しく説明しています。
| 取得価額 | 処理 | 注意点 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 消耗品費などとして全額経費 | 白色申告でも使える |
| 20万円未満 | 一括償却資産として3年で均等に経費にできる | 白色申告でも使える |
| 40万円未満 | 少額減価償却資産の特例で全額経費(年300万円まで) | 青色申告の中小事業者だけが対象。2026年4月1日以後の取得から(2026年3月31日までの取得は30万円未満) |
| 上記以外 | 耐用年数に応じて減価償却 | 中古の車などは、耐用年数の計算が新品と異なる |
資料のない経費を推測で上乗せしない
「このくらいは使ったはず」という金額を経費に加えると、税務調査で否認されるだけでなく、事実を仮装したと判断されれば重加算税の対象になり得ます。重加算税は、過少申告の場合35%、無申告の場合40%です。資料のない支出は、明細やメモで説明できる範囲にとどめます。
帳簿がないまま放置するとどうなる?
帳簿は青色申告の前提です。帳簿がなければ青色申告特別控除などの特典は受けられず、白色申告でも記帳と帳簿書類の保存の義務はあります。放置した場合の主なリスクは次のとおりです。
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 無申告加算税 | 期限までに申告しなかった場合に、納付税額の原則15%(50万円を超える部分は20%、2024年1月1日以後に法定申告期限が来るものは300万円を超える部分が30%)が加わる |
| 延滞税 | 本来の納期限の翌日から納付する日までの日数に応じてかかり、時間とともに膨らむ |
| 推計課税 | 帳簿も資料もないまま調査を受けると、取引先の資料や同業者の比率などから所得を推計され、反論の材料を欠く |
| 青色申告の取消し | 帳簿の備付けや保存が法令どおりでないと、青色申告の承認が取り消されることがある |
| 融資・信用 | 決算書の数字に帳簿の裏付けがなく、金融機関の融資審査で不利に働く |
申告がない年について、税務署が税額を決定できる期間は、原則として法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為がある場合は7年です。何年分を申告するかは、この期間と各年の所得の状況を踏まえて決めます。
自主的に申告すると加算税が軽くなる
税務調査の事前通知を受ける前に、自主的に期限後申告をした場合は、無申告加算税が軽減される仕組みがあります。延滞税も日数に応じて増えるため、申告すると決めたら早く出すほど負担は小さくなります。加算税・延滞税の最新の取扱いは、国税庁のホームページで確認してください。
申告すると住民税・国民健康保険料・個人事業税も見直される
確定申告の内容は市区町村や都道府県に伝わり、住民税や国民健康保険料、個人事業税も、あとから申告内容に基づいて計算されます。個人事業税は法律で定める業種が対象で、事業所得から事業主控除290万円を差し引いた額に、多くの業種で5%の税率がかかります。納付の時期が重なることがあるため、資金の準備もあわせて考えます。
何年分をどの順番で申告し直すかは、所得や資料の状況で変わります。初回無料で、整理の進め方から確認できます。
無料で相談する費用はどう決まる?自分でやる場合との比べ方
記帳代行を含む依頼の費用は、対象期間の長さ、取引の件数、資料の整理状況の三つでおおむね決まります。1年分か3年分か、レシートが月別に分かれているか袋にひとまとめかで、作業量は大きく変わります。
| 費用に影響する要素 | 影響の仕方 | 依頼前にできること |
|---|---|---|
| 対象期間 | 作り直す年数が増えるほど作業量が増える | 申告していない年と、申告したが帳簿がない年を一覧にする |
| 取引の件数 | 仕訳の数がそのまま作業量になる | 口座・カードを事業用に絞ると、翌年以降の件数が減る |
| 資料の整理状況 | 月別に分かれているかで確認の手間が変わる | レシートを年・月ごとに分けるだけでも作業が減る |
| 消費税の申告 | 課税事業者やインボイス登録事業者は消費税の申告も必要 | 登録の有無と、各年の売上の規模を確認しておく |
| 翌年以降の分担 | 記帳を任せるか、自分で入力して確認を受けるかで変わる | どこまで自分でやるかを決めておく |
当事務所の料金の決まり方は料金・契約の流れで確認できます。申告だけを税理士に頼む場合との違いは、確定申告だけを税理士に依頼する場合の費用の考え方も参考になります。
自分で記帳するのが現実的な人
- 取引の件数が少ない
- 帳簿がない期間が短く、資料がそろっている
- 会計ソフトの操作に時間を割ける
- 消費税の申告が関係しない
税理士に頼んだほうがよい人
- 複数年分の帳簿や申告がたまっている
- 消費税の申告やインボイスが関係する
- 税務署から連絡が来ている
- 本業が忙しく、記帳の時間を取れない
複数年分がたまっている場合は、時間と精神的な負担まで含めると、依頼したほうが安くつくことが多いといえます。自分で進める場合も、申告していない年の扱いだけは専門家に確認しておくと、加算税や控除の判断を誤らずに済みます。
翌年からは何を変える?帳簿をためない仕組みと青色申告
作り直しが終わったら、同じ状態に戻らない仕組みを作ります。ポイントは、事業のお金の流れを一本化し、毎月少しずつ記帳することです。
- 事業用の口座とクレジットカードを決め、事業の入出金をそこに集める
- 会計ソフトに口座・カードの明細を連携し、手入力を減らす
- 紙の領収書は月ごとにまとめ、電子で受け取ったものは電子データのまま保存する
- 月に1回は入力と確認をして、年末にまとめて作業しない
- 青色申告に切り替える場合は、承認申請書を期限までに出す
青色申告承認申請書の期限は、適用を受けたい年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内)です。青色申告特別控除は令和8年分まで最大65万円で、令和9年分以後は、仕訳帳・総勘定元帳を電子帳簿保存法の要件で保存するなどの要件を満たすと75万円になります。
期限後申告の年は65万円・55万円の控除を使えない
65万円・55万円(令和9年分以後は75万円・65万円)の控除は、期限内の申告が要件です。青色申告の承認を受けていても、期限後申告の年の控除は最大10万円になります。帳簿を整えたら、次からは期限内に出すことが控除を生かす前提です。
ツール青色申告と白色申告の税額の差を比べる所得の見込みを入れて、青色申告特別控除を使った場合の節税効果を確認できます。計算する
消費税にも注意します。個人事業主は、前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超える年は、消費税の課税事業者になります。インボイスの登録をしている場合は売上の規模にかかわらず申告が必要で、令和8年分までは2割特例、令和9年分・令和10年分は個人事業者向けの3割特例を使える場合があります。詳しくは2割特例の終了と3割特例の解説で整理しています。
無料ツール消費税の課税事業者かどうかを判定する基準期間や特定期間の課税売上高から、消費税の納税義務の有無を確認できます。判定する
よくある質問
税務署から「お尋ね」が届いてからでも依頼できますか?
依頼できます。届いた文書の現物と回答の期限を、最初に共有してください。調査の事前通知を受けた後に申告すると、自主的に申告した場合より加算税の負担が重くなるため、届いた時点ですぐに動くことが大切です。
領収書をほとんど捨ててしまいました。経費は認められませんか?
カード明細や通帳の引落しで支払いの事実が分かるものは、何のための支出かを説明できれば、経費として整理できる場合があります。説明できない支出を推測で加えることは避け、今後は領収書を月ごとに保存する習慣をつけましょう。
開業届を出していなくても依頼できますか?
依頼できます。開業届の期限は開業の日から1か月以内ですが、出していなくても事業の所得は申告が必要です。依頼の際にあわせて提出し、翌年以降に青色申告へ切り替えるかも検討します。
過去1年分の申告書の作成だけを頼めますか?
当事務所では、決算・申告だけのスポットのご依頼はお受けしていません。帳簿がない状態から整える場合は、過去分の整理と翌年以降の記帳・申告を一貫して支援する顧問契約の中でお引き受けしています。
会計ソフトを入れれば、翌年からは自分で続けられますか?
取引が少なければ十分に可能です。最初の1年は税理士の確認を受けながら入力し、勘定科目の使い方や家事按分の割合を決めておくと、その後は自分で続けやすくなります。
まとめ
帳簿をつけていなくても、通帳・カード明細・売上の記録が残っていれば、税理士に依頼して帳簿を作り直し、期限後申告まで整理できます。放置すると加算税や延滞税、推計課税などのリスクが膨らむため、税務署から連絡が来る前に自主的に動くのが得策です。作り直した後は、口座の一本化と月1回の記帳で、同じ状態に戻らない仕組みを作りましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
帳簿の作り直し・過去分の申告のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
- 国税庁「タックスアンサー(個人事業者)」
- 国税庁 タックスアンサー No.2090「新たに事業を始めたときの届出など」
- 国税庁 タックスアンサー No.2072「青色申告特別控除」
- 札幌国税局「札幌業務センター」
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
