不動産売却の譲渡所得の確定申告を税理士に頼む費用は、一律の定価ではなく、物件の数、特例を使うか、取得費の資料がそろっているか、相続が絡むかといった作業量で決まります。費用が決まる要素と見積りの取り方、自分で申告できるケース、依頼前にそろえる資料を整理しました。
この記事の結論
譲渡所得の申告の税理士費用は、作業量と判断の難しさで決まります。金額は事務所ごとに異なるため、何が含まれ何が加算になるのか、内訳まで確認して見積りを取ります。
- 費用を左右するのは、物件の数・特例の適用・取得費の資料の有無・相続や共有の有無・ほかの所得の有無
- 購入時の契約書があり、特例を使わないか要件が明らかな売却なら、自分で申告することも十分可能
- 取得費が分からない物件、相続した不動産、複数の特例の有利判定が必要な売却は、依頼する価値が大きい
- 2026年中の売却(令和8年分)の申告期間は2027年2月16日〜3月15日。資料を早めに集めると見積りも正確になる
譲渡所得の申告で税理士費用に「幅」がある理由
税理士の報酬は、基本的に作業量と責任の重さで決まります。譲渡所得の申告は、同じ「不動産を売った」でも作業量が何倍も違う点が特徴です。
購入時の契約書が手元にある自宅の売却と、何十年も前に相続した土地で資料がほとんど残っていないケースでは、必要な調査や検討の量がまったく異なります。そのため料金は、基本の報酬に、譲渡した物件の数や特例の適用、取得費の資料の状況に応じた加算を組み合わせて計算されるのが一般的です。一律の定価ではなく、案件ごとに見積もるのはこのためです。
料金が決まる要素と内訳
| 内訳の項目 | 作業の内容 | 料金への影響 |
|---|---|---|
| 基本報酬 | 確定申告書一式の作成。給与や年金など、ほかの所得も含めて申告する | ほかの所得や控除が多いほど作業が増える |
| 譲渡した物件の数 | 物件ごとの売却代金・取得費・譲渡費用の計算 | 物件1件ごとに加算されるのが一般的 |
| 特例の適用 | 居住用財産の3,000万円特別控除、軽減税率、空き家特例、取得費加算の特例、買換え特例などの要件確認と明細書の作成 | 使う特例の数と、要件の確認の難しさで変わる |
| 取得費の調査 | 契約書が見つからない場合の資料収集(通帳・登記・ローンの資料など)と、合理的な取得費の検討 | 調べる範囲によって大きく変わる |
| 相続・共有 | 相続時の資料の確認、共有者ごとの持分による計算 | 共有者はそれぞれ申告が必要なため、人数分の作業になる |
| 依頼の時期 | 申告期限の直前の依頼 | 資料の確認と検討を短期間で行うことになる |
料金体系は事務所ごとに異なるため、依頼の前に「何が含まれていて、何が加算になるのか」を内訳まで確認しておくと、あとから想定外の費用が出るのを防げます。
- 基本報酬に含まれる範囲(申告書の作成・提出、税額の試算、e-Taxでの提出)
- 物件・特例・取得費の調査ごとの加算の有無
- 給与や年金などほかの所得、医療費控除などの控除も含めて申告するか
- 申告後に税務署から問い合わせがあった場合の対応が含まれるか
- 見積りの前提になっている資料と、資料が足りない場合の扱い
譲渡所得の税金はどう計算する?取得費で税額が大きく変わる
譲渡所得は「売却代金−(取得費+譲渡費用)−特別控除」で計算し、給与などとは分けて税額を計算します。取得費は購入代金や購入時の手数料などで、建物は減価償却費に相当する額を差し引いた金額になります。譲渡費用は、仲介手数料や売買契約書の印紙税など、売るために直接かかった費用です。
| 区分 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計(復興特別所得税を含む) |
|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 売った年の1月1日時点で5年超 | 15% | 5% | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 売った年の1月1日時点で5年以下 | 30% | 9% | 39.63% |
購入時の契約書が見つからず取得費が分からない場合は、売却代金の5%を取得費とする方法(概算取得費)を使えます。ただし、実際の取得費より大幅に少なくなることが多く、課税対象が膨らみます。
計算例:取得費が分からない土地を2,000万円で売った場合
例えば、30年前に相続した札幌市内の土地を2,000万円で売却し、仲介手数料などの譲渡費用が仮に70万円、購入時の契約書が見つからない場合(長期譲渡所得・特例なし)です。
- 概算取得費:2,000万円×5%=100万円
- 譲渡所得:2,000万円−100万円−70万円=1,830万円
- 税額:1,830万円×20.315%=3,717,645円
資料を手がかりに、取得費が例えば800万円と確認できた場合は次のとおりです。
- 譲渡所得:2,000万円−800万円−70万円=1,130万円
- 税額:1,130万円×20.315%=2,295,595円
- 差額:3,717,645円−2,295,595円=1,422,050円
相続した不動産の取得費は、亡くなった方が購入したときの金額を引き継ぎます。税理士が通帳や登記の記録、当時のローンの資料などを手がかりに合理的な取得費を検討できれば、税額が大きく変わる可能性があります。
無料ツール土地・建物の譲渡所得と税額を計算する売却代金・取得費・譲渡費用と所有期間を入れると、譲渡所得と税額の目安を計算できます。計算する
自分で申告するか、費用を払って依頼するか
判断の軸は「取得費が明確か」と「特例を使うか」の2つです。購入時の売買契約書が手元にあり、特例を使わない、または要件が明らかなケースであれば、国税庁の確定申告書等作成コーナーを使って自分で申告することも十分可能です。
| 確認すること | 自分で申告しやすい | 税理士への依頼を検討したい |
|---|---|---|
| 取得費の資料 | 購入時の売買契約書・領収書がある | 契約書がない、古い相続財産で資料が残っていない |
| 特例 | 使わない、または要件が明らか | 3,000万円特別控除と買換え特例など、複数の有利判定が必要 |
| 取得の経緯 | 自分で購入した不動産 | 相続した不動産(取得費加算の特例や空き家特例の検討) |
| 名義 | 単独名義 | 共有名義、持分の移動がある |
| ほかの所得 | 給与や年金だけ | 事業や不動産賃貸の所得もある |
相続した不動産の売却や、複数の特例の有利判定が必要な売却は、税額の差が報酬を上回ることもあるため、費用を払ってでも依頼する価値が大きいといえます。
申告で使う主な特例は?税額が0でも申告が必要なもの
譲渡所得の特例の多くは、確定申告をすることが適用の条件です。特例を使って税額が0になる場合でも、申告しなければ特例は受けられません。
| 特例 | 主な要件 | 注意点 |
|---|---|---|
| 居住用財産の3,000万円特別控除 | 自分が住んでいた家屋とその敷地などの売却 | 税額が0でも申告が必要。配偶者や親子などへの売却は対象外 |
| 軽減税率の特例 | 売った年の1月1日時点で所有期間10年超の居住用財産 | 3,000万円特別控除と併用でき、課税長期譲渡所得6,000万円以下の部分は所得税10%・住民税4% |
| 空き家特例(被相続人の居住用財産) | 1981年5月31日以前に建築された家屋などで、売却代金1億円以下 | 2027年12月31日までの譲渡が対象。2024年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上なら、控除は1人最高2,000万円 |
| 取得費加算の特例 | 相続税を納めた人が、相続した財産を一定の期間内に売却 | 納めた相続税のうち一定額を取得費に加算できる |
| 買換え特例 | 一定の居住用財産を売って、新たに居住用財産を買い換える | 課税を将来に繰り延べる仕組みで、3,000万円特別控除とはどちらかを選ぶ |
ツール相続財産の取得費加算を計算する納めた相続税のうち、売却した不動産の取得費に加算できる額の目安を計算できます。計算する
どの特例が使えるか、どれが有利かは、売却の経緯と資料の状況で変わります。初回無料で確認できます。
無料で相談する税理士費用を抑えるためにできる準備
同じ案件でも、資料がそろっているかどうかで手間は大きく変わります。次の資料を先に集めてから相談すると、見積りが正確になり、費用も抑えやすくなります。
- 売却時の売買契約書、仲介手数料の領収書、印紙税や測量費などの譲渡費用の資料
- 購入時の売買契約書と領収書、購入時の仲介手数料や登記費用の資料
- 増改築やリフォームの契約書と領収書
- 登記事項証明書(所有期間と持分の確認)
- 相続した不動産なら、相続税の申告書と遺産分割協議書
- 契約書がない場合は、当時の通帳やローンの返済表など、購入代金の手がかりになる資料
申告期限である翌年3月15日の直前は、資料の確認と特例の検討を短い期間で行うことになります。売却した年のうちに一度相談しておくと、特例の適用判断や納税資金の準備まで余裕をもって進められます。譲渡所得は住民税や国民健康保険料の計算、扶養の判定にも影響するため、売却の前に試算しておくと安心です。
当事務所でのご相談の受け方
当事務所は、継続的な顧問契約でのご支援を基本としており、確定申告書の作成だけを単発でお受けするスポットのご依頼は承っていません。不動産の売却についても、売却前の特例の検討から、相続や資産全体の整理、申告後の手続きまでを継続的なご支援の中でご相談いただけます。
まずは初回無料のご相談で、売却の内容と資料の状況を伺い、必要な支援の範囲を確認します。料金の考え方と契約までの流れは、料金・契約の流れでご確認いただけます。
よくある質問
税理士に払う申告の費用は、譲渡費用として差し引けますか?
差し引けません。譲渡費用は仲介手数料や売買契約書の印紙税、測量費など、売るために直接かかった費用に限られ、確定申告の依頼費用は含まれません。
売却して損が出た場合も、確定申告は必要ですか?
土地・建物の譲渡で損失が出た場合、原則として税金はかからず申告も不要です。ただし、住んでいた家を売った場合の譲渡損失の特例など、申告することで給与などの所得と相殺できる制度もあるため、要件に当たるかを確認します。
譲渡所得の申告をしなかったらどうなりますか?
本来の税金に加えて、無申告加算税(原則15%、50万円を超える部分は20%、300万円を超える部分は30%)と延滞税がかかります。3,000万円特別控除などの特例も、申告しなければ使えません。
札幌市内に住んでいる場合、申告書はどこに出しますか?
住所地を所轄する税務署が提出先です。2026年7月10日から、書面の申告書は札幌業務センターへ郵送します。e-Taxでの提出と、窓口への持参は所轄の税務署です。
まとめ
譲渡所得の申告の税理士費用は、物件の数・特例の適用・取得費の資料の有無などの作業量で決まり、内訳まで確認して見積りを取ることが大切です。取得費が分からない物件や相続した不動産は、取得費の検討と特例の判定で税額が大きく変わるため、依頼する価値があります。資料を早めにそろえて売却した年のうちに相談すると、費用も税負担も抑えやすくなります。
札幌の公認会計士・税理士事務所
不動産の売却と譲渡所得のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
- 国税庁 タックスアンサー(土地・建物の譲渡所得)
- 国税庁 タックスアンサー No.3208 長期譲渡所得の税額の計算
- 国税庁 タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例
- 国税庁 タックスアンサー No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂
