年末調整でAI・ソフトが担うのは、申告内容の入力チェック、控除額の計算、従業員からの質問の一次対応です。マイナポータル連携は控除証明書のデータを正しく集めるための公式ルートで、役割が違います。両方を組み合わせ、最終確認は人が行う運用にすると効果が出やすくなります。
この記事の結論
マイナポータル連携は「正しい元データを集める仕組み」、AI・ソフトは「確認・計算・質問対応を手伝う道具」です。どちらかを選ぶのではなく組み合わせ、控除の可否の判断と最終確認は人が担います。
- AI・ソフトは入力ミスの指摘、控除額の計算、定番の質問への一次回答が得意
- マイナポータル連携は、保険料控除証明書などのデータを従業員が電子で取得して取り込む仕組み
- 令和8年分は基礎控除・給与所得控除・扶養の所得要件が変わるため、ソフトとAIの回答が令和8年分に対応しているかを確認する
- マイナンバーや家族の情報は、汎用のAIチャットに入力しない
- AIの回答は国税庁の資料で裏取りしてから使う
年末調整でAI・ソフトが担える仕事は?
AI機能を持つ年末調整ソフトの中心的な役割は、従業員が入力した申告内容のチェックと、質問への一次対応です。例えば、配偶者の収入区分の入力ミスや、控除証明書と申告額の不一致を自動で指摘できます。「大学生の子どもは扶養に入るか」といった定番の質問に、チャット形式で答える機能もあります。
担当者側でも、提出状況の管理、控除額の計算、給与システムへの取り込みまで自動化できる製品が多くあります。紙で配って回収する方式より、作業時間を減らせる場合があります。具体的な機能や料金は製品ごとに異なるため、2026年10月時点の各社の案内で確認してください。
| 作業 | 紙・手作業の場合 | ソフト・AIでできること | 人が担うこと |
|---|---|---|---|
| 申告書の配布・回収 | 印刷して配り、記入漏れを個別に確認 | 画面での入力・提出、未提出者への通知 | 提出期限の設定と周知 |
| 入力内容のチェック | 担当者が目視で確認 | 入力ミスや証明書との不一致を自動で指摘 | 指摘への対応の判断 |
| 控除額・年税額の計算 | 担当者が計算・転記 | 自動計算と過不足額の算出 | 計算結果の確認 |
| 従業員からの質問 | 担当者が個別に回答 | 定番の質問にチャットで一次回答 | 判断が分かれる質問への回答 |
| 源泉徴収票・給与支払報告書 | 作成と提出の作業 | 帳票の作成と電子提出 | 提出内容の最終確認 |
マイナポータル連携とは?AIとの違い
マイナポータル連携は、控除証明書などのデータを従業員本人がマイナポータル経由で電子的に取得し、年末調整の申告書へ取り込む仕組みです。対象は、生命保険料控除証明書や住宅ローンの年末残高など、連携に対応したデータです。転記が要らなくなるため、金額の写し間違いや証明書の紛失を防げます。
つまり「正しい元データを集める」ための公式ルートであり、AIのように内容を判断したり質問に答えたりするものではありません。どちらかを選ぶ関係ではなく、連携で元データの正確さを確保し、AIで確認と質問対応を効率化する組み合わせが現実的です。
マイナポータル連携
- 控除証明書などのデータを電子で取得する
- 従業員本人の操作が必要(マイナンバーカードなど)
- 対象は連携に対応した証明書に限られる
- 内容の判断や質問への回答はしない
AI・年末調整ソフト
- 入力ミスや証明書との不一致を指摘する
- 控除額や年税額を計算する
- 定番の質問に一次回答する
- 回答が誤っている可能性がある
国税庁は、従業員が申告書を作るための「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)」を無償で提供しています。このソフトは、マイナポータル連携で取得したデータを読み込めます。民間の年末調整ソフトにも連携に対応した製品があります。連携で取得できる証明書の範囲は変わることがあるため、利用前に国税庁の案内で確認してください。
令和8年分の年末調整で確認したい改正点
令和8年分(2026年分)は、税制改正で基礎控除や給与所得控除などが変わります。改正の施行は2026年12月1日で、2026年中の毎月の源泉徴収は改正前の税額表のまま行われるため、差額は12月の年末調整でまとめて精算します。ソフトが令和8年分に対応しているか、AIが改正前の数字で答えていないかを確かめましょう。
| 項目 | 令和8年分の取扱い | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 合計所得489万円以下(給与のみなら665万5,556円以下)は104万円。以後、所得に応じて67万円・62万円などの段階制 | 一律の金額で計算していないか |
| 給与所得控除 | 給与収入220万円以下は74万円 | 令和7年分の最低保障額(65万円)のまま計算していないか |
| 扶養親族などの所得要件 | 合計所得62万円以下(給与のみなら136万円以下) | 「103万円」「123万円」など古い基準で判定していないか |
| 特定親族特別控除 | 19〜22歳の親族で、合計所得62万円超123万円以下(給与197万円以下)が対象 | 扶養控除との振り分けができているか |
| 生命保険料控除の特例 | 23歳未満の扶養親族がいれば、新契約の一般生命保険料控除の上限が4万円から6万円に(合計12万円は据置き) | 扶養親族の年齢が正しく入力されているか |
具体例:大学生の子(20歳)のアルバイト給与が150万円の場合(令和8年分)
例えば、親の勤務先で年末調整をする場合を考えます。子の給与所得は150万円−74万円=76万円で、扶養親族の所得要件(62万円以下)を超えるため、扶養控除は受けられません。
一方、特定親族特別控除の対象(62万円超123万円以下)に当たり、合計所得85万円以下の区分なので控除額は63万円です。「給与が103万円を超えたら扶養から外れて控除はなくなる」と覚えたままのAIや担当者だと、判断を誤るおそれがあります。
ツール基礎控除の額を年分別に確かめる令和7〜10年分の基礎控除を、合計所得に応じて年分ごとに確認できます。計算する
令和8年分は、毎月の源泉徴収が改正前の税額表で行われる分、12月の精算で還付が出やすくなります。従業員から「なぜ戻りが大きいのか」と聞かれたときに説明できるよう、精算の仕組みを担当者が押さえておくと安心です。
無料ツール年末調整の過不足を試算する年間の給与と源泉徴収税額、控除を入れると、還付か追加徴収かの目安を確認できます。計算する
導入の手順:連携とAIをどう組み合わせる?
いきなりすべてを電子化するより、作業の流れを確認しながら段階的に移行するほうが失敗が少なくなります。次の順番で進めると、担当者と従業員の負担を抑えられます。
- 今の作業を棚卸しする申告書の配布・回収、証明書の確認、計算、質問対応、源泉徴収票の作成まで、誰がどれだけ時間をかけているかを書き出します。
- 電子化する範囲を決めるまずは申告書の配布・回収を電子化し、紙の控除証明書の提出も受け付ける形にすると移行が円滑です。
- 従業員にマイナポータル連携を案内する連携は任意です。利用する人には、マイナンバーカードの準備と事前の設定手順を早めに知らせます。
- AIに任せる範囲を決める入力チェックと定番の質問への一次回答に限り、控除の可否の判断は担当者が行うルールにします。
- 最終確認の手順を決めるAIやソフトの結果は担当者が国税庁の資料と突き合わせ、判断に迷うものは顧問税理士に確認します。
- 年明けの提出まで流れを通す源泉徴収票の交付、給与支払報告書・法定調書の提出まで、同じソフトで処理できるかを確認します。
AIを使うときの個人情報と誤回答への備え
年末調整の情報は、家族構成や保険契約、マイナンバーなど機微な個人情報の塊です。クラウド型のソフトやAIチャットを使うなら、データの保存場所と利用目的、入力内容がAIの学習に使われるか、マイナンバーの管理方法を導入前に確認してください。
- 汎用のAIチャットに、従業員の実名・マイナンバー・家族の情報を入力しない
- AIに質問するときは「20歳の子・給与150万円」のように、個人を特定できない形に置き換える
- ソフトの利用規約で、データの保存場所と、入力データがAIの学習に使われるかを確認する
- マイナンバーを扱える担当者とアクセス権限を決めておく
- 退職者や過去の年分のデータについて、保存と削除のルールを決める
マイナンバーは、法律で利用できる事務と提供できる場面が限られています。年末調整のために集めた番号を、AIでの確認作業など本来の目的以外に使わないようにしましょう。
AIは改正前の金額で答えることがある
AIの回答は常に正しいとは限りません。令和8年分は控除の金額や所得要件が大きく変わったため、改正前の「103万円」「123万円」などの基準で答えることがあります。控除の可否のような判断は、担当者や税理士が最終確認する前提で運用してください。
AIの回答を国税庁の資料で確かめる手順
- 回答が「何年分」の取扱いを前提にしているかを確認する
- 国税庁の「年末調整のしかた」や改正のQ&Aで、金額と要件を照合する
- 照合した資料名と確認日を記録し、従業員への回答や翌年の確認に使う
小規模な会社での現実的な進め方
従業員10名程度の会社なら、まず紙の配布・回収を電子化するだけでも効果が見込めます。そのうえで定番の質問への回答をAIに任せ、判断に迷うものだけ顧問税理士に確認する流れにすると、担当者の負担が減る場合があります。
年末調整をどこまで税理士に任せられるかは、契約内容によって異なります。申告書のチェックから源泉徴収票の作成までの進み方は年末調整を依頼したときの流れと所要日数で整理しています。AIを経理全体でどう使うかはClaude Coworkの経理活用ガイドも参考になります。
AIやソフトを入れても、控除の判断と最終確認は残ります。どこを自社で行い、どこを任せるかの線引きは初回無料でご相談いただけます。
無料で相談する年末調整の後の提出期限は?
年末調整の後は、源泉所得税の納付と、源泉徴収票・給与支払報告書の提出が続きます。ソフトを選ぶときは、ここまで一連で処理できるかも確認しておきましょう。
| 手続き | 期限・要件(令和8年分) | ポイント |
|---|---|---|
| 12月分の源泉所得税の納付 | 2027年1月12日(火)。納期の特例は1月20日(水) | 年末調整の過不足を反映した額を納付する |
| 源泉徴収票の交付、給与支払報告書・法定調書の提出 | 2027年2月1日(月) | 給与支払報告書は、従業員が1月1日時点で住む市区町村へ提出する。2027年1月1日以後は、給与支払報告書を提出すれば源泉徴収票を税務署に提出したものとみなされる(本人への交付は必要) |
| 法定調書の提出方法 | 前々年の提出枚数が30枚以上ならe-Tax等で提出 | ソフトの電子提出機能を確認する |
札幌の事業者が書面で提出する場合
札幌市内の5つの税務署の内部事務は、2026年7月10日から札幌業務センターに集約されています。法定調書合計表などを書面で郵送するときの宛先は同センター、e-Taxでの提出や窓口への持参は所轄の税務署です。
よくある質問
マイナポータル連携は、従業員全員が使わないといけませんか?
いいえ。連携は任意で、紙の控除証明書を提出する従来の方法と併用できます。連携を使う人は電子データ、ほかの人は紙という運用でも年末調整は行えます。
国税庁の年調ソフトと、民間の年末調整ソフトはどう違いますか?
年調ソフトは、従業員が申告書を作成するためのソフトです。会社側の年税額の計算や源泉徴収票の作成は、給与ソフトなど別の仕組みで行います。民間のクラウド型ソフトには、申告書の回収から計算・帳票作成まで一体で扱える製品があります。
AIチャットに年税額の計算を任せても大丈夫ですか?
計算は、令和8年分に対応した給与ソフトや年末調整ソフトで行うのが安全です。汎用のAIチャットは、計算の考え方の説明や確認の補助にとどめ、結果は担当者が確認します。
年の途中で入社した人の年末調整もソフトで対応できますか?
前の勤務先の源泉徴収票の金額を入力すれば、合算して年末調整できます。前職の源泉徴収票が提出されないと合算した年末調整ができないため、入社時に回収を案内しておきましょう。
まとめ
年末調整のAI・ソフトは入力チェック・計算・質問の一次対応を効率化し、マイナポータル連携は控除証明書のデータを正しく集める仕組みです。役割が違うため組み合わせて使い、令和8年分の改正への対応状況と個人情報の扱いを導入前に確認しましょう。AIの回答は国税庁の資料で裏取りし、最終判断は人が行う運用が安全です。
札幌の公認会計士・税理士事務所
年末調整の体制づくりのご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
