株価算定の費用相場は何で決まる?目的・手法・依頼先と依頼の時期

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株価算定の費用は、評価の目的(税務・取引・社内資料)、使う手法の数、会社の複雑さ、納期の4つでほぼ決まります。相続・贈与など税務目的の評価と、M&Aで使う時価の算定は別物で、依頼先も変わります。目的を先に決めることが、適正な費用で依頼する近道です。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

株価算定の費用は「何のための評価か」で大きく変わります。相場の金額で比べるより、目的・手法・会社の複雑さ・納期の4要素と成果物の形をそろえて見積りを比べる方が、判断を誤りにくくなります。

  • 贈与・相続・同族間の売買など税務目的の評価は、財産評価基本通達などのルールに沿って行い、主に税理士が担う
  • M&Aや株主との交渉など対外的な算定は、DCF法など複数の手法を使い、公認会計士やFASが担うことが多い
  • 子会社・不動産・事業の数が多いほど、手法が多いほど、納期が短いほど工数が増える
  • 依頼は取引や贈与の意思決定の前に。決算書がそろう決算直後は着手しやすい
  • 税務上の評価は自社でも概算できる。概算をもとに依頼の範囲を絞ると無駄が減る
目次

株価算定が必要になるのはどんな場面?目的で変わる「誰が見る数字か」

非上場会社の株式には、上場株式のような市場価格がありません。M&Aや事業承継、株主からの買取りといった場面では、「この会社の株式はいくらか」を専門家が算定する株価算定(バリュエーション)が必要になります。同じ株価算定でも、その数字を誰が見るかは場面ごとに異なり、この違いが手法の選択にも費用にも直結します。

場面数字を見る相手評価の考え方主な依頼先
M&A(会社や事業の売却・買収)の価格交渉買い手・売り手、金融機関DCF法・類似会社比較法・時価純資産法などの組合せ公認会計士・FAS
事業承継に伴う自社株の贈与・相続税務署財産評価基本通達(類似業種比準価額・純資産価額・配当還元価額)税理士
少数株主からの株式買取り・自己株式の取得株主、税務署当事者が合意できる価格と、税務上の時価の両方公認会計士・税理士
第三者割当増資・ストックオプションの発行既存株主・投資家、税務署発行価格の妥当性を示す時価の算定公認会計士
グループ内・株主間での株式の売買税務署、当事者所得税・法人税の通達に沿った税務上の時価税理士
株価算定が必要になる主な場面と評価の考え方(2026年10月時点の一般的な実務に基づく整理)

同族間の売買は、価格の設定を誤ると思わぬ課税が生じる

  • 個人どうしで時価より著しく低い価額で売買すると、時価との差額に贈与税がかかることがある
  • 個人が法人に時価の2分の1未満の価額で譲渡すると、時価で譲渡したものとみなして譲渡所得が計算される
  • 法人が時価と異なる価額で取引すると、差額が寄附金や役員への給与として扱われることがある

株価算定の手法は?税務上の評価とM&Aの時価の違い

代表的な手法は三つあります。会社の資産から負債を引いた正味の財産で測る純資産法、類似する上場会社の株価倍率を当てはめる類似会社比較法(マルチプル法)、将来のキャッシュ・フローを現在価値に割り引くDCF法です。実務では複数の手法を組み合わせ、評価額の幅を示すことが一般的です。

手法考え方向いている場面注意点
純資産法(時価純資産法)資産と負債を時価に置き直し、正味の財産で測る不動産など資産の多い会社、清算した場合の価値の確認将来の収益力が反映されにくい
類似会社比較法(マルチプル法)類似する上場会社の、利益や純資産に対する株価の倍率を当てはめる比較できる上場会社がある業種規模や成長性の違いの補正が必要
DCF法将来のキャッシュ・フローを現在価値に割り引く成長や事業計画を評価に反映したいとき事業計画の前提で結果が大きく変わる
主な株価算定の手法(2026年10月時点の一般的な実務に基づく整理)

小規模なM&Aでは、時価純資産に営業利益の数年分を加える簡便な方法(年買法)が使われることもあります。どの手法でも、帳簿上の純資産がそのまま会社の値段になるわけではありません。

計算例:帳簿の純資産と時価純資産の違い

例えば、帳簿上の純資産が5,000万円の会社に、土地の含み益が2,000万円あり、帳簿に載っていない退職金の負担が500万円ある場合です(金額はすべて仮定)。

5,000万円+2,000万円−500万円=6,500万円

時価純資産は6,500万円になり、帳簿の数字より1,500万円高くなります。収益力を織り込むDCF法などで評価すれば、さらに違う数字になります。

相続・贈与では財産評価基本通達で評価する

相続税や贈与税の計算では、財産評価基本通達に沿って株式を評価します。経営者一族など同族株主等が取得する場合は原則的評価方式で、会社規模(大会社・中会社・小会社)に応じて類似業種比準価額と純資産価額を組み合わせます。それ以外の株主が取得する場合は、配当をもとにする配当還元方式が使われます。

会社規模は、従業員数・総資産価額・取引金額で判定します。土地や株式の保有割合が高い会社は「特定の評価会社」として、原則として純資産価額で評価する扱いになることもあります。税務上の評価額とM&Aなどで使う時価は別物で、目的に合わない数字を使うと交渉や申告を誤ります。

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自社株評価の会社規模(Lの割合)を判定する従業員数・総資産価額・取引金額を入れると、大会社・中会社・小会社の区分と、類似業種比準価額を使う割合がわかります。判定する

誰に頼む?税理士・公認会計士・FASの役割

贈与・相続や同族間の売買など、税務目的の評価は税理士の領域です。一方、M&Aの交渉や、金融機関・他の株主への説明に耐える算定書が必要な場面では、公認会計士やFAS(財務アドバイザリー会社)が担うことが多くなります。

税理士

  • 自社株の贈与・相続の評価
  • 同族間売買での税務上の時価の検討
  • 事業承継税制の手続きと申告

公認会計士・FAS

  • M&Aの価格交渉に使う算定
  • 株主・金融機関に示す算定書
  • 増資・ストックオプションの発行価格

不動産鑑定士など

  • 価格に大きく影響する不動産の鑑定評価
  • 算定の前提となる資産の時価

実際の案件では、税務と取引の論点が同時に絡むことが少なくありません。たとえば事業承継で後継者に株式を売る場合、交渉で決めた価格が税務上の時価から離れていれば課税の問題が生じます。公認会計士と税理士の両方の知見にアクセスできる体制で進めると、評価のやり直しを防げます。M&Aや資本政策を含めた財務面の相談は、中小企業の財務コンサルティングの進め方でも整理しています。

  • 評価の目的と利用場面(誰に見せる数字か)に合った経験があるか
  • 採用する手法と、その手法を選ぶ理由を説明してもらえるか
  • 税務上の時価と取引価格の両方を検討できるか
  • 成果物は簡易な報告か、対外的に提出できる算定書か
  • 秘密保持の取扱い(M&Aなど情報管理が重要な場面)

費用は何で決まる?見積りを左右する4つの要素

株価算定の費用は、①評価の目的(社内参考か、対外的な算定書か)、②用いる手法の数、③対象会社の規模や事業・グループ構造の複雑さ、④納期、の四要素でおおむね決まります。これに、決算書や事業計画など資料の整い方が加わります。

要素工数が増えやすい例工数を抑えやすい例
評価の目的・利用場面相手方・株主・金融機関に提出する、紛争になる可能性がある社内の検討資料、税務上の概算
手法の数複数の手法を併用し、前提を変えた試算も行う目的に合う手法を一つに絞る
会社の規模・複雑さ子会社が複数ある、不動産を多く持つ、事業が複数ある単一の事業で、資産の構成が単純
納期交渉や決議の日程が迫っている決算確定後に余裕をもって依頼する
資料の整い方事業計画がない、固定資産台帳や試算表が未整備決算書・申告書・内訳書・事業計画がそろっている
株価算定の費用を左右する要素(2026年10月時点の一般的な実務に基づく整理)

金額は依頼先と案件によって大きく異なるため、相場の数字よりも、見積りの前提をそろえて比べることが大切です。株価算定は、税務顧問料とは別に案件ごとに見積もる業務とされるのが一般的です。当事務所の料金の考え方は料金・契約の流れでご確認いただけます。

見積りで確認したい項目

  • 成果物の形式(口頭・簡易な報告書・算定書)と、想定する提出先
  • 採用する手法の数と、評価額を幅で示すか一つの値で示すか
  • 評価の基準日と、基準日や前提を変えた再計算の扱い
  • 事業計画の作成・検証が範囲に含まれるか
  • 交渉や株主への説明の場に同席するか

株価算定は目的によって必要な手法も成果物も変わります。何のための評価かを整理するところから、初回無料でご相談いただけます。

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いつ頼む?意思決定の前と決算直後が基本

依頼のタイミングは、取引や承継の意思決定をする前が原則です。株価を知らないまま交渉や贈与の計画を進めると、後から条件を組み直すことになりかねません。決算直後は財務資料がそろっており、スムーズに着手できる時期です。

場面依頼のタイミング理由
M&A売却の打診や条件交渉を始める前交渉の基準となる価格の幅を持つため
自社株の贈与贈与の計画を立てる段階(決算の確定後)直前期の決算の数字で評価額が変わるため
相続相続の発生後、できるだけ早く申告は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内で、評価に時間がかかる会社もあるため
少数株主からの買取り価格を打診する前合意できない場合に価格の根拠を示すため
増資・ストックオプション発行の決議の前発行価格の妥当性を説明するため
場面別の依頼のタイミング(2026年10月時点)

事業承継であれば、株価が下がるタイミングの検討も含め、数年単位で計画する価値があります。類似業種比準価額は、直前期末以前の利益・配当・純資産をもとに計算します。そのため、役員退職金を支給した期の翌期など、評価額が下がる時期に贈与を検討することがあります。ただし、評価を下げることだけを目的にした不自然な取引は、税務上問題になるおそれがあります。

事業承継税制(特例措置)を使う場合は、特例承継計画を2027年9月30日までに都道府県知事へ提出します。贈与・相続は2027年12月31日までに行う必要があり、こちらの期限は延長されていません。要件と手続きの流れは事業承継税制の要件と期限で確認できます。

費用を抑えるには?依頼前の準備と自社でできる概算

費用を抑える一番の方法は、目的・利用場面・評価の基準日を決めてから見積りを取ることです。精度の要らない段階で本格的な算定書を頼むと、費用も時間もかかります。社内の検討段階では簡易な評価にとどめ、交渉や申告の段階で本格的な算定に進む、という二段階の依頼も選択肢です。

  • 直近数期分の決算書・法人税申告書・勘定科目内訳書
  • 評価の基準日に近い試算表
  • 固定資産台帳と、不動産の登記事項証明書・固定資産税の課税明細書
  • 株主名簿(株主ごとの持株数と親族関係がわかるもの)
  • 事業計画(DCF法を使う場合)
  • 役員退職金規程・保険契約・リース契約など、帳簿に表れにくい資産・負債の資料

税務目的の評価であれば、まず自社で概算を出しておくと、専門家に頼む範囲を絞り込めます。概算の結果、贈与の時期や方法を見直すだけで足りると分かることもあります。

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非上場株式の評価額(原則的評価)を自動計算する類似業種比準価額と純資産価額を組み合わせた、相続・贈与の評価額の目安を計算できます。計算する

M&Aで専門家に支払う費用は、事業承継・M&A補助金の専門家活用枠の対象になる場合があります。2026年10月時点では16次の申請受付が2026年10月2日〜11月6日17:00(予定)で、申請はJグランツで行います。対象になる経費と要件は、最新の公募要領で確認してください。

札幌・北海道の会社で確認しておきたいこと

申告先の税務署と、土地の評価に注意

  • 自社株を贈与したときの贈与税は、贈与を受けた人の住所地の税務署に申告します。札幌市内は5つの税務署に分かれ、中央区はおおむね西10丁目以東が札幌中税務署、西側の大通西11丁目以西や円山・宮の森などが札幌西税務署の管轄です。個別の住所は国税庁の管轄区域表で確認してください。
  • 2026年7月10日から、札幌市内の5署の内部事務は札幌業務センターに集約されました。書面の申告書は同センターへ郵送し、e-Taxや窓口への持参は所轄の税務署で受け付けます。
  • 土地を多く持つ会社は、相続税評価の純資産価額で土地を路線価などで評価し直すため、帳簿の金額と評価額が大きく離れることがあります。路線価が定められていない地域の土地は、固定資産税評価額に一定の倍率を掛ける倍率方式で評価します。
  • 事業承継税制の特例承継計画は、本店のある都道府県(北海道内の会社は北海道)に提出します。

よくある質問

税務上の評価額とM&Aの株価は、どちらが高くなりますか?

一概には言えません。税務上の評価は通達で決められた方法で画一的に計算する一方、M&Aの株価は将来の収益力や相手との交渉で決まります。収益力の高い会社ではM&Aの株価が税務上の評価額を上回ることもあれば、資産が多く収益力の低い会社では逆になることもあります。

株価算定書は、作成してからどのくらいの期間使えますか?

決まった有効期限はなく、算定書は評価の基準日時点の価値を示すものです。決算をまたいだ場合や、業績・資産の状況が大きく変わった場合は算定し直すのが一般的です。贈与・相続の評価は、贈与や相続が起きた日を基準に行う必要があります。

自社で計算した株価を、そのまま贈与税の申告に使えますか?

通達に沿って正しく計算されていれば使えます。ただし、会社規模の判定、株主の区分(同族株主かどうか)、土地保有特定会社・株式等保有特定会社などに当たるかの判定を誤ると、評価額が大きく変わります。申告の前に専門家の確認を受けると安心です。

少数株主から株式を買い取るときの価格は、どう決めればよいですか?

当事者が合意できる価格と、税務上の時価の両方を確認します。買い手が会社(自己株式の取得)か、オーナー個人かで、税務上の時価の考え方が変わります。会社が買い取る場合は、売り手の株主に「みなし配当」の課税が生じることもあります。価格を打診する前に、買い手の選び方から検討しておくのが安全です。

まとめ

株価算定の費用は、評価の目的・手法の数・会社の複雑さ・納期で決まり、税務目的の評価とM&Aの時価の算定では依頼先も成果物も変わります。目的と利用場面、評価の基準日を先に決め、資料をそろえてから見積りを比べると、適正な費用で依頼できます。依頼は意思決定の前、決算書がそろう決算直後が基本です。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

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