M&Aでは株式や事業用資産、金融機関との契約といった「見えやすい資産」に注目が集まりがちですが、屋号やブランド名、ウェブサイトのドメイン、SNSアカウントといった無形資産の引継ぎも、事業を止めずに承継するうえで欠かせない実務です。これらは法律上の権利関係が曖昧なまま運用されていることが多く、譲渡後に「誰の名義になっているかわからない」というトラブルに発展することがあります。結論として、これらは「権利の所在を確認し、名義変更の手続きを契約書に明記して進める」ことが基本です。
屋号・ブランドの引継ぎで確認すべきこと
会社が長年使ってきた屋号やブランド名は、地域での知名度や顧客からの信頼と結びついた重要な資産です。株式譲渡であれば会社そのものが移転するため、屋号は原則としてそのまま引き継がれますが、事業譲渡の場合は屋号の使用権を個別に取り決める必要があります。また、屋号やロゴが商標登録されている場合は、商標権の名義変更(移転登録)の手続きが必要になることもあるため、まず「屋号やブランドに関する権利が誰の名義で、どのような形で登録・使用されているか」を棚卸しすることが最初のステップになります。
ドメイン・ウェブサイトの引継ぎ実務
会社のウェブサイトで使っているドメインは、多くの場合、前経営者個人や特定の担当者の名義で契約されていることがあります。M&A後にドメインの管理者情報(Whois情報)や契約者名義が前経営者のままだと、更新料の支払いが止まって突然サイトが表示されなくなる、前経営者の意向でドメインが移管されてしまうといったリスクがあります。引継ぎの際は、次の点を確認しておくとよいでしょう。
- ①ドメインの登録事業者(レジストラ)と契約者名義
- ②サーバーの契約者・管理者情報とログイン情報
- ③更新時期と支払い方法(誰の口座やカードから引き落とされているか)
これらを洗い出したうえで、会社名義への変更手続き(ドメインの移管・名義変更)を進めることになります。手続き自体は登録事業者への申請で完了することが多いですが、前経営者の協力が必要な場面もあるため、引継ぎ期間中に済ませておくことが望ましいです。
SNSアカウント・口コミサイトの管理
近年は、会社の公式SNSアカウントや、飲食店・サービス業であれば口コミサイトの店舗アカウントも、集客に直結する重要な資産となっています。これらも個人のメールアドレスや電話番号でアカウントが作られていることがあり、ログイン情報が引き継がれないまま前経営者が退任すると、アカウントの管理ができなくなるおそれがあります。ログインID・パスワードの一覧化と、可能であれば会社の代表アドレスへの登録情報の変更を、屋号やドメインの引継ぎと合わせて進めておくとよいでしょう。
無形資産の棚卸しから引継ぎまでの流れ
実務では、次のような流れで無形資産の引継ぎを進めることが一般的です。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| ①棚卸し | 屋号・商標・ドメイン・SNS・口コミサイト等の権利者と管理状況を一覧化する |
| ②リスクの洗い出し | 個人名義のまま残っているもの、契約更新が近いものを優先度付けする |
| ③名義変更・移管手続き | 登録機関やサービス提供元への申請を通じて会社名義に変更する |
| ④管理体制の整備 | ログイン情報や更新スケジュールを社内で共有・記録する |
例えば、ある小売業の事例では、譲渡契約の締結後にドメインが前経営者個人のクレジットカードで契約されていたことが判明し、引継ぎ期間中に会社名義のカードへ支払い方法を変更したうえで、契約者名義も会社に切り替えたということがあります。こうした確認は、契約締結前のデューデリジェンス(買収監査)の段階から始めておくと、譲渡後に慌てずに済みます。
まとめ
- 屋号やブランドは、商標登録の有無を含めて権利の所在を確認する
- ドメイン・サーバーは登録事業者・名義・更新時期を洗い出し、会社名義への変更を進める
- SNSアカウントや口コミサイトの管理情報も一覧化し、引継ぎ漏れを防ぐ
- 無形資産の棚卸しは、可能な限り契約締結前の段階から始めておく
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※本記事は2026年7月時点の法令・情報に基づく一般的な解説であり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の適用にあたっては税理士等の専門家にご相談ください。
出典・参考情報(公的機関)
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