会計事務所のAI活用は、「読む・書く・整理する」をAIに、「確かめる・判断する・責任を持つ」を人に振り分けると効果が出ます。当事務所はClaude・Gemini・Claude Coworkを場面ごとに使い分けており、その道具と4つの場面、5つの運用ルールをそのまま公開します。
この記事の結論
当事務所は、Claudeを読解と文章、Geminiを表計算とメール、Claude Coworkを複数ステップの「作業のかたまり」に使い分けています。AIに任せるのは下書きと整理まで、数値の検証と最終判断は有資格者が行います。
- 「読む・書く・整理する」はAI、「確かめる・判断する・責任を持つ」は人
- 効果が大きいのは、月次報告、精算書・請求書の処理、税制改正の下調べ
- 税率・期限・要件を含む出力は、国税庁などの一次情報で裏取りしてから使う
- 学習オフ・匿名化・一次情報の検証・人による確定・台帳化の5つを運用ルールとして文書化
- この運用を顧問先の規模に合わせて移植するのが、当事務所のAI導入支援
使っている道具と使い分け
「会計事務所はAIを実際どう使っているのか」は、AI活用の実例を探している経営者や士業の方からよくいただく関心です。ツールの名前は知っていても、実務のどの作業にどう効くのかはイメージしづらいものです。当事務所が使っている道具と、選んでいる理由は次のとおりです。
| 道具 | 主な用途 | 選ぶ理由 |
|---|---|---|
| Claude | 長文資料の読解、報告書・文書の下書き、論点整理 | 日本語の文章精度と、長文の読み落としの少なさ |
| Gemini | スプレッドシートの集計、Gmailの下書き、検索を絡めた下調べ | Google Workspaceとの一体運用 |
| Claude Cowork | ファイル整理や、複数ステップの定型作業をまとめて任せる | 「作業のかたまり」を依頼できるエージェント型 |
ClaudeとGeminiの細かな使い分けは「ClaudeとGeminiの経理・税務での使い分け」で詳しく比べています。AIの機能・料金・プランは変更が多いため、業務で使う前に各社の公式情報で最新の内容を確認してください(この記事の記載は2026年10月時点のものです)。
当事務所では、月次業務、Coworkへの作業の委任、調査・改正対応、顧問先への導入支援の4つの場面でAIを使っています。場面ごとの使い方を順に紹介します。

場面1:月次業務——報告書づくりが半分になる
顧問先の試算表が締まったら、主要科目の変動説明の下書きをClaudeが作り、数値の検証と経営への示唆を有資格者が加えます。スプレッドシートでの集計とグラフの下準備はGeminiの担当です。流れは次のとおりです。
- 試算表を締める会計ソフトで当月の記帳を終え、預金や借入金の残高が通帳・返済予定表と一致していることを確認します。
- 推移表とグラフを用意するGeminiでスプレッドシートに前月・前年同月との比較を並べ、グラフの下準備をします。
- 変動説明の下書きを作る顧問先の名前などを置き換えた推移表をClaudeに渡し、大きく動いた科目と考えられる要因の候補を書かせます。
- 有資格者が検証し、示唆を加える数字を元の帳簿と照合し、要因の当否を確かめたうえで、経営への示唆と次の打ち手を書き加えます。
- 面談で使う報告書を顧問先と共有し、浮いた時間を「次の打ち手の検討」に回します。
具体例:変動説明を頼むときの依頼文
「添付の推移表で、前月から大きく動いた科目を3つ選び、考えられる要因を箇条書きにしてください。数字は表の値だけを使い、推測の部分は推測と明記してください。判断できない点は『要確認』として残してください。」
この型により、月次報告の作成時間は当事務所の体感で半分以下になり、浮いた時間は面談での検討に回っています。同じ仕組みは顧問先の経理にも展開でき、経理担当者の残業対策(「経理担当者のためのClaude活用」)として機能する場合があります。
場面2:Coworkに「作業のかたまり」を任せる
Claude Coworkは、チャットで1問1答するのではなく、フォルダ内のファイル整理、複数資料からの一覧表づくり、定型レポートの組み立てといった複数ステップの作業をまとめて任せられるのが特徴です。
当事務所では、精算書・請求書類の読み取りから仕訳ドラフトの組み立て(「中古車販売業の会計」で触れたオークション精算書の処理など)や、ブログ・資料の一括整備のような「人がやると半日かかる段取り仕事」に使っています。経理での使い方の全体像は「Claude Cowork 経理活用ガイド」にまとめています。
重要なのは、Coworkでも最終確認は人という原則が変わらないことです。任せる範囲を「下書き・整理まで」と決めているからこそ、安心して大きな作業を渡せます。仕訳ドラフトを会計ソフトに登録する前後には、次の点を人が確認します。
- 金額・日付・取引先が、精算書や請求書などの証憑と一致しているか
- 税区分(10%・8%・対象外)と、インボイスの登録番号の有無
- 銀行・カードの連携明細で仕訳する取引を、証憑から別に起こしていないか(二重計上の防止)
- 登録後の帳簿残高が、口座・カードの実際の残高と1円単位で一致しているか
残高が合うまでは「完了」にしない
AIで作業が速くなるほど、確認を飛ばしたくなります。当事務所では、登録した件数と残高の照合を済ませるまでは作業を完了扱いにしないことを決めています。証憑は連携明細の勘定科目や税区分を決める資料として使い、同じ取引を二重に計上しないようにしています。
場面3:調査・改正対応——下調べの高速化
税制改正(令和8年度改正の内容は「令和8年度税制改正のガイド」)の論点整理、顧問先への影響一覧の下書き、研修資料づくりは、AIの読解力が活きやすい場面です。ただし税率・期限・要件は国税庁などの一次情報で裏取りし、適用の判断は有資格者が行います。
- 論点を整理させる改正の概要資料を渡し、項目・適用開始の時期・対象者の一覧に整理させます。
- 一次情報と照合する税率・金額・期限・適用開始日を、国税庁や財務省の資料と一つずつ照合します。
- 影響一覧の下書きを作る照合済みの内容をもとに、顧問先の業種や規模ごとに影響しそうな項目を洗い出します。
- 有資格者が適用を判断する顧問先ごとに、使える制度・対応の時期・必要な手続きを決めます。
AIは、学習した時点より後の改正を知らなかったり、改正前の数字で答えたりすることがあります。2026年10月時点で特に古い答えが混じりやすい論点は次のとおりです。
| 論点 | よくある古い答え | 2026年10月時点の内容 |
|---|---|---|
| 所得税の基礎控除(令和8年分) | 48万円(改正前の額) | 合計所得に応じた段階制(489万円以下は104万円など) |
| 免税事業者からの仕入れの経過措置 | 2026年10月から50% | 2026年10月1日〜2028年9月30日は70%(50%は2028年10月1日から) |
| 少額減価償却資産の特例 | 30万円未満 | 40万円未満(2026年4月1日以後の取得。2029年3月31日まで) |
| 北海道の最低賃金 | 1,075円 | 2026年10月1日から1,131円 |
| 社会保険の106万円の壁 | 撤廃予定 | 賃金要件は2026年10月1日に撤廃済み |
| 青色申告特別控除75万円 | 2026年分から | 令和9年分から |
| IT導入補助金 | IT導入補助金 | デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金) |
「AIの答えをそのまま使わない」運用は、事務所として文書化しています。危ない回答の見抜き方は「AIの税務回答を見抜くポイント」で紹介しています。
人が確認する点:運用ルールの公開
当事務所のAI利用のルールは五つです。AIの導入を検討する会社・事務所は、この五つをそのまま雛形にしていただいて構いません。
- 学習に使われないプラン・設定で利用する(入力した内容がAIの学習に使われないことを確認してから業務に使う)
- マイナンバー・口座情報などは入力せず、顧問先の情報は名称などを置き換えて(匿名化して)扱う
- 数値・税率・期限を含む出力は、国税庁などの一次情報で検証する
- 成果物は人が確定し、責任を持つ(顧問先に渡す報告書・申告書・説明文は有資格者が確定させる)
- どの業務にどの道具を使ったかを台帳にし、問題があったときに追えるようにする
入力してよい情報(置き換えたうえで)
- 勘定科目・税区分の判断ルール
- 事務所の文書テンプレート
- 公開されている法令・通達・国税庁の資料
- 顧問先名を置き換えた試算表や推移表の数値
入力しない情報
- マイナンバー
- 口座番号・カード番号
- パスワードなどの認証情報
- 個人を特定できる氏名・住所・生年月日など
税理士には税理士法第38条、公認会計士には公認会計士法第27条で守秘義務が定められています。AIを使う場合も、入力先のサービスがデータをどう扱うか(学習に使うか、どこに保存されるか)を確認し、守秘義務や個人情報保護法、マイナンバー法のルールに反しない範囲で使います。士業の守秘義務との整理は、関連記事でまとめています。
顧問先への展開:自分たちで使っているから設計できる
当事務所のAI導入支援は、ここまで書いた自所の運用を、そのまま顧問先の規模に合わせて移植するものです。進め方は「業務の棚卸し→1業務の型化→機密ルールの整備→月次レビュー」の4段階で、詳しくは「AI導入の90日ロードマップ」で紹介しています。
| 段階 | やること | 顧問先に用意していただくもの |
|---|---|---|
| 業務の棚卸し | 時間を取られている業務を洗い出し、AIに渡せる部分を仕分ける | 担当者ごとの主な業務と、かかっている時間の目安 |
| 1業務の型化 | 効果が出やすい業務を1つ選び、依頼文と確認手順を決める | その業務の資料の見本(個人情報を除いたもの) |
| 機密ルールの整備 | 入力してよい情報・しない情報、使うサービスと設定を文書にする | 社内の情報管理の決まり(あれば) |
| 月次レビュー | 使った業務と効果、ヒヤリとした点を毎月振り返り、型を直す | 使った記録(台帳) |
建設・小売・運送・医療系など、業種ごとの型をためながら進めています。机上の研修ではなく「毎日使っている事務所の実装支援」である点が、当事務所の提供価値と考えています。
どの業務をAIに渡せるかは、業務の量と扱う情報の種類で変わります。状況を伺ったうえで、対応範囲と進め方をご提案します。
無料で相談するよくある質問
AIに任せて品質は落ちませんか?
下書きをAI、確定を人という分担では、品質が安定しやすいと考えられます。人の時間が検証と判断に集中しやすくなるためです。品質の低下につながりやすいのは、AIの出力を検証しないまま使う運用です。
Coworkはどんな会社に向きますか?
経理書類・案件資料・報告書づくりなど、ファイルやデータの「整理・組み立て」が定期的に発生する会社に向くと考えられます。まずはチャット型のClaudeやGeminiで型を作り、作業がかたまりになってきたら検討する順番が自然です。
導入にあたり、何から相談すればよいですか?
時間を取られている業務を3つ書き出してお持ちください。どれをAIに渡せるか、その場で仕分けからご提案します。お問い合わせフォームで「AI活用の相談」とお書き添えください。
無料のAIサービスを業務に使ってもよいですか?
料金の有無よりも、入力した内容が学習に使われない設定にできるか、データの保存や管理の機能があるかで判断します。顧問先や取引先の情報を扱う業務では、こうした設定を確認できるサービスに限るのが安全です。
AIの回答の根拠はどう確認しますか?
回答に根拠となる資料名や条文を書かせ、その資料を国税庁や財務省などの公式サイトで開いて照合します。資料名や条文の番号そのものが誤っていることもあるため、資料が実在するかどうかから確かめます。
まとめ
当事務所は、Claude(読解・文章)・Gemini(表計算・メール)・Cowork(作業のかたまり)を使い分け、「読む・書く・整理する」をAI、「確かめる・判断する・責任を持つ」を人に振り分けています。効果が大きいのは月次報告・精算書の処理・改正対応で、学習オフ・匿名化・一次情報の検証・人による確定・台帳化の5つのルールで品質と機密を守っています。この運用を顧問先の規模に移植するのが、当事務所のAI導入支援です。
札幌の公認会計士・税理士事務所
AI活用と税務顧問のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
