税務調査に強い税理士とは、調査官を言い負かす人ではなく、争点を早く見抜き、記録と証拠で説明を組み立てられる税理士です。面談では立会いの初動や書面添付制度の使い方を具体的に語れるかを確かめ、事前通知が届いたらできるだけ早く相談しましょう。
この記事の結論
税務調査での強さは「争点の整理」と「根拠のある説明」で決まります。面談で調査対応の段取りを具体的に語れるかを確かめ、通知が届いたら早めに依頼するほど準備の質が上がります。
- 事前通知を受けた後の初動(対象期間の確認・資料の洗い出し・論点の整理)を説明できるか
- 書面添付制度を活用しているかは、日頃の申告品質を測る材料になる
- 修正申告と更正の違いなど、納税者の選択肢を中立に説明してくれるか
- 仮装・隠ぺいと認定されると重加算税(35%・無申告は40%)の対象。安易な認定には事実と根拠で反論する
- 通知が届いた後でも依頼はできるが、早いほど打てる手が増える
「税務調査に強い税理士」とはどんな税理士?
税務調査は、提出した申告書の内容が正しいかを税務署が確かめる手続きで、法人・個人を問わず行われます。強い税理士とは、調査官と言い争う人ではありません。争点を早く見抜き、事実と証拠を整理し、主張すべき点は法令や通達の考え方を示して主張できる人です。
例えば経費の家事按分が論点になった場合、感覚で押し問答をしても結論は動きません。利用実態の記録をもとに、按分割合の合理性を説明できるかで結果が分かれます。誤りが明らかな点は早めに認め、争うべき点に時間を使う判断も「強さ」の一部です。
頼れる税理士の対応
- 事前に論点を洗い出し、説明資料を準備する
- 事実の説明と法令の解釈を分けて話す
- 誤りは認め、争う点は根拠を示して主張する
- 修正申告・更正それぞれの影響を説明する
注意したい対応
- 調査官との関係の良さを強調するだけ
- 「何とかなる」と言って準備をしない
- 指摘をすべて受け入れるよう勧める
- 根拠を示さずに全面的に争う
特に差が出るのが重加算税の場面です。売上の除外や書類の改ざんなど仮装・隠ぺいがあったと認定されると、過少申告加算税に代えて35%(無申告の場合は40%)の重加算税が課されます。単なる計上誤りが仮装・隠ぺいと扱われそうなときに、事実関係を丁寧に示して反論できるかが、税理士の力量を分けます。
税務調査の流れと、各段階で税理士がすること
中小企業や個人事業主の調査は、通常、納税地を所轄する税務署が担当します。事業所などに来て行う実地の調査では、原則として事前に日時・場所・税目・対象期間などが通知されます。
| 段階 | 主な内容 | 税理士の役割 |
|---|---|---|
| 事前通知 | 調査の日時・場所・税目・対象期間などの連絡 | 税務代理権限証書の提出、日程の調整、対象範囲の確認 |
| 事前準備 | 帳簿・証憑・契約書・通帳などの確認 | 想定される論点の洗い出し、説明資料の作成、経営者との打合せ |
| 実地の調査 | 事業所での聞き取りと帳簿・資料の確認 | 立会い、質問の意図の確認、事実と法令解釈を分けた説明 |
| 結果の説明 | 指摘事項の説明と修正申告の勧奨 | 指摘の根拠の確認、反論・交渉、選択肢の説明 |
| 終了 | 修正申告・更正、または指摘なし(是認)の通知 | 修正申告書の作成、納付の段取り、再発防止策の提案 |
税務代理権限証書を提出すると、税務署とのやり取りや日程調整を税理士経由で進められます。証書に同意の記載をしておけば、事前通知を税理士だけに行ってもらうこともできます。調査の連絡を経営者が直接受けずに済むため、落ち着いて準備に入れます。
札幌市内の事業者が調査を受ける場合
市内の調査は、区ごとに管轄が分かれた5つの税務署(中・北・南・西・東)が担当します。例えば北区・東区は北税務署、白石区・厚別区は東税務署です。中央区は、おおむね西10丁目以東が中税務署、大通西11丁目以西や円山・宮の森、中島公園周辺などが西税務署の管轄です。境界付近は住所ごとに国税庁の管轄区域表で確認してください。
2026年7月10日からは5署の内部事務が札幌業務センターに集約されました。修正申告書などを書面で郵送するときの宛先は同センター、e-Taxでの提出や窓口への持参は所轄の税務署です。
強い税理士の特徴チェックリスト
次の項目に多く当てはまるほど、調査に備えた体制が整っている税理士だと判断できます。
- 立会いの経験を尋ねると、進め方や論点になりやすい項目を具体的に話せる
- 事前通知を受けた後の初動(対象期間の確認・資料の洗い出し・打合せ)を段取りとして説明できる
- 書面添付制度(申告書の作成過程を税理士が書面で示す制度)を活用している
- 修正申告と更正の違いなど、納税者側の選択肢を中立に説明してくれる
- 主張するときは、法令・通達・裁決事例などの根拠を示す
- 調査後に、再発防止のための経理の改善まで提案してくれる
反対に、「税務署に顔が利く」といった人間関係の話ばかりで、手順や根拠の話が出てこない場合は注意が必要です。調査の結論は、関係の良し悪しではなく、事実と証拠で決まります。
面談で聞きたい質問と、答えの見方
調査対応の実力は、肩書きよりも具体的な質問への答え方に表れます。初回の面談では、次のような質問をしてみてください。
| 質問 | 確認できること | 頼れる答えの例 |
|---|---|---|
| 事前通知が届いたら、まず何をしますか | 初動の段取り | 対象期間と税目の確認、日程調整、資料の洗い出し、想定論点の整理を順に説明する |
| 立会いでは、どこまで代わりに説明してもらえますか | 役割分担 | 事実関係は経営者、法令の解釈や主張は税理士、といった分担を示す |
| 書面添付制度は使っていますか | 申告書の品質 | 使っているかどうかと、その理由を説明できる |
| 指摘に納得できないときはどうしますか | 主張の力と中立性 | 根拠の示し方、修正申告と更正の違い、不服申立ての道まで説明する |
| 調査が終わった後、何を見直しますか | 再発防止の視点 | 証憑の保存方法や経理の流れの改善を提案する |
答えが一般論にとどまる場合は、「直近の立会いではどんな項目が論点になりやすいか」と一歩踏み込んで聞いてみましょう。守秘義務に配慮しながら、論点の傾向や準備の勘所を話せるかどうかが判断材料になります。
書面添付制度は税務調査にどう効く?
書面添付制度は、税理士が申告書の作成にあたって計算・整理した事項や相談に応じた事項を書面にまとめ、申告書に添付する制度で、税理士法に定めがあります。この書面が添付されていると、税務署は調査の事前通知をする前に、税理士から意見を聴く機会を設けることになっています。
意見聴取の段階で疑問が解消されれば、調査に移行しないこともあります。調査に進んだ場合でも、論点が事前に絞られるため、やり取りが効率的になりやすいのが利点です。
書面添付は「申告品質の表れ」として見る
書面添付は、税理士が申告内容を自ら確認し、説明できるという意思表示でもあります。添付すれば調査が来ないという制度ではありませんが、日頃から帳簿と証憑の確認を丁寧に行っている事務所かどうかを見分ける材料になります。
修正申告と更正は何が違う?加算税はどれくらい?
調査で誤りが見つかると、納税者が自ら修正申告をするか、税務署が更正(税額の訂正)をするかのどちらかで手続きが終わります。追加の本税に加算税・延滞税がかかる点はどちらも同じですが、その後に取れる手段が違います。
| 項目 | 修正申告 | 更正 |
|---|---|---|
| 誰が行うか | 納税者 | 税務署長 |
| 内容に不服がある場合 | 不服申立てはできない(更正の請求は可能) | 再調査の請求や審査請求ができる |
| 行われる場面 | 調査で勧奨され、納税者が内容に納得して応じる | 修正申告に応じない場合などに税務署が行う |
| 加算税 | 過少申告加算税・重加算税などは同じ考え方で課される | 同左 |
税務署は修正申告を勧める際、修正申告をすると不服申立てはできないが更正の請求はできる旨を説明することになっています。納得できない部分が残るときは、税理士と根拠を確認してから応じるかを決めましょう。
| 加算税の種類 | 割合 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 原則10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%) | 期限内に申告したが税額が少なかった |
| 無申告加算税 | 原則15%(50万円超の部分は20%、2024年1月1日以後に法定申告期限が到来するものは300万円超の部分30%) | 期限までに申告しなかった |
| 重加算税 | 過少申告・不納付の場合35%、無申告の場合40% | 事実の仮装・隠ぺいがあった |
計算例:調査で本税が150万円増えた場合の過少申告加算税
例えば、期限内申告の税額が40万円の会社で、調査により本税が150万円増えたとします。15%がかかるのは、期限内申告税額(40万円)と50万円のいずれか多い額=50万円を超える部分です。
- 本税の増加分全体に10%:150万円×10%=15万円
- 50万円を超える部分に上乗せ5%:(150万円−50万円)×5%=5万円
- 過少申告加算税の合計:15万円+5万円=20万円
このほか、納付までの日数に応じて延滞税がかかります。仮装・隠ぺいと認定されれば、過少申告加算税に代えて150万円×35%=52.5万円の重加算税になります。
ツール延滞税・加算税の概算を計算する追加になる本税の額などを入れると、延滞税と加算税のおおよその額を確認できます。計算する
いつ依頼する?費用と自分で対応するリスク
顧問税理士がいない場合や、今の対応に不安がある場合でも、事前通知が届いてから税理士に依頼することはできます。調査の日程は合理的な理由があれば変更を相談できるため、通知を受けたら急いで日程を確定させず、まず相談先を決めましょう。
具体例:現金売上の計上漏れを疑われた小売業の準備
例えば年商3,000万円の小売業で、現金売上の計上漏れが疑われたケースを考えます。レジの記録、通帳への入金、仕入と棚卸の資料を事前に突き合わせ、差額が出る理由を説明できる資料を作っておきます。それだけでも、調査の長期化を防げる可能性が高まります。準備の質が結果を左右するため、通知が届いたらできるだけ早く動くのが基本です。
調査対応の費用は、立会いの日数、対象となる税目と年数、事前の資料整理の量、修正申告書の作成の有無などで決まります。顧問契約に調査対応が含まれるかどうかも事務所ごとに違うため、依頼前に範囲と料金の関係を確認してください。内訳の考え方は税務調査の立会い費用が決まる要素、進み方は立会いの依頼から完了までの流れで整理しています。
自分だけで対応すると、質問の意図が分からないまま答えて不利な心証を与えたり、本来主張できる点まで受け入れてしまったりすることがあります。受け入れた分だけ納税額は増えるため、専門家に依頼する費用と、想定される追徴の大きさを比べて判断しましょう。
当事務所でも、調査の通知が届いた後のご相談に対応しています。なお、決算・申告だけのスポット依頼はお受けしていないため、調査後の申告や経理の見直しは、継続的な会計・税務顧問の中で支援しています。
調査の通知が届いたら、日程を確定させる前にご相談ください。初回相談は無料で、対象期間と想定される論点を一緒に整理します。
無料で相談するよくある質問
顧問税理士がいるのに、調査対応だけ別の税理士に頼めますか?
頼むことはできます。税務代理権限証書を提出すれば、その税理士が代理人として立ち会います。ただし、申告書を作成した経緯は今の税理士が詳しいため、資料や説明の引継ぎを丁寧に行うことが大切です。
事前通知なしで調査に来ることはありますか?
あります。現金取引が多い業種などで、事前に通知すると正確な事実の把握が難しくなるおそれがあると税務署が判断した場合は、通知なしで調査が始まることがあります。その場合も、まず顧問税理士に連絡し、立会いや日程について相談しましょう。
税務調査は何年前までさかのぼりますか?
実際の対象期間は事前通知で示されます。税務署が税額を更正できる期間は、原則として法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為がある場合は7年です。法人税の欠損金額に係る更正は10年です。
調査に備えて、日頃からできることはありますか?
帳簿と証憑を整理して保存期間(法人は原則7年)を守ること、電子で受け取った請求書や領収書を電子データのまま保存することが基本です。優良な電子帳簿の要件を満たして事前に届け出ておくと、申告漏れがあった場合の過少申告加算税が5%軽減されます(仮装・隠ぺいがある場合を除きます)。
まとめ
税務調査に強い税理士は、争点を整理し、事実と根拠で説明を組み立てられる税理士です。面談では初動の段取り、書面添付制度の活用、修正申告と更正の違いを具体的に語れるかを確かめましょう。通知が届いた後でも依頼はできますが、早く動くほど準備の質が上がります。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂
