鍼灸院(はり師・きゅう師が開設する施術所)を開業する際は、保健所への施術所開設届、税務署への開業届など、複数の行政手続きが必要です。手続きを後回しにすると、青色申告の適用開始が遅れたり、届出漏れのまま営業したりするリスクがあります。ここでは、鍼灸院の開業時に必要な主な届出と税務手続きを整理します。
この記事は、こんな方に役立ちます
- これから札幌・北海道で開業・起業する方
- 開業の手続きと順番を知りたい方
- 創業時の資金調達を相談したい方
- 鍼灸院はは「はり師・きゅう師」免許が必要で、開設前後に保健所への施術所届出が必要。
- 税務署への開業届は開業から1か月以内、青色申告承認申請は2か月以内が目安。
- 保険診療(療養費)は消費税非課税、自由診療は課税売上。収入区分の管理が重要。
- 従業員を雇う場合は労働保険・源泉徴収の手続きも開業と同時に準備する。
1. 鍼灸院の開業に必要な国家資格と施術所の届出
鍼灸院を開設できるのは、はり師・きゅう師の国家資格(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律)を持つ方です。整骨院の柔道整復師とは根拠法・免許が異なります。
- 施術所の開設・変更・廃止は、開設地を管轄する保健所(北海道の場合は各保健所・地域振興局保健環境部など)への届出が必要です。
- 届出の期限・必要書類は都道府県・市区町村によって異なるため、管轄保健所に事前に確認してください。
- 施術所の構造設備基準(換気・採光・消毒設備等)も法令で定められています。
2. 税務署への開業届と青色申告承認申請
個人事業として鍼灸院を開業する場合、税務署への届出が必要です。申告と節税の両面で、期限を守ることが重要になります。
| 届出・申請 | 提出先 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| 個人事業の開業届出書 | 所轄の税務署 | 開業日から1か月以内 |
| 青色申告承認申請書 | 所轄の税務署 | 開業日から2か月以内(その年から適用) |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 所轄の税務署 | 適用しようとする年の3月15日まで(新規開業の場合は開業日から2か月以内) |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 所轄の税務署 | 開設日から1か月以内(従業員を雇う場合) |
青色申告を選ぶと、最大65万円の青色申告特別控除(e-Taxまたは電子帳簿保存法の要件を満たした場合)を受けられます。開業直後の届出漏れが多いため、開業と同時に申請することをおすすめします。
3. 消費税と保険請求収入の区分
鍼灸院の収入は、保険診療(医師の同意書がある特定疾患への施術:療養費)と自由診療に分かれ、消費税の区分も異なります。
- 保険診療(療養費として支払われる部分)は社会保険医療として消費税が非課税。
- 自由診療(保険外施術)は消費税の課税売上。
- 開業初年は課税売上高が1,000万円以下なら原則免税事業者となりますが、資本的な投資(設備購入など)が多い場合は課税事業者の選択が有利になることもあります。
4. 従業員を雇う場合の社会保険・労働保険
鍼灸師やスタッフを雇用する場合は、税務署への届出に加え、社会保険・労働保険の手続きも必要です。
- 労働保険(労災保険・雇用保険):最初の従業員を雇った日から原則10日以内に、管轄の労働基準監督署・ハローワークへ届け出る(労災は労基署、雇用保険はハローワーク)。
- 社会保険(健康保険・厚生年金):個人事業主は原則として任意加入ですが、法人化後は強制適用。個人事業の場合も常時5人以上の従業員がいると強制加入となる業種区分があります(鍼灸業は法定業種ではないため要確認)。
- 源泉徴収:給与の源泉徴収は雇用開始月から必要。源泉所得税の特例(納期の特例)を申請すると半年ごとの納付が可能になります。
具体例|保険診療と自由診療の売上管理
たとえば同じ月の売上に保険診療分と自由診療分が混在する場合、会計ソフトの補助科目やタグ機能を使って区分しておくと、消費税の課税・非課税の集計や確定申告の際の内訳確認がスムーズになります。健康保険の療養費はレセプト請求から実際の入金までに時間差が生じやすいため、自由診療分だけでなく保険請求分の入金時期も見込んで資金繰りを考えておくと安心です。
見落としやすいポイント
- 訪問施術の記録/往療(訪問での施術)を行う場合、施術録に訪問先や移動の記録も残しておくと、保険請求の根拠資料として役立ちます。
- 受領委任払いの入金時期/保険請求分の入金は自由診療の現金収入より遅れて入ってくることが多く、開業直後の資金繰り表には両方の入金タイミングを分けて記載しておきます。
- 整骨院・他院との併設/柔道整復師の施術所と鍼灸院を同じ場所で運営する場合、それぞれ根拠法・保険請求の仕組みが異なるため、会計上も収入区分を分けて管理します。
- 開業前の研修・実技講習費用/開業準備期間中に支払った研修費や機材の購入費は、開業費として整理しておくと開業後の経費計上がスムーズです。
実務ワンポイント|届出の順番を決めておく
保健所への施術所開設届と税務署への開業届は、提出先も期限の考え方も異なります。どちらを先に済ませるか迷ったときは、まず保健所へ相談して施術所としての要件を満たしているかを確認し、そのうえで税務署への届出を進めると手戻りが少なくなります。
まとめ
鍼灸院の開業手続きは当事務所へご相談ください
当事務所は、鍼灸院・整骨院など施術所の開業支援・税務顧問に対応する札幌の税理士・公認会計士事務所です。開業届から青色申告・消費税の判定まで、ワンストップでご相談いただけます。
料金やご契約の流れは料金・契約・業務フローのページを、ご相談はお問い合わせフォームからどうぞ。
開業前にそろえておくこと
- 事業計画と収支の見通し
- 開業資金と自己資金の額
- 開業届・青色申告承認申請の準備
- 会計ソフト・記帳の体制
- 屋号・事業用口座・許認可の確認
※本記事は2026年11月時点の法令・情報に基づく一般的な解説であり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の適用にあたっては税理士等の専門家にご相談ください。
出典・参考情報(公的機関)
本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の税務判断・アドバイスを行うものではありません。税制・法令は改正される場合があります。実際の申告・手続の際は、上記の公的機関が公表する最新情報をご確認のうえ、税理士など専門家へご相談ください。
