不動産売却の譲渡所得申告を税理士に依頼した場合、資料がそろっていれば依頼から申告完了まで2〜4週間程度が目安です。期間を左右するのは購入時の契約書などの資料集めで、特例で税額がゼロになる場合も申告が必要です。売却した年の翌年2月16日〜3月15日の申告期間に向け、売却の年のうちに動き出すのが安全です。
この記事の結論
税理士に依頼すると、資料がそろっていれば2〜4週間程度で申告まで完了します。売却の翌年2月16日〜3月15日が申告期間で、マイホームの特例で税額がゼロになる場合も、申告すること自体が特例を受ける条件です。
- 譲渡所得は「売却額−取得費−譲渡費用」で計算し、特例があれば特別控除を差し引く
- 流れは初回相談→資料収集(1〜2週間)→計算・検討→申告書作成・電子申告の4段階
- 日数を左右するのは資料集め、特に購入時の売買契約書
- 取得費が分からないと売却額の5%を取得費とする概算になり、税負担が重くなりやすい
- 相続した不動産・共有名義・買換えなど論点が重なる売却は、早めの相談が安全
譲渡所得の申告が必要になるケース
不動産を売って利益(譲渡所得)が出た場合、売却した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告が必要です。令和8年分(2026年中の売却)は、2027年2月16日(火)から3月15日(月)までが申告期間で、所得税の納期限も3月15日です。
利益はおおまかに「売却額−取得費−譲渡費用」で計算します。取得費は買ったときの代金や仲介手数料などで、建物は所有期間に応じた減価償却費相当額を差し引きます。譲渡費用は、売るために直接かかった仲介手数料・印紙税・測量費などです。
| ケース | 申告 | ポイント |
|---|---|---|
| 売却益が出た | 必要 | 給与所得などとは分けて、譲渡所得だけで税額を計算する(分離課税) |
| 特例で税額がゼロになる | 必要 | マイホームの3,000万円特別控除などは、申告することが適用の条件 |
| マイホームの売却で損が出た | 特例を使うなら必要 | 一定の要件で、給与所得などとの損益通算や損失の繰越控除ができる特例がある |
| 損が出て、特例も使わない | 原則不要 | 譲渡所得がないため、税額は生じない |
税率は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで変わります。判定の基準日が「売った年の1月1日」のため、買ってから丸5年たっていても長期にならない場合がある点に注意してください。
| 区分 | 所得税 | 住民税 | 合計(復興特別所得税を含む) |
|---|---|---|---|
| 長期(売った年の1月1日時点で所有5年超) | 15% | 5% | 20.315% |
| 短期(同じく所有5年以下) | 30% | 9% | 39.63% |
| マイホームの軽減税率(所有10年超・6,000万円以下の部分) | 10% | 4% | 所得税に復興特別所得税を加算 |
申告することが条件になる主な特例
| 特例 | 内容 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 居住用財産の3,000万円特別控除 | マイホームの譲渡所得から最高3,000万円を控除 | 住まなくなってから売るまでの期限がある。親子・夫婦など特別な関係の人への売却は対象外 |
| 10年超所有の軽減税率 | 6,000万円以下の部分の税率が所得税10%・住民税4% | 売った年の1月1日に家屋・敷地とも所有期間10年超。3,000万円特別控除と併用できる |
| 空き家特例(被相続人の居住用財産) | 相続した空き家の売却で最高3,000万円を控除 | 1981年5月31日以前の建築、売却代金1億円以下、2027年12月31日までの譲渡。2024年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上なら2,000万円まで |
| 居住用財産の買換え特例 | 一定の要件でマイホームを買い換えたとき、売却益への課税を将来に繰り延べる | 3,000万円特別控除とはどちらかを選ぶ。繰り延べるだけで、税がなくなるわけではない |
| 相続財産の取得費加算 | 相続税を納めた人が相続財産を売ったとき、相続税の一部を取得費に加算 | 相続税の申告期限から一定の期間内の売却に限られる |
どの特例を使えるかで税額は大きく変わり、組み合わせられない特例もあります。売却が決まった段階で特例の候補と必要な書類を確認しておくと、申告の準備が早く進みます。
無料ツール土地建物の譲渡所得と税額を計算する売却額・取得費・譲渡費用と所有期間を入れると、譲渡所得と税額の目安を計算できます。計算する
税理士に依頼してから申告完了までの流れ
全体では、資料がスムーズにそろえば2〜4週間程度が目安です。逆にいえば、期間を左右するのはほぼ「資料集め」です。
| 段階 | 内容 | 日数の目安 |
|---|---|---|
| 1 初回相談 | 売却の概要と特例の可能性を確認 | 1日 |
| 2 資料収集 | 契約書・領収書などを集める | 1〜2週間 |
| 3 計算・検討 | 取得費の確定と特例の適用判断 | 数日〜1週間 |
| 4 申告書作成・提出 | 内容確認のうえ電子申告 | 数日 |
- 初回相談(1日)売った物件・時期・金額、住んでいたかどうか、相続や共有の有無を確認し、使える特例の候補と必要な資料を整理します。
- 資料収集(1〜2週間)購入時と売却時の売買契約書、仲介手数料・登記費用の領収書などを集めます。見つからない書類は、代わりになる資料を探します。
- 計算・検討(数日〜1週間)取得費と譲渡費用を確定し、建物の減価償却費相当額を計算したうえで、特例を使うかどうかと組み合わせを判断します。
- 申告書作成・提出(数日)譲渡所得の内訳書と確定申告書を作成し、内容を確認したうえで電子申告(e-Tax)で提出します。
- 納付と翌年度の確認所得税は3月15日までに納付します。一定の要件で5月31日まで延納できる制度もあります(利子税がかかります)。
早めにそろえておく資料
購入時と売却時の売買契約書、仲介手数料や登記費用の領収書、リフォームや解体の費用が分かる書類を早めに手元へ集めておくと、その後の工程は一気に進みます。納税資金の準備期間を確保する意味でも、早めの着手が効きます。
- 売却時の売買契約書と精算書(買主から受け取った固定資産税の精算金も売却額に含めます)
- 購入時の売買契約書(土地と建物の内訳が分かるもの)
- 購入時・売却時の仲介手数料、登記費用、印紙税の領収書
- リフォーム・増改築・解体・測量の費用が分かる請求書や領収書
- 登記事項証明書(取得の時期と持分の確認用)
- 相続した不動産は、遺産分割協議書と相続税の申告書の写し
- マイホームの特例を使う場合は、住んでいた期間が分かる資料
時間がかかりやすい三つのケース
第一に、購入時の契約書が見つからない場合です。取得費が分からないときは、売却額の5%を取得費とする「概算取得費」という扱いが原則となり、実際より税負担が大幅に重くなることがあります。
このときは、通帳の出金記録や住宅ローンの資料などから実際の取得費を立証できないかを検討するため、その調査に時間がかかります。
計算例:契約書の有無で税額はどれだけ変わるか
例えば、賃貸に出していたマンション(所有期間5年超・居住用の特例なし)を2,800万円で売却し、譲渡費用が100万円だったとします。購入代金は2,000万円、建物の減価償却費相当額は300万円、購入時の仲介手数料などは70万円と仮定します。
契約書などで取得費を立証できる場合、取得費は2,000万円−300万円+70万円=1,770万円です。譲渡所得は2,800万円−1,770万円−100万円=930万円で、税額の目安は930万円×20.315%=1,889,295円です。
取得費を立証できず概算取得費を使う場合、取得費は2,800万円×5%=140万円です。譲渡所得は2,800万円−140万円−100万円=2,560万円で、税額の目安は2,560万円×20.315%=5,200,640円となり、約331万円の差が生じます(端数処理前の目安)。
なお、この物件が自宅で、居住用の3,000万円特別控除の要件を満たすなら、930万円の譲渡所得は控除の範囲内で税額は0円になります。その場合も申告は必要です。
第二に、相続した不動産です。取得費は亡くなった方が買ったときの金額を引き継ぎ、所有期間も亡くなった方が取得した日から数えるため、さらに古い資料までさかのぼります。相続税を納めている場合は、その一部を取得費に加算できる特例の検討も加わります。
無料ツール相続財産の取得費加算額を計算する納めた相続税のうち、売った不動産の取得費に加算できる金額の目安を計算できます。計算する
相続した実家が空き家になっている場合は、空き家特例(被相続人の居住用財産の譲渡の特例)の要件も確かめます。建築の時期や売却代金、耐震改修・取壊しなどの要件があり、相続人の数によっても控除額が変わります。
第三に、共有名義や買換えなど複数の論点が重なる場合です。共有の不動産は持分に応じて共有者それぞれが申告し、特例も一人ひとり判定します。特例の組み合わせ方によって税額が変わるため、検討に日数を要します。
自分で申告するか、税理士に頼むか
利益が小さく特例も使わない単純なケースなら、ご自身での申告も可能です。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、画面の案内に沿って譲渡所得の内訳書と申告書を作成できます。
一方、特例の適用判断、取得費の立証、相続や共有といった論点があるなら、判断ひとつで税額が数十万円単位で変わり得るため、専門家への依頼が合理的です。
| 項目 | 自分で申告 | 税理士に依頼 |
|---|---|---|
| 向いているケース | 利益が小さく、特例を使わない売却 | 特例の判断、取得費の立証、相続・共有・買換えが絡む売却 |
| 手間 | 書類の読み解きと入力をすべて自分で行う | 資料を集めれば、計算・作成・提出まで任せられる |
| 税額への影響 | 取得費や特例の見落としが起きやすい | 取得費の拾い漏れや特例の要件を専門家が確認する |
| 税務署からの問合せ | 自分で説明する | 申告の内容に沿って税理士が説明を補助する |
例えば札幌市内のマンションを2,000万円で買い、2,800万円で売却したケースでは、特例が使えるかどうかと取得費の根拠資料が税額を大きく左右します。依頼の費用が決まる要素は譲渡所得申告の費用の内訳で整理しています。
当事務所でのご依頼の形
当事務所は、申告書の作成だけを単発でお受けするスポットのご依頼は承っておらず、継続的な顧問契約の中でご支援しています。不動産の売却を含む資産のご相談は、まず状況をお聞かせいただき、ご依頼の形をご説明します。
特例が使えるか、取得費をどう立証するかは物件ごとに判断が分かれます。売買契約書をお手元に、初回無料でご相談いただけます。
無料で相談する申告書の提出先と、住民税・保険料への影響
申告書の提出先は、売った不動産の所在地ではなく、申告する人の住所地を所轄する税務署です。e-Tax(電子申告)なら、税務署に出向かずに提出できます。
札幌市内にお住まいの場合の提出先
市内の税務署は中・北・南・西・東の5署で、北区・東区は北署、豊平区・南区・清田区は南署、西区・手稲区は西署、白石区・厚別区は東署が所轄です。中央区は、おおむね西10丁目以東が中署、大通西11丁目以西や円山・宮の森などが西署です(個別の住所は国税庁の管轄区域表で確認してください)。
2026年7月10日からは5署の内部事務が札幌業務センターに集約され、書面の申告書は同センターへ郵送します。e-Taxでの提出や窓口への持参は、所轄の税務署が窓口です。
譲渡所得は、翌年度の住民税の計算にも含まれます。国民健康保険などの保険料の計算に影響する場合もあるため、売却益が大きい年は、翌年度の負担の見込みもあわせて確認しておきましょう。
不動産の税金でよく寄せられる疑問は、不動産・資産税 税理士によくある質問にまとめています。
よくある質問
売却代金の入金が翌年になった場合、どの年の申告になりますか?
原則として、不動産を買主に引き渡した日の属する年の譲渡所得として申告します。売買契約の効力が発生した日(契約日)の年で申告することも選べるため、年末をまたぐ取引では、どちらの年にするかを早めに決めておきます。
会社員でも確定申告が必要ですか?
必要です。年末調整では譲渡所得は精算されないため、売却益が出た年や特例を使う年は、会社員の方もご自身で確定申告をします。申告書の作成には給与の源泉徴収票も使います。
売却にかかった費用は、どこまで譲渡費用になりますか?
仲介手数料、売買契約書の印紙税、売るための測量費、建物の取壊し費用などが譲渡費用です。一方、固定資産税や日常の修繕費など、所有している間の維持管理の費用は譲渡費用になりません。
申告期限に間に合わないとどうなりますか?
期限を過ぎても申告はできますが、納める税額がある場合は無申告加算税(原則15%)や延滞税がかかることがあります。資料がそろわないときも期限内にいったん申告し、後から修正申告や更正の請求で直す方法があります。
まとめ
不動産売却の譲渡所得申告は、資料がそろえば依頼から2〜4週間程度で完了し、日数を左右するのは購入時の契約書などの資料集めです。特例で税額がゼロになる場合も申告が条件になるため、売却した翌年の2月16日〜3月15日の申告期間に向けて、売却の年のうちに資料を集め始めましょう。相続・共有・特例が重なる売却は、早めの相談が安全です。
札幌の公認会計士・税理士事務所
不動産売却・譲渡所得のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
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対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
- 国税庁 タックスアンサー:土地・建物の譲渡に関する項目一覧
- 国税庁 タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例
- 国税庁 タックスアンサー No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 札幌国税局:管内の税務署の所在地と管轄区域
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂
