相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月です。スケジュール、必要書類、財産の調べ方、未分割のときの申告、納付・延納・物納、加算税、修正申告と更正の請求、税務調査の実態と指摘されやすい点を解説します。
相続税・贈与税 総合ガイド|申告・納税・税務調査
申告は、財産を正しく集め、正しく評価し、期限までに分割と特例の手続をそろえることが基本です。調査で指摘されやすいのは、名義預金や生前の現金の動きです。
申告までの10か月のスケジュール
相続税の申告と納付は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に済ませます。この章では10か月を7つの時期に分け、それぞれの時期にやることと決めることを、法律で決まった期限と実務の目安に分けて整理します。
この章の結論
- 申告と納付の期限は同じ日で、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。多くは死亡日と同じ日付の10か月後です(2026年(令和8年)1月6日に亡くなった場合は2026年11月6日)。期限が土曜・日曜・祝日などに当たれば、休日明けの日に延びます。
- 途中に、相続放棄・限定承認の3か月と、準確定申告の4か月という法律上の期限があります。借入金を含む財産の全体像は、3か月以内につかんでおくと安全です。
- 申告書は、亡くなった人の死亡時の住所地を所轄する税務署に出します。遺産分割がまとまらなくても、期限内に法定相続分などで申告と納付をします。
申告期限は「知った日の翌日から10か月」
相続税の申告期限は、相続の開始があったこと、つまり被相続人(亡くなった人)の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。納付の期限も同じ日です。通常は亡くなった日に死亡を知るため、死亡日と同じ日付の10か月後が期限になります。ただし、死亡を知った日が月の末日なら、10か月後の月の末日が期限です(9月30日なら、翌年の7月30日ではなく7月31日)。
期限の日が土曜・日曜・祝日などに当たるときは、その翌日が期限です。国税庁の例では、期限が土曜日の2027年(令和9年)4月10日に当たる場合、日曜日をはさんだ4月12日(月)が期限になります。
| 亡くなった日(死亡を知った日) | 申告・納付の期限 | ポイント |
|---|---|---|
| 2026年1月6日(火) | 2026年11月6日(金) | 同じ日付の10か月後(国税庁の例と同じ日付) |
| 2026年6月9日(火) | 2027年4月9日(金) | 国税庁「相続税の申告のしかた(令和8年分用)」の例 |
| 2026年6月10日(水) | 2027年4月12日(月) | 10か月後の4月10日が土曜日のため、休日明けの月曜日 |
| 2026年10月17日(土) | 2027年8月17日(火) | このガイドの基準日に亡くなった場合 |
「知った日」は、相続人ごとに違うことがあります。国税庁の通達は次のような例を挙げており、同じ相続でも人によって申告期限が異なる場合があります。
- 失踪宣告で相続が始まった場合
- 失踪宣告の審判が確定したことを知った日
- 認知や相続人の廃除の取消しの裁判で相続人になった場合
- その裁判の確定を知った日
- 胎児
- 法定代理人がその出生を知った日
- 判断能力のない幼児など
- 法定代理人が相続の開始を知った日(法定代理人がいないときは、後見人が選任された日)
- 相続人以外で遺贈を受けた人
- 自分のために遺贈があったことを知った日
- 停止条件付きの遺贈を受けた人
- その条件が成就した日
10か月を7つの時期に分けたスケジュール
次の一覧は、亡くなった日を起点にした作業の目安です。「法定の期限」と書いたものは法律で日数が決まっている手続で、それ以外は申告に間に合わせるための目安です。
- 〜7日死亡届を出します(法定の期限:死亡の事実を知った日から7日以内。国外で亡くなった場合は3か月以内)。葬式費用には相続税の計算で差し引けるものがあるため、領収書や支払の記録を残し始めます。遺言書があるかどうかも確かめます。
- 〜1か月年金の受給を止める届出をします(法定の期限:厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内。日本年金機構にマイナンバーが収録されている人は原則として省略できます)。相続人を確定するため、戸籍を集め始めます。自筆の遺言書が見つかったら、家庭裁判所に検認を申し立てます(公正証書遺言と、法務局に保管されていた遺言書は検認不要)。
- 〜3か月相続を承認するか、相続放棄・限定承認をするかを決めます(法定の期限:自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内。家庭裁判所への申述が必要で、期間の伸長も申し立てられます)。判断のため、預貯金・不動産・借入金などの概要をつかみます。基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)と比べ、申告が必要になりそうかの見当もつけます。
- 〜4か月準確定申告(亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得税の申告)を出します(法定の期限:相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内)。ここで納めた所得税は相続税の債務として差し引け、還付金は相続財産になります。
- 〜6か月相続開始日現在の残高証明書や固定資産評価証明書をそろえ、土地・建物、預貯金、有価証券、保険などの評価を進めます。小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の要件を確かめながら、遺産分割の方針を相続人で話し合います。
- 〜8か月遺産分割協議をまとめ、遺産分割協議書を作ります(相続人全員が署名し、印鑑証明書と同じ印を押します)。申告書の作成に入り、納税資金の手当てを決めます。
- 〜10か月申告書を出し、同じ日までに納付します(法定の期限)。延納・物納を希望する場合も、期限までに申請書を出します。分割がまとまらないときは法定相続分などで申告し、配偶者の税額軽減などを後から使えるよう「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付します。
相続放棄を考えているときの注意
相続放棄や限定承認を検討している間は、亡くなった人の預金を払い戻して自分のために使ったり、不動産を売ったりしないよう注意します。こうした処分をすると、相続を承認したものとみなされることがあります(法定単純承認)。判断がつくまでは、財産の処分を控えます。
時期ごとに決めることと判断の材料
10か月の中には、後から変えにくい判断がいくつかあります。判断に必要な情報がそろう時期は、それぞれ違います。
| 時期 | 決めること | 判断の材料 | 詳しい章 |
|---|---|---|---|
| 3か月まで | 相続するか、放棄・限定承認するか | 借入金・保証などの債務と、財産の概要 | 相続放棄・限定承認 |
| 4か月まで | 準確定申告の内容 | 死亡日までの所得と、死亡日までに支払った医療費・社会保険料など | 準確定申告 |
| 6〜8か月 | 誰が何を取得するか | 財産の評価額、特例の要件、二次相続の税額 | 遺産分割、二次相続 |
| 8〜10か月 | 納税の方法(一括・延納・物納) | 各人の納付税額と手元の資金 | 納付・延納・物納 |
| 10か月まで | 分割が間に合わないときの申告方法 | 分割の見通しと、特例を後から使うかどうか | 未分割のときの申告 |
遺産分割は、税額に直接影響します。小規模宅地等の特例は、原則として申告期限までに分割されていない(取得する人が決まっていない)宅地には使えません。配偶者の税額軽減も、配偶者が実際に取得した財産が対象です。分割の話し合いは、評価額と特例の要件が見えた段階で始めると、やり直しが少なくなります。
葬式費用や納税資金が先に必要なとき
遺産分割の前でも、各相続人は亡くなった人の預貯金の一部を単独で払い戻せます。上限は「相続開始時の預貯金額×3分の1×その相続人の法定相続分」で、1つの金融機関につき150万円までです。計算例は遺産が未分割のときの申告で紹介しています。
提出先と提出方法
申告書の提出先は、被相続人が亡くなった時の住所地を所轄する税務署です。相続人の住所地の税務署ではありません。札幌市内には税務署が5つあり、中央区は札幌中税務署と札幌西税務署に分かれています(札幌の相続の窓口)。
提出の方法は、e-Tax、郵便・信書便、税務署の時間外収受箱のいずれかです。国税庁の冊子によると、相続税の申告の約7割がe-Taxで出されています。相続税申告のe-Tax利用率は、2024年度(令和6年度)が50.3%、2025年度(令和7年度)が速報値で70.2%でした。
e-Taxでは、戸籍謄本などの添付書類をPDFなどで出せ、その場合は原本を保存しておく必要がありません。税理士に依頼する場合は、相続人本人の電子署名も不要です。
申告書にはマイナンバー(個人番号)を書き、各相続人の本人確認書類の写しを添付します(e-Taxで申告する場合は不要です)。2025年(令和7年)1月からは、申告書の控えに税務署の収受日付印は押されていません施行中。令和8年分の様式では控用の用紙もなくなったため、控えは自分でコピーを取って保管します(申告書の構成と令和8年分の様式)。
相続人みんなで出すか、別々に出すか
同じ被相続人から財産を取得した人は、1つの申告書を共同で作って出せます。連絡が取れないなどの事情があれば、別々に出しても構いません。
共同で出すときは、申告書の第1表に共同で提出する人だけを書きます。共同で出さない人を参考として載せる場合は、氏名欄の右の「参考記載」欄に「1」と書きます。この人の分は申告書として扱われないため、その人は自分の申告書を別に出します。
別々に出す場合でも、相続税の総額は全員の課税価格の合計から計算します。財産の全体と各人の取得額がそろっていないと、各人の税額を正しく出せません。別々に出すときこそ、財産の一覧は相続人の間で共有しておきます。
期限に間に合いそうにないとき
遺産分割がまとまらない場合でも、申告期限は延びません。未分割の財産は、各相続人が民法の相続分(多くは法定相続分)または包括遺贈の割合で取得したものとして課税価格を計算し、期限内に申告・納付します(遺産が未分割のときの申告)。
期限後に申告すると、無申告加算税や延滞税がかかることがあります。国税庁の事務運営指針は、次の3つをいずれも期限後申告の正当な理由に当たらないとしています。相続人間の争い、遺産分割協議がまとまらないこと、財産の全容を把握できなかったことです(加算税・延滞税)。
期限の延長が認められるのは、災害などやむを得ない理由がある場合や、申告期限の直前に認知などで相続人が変わった場合など、限られた場面です。当てはまるかどうかは、所轄の税務署に確認します。
よくある誤り
- 期限を「死亡日から10か月」と数えるのは誤りです。正しくは「死亡を知った日の翌日から10か月以内」で、通常は死亡日と同じ日付の10か月後です。相続人によって期限が違うこともあります。
- 相続人の住所地の税務署に出すのは誤りです。提出先は、被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署です。
- 遺産分割が終わってから申告するのは誤りです。分割前でも期限内に申告します。分割がまとまらないことは、期限後申告の正当な理由になりません。
- 特例で税額が0円になるから申告しない、というのも誤りです。小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減は、申告書を出すことが適用の条件です。
他の税金とのつながり
- 所得税:準確定申告は4か月以内です。納めた所得税は相続税の債務控除の対象になり、還付金は相続財産になります(準確定申告)。
- 譲渡所得:相続した土地などを売って取得費加算の特例を使うなら、売却は相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。2026年1月6日に亡くなった場合は、申告期限が2026年11月6日、売却の期限が2029年(令和11年)11月6日です(相続税の取得費加算の特例)。
- 贈与税:亡くなった年に亡くなった人から贈与を受けた人のうち、相続や遺贈で財産を取得しない人は、その贈与が相続税ではなく贈与税の対象になります(贈与税がかからない財産・場合)。
相続開始後のすべての期限は期限カレンダーに、申告・納税までの全体の流れは申告・納税までの全体スケジュールにまとめています。
専門家向け:根拠と実務論点
根拠
- 申告期限:相続税法27条1項。期間の計算は国税通則法10条1項によります(初日不算入・暦に従う。月の初日から起算する期間は最後の月の末日に満了し、月の途中から起算する期間は最後の月の応当日の前日、応当日がなければその月の末日に満了)。期限が休日等に当たる場合は同条2項、同法施行令2条2項(土曜日と12月29日〜31日を含む)。納期限は相続税法33条(期限内申告分は申告期限と同日)。
- 「相続の開始があったことを知った日」の例示:相基通27-4。申告期限前1か月以内に認知などの事由が生じた場合、他の相続人等は申請により、その事由を知った日から2か月の範囲で期限を延長できます(相基通27-5)。期限までに胎児が生まれていなければ胎児がいないものとして申告し、胎児が生まれたものとすると全員の申告義務がなくなる場合は、出生日後2か月の範囲で延長できます(相基通27-6)。
- 申告書を出すべき人が期限前に出さずに死亡した場合は、その人の相続人(包括受遺者を含む)が、その相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に申告します(相続税法27条2項)。
- 提出先:相続税法62条・附則3項。準確定申告:所得税法124条・125条。熟慮期間:民法915条。法定単純承認:民法921条。死亡届:戸籍法86条。預貯金の払戻し:民法909条の2、平成30年法務省令第29号。
実務論点
- 共同提出の表示:第1表・第1表(続)には共同で提出する人だけを記載し、参考として載せる人は「参考記載」欄に「1」を記入します。税理士が利用者識別番号を入力したデータをe-Taxでまとめて代理送信する場合は、この明示は不要です。
- 申告前に死亡した人の納税義務を承継する場合は、第1表の付表1に承継者(相続放棄者を除く)の全員を記入し、共同で提出しない承継者も別に申告書と付表1を出します。
- 期限内に出し直した修正申告は、期限内申告として扱われます(相基通31-1)。期限後に判明した財産は、調査通知前に自主的に修正申告すれば過少申告加算税は課されません(延滞税はかかることがあります)。
- 無申告加算税の不適用:法定申告期限から1か月以内の自主的な期限後申告で、納付税額の全額を法定納期限までに納付し、期限後申告書の提出日前5年以内に無申告加算税・重加算税を課されていないなどの要件をすべて満たす場合です(国税通則法66条、事務運営指針)。
- e-Tax:相続人の利用者識別番号は税理士が税務署に照会でき、2024年(令和6年)12月からは1件の変更等届出書で複数の財産取得者の分を確認できます。添付書類は、2025年4月からグレースケールで読み取ってもよくなりました。
- 国税庁の相続税の申告要否判定コーナーは、税務署から届く「相続についてのお尋ね」の回答準備にも使えます。ただし申告書を作る機能はなく、試算は2割加算を考慮していません。
必要書類チェックリスト
相続税の申告書には、相続人を確かめる書類、遺産分割の内容がわかる書類、特例の要件を示す書類を添付します。国税庁の「相続税の申告の際に提出していただく主な書類」(2026年(令和8年)7月版)をもとに、区分ごとのチェックリストにまとめました。
この章の結論
- 全員に共通する添付書類は、相続人全員がわかる戸籍謄本(法定相続情報一覧図の写しでも可)と、遺言書または遺産分割協議書の写しです。戸籍謄本と一覧図の写しはコピーでもかまいません。
- 小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使う人は、協議書に押印した相続人全員の印鑑証明書と、要件を示す書類を追加します。期限までに分割できないときは「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付します。老人ホーム入所の場合に添付する介護保険の被保険者証の写しは、2026年4月1日以後の提出分から番号を塗りつぶします。
- 財産・債務ごとの資料(残高証明書、固定資産評価証明書、保険金の支払通知書、葬式費用の領収書など)は、評価額と控除額の根拠になります。e-Taxなら添付書類をPDFなどで出せ、原本を保存しておく必要はありません。
書類は「共通」「特例」「財産・債務」の3つに分けて集める
相続税の申告で集める書類は、大きく3つに分けられます。1つ目は全員に共通する書類、2つ目は特例を使う人が追加する書類、3つ目は財産と債務の金額の根拠になる資料です。
| 区分 | 主な書類 | 何を示すか | 主な入手先 |
|---|---|---|---|
| 全員に共通 | 戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写し、遺言書・遺産分割協議書の写し | 相続人は誰か、誰が何を取得したか | 市区町村、法務局など |
| 特例を使う人 | 相続人全員の印鑑証明書、分割見込書、小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減などの要件を示す書類 | 分割の内容と、特例の要件を満たしていること | 市区町村、入所していた施設、会社など |
| 財産・債務ごと | 残高証明書、固定資産評価証明書、保険金の支払通知書、借入金の残高がわかる書類、葬式費用の領収書など | 評価額と控除額の根拠 | 金融機関、市町村、保険会社、借入先など |
1つ目と2つ目の書類(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例など)は、国税庁の提出書類一覧に特例ごとに示されています。この一覧には、財産や債務の種類ごとの書類の欄はありません。3つ目は、財産の評価や債務控除の計算をするために手元にそろえる資料です。
相続人と遺産分割を示す書類
共通の書類の中心は、被相続人(亡くなった人)のすべての相続人を明らかにする戸籍謄本です。相続人と法定相続分が決まらないと、基礎控除も相続税の総額も計算できないためです。養子がいる場合は、養子の戸籍の謄本または抄本も添付します。
戸籍謄本の代わりに、法務局が無料で交付する「法定相続情報一覧図の写し」を使えます。相続税の申告に使うのは図形式のもので、相続人の続柄を戸籍の記載どおりに書いたものです。国税庁の一覧では、戸籍謄本も一覧図の写しもコピーでよいとされています。一覧図の写しは相続登記や預金の払戻しにも使えるため、手続が多いときは戸籍の束を何度も出さずに済みます。
戸籍は、本籍地以外の市区町村の窓口でもまとめて請求できます(戸籍の広域交付施行中)。ただし請求できるのは本人・配偶者・父母や祖父母・子や孫に限られ、兄弟姉妹や代理人は使えません。一覧図の申出先や戸籍の集め方は、相続人の調査:戸籍と法定相続情報で説明しています。
誰が何を取得したかは、遺言書の写しか遺産分割協議書の写しで示します。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などを受ける場合は、協議書に押印した相続人全員の印鑑証明書も添付します。これらの特例を受けたいのに申告期限までに分割がまとまらないときは、「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書と一緒に出します。
チェックリスト1:相続人と遺産分割を示す書類
- 被相続人のすべての相続人を明らかにする戸籍謄本(コピー可)、または図形式の法定相続情報一覧図の写し(コピー可)
- 養子がいる場合は、養子の戸籍の謄本または抄本
- 遺言がある場合は、遺言書の写し
- 遺産分割協議をした場合は、遺産分割協議書の写し
- 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例などを受ける場合は、遺産分割協議書に押印した相続人全員の印鑑証明書
- これらの特例を受けたいのに申告期限までに分割できない場合は、申告期限後3年以内の分割見込書
- 申告書に記載する各人のマイナンバーと、本人確認書類の写し(写しは、e-Taxで申告する場合は不要)
財産と債務の資料:評価と控除の根拠
財産と債務の資料は、「いくらで評価したか」「いくら差し引いたか」の根拠になります。どの資料が要るかは、評価や控除のルールから決まります。
土地・建物
家屋は固定資産税評価額をもとに評価し、倍率地域(路線価のない地域)の土地は、固定資産税評価額に国税局長が定める倍率を掛けて評価します。そのため、固定資産評価証明書が評価の出発点になります。土地の面積は、登記簿の地積ではなく実際の面積で評価します。
チェックリスト2:土地・建物
- 固定資産評価証明書(土地・家屋ごと)
- 名寄帳(市町村ごとの所有不動産の一覧)
- 登記事項証明書(名義・持分・抵当権などの確認)
- 所有不動産記録証明書(全国の登記記録から被相続人名義の不動産を探す。2026年2月2日開始施行中)
- 亡くなった年分の路線価図または評価倍率表(国税庁の財産評価基準書)
- 土地や建物を貸していた場合は、賃貸借契約書
- 土地の評価明細書(申告書より先に作ります)
預貯金・有価証券
預貯金は、相続開始日の残高に、その日までの利息(既経過利子)から源泉徴収される税金相当額を差し引いた額を加えて評価します。普通預金などで既経過利子が少額なら、残高だけで評価できます。上場株式は相続開始日の終値などで、投資信託は解約したときに受け取れる額で評価するため、相続開始日現在の数量がわかる資料が必要です。
チェックリスト3:預貯金・有価証券
- 金融機関ごとの相続開始日現在の残高証明書(定期預金は既経過利子の額もわかるもの)
- 通帳または取引履歴(家族名義の口座を含め、過去の入出金の確認用)
- 証券会社などの相続開始日現在の残高証明書(銘柄・数量がわかるもの)
- 上場株式の評価に使う株価の資料(相続開始日の終値と、その月・前月・前々月の終値の月平均額)
- 非上場株式(自社株)がある場合は、会社の決算書と株式の評価明細書
保険・退職金
受取人が相続人である死亡保険金と死亡退職金は、それぞれ「500万円×法定相続人の数」まで非課税です。申告書の第9表・第10表に受取人ごとの金額を書くため、受取人と金額がわかる書類をそろえます。被相続人が保険料を負担していて、まだ保険事故が起きていない契約(生命保険契約に関する権利)は、相続開始時の解約返戻金の額で評価します。
チェックリスト4:保険・退職金
- 死亡保険金の支払通知書など(受取人・金額がわかるもの)
- 被相続人が保険料を負担していた保険の保険証券
- 保険事故が起きていない契約の、相続開始日現在の解約返戻金の額がわかる書類
- 死亡退職金・弔慰金などの支給額がわかる書類(勤務先が発行するもの)
債務・葬式費用
差し引ける債務は、亡くなった時に確実にあった借入金や未払金です。亡くなった年の固定資産税・住民税の未納分は、納税通知書が届く前でも差し引けます。葬式費用は、通夜や葬儀・火葬・納骨の費用、読経料などのお礼が対象で、香典返し、墓地・墓石の購入費、初七日などの法事の費用は対象外です(債務控除と葬式費用)。
チェックリスト5:債務・葬式費用
- 借入金の残高がわかる書類(金融機関の残高証明書、金銭消費貸借契約書など)
- 亡くなった時点で未払いだった医療費などの請求書
- 固定資産税・住民税の納税通知書(亡くなった年の未納分)
- 準確定申告書の控え(納める所得税は債務控除の対象、還付金は相続財産)
- 葬式費用の領収書(領収書が出ない読経料などは、支払先・日付・金額の記録)
- 住宅ローンがある場合は、団体信用生命保険の有無がわかる書類(保険で返済されるローンは控除できません)
特例を使うときに追加する書類
小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減は、申告書を出すことが適用の条件です。税額が0円になる場合でも、要件を示す書類を添えて申告します。
配偶者の税額軽減
戸籍謄本などと、遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し(協議書の場合は印鑑証明書付き)を添付します。期限までに分割できないときは、申告期限後3年以内の分割見込書を添付しておきます。3年以内に分割し、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をすれば、軽減を受けられます(配偶者の税額軽減)。
小規模宅地等の特例
特例の対象になりうる宅地を取得した人が2人以上いるときは、どの宅地に特例を使うかについて全員の同意が必要です。同意は、申告書の第11・11の2表の付表1の同意欄に、特例を受けない人も含めて全員が氏名を書いて行います。このほか、宅地の区分に応じて次の書類を添付します(小規模宅地等の申告手続・分割要件・添付書類)。
チェックリスト6:小規模宅地等の特例の添付書類
- 共通:第11・11の2表の付表1(小規模宅地等についての課税価格の計算明細書。取得者全員の同意欄を含む)
- 配偶者以外の同居親族、または生計を一にしていた親族が居住用の宅地を取得した場合:その親族が自分の住まいとして使っていることを明らかにする書類(その親族がマイナンバーを持っていれば不要)
- 家なき子の特例:相続開始前3年以内の住所または居所を明らかにする書類(マイナンバーを持っていれば不要)、その3年以内に住んでいた家屋が自分・配偶者・三親等内の親族・特別の関係がある一定の法人以外の人の所有であることを証する書類、相続開始時に住んでいる家屋を過去に一度も所有したことがないことを証する書類
- 老人ホームなどに入所していた場合:被相続人の戸籍の附票の写し(相続開始日以後に作成されたもの)、要介護認定などを受けていたことがわかる書類(介護保険の被保険者証や障害福祉サービス受給者証の写しなど)、施設の名称・所在地・種類がわかる入居契約書の写しなど
- 特定同族会社事業用宅地等:会社の定款の写しと、発行済株式の総数と被相続人などの持株数を会社が証明した書類
- 貸付事業用宅地等で相続開始前3年以内に貸し付けた宅地:被相続人などが3年を超えて特定貸付事業を行っていたことを明らかにする書類
- 特定事業用宅地等のうち郵便局舎の敷地:総務大臣が交付した証明書
介護保険の被保険者証の写しは、2026年4月1日以後に申告書を出す場合、保険者番号と被保険者番号を復元できない程度に塗りつぶします施行中。複数の要件に当てはまる場合は、それぞれの書類を添付します。
マイナンバーとe-Taxでの出し方
申告書には各人のマイナンバー(個人番号)を書き、本人確認書類の写しを添付します(e-Taxで申告する場合は不要です)。特例を受ける人がマイナンバーを持っている場合は、住まいや住所を示す一部の書類の添付が不要になります。
e-Taxで申告する場合は、戸籍謄本や遺産分割協議書などの添付書類をPDFなどで送れます。この場合、原本を保存しておく必要はありません。2025年(令和7年)4月からは、添付書類をグレースケールで読み取ってもよくなりました。分割見込書も、e-TaxならPDFで添付できます。
どの方法で出す場合も、提出した申告書と添付書類の控えは手元に残します。控えは、修正申告や更正の請求、相続した不動産を売るときの取得費加算の計算に使います(申告書の構成と令和8年分の様式)。
よくある誤り
- 介護保険の被保険者証の写しを、番号が見える状態で出すのは誤りです。2026年4月1日以後の提出分は、保険者番号と被保険者番号を塗りつぶします。
- 分割見込書を出し忘れると、3年以内に分割しても特例の救済を受けにくくなります。期限までに分割できないときは、申告書と一緒に出します。
- 法定相続情報一覧図には、相続放棄の有無が書かれません。また、廃除を受けた人は載りません。一覧図に載っている人が全員、財産を取得する相続人とは限りません。
- 戸籍の広域交付は、兄弟姉妹や代理人は使えません。兄弟姉妹が相続人になる場合は、本籍地への郵送請求なども検討します。
他の税金とのつながり
- 譲渡所得:相続した不動産や株式を売って取得費加算の特例を使うときは、確定申告の計算に相続税の申告書の控えが必要です(相続税の取得費加算の特例)。
- 贈与税:生前贈与の加算と贈与税額控除の計算には、過去の贈与の内容と贈与税額が必要です。贈与税の申告書の控えや贈与契約書も集めます(生前贈与加算と相続時精算課税の加算)。
- 所得税:準確定申告書の控えは、債務控除(納める所得税)と相続財産(還付金)の確認に使います(準確定申告)。
法定相続情報一覧図を作るのに費用はかかりますか。
法務局での一覧図の写しの交付は無料です。ただし、一覧図を作るには戸籍を集める必要があり、戸籍の交付には市区町村の手数料がかかります(例えば札幌市では戸籍1通450円、除籍・改製原戸籍1通750円)。
遺言だけで財産を分けた場合も、印鑑証明書は必要ですか。
国税庁の一覧では、相続人全員の印鑑証明書は「遺産分割協議書に押印したもの」とされ、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などを受ける場合の書類として挙げられています。遺言で取得者が決まり、協議書を作らない場合は、遺言書の写しを添付します。
専門家向け:根拠と実務論点
- 小規模宅地等の特例の添付書類:租税特別措置法施行規則23条の2。申告書(期限後申告書・修正申告書を含む)に適用を受ける旨を記載し、計算明細書等を添付することが要件です。記載・添付がない場合でも、税務署長がやむを得ない事情があると認めるときは、書類の提出があった場合に限り適用できます(宥恕規定)。
- 選択の同意:第11・11の2表の付表1の「特例の適用にあたっての同意」欄に、特例の対象となり得る宅地等を取得した全員が記名します。特定計画山林の特例や個人版事業承継税制と併用する場合は付表2を使います。遺言の効力を争う訴訟中でも、全員の同意がなければ適用できないとした裁決があります(平成26年8月8日)。
- 配偶者の税額軽減:相続税法19条の2、相続税法施行規則1条の6・16条(添付書類)。
- 分割見込書による救済:申告期限から3年以内に分割した場合は、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をします。期限を過ぎた更正の請求を不適法とした裁決があります(令和3年6月22日)。
- 法定相続情報証明制度:不動産登記規則247条・248条。一覧図の右肩の法定相続情報番号を書いて写しの添付を省略できる扱い(2024年(令和6年)4月1日から)は、不動産登記の申請等に限られます。
- 戸籍の広域交付:戸籍法120条の2(2024年3月1日施行)。コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は対象外で、本人確認は顔写真付きの身分証明書で行います。
- 評価の根拠:倍率方式(評基通21)、地積は実際の面積(評基通8)、預貯金(評基通203)、上場株式(評基通169〜172)、生命保険契約に関する権利(評基通214)。
- 債務控除:相続税法13条・14条。死亡年分の未納の固定資産税・住民税は、納税通知書の到着前でも控除できます。団体信用生命保険で返済が免除される住宅ローンは控除できません(国税庁「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集」)。
財産と債務の調べ方
相続税の申告は、亡くなった人の財産と債務をもれなく洗い出すことから始まります。財産の種類ごとに、どこで何を取り寄せればよいか、どこで漏れやすいかを整理します。
この章の結論
- 不動産は、市町村の名寄帳・固定資産評価証明書と、法務局の登記事項証明書で確認します。2026年(令和8年)2月2日に始まった所有不動産記録証明制度で全国の登記記録から探せますが、登記上の住所や氏名が一致しないものは抽出されません。
- 預貯金は、相続開始日の残高に加えて過去の入出金も確認します。家族名義の口座でも、亡くなった人が資金を出して管理し、贈与の事実がないものは相続財産(名義預金)です。
- 差し引ける債務は、亡くなった時に確実にあったものだけです。亡くなった年の固定資産税・住民税の未納分は、納税通知書が届く前でも控除できます。
調べる範囲と進め方
調べる対象は、亡くなった人の名義の財産だけではありません。死亡保険金などのみなし相続財産、加算対象期間内の生前贈与、家族名義でも実質は亡くなった人のものである財産、差し引く債務と葬式費用まで含みます(相続税がかかる財産)。
進め方は、まず手元の資料から手がかりを集め、次に金融機関や役所に証明書を請求し、最後に評価する、という順番が基本です。相続放棄の判断には借入金の有無が欠かせないため、債務は早めに確認します。国税庁の事務運営指針では、財産の全容を把握できなかったことは、期限後申告の正当な理由に当たらないとされています。
手元で探す資料のチェックリスト
- 預金通帳・キャッシュカード(家族名義のものも含めて)
- 金融機関・証券会社・保険会社からの郵便物や取引報告書
- 固定資産税の納税通知書と課税明細書
- 権利証(登記識別情報)、売買契約書、賃貸借契約書
- 保険証券、年金・退職金の通知
- 確定申告書の控え(不動産所得や配当、特定口座年間取引報告書などが手がかりになります)
- 借用書、ローンの返済予定表、クレジットカードの利用明細
- 贈与契約書、贈与税の申告書の控え
- スマートフォン・パソコンのアプリやメール(ネット銀行・ネット証券・暗号資産など)
- 貸金庫や自宅の金庫の中身
不動産:名寄帳・評価証明・登記と全国の検索
不動産の確認には、主に次の4つの資料を使います。得意なことと限界がそれぞれ違うため、組み合わせて漏れを防ぎます。
| 資料 | 取得先 | わかること | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 名寄帳 | 不動産がある市町村 | その市町村で固定資産税が課されている土地・家屋の一覧 | 市町村ごとにしか出ない |
| 固定資産評価証明書 | 不動産がある市町村 | 固定資産税評価額(家屋や倍率地域の土地の評価に使う) | 相続人が請求するときは、死亡と相続関係を示す戸籍などが要る |
| 登記事項証明書 | 法務局 | 名義・持分・抵当権など、1つの不動産の権利関係 | 登記簿の地積と実際の面積が違うことがある(評価は実際の面積) |
| 所有不動産記録証明書 | 全国の法務局(オンライン請求も可) | 登記名義人として記録された不動産の全国の一覧 | 登記上の氏名・住所が検索条件と一致しないと抽出されない |
名寄帳は、市町村が固定資産課税台帳をもとに所有者ごとにまとめた一覧です。相続人も請求できますが、市町村ごとにしか出ないため、亡くなった人がほかの市町村に土地や家屋を持っていれば、その市町村でも取得します。
札幌市の場合、名寄帳兼課税台帳の写しは区を担当する市税事務所で無料で取得でき、郵送でも請求できます。固定資産評価証明書は1通450円で、市税事務所か市役所本庁舎2階の税の証明窓口で取得します。区役所では取得できません(札幌の相続の窓口)。
所有不動産記録証明制度は、2026年2月2日に始まりました施行中。相続人は、亡くなった人が登記名義人になっている不動産の一覧を、全国の法務局に請求できます。手数料は検索条件1件につき1通あたり、書面請求で1,600円、オンライン請求で郵送交付なら1,500円、窓口交付なら1,470円です。該当がなくても手数料は戻りません。
ただし、登記上の氏名・住所と検索条件が一致したものしか抽出されません(氏名は前方一致、住所は市区町村まで一致または末尾5文字一致)。住所変更の登記をしていないと漏れることがあるため、住民票の除票や戸籍の附票で過去の住所を確かめ、検索条件に加えます。表題登記しかない不動産や、コンピュータ化されていない登記簿の不動産も対象外です。名寄帳や課税明細書と突き合わせて使います。
例:過去の住所も含めて所有不動産記録証明書を請求する場合の手数料
前提:亡くなった父の最後の住所に加え、登記の住所が古いままの可能性がある過去の住所2か所も検索条件にして、検索条件3件で1通を請求します。
| 請求方法 | 検索条件1件あたり | 3件の合計 |
|---|---|---|
| 書面で請求 | 1,600円 | 4,800円 |
| オンラインで請求・郵送で受取り | 1,500円 | 4,500円 |
| オンラインで請求・窓口で受取り | 1,470円 | 4,410円 |
1,600円×3件=4,800円
1,500円×3件=4,500円
1,470円×3件=4,410円
答え:書面なら4,800円、オンライン請求なら4,410円〜4,500円です。該当する不動産がなくても手数料は戻りません。
未登記の建物も、亡くなった人が建てたり買ったりしたものなら相続財産です。登記の記録からは見つからないため、固定資産税の課税明細書なども確認します。
預貯金と現金:残高と過去の入出金
国税庁が公表した令和6事務年度の調査結果では、申告漏れの相続財産のうち現金・預貯金等が4割強を占めるとされています(税務調査の実態)。預貯金は、金融機関ごとに相続開始日現在の残高証明書を請求します。定期預金は、相続開始日までの利息(既経過利子)も評価に含めるため、その額もわかるようにします(預貯金・上場株式などの評価)。
あわせて、過去の取引履歴(入出金の明細)も確認します。見る点は、家族名義の口座への移し替え、まとまった現金の引出し、毎年決まった時期の振込、保険会社・証券会社・カード会社への引落しです。引落し先は、ほかの財産や債務の手がかりになります。少なくとも、生前贈与の加算対象期間(2026年中の相続なら相続開始前3年以内)の入出金は確認します。
相続開始時に手元に残っていた現金も相続財産です。亡くなる直前に預金から引き出した現金でも、相続開始時に残っていれば現金として申告します。国税庁が公表した調査事例には、相続開始前に引き出した現金を相続人の自宅の金庫に保管し、申告から除いていた例があります。この例では重加算税が課され、課税価格が約2億5,000万円増え、追徴税額は約1億2,000万円でした。
一方、引き出した現金で生前の入院費などを支払っていれば、その分は財産にも債務にもなりません。葬式費用に充てた分は、葬式費用として差し引きます。どちらの場合も、使い道を領収書などで説明できるようにしておきます。
家族名義の預金でも、亡くなった人の財産として申告すべき場合があります。国税庁の「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集」は、亡くなった人の収入から預け入れ、亡くなった人が管理・運用し、名義人が贈与を受けた事実がない預金を例に挙げています。判断のポイントは、この章の最後の節で説明します。
有価証券・保険・退職金・その他の財産
上場株式や投資信託は、取引していた証券会社などに相続開始日現在の残高証明書を請求します。取引先がわからないときは、配当金の通知や取引報告書、確定申告書に添付された特定口座年間取引報告書が手がかりになります。
生命保険は、保険証券や保険料の引落しの記録から契約を探し、保険会社に内容を確認します。死亡保険金は受取人が請求し、請求権は3年で時効になります。亡くなった人が保険料を負担していて、まだ保険事故が起きていない契約(生命保険契約に関する権利)も相続財産で、解約返戻金の額で評価します。
保険証券などが見つからないときは、生命保険協会の生命保険契約照会制度を使えます。協会に加盟する生命保険会社に契約があるかどうかをまとめて照会する仕組みで、亡くなった人の法定相続人や遺言執行者などが申請できます。費用は1件につき、オンライン申請で6,000円、書面申請で7,000円(いずれも税込)です。回答は契約の有無だけなので、内容は各保険会社に確認します。
勤務先からの死亡退職金は、死亡後3年以内に支給額が確定したものが相続財産とみなされます。亡くなった後に支給額が確定した賞与や、支給日が来ていなかった給与は、本来の相続財産です。
ほかに見落としやすい財産として、次のものがあります。
- 貸付金:親族や同族会社への貸付けも相続財産です。会社への貸付けは、会社の決算書では役員借入金などとして載っています。
- 未収金:支払日が来ているのに受け取っていない家賃・地代など。準確定申告で戻る所得税の還付金も相続財産です(還付加算金は相続人の雑所得)。
- デジタル資産:ネット銀行の預金、ネット証券の株式、暗号資産、電子マネーの残高は相続財産です。ポイントやマイル、SNSのアカウントなどは、会社の規約によって相続できるかが違います(保険・暗号資産などの評価)。
- 国外の財産:亡くなった人と相続人の住所や国籍によっては、国外の預金や不動産も日本の相続税の対象になります(相続税の納税義務者と国外財産)。
債務と葬式費用の調べ方
差し引ける債務は、亡くなった時に確実にあったものです。借入金は金融機関の残高証明書や返済予定表で、未払いの医療費などは請求書で確認します。亡くなった年の固定資産税・住民税と、準確定申告で納める所得税も債務として差し引けます。固定資産税・住民税の未納分は、納税通知書が届く前でも控除できます。
一方、次のものは差し引けません。墓地・墓石・仏壇などの非課税財産を買った未払代金やそのための借入金、団体信用生命保険で返済される住宅ローン、相続人の責任で生じた延滞税・加算税です。他人の借金の保証(保証債務)も、原則として控除できないとされています。
葬式費用は、通夜や葬儀・火葬・納骨の費用、遺体の運搬費用、読経料などのお礼が対象です。香典返し、墓地・墓石の購入費、初七日などの法事の費用は対象外です。領収書を保管し、領収書が出ないお礼は支払先・日付・金額を記録します(債務控除と葬式費用)。
過去の贈与と名義財産を確かめる
相続や遺贈で財産を取得した人(死亡保険金の受取人を含む)が、亡くなった人から加算対象期間内に暦年課税の贈与を受けていた場合は、その贈与を相続税の課税価格に加えます。110万円以下の贈与も含みます(生前贈与加算と相続時精算課税の加算)。
| 亡くなった日 | 加算する贈与 |
|---|---|
| 2026年12月31日まで | 相続開始前3年以内施行中 |
| 2027年(令和9年)1月1日〜2030年(令和12年)12月31日 | 2024年(令和6年)1月1日から亡くなった日まで(3年より前の分は、合計から100万円を控除) |
| 2031年(令和13年)1月1日以後 | 相続開始前7年以内(3年より前の分は、合計から100万円を控除) |
相続時精算課税を選んでいた贈与は、期間に関係なく贈与時の価額で加えます(2024年1月1日以後の贈与は、年110万円の基礎控除の部分を除きます)。
過去の贈与は、贈与契約書、贈与税の申告書の控え、通帳の入出金で確かめます。贈与を受けた人は、e-Taxのマイページで、自分が過去にe-Taxで出した贈与税の申告の情報を見られます。2026年9月下旬からは、書面で出した分も含めて相続時精算課税の適用状況を見られる予定とされていました(提供の状況は国税庁のサイトで確認してください)。
ほかの相続人などが亡くなった人から受けた贈与は、税務署に開示を請求できます(相続税法49条)。相続や遺贈で財産を取得した人が、相続税の申告や更正の請求に必要なときに使えます。開示されるのは贈与税の課税価格の合計額で、亡くなった年の3月16日以後に、死亡時の住所地を所轄する税務署へ請求します(手数料はかからず、開示は請求から2か月以内)。
家族名義の預金や株式(名義株)は、名義ではなく実質で判断します。国税庁は、資金を誰が出したか、誰が管理・運用していたか、贈与の事実があったかを判断のポイントとしています。被相続人以外の名義の財産だと知りながら申告しないことは、重加算税の対象となる隠蔽・仮装の例として、国税庁の事務運営指針に挙げられています(名義預金・名義株と贈与の証拠の残し方)。
よくある誤り
- 名寄帳を1つの市町村だけで取って安心するのは誤りです。名寄帳は市町村ごとなので、別の市町村にある土地や山林、別荘などが漏れます。
- 所有不動産記録証明書で全国の不動産がすべてわかる、と考えるのも誤りです。登記上の住所が古いままの不動産や、表題登記だけの不動産は抽出されません。
- 亡くなる直前に引き出した現金を申告しないのは誤りです。相続開始時に残っていれば、現金として相続財産になります。
- 団体信用生命保険で返済される住宅ローンを債務に入れたり、未納の固定資産税・住民税を入れ忘れたりする誤りもよくあります。
他の税金とのつながり
- 譲渡所得:亡くなった人が不動産を買ったときの売買契約書や領収書は保管します。相続人が将来売るときは亡くなった人の取得費と取得時期を引き継ぐため、その証拠になります。実際の取得費がわかれば、売った金額の5%とする概算取得費より有利になることがあります(相続・贈与で取得した資産の取得費と取得時期)。
- 贈与税:家族名義の預金や過去の贈与は、贈与税の申告の有無とあわせて確認します(名義預金・名義株と贈与の証拠の残し方)。
- 所得税:準確定申告で納める所得税は債務控除の対象、還付金は相続財産です(準確定申告)。
専門家向け:根拠と実務論点
- 名寄帳:市町村は固定資産課税台帳に基づき土地名寄帳・家屋名寄帳を備えます(地方税法387条1項)。納税義務者等は、固定資産課税台帳の自己に関する部分を閲覧できます(同法382条の2)。
- 所有不動産記録証明:不動産登記法119条の2(相続人その他の一般承継人は、被相続人に係る証明書を請求できます)。必要書類は相続関係を証する戸籍謄本・法定相続情報一覧図の写し等で、過去の氏名・住所で検索するときは、それを証する戸除籍謄本・住民票・戸籍の附票等も要ります。同姓同名の別人の不動産が含まれることがあり、審査中の登記申請は反映されません。
- 評価の論点:地積は課税時期の実際の面積(評基通8)。預貯金は評基通203。貸付金債権は評基通204・205(回収不能の一定の場合は元本に算入しません)。未収法定果実は評基通208(支払期日が未到来の既経過家賃は算入しなくてよいとする質疑応答事例があります)。生命保険契約に関する権利は評基通214(掛捨て型は評価しません)。
- 準確定申告の還付金は本来の相続財産で、還付加算金は相続人の雑所得です(質疑応答事例「被相続人の準確定申告に係る還付金等」)。死亡退職金は相続税法3条1項2号。死亡後に確定した賞与・支給期未到来の給与は本来の相続財産です(相基通3-32・3-33)。
- 名義預金:国税庁「誤りやすい事例集」事例6は、子名義でも被相続人の財産であれば第11表の付表3等に記載すべきとしています。東京地裁平成20年10月17日判決は、出捐者、管理・運用の状況、利益の帰属者、名義人との関係、名義取得の経緯などを総合考慮するとしました。令和3年9月17日裁決は、受贈者の署名押印がなく本人も知らない贈与証では書面による贈与は成立しないとし、被相続人が鍵を管理していた金庫の現金も相続財産としました。
- 債務控除:相続税法13条・14条。保証債務は、主たる債務者が弁済不能で、求償しても返還を受けられない部分に限り控除できるとされます(相基通14-3)。制限納税義務者などは控除できる債務の範囲が限られ、葬式費用は控除できません。
- デジタル遺産:相続人は、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(一身専属のものを除く。民法896条)。活発な市場がある暗号資産は、交換業者が公表する課税時期の取引価格(残高証明書記載の取引価格を含む)で評価します(国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」)。
- 重加算税:被相続人以外の名義・架空名義・無記名・遠隔地の財産であると認識したうえで申告しなかった場合は、隠蔽・仮装の類型に当たります(事務運営指針「相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて」)。
- 生命保険契約照会制度:回答は利用料の入金確認後おおむね2週間です。財形保険・財形年金保険、年金の支払が始まった年金保険、保険金等が据え置きになっている契約は照会の対象外です(政府広報オンライン)。
- 贈与税の申告内容の開示請求:相続税法49条1項。対象は、他の共同相続人等が被相続人から受けた加算対象贈与財産(19条1項。相続開始前3年超の分は100万円を控除した額)と相続時精算課税の適用財産(基礎控除後)に係る贈与税の課税価格の合計額で、他の共同相続人等が2人以上なら全員分の合計額です。税務署長は請求後2か月以内に開示します(同条3項)。添付書類は遺産分割協議書や遺言書の写し(ない場合は戸籍の謄抄本)です(国税庁の手続案内B1-61)。
申告書の構成と令和8年分の様式
相続税の申告書は、第1表から第15表までの表と付表を組み合わせて作ります。各表の役割と論点ごとに書く表、そして2026年(令和8年)中に亡くなった人の申告で使う令和8年分用の様式の変更点を整理します。
この章の結論
- 中心は第1表(各人の課税価格・税額・納付税額)と第2表(相続税の総額)です。財産の明細は第11表、債務と葬式費用は第13表、生前贈与の加算は第14表、配偶者の税額軽減は第5表、小規模宅地等の特例は第11・11の2表の付表1に書きます。
- 2026年1月1日から12月31日までに亡くなった人の申告には、令和8年分用の様式を使います。様式が変わったため、変更前の様式は使いません。2025年(令和7年)以前に亡くなった人の申告は、その年分用の様式を使います。
- 控用(控え)の様式は廃止され、2025年1月からは控えに収受日付印も押されていません。控えは自分でコピーを取り、取得費加算や更正の請求に備えて保管します。
申告書は「税額を計算する表」と「財産を集計する表」でできている
相続税の申告書は、目的の違う多くの表の組合せです。大きく分けると、各人の税額を計算する表(第1表〜第8の8表)と、財産・債務を集計する表(第9表〜第15表)があります。
財産・債務の表で集計した金額を第1表の各人の課税価格に移し、第2表で相続税の総額を出します。その後、2割加算や税額控除の表で各人の税額を調整し、第1表で納付税額を確定させます。
| 表 | 名称 | 役割 |
|---|---|---|
| 第1表・第1表(続) | 相続税の申告書 | 各人の課税価格、算出税額、2割加算、税額控除、納付税額をまとめる中心の表 |
| 第1表の付表1 | 納税義務等の承継に係る明細書(兼相続人の代表者指定届出書) | 申告前に亡くなった人の納税義務を承継する場合 |
| 第1表の付表2 | 還付される税額の受取場所 | 還付金の振込先 |
| 第1表の付表3〜5 | 受益者等が存しない信託等、人格のない社団等・持分の定めのない法人、特定一般社団法人等に課される相続税額の計算明細書 | 特殊な納税義務者の計算 |
| 第2表 | 相続税の総額の計算書 | 基礎控除、法定相続人と法定相続分、相続税の総額 |
| 第3表 | 財産を取得した人のうちに農業相続人がいる場合の各人の算出税額の計算書 | 農地等の納税猶予がある場合 |
| 第4表・付表 | 相続税額の加算金額の計算書 | 2割加算 |
| 第4表の2 | 暦年課税分の贈与税額控除額の計算書 | 加算した贈与にかかった贈与税の控除 |
| 第5表・付表 | 配偶者の税額軽減額の計算書 | 配偶者の税額軽減 |
| 第6表 | 未成年者控除額・障害者控除額の計算書 | 未成年者控除・障害者控除 |
| 第7表 | 相次相続控除額の計算書 | 相次相続控除 |
| 第8表 | 外国税額控除額・農地等納税猶予税額の計算書 | 外国税額控除、農地等の納税猶予 |
| 第8の2表〜第8の7表 | 株式等・山林・医療法人持分・美術品・事業用資産の納税猶予税額等の計算書、納税猶予税額等の調整計算書 | 事業承継税制などの納税猶予 |
| 第8の8表 | 税額控除額及び納税猶予税額の内訳書 | 各人の税額控除・猶予税額の集計 |
| 表 | 名称 | 役割 |
|---|---|---|
| 第9表 | 生命保険金などの明細書 | 死亡保険金と非課税金額 |
| 第10表 | 退職手当金などの明細書 | 死亡退職金と非課税金額 |
| 第11表・付表1〜4 | 相続税がかかる財産の明細書(相続時精算課税適用財産を除く) | 土地・家屋・有価証券・預貯金などの明細と、分割の状況 |
| 第11の2表 | 相続時精算課税適用財産の明細書・相続時精算課税分の贈与税額控除額の計算書 | 精算課税の贈与財産の加算と、贈与税額の控除 |
| 第11・11の2表の付表1〜4 | 小規模宅地等についての課税価格の計算明細書ほか | 小規模宅地等・特定計画山林などの特例(取得者全員の同意を含む) |
| 第11の3表 | 個人の事業用資産の贈与者が死亡した場合の特例受贈事業用資産の明細書 | 個人版事業承継税制 |
| 第12表 | 農地等についての納税猶予の適用を受ける特例農地等の明細書 | 農地等の納税猶予 |
| 第13表 | 債務及び葬式費用の明細書 | 債務控除・葬式費用 |
| 第14表 | 純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額及び特定贈与財産価額などの明細書 | 生前贈与の加算、公益法人などへの寄附の非課税 |
| 第15表・第15表(続) | 相続財産の種類別価額表 | 財産を種類別に集計 |
論点ごとに書く表の早見表
同じ論点でも、金額を書く表と、税額を計算する表が分かれていることがあります。主な論点と表の対応は次のとおりです。
| 論点 | 書く表 | 詳しい章 |
|---|---|---|
| 生命保険金・死亡退職金の非課税 | 第9表・第10表 | みなし相続財産 |
| 土地・預貯金などの財産と、誰が取得したか | 第11表とその付表 | 相続税がかかる財産 |
| 家族名義の預金(名義預金) | 第11表の付表3など | 名義預金・名義株 |
| 小規模宅地等の特例 | 第11・11の2表の付表1(同意欄に取得者全員が記名) | 小規模宅地等の申告手続 |
| 相続時精算課税の贈与 | 第11の2表 | 相続時精算課税の精算と還付 |
| 債務・葬式費用 | 第13表 | 債務控除と葬式費用 |
| 生前贈与の加算(暦年課税) | 第14表(贈与税額控除は第4表の2) | 生前贈与加算 |
| 2割加算 | 第4表 | 各人の税額と2割加算 |
| 配偶者の税額軽減 | 第5表 | 配偶者の税額軽減 |
| 未成年者控除・障害者控除 | 第6表 | 未成年者控除・障害者控除 |
| 相次相続控除・外国税額控除 | 第7表・第8表 | 相次相続控除・外国税額控除 |
| 事業承継税制(株式等の納税猶予) | 第8の2表・第8の2の2表 | 事業承継税制 |
| 還付金の受取口座 | 第1表の付表2 | 相続時精算課税の精算と還付 |
国税庁の「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集」は、家族名義の預金でも亡くなった人の財産と認められるものは、第11表の付表3などに記載すべきとしています。
作る順番:評価明細書から第1表へ
国税庁の「相続税の申告書の記載例等(令和8年分用)」は、次の順番で作るよう示しています。
- 評価明細書を作る土地や非上場株式などの評価明細書を先に作り、評価額を確定させます。
- 財産・債務の明細を作る第9表、第10表、第11・11の2表の付表1〜4、第11表の付表1〜4、第13表、第14表、第15表、第11表の順に作ります。
- 税額を計算する第1表、第2表、第4表、第4表の2、第5表、第6表、第7表、第8表、第8の8表の順に作ります。
小規模宅地等の特例の付表1を第11表より先に作るのは、第11表や課税価格には特例で減額した後の価額を使うためです。評価と特例の計算が固まらないと、後ろの表を何度も直すことになります。
令和8年分の様式で変わったこと
2026年中に亡くなった人の申告には、国税庁の「相続税の申告書等の様式一覧(令和8年分用)」の様式を使います。様式一覧と「相続税の申告のしかた(令和8年分用)」は、2026年7月1日に公表されました。
- 様式の変更:様式一覧は令和8年分用から様式を変更したとしており、冊子は変更前の様式を使わないよう求めています施行中。
- 控用の廃止:控えの様式はなくなりました。控えが必要な人は、自分で作って保管します。
- 収受日付印:2025年1月から、申告書の控えに収受日付印は押されていません。
- 第1表の付表3・付表4:「令和8年1〜3月分用」と「令和8年4月分以降用」に分かれています。分けた理由は様式一覧に書かれていません。信託や人格のない社団などに課される特殊な場合の付表です。
- 第14表の記載例:冊子の第14表の記載例に誤りがあり、2026年9月に正誤表が出ました。国税庁サイトの電子版は訂正済みです。
| 亡くなった日 | 使う様式 | 申告期限 |
|---|---|---|
| 2025年12月20日(土) | 令和7年分用 | 2026年10月20日(火) |
| 2026年5月12日(火) | 令和8年分用 | 2027年(令和9年)3月12日(金) |
| 2026年10月17日(土) | 令和8年分用 | 2027年8月17日(火) |
| 2027年1月1日以後 | 令和9年分用(2026年10月時点で未公表) | 死亡を知った日の翌日から10か月以内 |
申告期限が2026年中に来る場合でも、亡くなったのが2025年なら令和7年分用の様式を使います。様式は「申告する年」ではなく「亡くなった年」で選びます。
2027年以後の相続と第14表
2027年1月1日以後に亡くなった人の相続では、生前贈与の加算期間が延びます施行中。2027年から2030年(令和12年)までの相続では2024年(令和6年)1月1日以後の贈与が対象になり、2031年(令和13年)1月1日以後の相続では7年以内になります。延びた期間(相続開始前3年より前)の贈与は、合計から100万円を差し引いて加算します。
令和8年分用の第14表は、2026年中の相続、つまり3年以内の加算に使う様式です。延びた期間の100万円控除を申告書のどこに書くかは、令和9年分用の様式で確認する必要があります。
控えの残し方と提出の方法
控用の様式がなくなったため、提出する申告書と添付書類は、出す前にコピーを取って保管します。e-Taxで出す場合も、送信したデータを保存しておきます。控えは、申告の後も次の場面で使います。
- 相続した不動産や株式を売るとき:取得費加算の特例の計算に、相続税の申告書の控えが必要です。
- 申告の誤りを直すとき:税額が多すぎた場合の更正の請求は、原則として法定申告期限から5年以内にできます(修正申告・更正の請求)。
- 次の相続のとき:10年以内に次の相続が起きると、前回の相続税額などを使って相次相続控除を計算します。
提出は、e-Tax、郵便・信書便、税務署の時間外収受箱のいずれかで行います。相続税の申告の約7割はe-Taxで出されています。e-Taxでは添付書類をPDFなどで出せ、税理士に依頼すれば相続人本人の電子署名は不要です。共同で提出しない相続人を第1表に参考として載せる場合は、「参考記載」欄に「1」と書きます(申告までの10か月のスケジュール)。
よくある誤り
- 2026年中に亡くなった人の申告に、令和7年分以前の様式を使うのは誤りです。逆に、2025年に亡くなった人の申告には令和7年分用を使います。
- 第14表は、冊子の記載例をそのまま写さず、正誤表を確認します。
- 小規模宅地等の特例の同意欄には、特例を受けない取得者も含めて全員の氏名が必要です。
- 控えを取らずに提出すると、後の取得費加算や更正の請求の計算で困ります。控用の様式はもうありません。
他の税金とのつながり
- 譲渡所得:取得費加算の計算には、相続税の申告書に書いた相続税額や課税価格を使います(相続税の取得費加算の特例)。
- 株式評価:非上場株式の評価明細書は、申告書より先に作ります(評価明細書の様式と実務の流れ)。
- 贈与税:第14表と第4表の2には、生前に受けた贈与の価額と、その贈与にかかった贈与税額を書きます(生前贈与加算と相続時精算課税の加算)。
専門家向け:根拠と実務論点
- 様式:相続税法施行規則に定める様式。様式一覧(令和8年分用)は令和8年1月1日〜12月31日の相続開始分が対象で、令和7年分以前は従前の年分用を使います。
- 第1表の付表1:申告前に死亡した人の納税義務の承継者(相続放棄者を除く)の全員を記入し、相続人の代表者指定届出を兼ねます。共同で提出しない承継者も、別に申告書と付表1を出します。
- 第11・11の2表の付表1には、(続)、別表1、別表1の2、別表2(特定事業用宅地等の事業規模の判定明細)があります。特定計画山林の特例や個人版事業承継税制と併用する場合は付表2(同意等)を使います。
- 端数と記載:各人の課税価格は1,000円未満切捨てです(相基通16-2)。あん分割合は財産取得者全員が選んだ方法で合計が1になるよう調整でき(相基通17-1)、申告書には小数点以下10位まで書けます。
- 第1表の付表3・付表4の期間区分の理由は、様式一覧ページに記載がありません。第14表の記載例(冊子70ページ)は正誤表で訂正されています。
- 共同提出:第1表には共同で提出する人だけを記載し、参考として載せる人は「参考記載」欄に「1」を記入します。税理士が利用者識別番号入りのデータをe-Taxで代理送信する場合は、この明示は不要です。
- e-Tax:添付書類をPDF等で提出すれば原本の保存は不要です。相続人の利用者識別番号は税理士が照会でき、2024年12月から1件の変更等届出書で複数の財産取得者の分を確認できます。
- 取得費加算:租税特別措置法39条。加算額は「その人の相続税額×譲渡資産の課税価格算入額÷その人の課税価格(債務控除前)」で、相続税の申告書の数値を使います。
遺産が未分割のときの申告
遺産分割の話合いがまとまらなくても、相続税の申告と納税の期限は延びません。いったん法定相続分などで申告・納税し、分割が決まってから税額を正す二段階の手続になります。
この章の結論
- 分割がまとまらなくても、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税します。未分割の財産は、各相続人が民法の相続分(多くは法定相続分)で取得したものとして計算します。
- 未分割のままでは配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例を使えません。申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、3年以内に分割した後の更正の請求で適用を受けられます。
- 分割で税額が減る人は分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求、増える人は修正申告をします。3年以内に分割できない事情があれば、3年を経過する日の翌日から2か月以内に承認申請をします。
分割がまとまらなくても期限内に申告・納税する
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。遺産分割が終わっているかどうかで期限は変わりません(数え方は申告までの10か月のスケジュール)。分割協議が続いていても、期限内に申告書を出して納税します。
国税庁の事務運営指針は、相続人間の争い、遺産分割協議がまとまらないこと、相続財産の全容を把握できなかったことを、期限後申告の「正当な理由」に当たらないとしています。期限を過ぎると、原則として無申告加算税と延滞税の対象になります(加算税・延滞税)。
未分割の財産の計算方法
未分割の財産は、各相続人が民法の規定による相続分(多くの場合は法定相続分)で取得したものとして、課税価格(税金を計算するもとになる金額)を計算します。包括遺贈(遺産の何分の1という形の遺贈)があれば、その割合で計算します(相続税法55条)。
もともと相続税の総額は、実際の分け方に関係なく、法定相続人が法定相続分どおりに取得したと仮定して計算します(相続税の総額:速算表と法定相続分)。分割で変わるのは、主に各人の負担の割合と、分割を条件とする特例の適用です。
未分割では使えない特例と「3年以内の分割見込書」
未分割のままでは、配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例を使えません。配偶者の税額軽減は、配偶者が遺産分割や遺贈で実際に取得した財産が対象で、申告期限までに分割されていない財産は原則として対象外です(配偶者の税額軽減)。小規模宅地等の特例も、申告期限までに分割されていない宅地等には適用できません(申告手続・分割要件・添付書類)。
後でこの2つの適用を受けるには、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておきます。e-Taxで申告する場合はPDFで添付します。申告期限から3年以内に分割すれば、更正の請求で適用を受けられます。
| 項目 | 未分割のままだと | 後から適用を受ける方法など |
|---|---|---|
| 配偶者の税額軽減 | 未分割の財産は軽減の対象外 | 分割見込書を添付→申告期限から3年以内に分割→分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求 |
| 小規模宅地等の特例 | 未分割の宅地等には適用不可 | 同上。どの宅地を選ぶかは、宅地等を取得した人全員の同意が必要 |
| 物納 | 未分割の不動産は共有の状態で、物納に適さないのが原則 | 物納の申請は納期限まで。分割の見通しは早めに |
| 預貯金による納税 | 分割前に相続人1人で払い戻せるのは一定額まで | 遺産分割前の払戻し制度(この章の最後の見出し) |
実務のコツ:まとまる財産から一部分割する
遺産分割は、全部ではなく一部だけを先に協議で決めることもできます(民法907条1項)。たとえば自宅は配偶者が取得すると申告期限までに決まれば、その自宅には期限内の申告から配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使えます。残りの財産は未分割として申告し、分割見込書を添付します。
分割が決まったら:減る人は更正の請求、増える人は修正申告
分割が決まると、各人の課税価格が申告時と変わります。税額が減る人は、分割を知った日の翌日から4か月以内に更正の請求(納め過ぎた税金を返してもらう手続)をします(相続税法32条1項1号)。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を新たに適用する場合も、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をします。
税額が増える人は修正申告をします。修正申告を出さない場合は、税務署長が更正(税額を正す処分)をすることがあります。期限内には申告義務がなかった人に分割で税額が生じた場合は、期限後申告ができます。調停で一部の相続人が財産を取得しないことが確定した場合も分割に当たり、その人は更正の請求、他の相続人は修正申告をするというのが、国税庁の質疑応答事例の考え方です。
配偶者の税額軽減については、更正の請求の期限を延ばす取扱いがあります。「分割の日から4か月を経過する日」と「申告期限から5年を経過する日」のいずれか遅い日までです(相続税法基本通達32-2)。一方、小規模宅地等の特例は、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をします。期限を過ぎた請求を不適法とした裁決もあるため、分割が決まったら4か月以内に手続します。
分割による修正申告で増えた税額には、加算税・延滞税の特別な扱いがあります。事務運営指針は、申告期限後に相続税法51条2項各号の事由(未分割財産の分割などとされています)が生じた場合を、過少申告加算税を課さない「正当な理由」の例に挙げています。延滞税にも計算期間の特例があるとされています。
計算例:未分割で申告し、約2年後に分割した場合
前提:父が亡くなり、相続人は母・長男・長女の3人です。遺産は合計2億円で、内訳は自宅の土地5,000万円、自宅の家屋500万円、預貯金・有価証券1億4,500万円です。自宅の土地は330㎡以下で、母が取得すれば小規模宅地等の特例で80%減額できるものとします。債務・葬式費用はなく、基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。
1. 期限内の申告(未分割のため法定相続分で計算)
課税遺産総額:2億円−4,800万円=1億5,200万円
母(1/2):7,600万円×30%−700万円=1,580万円
子(各1/4):3,800万円×20%−200万円=560万円(2人で1,120万円)
相続税の総額:1,580万円+1,120万円=2,700万円
各人の課税価格は母1億円・長男5,000万円・長女5,000万円で、税額は母1,350万円・長男675万円・長女675万円です。財産がすべて未分割なので、母に配偶者の税額軽減はありません。
2. 分割後の計算(母が自宅と預貯金等2,500万円、長男が預貯金等8,000万円、長女が預貯金等4,000万円を取得)
自宅の土地:5,000万円−5,000万円×80%=1,000万円
課税価格:母4,000万円(1,000万円+500万円+2,500万円)、長男8,000万円、長女4,000万円、合計1億6,000万円
課税遺産総額:1億6,000万円−4,800万円=1億1,200万円
母:5,600万円×30%−700万円=980万円、子:2,800万円×15%−50万円=370万円(2人で740万円)
相続税の総額:980万円+740万円=1,720万円
母:1,720万円×4,000万円÷1億6,000万円=430万円→配偶者の税額軽減430万円→納付税額0円
長男:1,720万円×8,000万円÷1億6,000万円=860万円
長女:1,720万円×4,000万円÷1億6,000万円=430万円
| 相続人 | 未分割で申告 | 分割後 | 差額 | 手続 |
|---|---|---|---|---|
| 母 | 1,350万円 | 0円 | −1,350万円 | 更正の請求(配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例を適用) |
| 長男 | 675万円 | 860万円 | +185万円 | 修正申告 |
| 長女 | 675万円 | 430万円 | −245万円 | 更正の請求 |
| 合計 | 2,700万円 | 1,290万円 | −1,410万円 | ― |
答え:未分割の申告では3人で2,700万円を納め、分割後の税額は合計1,290万円になります。母と長女は更正の請求で還付を受け、長男は185万円の修正申告をします。母の課税価格4,000万円は、軽減の上限(1億6,000万円と法定相続分相当額8,000万円の多い方)の範囲内です。
- 2026年(令和8年)1月20日:相続の開始父が死亡し、相続人全員が同日に知りました。分割協議はまとまりません。
- 2026年11月20日(金):申告期限法定相続分で計算して3人で2,700万円を申告・納付し、分割見込書を添付します。
- 2028年(令和10年)10月16日:遺産分割の成立計算例の2のとおりに分けることが決まりました。
- 2029年(令和11年)2月16日まで:更正の請求と修正申告分割の日の翌日から4か月以内に、母(配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例を適用)と長女が更正の請求をします。小規模宅地等の特例は、この4か月が期限です。長男も同じ時期に修正申告をします。
- 参考:2029年11月20日申告期限から3年を経過する日です。ここまでに分割できない事情があれば、翌日から2か月以内に承認申請をします。
3年以内に分割できないとき:やむを得ない事由の承認申請
訴えの提起など、申告期限から3年以内に分割できないやむを得ない事情があるときは、所轄の税務署長に承認申請書を提出します。書類の名称は「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」で、提出期限は申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月以内です。
承認を受けた場合は、判決の確定などで事情がなくなった日の翌日から4か月以内に分割すれば、配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例を適用できます。その場合も、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をします。
単に話合いがまとまらないだけでは、やむを得ない事情に当たりにくい点に注意が必要です。相続人と財産が確定していて客観的には分割できるのに、代償金の額などで合意できないだけの場合は当たらないとした裁決(2014年(平成26年)6月2日)があります。
- 申告期限未分割で申告・納付し、分割見込書を添付
- 申告期限から3年以内この間に分割すれば特例を適用できます(分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求)
- 3年を経過する日の翌日から2か月以内やむを得ない事情があれば承認申請書を提出
- 事情がなくなった日の翌日から4か月以内承認を受けた場合はこの間に分割し、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求
分割前の納税資金と、未分割のまま売る・分け直すときの注意
未分割の間に納税資金が必要なときは、遺産分割前の相続預金の払戻し制度を使えます(民法909条の2)。各相続人は、金融機関ごとに「相続開始時の預貯金額×1/3×その人の法定相続分」まで単独で払戻しを受けられます。ただし1つの金融機関につき150万円が上限です。払い戻した預貯金は、その相続人が遺産の一部の分割で取得したものとみなされます。
例:A銀行の預金が1,800万円で、相続人が配偶者と子2人なら、子1人は1,800万円×1/3×1/4=150万円まで払い戻せます。配偶者は1,800万円×1/3×1/2=300万円ですが、上限の150万円までです。遺産分割の調停・審判を申し立てている場合は、家庭裁判所が必要と認めれば特定の預貯金を仮に取得させる仕組みもあり、こちらに150万円の上限はありません。
相続人の1人が自分の相続税を納めないと、他の相続人も相続で受けた利益の範囲で納める義務(連帯納付義務)を負います(納付・延納・物納)。いったん成立した分割を「やり直し」て財産を分け直すと、その分け直しで取得した財産は相続税法上の「分割」による取得になりません(相続税法基本通達19の2-8)。贈与などとして別の課税が生じる可能性があるため、協議の内容は固めてから合意します。遺産分割の手続や、2023年(令和5年)4月1日施行の10年の期間制限施行中は遺産分割:協議・調停・審判と10年の期間制限で説明しています。
よくある誤り
- 「分割がまとまってから申告すればよい」:期限は延びません。遺産分割協議がまとまらないことは、期限後申告の正当な理由になりません。
- 「3年以内に更正の請求をすればよい」:3年は分割の期限です。更正の請求は、分割の日の翌日から4か月以内が原則です。
- 「分割見込書は分割が決まってから出せばよい」:見込書は申告書と一緒に提出するのが基本です。出していないと、3年以内に分割しても救済を受けにくくなります。
- 「特例で税額が0円になるから申告しなくてよい」:配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も、申告書の提出が適用の条件です。
未分割で申告するときのチェックリスト
- 未分割の財産を、民法の相続分(多くは法定相続分。包括遺贈があればその割合)で各人に割り振って計算
- 「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付
- 各人の納税資金の確認(払戻し制度や延納が必要か)
- 先に分割できる財産(自宅など)の検討
- 分割成立後4か月の期限と、申告期限から3年(承認申請はその翌日から2か月)の期限の記録
他の税金との関係
- 未分割のまま不動産を売って代金を分ける場合、譲渡所得は各相続人が法定相続分で申告するのが原則です。所得税の確定申告期限までに代金を分割し、全員がその割合で申告すれば、その割合も認められます。法定相続分で申告した後に分割が決まっても、所得税の更正の請求や修正申告はできません(換価分割・代償分割・遺留分の支払と譲渡所得)。
- 分割で相続税額が変わると、相続財産を売ったときの取得費加算の額も、変わった後の相続税額で計算します(相続税の取得費加算の特例)。
- 未分割の非上場株式は、評価方式の判定で、各相続人が未分割の株式の全部を取得したものとして議決権割合を計算します(評価方式の判定:株主の区分)。
遺言がある財産も未分割になりますか。
特定の財産を特定の人が取得すると遺言で定めていれば、その財産は遺産分割を待たずに取得者が決まります。配偶者の税額軽減は遺贈で取得した財産も対象なので、申告期限から特例を使いやすくなります。ただし「遺産の2分の1」のような包括遺贈は、受遺者を含めた分割が必要です(遺言がある場合の手続)。
専門家向け:根拠と実務論点
- 未分割遺産の課税価格は相続税法55条(相続分からは寄与分を除くとされています)。分割後の更正の請求は32条1項1号、修正申告は31条1項、更正は35条3項、期限内申告義務がなかった人の期限後申告は30条・相基通30-1。
- 分割要件は、配偶者の税額軽減が相続税法19条の2第2項・第3項、小規模宅地等が措法69条の4(相続税法32条1項を準用)。配偶者の税額軽減の分割要件ただし書に該当して税額が変わる場合(1号に当たる場合を除く)は32条1項8号です。
- 相基通32-2は、配偶者の税額軽減の分割要件のただし書(19条の2第2項ただし書)に該当して課税価格や税額が変わった場合について、32条1項の更正の請求のほか通則法23条の更正の請求もできるとし、期限を「分割の日から4か月を経過する日」と「申告期限から5年を経過する日」のいずれか遅い日としています。小規模宅地等の特例の分割後の更正の請求は分割の日の翌日から4か月以内で、期限を過ぎた請求を不適法とした裁決(2021年(令和3年)6月22日)もあります。期限管理は分割の日を起点に行います。
- やむを得ない事由に当たらないとされた裁決:2007年(平成19年)5月15日(訴訟の係属、多忙、分割の努力、共同相続人の通院などの主張)、2014年6月2日(代償金の額などで合意できないだけの場合)。
- 分割前に共同相続人が死亡しても、その相続人等による分割で死亡者の取得分が確定すれば、死亡者が取得したものとして小規模宅地等の特例を扱えます(措通69の4-25)。
- 他の相続人の32条1項1〜6号の更正の請求に基づく更正があれば、残りの相続人を更正・決定できます(35条3項、相基通35-1)。
- 相続税法51条2項は、分割などによる期限後申告・修正申告の税額について、法定納期限の翌日から申告書の提出日までを延滞税の計算期間に含めない規定とされています。
- 分割の完了を条件とする取扱いの例:同族株主が相続・遺贈で取得した無議決権株式の評価の調整計算(申告期限までの遺産分割協議の確定などが要件。2007年2月26日文書回答)、認定医療法人の持分に係る相続税の納税猶予(遺産分割済みの持分が対象)。
- 未分割の非上場株式の議決権割合は、各相続人の所有株式数に未分割株式の全部を加えて判定します(質疑応答事例)。分割のやり直しで再配分された財産は、分割による取得となりません(相基通19の2-8ただし書)。
準確定申告:亡くなった人の所得税
年の途中で亡くなった人の所得税は、相続人が代わりに計算して申告・納税します。これを準確定申告といい、期限は相続税の10か月より短い4か月です。
この章の結論
- 亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得を、相続人(包括受遺者を含む)が、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に、亡くなった人の納税地の税務署へ申告・納税します。付表は相続人が1人でも必要です。
- 医療費控除や社会保険料控除の対象は、死亡日までに本人が支払った分だけです。扶養親族などは死亡日の現況で判定します。
- 準確定申告で納める所得税は相続税の債務控除の対象で、還付金は相続財産になります。死亡した年の所得には、翌年度の住民税がかかりません。
準確定申告とは:誰が・いつまでに・どこへ
準確定申告は、亡くなった人(被相続人)のその年1月1日から死亡日までの所得と税額を、相続人と包括受遺者(以下「相続人等」)が計算して申告・納税する手続です。亡くなった人に確定申告が必要な所得があった場合に行います。源泉徴収された税金が多すぎる場合は、申告すれば還付を受けられます。
給与や公的年金だけだった人は、準確定申告が不要なことがあります。給与の収入が2,000万円以下で、1か所から受けた給与の全部が源泉徴収の対象となり、給与以外の所得が20万円以下なら、原則として不要です。公的年金等の収入が400万円以下で、その全部が源泉徴収の対象となり、年金以外の所得が20万円以下の場合も不要です(所得税法121条)。不要な場合でも、還付を受けるための申告はできます。
期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です(所得税法125条1項)。提出先は、亡くなった人の死亡当時の納税地を所轄する税務署長で、相続人の住所地の税務署ではありません。
1月1日から前年分の確定申告期限(原則3月15日)までの間に、前年分を申告しないまま亡くなった場合は、前年分と本年分の両方を、同じ4か月以内に申告します。
- 2027年(令和9年)2月10日例:父が死亡し、相続人が同日に知りました。2026年(令和8年)分の確定申告はまだしていません。
- 2027年5月10日相続放棄・限定承認の期限(相続の開始を知った時から3か月。相続放棄・限定承認)
- 2027年6月10日準確定申告の期限。2026年分と2027年分の2つを申告・納税します
- 2027年12月10日相続税の申告・納付の期限(10か月)
相続が起きてからの期限の全体は相続が起きたら:期限カレンダーでも確認できます。
申告書の作り方:付表と、相続人が複数いるとき
準確定申告書には「死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」を添付します。付表は、相続人が1人の場合でも必要です。
相続人等が2人以上いるときは、全員が連署して1通の申告書で提出できます。他の相続人の氏名を付記して各自が別々に提出することもでき、その場合は、他の相続人に申告の内容を通知しなければなりません。
2020年(令和2年)分以後の準確定申告は、e-Taxで提出できます。ただし国税庁の確定申告書等作成コーナーでは作成できないため、e-Taxソフトなどを使い、付表はXML形式で提出します。還付金を相続人の代表者が他の相続人の分もまとめて受け取る場合は、準確定申告書用の委任状が必要です。
所得控除は死亡日で区切る
準確定申告の所得控除は、死亡日を基準に考えます。支払った保険料や医療費は、死亡日までに亡くなった人が支払った分だけが対象です。家族関係による控除は、死亡日の状況で判定します。
| 控除 | 準確定申告での扱い |
|---|---|
| 医療費控除 | 死亡日までに被相続人が支払った医療費だけが対象(死亡後に相続人が支払った分は対象外) |
| 社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・地震保険料控除 | 死亡日までに被相続人が支払った額が対象 |
| 寄附金控除 | 死亡日までに支出した特定寄附金が対象 |
| 配偶者控除・扶養控除など | 死亡日の現況で判定(月割計算はなし) |
死亡後に相続人が支払った入院費などは、準確定申告では控除できません。相続税の側では、死亡時にあった確実と認められる債務(借入金・未払金など)が債務控除の対象になります(債務控除と葬式費用)。
相続税とのつながり:債務控除・相続財産・住民税
準確定申告で納める所得税は、亡くなった人に課される税金なので、相続税の計算で債務として差し引けます(債務控除)。死亡した年分の固定資産税や住民税のうち死亡時に未納のものも、納税通知書が届く前であっても債務控除の対象です。
反対に、準確定申告で所得税が還付される場合、その還付金は亡くなった人の財産(本来の相続財産)として相続税の課税対象になります。還付金に付く還付加算金は相続財産ではなく、受け取った相続人の雑所得です。準確定申告の遅れなど、相続人の責任で生じた延滞税や加算税は債務控除できません。
個人住民税は、毎年1月1日に住所がある人に課されます。このため、死亡した年の所得(準確定申告で申告した所得を含む)には、翌年度の住民税はかかりません。一方、死亡した年の1月1日に住所があれば、その年度分(前年の所得に対する分)の住民税は課され、納める義務は相続人が引き継ぎます。
例:準確定申告の結果を相続税の申告に反映する
前提:父の準確定申告で所得税を28万円納め、死亡した年度分の住民税に未納が12万円ありました。別のケースとして、準確定申告で所得税が6万円還付され、還付加算金が付いたとします。
| 項目 | 相続税での扱い | 金額 |
|---|---|---|
| 準確定申告で納めた所得税 | 債務控除 | 28万円 |
| 死亡した年度分の未納の住民税 | 債務控除 | 12万円 |
| 準確定申告の還付金(別ケース) | 本来の相続財産 | 6万円 |
| 還付加算金(別ケース) | 相続財産ではなく、受け取った相続人の雑所得 | ― |
答え:納付のケースでは、所得税28万円と住民税12万円の合計40万円(28万円+12万円)を債務控除します。還付のケースでは、還付金6万円を相続財産に加え、還付加算金は相続人の雑所得として扱います。
実務のコツ:準確定申告を先に固める
準確定申告の結果は、納付なら相続税の債務控除に、還付なら相続財産に反映します。4か月の期限内に準確定申告を済ませておくと、10か月の相続税の申告に向けて財産と債務の金額を確定しやすくなります。死亡日までの収入と、医療費や保険料など控除の対象になる支払の資料は、早めに集めておきます。
死亡に伴って受け取るお金:所得税と相続税の区分
亡くなったことに伴って支払われるお金は、種類によって所得税の対象か相続税の対象かが分かれます。準確定申告に入れるもの、相続税の申告に入れるもの、遺族自身の所得になるものを区別します。
| お金の種類 | 所得税 | 相続税 |
|---|---|---|
| 死亡日までの所得(給与・公的年金・事業所得・不動産所得など) | 準確定申告で申告 | 死亡時に残っている預貯金などは相続財産 |
| 死亡後に支給日が来る給与、死亡後に額が決まった賞与 | 相続税の対象となる部分には課税しない取扱いとされています | 本来の相続財産 |
| 死亡退職金(死亡後3年以内に支給額が確定したもの) | ― | みなし相続財産。相続人が受け取った分は500万円×法定相続人の数まで非課税 |
| 未支給年金 | 受け取った遺族の一時所得 | 対象外(遺族固有の権利) |
| 遺族年金(公的年金) | 原則として非課税 | 原則として非課税 |
| 準確定申告の還付金・還付加算金 | 還付加算金は相続人の雑所得 | 還付金は本来の相続財産 |
死亡退職金や生命保険金などのみなし相続財産はみなし相続財産:生命保険金・死亡退職金などで詳しく説明しています。
売買契約の途中で亡くなった場合の譲渡所得
生前に不動産の売買契約を結び、引渡しの前に亡くなった場合は、誰の譲渡所得として申告するかを選べます。譲渡所得の収入の時期は引渡しの日が原則ですが、契約の効力が生じた日(契約日)を選ぶこともできるためです(所得税基本通達36-12)。
契約日を収入の時期とする場合
- 亡くなった人の譲渡所得として、準確定申告(4か月以内)で申告
- 亡くなった人が住んでいた家なら、要件を満たせば3,000万円控除・軽減税率を使えます
- 死亡した年の所得なので、翌年度の住民税はかかりません
- 相続人は取得費加算を使えません
引渡日を収入の時期とする場合
- 相続人が相続した財産を売ったものとして、各相続人が確定申告
- 相続人は取得費加算を使えます
- 居住用の特例は、相続人自身が所有者として住んでいた場合に限られます
- 相続人の譲渡所得として住民税もかかります(長期譲渡所得なら5%)
どちらを選んでも、売主の相続での相続税の課税財産は土地そのものではなく、相続開始時の売買残代金の請求権になります。有利な方は、住民税・取得費加算・居住用の特例の有無で変わるため、両方を試算して決めます(売却の税金シミュレーターと申告の注意)。
反対に、買主が引渡し前に亡くなった場合の相続財産は、土地などの引渡しを求める権利で、価額は原則として売買契約上の取得価額です。残代金の支払債務は債務控除の対象になります。土地などとして、財産評価基本通達による評価額で申告することも認められています。
よくある誤り
- 「期限は相続税と同じ10か月」:準確定申告は4か月です。前年分が未申告なら、前年分も同じ4か月以内に申告します。
- 「死亡後に払った入院費も医療費控除に入れる」:対象は死亡日までに本人が支払った分だけです。
- 「相続人が1人なら付表はいらない」:付表は相続人が1人でも必要です。
- 「亡くなった年は住民税がかからない」:かからないのは、死亡した年の所得に対する翌年度分です。死亡した年度分(前年の所得に対する分)は課され、相続人が納めます。
他の税金との関係
- 限定承認をすると、亡くなった人が相続開始時の時価で財産を譲渡したものとみなされ、含み益に対する所得税を準確定申告で申告します(みなし譲渡:限定承認・法人への贈与・低額譲渡)。
- 1億円以上の有価証券等を持つ人(原則として相続開始前10年以内に国内に5年超住んでいた人)の財産を、非居住者の相続人が取得する場合があります。このときは相続開始時に譲渡したものとみなされ、相続人が準確定申告で申告します(国外転出(相続)時課税。国際相続:海外資産と海外在住の相続人)。
- 売買契約中の死亡では、選ぶ方法によって取得費加算の可否が変わります(相続税の取得費加算の特例)。
相続放棄をした人も準確定申告をしますか。
相続放棄をすると、初めから相続人でなかったものとされます。準確定申告をするのは相続人と包括受遺者なので、放棄した人は申告する人に含まれません(相続放棄・限定承認)。
4か月の期限を過ぎてしまったらどうなりますか。
気づいた時点で、速やかに期限後申告をします。期限後の申告や納付には、無申告加算税や延滞税がかかることがあります(加算税・延滞税)。相続人の責任で生じた加算税や延滞税は、相続税の債務控除の対象になりません。
専門家向け:根拠と実務論点
- 根拠:所得税法16条、85条(扶養親族等の判定の時期)、124条(確定申告期限前に死亡した場合)、125条(年の中途で死亡した場合)、所得税法施行令263条、所得税法施行規則49条、所基通85-1、124・125-4。
- 還付金:質疑応答事例「被相続人の準確定申告に係る還付金等」は、死亡後に発生する還付金も被相続人に潜在的に帰属していた権利が具体化したものとして本来の相続財産とし、還付加算金は相続人の雑所得としています。
- 債務控除:被相続人に課される税金で死亡後に納付・徴収されるもの(準確定申告の所得税、死亡年分の未納の固定資産税・住民税)は控除できます。相続人の責めによる延滞税・加算税は控除できません(TA No.4126、誤りやすい事例集 事例12)。
- 売買契約中の相続:売主側の相続財産は残代金請求権(評基通204)、買主側は土地等の引渡請求権等(原則は売買契約上の取得価額。財産評価基本通達による土地等の評価額で申告することも認められる)。質疑応答事例は関係判例として最高裁昭和61年12月5日判決・平成2年7月13日判決を掲げています。引渡日基準で取得費加算を適用する場合は、残代金請求権と受領済み手付金相当額を譲渡資産の価額とし、前受金債務相当額を債務控除額に加算して計算します(質疑応答事例)。
- 住民税の賦課期日は1月1日(地方税法294条1項・318条)。
- 2027年分以後の所得税には防衛特別所得税(基準所得税額の1%)が加わり、復興特別所得税は1.1%に下がります(上乗せの合計2.1%は不変)成立・施行待ち。2027年中の死亡に係る準確定申告から関係します。
- 申告不要の判定:準確定申告の義務は、所得税法120条1項の確定申告書を提出しなければならない場合に生じます(125条1項)。給与所得者・公的年金等の受給者の申告不要は121条1項・3項で、給与は支払者の事業に資産を提供して対価を受ける場合などを除きます(同条1項ただし書)。源泉徴収の対象とならない公的年金等がある人は、年金の申告不要制度を使えません。還付を受けるための申告は125条2項です。死亡によって退職した人は、扶養控除等申告書を出していれば、勤務先が年の中途で行う年末調整の対象です(タックスアンサー2665)。
- 個人事業者の消費税:個人事業者が課税期間の中途で死亡し、その課税期間分の確定申告が必要な場合は、相続人が相続の開始を知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までに申告書を提出します(消費税法45条3項)。前の課税期間分を申告しないまま申告期限前に死亡した場合も同じ期限です(同条2項)。課税事業者が死亡したときは、相続人が「個人事業者の死亡届出書」を速やかに提出します(同法57条1項4号)。
納付・延納・物納
相続税は、申告期限までに金銭で一括して納めるのが原則です。一時に納めることが難しい場合に限って、分割払いの延納や、相続財産そのもので納める物納が認められます。
この章の結論
- 納期限は申告期限と同じ(相続の開始を知った日の翌日から10か月)です。税務署から納付書は送られてこないので、自分で納付します。ほかの相続人が納めない税額にも、受けた利益の範囲で連帯納付義務があります。
- 延納は、税額10万円超、金銭で一時に納めることが困難、担保の提供(延納税額100万円以下かつ期間3年以下なら不要)などが要件です。期間は不動産等の割合に応じて最長20年、2026年(令和8年)の利子税の特例割合は年0.2%〜1.0%です。
- 物納は、延納によっても金銭で納められない場合に限られます。順位があり、担保権付き・共有・境界不明の不動産などは物納できません。小規模宅地等の特例を受けた土地は、減額後の価額で収納されます。
納期限と納付の方法
期限内に申告する場合の納期限は申告期限と同じで、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月目の日です。期限後申告や修正申告で納める税額は、その申告書を提出した日が納期限です。税務署の更正・決定による税額は、通知書が発せられた日の翌日から起算して1か月を経過する日が納期限です。
申告書を出しても、税務署から納付書は送られてきません。各相続人が、自分の納付税額を次のいずれかの方法で納めます。納期限を過ぎると、原則として延滞税がかかります(加算税・延滞税)。
| 方法 | 主な条件・注意点 |
|---|---|
| ダイレクト納付 | 事前に利用届出書の提出が必要 |
| インターネットバンキング等 | 金融機関のサービスからの電子納付 |
| クレジットカード | 1,000万円未満かつカードの決済可能額以下(決済手数料あり) |
| スマホアプリ納付 | 30万円以下 |
| 金融機関・税務署の窓口 | 納付書を使った現金納付(窓口ではクレジットカード払い不可) |
連帯納付義務:ほかの相続人の未納にも責任を負う
同じ人から相続や遺贈で財産を取得した人は、互いに連帯して相続税を納める義務を負います(相続税法34条1項)。限度は、相続などで受けた利益の価額です。受けた利益の価額は、取得した財産の価額から、債務控除の額と、その財産にかかる相続税額・登録免許税額を差し引いて計算します。
ただし、次の相続税は連帯納付義務の対象外です。
- 本来納めるべき人の申告期限などから5年以内に、連帯納付義務者へ納付通知書が出されていないもの
- 本来納めるべき人が延納の許可を受けたもの
- 本来納めるべき人が農地等の納税猶予の適用を受けたもの
税務署は、督促状を出してから1か月たっても完納されないときに連帯納付義務者へ通知し、納付を求めるときは納付通知書を送ります。納付通知書から2か月たっても完納されなければ督促状が送られます。連帯納付義務者が納める場合、延滞税は軽減され、一定の場合は延滞税に代えて利子税になります。本来の納税義務者の延滞税は軽減されません。
| 相続人 | 自分の相続税 | 受けた利益の価額 | 子2の未納50万円について |
|---|---|---|---|
| 配偶者 | 0円 | 5,000万円 | 5,000万円の範囲で連帯納付義務 |
| 子1 | 50万円(納付済み) | 2,500万円 | 2,500万円の範囲で連帯納付義務 |
| 子2 | 50万円(未納) | ― | 本来の納税義務者 |
延納:分割払いの要件と手続
延納は、相続税を分割して納める制度です。次の要件をすべて満たして申請し、税務署長の許可を受けます。
延納の要件
- 相続税額が10万円超
- 金銭で納付することが困難な事由があり、延納するのはその困難な金額の範囲内
- 延納税額と利子税の額に相当する担保の提供(延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下なら不要)
- 延納申請期限までに、延納申請書に担保提供関係書類を添えて税務署長に提出
延納申請期限は、期限内申告なら申告期限、期限後申告・修正申告なら申告書の提出日、更正・決定なら通知が発せられた日の翌日から1か月を経過する日です。期限内に申告する人が延納を考えるなら、申告期限までに申請書を出します。
担保にできるのは、国債・地方債、税務署長が確実と認める社債などの有価証券、土地、保険を付けた建物、税務署長が確実と認める保証人の保証などです。相続した財産に限らず、相続人自身の財産や第三者の財産でもかまいません。加算税・延滞税・連帯納付責任額は延納できません。
延納期間と利子税(2026年の割合)
延納できる期間の上限は、相続財産のうち不動産等が占める割合で決まります。「不動産等」には、不動産や不動産の上の権利、立木、事業用の減価償却資産のほか、特定同族会社(相続人等とその特別関係者で50%超を持つ非上場会社)の株式・出資も含まれます。
延納中は利子税がかかります。本則の割合は年7.3%を基準に定められていて、延納特例基準割合が7.3%未満の年は「本則の割合×延納特例基準割合÷7.3%」(0.1%未満切捨て)の特例割合になります。2026年1月1日現在の延納特例基準割合は1.3%(平均貸付割合0.8%+0.5%)です。
| 不動産等の割合 | 延納税額の区分 | 最長期間 | 本則 | 特例割合 |
|---|---|---|---|---|
| 75%以上 | 動産等に係る分 | 10年 | 5.4% | 0.9% |
| 75%以上 | 不動産等に係る分(森林計画立木の分を除く) | 20年 | 3.6% | 0.6% |
| 75%以上 | 森林計画立木の割合が20%以上の場合の森林計画立木に係る分 | 20年 | 1.2% | 0.2% |
| 50%以上75%未満 | 動産等に係る分 | 10年 | 5.4% | 0.9% |
| 50%以上75%未満 | 不動産等に係る分(森林計画立木の分を除く) | 15年 | 3.6% | 0.6% |
| 50%以上75%未満 | 森林計画立木の割合が20%以上の場合の森林計画立木に係る分 | 20年 | 1.2% | 0.2% |
| 50%未満 | 一般の延納税額(下の3区分を除く) | 5年 | 6.0% | 1.0% |
| 50%未満 | 立木の割合が30%を超える場合の立木に係る分 | 5年 | 4.8% | 0.8% |
| 50%未満 | 特別緑地保全地区等内の土地に係る分 | 5年 | 4.2% | 0.7% |
| 50%未満 | 森林計画立木の割合が20%以上の場合の森林計画立木に係る分 | 5年 | 1.2% | 0.2% |
検算:5.4%×1.3%÷7.3%=0.96…→0.9%、3.6%×1.3%÷7.3%=0.64…→0.6%、6.0%×1.3%÷7.3%=1.06…→1.0%です。
延納税額が150万円未満(不動産等の割合が75%以上の場合の不動産等に係る分は200万円未満)のときは、「延納税額÷10万円」(1未満の端数は切上げ)の年数が期間の上限です。たとえば不動産等の割合が75%以上で、不動産等に係る延納税額が150万円なら、150万円÷10万円=15年が上限になります。
延納特例基準割合は毎年変わり、特例割合は各分納期間の開始日が属する年の割合で決まります。国税庁も、延納を申請する際は所轄の税務署で割合を確認するよう案内しています。
計算例:延納の利子税の目安
前提:相続税のうち2,000万円を延納し、全額が「不動産等の割合75%以上の場合の不動産等に係る分」(最長20年、2026年の特例割合0.6%)とします。20年間、毎年1回、元金を100万円ずつ納め、割合が0.6%のまま変わらないと仮定した概算です。
1回目の利子税:2,000万円×0.6%=12万円(1回目の納付は100万円+12万円=112万円)
利子税の合計:(2,000万円+1,900万円+……+100万円)×0.6%=2億1,000万円×0.6%=126万円
参考(本則3.6%の場合):2億1,000万円×3.6%=756万円
答え:利子税の合計は約126万円です。実際の利子税は分納期間ごとの日数と各年の割合で計算するため、割合が変われば金額も変わります。
物納:相続財産で納める最後の手段
物納は、延納によっても金銭で納めることが困難な場合に、その困難な金額を限度として、相続財産そのもので納める制度です。対象は相続税だけで、加算税・利子税・延滞税・連帯納付責任額は物納できません。納期限までに物納申請書と物納手続関係書類を提出し、申請する財産が物納に適していることが必要です。
| 順位 | 財産 |
|---|---|
| 第1順位 | ①不動産、船舶、国債、地方債、上場株式等、②不動産と上場株式のうち物納劣後財産に当たるもの |
| 第2順位 | ③非上場株式等、④非上場株式のうち物納劣後財産に当たるもの |
| 第3順位 | ⑤動産 |
物納に充てられるのは国内にある財産で、相続時精算課税で取得した財産は除かれます。相続開始前から持っていた特定登録美術品は、順位に関係なく物納に充てられます。
次のような財産は「管理処分不適格財産」として物納できません。不動産では、担保権が設定されているもの、権利の帰属に争いがあるもの、境界が明らかでない土地、公道に通じない土地、共有のもの、耐用年数を過ぎた建物などです。株式では、譲渡制限株式、質権の目的となっているもの、共有のもの(共有者全員が申請する場合を除く)などです。
ほかに適当な財産がない場合に限って物納できる「物納劣後財産」もあります。たとえば、地上権などが設定された土地、法令違反の建物とその敷地、接道が2m未満の土地、市街化区域以外の土地などです。納税者が居住や事業に使っている建物とその敷地(本人が申請する場合を除く)や、配偶者居住権の目的となっている建物とその敷地も含まれます。
物納した財産の収納価額は、原則として課税価格の計算の基礎となった価額です。小規模宅地等の特例を適用した土地は、特例適用後の減額された価額で収納されます。更地を物納する場合の書類には、所在図、公図の写し、登記事項証明書、地積測量図、境界確認書などがあります。
物納の申請から許可による納付とみなされる日までの一定期間には、利子税がかかることがあります。割合は年7.3%と利子税特例基準割合のいずれか低い割合で、この算式に当てはめると2026年は年1.3%になります。
よくある誤り
- 「延納の利子税は3.6%や6.0%」:これは本則の割合です。2026年に実際に適用される特例割合は0.6%や1.0%などで、毎年変わります。
- 「小規模宅地等の特例を使った土地も評価額で物納できる」:収納価額は減額後の価額です。評価額5,000万円の土地を80%減額して1,000万円で申告していれば、物納しても1,000万円分の納付にしかなりません。
- 「未分割の土地でも物納できる」:共有の不動産は管理処分不適格財産に当たり、原則として物納できません。
- 「申告した後で延納を申し込めばよい」:期限内申告で納める税額の延納申請期限は、申告期限です。
他の税金との関係
- 相続した土地を売って納税資金にする場合、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(相続開始から3年10か月が目安)の売却なら、取得費加算で譲渡所得の税金を軽くできます。物納と売却は、収納価額と売却後の手取りを比べて判断します(土地を売って相続税を払う・分ける、相続税の取得費加算の特例)。
- 相続した自社株を発行会社に買い取ってもらい、納税資金にする方法もあります。相続税額がある人が申告期限の翌日以後3年以内に売れば、みなし配当として課税せず譲渡所得とする特例があります(相続した自社株を会社に売る:金庫株とみなし配当の特例)。
- 生前からの納税資金の準備は納税資金の準備:延納・物納・売却・金庫株で説明しています。
相続人が自分の家を担保にして延納できますか。
できます。担保は相続した財産に限らず、相続人自身の財産や第三者の財産でもかまいません。土地や、保険を付けた建物などが担保になります。
クレジットカードで相続税を払えますか。
納付税額が1,000万円未満で、カードの決済可能額以下なら払えます。決済手数料がかかり、金融機関や税務署の窓口ではカードで払えません。
専門家向け:根拠と実務論点
- 納付:相続税法33条、国税通則法34条・35条。連帯納付義務:相続税法34条1項(2項は被相続人が納めるべき相続税、3項は相続財産を贈与・遺贈・寄附行為で移転した場合)、受けた利益の価額は相基通34-1、取扱いは相基通34-1〜34-5。連帯納付義務者の延滞税の軽減・利子税は51条の2。
- 延納:相続税法38条・39条、相続税法施行令12〜15条、措法70条の8の2〜70条の11。利子税:相続税法52条・53条、措法93条。延納特例基準割合は各分納期間の開始日が属する年の利子税特例基準割合(平均貸付割合+年0.5%)。延納の許可を受けた税額には延滞税ではなく利子税がかかります。
- 物納:相続税法41条ほか。物納に充てられる財産は課税価格計算の基礎となった財産のうち国内にあるもので、相続時精算課税の適用財産を除きます。収納価額は課税価格計算の基礎となった価額(小規模宅地等の特例の適用後)。物納の利子税の年1.3%は、年7.3%と利子税特例基準割合(2026年は1.3%)のいずれか低い割合として算出した値です。
- 贈与税には物納がなく、延納は5年以内です(贈与税の申告・納付・延納・期間制限)。
- 延納の許可限度額:納付すべき相続税額から、納期限に金銭で納付できる額を差し引いた額です。納付できる額は、納期限に有する現金・預貯金など換価の容易な財産の額から、申請者と生計を一にする親族の3か月分の生活費と、事業を続けるための3か月分の運転資金を差し引いて求め、「金銭納付を困難とする理由書」に記載します。2025年(令和7年)4月1日以後の相続開始分からは、事業経費を前年の事業経費の12分の3で計算して差し支えないとされ(従来は12分の1)、物納の許可限度額の計算も見直されました(国税庁「延納の手引」・計算方法変更のチラシ)。
- 書類の提出期限と審査期間:担保提供関係書類は、延長届出書により1回3か月以内、延納申請期限の翌日から最長6か月まで提出期限を延ばせます(物納手続関係書類は最長1年)。許可・却下は申請期限の翌日から3か月以内(延納は最長6か月、物納は最長9か月)で、書類の延長や訂正の期間は加算されます。期間内に許可・却下がなければ、許可されたものとみなされます(国税庁「延納の手引」「物納の手引」)。
- 特定物納:延納の許可を受けた後に、延納条件を変更しても金銭で納付することが困難な事由が生じた場合は、相続税の申告期限の翌日から10年を経過する日までの申請で、納期限が来ていない分納税額を物納に変更できます。収納価額は、原則として特定物納の申請の時の価額です(相続税法48条の2)。
加算税・延滞税
申告や納付が遅れたり、申告した税額が少なすぎたりすると、本来の税金に加えて加算税と延滞税がかかります。調査の通知を受ける前に自主的に正すほど、負担は軽くなります。
この章の結論
- 延滞税は、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じてかかります。2026年(令和8年)の割合は、納期限の翌日から2か月以内(納期限までの期間を含む)が年2.8%、それ以後が年9.1%です。
- 加算税には、過少申告加算税(10%・15%)、無申告加算税(15%・20%・30%)、重加算税(35%・40%)があります。調査の通知を受ける前に自主的に正せば、過少申告は0%、無申告は5%で済みます。
- 期限から1か月以内の自主的な期限後申告で、税額の全額を期限内に納めているなどの要件を満たせば、無申告加算税はかかりません。遺産分割がまとまらないことは、遅れの正当な理由になりません。
延滞税:納付が遅れた日数に応じてかかる
延滞税は、納付の遅れに対してかかる、利息に当たる税金です。法定納期限(相続税では申告期限)の翌日から、完納する日までの日数に応じてかかります。期限内に申告しても、納付が遅れれば延滞税の対象です。
割合は、本来の年7.3%・年14.6%と、毎年決まる「延滞税特例基準割合」をもとにした割合のうち、低い方を使います。延滞税特例基準割合は、平均貸付割合(銀行の新規短期貸出約定平均金利をもとに、財務大臣が前年11月30日までに告示する割合)に年1%を加えた割合です。2026年は平均貸付割合が0.8%なので特例基準割合は1.8%となり、1.8%+1%=2.8%、1.8%+7.3%=9.1%です。2022年(令和4年)から2025年(令和7年)までは年2.4%・年8.7%でした。
| 期間 | 割合の決まり方 | 2026年 | 2022年〜2025年 |
|---|---|---|---|
| 納期限まで、および納期限の翌日から2か月を経過する日まで | 年7.3%と「延滞税特例基準割合+1%」の低い方 | 年2.8% | 年2.4% |
| それ以後 | 年14.6%と「延滞税特例基準割合+7.3%」の低い方 | 年9.1% | 年8.7% |
それより前の割合は、2021年(令和3年)が年2.5%・年8.8%、2018年(平成30年)から2020年(令和2年)が年2.6%・年8.9%です。期間が年をまたぐ場合は、各年の日数にその年の割合を当てはめます。2027年(令和9年)の割合は2026年11月30日までに告示される平均貸付割合で決まり、2026年10月時点ではまだ決まっていません。
計算期間の特例
期限内に申告した後、法定納期限から1年以上たってから修正申告や更正があった場合の特例です。法定納期限から1年を経過する日の翌日から、修正申告書の提出日(更正なら更正通知書の発送日)までの期間は、延滞税の計算に入れません。期限後申告の後に修正申告・更正があった場合も、申告書の提出後1年を経過する日の翌日から同じように除きます。ただし、重加算税が課される場合はこの特例を使えません。
延滞税の額は、おおむね「本税×割合×日数÷365」で計算し、本税の1万円未満を切り捨てるなどの端数処理があるとされています。延納の許可を受けた税額には、延滞税ではなく利子税がかかります(納付・延納・物納)。
過少申告加算税:申告した税額が少なかったとき
期限内に申告した税額が少なく、修正申告や更正で税額が増えたときにかかります。割合は、修正申告をした時期で変わります。修正申告や更正の手続そのものは修正申告・更正の請求で説明しています。
| 修正申告・更正の時期 | 割合 |
|---|---|
| 調査通知の前(更正を予知する前)の自主的な修正申告 | 0%(かかりません) |
| 調査通知の後、更正を予知する前の修正申告 | 5%。期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10% |
| 調査があり更正を予知した後の修正申告・更正 | 10%。期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15% |
「調査通知」とは、①実地の調査を行うこと、②調査の対象となる税目、③調査の対象となる期間の3つを、納税者(同意があれば税理士などの税務代理人)に知らせることです。更正を予知していた場合は、調査通知の有無にかかわらず予知後の割合になります。臨場調査や反面調査、誤りの指摘などで調査を知った後の修正申告は、原則として「更正を予知したもの」になります。臨場の日時の連絡を受けた段階で出した修正申告は、原則として予知したものに当たりません。
正当な理由がある場合は課されません。相続税・贈与税の事務運営指針は、次のような場合を例に挙げています。
- 申告後に法令解釈が明確になり、納税者の解釈にも相当の理由がある場合(税法の不知や誤解は除く)
- 予期しなかった損害賠償金の支払や、盗難品の返還を受けた場合
- 申告期限後に相続税法51条2項各号の事由(未分割財産の分割などとされています)が生じた場合(遺産が未分割のときの申告)
- 保険業法上の「買取額」の支払を受けた場合
2024年(令和6年)1月1日以後に法定申告期限が来る国税から、帳簿の提出がない場合などに加算税を重くする措置が設けられました。ただし対象は所得税・法人税・消費税の帳簿で、相続税には関係しません。
無申告加算税:期限までに申告しなかったとき
申告期限までに申告せず、期限後申告や税務署の決定で税額が確定したときにかかります。税額が大きいほど、また調査の段階が進むほど割合が高くなります。
| 期限後申告・決定の時期 | 50万円以下の部分 | 50万円超300万円以下の部分 | 300万円超の部分 |
|---|---|---|---|
| 調査通知の前(更正予知の前)の自主的な期限後申告 | 5% | 5% | 5% |
| 調査通知の後、更正予知の前 | 10% | 15% | 25% |
| 調査で更正を予知した後・決定 | 15% | 20% | 30% |
300万円超の部分の25%・30%は、2024年1月1日以後に法定申告期限が来る国税に適用されています施行中。相続税では、申告期限が2024年1月1日以後の相続(おおむね2023年(令和5年)3月以後に相続の開始を知ったもの)が対象とされています。300万円を超えるかの判定では、納税者の責めに帰すべき事由がない事実に基づく税額を除きます。たとえば、ほかの相続人が管理していた財産が後から見つかった場合です。
期限後申告でも無申告加算税がかからない場合
次のすべてに当たる場合は、期限後申告でも無申告加算税はかかりません。
無申告加算税がかからない要件
- 法定申告期限から1か月以内に、自主的に期限後申告をしたこと
- 期限後申告で納める税額の全額を、法定納期限(相続税では申告期限)までに納付していること
- 期限後申告書の提出日前5年以内に、無申告加算税・重加算税を課されておらず、この措置も受けていないこと
このほか、正当な理由がある場合も課されません。ただし相続税では、相続人間の争い、遺産分割協議がまとまらないこと、相続財産の全容を把握できなかったことは、正当な理由に当たらないとされています(事務運営指針)。分割がまとまらなくても、法定相続分などで期限内に申告します(遺産が未分割のときの申告)。正当な理由があって期限後申告が認められた場合、その後の修正申告や更正で増えた税額には、無申告加算税ではなく過少申告加算税がかかります。
重加算税と加算税の加重
財産を隠したり事実を偽ったりした(隠蔽・仮装)事実に基づく税額には、過少申告加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%の重加算税がかかります。事務運営指針は、相続税で隠蔽・仮装とされる例として次のものを挙げています。
- 相続人等による帳簿書類の改ざん・偽造・変造・破棄・隠匿
- 課税財産を隠すこと、架空の債務を作ること、事実をねつ造して課税価格を減らすこと
- 取引先などと通謀して、相手方の帳簿書類を改ざんさせること
- うその答弁をすることや、課税財産を知りながら申告しなかったことが合理的に推認できる場合
- 被相続人以外の名義・架空名義・無記名・遠隔地の財産だと認識したうえで、申告しないこと、または債務として申告すること
隠蔽・仮装された財産は配偶者の税額軽減の計算の基礎から除かれ、延滞税の計算期間の特例も使えません。家族名義の預金(名義預金)の判断基準は名義預金・名義株と贈与の証拠の残し方で説明しています。
期限後申告などの日の前5年以内に、同じ税目で無申告加算税(更正予知後のもの)や重加算税を課されていた場合は、10%が加算されます。無申告加算税は15%→25%、20%→30%(300万円超の部分は30%→40%と計算されます)、重加算税は35%→45%、40%→50%です。過少申告加算税には、この加重はありません。
2024年1月1日以後に法定申告期限が来る国税からは、前年と前々年の国税に無申告加算税などが課された場合に10%を加える連年の加重もあります施行中。相続税には課税期間がないため、相続税の納税義務が成立した年の前年と前々年の両方に、別の相続税の納税義務が成立している場合に限って判定します。過去5年の加重と連年の加重は重ねて適用しません。
計算例:調査で500万円の申告漏れが見つかった場合
計算例:過少申告加算税と延滞税の概算
前提:母が2024年8月30日に亡くなり、相続人は子1人です。申告期限の2025年6月30日(月)に、課税価格1億円で申告・納付しました(基礎控除は3,000万円+600万円×1人=3,600万円)。2026年9月30日、調査で子名義の預金500万円の申告漏れを指摘され、同じ日に修正申告をして納付したとします。隠蔽・仮装はないものとします。
当初の税額:(1億円−3,600万円)×30%−700万円=1,220万円
修正後の税額:(1億500万円−3,600万円)×30%−700万円=1,370万円
増えた本税:1,370万円−1,220万円=150万円
過少申告加算税(更正予知後):150万円×10%=15万円
15%がかかるのは期限内申告税額1,220万円と50万円の多い方を超える部分なので、この例ではありません。
延滞税は、計算期間の特例により法定納期限の翌日から1年分だけを計算します。修正申告で納める税額の納期限は修正申告書の提出日で、納期限までの期間には低い方の割合を使います。この1年はすべて納期限より前の期間なので、2025年は2.4%、2026年は2.8%で計算します。
2025年7月1日〜12月31日(184日):150万円×2.4%×184÷365=18,147円
2026年1月1日〜6月30日(181日):150万円×2.8%×181÷365=20,827円
合計:38,974円(100円未満を切り捨てると38,900円)
| 修正の時期など | 加算税 | 延滞税 | 本税との合計 |
|---|---|---|---|
| 調査通知の前に自主的に修正 | 0円 | 38,900円 | 1,538,900円 |
| 調査通知の後、更正予知の前 | 75,000円(5%) | 38,900円 | 1,613,900円 |
| 調査で指摘を受けた後(この例) | 150,000円(10%) | 38,900円 | 1,688,900円 |
| 隠蔽・仮装があった場合 | 525,000円(重加算税35%) | 49,500円 | 2,074,500円 |
隠蔽・仮装があった場合は計算期間の特例を使えません。延滞税は2025年7月1日から2026年9月30日まで(184日+273日)で計算します。
150万円×2.4%×184÷365+150万円×2.8%×273÷365=18,147円+31,413円=49,560円(100円未満を切り捨てると49,500円)
参考:期限までにまったく申告しなかった場合
同じ相続で申告せず、本税1,370万円を期限後に申告・納付する場合の無申告加算税は、時期によって次のように変わります(延滞税は別にかかります)。
| 期限後申告・決定の時期 | 無申告加算税 | 計算 |
|---|---|---|
| 1か月以内の自主的な期限後申告で、全額を期限内に納付しているなどの要件を満たす場合 | 0円 | ― |
| 調査通知の前の自主的な期限後申告 | 685,000円 | 1,370万円×5% |
| 調査通知の後、更正予知の前 | 3,100,000円 | 50万円×10%+250万円×15%+1,070万円×25% |
| 調査で更正を予知した後・決定 | 3,785,000円 | 50万円×15%+250万円×20%+1,070万円×30% |
| 隠蔽・仮装があった場合 | 5,480,000円 | 1,370万円×40%(重加算税) |
答え:申告漏れ500万円で本税が150万円増え、調査後の修正申告では過少申告加算税15万円と延滞税約3万9,000円が加わります。調査通知の前に自主的に修正すれば加算税は0円です。まったく申告しないまま調査を受けると、無申告加算税だけで378万5,000円になります。
よくある誤り
- 「延滞税は年14.6%」:14.6%・7.3%は上限となる本来の割合です。2026年に実際に適用される割合は9.1%・2.8%です。
- 「修正申告をすれば必ず10%の加算税がかかる」:調査通知の前の自主的な修正申告なら0%、調査通知の後でも更正予知の前なら5%(一部10%)です。
- 「遺産分割でもめていたので、期限後申告でも加算税はかからない」:相続人間の争いや分割協議の未了は、正当な理由に当たりません。
- 「2024年からの帳簿の加重が相続税にもかかる」:対象は所得税・法人税・消費税の帳簿で、相続税には関係しません。
実務のコツ:気づいたら調査通知の前に
申告漏れや誤りに気づいたら、調査通知を受ける前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。税理士が書面添付制度を使って申告していた場合、税務署が実地調査をするときは、調査通知の前に税理士への意見聴取が行われます。その質疑だけを理由に出した修正申告も、更正を予知したものに当たらないとされています(書面添付制度と専門家への依頼)。
他の税金との関係
- 贈与税の加算税・延滞税も、相続税と同じ国税通則法の仕組みで計算します(贈与税の申告・納付・延納・期間制限)。
- 相続人の責任で生じた延滞税や加算税(準確定申告の遅れによるものなど)は、相続税の債務控除の対象になりません(債務控除と葬式費用)。
専門家向け:根拠と実務論点
- 延滞税:国税通則法60条・61条、措法94条。低い方の割合(2026年は年2.8%)は、納期限までの期間と、納期限の翌日から2か月を経過する日までの期間に適用されます(国税庁 No.9205)。2026年の平均貸付割合0.8%・延滞税特例基準割合1.8%。相続税法51条2項は、分割などによる期限後申告・修正申告の税額について延滞税の計算期間を限る特例とされています。
- 端数処理:延滞税の計算の基礎となる本税は1万円未満切捨て(全額1万円未満なら不要)、延滞税額は100円未満切捨て(全額1,000円未満なら不要)とされています(国税通則法118条3項・119条4項)。加算税の計算の基礎となる税額は1万円未満切捨て(事務運営指針)、加算税の確定金額は100円未満切捨てで、全額5,000円未満なら課されないとされています。
- 加算税:国税通則法65条(過少申告)、66条(無申告)、68条(重加算税)。事務運営指針「相続税、贈与税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて」「相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて」(いずれも最終改正2023年6月23日)。調査通知前・更正予知前の修正申告を対象外とする取扱いと過去5年の加重は、2017年(平成29年)1月1日以後に法定申告期限が来る国税から。300万円超部分の割合(令5改正国税通則法附則23条)と連年の加重は、令和5年度改正によるものです。
- 重加算税の計算:更正等の後の税額から、隠蔽・仮装に基づかない事実だけで計算した税額を差し引いて基礎を求めます。相続税では、課税価格の合計額と各人の課税価格から重加対象価額を除いて計算します。
- 国外財産調書:申告漏れ等の国外財産が調書に記載されていれば相続税の過少申告・無申告加算税を5%軽減、未提出・記載漏れなら5%加重(国外送金等調書法6条)。財産債務調書による加重は所得税だけが対象です(財務省「加算税の概要」)。相続税で誰の調書により判定するかなどの細部は、別途確認が必要です。
修正申告・更正の請求
相続税の申告は、提出した後でも直せます。税額が増えるのか減るのかで手続が分かれ、遺産分割や遺留分など相続に特有の事情には別の期限があります。
この章の結論
- 税額が少なすぎたときは修正申告、多すぎたときは更正の請求をします。更正の請求は、原則として法定申告期限から5年以内です。
- 遺産分割の成立、遺留分侵害額の支払額の確定など、相続に特有の事情で税額が減るときは、その事情を知った日の翌日から4か月以内に更正の請求ができます(相続税法32条)。
- 税務署が税額を正す「更正」ができるのは、相続税では法定申告期限から5年(偽りその他不正の行為があれば7年)です。調査の通知を受ける前に自分から修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。
修正申告と更正の請求の違い
申告した後に誤りに気づいたときの直し方は、税額が増えるか、減るかで決まります。財産の申告漏れなどで税額が増えるなら修正申告、債務の計上漏れなどで税額が減るなら更正の請求です。
修正申告は、納税者が自分で税額を正す手続です。税務署長が調査などにもとづいて税額を正す処分は「更正」といい、区別されます。更正の請求は、税務署長に税額を減らす更正を求める手続で、認められると納めすぎた税金が還付されます。
| 項目 | 修正申告 | 更正の請求 |
|---|---|---|
| 使う場面 | 税額が少なすぎた(財産の申告漏れ、評価が低すぎた、生前贈与の加算もれなど) | 税額が多すぎた(債務・葬式費用の計上漏れ、評価が高すぎた、控除のもれなど) |
| 手続をする人 | 税額が増える本人 | 税額が減る本人 |
| 期限 | 気づいたら提出。申告期限内に出し直せば期限内申告として扱われる | 原則は法定申告期限から5年以内。相続に特有の事由は知った日の翌日から4か月以内 |
| お金の動き | 増えた税額の納期限は修正申告書の提出日。延滞税もかかる | 認められると減額の更正があり、還付される |
修正申告で増えた税額の過少申告加算税は、調査の通知を受ける前に自主的に出せばかかりません。延滞税は別にかかります。割合と計算期間の特例は加算税・延滞税で説明しています。
更正の請求の期限は原則5年
一般の更正の請求は、法定申告期限から5年以内にできます(国税通則法23条1項)。相続税の法定申告期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月目の日で、通常は亡くなった日の10か月後の同じ日付です。
請求は、税額が減る人がそれぞれ自分の分について行います。ある相続人の財産の評価が下がると相続税の総額が下がるため、ほかの相続人の税額も減ることがあります。国税庁の税務調査手続に関するFAQは、調査で勧められて修正申告を出すと不服申立てはできなくなるものの、更正の請求はできるとしています。
- 2025年(令和7年)1月6日(月)被相続人が死亡(相続人はこの日に死亡を知ったものとします)
- 2025年11月6日(木)相続税の申告期限(法定申告期限)。申告と納付の期限です
- 申告後に誤りに気づいたとき税額が増える誤りは修正申告、減る誤りは更正の請求で直します
- 2030年(令和12年)11月6日(水)一般の更正の請求の期限(法定申告期限から5年)。税務署が更正できる期間も、通常はこの日までです
相続に特有の事由は「知った日の翌日から4か月」
相続税は、申告後に遺産分割がまとまる、相続人が変わる、遺留分の支払額が決まるなど、後から課税価格が動く場面が多い税金です。そこで相続税法32条は、次の事由で税額が減る人が事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内に更正の請求をできる特則を設けています。
| 号 | 事由 | よくある場面 |
|---|---|---|
| 1号 | 未分割の財産を法定相続分などで申告した後に分割され、課税価格が変わった | 期限後に遺産分割が成立 |
| 2号 | 認知、相続人の廃除やその取消しの裁判の確定、相続の回復、相続放棄の取消しなどで相続人が変わった | 申告後に認知の裁判が確定 |
| 3号 | 遺留分侵害額の請求に基づき支払う金銭の額が確定した | 遺言で多く取得した人が遺留分を支払う |
| 4号 | 遺贈についての遺言書が見つかった、または遺贈の放棄があった | 申告後に遺言書が見つかった |
| 7号 | 相続税法4条1項・2項の事由が生じた | 特別寄与料の額が確定(4条2項) |
| 8号 | 配偶者の税額軽減の分割要件のただし書に当たり、税額が変わった(1号の場合を除く) | 申告期限から3年以内などに分割され、配偶者の税額軽減が使えるようになった |
分割後に配偶者の税額軽減を受ける場合の更正の請求は、「分割の日から4か月」と「申告期限から5年」のいずれか遅い日までできるとされています(相続税法基本通達32-2)。小規模宅地等の特例は、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をします。期限を過ぎた請求を不適法とした裁決もあるため、分割が成立したら4か月以内に手続するのが安全です。分割見込書など未分割の申告の手続は遺産が未分割のときの申告で説明しています。
同じ事由で税額が増える人は修正申告をします(相続税法31条)。期限内の申告義務がなかった人に納める税額が生じたときは期限後申告ができ(同法30条)、これらが出されないときは税務署長が更正や決定をできます(同法35条3項)。
例:遺留分侵害額の支払額が確定した場合
- 遺言どおりに申告遺言で長男が財産の大半を取得し、長男と二男が期限内に申告・納付しました。
- 支払額が確定二男が遺留分侵害額を請求し、2027年(令和9年)8月20日(金)に調停で支払額が確定しました。
- 長男は更正の請求支払う額に応じて課税価格が減るため、確定を知った日の翌日から4か月以内(この例では2027年12月20日まで)に更正の請求ができます(32条1項3号)。
- 二男は修正申告受け取る額に応じて課税価格が増えるため、修正申告をします(当初は申告義務がなかった人なら期限後申告)。
税務署が更正できる期間(除斥期間)
税務署長が更正や決定をできる期間には上限があり、これを除斥期間といいます。相続税は法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為がある場合は7年です。贈与税は6年(不正があれば7年)で、相続税より長くなっています。
| 税目 | 通常 | 偽りその他不正の行為がある場合 |
|---|---|---|
| 相続税 | 法定申告期限から5年 | 法定申告期限から7年 |
| 贈与税 | 法定申告期限から6年 | 法定申告期限から7年 |
満了する日の前6か月以内に更正の請求があったときは、その請求に基づく更正は、請求の日から6か月を経過する日まで行えます(国税通則法70条3項)。
「適用もれ」を見直す:更正の請求で税額が戻る典型例
申告後の見直しで、控除や評価の減額の使い忘れが見つかることがあります。税額が多すぎたときは、法定申告期限から5年以内なら更正の請求で取り戻せます。見直したい主な項目は次のとおりです。
| 項目 | 確認するポイント | 詳しい章 |
|---|---|---|
| 債務・葬式費用 | 死亡した年分の未納の固定資産税・住民税(納税通知書が届く前でも控除できる)、準確定申告で納める所得税、通夜や読経料など | 債務控除と葬式費用 |
| 保険金・退職金の非課税 | それぞれ500万円×法定相続人の数で、相続人の受取分に使えます。保険金と一緒に払い戻された前納保険料も保険金に含めます | みなし相続財産 |
| 土地などの評価 | 地積規模の大きな宅地(札幌市は1,000㎡以上)、不整形地、セットバック、貸家建付地の賃貸割合など減額要素のもれ | 土地評価の全体像 |
| 税額控除 | 未成年者控除・障害者控除・相次相続控除・暦年課税分の贈与税額控除のもれ | 未成年者控除・障害者控除、相次相続控除など |
| 配偶者の税額軽減 | 軽減の明細を記載した更正の請求書で適用を受けることもできます | 配偶者の税額軽減 |
| 小規模宅地等の特例 | 申告期限までの分割と取得者全員の同意が前提です。未分割だった宅地は、分割見込書を出しておけば、分割後4か月以内の更正の請求で適用できます。正しく選んだ宅地の選択替えは原則としてできません | 申告手続・分割要件 |
小規模宅地等の特例は、期限後申告書や修正申告書に記載して適用を受けることもできます。ただ、条文が挙げるのは申告書で、更正の請求書は含まれていません(未分割だった宅地などを分割後に適用する場合を除く)。当初の申告で特例を使わなかった宅地に後から適用を求めるときは、税務署長がやむを得ない事情があると認めるかどうかによります。
相続した財産を売ったときの所得税の取得費加算も、確定申告書に記載して適用を受けるのが原則です。条文が更正の請求で適用できる場合として定めるのは、売った年分の確定申告の期限後に相続税の申告書を期限内に出した場合(その提出日の翌日から2か月以内)などです。該当しそうなときは、税務署や税理士に確認してください。
計算例:土地の評価の誤りに気づいて更正の請求をする
前提:2025年1月6日に父が死亡。相続人は子A・子Bの2人(法定相続分は各2分の1)で、課税価格は各6,000万円(合計1億2,000万円)として期限内に申告・納付しました。その後、Aが相続した土地に減額の補正のもれが見つかり、正しい評価額は当初より2,000万円低いとわかりました。生前贈与の加算や税額控除はないものとします。
| 項目 | 当初の申告 | 正しい計算 |
|---|---|---|
| 課税価格(A/B) | 6,000万円/6,000万円 | 4,000万円/6,000万円 |
| 課税価格の合計 | 1億2,000万円 | 1億円 |
| 課税遺産総額(基礎控除4,200万円を差引き) | 7,800万円 | 5,800万円 |
| 相続税の総額 | 1,160万円 | 770万円 |
| Aの税額 | 580万円 | 308万円 |
| Bの税額 | 580万円 | 462万円 |
基礎控除額:3,000万円+600万円×2人=4,200万円
当初:7,800万円×2分の1=3,900万円、3,900万円×20%−200万円=580万円、×2人=1,160万円
正しい計算:5,800万円×2分の1=2,900万円、2,900万円×15%−50万円=385万円、×2人=770万円
A:770万円×4,000万円÷1億円=308万円、B:770万円×6,000万円÷1億円=462万円
答え:Aは272万円(580万円−308万円)、Bは118万円(580万円−462万円)、合計390万円の納めすぎです。土地を相続していないBも、相続税の総額が下がるため税額が減ります。2人がそれぞれ2030年11月6日までに更正の請求をし、認められれば還付されます。
よくある誤り:後からなら何でも直せると考える
- 小規模宅地等の特例で、正しく選んだ宅地を後から有利な宅地に入れ替える「選択替え」は、原則としてできません。
- 分割後の更正の請求には期限があり、期限を過ぎた請求を不適法とした裁決(2021年(令和3年)6月22日)があります。
- 相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除は、当初の所得税の申告で使わなかった場合、後から修正申告や更正の請求で適用できません(措置法通達35-18)。
- 加算税がかからないのは調査の通知の前の自主的な修正申告です。通知の後は、原則として過少申告加算税がかかります。
他の税金との関係
- 取得費加算を受けて相続財産を売った後に相続税の修正申告や更正があると、加算額は修正後の相続税額で計算します。相続税の取得費加算の特例
- 遺留分侵害額を不動産で支払うと、支払った側に譲渡所得が生じます。換価分割・代償分割・遺留分の支払と譲渡所得
- 空き家の3,000万円特別控除期限ありは2027年12月31日までの譲渡が対象(2026年10月時点で適用期限内)で、同じ資産について取得費加算とは選択適用です。空き家の3,000万円控除
- 贈与税の期間制限と申告の手続。贈与税の申告・納付・延納・期間制限
専門家向け:根拠と実務論点
- 一般の更正の請求は国税通則法23条1項(法定申告期限から5年)です。還付申告書を提出した場合は、起算日を提出日と読み替えます(相基通27-9)。期限内に提出した修正申告書は、期限内申告書として扱われます(相基通31-1)。
- 特則は相続税法30条(期限後申告。相基通30-1)、31条(修正申告)、32条1項1号〜10号(知った日の翌日から4か月以内。5号=条件付物納許可、6号=1〜5号に準ずる政令の事由、9号=国外転出時課税の納税猶予分の所得税の納付、10号=21条の2第4項該当)です。相基通32-2は、配偶者の税額軽減の分割要件のただし書に該当した場合に、32条のほか通則法23条の更正の請求もできるとし、期限を分割の日から4か月と申告期限から5年のいずれか遅い日としています。32-3は嫡出否認・認知後の価額弁済の扱いです。
- 他の相続人が32条1項1〜6号の更正の請求で更正された場合、残りの相続人の更正・決定は35条3項・相基通35-1によります。36条は更正決定等の期間制限の特則です(2023年(令和5年)4月1日以後に申告期限が到来する相続税から。相基通36-1)。
- 除斥期間は国税通則法70条1項・5項、満了前6か月以内の更正の請求は同条3項です。贈与税は相続税法37条によります(旧36条から繰下げ)。
- 調停で一部の相続人が財産を取得しないことが確定した場合も32条1項1号に当たるとする質疑応答事例があります(その者は更正の請求、他は修正申告)。
- 申告要件と更正の請求:小規模宅地等は措法69条の4第7項(相続税法27条・29条の申告書。期限後申告書・修正申告書を含み、更正請求書は挙げていません)、宥恕は同条8項です。未分割の宅地を申告期限から3年以内などに分割した場合は、同条4項ただし書・5項により相続税法32条1項の更正の請求ができます。取得費加算は措法39条2項(確定申告書と、所得税法151条の4第1項の修正申告書)、宥恕は同条3項です。更正の請求は同条4項各号の場合に限られ(5項)、1号は譲渡年分の確定申告期限の翌日から相続税の申告期限までに期限内申告書を出した場合で、期限は提出日の翌日から2か月を経過する日です。
- 小規模宅地等は、限度面積要件を満たさない選択は全部が不適用ですが、期限後申告・修正申告で要件を満たせば適用できます。2019年(令和元年)7月1日前開始の相続の遺留分減殺請求で当初の対象地を取得できなくなった場合等は、選択替えに当たらないとした質疑応答事例があります。
- 延滞税の計算期間の特例は国税通則法61条です(重加算税の対象は除く)。分割など32条1項1〜6号の事由による期限後申告・修正申告の延滞税の特例(相続税法51条2項)は、条文で確認が必要です。事務運営指針は、過少申告加算税の正当な理由の例に「申告期限後に相続税法51条2項各号の事由が生じた場合」を挙げています。
- 取得費加算額は、修正申告・更正後の相続税額で計算します(措令25条の16第2項)。相続税の更正の請求で加算額が減る場合の所得税の修正申告等には、延滞税の特例があります(措法39条9項)。
税務調査の実態:令和6事務年度の統計
国税庁が2025年(令和7年)12月に公表した「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」をもとに、調査の件数と、何がどれだけ見つかっているかを数字で確認します。
この章の結論
- 令和6事務年度の相続税の実地調査は9,512件で、その82.3%で申告漏れなどの非違が見つかり、追徴税額は824億円(1件当たり867万円)でした。
- 文書・電話・来署依頼による「簡易な接触」は21,969件に増えました。無申告事案の追徴税額は142億円、海外資産関連事案の実地調査は1,359件で、いずれも前年を上回っています。
- 国税庁の資料によると、実地調査で見つかった申告漏れの財産は現金・預貯金等が最も多く、4割を超えています。札幌国税局管内では実地調査291件、非違割合84.5%、1件当たりの追徴税額は454万円でした。
統計の見方:公表日・事務年度・数字の意味
相続税の調査の統計は、国税庁が毎年まとめて公表しています。2026年(令和8年)10月時点の最新は令和6事務年度の数値で、2025年12月に公表されました。札幌国税局も同じ月に管内の数値を公表しています。例年の時期からみて、令和7事務年度の数値は2026年12月ごろに公表される見込みです。
事務年度は国税庁の業務の年度で、7月から翌年6月までの1年間とされています。令和6事務年度は2024年(令和6年)7月から2025年6月までです。亡くなった年で集計する「年分」とは区切りが違います。
- 実地調査
- 調査担当者が自宅などを訪れて行う調査です。
- 簡易な接触
- 実地調査とは別に、文書・電話による連絡や来署依頼による面接で、申告漏れや計算誤りを直してもらう取組みです。
- 非違
- 申告漏れや計算誤りなど、是正が必要な誤りのことです。
- 申告漏れ課税価格
- 見つかった財産の申告漏れ額から、債務・葬式費用の増減を調整し、3年以内の生前贈与の増減を加えた額です。
- 追徴税額
- 調査で追加になった本税と加算税の合計です。
よくある誤り:統計の読み違い
- 非違割合82.3%は、資料情報などをもとに選ばれて実地調査を受けた申告での割合です。申告全体の8割に誤りがあるという意味ではありません。
- 令和6年分の申告書を出した被相続人数(166,730人)で実地調査件数を割って「調査を受ける確率」とするのは誤りです。事務年度と年分で集計の区切りが違い、調査対象の申告の年分も示されていません。
- 1件当たりの追徴税額867万円は、非違がなかった調査も含めた実地調査件数で割った値です。
実地調査:件数・非違割合・追徴税額(全国)
令和6事務年度の実地調査は9,512件で、前事務年度より11.2%増えました。非違があったのは7,826件、追徴税額は824億円(うち加算税109億円)です。隠蔽や仮装があったとして重加算税が課されたのは1,065件で、非違件数の13.6%に当たります。
| 項目 | 令和5事務年度 | 令和6事務年度 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 実地調査件数 | 8,556件 | 9,512件 | 111.2% |
| 申告漏れ等の非違件数 | 7,200件 | 7,826件 | 108.7% |
| 非違割合 | 84.2% | 82.3% | 1.9ポイント低下 |
| 重加算税の賦課件数(非違件数に対する割合) | 971件(13.5%) | 1,065件(13.6%) | 109.7% |
| 申告漏れ課税価格 | 2,745億円 | 2,942億円 | 107.2% |
| 追徴税額(本税+加算税) | 735億円 | 824億円 | 112.2% |
| 1件当たりの申告漏れ課税価格 | 3,208万円 | 3,093万円 | 96.4% |
| 1件当たりの追徴税額 | 859万円 | 867万円 | 100.9% |
検算:非違割合 7,826件÷9,512件=82.3%、1件当たりの追徴税額 824億円÷9,512件=約866万円(公表値867万円との差は、追徴税額の億円未満の端数によるものとみられます)
簡易な接触と、無申告・海外資産の調査
簡易な接触は21,969件で、前事務年度の117.0%でした。件数・非違件数・申告漏れ課税価格・追徴税額は、いずれも平成28事務年度以降で最高です。非違は5,796件(26.4%)、追徴税額は138億円(1件当たり63万円)で、簡易な接触でも加算税が課されることがあります。
| 項目 | 簡易な接触 | 無申告事案の実地調査 |
|---|---|---|
| 件数(前年比) | 21,969件(117.0%) | 650件(94.2%) |
| 非違件数(割合) | 5,796件(26.4%) | 562件(86.5%) |
| 申告漏れ課税価格 | 1,123億円 | 749億円 |
| 追徴税額(前年比) | 138億円(113.0%) | 142億円(115.3%) |
| 1件当たりの追徴税額 | 63万円 | 2,187万円 |
申告が必要なのに出していなかった無申告事案は、件数は減ったものの、追徴税額142億円は平成21事務年度以降で最高でした。1件当たりの追徴税額2,187万円は、実地調査全体の867万円を大きく上回ります。
海外資産関連事案の実地調査は1,359件(前年の143.5%)でした。相続財産に海外資産がある、相続人・受遺者・被相続人が国外に住んでいる、海外資産の資料情報がある、外資系金融機関と取引がある、のいずれかに当たる事案です。海外資産に係る非違は209件、その申告漏れ課税価格は97億円(前年の155.5%)でした。国税庁は、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者の金融口座情報)などの情報交換制度を活用していると説明しています。
申告漏れになった財産と調査事例
国税庁資料のグラフによると、実地調査で見つかった申告漏れの相続財産は現金・預貯金等が最も多く、令和6事務年度は1,247億円で全体の43.3%でした。現金・預貯金等の割合は令和2〜4事務年度も41%台で推移しています。
| 財産 | 令和5事務年度 | 令和6事務年度 |
|---|---|---|
| 現金・預貯金等 | 1,202億円(44.1%) | 1,247億円(43.3%) |
| 土地 | 825億円(30.3%) | 837億円(29.1%) |
| 有価証券 | 291億円(10.7%) | 393億円(13.6%) |
| 家屋 | 75億円(2.8%) | 50億円(1.7%) |
| その他 | 333億円(12.2%) | 353億円(12.3%) |
| 合計 | 2,727億円 | 2,879億円 |
国税庁資料のグラフから読み取った値です。この合計は、債務や生前贈与の増減を調整した申告漏れ課税価格(2,942億円)とは一致しません。
国税庁は、調査で把握した事例も公表しています。現金や預金を申告から外して重加算税が課された事案や、無申告の事案などです。
| 内容 | 増えた課税価格 | 追徴税額 |
|---|---|---|
| 相続開始前に引き出した現金を相続人の自宅の金庫に保管し、申告から除外(重加算税) | 約2億5,000万円 | 約1億2,000万円 |
| 無申告。基礎控除以下になるよう預金を相続人や家族の名義に移し、税務署の照会にもうその回答(重加算税) | 約7億2,000万円 | 約4億3,000万円 |
| 国外法人への貸付金の返済を国内法人の口座で受け、貸付金を隠していた(重加算税) | 約4億4,000万円 | 約1億8,000万円 |
| 無申告。相続人全員が国外に住み連絡先が不明だったが、接触を続けて期限後申告に至った | 約1億円 | 約300万円 |
調査の流れと、申告漏れや誤りが起きやすい点は税務調査の流れと指摘されやすい点で説明しています。
贈与税の調査
贈与税の実地調査は2,778件で、そのうち2,582件で非違が見つかりました。追徴税額は123億円(1件当たり443万円)で、前事務年度の114.0%です。非違の83.4%(2,154件)が無申告でした。国税庁は贈与税を相続税を補う税と位置づけ、無申告事案を中心に調査するとしています。
| 項目 | 令和5事務年度 | 令和6事務年度 |
|---|---|---|
| 実地調査件数 | 2,847件 | 2,778件 |
| 申告漏れ等の非違件数 | 2,630件 | 2,582件 |
| 申告漏れ課税価格 | 264億円 | 275億円 |
| 追徴税額 | 108億円 | 123億円 |
| 1件当たりの追徴税額 | 380万円 | 443万円 |
財産別の非違件数(延べ件数)では、現金・預貯金等が62.9%(1,754件)と最も多く、その他19.1%、有価証券14.2%、土地2.8%、家屋1.0%と続きます。家族名義の預金への入金が贈与にあたるか、資金を出した人の財産のまま(名義預金)かは、相続税の申告でも論点になります。
他の税金との関係
- 家族名義の預金が「贈与」か「名義預金」かの判断基準と、贈与の証拠の残し方。名義預金・名義株と贈与の証拠の残し方
- 贈与税の申告期限と期間制限(6年・不正があれば7年)。贈与税の申告・納付・延納・期間制限
札幌国税局(北海道)の状況
札幌国税局管内(北海道)の令和6事務年度の実地調査は291件で、前事務年度の247件から増えました。非違割合は84.5%で全国の82.3%をやや上回る一方、1件当たりの追徴税額は454万円で全国の867万円の約半分です。簡易な接触は947件で、公表を始めた平成28事務年度以降で最高でした。
| 項目 | 令和5事務年度 | 令和6事務年度 |
|---|---|---|
| 実地調査件数 | 247件 | 291件 |
| 非違件数(非違割合) | 206件(83.4%) | 246件(84.5%) |
| 重加算税の賦課件数(割合) | 23件(11.2%) | 28件(11.4%) |
| 申告漏れ課税価格 | 62億200万円 | 61億3,500万円 |
| 追徴税額(本税+加算税) | 15億2,800万円 | 13億2,200万円 |
| 1件当たりの追徴税額 | 619万円 | 454万円 |
| 簡易な接触の件数 | 571件 | 947件 |
| 簡易な接触の追徴税額 | 4億9,100万円 | 4億9,100万円 |
| 無申告事案の実地調査件数 | 15件 | 19件 |
| 贈与税の実地調査件数 | 44件 | 59件 |
令和6事務年度の追徴税額13億2,200万円の内訳は、本税11億6,200万円、加算税1億6,000万円です。無申告事案19件の追徴税額は1億6,000万円(1件当たり843万円)、贈与税の実地調査59件の追徴税額は1億400万円でした。簡易な接触の追徴税額4億9,100万円(1件当たり52万円)にも加算税1,900万円が含まれています。
| 項目 | 全国 | 東京国税局 | 札幌国税局 |
|---|---|---|---|
| 実地調査件数 | 9,512件 | 2,700件 | 291件 |
| 非違割合 | 82.3% | 78.4% | 84.5% |
| 1件当たりの追徴税額 | 867万円 | 1,105万円 | 454万円 |
| 簡易な接触の件数 | 21,969件 | 7,017件 | 947件 |
北海道の相続税の申告件数や相続財産の構成は数字で見る北海道の相続税、全国の申告事績は数字で見る相続税:全国と北海道で紹介しています。
専門家向け:根拠と実務論点
- 出典は国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」と、札幌国税局・東京国税局の同名資料です。国税庁と札幌国税局の資料の表示は「令和7年12月」で、日付までは記載されていません。1件当たりの金額は、実地調査件数(非違のない件を含む)で割った値です。公表値は端数処理前の金額から算出されているとみられ、表の数値で割り直すと1万円程度ずれることがあります。
- 重加算税の賦課割合の分母は非違件数です。申告漏れ課税価格は「申告漏れ相続財産額−債務・葬式費用の増減+3年以内の生前贈与の増減」で、申告漏れ相続財産の構成(2,879億円)とは一致しません。
- 申告漏れ相続財産の構成比は、金額と割合の整合は取れていますが、PDFのグラフ系列と財産名の対応は読み取りによります。引用する場合は原資料で確認してください。
- 事務年度(7月〜翌6月)の定義は、調査状況の資料自体には注記がなく、国税庁の一般的な定義によります。確認した公表資料には申告から調査までの期間を示す記載はなく、時期を断定する記述は避けています。
- 海外資産関連事案の非違件数等には、同じ事案で見つかった国内資産の非違を含む「全体」と、海外資産に係るものの区別があります(全体の非違1,052件、海外資産に係る非違209件、海外資産に係る重加算税14件)。
- 東京国税局(令和6事務年度):無申告事案の実地調査126件・追徴税額58億円(平成21事務年度以降で最高)。贈与税の非違538件のうち457件(84.9%)が無申告で、財産別の非違では現金・預貯金等が389件(67.9%)です。
- 令和7事務年度分は2026年12月ごろの公表が見込まれ、公表後は本章の数値の更新が必要です。
税務調査の流れと指摘されやすい点
相続税の調査は、資料情報などから申告漏れが想定される申告を選んで行われます。流れを知り、誤りが起きやすい点を申告の前に確かめておくことが、いちばんの備えになります。
この章の結論
- 調査は、資料情報などから申告額が少ないと想定される申告や、申告が必要なのに出ていないと想定される事案を選んで行われます。訪問による実地調査のほか、文書・電話・来署依頼による「簡易な接触」もあります。
- 申告漏れや誤りが起きやすいのは、現金・預貯金(家族名義の預金や生前の引出しを含む)、生前贈与の加算、生命保険、海外資産、土地の評価、小規模宅地等の特例の要件です。
- 調査の通知の前に自分から修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。家族名義と知りながら財産を申告しないなどの隠蔽・仮装には、重加算税(35%・40%)が課されます。
調査の種類と対象の選ばれ方
国税局は、資料情報などから申告額が過少と想定される事案や、申告義務があるのに無申告と想定される事案などを対象に実地調査を行っていると公表しています。申告書を出した人全員が調査を受けるわけではありません。
調査には2つの形があります。調査担当者が自宅などを訪れる実地調査と、文書・電話による連絡や来署依頼による面接で申告漏れや計算誤りを直してもらう簡易な接触です。令和6事務年度は実地調査が9,512件、簡易な接触が21,969件でした(詳しくは税務調査の実態)。簡易な接触でも加算税が課されることがあります。
相続財産に海外資産がある、相続人や被相続人が国外に住んでいる、外資系金融機関と取引があるといった海外資産関連事案も調査の対象です。国税庁は、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者の金融口座情報)などの情報交換制度を活用していると説明しています。
調査の時期について
申告から調査までの期間について、国税庁・国税局の調査状況の公表資料には目安が示されていません(本ガイドで確認した範囲)。統計は「事務年度」(7月から翌年6月までとされます)で集計されています。「申告後○年で来る」といった話には根拠が確認できないため、時期を当てにせず、申告の時点で説明資料を整えておくことが大切です。
実地調査の流れ
実地調査は、おおむね次の流れで進みます。事前通知の方法や時期、税理士への通知、日時の変更、調査終了時の手続などは、国税庁の「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」(2026年(令和8年)7月改訂)で説明されています。
- 申告書の提出税理士の書面添付がある申告で実地調査を行う場合は、調査の通知の前に、税理士への意見聴取が行われます(書面添付制度)。
- 事前通知原則として、実地調査を行うこと、調査の対象となる税目と期間などが、納税者(同意があれば税理士)に通知されます。事前通知なしの調査についてもFAQで取り上げられています。
- 実地調査自宅などで質問を受け、通帳などの書類の提示や提出を求められることがあります。書類の提示・提出や留置きの扱いもFAQで説明されています。
- 調査結果の説明非違がなければ、更正決定等をすべきと認められない旨が書面で通知されるとされています。非違があれば内容が説明され、修正申告を勧められることがあります。
- 修正申告または更正FAQでは、修正申告をするとその内容について不服申立てはできないものの、更正の請求はできるとされています。修正申告をしないときは、税務署長の更正を受けることになります。
修正申告と更正の請求の手続、期限は修正申告・更正の請求で説明しています。
調査の通知と加算税の関係
加算税の扱いは、修正申告を出した時期で変わります。基準になるのが調査通知で、①実地の調査を行うこと、②調査の対象となる税目、③調査の対象となる期間の3点を知らせることをいいます。
調査通知の前に自主的に出した修正申告には、過少申告加算税はかかりません。通知の後で更正を予知する前なら5%、調査で更正を予知した後は10%が基本です(一定額を超える部分は割合が上がります)。臨場日時の連絡の段階で出した修正申告は、原則として更正を予知したものに当たりません。一方、臨場による調査や反面調査、非違事項の指摘などで調査を知った後の修正申告は、原則として予知したものとされます。
財産を隠したり事実をねつ造したりした場合は、過少申告加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%の重加算税が課されます。国税庁の事務運営指針は、被相続人以外の名義・架空名義・無記名・遠隔地の財産だと認識しながら申告しないことも、隠蔽・仮装の例に挙げています。隠蔽・仮装の例の一覧と、加算税の割合・加重措置は加算税・延滞税で説明しています。
誤りが起きやすい点①:現金・預貯金と名義預金
国税庁資料のグラフによると、実地調査で見つかった申告漏れの財産は現金・預貯金等が最も多く、4割を超えています。ここでは、誤りが起きやすい家族名義の預金と、亡くなる前に引き出された現金を取り上げます。
家族名義の預金(名義預金)
預金は、名義ではなく実質で誰の財産かが判断されます。国税庁の「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集」は、被相続人が資金を出しているなど被相続人の財産と認められるものは、名義にかかわらず相続税の対象としています。判断のポイントは、資金の出所、管理・運用の状況、贈与の事実の有無です。事例では、父の収入から預け入れ、父が管理・運用し、子が贈与を受けた事実のない子名義の定期預金を、父の相続財産としています。
裁判例・裁決も、名義だけで判断しない点は同じです。東京地裁2008年(平成20年)10月17日判決は、名義だけでは誰の財産かは決まらないとしました。資金を出した人、管理・運用の状況、利益の帰属、名義人との関係、名義を得た経緯などを総合して判断するとしています。
2021年(令和3年)9月17日の裁決は、受贈者の署名押印がなく本人も存在を知らなかった贈与証だけでは、書面による贈与は成立しないとしました。一方、同じ裁決で、未成年だった子の名義の口座は、親権者が贈与を受諾し履行していたとして子の財産と認めています。判断基準と贈与の証拠の残し方は名義預金・名義株と贈与の証拠の残し方が詳しく扱っています。
亡くなる前の引出し
亡くなる前に被相続人の預金から引き出した現金も、相続開始の時に残っていれば現金として相続財産です。国税庁の調査事例には、引き出した現金を相続人の自宅の金庫に保管して申告から外し、重加算税が課された事案があります。引き出した現金で生前の入院費などを支払っていれば、その分は相続財産にも債務にもなりません。葬式費用に充てた分は、葬式費用として控除の対象になります。
誤りが起きやすい点②:生前贈与・保険・海外資産・土地・特例
国税庁が「誤りやすい事例」として挙げているものや、調査の統計・事例から、次の点は申告前に確認しておきたい論点です。
| 論点 | 誤りやすい点と正しい扱い | 詳しい章 |
|---|---|---|
| 生前贈与の加算 | 加算対象期間内(2026年12月31日までの相続は3年以内。2027年(令和9年)以後の相続から段階的に延び、2031年(令和13年)以後の相続は7年以内施行中)の贈与は、110万円以下で贈与税がかからなかったものも加算します。加算されるのは相続・遺贈で財産を取得した人への贈与です。 | 生前贈与加算 |
| 生命保険 | 非課税(500万円×法定相続人の数)は受取人が相続人の場合だけです。課税関係は契約者ではなく保険料を負担した人で判定します。保険金と一緒に受け取った前納保険料も保険金に含めます。 | みなし相続財産 |
| 海外資産 | 納税義務者の区分によっては国外財産も課税され、海外の口座や不動産が対象外とは限りません。CRSなどの情報交換が活用されています。 | 納税義務者と国外財産 |
| 土地の評価 | 地目は登記ではなく現況で判定します。親族に無償で貸している(使用貸借の)土地は自用地として評価し、貸家建付地にはなりません。貸家建付地の減額は「借地権割合×借家権割合30%×賃貸割合」です。 | 貸家建付地・借地権・使用貸借 |
| 小規模宅地等の特例 | 同居親族・生計を一にする親族は申告期限までの居住・保有の継続が必要です。限度面積は被相続人ごとに全員の分を合算し、選択には取得者全員の同意が要ります。生前贈与で取得した宅地には使えません。 | 誤りやすい論点と事例 |
| 債務・葬式費用 | 香典返し、墓地・墓石の購入費用、初七日などの法事の費用は控除できません。団体信用生命保険で返済が免除される住宅ローンも控除できません。 | 債務控除と葬式費用 |
よくある誤り:贈与契約書さえあれば安心と考える
贈与契約書があっても、受贈者が贈与を受け入れ、自分で預金を管理しているといった実態がなければ、贈与とは認められないことがあります。また、申告後に誤りに気づいたら、調査を待たずに直すのが基本です。調査通知の前の自主的な修正申告なら、過少申告加算税はかかりません(延滞税はかかります)。
調査に備えて残しておく資料
調査で問われるのは、申告した内容の根拠です。次の資料は、申告書と一緒に相続人の手元に残しておくと説明がしやすくなります。贈与契約書の作成などは法令上の要件ではありませんが、事実を示す証拠になります。
保管しておきたい資料
- 申告書の控え(2026年中に亡くなった人の申告で使う令和8年分の様式から控用の様式は廃止され、2025年(令和7年)1月から控えへの収受日付印も押されないため、提出した内容の控えを自分で作って保管)
- 亡くなる前の預金の入出金の記録と、大きな引出しの使い道がわかる領収書など
- 家族名義の預金について、資金の出所(名義人自身の収入など)と、通帳・印鑑を誰が管理していたかがわかる資料
- 生前贈与の記録(その都度の贈与契約書、受贈者名義の口座への振込記録、贈与税の申告書の控え)
- 生命保険の保険証券や支払通知書(保険料を負担した人と受取人がわかるもの)
- 土地や非上場株式の評価明細書と、その根拠になった路線価図・地積測量図などの資料
- 債務と葬式費用の請求書・領収書
- 遺言書や遺産分割協議書の写し
他の税金との関係
- 家族名義の預金への入金は、贈与税の調査でも論点になります。贈与税の非違の多くは無申告で、財産別では現金・預貯金等が最も多くなっています。名義預金・名義株と贈与の証拠の残し方
- 生前の対策が否認された事例と、やってはいけない対策。やってはいけない対策と否認事例
専門家向け:根拠と実務論点
- 調査手続:国税通則法74条の9(事前通知)、74条の10(事前通知を要しない場合)、74条の11(調査の終了の際の手続。更正決定等をすべきと認められない旨の通知、調査結果の内容説明、修正申告等の勧奨と、その際の不服申立て不可・更正の請求可の説明および書面交付)。条文は要確認です。国税庁FAQ(一般納税者向け、2026年7月改訂)は、事前通知の方法・時期・税理士への通知・日時変更、事前通知なしの調査、電話による申告内容の確認や修正申告の要請が調査に当たるか、勧奨に応じる義務、再調査、帳簿書類の提示・提出と留置きを扱っています。
- 加算税:国税通則法65条(過少申告加算税)、68条(重加算税)。事務運営指針「相続税、贈与税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて」「相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて」(いずれも最終改正2023年(令和5年)6月23日)。調査通知の3項目は、納税者(同意があれば税務代理人)に通知されます。臨場・反面調査・非違事項の指摘等で調査を知った後の修正申告は原則として更正予知に当たり、臨場日時の連絡段階の修正申告は原則として当たりません。
- 重加算税の計算では、更正等の後の税額から、隠蔽・仮装に基づかない事実だけで計算した税額を差し引いて基礎を求めます。隠蔽・仮装された財産は配偶者の税額軽減の計算の基礎から除かれ、延滞税の計算期間の特例も適用されません。
- 名義預金:国税庁の誤りやすい事例集(事例6)が示すのは、資金の拠出・管理運用・贈与の事実の3点です。東京地判2008年10月17日(税務訴訟資料)は出捐者、管理・運用、利益の帰属、関係、名義取得の経緯の総合考慮とし、遺産分割調停での合意は課税庁を拘束しないとも判示しました。相続財産とされた裁決例(2007年(平成19年)10月4日:被相続人の筆跡のメモ・印鑑・保管場所・原資から被相続人の管理を認定)と、相続財産でないとされた裁決例(2001年(平成13年)3月29日、2013年(平成25年)12月10日、2021年9月17日の未成年者名義口座部分)があります。印鑑・通帳の保管や受贈者の認識は、国税庁の基準としてではなく、裁決等で考慮される要素として扱うのが正確です。
- 2021年9月17日裁決は、被相続人が鍵を管理していた金庫の現金も相続財産と認定しました。成人の子名義の口座は、残高を払い出して通帳とともに渡した時点で贈与が成立・履行したとして、相続開始前3年以内の贈与として加算されています。
- 保険・債務の誤りは、誤りやすい事例集の事例5(前納保険料)、事例11(墓の購入の借入金)、事例12(未納の固定資産税・住民税)、事例13(団体信用生命保険付きの住宅ローン)を参照してください。
書面添付制度と専門家への依頼
税理士が関与した申告には、作成の過程を書面にまとめて添付する制度があります。この章では、その仕組みと、自分で申告するか税理士に依頼するかを考えるときの判断材料を整理します。
この章の結論
- 書面添付制度は、税理士が申告書の作成で計算・整理・相談に応じた事項などを書面にまとめ、申告書に添付する制度です(税理士法33条の2)。
- 書面が添付された申告に実地調査を行う場合、税務署は調査の通知の前に税理士の意見を聴きます(税理士法35条)。この意見聴取での質疑だけを理由に出した修正申告には、過少申告加算税がかかりません。
- 自分で申告するか税理士に依頼するかは、土地の評価、特例の要件、未分割、非上場株式、海外資産などがあるかどうかで、判断の難しさが大きく変わります。
書面添付制度とは
書面添付制度は、税理士が申告書にどう関与したかを、税務署に書面で示す制度です。税理士法33条の2は、次の2つの場合に書面を添付できると定めています。
- 税理士が自分で作成した申告書について、計算し、整理し、または相談に応じた事項を記載した書面(1項)
- 他人が作成した申告書を審査した場合に、審査した事項を記載した書面(2項)
相続税・贈与税などの資産税では、「申告書の作成に関する計算事項等記載書面(資)」という書面を使います。添付は義務ではなく、税理士が判断して行うものです。記載事項がまったくない書面は添付書面として扱われず、後で説明する意見聴取の対象にもなりません。
運用の考え方と手続は、国税庁の事務運営指針「資産税事務における書面添付制度の運用に当たっての基本的な考え方及び事務手続等について」に定められています。この指針は2026年(令和8年)9月17日に改正されています施行中。
意見聴取の流れ
書面が添付された申告について実地調査を行う場合、税務署は調査の通知の前に、税務代理権限証書を出している税理士に、書面の記載事項について意見を述べる機会を与えます(税理士法35条1項)。事前通知をしない調査の場合を除き、意見聴取は調査通知の前に行われます。
- 申告書と書面の提出税理士が、申告書に計算事項等記載書面を添付して提出します。
- 日程の調整実地調査が必要と考えた場合、調査担当者が、調査通知を予定する日の1〜2週間前までに電話で税理士と日時・方法を決めます。
- 意見聴取原則として統括官等と調査担当者が行い、税理士に来署してもらいます。遠方の場合などはWeb会議(Microsoft Teams)、電話、文書でもよいとされています。調査通知を予定する日の前日までに終えます。
- 結果の連絡調査に移行しない場合は、原則として「意見聴取結果についてのお知らせ」が送られ、現時点では調査に移行しない旨が伝えられます。調査に移行する場合は、調査通知に進みます。
次の場合は、お知らせを送らずに電話で連絡するとされています。自主的な修正申告があった場合、今後の指導事項がある場合、書面の主要な記載欄が空欄であるなど明らかな不備や具体性に欠ける記載がある場合です。
調査の後に更正をする場合にも、意見を述べる機会があります。税理士が更正の原因となる事実について計算・整理・相談・審査をしていたと認められるときは、調査結果の内容を説明する前に、その税理士に意見を述べる機会が与えられます(税理士法35条2項)。
書面添付と加算税・調査の関係
意見聴取は調査の通知の前に行われるため、加算税にも関係します。指針は、意見聴取での質疑だけを理由に出された修正申告は「更正を予知したもの」に当たらないとしています。調査通知の前の自主的な修正申告と同じく、過少申告加算税は課されません。調査通知の前後で加算税の扱いが変わる仕組みは税務調査の流れと指摘されやすい点で説明しています。
この運用は、相続税・贈与税だけでなく、所得税の譲渡所得と山林所得の実地調査にも適用されます。相続した不動産を売ったときの譲渡所得の申告でも、書面添付があれば同じ流れになります。
よくある誤り:書面添付があれば調査は来ないと考える
書面添付は、調査を受けないことを保証する制度ではありません。意見聴取の結果、調査に移行することもあります。「意見聴取結果についてのお知らせ」を受け取った後でも、新たな疑義が生じれば調査が行われることがあります。
他の税金との関係
- 相続した不動産や株式を売ったときの譲渡所得の申告と注意点。売却の税金シミュレーターと申告の注意
- 贈与税の申告にも、相続税と同じ資産税用の書面が使われます。贈与税の申告・納付・延納・期間制限
自分で申告するか、税理士に依頼するか
相続税の申告は、相続人が自分で行うこともできます。国税庁は「相続税の申告のしかた(令和8年分用)」や申告書の記載例を公表しており、e-Taxでも提出できます。相続税の申告の約7割はe-Taxで提出されており、2025年度(令和7年度)の速報値は70.2%です。
判断の難しさを左右するのは、財産と家族の状況です。次の要素があると、評価や特例の要件について専門的な判断が必要になる場面が増えます。
| 要素 | 主な判断のポイント | 詳しい章 |
|---|---|---|
| 土地 | 地目・評価単位の判定、画地の補正、地積規模の大きな宅地、貸家建付地、倍率地域、北海道の原野・山林など | 土地評価の全体像 |
| 小規模宅地等の特例 | 同居・生計を一にする・家なき子・老人ホームなど取得者ごとの要件、限度面積の調整、全員の同意 | 小規模宅地等の特例の全体像 |
| 未分割 | 法定相続分などでの申告、分割見込書、分割後4か月以内の更正の請求 | 遺産が未分割のときの申告 |
| 非上場株式 | 株主の区分と会社規模の判定、評価方式の選択と計算 | 自社株の評価が必要になる場面 |
| 海外資産・海外在住の相続人 | 納税義務者の区分、国外財産の評価、外国税額控除、納税管理人 | 国際相続 |
| 家族名義の預金・過去の贈与 | 資金の出所と管理の整理、加算する贈与の確認 | 名義預金と贈与の証拠 |
反対に、財産が預貯金や上場株式など評価のはっきりしたものだけで、遺産分割もまとまっている場合は、国税庁の資料を使って自分で申告することも考えられます。国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」では、申告が必要かどうかのおおよその判定ができます。小規模宅地等の特例(自宅の敷地=特定居住用宅地等)と配偶者の税額軽減を使った場合の税額も試算できます。ただし、申告書を作る機能はなく、2割加算は考慮されないなど、結果はあくまで目安です。
自分で申告する場合
- 国税庁の「申告のしかた」と様式・記載例を使う
- 土地や非上場株式の評価明細書を先に作り、各表を順に作成する
- e-Taxなら添付書類をPDFで提出でき、その原本の保存は不要
税理士に依頼する場合
- 税理士が税務代理権限証書を出して申告と調査に対応する
- e-Taxの代理送信では相続人本人の電子署名は不要
- 書面添付をするかどうかは、税理士が判断する
依頼するときの準備と進め方
税理士に依頼する場合も、資料の準備には相続人の協力が欠かせません。戸籍や法定相続情報一覧図、遺言書や遺産分割の状況、不動産・預貯金・有価証券・保険の資料、債務と葬式費用の領収書、過去の贈与の記録、各相続人のマイナンバーと本人確認書類が基本になります。区分ごとの一覧は必要書類チェックリストにまとめています。
e-Taxで提出する場合、相続人本人の利用者識別番号は、税理士が税務署に照会できます。2024年(令和6年)12月からは、1件の変更等届出書で複数の財産取得者の分を確認できるようになりました。2025年(令和7年)4月からは、添付書類をグレースケールで読み取ってもよくなっています。
依頼の前には、申告期限までの日程、土地の評価や特例の適用についての考え方、書面添付を行うかどうかを確認しておくと、進め方の認識がそろいます。申告後は、申告書の控えと根拠資料を相続人の手元に保管しておきます(調査に備えて残しておく資料)。
税理士でない人に申告書の作成を頼んでもよいですか。
税理士等でない人が、他人の申告書の作成を業として行うことは禁止されています。国税庁の相続税の申告要否判定コーナーの利用規約にも、この点が明記されています。
税理士に頼めば、相続人は何もしなくてよいですか。
そうではありません。遺産分割の合意は相続人が行うもので、資料の準備にも相続人の協力が必要です。申告書の内容を確認し、提出後は控えを保管しておくことも大切です。
専門家向け:根拠と実務論点
- 根拠:税理士法33条の2第1項(自ら作成した申告書の計算事項等記載書面)・第2項(他人が作成した申告書の審査事項等記載書面)、35条1項(書面添付がある場合の調査通知前の意見聴取。税務代理権限証書を提出している税理士が対象)、35条2項(更正の原因となる事実に関与した税理士への、調査結果の内容説明前の意見聴取)、国税通則法74条の11第2項。条文の言い回しは指針による要約です。
- 運用:国税庁「資産税事務における書面添付制度の運用に当たっての基本的な考え方及び事務手続等について」(最終改正2026年9月17日)。意見聴取は、事前通知を行わない場合を除き調査通知の前に行います。調査通知予定日の1〜2週間前までに電話で日時・方法を調整し、前日までに終えます。原則は統括官等と調査担当者による来署方式で、遠方等はTeams・電話・文書でも行えます。
- 結果の連絡:調査に移行しない場合は、原則として「意見聴取結果についてのお知らせ」を送付します。自主的な修正申告があった場合、今後の指導事項がある場合、主要な記載欄の空欄・明らかな不備・具体性を欠く記載がある場合は電話で連絡します。送付後も、新たな疑義があれば調査はありえます。
- 加算税:意見聴取の質疑のみを理由とする修正申告は更正予知に当たらず、調査通知前のため過少申告加算税は課されません。調査通知後は扱いが異なります。記載事項がまったくない書面は添付書面に該当せず、意見聴取の対象外です。
- 適用範囲:相続税・贈与税のほか、所得税の譲渡所得・山林所得の実地調査にも適用されます。
- 様式:2026年9月24日以後に書面で提出する場合の新様式の案内があるとされますが、資産税用の書面が対象かは確認が必要です。
- e-Tax:税理士がまとめて代理送信する場合は、利用者識別番号が入力されたデータが有効とされ、共同提出者を明らかにするための第1表の記載上の明示(参考記載など)は不要とされています。
ジェイスタート会計事務所は、公認会計士・税理士の事務所として、生前対策から相続税の申告、不動産の売却、会社・事業の次世代への引き継ぎまでを支援しています。ご相談の内容は守秘義務のもとで取り扱います。
- 相続税・贈与税・譲渡所得税の申告
- 土地の評価(不整形地補正・小規模宅地等の特例)
- 非上場株式の評価・同族会社の自社株集約
- 生前対策・相続時精算課税の活用
- 不動産売却における特別控除の適用
- 事業承継税制のご提案と活用
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このページの出典・参考資料(102件)
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
- 国税庁 相続税の申告のしかた(令和8年分用)相続税の申告
- 国税庁 相続税の申告のしかた(令和8年分用)はじめに
- 国税庁 相続税の申告書の記載例等(令和8年分用)
- 国税庁 相続税法基本通達 第4章 申告及び納付
- 国税庁 事務運営指針 相続税、贈与税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱い
- 国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
- 国税庁 実績評価資料(相続税申告のe-Tax利用率)
- 国税庁 令和6年度におけるオンライン(e-Tax)手続の利用状況等
- 国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
- 国税庁 相続税の申告の際に提出していただく主な書類(令和8年7月)
- e-Gov法令検索 相続税法
- e-Gov法令検索 国税通則法
- e-Gov法令検索 民法
- e-Gov法令検索 戸籍法
- 日本年金機構 年金を受けている方が亡くなったとき
- 札幌国税局 税務署所在地・案内
- 国税庁 相続税の申告のしかた(令和8年分用)
- 国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減
- 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
- 国税庁 相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出手続
- 国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
- 国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務
- 国税庁 No.4129 相続財産から控除できる葬式費用
- 国税庁 財産評価基本通達 21〜24-8(倍率方式)
- 国税庁 財産評価基本通達 200〜214(預貯金・生命保険契約に関する権利など)
- 法務局 法定相続情報証明制度について
- 法務局 法定相続情報証明制度の具体的な手続について
- 法務局 法定相続情報証明制度の利用範囲の拡大
- 札幌市 戸籍証明の広域交付
- 法務省 所有不動産記録証明制度
- 旭川地方法務局 所有不動産記録証明制度
- e-Gov法令検索 不動産登記法
- e-Gov法令検索 地方税法
- 札幌市 市税の証明と閲覧
- 札幌市 窓口での請求
- 国税庁 相続税の申告書作成時の誤りやすい事例6
- 国税庁 令和6事務年度における相続税の調査等の状況
- 国税庁 事務運営指針 相続税及び贈与税の重加算税の取扱い
- 国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
- 国税庁 質疑応答事例 被相続人の準確定申告に係る還付金等
- 国税庁 暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)
- 国税庁 税務訴訟資料 東京地裁平成20年10月17日判決
- 国税不服審判所 令和3年9月17日裁決
- 国税庁 No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期
- 政府広報オンライン 家族の生命保険契約を一括照会
- 国税庁 贈与税の申告内容の開示請求手続
- 国税庁 相続税の申告書等の様式一覧(令和8年分用)
- 国税庁 相続税の申告のしかた(令和8年分用)正誤表
- 国税庁 相続税法基本通達 第16条〜第19条関係
- 国税庁 No.4168 相次相続控除
- 国税庁 No.4202 相続税の申告のために必要な準備
- 国税庁 No.4208 Q&A(小規模宅地等の特例)
- 国税庁 質疑応答事例 相続税法第32条による更正の請求
- 国税庁 相続税法基本通達 第5章 更正及び決定
- 国税不服審判所 公表裁決事例要旨(小規模宅地等の特例)
- 国税庁 質疑応答事例 未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告
- 国税庁 質疑応答事例 遺産が未分割である場合の議決権割合の判定
- 国税庁 準確定申告のe-Tax
- 国税庁 相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集 事例12
- 国税庁 所得税基本通達 第36条関係
- 国税庁 質疑応答事例 居住用財産の譲渡契約を締結した者が所有権移転登記及び代金決済を行う前に死亡した場合
- 国税庁 質疑応答事例 相続開始時点で売買契約中であった不動産に係る相続税の課税
- 国税庁 質疑応答事例 売買契約中であった不動産の譲渡と取得費加算
- 国税庁 タックスアンサー1468 国外転出(相続)時課税
- 国税庁 相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集 事例8(未支給年金)
- 国税庁 相続税法基本通達 第3条関係(退職手当金等)
- e-Gov法令検索 所得税法
- 国税庁 タックスアンサー1600 公的年金等の課税関係
- 国税庁 タックスアンサー2665 年末調整の対象となる人
- e-Gov法令検索 消費税法
- 国税庁 個人事業者の死亡届出手続(消費税)
- e-Gov法令 地方税法318条
- 財務省 令和8年度税制改正の大綱(防衛力強化に係る財源確保のための税制措置)
- 国税庁 相続税の申告のしかた(令和8年分用)相続税の納付
- 国税庁 No.4211 相続税の延納
- 国税庁 延納・物納
- 国税庁 延納の手引(令和7年4月1日以後相続開始分など)
- 国税庁 物納の手引(手続編)
- 国税庁 延納・物納の許可限度額の計算方法の変更
- 国税庁 No.9205 延滞税の計算方法
- 国税庁 延滞税の計算方法
- 国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき
- 国税庁 加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし
- 財務省 加算税の概要
- 国税庁 資産税事務における書面添付制度の運用
- 国税庁 質疑応答事例 遺留分減殺に伴う小規模宅地等の選択替え
- 国税庁 No.4155 相続税の税率
- 国税庁 税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
- 国税庁 質疑応答事例 相続税の修正申告があった場合の取得費加算
- 国税庁 措置法通達 第35条関係
- e-Gov法令検索 租税特別措置法
- 国税庁 令和6事務年度における相続税の調査等の状況(掲載ページ)
- 札幌国税局 令和6事務年度における相続税の調査等の状況
- 札幌国税局 令和5事務年度における相続税の調査等の状況
- 東京国税局 令和6事務年度における相続税の調査等の状況
- 国税庁 令和6年分 相続税の申告事績の概要
- 名古屋国税局 令和6事務年度における相続税の調査等の状況
- 国税不服審判所 公表裁決事例要旨(相続財産の帰属:預貯金)
- 国税庁 事務運営指針一覧
- 国税庁 相続税の申告要否判定コーナー
- 国税庁 相続税の申告要否判定コーナー 利用規約
このページは、2026年10月17日時点で確認できた法令・通達・国税庁などの公表資料にもとづく一般的な解説です。税制や運用は改正されることがあり、個別の事情によって取扱いが異なる場合があります。実際の申告・手続の際は、最新の公表資料を確認するか、税理士などの専門家にご相談ください。
計算例・設例の数値は説明のための仮定です。計算ツールの結果は概算で、正確性や個別の結果を保証するものではありません。確定度ラベル(施行中・成立・施行待ち・通達案・検討中・要望段階など)は2026年10月17日時点の状態を示します。
最終確認日:2026年10月17日 作成:ジェイスタート会計事務所(公認会計士・税理士)
