ChatGPTに年末調整・源泉徴収の計算を任せてはいけない理由と使い方

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ChatGPTに年末調整や源泉徴収の計算を任せるのは避けるべきです。令和8年分は基礎控除や給与所得控除が改正され、AIが古い控除額で答えるおそれがあるうえ、給与やマイナンバーの入力には情報管理のリスクもあります。AIは制度の理解や案内文の下書きに使い、計算は給与ソフトと人の確認で行います。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

税額の計算は年分ごとの改正が反映された給与ソフトで行い、ChatGPTなどの生成AIは、個人情報を入れない周辺業務(制度の理解・案内文・チェックリスト作り)に限って使います。

  • 令和8年分は基礎控除(104万円などの段階制)、給与所得控除の最低保障74万円、扶養の所得要件62万円などが変わり、古い値での誤答が起きやすい
  • 生成AIは、もっともらしい誤りを自信のある文体で答え、聞き方で金額が変わることもある
  • 従業員の給与・家族の状況・マイナンバーは外部のAIに入力しない
  • AIの出力は国税庁の資料と突き合わせ、最終確認は人が行う
目次

ChatGPTに年末調整の計算を任せてはいけない3つの理由

生成AIに控除の仕組みを質問すると、それらしい計算式を答えてくれます。頼りたくなる気持ちは分かりますが、源泉徴収や年末調整の「計算そのもの」には、次の三つの理由から構造的に向いていません(2026年10月時点の一般的な生成AIサービスを前提としています)。

理由何が起きるか年末調整への影響
学習データの古さ控除額や税額表、年末調整の様式は頻繁に改正されるが、回答が最新の改正を反映している保証はない数年前の控除額を前提に計算してしまう
もっともらしい誤り知らないことでも自信のある文体で答える性質(ハルシネーション)がある文面から正誤を見分けられず、結局すべて検算が必要になる
再現性のなさ同じ内容でも、聞き方しだいで違う金額を答えることがある従業員全員分の計算に同じ精度を保てない
生成AIが税額計算に向かない理由

年末調整は1円単位の正確さが求められ、誤りは従業員の手取りと会社の納付額に直結します。後から誤りが見つかると、年末調整のやり直しや源泉徴収票の再交付、不足額の納付と従業員への説明が必要になり、計算を任せて省いた時間以上の手間がかかります。

令和8年分の年末調整は何が変わる?AIが古い値で答えやすい項目

令和8年分は、令和8年度税制改正で基礎控除や給与所得控除、扶養の所得要件などが変わります。改正は2026年12月1日に施行され、令和8年分の所得税から適用されます。2026年中の毎月の源泉徴収は改正前の税額表のままで、12月の年末調整でまとめて精算します。

項目誤りやすい答えの例令和8年分の扱い
基礎控除一律104万円、または88万・68万・63万円の段階合計所得489万円以下は104万円、655万円以下は67万円、2,350万円以下は62万円などの段階制
給与所得控除の最低保障額65万円(令和7年分)74万円(本則69万円+特例5万円)
扶養親族・配偶者などの所得要件合計所得58万円以下(給与のみなら123万円以下)62万円以下(給与のみなら136万円以下)
本人に所得税がかからない給与収入103万円、または160万円178万円以下(令和8・9年分)
一般生命保険料控除の上限4万円23歳未満の扶養親族がいれば6万円(新契約。合計12万円の上限は据置き)
改正の反映時期毎月の源泉徴収にすぐ反映される2026年中の毎月の源泉は改正前のまま、12月の年末調整で精算
住民税の基礎控除所得税と同じく増える令和8年度分は43万円のまま
定額減税令和8年分にもある令和6年分だけの制度
令和8年分の年末調整で取り違えやすい項目(2026年10月時点)

2027年1月からの源泉徴収も取り違えに注意

2027年1月1日以後に支払う給与からは、令和9年分の源泉徴収税額表を使います。令和9年分以後は防衛特別所得税(基準所得税額×1%)が始まり、復興特別所得税は2.1%から1.1%に下がります。合計の2.1%は変わらないため、源泉所得税に102.1%を掛ける計算や、報酬の10.21%・20.42%の税率もそのままです。「防衛特別所得税で源泉の税率が上がる」という説明は誤りです。

これらは、AIの学習時期や参照した情報によっては、改正前の値や改正案の段階の値で答えてしまうおそれがある項目です。基礎控除の引上げで手取りや年末調整がどう変わるかは、基礎控除の引上げと課税最低限178万円の解説で詳しく整理しています。

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基礎控除の額を年分別に確認する合計所得金額から、令和7〜10年分の基礎控除の額を年分ごとに確認できます。計算する

給与データをAIに入力してよい?個人情報とマイナンバーの線引き

精度以前の問題として、従業員の氏名・給与額・扶養家族の状況・保険料の支払額は、慎重な取扱いが求められる個人情報です。マイナンバーは番号法で利用できる事務や提供できる場面が限られており、外部のAIサービスに入力することは取扱いのルールに照らして不適切です。

外部のAIサービスに入力したデータがどのように保存・利用されるかは、サービスの設定や規約しだいです。氏名を伏せても、給与額や家族構成の組み合わせから個人が推測できる場合があることにも注意が必要です。

入力してよい情報

  • 国税庁の公表資料など、公開されている制度の情報
  • 個人を特定しない一般的な依頼(例:保険料控除申告書の回収案内の文面を作りたい)
  • 架空の数字だけで作った集計表の構成
  • 個人情報を含まない社内手順書の下書き

入力しない情報

  • 従業員の氏名・住所・生年月日
  • 給与・賞与の額、源泉徴収簿の内容
  • 扶養親族や配偶者の氏名・所得・障害の有無
  • マイナンバー、控除証明書の画像
  • 部署・年齢・給与額など、組み合わせで個人が分かる情報

社内でAIを使う前に決めておくこと

  • AIに渡してよい情報と、入力を禁止する情報の線引き
  • 入力内容が学習に使われない設定になっているか(利用するサービスの規約と設定を確認)
  • AIを使う業務の範囲(下書き・整理・調べ物)の限定
  • 最終確認は人が行うという運用ルール
  • 成果の測り方(作業時間の短縮など)

会社として入力してよい情報の範囲を決めないまま、現場任せで使い始めるのは危険です。税理士などの専門家には法律上の守秘義務があり、給与データを扱う前提で業務の体制を整えています。判断に迷うデータは、AIではなく専門家とのやり取りに回すのが安全です。

AIはどこで役立つ?年末調整の周辺業務での使い方

計算以外の周辺業務では、AIは強力な道具になります。個人情報を入力しなくても、次のような作業で時間を短縮できます。

使い方AIに渡すもの人が確認すること
制度の全体像をつかむ国税庁の資料から拾った改正点の要点と、「従業員向けに平易に言い換えて」という依頼控除額・所得要件の数字が国税庁の資料と一致しているか
従業員向けの提出案内を下書きする提出書類の名前、社内の締切、提出方法締切・提出先・様式名が正しいか
回収書類のチェックリストを作る自社で使う申告書の種類と、過去に多かった記入漏れ漏れている書類や確認項目がないか
集計用のエクセル関数を相談する架空の数字で作った表の構成実データで結果が正しいか、数件を手計算で検算する
年末調整の周辺業務でのAIの使い方

AIで提出案内を作るときの手順

  1. 材料は担当者が用意する改正点や様式は、国税庁の「年末調整のしかた」などから担当者が拾い出し、AIには要点だけを渡します。改正の内容そのものをAIに答えさせないのがコツです。
  2. 個人情報を外して依頼する従業員の氏名や給与額は入れず、全従業員向けの共通の案内として作らせます。
  3. 出力を一次情報と突き合わせる控除額・所得要件・様式名・期限が国税庁の資料と一致しているかを、1項目ずつ確認します。
  4. 担当者が最終版に仕上げる社内の締切や提出先を書き入れ、責任者が確認してから配布します。

要は、AIの出力をそのまま最終成果物にしないことです。制度に関する記述は国税庁の公式情報と突き合わせ、社外に出す文書は人の目で確認する。この原則を守れば、AIは年末調整業務の補助として十分に機能します。AIと税理士の使い分けはAIに税務相談する時代の税理士の使い方でも整理しています。

計算はどう進める?給与ソフト・検算・専門家の分担

税額の計算は、税額表や様式の更新が反映される給与計算ソフトで行うのが基本です。令和8年分は12月の年末調整で改正分をまとめて精算するため、使っているソフトが令和8年分の改正に対応した版になっているかを、年末調整の前に確認します。

人の手をかけるべきなのは、ソフトに正しい情報を入れる部分、つまり申告書の回収とチェックです。令和8年分は特に次の点を確かめます。

  • 扶養親族の所得の見込みが62万円以下(給与のみなら136万円以下)か
  • 19歳以上23歳未満の親族で所得が62万円を超える場合、特定親族特別控除の対象(合計所得123万円以下)か
  • 配偶者の合計所得が62万円を超え133万円以下なら、配偶者特別控除の対象か
  • 23歳未満の扶養親族がいる人の一般生命保険料控除を、上限6万円で計算しているか
  • 中途入社の人から、前の勤務先の源泉徴収票を回収したか
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年末調整の過不足を試算する年税額と源泉徴収した税額を比べて、還付か追加徴収かの目安を確認できます。計算する

従業員数が多い、扶養や保険の異動が複雑、中途の入退社が多いといった場合は、税理士への年末調整の代行も選択肢です。顧問契約に年末調整が含まれるかどうかは契約によるため、業務範囲と料金を事前に確認しておきます。依頼の進め方は年末調整の代行を依頼してから完了するまでの流れで紹介しています。

改正の多い年は、扶養や保険料控除の判定で迷う場面が増えます。年末調整と給与計算の体制づくりは、初回無料でご相談いただけます。

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よくある質問

税額の目安を知りたいだけなら、ChatGPTを使ってもよいですか?

目安を知る用途でも、どの年分の控除額を前提にしているかをAIに明示させ、国税庁の資料や計算ツールで確かめてから使います。AIの答えを従業員への説明や社内の確定値に使うのは避け、正式な税額は給与ソフトの計算結果を基準にします。

年の途中で退職した人にも、令和8年分の改正は反映されますか?

令和8年分の改正は12月の年末調整で精算する仕組みのため、最後の給与の支払いが2026年11月30日以前の中途退職者などは、確定申告などで精算することになります。退職時に渡す源泉徴収票の内容を確認し、必要に応じて確定申告を案内します。

令和8年分の年末調整で精算した税金は、いつまでに納めますか?

12月分の源泉所得税として、2027年1月12日(火)までに納付します。納期の特例を受けている場合は2027年1月20日(水)が期限です。源泉徴収票の本人への交付と、市区町村への給与支払報告書の提出は2027年2月1日(月)までで、2027年1月1日以後は給与支払報告書を提出すれば源泉徴収票を税務署に提出したものとみなされます。

入力内容が学習に使われない設定なら、給与データを入れても問題ありませんか?

学習に使われない設定は、入力内容がAIの改善に使われるかどうかに関するもので、データの保存やアクセスの管理、マイナンバーの取扱いの問題がなくなるわけではありません。社内規程で入力してよい情報の範囲を決め、給与データやマイナンバーは入力しない運用にします。

まとめ

ChatGPTなどの生成AIは、年末調整の制度の理解や案内文の下書きには役立ちますが、税額の計算そのものを任せるのは避けます。令和8年分は基礎控除・給与所得控除・扶養の所得要件などが変わり、古い値での誤答が起きやすい年分です。計算は改正に対応した給与ソフトで行い、申告書のチェックとAIの出力の裏取りに人の手をかけましょう。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

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