清掃業(ハウスクリーニング・ビル清掃)の開業では、税務署へ開業届と青色申告承認申請書を期限内に出し、人を雇うなら給与関係の届出も必要です。あわせて、応援スタッフへの支払いを給与と外注費のどちらで扱うかと、インボイス登録の要否を開業前に決めておくと、後の税務で困りません。
この記事の結論
開業届は開業の日から1か月以内、青色申告承認申請書はその年の3月15日まで(1月16日以後の開業は開業の日から2か月以内)に税務署へ出します。清掃業ならではの論点は、応援スタッフへの支払いの区分と、事業者相手の取引でのインボイス対応です。
- 人を雇うなら、給与支払事務所等の開設届出書(1か月以内)と源泉所得税の納期の特例の申請をあわせて出す
- 応援スタッフへの支払いは、作業の指示や道具の負担といった実態で給与か外注費かが決まり、源泉徴収と消費税の扱いが変わる
- ポリッシャーや高圧洗浄機は取得価額で処理が分かれ、青色申告なら40万円未満の特例も使える(2026年4月1日以後の取得)
- ビル管理会社などの事業者が取引先の中心なら、インボイス登録を開業前に検討する
- 個人の清掃業でも、常時5人以上を雇うと社会保険の強制適用事業所になる
清掃業の開業で出す届出は?期限と提出先の一覧
個人事業として清掃業を始める場合、主な提出先は税務署と北海道(道税事務所)です。人を雇うと、労働基準監督署・ハローワーク・年金事務所の手続きも加わります。税務関係の届出と期限は次のとおりです。
| 届出 | 提出期限 | 対象・ポイント |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届) | 開業の日から1か月以内 | 事業を始めるすべての人。提出先は税務署 |
| 所得税の青色申告承認申請書 | その年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内) | 期限を過ぎると、その年は白色申告になる |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 原則その年の3月15日まで(1月16日以後の開業は開業の日から2か月以内) | 生計を一にする家族に給与を払う場合 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 開設の日から1か月以内 | 従業員(家族を含む)に給与を払う場合 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 随時。提出した月の翌月末日までに承認・却下の通知がなければ、翌々月の納付分から適用 | 給与の支払を受ける人が常時10人未満の場合 |
| 消費税簡易課税制度選択届出書 | 適用を受けたい課税期間の初日の前日まで(開業した課税期間はその課税期間中) | 課税事業者になり、簡易課税を選ぶ場合だけ |
| 事業開始等の申告(個人事業税) | 開業後すみやかに(期限・様式は北海道の案内で確認) | 提出先は北海道(道税事務所) |
届出の多くは出し忘れても罰則はありませんが、青色申告承認申請書のように、期限を過ぎるとその年の特典を失うものがあります。開業届と同時に出せるものは、まとめて提出しておくと安心です。
札幌市内で開業する場合の提出先
提出先は、原則として住所地を管轄する税務署です。北区・東区は札幌北、豊平区・南区・清田区は札幌南、白石区・厚別区は札幌東の各税務署が管轄します。西区・手稲区と中央区の西側は札幌西、中央区のおおむね西10丁目以東は札幌中で、個別の住所は国税庁の管轄区域表で確認してください。
2026年7月10日から市内5署の内部事務は札幌業務センターに集約され、書面の届出は同センターへ郵送します。e-Taxでの提出や窓口への持参は、所轄の税務署で受け付けています。
青色申告にすると何が変わる?控除額と申請の注意点
青色申告は、正規の簿記で帳簿をつけることと引き換えに、税負担を抑える特典を使える制度です。清掃業で効果が大きいのは次の三つです。
- 青色申告特別控除:令和8年分までは最大65万円(正規の簿記、期限内申告、e-Taxでの申告か電子帳簿保存が要件)。令和9年分からは、仕訳帳と総勘定元帳を電子帳簿保存法の要件で電子保存するなどの要件を満たすと75万円
- 純損失の繰越し:機材をそろえた開業初年度に赤字が出ても、翌年以後に繰り越して黒字と相殺できる
- 青色事業専従者給与:配偶者などに事務や現場の応援を頼んで給与を払う場合、届け出た金額の範囲で経費にできる
計算例:売上800万円・経費500万円の場合
例えば、個人で清掃業を営み、令和8年分の売上が800万円、経費が500万円だった場合です。
- 青色申告特別控除の前の所得:800万円−500万円=300万円
- 65万円の控除を受けた後の所得:300万円−65万円=235万円
- 所得税の税率が5%の区分に収まる人なら、住民税10%と合わせて65万円×15%=97,500円の負担軽減(復興特別所得税を除く)
実際の税額は、基礎控除などの所得控除や他の所得によって変わります。所得をもとに計算する国民健康保険料が下がる場合もあります。
令和8年分で紙の申告書を出す場合、控除額は55万円(正規の簿記、貸借対照表と損益計算書の添付、期限内申告が要件)になります。開業の段階からe-Taxで申告する前提で会計ソフトを選んでおくと、控除の要件を満たしやすくなります。
応援スタッフへの支払いは給与?外注費?判断の基準
清掃業で最も判断が分かれるのが、現場の応援を頼んだ人への支払いです。給与になれば源泉徴収と年末調整が必要になり、外注費なら源泉徴収は原則として不要で、消費税の仕入税額控除の対象になります。清掃作業の請負代金は、源泉徴収が必要な報酬・料金には当たりません。
区分は契約書の名目ではなく、働き方の実態で決まります。次の表のどちらに近いかを、現場ごとに確認します。
| 判断のポイント | 給与に近い | 外注費に近い |
|---|---|---|
| 作業の指示 | 手順や作業時間を細かく指示し、拘束する | 仕上がりの基準だけ決め、進め方は相手に任せる |
| 代わりの人を立てられるか | 本人が作業することが前提 | 相手の判断で別の人に任せられる |
| 道具・洗剤・車両 | こちらが用意して使わせる | 相手が自分で用意する |
| 報酬の決め方 | 時間給・日給で、出来栄えに関係なく払う | 現場単位・作業単位の請負金額で払う |
| やり直し・事故の負担 | こちらが責任を負う | 相手が自分の負担でやり直す |
形式だけの外注は税務調査で否認されやすい
実態が雇用なのに外注費として処理していると、税務調査で給与と認定され、源泉所得税の徴収漏れと、消費税の仕入税額控除の否認を同時に指摘されるおそれがあります。外注にするなら、現場ごとの発注書や請負契約書、相手からの請求書を残し、道具の用意や作業の進め方も実態を合わせておきます。
外注先が免税事業者の場合も注意が必要です。自社が本則課税で消費税を計算する場合、免税事業者への外注費に含まれる消費税は全額を控除できません。2026年10月1日〜2028年9月30日に行った課税仕入れ(作業が完了した日で判定)は、その70%を控除できます。外注の比率が高い場合は、外注先の登録状況も確認しておきます。
機材・車両・資材はどう経費にする?取得価額で分かれる処理
ポリッシャー、高圧洗浄機、業務用掃除機、作業車などは、取得価額(本体価格に送料や据付費を含めた金額)で処理が分かれます。その年に全額を経費にできるものと、耐用年数にわたって減価償却するものがあります。
| 取得価額 | 処理 | 償却資産(固定資産税)の申告 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 消耗品費などとして、全額をその年の経費にする | 対象外 |
| 20万円未満 | 一括償却資産として、3年で均等に経費にすることも選べる | 一括償却を選んだものは対象外 |
| 40万円未満 | 青色申告の中小事業者は、少額減価償却資産の特例で全額を経費にできる(年300万円まで)。2026年3月31日までの取得は30万円未満 | 対象 |
| 上記以外 | 耐用年数に応じて減価償却する | 対象(自動車税・軽自動車税がかかる車両は除く) |
ツール機材の処理方法を3択で比較する即時の経費化・一括償却・少額減価償却資産の特例のどれが有利か、取得価額を入れるだけで比較できます。計算する
中古の作業車は、新車より短い耐用年数で償却できる場合があります。車両は事業と私用を兼ねることが多いため、走行の記録などで事業に使った割合を説明できるようにして、その割合で按分した分を経費にします。
洗剤・資材と開業前の支出
洗剤やワックス、パッド、ゴミ袋など、毎年ほぼ同じ量を買って使う資材は、継続して同じ方法をとることを前提に、購入した年の経費にできます。ただし、年末に大量に買い置きした場合などは、使っていない分を貯蔵品として資産に計上します。
開業前に支払ったチラシの作成費や、開業準備のための打合せの交通費などは「開業費」として資産に計上し、開業後の好きな年に経費にできます。開業前に買った機材は開業費ではなく、事業に使い始めた時から上の表に沿って処理します。
インボイス登録は必要?取引先が事業者か個人かで判断する
インボイスの登録が必要かどうかは、誰から代金を受け取るかで決まります。ビルの管理会社や不動産会社、オーナー、工務店など事業者が取引先の中心なら、相手は仕入税額控除のためにインボイスを求めるのが通常です。一般家庭向けのハウスクリーニングが中心なら、登録しなくても影響は小さくなります。
登録を検討したい清掃業
- ビル管理会社・不動産管理会社から定期清掃を請け負う
- 工務店やリフォーム会社の下請けで、引渡し前の清掃をする
- 店舗・事務所・医療機関などの法人と直接契約する
- 元請けや管理会社から登録を求められている
登録しなくても影響が小さい清掃業
- 一般家庭のハウスクリーニングが中心
- エアコン清掃など、個人客からの依頼が中心
- 事業者からの売上がごく一部
登録すると、免税事業者の規模でも消費税の申告と納税が必要になります。個人で登録した場合は、令和8年分までは2割特例(売上にかかる消費税額の2割を納める)、令和9・10年分は3割特例(登録しなければ免税事業者になる人が対象)を使える場合があります。清掃業は簡易課税ではサービス業として第5種(みなし仕入率50%)に当たるため、特例が終わった後の計算方法もあわせて比べておきます。
無料ツールインボイスの2割特例の納税額を計算する売上の金額を入れると、2割特例を使った場合の消費税の納付額を試算できます。計算する
新たに開業した個人は、開業した年のうちに登録申請書を出せば、開業日にさかのぼって登録を受けられる取扱いがあります。元請けや管理会社と契約する前に、登録の要否と請求書の様式を確認しておきましょう。制度の全体像は「インボイス制度の実務ガイド」にまとめています。
取引先の構成と外注の比率によって、インボイス登録と消費税の計算方法の選び方が変わります。開業前の段階から初回無料で整理できます。
無料で相談する許認可・労務の手続きで確認したいこと
ハウスクリーニングや一般的な建物の清掃は、始めるのに特別な許可は要りません。ただし、業務の内容によっては次の登録・許可が関わります。要件や窓口は、事前に所管の行政機関で確認してください。
- 建築物清掃業の登録(建築物における衛生的環境の確保に関する法律に基づく登録):登録は任意だが、官公庁や大規模なビルの契約で求められることがある
- 廃棄物の収集運搬業の許可:清掃で出たごみを顧客から引き取って運ぶ場合は、廃棄物の種類に応じて市町村や都道府県の許可が必要になることがある
- 古物商の許可:引き取った不用品を買い取って販売する場合
従業員を雇ったら、労働保険(労災保険・雇用保険)の手続きが必要です。また、清掃の事業は社会保険の適用業種に当たるため、個人事業でも常時5人以上の従業員を使用すると、健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所になります。最低賃金や保険料率の改定は「清掃業・ビルメンテナンスの経営に役立つ最新情報」で確認できます。
北海道で清掃業を営む場合
北海道の最低賃金は、2026年10月1日から1,131円です。時給で働くスタッフが多い清掃業では、改定のたびに時給と見積単価の両方を見直す必要があります。
夏の定期清掃に加えて冬の除雪・排雪を請け負う場合は、季節によって売上と人員の構成が変わります。除雪機などの機材の取得価額や、冬だけ雇うスタッフの給与・源泉徴収も、開業時の資金計画に入れておきます。現場別・季節別に売上を管理すると、申告と資金繰りの見通しが立てやすくなります。
開業1年目のスケジュールと記帳のコツ
| 時期 | やること |
|---|---|
| 開業から1〜2か月 | 開業届・青色申告承認申請書などの提出、事業用の口座とカードの用意、会計ソフトの設定 |
| 給与を払った月の翌月10日 | 源泉所得税の納付(納期の特例を受けると、1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日) |
| 12月 | 従業員の年末調整 |
| 翌年1月31日 | 償却資産(固定資産税)の申告(休日の場合は翌開庁日)、法定調書・給与支払報告書の提出(令和8年分は2027年2月1日) |
| 翌年2月16日〜3月15日 | 所得税の確定申告(令和8年分は2027年2月16日〜3月15日) |
| 翌年3月31日 | 消費税の確定申告(課税事業者・インボイス登録事業者の場合。令和8年分は2027年3月31日) |
| 2年目以降 | 予定納税(予定納税基準額が15万円以上の場合。納期限は7月31日と11月30日)、個人事業税の納付(北海道からの通知に基づく) |
最初の1年は「帳簿をためない」ことが一番の備えです。清掃業では、次の点を開業時から習慣にしておくと、申告の時期に慌てずに済みます。
- 現場ごとに売上を記録し、定期清掃・スポット清掃・除雪などの区分を分ける
- 作業が完了した日に売上を計上し、月末に未入金の請求を売掛金として管理する
- 事業用の口座とカードを分け、洗剤・燃料・駐車場代などの支払いを集約する
- 現金で受け取った代金は、領収書の控えと入金の記録を毎日照合する
- メールやネットで受け取った請求書・領収書は、電子データのまま保存する(2024年1月1日以後は義務)
- 外注先との発注書・請求書を、現場ごとにまとめて保存する
青色申告の帳簿と決算関係の書類は、原則として7年間の保存が必要です。1年の税務の流れは「個人事業主の年間スケジュール」で確認できます。
よくある質問
ハウスクリーニングを副業で始める場合も、開業届は必要ですか?
継続して収入を得る事業として行うなら、副業でも開業届を出すのが原則です。青色申告を選ぶなら、青色申告承認申請書も期限内に提出します。勤務先の給与と清掃業の所得をあわせて確定申告することになるため、売上と経費は開業した時から記録しておきます。
作業中に顧客の物を壊したときの賠償金や、賠償責任保険の保険料は経費になりますか?
業務に関連して支払った損害賠償金は、故意または重大な過失によるものを除き、経費にできます。作業中の事故に備える賠償責任保険の保険料も、事業のための保険であれば経費になります。
家族に現場を手伝ってもらう場合、給与は経費になりますか?
青色申告をしていて、青色事業専従者給与に関する届出書を期限内に出していれば、届け出た金額の範囲で経費にできます。家族がその年の一定期間以上、もっぱら事業に従事していることや、仕事の内容に見合う金額であることが前提です。白色申告の場合は、専従者控除という別の仕組みになります。
法人を設立して清掃業を始める場合、届出はどう変わりますか?
税務署へは、設立の日以後2か月以内に法人設立届出書を出し、青色申告承認申請書は設立の日以後3か月を経過した日と最初の事業年度終了の日のいずれか早い日の前日までに出します。法人は役員1人だけでも、健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所になります。
まとめ
清掃業の開業では、開業届と青色申告承認申請書を期限内に出し、人を雇うなら給与関係の届出も同時に済ませます。応援スタッフへの支払いを給与と外注費のどちらにするかは実態で決まり、源泉徴収と消費税の扱いを左右します。機材の処理方法とインボイス登録の要否も開業前に決めておくと、1年目の申告と資金繰りが安定します。
札幌の公認会計士・税理士事務所
清掃業の開業・税務のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
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- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
- 国税庁 タックスアンサー No.2090 新たに事業を始めたときの届出など
- 国税庁 タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除
- 札幌国税局「税務署の所在地・管轄区域」
- 北海道労働局「北海道の最低賃金」
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
