整骨院・接骨院の開業では、保健所への施術所開設届、地方厚生局への受領委任の申出、税務署への開業届・青色申告承認申請書と、届出先が複数に分かれます。保険の施術料は消費税が非課税、自費施術や物販は課税という区分も、開業時の届出と記帳の設計に関わります。
この記事の結論
税務署へは、開業届を開業の日から1か月以内、青色申告承認申請書をその年の3月15日まで(1月16日以後の開業は開業の日から2か月以内)に出します。保険を扱うなら、施術所開設届(開設後10日以内)と受領委任の申出を、開業日から逆算して準備します。
- 施術所開設届は保健所、受領委任の申出は北海道厚生局、税務の届出は税務署と、提出先が分かれる
- 青色申告特別控除は令和8年分まで最大65万円。令和9年分からは要件を満たすと75万円
- 療養費の対象となる保険施術は消費税が非課税。自費施術と物販は課税なので、区分して記帳する
- 新規開業の個人は、開業した年と翌年は原則として消費税が免税。インボイス登録は事業者との契約があるかで判断する
- 療養費の入金は施術した月より後になるため、売上は施術した月に計上し、未収入金で管理する
整骨院・接骨院とは?鍼灸院との違いと制度上の位置づけ
整骨院・接骨院は、柔道整復師の国家資格を持つ人が、骨折・脱臼・捻挫・打撲などの施術を行う施術所です。医療法上の病院・診療所ではなく、柔道整復師法に基づく施術所として、保健所への届出によって開設します。「整骨院」と「接骨院」は呼び方の違いで、制度上の扱いは同じです。
骨折・脱臼の患部への施術は、応急手当の場合を除き、医師の同意が必要です。健康保険の療養費の対象になるのは、急性または亜急性の外傷性の骨折・脱臼・打撲・捻挫などで、慢性的な肩こりや疲労回復を目的とした施術は保険の対象外(自費)です。この保険と自費の区分が、消費税の非課税と課税の区分にもそのままつながります。
| 項目 | 整骨院・接骨院 | 鍼灸院 |
|---|---|---|
| 必要な資格 | 柔道整復師 | はり師・きゅう師 |
| 根拠となる法律 | 柔道整復師法 | あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律 |
| 施術所の届出 | 開設後10日以内に保健所へ | 開設後10日以内に保健所へ |
| 保険(療養費)の主な対象 | 急性・亜急性の外傷性の骨折・脱臼・打撲・捻挫など | 医師の同意書がある神経痛・腰痛症などの慢性的な痛み |
| 保険の請求の仕組み | 受領委任が中心(患者は一部負担金を支払う) | 受領委任・代理受領・償還払いなど(保険者によって異なる) |
受領委任とは
受領委任とは、患者が窓口で一部負担金だけを支払い、残りの療養費を施術所が患者に代わって保険者に請求し、受け取る仕組みです。整骨院・接骨院で保険を扱うには、施術管理者が地方厚生局(北海道は北海道厚生局)に受領委任の取扱いを申し出て、承諾を受ける必要があります。
受領委任を取り扱う施術管理者には、一定期間の実務経験と研修の受講が要件として求められています。勤務先から独立する場合は、要件を満たしているかを開業準備の早い段階で確認しておきます。
開業前後に行う主な届出一覧
届出先は、保健所、地方厚生局、税務署、北海道(道税事務所)、労働基準監督署・ハローワークと複数にわたります。漏れがないよう、チェックリストとしてお使いください。
| 届出・手続き | 届出先 | 期限・タイミング |
|---|---|---|
| 施術所開設届 | 施術所の所在地を管轄する保健所 | 開設後10日以内(構造設備の基準は開設前に確認) |
| 受領委任の取扱いの申出 | 地方厚生局(北海道厚生局) | 保険の取扱いを始める前(承諾の時期と必要書類は事前に確認) |
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 所轄の税務署 | 開業の日から1か月以内 |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 所轄の税務署 | その年の3月15日まで(1月16日以後の開業は開業の日から2か月以内) |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 所轄の税務署 | 原則その年の3月15日まで(1月16日以後の開業は開業の日から2か月以内) |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 所轄の税務署 | 開設の日から1か月以内(スタッフを雇う場合) |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 所轄の税務署 | 随時(給与の支払を受ける人が常時10人未満の場合) |
| 事業開始等の申告(個人事業税) | 北海道(道税事務所) | 開業後すみやかに(期限・様式は北海道の案内で確認) |
| 労災保険・雇用保険の手続き | 労働基準監督署・ハローワーク | 従業員を雇用したら速やかに |
保険の取扱いを開業日から始めたい場合は、施術所開設届と受領委任の申出の順番と時期を先に固め、そのうえで税務署への届出を進めると手戻りが少なくなります。源泉所得税の納期の特例の承認を受けると、スタッフの給与から差し引いた源泉所得税を、1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日の年2回にまとめて納付できます。
札幌市内で開業する場合の窓口
札幌市は保健所を設置する市のため、市内の施術所開設届は市の保健所が窓口です(担当部署や事前相談の方法は市の案内で確認してください)。
税務署は、北区・東区が札幌北、豊平区・南区・清田区が札幌南、白石区・厚別区が札幌東の管轄です。西区・手稲区と中央区の西側は札幌西、中央区のおおむね西10丁目以東は札幌中で、個別の住所は国税庁の管轄区域表で確認します。2026年7月10日から市内5署の内部事務は札幌業務センターに集約され、書面の届出は同センターへ郵送します(e-Taxや窓口への持参は所轄の税務署)。
届出とあわせて、開業前にそろえておきたいものは次のとおりです。
- 保険施術と自費施術の比率を見込んだ事業計画と収支の見通し
- 開業資金と自己資金の額(内装・施術ベッド・物理療法機器と、療養費が入金されるまでの運転資金)
- 施術所の構造設備の基準と、受領委任の施術管理者の要件の確認
- 開業届・青色申告承認申請書の準備と、会計ソフト・記帳の体制
- 屋号・事業用口座の用意と、療養費の入金口座の一本化
税務署への届出と青色申告のメリット
個人で開業する整骨院・接骨院は、開業の日から1か月以内に開業届を税務署へ提出します。あわせて青色申告承認申請書を期限内に出すと、その年から次の特典を使えます。
- 青色申告特別控除:令和8年分までは最大65万円(正規の簿記、期限内申告、e-Taxでの申告か電子帳簿保存が要件)。紙で提出する場合は55万円(貸借対照表と損益計算書の添付などが要件)、簡易な記帳なら10万円です。令和9年分からは、仕訳帳と総勘定元帳を電子帳簿保存法の要件で保存するなどの要件を満たすと75万円になります
- 純損失の繰越控除:開業初年度などに赤字が出た場合、翌年以後最大3年間繰り越して所得と相殺できる
- 青色事業専従者給与:事前に届け出れば、生計を一にする家族への給与を、届け出た金額の範囲で必要経費にできる
ツール青色申告と白色申告の節税効果を比べる所得の見込みを入れると、青色申告特別控除などで税金がどれだけ変わるかを試算できます。計算する
「開業から2か月以内」は1月16日以後の開業の場合
青色申告承認申請書の期限は、1月16日以後に開業した場合が「開業の日から2か月以内」で、1月1日〜15日に開業した場合はその年の3月15日です。期限を過ぎるとその年は白色申告になり、控除や特例が使えません。開業届と同じ日に出しておくと、出し忘れを防げます。
消費税の扱いと保険施術の非課税
健康保険の療養費の対象となる施術は、受領委任で保険者から受け取る療養費も、患者の一部負担金も、消費税が非課税です。一方、自費施術や物販は課税売上になります。両方を行う整骨院・接骨院では、課税売上と非課税売上を区分して記帳する必要があります。
| 収入の種類 | 消費税 | 主な例 |
|---|---|---|
| 療養費の対象となる施術 | 非課税 | 受領委任で保険者から受け取る療養費、患者の一部負担金 |
| 自費施術 | 課税(10%) | 骨盤矯正・美容目的の施術、慢性的な肩こりや疲労回復のための施術、スポーツのコンディショニング |
| 物販 | 課税(10%。飲食料品は8%) | サポーター、テーピング、インソール、健康食品 |
新規開業の個人は、基準期間(前々年)の課税売上高がないため、開業した年と翌年は原則として消費税の納税義務がありません。ただし翌年は、前年1〜6月の課税売上高と給与等の支払額がいずれも1,000万円を超えると課税事業者になります。保険施術は非課税なので課税売上高には含まれず、判定の対象になるのは自費施術と物販の売上です。自費メニューを増やす計画がある場合は、早めに確認しておきます。
無料ツール消費税の課税事業者になるかを判定する基準期間・特定期間の課税売上高などを入れると、納税義務があるかを確認できます。判定する
インボイス登録は必要?
患者は消費者なので、保険施術や自費施術の患者からインボイスを求められることはほとんどありません。一方、次のように事業者から代金を受け取る取引がある場合は、相手が仕入税額控除のためにインボイスを求めることがあります。
- 企業やスポーツチームとトレーナー契約を結んでいる
- 介護施設やデイサービスから、機能訓練などの業務を受託している
- 企業の福利厚生として、出張施術を請け負っている
登録すると、免税事業者の規模でも消費税の申告が必要になります。個人で登録した場合は、令和8年分までは2割特例、令和9・10年分は3割特例(登録しなければ免税事業者になる人が対象)を使える場合があります。簡易課税を選ぶ場合、施術はサービス業として第5種(みなし仕入率50%)、物販は小売業として第2種(80%)に当たります。制度の全体像は「インボイス制度の実務ガイド」にまとめています。
自費施術の割合や事業者との契約の有無で、消費税の判定とインボイス登録の要否が変わります。開業前の段階から初回無料で整理できます。
無料で相談する会計・記帳のポイント
整骨院・接骨院の収入は、保険者から入金される療養費と、窓口で受け取る一部負担金・自費施術・物販の代金に分かれます。入金の時期も方法も違うため、混同せずに管理することが正確な記帳の基本です。
- 請求月と入金月のずれ:療養費は施術した月の翌月に請求し、入金はさらに翌月以降になるのが一般的で、保険者や請求の方法によって時期が変わります。売上は施術した月に計上し、入金までは未収入金として管理します
- 返戻・減額:請求が差し戻されたり減額されたりした分は、確定した時点で売上を調整します
- 窓口の現金:一部負担金や自費施術の代金は、日計表と現金の残高を毎日照合します
- 回数券・前払い:自費メニューの回数券やコース料金を前払いで受け取ったときは前受金とし、施術した分を売上に計上します
- 材料費・消耗品:包帯・テーピング・湿布などの施術材料は、消耗品費などとして経費にできます。患者に販売するサポーターなどは、仕入と在庫として管理します
- 請求代行の手数料:団体や代行業者に療養費の請求を任せる場合の手数料も経費になります
施術ベッド・物理療法機器と開業費の処理
施術ベッドや電気治療器、超音波の観察装置、内装工事などは、取得価額で処理が分かれます。10万円未満はその年の経費にでき、20万円未満は一括償却資産として3年で均等に経費にすることも選べます。青色申告の中小事業者は、2026年4月1日以後に取得した40万円未満の資産を、年300万円まで全額経費にできます(2026年3月31日までの取得は30万円未満)。それ以外は耐用年数に応じて減価償却します。
開業前に支払ったチラシやホームページの広告費、内覧会の費用、開業準備の交通費などは「開業費」として資産に計上し、開業後の好きな年に経費にできます。内装工事や機器は開業費ではなく、固定資産として扱います。開業時は機器が一度に増えるため、毎年1月31日(休日の場合は翌開庁日)までの償却資産(固定資産税)の申告も必要です。課税標準額の合計が150万円未満なら課税されず、令和9年度分からは180万円未満に引き上げられます。
- 事業用の口座とカードを開業前に分け、療養費の入金口座を一本化する
- 会計ソフトの補助科目で、保険施術・自費施術・物販を分けて記帳できるようにする
- 請求の明細と入金を突き合わせ、返戻・減額を月ごとに確認する
- 電子取引で受け取った請求書・領収書は、電子データのまま保存する(2024年1月1日以後は義務)
月次で試算表を確認できる体制にしておくと、課税区分の誤りや未収入金の計上漏れを早い段階で直せます。決算前に確認したい項目は「経理・決算セルフチェック」で点検できます。
開業後にかかわる個人事業税・社会保険・法人化
個人事業税では、柔道整復は「医業に類する事業」として第3種事業に当たり、税率は3%です(事業主控除290万円)。前年の所得をもとに北海道から通知が届き、それに基づいて納付します。保険施術の収入がある場合の計算の細部は、道税事務所で確認してください。
院長本人は、国民健康保険と国民年金に加入します。施術所は社会保険の適用業種である「医療の事業」に含まれるとされ、個人の整骨院でも常時5人以上の従業員を使用すると、健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所になります。該当するかどうかは年金事務所で確認しておきます。受付スタッフを時給で雇う場合は、2026年10月1日からの北海道の最低賃金(1,131円)を下回らないように注意します。保険料率や最低賃金の改定は「整骨院・治療院の経営に役立つ最新情報」で確認できます。
施術所は、医療法人でなくても株式会社や合同会社などの法人で開設・運営できます。利益が増えて所得税の税率が高くなってきたら、法人化で税負担と社会保険料がどう変わるかを比べる段階です。法人の申告は事業年度終了の日の翌日から2か月以内で、法人税の中小法人の軽減税率(年800万円以下の部分は15%)は2027年3月31日までに開始する事業年度が対象です。
よくある質問
勤務柔道整復師を辞めた年に開業した場合、確定申告はどうなりますか?
勤務先の給与所得と、開業後の事業所得をあわせて確定申告します。退職した勤務先の源泉徴収票が必要なので、早めに受け取っておきます。所得税の確定申告は翌年2月16日〜3月15日(土日の場合は翌平日)で、令和8年分は2027年2月16日〜3月15日です。
自費施術だけで開業する場合も、施術所開設届は必要ですか?
柔道整復の施術を行う施術所として開設するなら、保険を扱うかどうかに関係なく、保健所への開設届が必要です。保険を扱わない場合は受領委任の申出は不要ですが、自費施術はすべて消費税の課税売上になるため、課税事業者の判定を早めに確認します。
開業資金の借入金の返済は、経費になりますか?
経費になるのは利息だけで、元本の返済は経費になりません。借入金で購入した施術ベッドや内装は、取得価額に応じて減価償却などで経費にしていきます。返済額と減価償却費の差が手元資金のずれになるため、資金計画では両方を分けて見込みます。
家族に受付や経理を手伝ってもらう場合、何を届け出ますか?
家族に給与を支払うには、青色事業専従者給与に関する届出書を期限内に出し、届け出た金額の範囲で支給します。給与を支払う事務所として、給与支払事務所等の開設届出書も必要です。仕事の内容と勤務時間に見合う金額であることが前提です。
まとめ
整骨院・接骨院の開業では、保健所への施術所開設届と北海道厚生局への受領委任の申出、税務署への開業届・青色申告承認申請書を、期限から逆算して準備します。保険施術は非課税、自費施術と物販は課税という区分を記帳の段階から分け、療養費の入金の遅れも見込んで資金計画を立てましょう。自費の比率や事業者との契約によっては、消費税とインボイスの判断も早めに必要になります。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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- その場でご契約を迫ることはありません
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出典・参考(公的機関)
- 国税庁 タックスアンサー No.2090 新たに事業を始めたときの届出など
- 国税庁 タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除
- 国税庁 タックスアンサー No.6505 簡易課税制度
- 札幌国税局「税務署の所在地・管轄区域」
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
