小規模宅地等の特例 完全ガイド|自宅・事業用・貸付用の要件と選び方

自宅や事業用の土地の評価を最大80%下げる小規模宅地等の特例を、4区分の要件・限度面積の調整・申告手続・誤りやすい論点まで、国税庁の資料にもとづいて解説します。複数の宅地から最も有利な組合せを計算するツールつき。

相続税・贈与税 総合ガイド|小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例自宅・家なき子・二世帯・老人ホーム・事業用・貸付用・限度面積の調整

小規模宅地等の特例は、相続税の負担を最も大きく左右する特例の一つです。誰が取得し、申告期限まで住み続けるか・保有するかで使えるかどうかが決まり、申告をしなければ使えません。

4区分・6類型をすべて解説限度面積の調整計算ツールつき2026年10月17日時点
80%自宅・事業用の減額割合出典:国税庁 No.4124
330㎡特定居住用の限度面積出典:措置法69条の4
730㎡居住用と事業用の完全併用の上限出典:国税庁 No.4124
0円でも申告特例の適用には申告が必要出典:措置法69条の4
第1章

小規模宅地等の特例の全体像

小規模宅地等の特例は、亡くなった人などが住まい・事業・貸付けに使っていた土地を相続したとき、評価額を一定の面積まで80%または50%減らす制度です。自宅の土地なら、評価額5,000万円の土地を1,000万円として相続税を計算できることもあります。

この章の結論

  • 被相続人(亡くなった人)や、被相続人と生計を一にしていた親族が、住まい・事業・貸付けに使っていた土地が対象です。相続・遺贈で取得すると、限度面積までの部分の評価額を80%または50%減額できます。
  • 区分は4つです。特定居住用宅地等は330㎡まで80%、特定事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等は400㎡まで80%、貸付事業用宅地等は200㎡まで50%の減額です。区分ごとに、取得する人や申告期限まで続けることの要件があります。
  • 特例を使うには、相続税の申告(特例を使って税額が0円になる場合も必要)と、原則として申告期限までの遺産分割が必要です。令和8年度税制改正で特例そのものは改正されておらず、2026年(令和8年)10月時点の要件は従来どおりです。

特例で何が下がるのか

相続税は、相続した財産の評価額をもとに計算します。土地の評価額は、路線価などを使い、財産評価基本通達のルールで求めます(土地評価の全体像)。小規模宅地等の特例は、こうして求めた評価額のうち、限度面積までの部分を減額する制度です。

減額した後の金額が、課税価格(税金を計算するもとになる金額)に入ります(課税価格の計算)。「80%減額」とは、評価額の20%だけを課税価格に入れるという意味です。「評価額の80%で計算する」のではありません。50%減額なら、評価額の半分を課税価格に入れます。

対象になるのは、相続開始の直前に「被相続人等」が住まいや事業(貸付けを含みます)に使っていた土地です。被相続人等とは、被相続人と、被相続人と生計を一にしていた親族のことです。親族なら誰でもよいわけではありません。たとえば、生計が別の子が親の土地を無償で借りて自宅を建てている場合、その土地は対象になりません(生計を一にする親族・二世帯住宅)。

減額は、通常の評価を終えた後の金額に対して行います。たとえば貸家の敷地なら、貸家建付地として評価を下げた後の金額を、さらに50%減額します。国税庁の申告書の記載例も、この順番で計算しています(貸家建付地の評価)。

宅地等
土地と、借地権など土地の上に存する権利。建物や構築物の敷地に使われているものに限ります。
特例対象宅地等
区分ごとの要件を満たし、特例の対象になり得る宅地等。
選択特例対象宅地等
特例対象宅地等のうち、取得者全員の同意によって特例を受けると選んだもの。
小規模宅地等
選択特例対象宅地等のうち、限度面積の範囲に収まる部分。この部分の評価額が減額されます。

4つの区分と限度面積・減額割合

区分は、相続開始の直前に土地が何に使われていたかで決まります。国税庁は利用の状況を6つに分けて説明していますが、区分としては次の4つです。

特定居住用自宅の敷地330㎡80%減額限度面積 330㎡まで特定事業用個人事業の店舗・工場400㎡80%減額限度面積 400㎡まで特定同族会社事業用同族会社の事業用400㎡80%減額限度面積 400㎡まで貸付事業用アパート・駐車場など200㎡50%減額限度面積 200㎡まで
図:小規模宅地等の特例の4区分(限度面積と減額割合)
小規模宅地等の特例の区分と限度面積・減額割合(2026年10月時点)
相続開始の直前の使い方区分限度面積減額割合詳しい解説
被相続人等の住まい特定居住用宅地等330㎡80%配偶者と同居親族
被相続人等の事業(貸付事業を除く)特定事業用宅地等400㎡80%特定事業用宅地等
一定の法人に貸し付け、その法人の事業(貸付事業を除く)に使用特定同族会社事業用宅地等400㎡80%特定同族会社事業用宅地等
上と同じ使い方だが、取得者が法人の役員でないなど上の要件を満たさない貸付事業用宅地等200㎡50%貸付事業用宅地等
一定の法人に貸し付け、その法人の貸付事業に使用貸付事業用宅地等200㎡50%同上
被相続人等の貸付事業(アパート・貸家・舗装した貸駐車場など)貸付事業用宅地等200㎡50%同上

「一定の法人」は、相続開始の直前に、被相続人とその親族など(被相続人と特別の関係がある者を含みます)が発行済株式等の50%超を持っていた法人です。申告期限に清算中の法人は除きます。

ここでいう「貸付事業」には、不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業のほか、事業と呼ぶほどの規模でなくても、相当の対価を得て継続的に行う貸付け(準事業)も含まれます。そのため、アパートや貸駐車場の敷地は、規模にかかわらず80%の特定事業用宅地等にはならず、50%の貸付事業用宅地等として判定します。

区分をどう組み合わせるかにもルールがあります。貸付事業用宅地等を選ばない場合は、特定居住用宅地等の330㎡と、特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等の合計400㎡を別枠で使えます。両方を合わせて最大730㎡です。貸付事業用宅地等を少しでも選ぶ場合は、次の算式で全体を200㎡の枠に換算して判定します(限度面積の調整と有利な選び方)。

A×200/400+B×200/330+C≦200㎡

A=特定事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等の面積の合計、B=特定居住用宅地等の面積の合計、C=貸付事業用宅地等の面積の合計

よくある誤り:限度面積は「取得者ごと」ではありません

限度面積は、被相続人1人について、特例を受ける全員の面積を合計して判定します。自宅の土地を母と長男が分けて相続しても、特定居住用宅地等の限度は2人合わせて330㎡です。1人ずつ330㎡を使えるわけではありません。

また、選んだ宅地等の合計が限度面積を超えていると、選んだ宅地等の全部について特例を受けられません。国税庁の記載例では、限度を超えないよう、面積の0.01㎡未満の端数を切り捨てて計算しています。

対象になる土地・ならない土地

特例の対象は、建物や構築物の敷地に使われている土地と、その上の借地権などの権利です。同じ駐車場でも、アスファルト舗装などの構築物があれば対象になり得ますが、何もない青空駐車場は対象になりません。土地の取得方法や、取得する人にも条件があります。

対象になり得る土地

  • 被相続人等の自宅の敷地(借地権を含む)
  • 店舗・事務所・工場など、事業に使う建物の敷地
  • アパート・貸家の敷地、舗装などの構築物がある貸駐車場
  • 相続または遺贈(死因贈与を含む)で個人が取得した土地

対象にならない土地

  • 建物も構築物もない青空駐車場や空き地
  • 農地・採草放牧地、販売用の土地などの棚卸資産
  • 生前贈与(相続開始前の贈与として相続税に加算されるものを含む)や相続時精算課税で取得した土地
  • 申告期限までに分割されていない土地(3年以内に分割した場合などの救済あり)
  • 個人版事業承継税制の対象になる被相続人から取得した特定事業用宅地等

生前に贈与した土地は、相続税の計算に加算される場合でも、特例を使えません。特例の対象は、相続または遺贈で取得した土地に限られるからです。相続時精算課税で贈与した土地も同じです。一方、死因贈与(贈与する人の死亡によって効力が生じる贈与)は遺贈と同じ扱いで、対象になります。

特例を受けられるのは個人だけです。相続税法で個人とみなされる人格のない社団なども、遺贈で土地を取得しても特例を使えません。

個人版事業承継税制(個人の事業用資産の納税猶予)とは、特定事業用宅地等について選択の関係にあります。後継者がその被相続人からの贈与・相続について個人版事業承継税制の適用を受ける場合、その被相続人から取得した特定事業用宅地等には、誰が取得しても特例を使えません。個人版事業承継税制は、2028年(令和10年)12月31日までの贈与・相続等が対象です期限あり(特定事業用宅地等)。

特例を受けるまでの流れ

特例は、要件を満たしていても、手続をしなければ使えません。おおまかな流れは次のとおりです。

  1. 土地ごとに使い方を確認する相続開始の直前に、誰が何に使っていた土地かを確かめます。1つの土地に住まいと貸室があるような場合は、部分ごとに区分を判定します。
  2. 取得する人と要件を確認する区分ごとに、取得者の要件(配偶者か、同居していたか、事業を引き継ぐかなど)と、申告期限まで続けなければならない事柄を確認します。
  3. 申告期限までに遺産を分割する遺言または遺産分割協議で、その土地を誰が取得するかを申告期限までに確定させます。
  4. 特例を使う土地を選び、全員が同意する特例の対象になり得る土地を取得した人が2人以上いる場合は、どの土地に特例を使うかについて全員の同意が必要です。
  5. 相続税の申告書を提出する相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に、計算明細書などを添えて申告します。特例を使って税額が0円になる場合も、申告が必要です。

申告期限までに分割できないときの手続や、申告書に添付する書類は申告手続・分割要件・添付書類で説明します。そもそも申告が必要かどうかは基礎控除と申告が必要な人で確認できます。

改正の経緯と2026年10月時点の状況

特例の要件は、これまで何度も改正されてきました。どのルールが適用されるかは相続が開始した時期で決まるため、過去の相続を確認するときは、その時点の要件で判定します。

小規模宅地等の特例の主な改正(適用が始まった時期)
適用の開始主な改正内容
2010年(平成22年)4月1日以後の相続等申告期限までの居住・事業・保有の継続要件を導入。1つの宅地等を部分ごとに判定する方法に変更。被相続人の居住用の宅地等が2つ以上ある場合は、主として住んでいた1つに限定。
2014年(平成26年)1月1日以後の相続等老人ホーム等に入所していた場合の取扱いを新設(要介護認定等が条件)。二世帯住宅など一棟の建物を、区分所有の登記があるかどうかで判定する仕組みも、同じ平成25年度改正で設けられました。
2015年(平成27年)1月1日以後の相続等特定居住用宅地等の限度面積を240㎡から330㎡に拡大。特定事業用等と特定居住用を併用するときの上限を400㎡から730㎡に拡大(完全併用)。
2018年(平成30年)4月1日以後の相続等家なき子の要件を厳しく改正。相続開始前3年以内に貸付けを始めた宅地等を貸付事業用から原則除外。老人ホーム等の範囲に介護医療院を追加。経過措置は2020年(令和2年)3月31日(家なき子)と2021年(令和3年)3月31日(貸付け)で終了。
2019年(平成31年)1月1日以後の相続等個人版事業承継税制の創設に伴い、特定事業用宅地等との併用を不可に。
2019年4月1日以後の相続等相続開始前3年以内に事業に使い始めた宅地等を特定事業用から原則除外(一定規模以上の事業は例外)。経過措置は2022年(令和4年)3月31日で終了。
2020年4月1日以後の相続等配偶者居住権が設定された建物の敷地について、特例を受ける面積を価額の割合で按分するルールを整備。
令和8年度税制改正特例の本体(租税特別措置法69条の4)の改正なし。

2026年10月時点の状況

  • 令和8年度税制改正(改正法は2026年3月31日公布)では、特例の本体は改正されていません。限度面積・減額割合・要件は従来どおりです施行中。
  • 老人ホーム入所の取扱いを受けるときは、介護保険の被保険者証の写しなどを添付します。2026年4月1日以後に提出する申告書では、写しの保険者番号と被保険者番号を復元できないように塗りつぶします施行中(老人ホームに入所していた場合)。
  • 個人版事業承継税制の個人事業承継計画の提出期限は、2028年9月30日まで延長されました。特定事業用宅地等と併用できないルールは変わりません。
  • 国税庁は2026年9月18日、貸付用不動産と不動産小口化商品の評価を見直す通達案を公表しました通達案。2027年(令和9年)1月1日以後の相続・贈与から適用する予定で、2026年10月17日時点では意見公募中です(通達は未制定)。これは財産の評価方法の見直しで、特例の要件・限度面積・減額割合を変えるものではありません。通達案の対象になる貸付用不動産の評価額と特例の減額との関係は、最終的な通達と国税庁の解説で確認する必要があります(貸付用不動産の評価見直し)。

計算例:特例の効果を数字で確かめる

自宅の土地に特例を使うと、課税価格がどれだけ変わるかを確認します。この例では、特例を使うことで相続税がかからなくなりますが、申告は必要になります。

計算例:自宅の土地300㎡(評価額5,000万円)を同居の長男が相続した場合

前提:父が2026年に亡くなりました。相続人は母と長男の2人です。遺産は自宅の土地300㎡(評価額5,000万円)と預金3,000万円で、ほかの財産・債務・葬式費用・生前贈与はないものとします。

父と同居していた長男が自宅の土地を相続し、申告期限まで住み続け、所有も続けます。預金は母が相続します。

特例の有無による課税価格の違い
項目特例なし特例あり
自宅の土地(長男)5,000万円1,000万円
預金(母)3,000万円3,000万円
課税価格の合計8,000万円4,000万円
基礎控除(3,000万円+600万円×2人)4,200万円4,200万円
基礎控除を超える金額3,800万円0円

減額できる面積:300㎡(330㎡以下なので全部)
減額額:5,000万円×80%=4,000万円
課税価格に入れる額:5,000万円−4,000万円=1,000万円
課税価格の合計:1,000万円+3,000万円=4,000万円(基礎控除4,200万円以下)

各人の課税価格は1,000円未満を切り捨てますが、この例では端数は出ません。長男が申告期限前にこの土地を売った場合は特例を使えず、「特例なし」の列になります(配偶者と同居親族)。

答え:特例により課税価格の合計は8,000万円から4,000万円に下がり、基礎控除4,200万円以下となるため、相続税はかかりません。ただし、特例を使った結果として基礎控除以下になる場合も、申告書を提出しなければ特例は使えません。

他の税金とのつながり

専門家向け:根拠と実務論点

根拠法令・通達

  • 特例の本体は租税特別措置法69条の4です。第1項が対象と減額割合を定めています(特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等・特定居住用宅地等は価額の20/100、貸付事業用宅地等は50/100を課税価格に算入)。第2項が限度面積、第3項が各区分の定義(第1号 特定事業用宅地等、第2号 特定居住用宅地等、第3号 特定同族会社事業用宅地等、第4号 貸付事業用宅地等)です。施行令は措令40条の2、施行規則は措規23条の2、解釈通達は措通69の4-1以下です。
  • 用語の関係:特例対象宅地等のうち取得者全員の同意で選んだものが選択特例対象宅地等で、そのうち限度面積要件を満たす部分が小規模宅地等です(措法69条の4第1項)。
  • 貸付事業の範囲は、不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業・準事業です(措令40条の2第1項・第7項、措通69の4-13)。特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等の「事業」からは、これらが除かれます。
  • 限度面積は、貸付事業用宅地等を選択しない場合は特定事業用等宅地等400㎡以下かつ特定居住用宅地等330㎡以下です(2015年1月1日以後の相続から完全併用)。選択する場合はA×200/400+B×200/330+C≦200㎡です(措法69条の4第2項)。A・B・Cは、被相続人ごとに全取得者分を合算します。選択特例対象宅地等が限度面積要件を満たさないと全部が不適用になりますが、期限後申告・修正申告で要件を満たせば適用できます。措通のウェブ版には、算式画像の代替テキストが「≧400」と読める箇所がありますが、条文・タックスアンサー・申告のしかたはいずれも「200㎡以下」です。
  • 贈与(死因贈与を除く)で取得した宅地等は、相続税法19条の加算や相続時精算課税で課税価格に含まれても適用されません(措通69の4-1、質疑応答事例「相続開始の年に被相続人から贈与を受けた宅地」)。相続税法66条で個人とみなされる人格のない社団等も適用できません(質疑応答事例)。
  • 信託に関する権利:信託財産に属する宅地等で、相続開始の直前に被相続人等の事業用・居住用だったものも対象に含まれます(措通69の4-1の2)。
  • 農地・採草放牧地、棚卸資産及びこれに準ずる資産は対象外です。耕作用の温室等の建物の敷地や、暗きょ等の構築物の敷地は農地等に当たり、対象外です。農機具の収納・農作業用の建物の敷地は、他の要件を満たせば事業用宅地等になり得ます。
  • 個人版事業承継税制との関係:被相続人が特例事業受贈者に係る贈与者(措法70条の6の8)又は特例事業相続人等に係る被相続人(措法70条の6の10)に当たる場合、その被相続人から取得した特定事業用宅地等は、取得者を問わず適用されません。逆に、特定事業用宅地等に特例を受ける者がいれば、取得者全員が個人版の相続税の納税猶予を受けられません(措通69の4-26の2)。他の区分とは併用できますが、猶予対象宅地等の限度面積の調整があります(申告手続・分割要件・添付書類)。法人版事業承継税制との併用制限規定はありません。

実務論点

  • 減額の基礎は、評価通達による評価額(画地調整・貸家建付地等の適用後)です。国税庁の申告書記載例(共同住宅の一部が空室)も、貸家建付地評価後の価額に50%を乗じています。居住用の区分所有財産(マンション)は、区分所有補正率を適用した後の価額を自用地としての価額とみなし、そのうえで特例を適用します。
  • 過去の相続は、相続開始時の法令で判定します。国税庁の古い記載例・解説(2010年当時のものなど)には、特定居住用240㎡・併用400㎡の旧限度面積で計算しているものがあります。数値例は、2015年以後の制度に基づく資料(2021年4月1日付の資産課税課情報第9号など)から引用します。
  • 令和8年度改正では、措法69条の4のほか、措令40条の2・措規23条の2も改正されていません(財務省公表の新旧対照表の相続税法の特例部分による)。
  • 貸付用不動産の評価に関する通達案は、評価基本通達の土地・家屋・構築物の章とマンション通達の定めにかかわらず評価する構成とされています。措法69条の4は法律の規定で、通達案による改正はありません。ただし、対象物件の評価額と減額計算の関係は、通達の制定と国税庁の解説を待って確認する必要があります。
第2章

特定居住用宅地等:配偶者と同居親族

被相続人が住んでいた自宅の土地は、特定居住用宅地等として330㎡まで評価額を80%減額できます。ただし、誰が取得するかで要件が大きく変わり、同居していた子でも申告期限前に売ると特例を使えなくなります。

この章の結論

  • 配偶者が取得する場合は、住み続けることも持ち続けることも求められません。取得してすぐに売っても、特例を使えます。
  • 同居していた親族が取得する場合は、相続開始の直前から申告期限(相続の開始を知った日の翌日から10か月以内)まで住み続け、申告期限まで所有を続けることが条件です。配偶者でも同居親族でもない親族は、家なき子の要件を満たす場合に限り対象になります。
  • 「住んでいた」かどうかは、住民票ではなく生活の拠点の実態で判定します。入院で空き家になっていた自宅も、退院すれば住める状態なら居住用です。同居していた子が転勤で単身赴任しても、家族が住み続けていれば住み続けているものとされます。

特定居住用宅地等とは

特定居住用宅地等は、相続開始の直前に被相続人等の住まいに使われていた宅地等のうち、取得者ごとの要件を満たすものです。限度面積は330㎡、減額割合は80%です。たとえば評価額4,000万円の自宅の土地(330㎡以下)なら、3,200万円が減額され、800万円が課税価格に入ります。

土地が330㎡を超える場合は、330㎡分だけが減額の対象です。たとえば400㎡で評価額8,000万円の自宅の土地なら、減額は8,000万円×330/400×80%=5,280万円です。課税価格には、8,000万円−5,280万円=2,720万円が入ります。

対象になる住まいには2種類あります。1つは被相続人自身が住んでいた家の敷地で、この章で扱います。もう1つは、被相続人と生計を一にしていた親族が住んでいた家の敷地です(生計を一にする親族・二世帯住宅)。

被相続人の住まいの土地が2か所以上ある場合、特例の対象は、主として住んでいた1か所に限られます。別荘のように主に保養に使う建物の敷地は、そもそも住まいの土地に当たりません。

取得する人は、親族であれば相続人でなくてもかまいません。たとえば遺言で孫に自宅の土地を遺贈した場合も、孫が同居親族などの要件を満たせば対象になります。

取得する人ごとの要件

被相続人の自宅の土地に特例を使えるかは、次の順番で確認すると整理しやすくなります。

  1. 被相続人の住まいだったか相続開始の直前に、被相続人がその家に生活の拠点を置いていたかを確認します。住まいが2か所以上あれば、主として住んでいた1か所だけが対象です。
  2. 取得するのは誰か配偶者なら、ほかの要件はありません。同居していた親族なら、次の確認に進みます。別居の親族なら、家なき子の要件を確認します。
  3. 申告期限まで続けられるか同居親族は、申告期限まで住み続け、土地を持ち続ける必要があります。
  4. 手続を済ませる申告期限までに遺産を分割し、特例を使う土地の選択について取得者全員が同意したうえで、申告書を提出します。

取得する人ごとの要件をまとめると、次のとおりです。

被相続人の自宅の土地:取得者ごとの要件
取得する人住み続ける要件持ち続ける要件そのほかの条件
配偶者なしなしなし
同居していた親族相続開始の直前から申告期限まで相続開始の時から申告期限まで被相続人と同じ建物に住んでいたこと(二世帯住宅は登記によって範囲が変わります)
家なき子(別居の親族)なし相続開始の時から申告期限まで被相続人に配偶者も同居の相続人もいないこと、相続開始前3年以内に自分や親族などの持ち家に住んでいないことなど(家なき子特例)
上記以外の親族(別居で持ち家に住む子など)――特定居住用宅地等の対象になりません

申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。同居親族の要件は「申告期限まで」なので、申告期限を過ぎた後に売ったり引っ越したりしても、特例の適用には影響しません。

配偶者には住み続ける・持ち続ける要件はありませんが、手続の要件は同じです。申告期限までに遺言や遺産分割で配偶者が取得することが決まっていて、申告書を提出しなければ、特例は使えません(申告手続・分割要件・添付書類)。

同居親族とは、相続開始の直前に、被相続人と同じ家で一緒に暮らしていた親族です。一棟の建物では、範囲に注意が必要です。区分所有の登記がない建物なら、被相続人の居住部分か、ほかの親族の居住部分に住んでいた親族が当たります。区分所有の登記がある建物では、被相続人が住んでいた区分に住んでいた親族だけが当たります(二世帯住宅の扱い)。

「住んでいた」かどうかの判定

被相続人の住まいだったかどうかは、相続開始の直前に、その家に生活の拠点を置いていたかで判定します。日常生活の状況、その家に入居した目的、建物の構造や設備、ほかに生活の拠点となる建物があるかどうかなどを総合して判断します。

次のような建物は、生活の拠点とはいえないとされています。

  • 建て替え工事の期間中だけの仮住まい
  • ほかに生活の拠点がありながら、特例を受けるためなど一時的な目的で入居した建物
  • 主に趣味・娯楽・保養に使う建物(別荘など)

入院で自宅が空き家になっていた場合は、退院すれば住める状態で、ほかの用途に使われていなければ、空き家の期間の長さにかかわらず居住用として扱われます。病院での生活は、一時的な滞在と考えられているためです。老人ホームなどに入所していた場合は、要介護認定などの別の要件で判定します(老人ホームに入所していた場合)。

相続開始の直前に被相続人が自宅にいなかった場合の扱い
状況自宅の土地の扱い
入院していた退院すれば住める状態で、ほかの用途に使っていなければ居住用です(空き家の期間は問いません)。
老人ホームなどに入所していた相続開始の直前に要介護認定・要支援認定などを受けていれば居住用です。入所後に自宅を貸したり、事業に使ったり、新たにほかの人が住み始めたりした部分は対象外です。
子の家などに移り、そこで生活していた生活の拠点が移っていれば、元の自宅は対象外です。
建て替え中で仮住まいをしていた仮住まいは生活の拠点に当たりません。建て替え中の自宅の敷地は、建築中の取扱いに準じて判定します(下の「自宅の敷地のどこまでが対象か」を参照)。

反対に、生活の拠点をほかへ移していれば、元の自宅は対象になりません。国税不服審判所の裁決に、退院後に長女の家で日常生活を送っていた被相続人の例があります。所得税でも長女の夫の扶養親族とされており、旧宅は住まいの土地に当たらないとされました(2002年(平成14年)12月5日裁決)。複数の住まいを持っていても、特例は相続開始の直前に実際に住んでいた部分に限るとした裁決もあります(2006年(平成18年)6月6日裁決)。

よくある誤り:住民票だけで「居住」や「同居」を判断する

居住や同居の判定は、生活の拠点の実態で行います。国税庁の質疑応答事例が挙げる判定の要素に、住民票の所在は含まれていません。住民票を移していても実際に住んでいなければ居住とはいえず、住民票を移していなくても、実際に生活の拠点があれば居住と判定され得ます。

なお申告の際は、同居親族が取得した場合、その人が住んでいることを明らかにする書類が必要です(その人がマイナンバーを持っていれば不要)。

自宅の敷地のどこまでが対象か

特例の対象は、被相続人等が住んでいた家の敷地です。家と土地の持ち主の組み合わせによって、次のように扱われます。

家と土地の持ち主の組み合わせと居住用の判定
土地・家の持ち主と住んでいた人居住用の宅地等になるか
被相続人の土地に被相続人の家があり、被相続人が住んでいたなります。
被相続人の土地と家に、被相続人と生計を一にする親族が住んでいたその親族が無償で住んでいた場合に限りなります(家賃を払っていれば、被相続人の貸付けとして判定します)。
被相続人の土地に親族名義の家があり、被相続人等が住んでいたその親族が土地を被相続人から無償で借り、被相続人等も家を無償で借りていた場合に限りなります。

店舗併用住宅や、一部を貸室にしている自宅では、住まいの部分だけが居住用です。店舗の部分は事業用、貸室の部分は貸付事業用として、それぞれ別に判定します。区分所有の登記がない一棟の建物では、被相続人の親族が住んでいた部分の敷地も、被相続人の住まいの敷地に含まれます。

自宅の建て替え中に相続が始まった場合は、事業用の建物の建築中の取扱い(速やかに使うことが確実であれば対象とする扱い)に準じて判定します。ただし、相続開始の直前に、被相続人等が自分の住まいとして使う建物をほかに持っていなかった場合に限ります。

同居親族の「住み続ける」「持ち続ける」

同居親族は、相続開始の直前から申告期限まで引き続きその家に住み、相続開始の時から申告期限まで土地を持ち続ける必要があります。どちらかが欠けると、その人が取得した部分には特例を使えません。たとえば、申告期限前に次のことをすると要件を満たさなくなります。

  • 土地を売る(持ち続ける要件を満たしません)
  • 引っ越して、その家に住まなくなる(住み続ける要件を満たしません)
  • 家を人に貸して、自分は別の場所に住む(住み続ける要件を満たしません)

転勤の場合には、配慮された扱いがあります。同居していた相続人が、申告期限前に転勤(海外勤務や単身赴任)になった場合です。配偶者や子が引き続き住んでいて、転勤という事情がなくなれば家族と一緒に暮らす家であれば、その相続人は住み続けているものとされます。配偶者や子も申告期限前に引っ越してしまった場合は、認められません。

同居親族が取得するときのチェックリスト

  • 相続開始の直前に、被相続人と同じ家(区分所有登記がある建物では同じ区分)に住んでいた
  • 遺言または遺産分割協議で、申告期限までに自分がその土地を取得することが決まっている
  • 申告期限まで、その家に住み続ける予定(転勤の場合は、家族が住み続ける予定)
  • 申告期限まで、その土地を売ったり贈与したりしない
  • 特例の対象になり得る土地を取得した人全員が、特例を使う土地の選択に同意している
  • 住んでいることを明らかにする書類を用意した(マイナンバーを持っていれば不要)

計算例:同居の長男が申告期限前に売った場合

計算例:自宅の土地250㎡(評価額4,000万円)を誰が取得し、いつ売るか

前提:父が亡くなりました。父の自宅には、母と長男が一緒に住んでいました。自宅の土地は250㎡で、評価額は4,000万円です(説明のため1㎡当たり16万円とします)。取得する人と、その後の行動が異なる3つのケースを比べます。

取得者と行動による特例の可否と課税価格に入れる額
ケース特例減額額課税価格に入れる額
A:長男が取得し、申告期限まで住み続け、持ち続けた使える3,200万円800万円
B:長男が取得し、相続開始から8か月後(申告期限前)に売った使えない0円4,000万円
C:母(配偶者)が取得し、申告期限前に売った使える3,200万円800万円

評価額:16万円×250㎡=4,000万円(250㎡は限度面積330㎡以下)
減額額:4,000万円×80%=3,200万円
課税価格に入れる額:4,000万円−3,200万円=800万円

答え:長男が申告期限前に売ると、課税価格に入る額が800万円から4,000万円に増え、3,200万円の差が出ます。母が取得した場合は、すぐに売っても特例を使えます。売る予定があるときは、誰が取得するかと、売る時期が申告期限の前か後かを、遺産分割の前に確認しておくことが大切です。

遺産を売って代金を分ける換価分割でも、申告期限前に売れば、同居親族の取得分はケースBと同じく特例を使えません。売却代金の分け方と譲渡所得の関係は換価分割・代償分割と譲渡所得で説明しています。

実務のコツ:二次相続での使い方も考える

配偶者が自宅を取得すれば、要件なしで特例を使えます。ただし、その配偶者が亡くなったとき(二次相続)は、自宅を取得する子が同居親族か家なき子に当たらなければ、原則として特例を使えません。一次相続と二次相続で使える人が違う点を、分け方を決めるときに考えておきます(二次相続まで考えた遺産分割)。

母と長男が自宅の土地を2分の1ずつ相続しました。要件はどうなりますか?

要件は取得した人ごとに判定します。母の持分には要件がありません。長男の持分は、長男が申告期限まで住み続け、持ち続けた場合に限り特例の対象になります。限度面積の330㎡は、2人の分を合計して判定します。

同居していた孫に、遺言で自宅の土地を遺贈しました。特例は使えますか?

使える可能性があります。取得者は親族であればよく、相続人でなくてもかまいません。孫が同居親族として、申告期限まで住み続け、持ち続ければ対象になります。

申告期限が過ぎてから自宅を売ると、特例は取り消されますか?

取り消されません。同居親族の要件は「申告期限まで」住み続け、持ち続けることです。申告期限の後に売ったり引っ越したりしても、特例の適用には影響しません。売ったときの所得税は、譲渡所得の特例とあわせて検討します(相続税の取得費加算の特例)。

他の税金とのつながり

専門家向け:根拠と実務論点

根拠法令・通達

  • 特定居住用宅地等は、措法69条の4第3項第2号が定めています。取得者が配偶者なら取得者要件はありません。同居親族は同号イ(相続開始の直前から申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ相続開始時から申告期限まで保有)、いわゆる家なき子は同号ロ、生計一親族の居住用宅地等は同号ハです。
  • 「一棟の建物に居住していた親族」の範囲は、区分所有建物である旨の登記がある建物では被相続人の居住部分に居住していた親族、それ以外の建物では被相続人又は親族の居住部分に居住していた親族です(措令40条の2。措通69の4-7の4は同条第4項・第13項を引用)。
  • 居住用宅地等の範囲(措通69の4-7):被相続人所有の家屋に生計一親族が住んでいた場合は、その親族が無償で借りていたものに限られます。親族所有の家屋の場合は、その親族が敷地を被相続人から無償で借り、被相続人等が家屋を無償で借りていた場合に限られます。一棟の建物の敷地のうち、親族の居住部分も含みます(区分所有建物を除く)。
  • 居住用建物の建築中に相続が開始した場合は、事業用建物の建築中の取扱い(措通69の4-5)に準じます。ただし、相続開始直前に被相続人等が自己の居住用建物を所有していなかった場合に限られます(措通69の4-7・69の4-8)。
  • 被相続人の居住用宅地等が2以上ある場合は、主として居住の用に供していた一の宅地等に限られます(2010年(平成22年)4月1日以後の相続。措令40条の2)。
  • 居住の判定は、生活の拠点を置いていたかにより、日常生活の状況、入居目的、建物の構造・設備、生活の拠点となるべき他の建物の有無等を総合勘案して行います(質疑応答事例「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の判定」)。入院により空家となっていた建物は、病院が一時的な滞在であることから、退院すれば居住できる状態で他の用途に供されていなければ、空家期間の長短を問わず居住用とされます(質疑応答事例)。
  • 居住継続の意義:転勤(海外・単身赴任)の場合も、配偶者・子が引き続き居住し、転勤という特殊事情が解消すれば起居を共にすると認められる家屋であれば、居住継続とされます(質疑応答事例2件)。配偶者・子も申告期限前に退去した場合は認められません。
  • 裁決:2002年12月5日裁決は、退院後は長女宅で日常生活を送り、所得税で長女の夫の扶養親族とされていた被相続人の旧宅を居住用でないとしました。2006年6月6日裁決は、複数の居住用宅地を有していても、特例は相続開始直前に現に居住していた部分に限るとしました。

実務論点

  • 同居・居住の判定で、住民票の所在は質疑応答事例の判定要素に挙がっていません。一方、同居親族・生計一親族が取得した場合は、添付書類として「自己の居住の用に供していることを明らかにする書類」が求められます(特例を受ける人がマイナンバーを有する場合は不要。措規23条の2)。
  • 申告期限は相続税法27条の期限です。継続要件は申告期限までなので、期限後の譲渡・転居は要件に影響しません。要件は取得者ごと・取得部分ごとに判定するため、共有取得では持分ごとに確認します。
  • 配偶者居住権の目的となっている建物の敷地等は、宅地等の面積に、敷地の価額(又は敷地利用権の価額)がこれらの価額の合計に占める割合を乗じた面積を、特例の面積とみなします(措令40条の2第6項、2020年(令和2年)4月1日以後の相続。配偶者居住権の評価)。
  • 申告期限までの居住・保有の継続要件は、2010年4月1日以後の相続から適用されています。それより前の相続は従前の例によります。
  • 老人ホーム入所の場合に、同居親族をいつの時点で判定するか(入所の直前か、相続開始の直前か)は、措通・タックスアンサー・申告のしかたに明文がありません(老人ホームに入所していた場合)。
第3章

家なき子特例

被相続人と別に暮らしていた親族でも、持ち家に住んでいないなどの条件を満たせば、被相続人の自宅の土地に330㎡まで80%の減額を使えます。これが、いわゆる「家なき子特例」です。2018年(平成30年)の改正で要件が厳しくなったため、一つずつ確認することが欠かせません。

この章の結論

  • 使えるのは、被相続人に配偶者がおらず、被相続人と同居していた相続人もいない場合だけです。配偶者が健在の場合や、同居していた兄弟がいる場合(その兄弟が相続を放棄しても)は、別居の子は対象になりません。
  • 取得する本人が、相続開始前3年以内に、自分・配偶者・3親等内の親族・自分たちの同族会社などが所有する国内の家に住んだことがないことが必要です。いま住んでいる家を過去に所有したことがないことも条件です。夫や妻の名義の家や、親などの3親等内の親族の名義の家(相続開始の直前に被相続人が住んでいた家を除く)に住んでいる人は対象外です。
  • 申告期限まで住む必要はありませんが、土地は持ち続ける必要があります。日本国籍を持たない制限納税義務者は対象外です。

家なき子特例とは:使える場面

家なき子特例は、特定居住用宅地等(330㎡まで80%減額)のうち、配偶者でも同居親族でもない親族が、被相続人の自宅の土地を取得したときの扱いです。法律に「家なき子」という言葉はありません。持ち家に住んでいない親族が対象になることから、こう呼ばれています。

典型的なのは、一人暮らしだった親が亡くなり、賃貸住宅や、同族関係のない勤務先の社宅に住む子が、実家の土地を相続する場合です。評価額3,000万円の実家の土地(330㎡以下)なら、2,400万円が減額され、課税価格に入るのは600万円になります。

取得する人は、親族であれば相続人でなくてもかまいません。遺言で孫が実家の土地を取得する場合も、要件を満たせば対象になります。ただし、後で見る「同居していた相続人がいないこと」は、被相続人の相続人を基準に判定します。

被相続人に配偶者や、同居していた相続人がいる場合は、家なき子特例は使えません。その場合は、配偶者や同居親族が取得したときの要件で判定します(配偶者と同居親族)。家なき子特例は、そうした人がいない場合に、別居の親族も特例を使えるようにする仕組みです。

6つの要件

家なき子特例を使うには、次の6つの要件をすべて満たす必要があります。2018年4月1日以後の相続から、この要件が適用されています施行中。

家なき子特例の要件(2018年4月1日以後の相続)
要件内容判定のポイント
要件1:国籍と納税義務制限納税義務者(相続税が国内にある財産だけにかかる人)のうち、日本国籍を持たない人でないこと日本国籍があれば、海外に住んでいても対象になり得ます(納税義務者)
要件2:配偶者がいない被相続人に配偶者がいないこと配偶者がいれば、配偶者が土地を取得しなくても使えません
要件3:同居の相続人がいない相続開始の直前に、被相続人の住まいに一緒に住んでいた相続人がいないこと相続を放棄した人も、相続人として数えます
要件4:3年以内に持ち家に住んでいない相続開始前3年以内に、国内にある「本人」「本人の配偶者」「本人の3親等内の親族」「本人と特別の関係がある法人」のいずれかが所有する家に住んだことがないこと相続開始の直前に被相続人が住んでいた家は除きます。親族や法人に当たるかは、相続開始の直前の関係で判定します
要件5:いまの住まいを所有したことがない相続開始の時に住んでいる家を、それまでに一度も所有したことがないこと自宅を売った後も、借りて同じ家に住み続けている人は対象外です
要件6:申告期限まで持ち続ける相続開始の時から申告期限まで、その土地を持ち続けること住む必要はありません

要件2と要件3は、被相続人の家族の状況で決まります。要件1・4・5・6は、土地を取得する本人ごとに判定します。兄弟の1人が要件を満たしても、別の兄弟が満たすとは限りません。

要件の読み方:3年以内・3親等内の親族・特別の関係がある法人

要件3:同居の相続人がいない

相続開始の直前に、被相続人の住まいに相続人が一緒に住んでいたら、別居の親族は家なき子特例を使えません。同居していた相続人が相続を放棄しても、放棄がなかったものとして判定するため、結論は変わりません。

要件4:「3年以内」と「国内の家」

要件4は、相続開始前3年以内の住まいを見ます。3年より前に持ち家に住んでいたことは、要件4では問題になりません(要件5は別に確認が必要です)。対象は国内にある家に限られるため、海外の家に住んでいた期間は要件4では問われません。また、相続開始の直前に被相続人が住んでいた家に住んでいた期間も除かれます。

要件4:「3親等内の親族」

3親等内の親族には、本人の親・子・祖父母・孫・兄弟姉妹・おじ・おば・甥・姪などの血族のほか、配偶者の親や兄弟姉妹などの姻族も含まれます。親や祖父母、配偶者の親が所有する家に住んでいた人は、要件4を満たしません(相続開始の直前に被相続人が住んでいた家を除きます)。被相続人が所有する家でも、相続開始の直前に被相続人が住んでいなかった別の家に住んでいた場合は対象外です。配偶者の名義の家も同じく対象外です。

要件4:「特別の関係がある法人」

次のような法人が所有する家(社宅など)に住んでいた場合も、要件4を満たしません。

  • 本人と、本人の配偶者・3親等内の親族など(以下「本人等」)が、発行済株式等(自己株式を除く)の過半数を持つ法人
  • 本人等と上の法人が、合わせて過半数を持つ法人
  • 本人等と上の2つの法人が、合わせて過半数を持つ法人
  • 本人等が理事・監事・評議員などになっている、持分の定めのない法人

同族関係のない勤務先が所有する社宅であれば、要件4でいう家には当たりません。

要件5:いまの住まいを所有したことがない

相続開始の時に住んでいる家を、それまでに一度でも所有していたら対象外です。自宅を売った後も、買主から借りて同じ家に住み続けている場合は、この要件を満たしません。要件の文言上、要件4と違って、要件5は国内の家に限られていない点にも注意が必要です。

事例で確認:使える人・使えない人

被相続人は父で、母は先に亡くなっており、父は一人暮らしだったとします(要件2・3は満たします)。取得者は日本国籍があり、実家の土地を申告期限まで持ち続けるものとします(要件1・6も満たします)。

家なき子特例の判定例
取得者の状況判定理由
長男:10年前から賃貸マンションに住み、持ち家を所有したことがない使える要件4・5も満たす
長女:夫の名義のマンションに住んでいる使えない配偶者が所有する家に住んでいる(要件4)
次男:妻の父が所有する家に住んでいる使えない妻の父は3親等内の親族(姻族)に当たる(要件4)
次女:2年前まで自分の持ち家に住み、売却後は賃貸住まい使えない3年以内に自分の持ち家に住んでいた(要件4)
三男:自宅を売った後も、借りて同じ家に住み続けている使えないいま住んでいる家を過去に所有していた(要件5)
孫(遺贈で取得):自分の父が所有する家に住んでいる使えない親は3親等内の親族に当たる(要件4)
三女:自分と夫で株式の過半数を持つ会社の社宅に住んでいる使えない特別の関係がある法人が所有する家(要件4)
四男:同族関係のない勤務先の社宅に住んでいる使える要件4の対象になる家に当たらない(要件5も満たす)
五男:海外に赴任し、3年以上前から海外の賃貸住宅に住んでいる使える日本国籍があり、要件4・5も満たす

前提が違う場合にも注意が必要です。父の配偶者(母)が健在なら、母が別居でも要件2を満たさず、誰も家なき子特例を使えません。父と同居していた兄弟がいる場合も、要件3を満たさないため使えません。

計算例:実家の土地を誰が取得するかで課税価格が変わる

前提:一人暮らしの父が亡くなりました。母は先に亡くなっています。相続人は長男と長女の2人です。実家の土地は200㎡で、評価額は3,000万円です。

長男は10年前から賃貸マンションに住み、持ち家を所有したことがありません。長女は夫の名義のマンションに住んでいます。2人とも日本国籍があり、取得した人は申告期限まで土地を持ち続けます。

取得者による家なき子特例の可否と課税価格に入れる額
取得者家なき子特例減額額課税価格に入れる額
長男が単独で取得使える2,400万円600万円
長女が単独で取得使えない(要件4)0円3,000万円
2人で2分の1ずつ共有長男の持分だけ使える1,200万円1,800万円

長男が単独で取得:3,000万円×80%=2,400万円(200㎡は330㎡以下)、3,000万円−2,400万円=600万円
2分の1ずつ共有:3,000万円×1/2×80%=1,200万円、3,000万円−1,200万円=1,800万円

答え:長男が取得すれば課税価格に入る額は600万円、長女が取得すれば3,000万円で、2,400万円の差が出ます。家なき子特例を使えるかどうかは取得者ごとに決まるため、遺産分割で誰が実家の土地を取得するかを決める前に確認します。

よくある誤り

  • 夫や妻の名義の家に住んでいる:配偶者が所有する家に住んでいると、本人に持ち家がなくても要件4を満たしません。
  • 「住まなくてよい」を「売ってもよい」と取り違える:住み続ける要件はありませんが、申告期限まで土地を持ち続ける要件があります。申告期限前に売ると、特例を使えません。
  • 改正前の要件で判断する:親の持ち家に住む孫や、親族の会社が所有する家に住む人も、2018年3月31日以前の相続なら対象になり得ましたが、いまは対象外です。

2018年の改正で厳しくなった点

家なき子特例の要件は、2018年4月1日以後の相続から厳しくなりました。改正前と現行の違いは次のとおりです。

改正前(2018年3月31日以前の相続)

  • 相続開始前3年以内に「本人または本人の配偶者」が所有する家に住んだことがないこと
  • いま住んでいる家を過去に所有していたかは不問

現行(2018年4月1日以後の相続)

  • 相続開始前3年以内に「本人・配偶者・3親等内の親族・特別の関係がある法人」が所有する国内の家に住んだことがないこと
  • いま住んでいる家を、過去に一度も所有したことがないこと(新設)

この改正で、親の持ち家に住む孫、親族の会社が所有する家に住む人、過去に所有していた家に住み続ける人などが対象外になりました。2018年4月1日から2020年(令和2年)3月31日までの相続には、一定の場合に改正前の要件で判定できる経過措置がありましたが、すでに終了しています新規適用終了。いま相続が起きた場合は、現行の要件で判定します。

申告の準備:チェックリストと添付書類

申告の前に、次の項目を確認します。要件1〜6に当たる項目が1つでも欠けると、家なき子特例は使えません。

家なき子特例のチェックリスト

  • 被相続人に配偶者がいない
  • 相続開始の直前に、被相続人と同居していた相続人がいない(相続を放棄した人を含めて確認した)
  • 取得者が、日本国籍を持たない制限納税義務者に当たらない
  • 相続開始前3年以内に住んだ国内の家の所有者が、本人・配偶者・3親等内の親族・特別の関係がある法人のいずれでもない(相続開始の直前に被相続人が住んでいた家を除く)
  • いま住んでいる家を、過去に一度も所有したことがない
  • 申告期限まで、土地を売らずに持ち続ける予定
  • 申告期限までに遺産分割を終え、特例を使う土地の選択に取得者全員が同意している
  • 下の添付書類を用意した

家なき子特例を使う場合は、共通の書類(被相続人の相続人全員を明らかにする戸籍の謄本、遺言書または遺産分割協議書の写し、相続人全員の印鑑証明書など)に加えて、次の書類を申告書に添付します。

  • 相続開始前3年以内の住所または居所を明らかにする書類(マイナンバーを持っている人は不要)
  • 相続開始前3年以内に住んでいた家が、本人・配偶者・3親等内の親族・特別の関係がある法人以外の者が所有する家であることを証する書類
  • 相続開始の時に住んでいる家を、相続開始前のいずれの時も所有していたことがないことを証する書類

書類の全体像と、申告期限までに分割できない場合の手続は申告手続・分割要件・添付書類で確認できます。

3年以内に、被相続人である親の家に住んでいた期間があります。使えますか?

その家が、相続開始の直前に親が住んでいた家なら、要件4では除かれるため、その期間は問題になりません。親が所有する家でも、相続開始の直前に親が住んでいなかった別の家なら、3親等内の親族が所有する家に当たり、要件4を満たしません。

なお、相続開始の直前まで親と同居していたなら、家なき子ではなく同居親族として判定します(配偶者と同居親族)。

海外で、自分が所有する家に住んでいます。使えますか?

要件4は国内の家に限られるため、海外の家に住んでいたことは要件4では問われません。しかし要件5には国内に限る定めがないため、いま住んでいる海外の家を自分で所有している場合は、要件5を満たしません。

相続した実家に、これから住む必要はありますか?

ありません。家なき子特例には住む要件がありません。必要なのは、相続開始の時から申告期限まで土地を持ち続けることです。申告期限の後であれば、売っても特例の適用には影響しません。

親と同居していた兄が相続を放棄しました。別居の私は使えますか?

使えません。同居していた相続人がいるかどうかは、相続の放棄がなかったものとして判定するため、兄は「同居していた相続人」として数えられます。

他の税金とのつながり

専門家向け:根拠と実務論点

根拠法令・通達

  • 根拠は、措法69条の4第3項第2号ロ(いわゆる家なき子)、措令40条の2(特別の関係がある一定の法人の範囲など)、措規23条の2(添付書類)、措通69の4-21・69の4-22・69の4-22の2です。
  • 要件1は、居住制限納税義務者又は非居住制限納税義務者のうち、日本国籍を有しない者を除くものです。日本国籍を有する国外居住者は除外されません。
  • 要件3の「相続人」は、相続の放棄があった場合には、放棄がなかったものとした場合の相続人です。判定の対象は相続人に限られるため、同居者が相続人でない親族だけであれば、要件3には抵触しません。なお、その同居親族自身が遺贈で取得した場合は、同号イ(同居親族)で判定します。
  • 要件3の「被相続人の居住の用に供されていた家屋」は、一棟の建物が構造上区分された独立部分からなる場合、被相続人が居住していた独立部分をいいます(措通69の4-21)。同居親族(同号イ)の範囲が区分所有登記の有無で定まる点とは、区別が必要です。
  • 要件4の「配偶者」「三親等内の親族」「特別の関係がある一定の法人」に当たるかは、相続開始の直前の関係で判定します。特別の関係がある一定の法人は、取得者等が発行済株式等(自己株式を除く)の過半数を有する法人、取得者等と当該法人が過半数を有する法人、取得者等とこれらの法人が過半数を有する法人、取得者等が理事・監事・評議員等となっている持分の定めのない法人です。
  • 要件4は「日本国内にある」家屋に限られ、相続開始の直前に被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。要件5(相続開始時に居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと)には、国内の限定がありません。

実務論点

  • 旧要件(2018年3月31日以前の相続)は「相続開始前3年以内に自己又は自己の配偶者の所有する家屋に居住したことがないこと」だけで、要件5はありませんでした。2018年4月1日から2020年3月31日までの相続には経過措置がありましたが、終了しています。改正前の解説・記載例を引用しないよう注意します。
  • 老人ホーム等に入所していた被相続人の場合、要件3(同居相続人の有無)をいつの時点で判定するか(入所の直前か相続開始の直前か)は、措通・タックスアンサー・申告のしかたに明文がありません。入所後に新たに親族が住み始めると、「新たに被相続人等以外の者の居住の用に供された」ものとして対象外となり得る点にも注意が必要です(老人ホームに入所していた場合)。
  • 家屋の「所有」は、登記の有無ではなく実質で判定すると解されています。添付書類(3年以内に居住した家屋の所有者や、現住家屋を所有したことがないことを証する書類)による立証が前提になるため、賃貸借・社宅の契約関係や所有者を早めに確認します。
  • 家なき子の取得者には居住要件がなく、保有継続要件だけがあります。申告期限までに一部でも譲渡すれば、譲渡した部分は保有継続要件を欠きます。
第4章

生計を一にする親族・二世帯住宅

小規模宅地等の特例は、被相続人自身の住まいだけでなく、被相続人と生計を一にしていた親族の住まいの土地にも使えます。二世帯住宅では、建物に区分所有の登記があるかどうかで、対象になる面積が大きく変わります。

この章の結論

  • 被相続人の土地に、被相続人と生計を一にする親族が住んでいた場合も、配偶者かその親族本人が取得すれば特定居住用宅地等(330㎡まで80%減額)になり得ます。親族本人が取得するときは、申告期限まで住み続け、持ち続けることが条件です。
  • 「生計を一にする」に法律上の定義はなく、日常の生活費を共通にしていたかを実態で判断します。同じ建物に住んでいても、光熱費や生活費をそれぞれ負担していたため否定された裁決があります。生計が別の子が親の土地を無償で借りて住んでいる場合は、対象になりません。
  • 二世帯住宅は、区分所有の登記がなければ敷地全体が被相続人の住まいの敷地として扱われ、別の部分に住む子も同居親族になります。区分所有の登記があると、被相続人が住んでいた区分の敷地だけが対象です。

生計を一にする親族が住んでいた土地

特定居住用宅地等には、被相続人が住んでいた土地のほかに、被相続人と生計を一にしていた親族(以下「生計一親族」)が住んでいた土地も含まれます。この場合、被相続人自身はその家に住んでいません。典型的なのは、次のような場合です。

  • 生計一の子が、親の土地を無償で借りて、子の名義の家を建てて住んでいる
  • 親が所有する家に、生計一の親族が無償で住んでいる

親が所有する家に親族が家賃を払って住んでいた場合は、無償ではないため、この区分ではなく、被相続人の貸付けとして判定します(貸付事業用宅地等)。

この土地を取得できる人と要件は、次のとおりです。被相続人の自宅の場合と違い、生計一親族が住んでいた土地は、配偶者かその生計一親族本人が取得した場合に限り対象になります。

生計一親族が住んでいた土地:取得者ごとの要件
取得する人要件結果
被相続人の配偶者なし特定居住用宅地等
そこに住んでいた生計一親族本人相続開始の直前から申告期限まで住み続け、申告期限まで持ち続ける特定居住用宅地等
上記以外の親族―この区分では対象外

たとえば、生計一の長男が、親の土地(200㎡・評価額2,500万円)を無償で借りて自分の家を建てて住んでいたとします。その長男が土地を相続し、申告期限まで住み続け、持ち続けた場合、減額は2,500万円×80%=2,000万円で、課税価格に入るのは500万円です。

「同居親族」と「生計一親族」は混同しやすい言葉です。同居親族は住む場所、生計一親族は家計で決まります。違いは次のとおりです。

同居親族と生計一親族の違い
項目同居親族生計一親族
どんな人か被相続人が住んでいた一棟の建物に、一緒に住んでいた親族被相続人と生計を一にしていた親族
生計が同じであること不要(生計が別でも同居親族に当たります)必要
住んでいる場所被相続人と同じ建物被相続人と別の家でもよい
特例の対象になる土地被相続人の住まいの土地その親族の住まいの土地(被相続人が所有するもの)
本人が取得するときの要件申告期限まで住み続け、持ち続ける申告期限まで住み続け、持ち続ける

補足:生計一親族の事業用・貸付用の土地

生計一親族が自分の事業や貸付けに使っていた被相続人の土地も、要件を満たせば特定事業用宅地等や貸付事業用宅地等の対象になります(特定事業用宅地等、貸付事業用宅地等)。

「生計を一にする」の判定

「生計を一にする」について、相続税法にも租税特別措置法にも定義はありません。裁決は、同じ生活単位に属し、助け合って共同の生活を営んでいるか、日常の生活費を共通にしているかを、社会通念に照らして個別に判断しています。

同居しているかどうかとは別の基準です。同じ建物に住んでいても、生計は別と判断されることがあります。国税不服審判所の裁決には、次のような例があります。

「生計を一にする」が否定された裁決の例
裁決状況判断
2016年(平成28年)9月29日区分登記された二世帯住宅の2階に、子の一人が住んでいました。水道・ガス・電気の契約と支払が別で、基本的な生活費は各自が負担していました。被相続人は、給食サービスの代金や治療費を自分で負担していました。生計一ではない
2008年(平成20年)6月26日親族は別居後に独立した生活を送っていました。被相続人の入院費なども、被相続人名義の口座から支払われていました。生計一ではない

これらの裁決では、光熱費の契約と支払、食費などの基本的な生活費の負担、医療費などを誰のお金で払っていたかが、判断の材料になっています。申告の前に、通帳や公共料金の契約などで、生活費の負担の実態を確認しておくことが大切です。

生計一かどうかは、この章の住まいの土地だけでなく、特例のいろいろな場面で問われます。生計一親族が自分の事業や貸付けに使っていた土地も、対象になり得ます。老人ホームに入所した被相続人の自宅に、入所前から生計一の親族が住み続けている場合の扱いにも関係します(老人ホームに入所していた場合)。

生計一の子が、親の土地を無償で借りて家を建てて住む

  • 生計一親族の住まいの土地として、特定居住用宅地等になり得ます
  • 取得者は、配偶者かその子本人に限られます
  • 子が取得するなら、申告期限まで住み続け、持ち続けることが必要です

生計が別の子が、親の土地を無償で借りて家を建てて住む

  • 被相続人等(被相続人と生計一親族)の住まいではありません
  • 相当の対価を受け取っていないので、被相続人の貸付事業にも当たりません
  • 特例の対象外です

よくある誤り:生計が別の子が住む親の土地に特例を使う

親の土地を無償で借りて家を建てた子が、親と生計を別にしていた場合、その土地は特例の対象になりません。被相続人等の住まいでもなく、被相続人の貸付事業にも当たらないためです。地代を受け取っていても、相当の対価に満たない金額であれば、貸付事業には当たりません。

二世帯住宅:区分所有登記の有無で変わる

二世帯住宅では、建物に「区分所有建物である旨の登記」があるかどうかで扱いが変わります。玄関や台所が分かれていて構造上は独立していても、区分所有の登記がなければ「区分所有建物でない一棟の建物」として扱います。判定の基準は建物の構造ではなく、登記です施行中。

区分所有登記がない二世帯住宅2階:子の世帯1階:親(被相続人)敷地全体が特例の対象になり得る子の世帯は同居親族として判定区分所有登記がある二世帯住宅2階:子の世帯(区分登記)1階:親(区分登記)親の住戸に対応する敷地だけ子は同居親族に当たらない
図:二世帯住宅と小規模宅地等の特例(区分所有登記の有無)

二世帯住宅の土地は、次の順番で判定します。

  1. 区分所有の登記を確認する建物の登記に、区分所有建物である旨の登記があるかを確かめます。構造が分かれているかどうかは関係ありません。
  2. 登記がない場合敷地全体が被相続人の住まいの敷地です。別の部分に住む子も同居親族になり、申告期限まで住み続け、持ち続ければ特例を使えます。
  3. 登記がある場合被相続人が住んでいた区分の敷地だけが、被相続人の住まいの敷地です。別の区分に住む子は同居親族に当たりません。
  4. 子の区分の敷地を確認する登記がある場合でも、子が被相続人と生計を一にしていれば、子の区分の敷地は生計一親族の住まいの敷地として対象になり得ます。
二世帯住宅:区分所有登記の有無による違い
項目区分所有登記なし区分所有登記あり
被相続人の住まいの敷地敷地全体(被相続人の居住部分と親族の居住部分の両方)被相続人が住んでいた区分に対応する敷地だけ
別の部分に住む子同居親族に当たります同居親族に当たりません
子が取得した場合申告期限まで住み続け、持ち続ければ特定居住用宅地等になります被相続人の区分の敷地は対象外です。子の区分の敷地は、子が生計一親族なら、生計一親族の住まいとして対象になり得ます
配偶者が取得した場合取得した部分が対象です(要件なし)被相続人の区分の敷地のうち、取得した部分が対象です(要件なし)。子が生計一親族なら、子の区分の敷地のうち取得した部分も対象になり得ます

この区分所有の登記による判定は、平成25年度の税制改正で設けられ、2014年(平成26年)1月1日以後に相続や遺贈で取得した財産から適用されています。それより前の相続については、構造上の独立性などで判断した裁決例があります。

建物が子の名義で、土地が親の名義という二世帯住宅もあります。この場合は、子が土地を親から無償で借り、親も建物を無償で借りて住んでいれば、親の住まいの土地として扱われます。区分所有の登記がない建物なら、子が住む部分の敷地も含めて、被相続人の住まいの敷地になり得ます。

計算例:国税庁の設例で比べる

計算例:二世帯住宅の敷地200㎡を、配偶者と子が2分の1ずつ相続した場合

前提(国税庁の設例を基に、金額を加えています):二世帯住宅の敷地は200㎡です。建物のA部分(敷地100㎡相当)に被相続人が住み、B部分(敷地100㎡相当)に、被相続人と生計が別の子が住んでいました。配偶者と子が敷地を2分の1ずつ相続し、子は申告期限までB部分に住み続け、持ち続けます。金額は説明のため、敷地全体の評価額を6,000万円(1㎡当たり30万円で一律)と仮定します。

区分所有登記の有無による特定居住用宅地等の面積と減額額
項目区分所有登記なし区分所有登記あり
配偶者の取得分(100㎡)のうち対象100㎡50㎡
子の取得分(100㎡)のうち対象100㎡0㎡
特定居住用宅地等の面積200㎡50㎡
減額額4,800万円1,200万円
課税価格に入れる額(敷地全体)1,200万円4,800万円

区分所有登記なし:6,000万円×200/200×80%=4,800万円、6,000万円−4,800万円=1,200万円
区分所有登記あり:6,000万円×50/200×80%=1,200万円、6,000万円−1,200万円=4,800万円
(200㎡・50㎡は、いずれも限度面積330㎡以下)

区分所有登記がある場合、被相続人の住まいの敷地はA部分の100㎡だけです。配偶者はその2分の1(50㎡)を取得しているので、50㎡が対象です。子は被相続人と同じ区分に住んでいないので同居親族に当たらず、生計も別のため、A部分の持分もB部分の持分も対象になりません。

答え:区分所有登記の有無だけで、減額額に4,800万円−1,200万円=3,600万円の差が出ます。区分所有登記がない場合は、子も同居親族として、自分の取得分に特例を使えます。

二世帯住宅で確認すること

二世帯住宅の土地に特例を使えるかは、登記と生活の実態で決まります。相続が起きたら、次の点を確認します。

二世帯住宅のチェックリスト

  • 建物の登記(登記事項証明書など)で、区分所有建物である旨の登記があるかを確認した
  • 区分所有の登記がない場合、子が相続開始の直前に同じ建物に住んでいたことを確認した
  • 子が取得する場合、申告期限まで住み続け、持ち続ける予定
  • 区分所有の登記がある場合、子が被相続人と生計を一にしていたか(光熱費・生活費の負担)を確認した
  • 建物と土地の名義、地代や家賃の支払の有無を確認した
  • 配偶者と子の分を合計して、限度面積330㎡以内に収まるかを確認した

子が取得する場合の申告では、その子が住んでいることを明らかにする書類が必要です(その子がマイナンバーを持っていれば不要)。申告と分割の手続は申告手続・分割要件・添付書類で説明しています。

二世帯住宅で、親と子は生計が別でした。区分所有の登記はありません。子は特例を使えますか?

要件を満たせば使えます。区分所有の登記がない一棟の建物では、別の部分に住んでいた子も同居親族に当たり、生計が同じかどうかは問われません。子が取得した敷地を申告期限まで持ち続け、その建物に住み続ければ、特定居住用宅地等になります。

区分所有の登記がある二世帯住宅で、子は親と生計を一にしていました。どうなりますか?

子は同居親族には当たりませんが、生計一親族には当たります。そのため、子の区分の敷地は、生計一親族の住まいの土地として、子か配偶者が取得すれば対象になり得ます。子が取得する場合は、申告期限まで住み続け、持ち続けることが必要です。

親と同じ敷地にある別棟の家に住んでいた子は、同居親族ですか?

同居親族は、被相続人が住んでいた一棟の建物に一緒に住んでいた親族です。別棟に住んでいた子は、同居親族に当たりません。ただし、子が被相続人と生計を一にしていて、被相続人の土地を無償で借りて家を建てていたなら、その部分は生計一親族の住まいの土地として対象になり得ます。

他の税金とのつながり

  • 親の土地を無償で借りて子が家を建てるときの贈与税の扱いは親子間の金銭貸借・土地の貸し借り・売買で説明しています。
  • 無償で貸している土地(使用貸借)や、貸している土地の評価は貸家建付地・借地権・貸宅地・使用貸借を参照してください。
  • 区分所有の登記がある二世帯住宅でも、マンションの評価方法(区分所有補正率)の対象外になるものがあります。地階を除く総階数が2以下のものや、居住用の専有部分が3室以下で、そのすべてを所有者か親族が住まいに使っているものです(マンションの評価)。
専門家向け:根拠と実務論点

根拠法令・通達

  • 生計一親族の居住用宅地等は、措法69条の4第3項第2号ハが定めています。取得者が配偶者なら要件はありません。生計一親族本人が取得する場合は、相続開始の直前から申告期限まで引き続きその家屋に居住し、かつ申告期限まで保有することが要件です。
  • 居住用宅地等の範囲(措通69の4-7):被相続人所有の家屋に生計一親族が住んでいた場合は、その親族が無償で借りていたものに限られます。親族所有の家屋の場合は、その親族が敷地を被相続人から無償で借り、被相続人等が家屋を無償で借りていた場合に限られます。区分所有建物でない一棟の建物の敷地は、親族の居住部分を含みます(同通達の注)。
  • 区分所有建物とは、区分所有建物である旨の登記がされている建物(被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の区分所有建物を含む)をいいます。構造上区分されていても、登記がなければ区分所有建物でない一棟の建物として扱います(措通69の4-7の4、措令40条の2第4項・第13項)。
  • 同居親族(同号イ)の「一棟の建物に居住していた親族」は、区分所有建物では被相続人の居住部分に居住していた親族、それ以外では被相続人又は親族の居住部分に居住していた親族です(措令40条の2)。家なき子の要件(同居相続人の有無)の判定で、一棟の建物が構造上区分された独立部分からなる場合に被相続人の家屋をその独立部分とする措通69の4-21とは、適用場面が異なります。
  • 「生計を一にしていた」には定義規定がありません。裁決は「同一の生活単位に属し、相助けて共同の生活を営み、ないしは日常生活の資を共通にしている」かを、社会通念で個別に判断しています(2016年9月29日裁決、2008年6月26日裁決)。実務では所得税の所基通2-47(同一家屋に起居する親族は原則として生計一とし、別居でも常に生活費等の送金が行われている場合は生計一とする等とされています)が参照されますが、上記の裁決は同通達を正面から判断したものではありません。

実務論点

  • 国税庁の設例(平成25年改正関係の通達解説)は、宅地200㎡のA部分100㎡に被相続人、B部分100㎡に生計別の子が居住し、配偶者と子が各2分の1を取得した例です。区分所有登記なしなら200㎡(配偶者100㎡・子100㎡)、区分所有登記ありなら配偶者のA部分相当50㎡だけが特定居住用宅地等になります。
  • 改正前の相続(2010年(平成22年)の相続)について、2016年9月29日裁決は、1階・2階が区分登記され、各階に玄関・台所・浴室等があり内部で行き来できない建物で、被相続人の家屋は1階のみとしました。2階に住む子は同居親族にも生計一親族にも当たらないとされ、1階で同居した子の取得分だけに特例が適用されました。
  • 区分所有登記による判定は、2014年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税から適用されます。2013年(平成25年)11月29日付の措置法通達の一部改正で、当時の措令40条の2第4項・第10項にいう「建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物」は区分所有建物である旨の登記がされている建物をいう、とする留意事項(当時の番号は69の4-7の3)が新設されました。同改正の適用時期は、69の4-10を除き2014年1月1日以後の相続等です。平成25年度税制改正の大綱も、二世帯住宅と老人ホームの見直しを同日以後の相続等から適用するとしています。
  • 区分所有登記がある場合でも、子が生計一親族であれば、子の区分の敷地は生計一親族の居住用宅地等(同号ハ)として、子(又は配偶者)の取得分に適用の余地があります。
  • 使用貸借:生計別の親族の居住用は被相続人等の居住用ではなく、相当の対価がなければ貸付事業(準事業を含む)にも当たりません(措令40条の2第1項、措通69の4-4・69の4-7)。固定資産税程度の地代など、相当の対価に満たないものも同様です。
  • 添付書類:生計一親族・同居親族が取得した場合は、自己の居住の用に供していることを明らかにする書類が必要です(特例を受ける人がマイナンバーを有する場合は不要。措規23条の2)。
第5章

老人ホームに入所していた場合

親が老人ホームに入所したまま亡くなり、自宅が空き家になっていても、一定の要件を満たせば自宅の敷地に特定居住用宅地等(330㎡まで80%減額)を使えます。この章では、その要件と入所後の自宅の使い方、申告に必要な書類を説明します。

この章の結論

  • 相続開始の直前に要介護認定・要支援認定(または障害支援区分の認定)を受け、決められた老人ホーム等に入所していれば対象です。入所前に住んでいた自宅の敷地を「被相続人の居住用」として扱えます。入所した時点での認定は不要です。
  • 入所後に自宅を貸したり、事業に使ったり、新たに別の人が住み始めたりすると、その部分は対象外になります。入所の直前に生計を一にしていた親族が住み続けるのは差し支えありません。
  • 申告では、介護保険の被保険者証の写しなどで認定を証明します。2026年(令和8年)4月1日以後に提出する申告書では、写しの保険者番号と被保険者番号を塗り潰します。

入所していても自宅を居住用として扱える仕組み

「被相続人の居住用」かどうかは、原則として相続開始の直前の状況で判定します。老人ホームに移って生活の拠点が施設になると、本来なら自宅は居住用に当たりません。

そこで、特別な取扱いがあります。要介護認定などを受けた人が決められた施設に入所していた場合は、入所直前に住んでいた家屋の敷地を居住用宅地等に含めます。2014年(平成26年)1月1日以後の相続から適用されています。

この取扱いができる前は、旧宅を居住用と認めなかった裁決(2008年(平成20年)10月2日)もありました。終身利用の介護付き有料老人ホームへの入所は一時的ではない、という理由です。現在は、次の要件を満たせば居住用として扱われます。

  1. 要件1:認定相続開始の直前に、要介護認定・要支援認定、障害支援区分の認定などを受けている必要があります。
  2. 要件2:施設法令で決められた老人ホーム・介護施設・障害者支援施設などに、入居・入所している必要があります。
  3. 要件3:自宅の使い方入所後に、自宅を事業に使ったり、新たに被相続人等以外の人の住まいに使ったりしていないことが必要です。
  4. 取得者の要件配偶者は要件がありません。同居親族・家なき子は、申告期限までの居住・保有など、それぞれの要件を満たす必要があります。

入院の場合は扱いが違います。病院への入院は一時的な滞在と整理されています。退院すれば住める状態で、ほかの用途に使われていなければ、空き家だった期間の長さにかかわらず居住用です。要介護認定なども問われません。

一方、施設ではなく子の家に移り、生活の拠点もそこに移っていた場合、旧宅は居住用に当たりません。退院後に長女の家で暮らし、所得税でも長女の夫の扶養親族とされていた人の旧宅を、居住用でないとした裁決(2002年(平成14年)12月5日)があります。

要件1:相続開始の直前に要介護認定などを受けていたこと

対象になるのは、次のいずれかに当たる人です。

  • 介護保険法の要介護認定または要支援認定を受けていた人
  • 介護保険法施行規則140条の62の4第2号に該当していた人
  • 障害者総合支援法の障害支援区分の認定を受けていた人

認定を受けていたかどうかは、相続開始の直前で判定します。入所した時点で認定がなくても構いません。自立の状態で入所し、その後に要介護認定を受けて亡くなった場合も対象です。

要介護認定の申請中に亡くなり、死亡後に認定が下りた場合も、認定を受けていたものとして扱えます。認定の効力が申請の日までさかのぼるためです。反対に、認定の申請をしないまま自立の状態で亡くなった場合は、原則として対象になりません。

要件2:決められた施設に入居・入所していたこと

施設の種類は法令で限定されています。一般の賃貸マンションや親族の家への転居は対象になりません。

対象になる老人ホーム等の範囲(2026年10月時点)
被相続人が受けていた認定入居・入所していた施設・住居
要介護認定・要支援認定など認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居(いわゆる認知症グループホーム)、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム(以上、老人福祉法)
要介護認定・要支援認定など介護老人保健施設、介護医療院(以上、介護保険法。介護医療院は2018年(平成30年)4月1日以後の相続から)
要介護認定・要支援認定などサービス付き高齢者向け住宅(有料老人ホームに当たるものを除く)
障害者総合支援法の障害支援区分の認定障害者支援施設(施設入所支援が行われるもの)、共同生活援助を行う住居

要件3:入所後に自宅を貸したり、別の人が住んだりしていないこと

被相続人が住まなくなった後に、自宅を事業に使ったり、新たに被相続人等以外の人が住んだりすると、その部分は対象外です。

ここでいう「被相続人等」には、入所の直前に被相続人と生計を一にしていた親族で、その家に引き続き住んでいる人が含まれます。入所前から生計を一にして同居していた配偶者や子が住み続けるのは、差し支えありません。

入所後の自宅の使い方と居住用としての特例
入所後の自宅の状況居住用としての特例
空き家のままで、誰にも貸していない対象になる
入所の直前に生計を一にしていた親族が、引き続き住んでいる対象になる
入所後に、子の家族など別の人が新たに住み始めたその人が住む部分は対象外
入所後に、第三者に賃貸した賃貸した部分は対象外
入所後に、店舗や事務所など事業に使った事業に使った部分は対象外

入所後に別の人が家全体に住み始めた場合は、敷地全体が対象外になり得ます。賃貸した部分を貸付事業用宅地等として使えるかは、貸付事業用宅地等の3年以内の貸付けの制限で別に判定します。

入所の時点で被相続人が自宅の所有者でなかった場合でも、対象になり得ます。入所後に配偶者から自宅を相続し、自宅に戻らないまま亡くなった例を対象と解した、東京国税局の文書回答事例(2018年12月7日)があります。

自宅を取得する人の要件と計算例

老人ホームの取扱いで居住用と認められた敷地でも、80%減額を受けるには、取得する人ごとの要件を満たす必要があります。詳しくは配偶者と同居親族の要件と家なき子特例の章で説明しています。

  • 配偶者:要件はありません。申告期限まで住み続けたり、持ち続けたりする必要もありません。
  • 同居親族:入所前から被相続人と同居し、入所後も引き続き住んでいる親族は、同居親族として扱うのが実務上の考え方とされています。申告期限まで住み続け、保有し続けることが必要です。
  • 家なき子:被相続人に配偶者がいない、同居していた相続人がいないなど、6つの要件をすべて満たす親族です。住む必要はありませんが、申告期限まで保有することが必要です。

入所していた場合に、同居親族や「同居していた相続人がいないこと」をどの時点で判定するかは、国税庁の資料に明文がありません。入所の前後で家族の住まいが変わったときは、事前に税務署や専門家に確認してください。

計算例:母が有料老人ホームに入所したまま亡くなった場合

前提:母(夫は既に死亡)は要介護2の認定を受けて有料老人ホームに入所し、そこで亡くなりました。自宅は入所後ずっと空き家で、誰にも貸していません。敷地は300㎡、路線価15万円(補正なしと仮定)です。賃貸住宅に住む長男が家なき子の要件をすべて満たし、自宅を相続して申告期限まで持ち続けます。

敷地の評価額:15万円×300㎡=4,500万円
減額される金額:4,500万円×80%=3,600万円(300㎡は限度面積330㎡以内)
課税価格に算入する額:4,500万円−3,600万円=900万円

答え:自宅の敷地は900万円で課税価格に算入されます。入所後に自宅を第三者に貸していた場合は、居住用としての80%減額は受けられません。

よくある誤り

  • 「入所したときに要介護認定がないと使えない」は誤りです。判定は相続開始の直前です。
  • 自立のまま入所し、認定を申請しないまま亡くなった場合は、原則として対象外です。
  • 空き家にした自宅を入所後に人に貸したり、子の家族が新たに住み始めたりすると、その部分は居住用として使えません。
  • 施設の種類は限られています。一般の賃貸住宅や親族の家への転居は対象外です。
  • 同居親族や家なき子が取得した場合、申告期限前に売却すると保有の要件を満たさず、適用できません。

申告に必要な書類と2026年の変更

老人ホームの取扱いを使うときは、通常の添付書類(戸籍の謄本、遺言書または遺産分割協議書の写し、相続人全員の印鑑証明書など)に加えて、次の書類を添付します。

老人ホーム入所の場合に添付する書類

  • 被相続人の戸籍の附票の写し(相続開始の日以後に作成されたもの)
  • 介護保険の被保険者証の写し、障害福祉サービス受給者証の写しなど、要介護認定などを受けていたことが分かる書類
  • 入居・入所の契約書の写しなど、施設の名称・所在地・種類が分かる書類
  • 介護保険の被保険者証の写しは、保険者番号と被保険者番号を復元できない程度に塗り潰したか(2026年4月1日以後の提出)
  • 取得者が同居親族の場合は、自分が住んでいることが分かる書類(マイナンバーがあれば不要)
  • 取得者が家なき子の場合は、相続開始前3年以内の住所や、住んでいた家屋の所有者などが分かる書類

番号の塗り潰しは、2026年4月1日以後に相続税の申告書を提出する場合の取扱いです施行中。亡くなった日ではなく、申告書を提出する日で判断します。

他の税金との関係

  • 相続した実家を売るときの所得税の特例(空き家の3,000万円控除)にも老人ホームの取扱いがあります。ただし、要介護認定などを判定する時点は「家屋に住まなくなる直前」で、小規模宅地等(相続開始の直前)と異なります。入所の直前に被相続人以外の人が住んでいないことも必要です。入所後も被相続人の物品の保管などに使われ、事業・貸付け・他の人の居住に使われていないことも求められます。
  • 住む・貸す・売るの選択による税金の違いは実家を相続したとき:住む・貸す・売るで比べています。札幌市での確認書の手続は札幌の空き家と被相続人居住用家屋等確認書で説明しています。
専門家向け:根拠と実務論点

根拠

  • 措法69条の4第1項、措令40条の2第2項・第3項、措通69の4-7(2)・69の4-7の3。添付書類は措規23条の2で定められています。
  • 2026年4月1日以後の申告書提出分から、介護保険被保険者証の写しの保険者番号・被保険者番号を復元できない程度に塗り潰す取扱いです(国税庁「相続税の申告の際に提出していただく主な書類」令和8年7月)。

実務論点

  • 要介護認定等の判定時点は相続開始の直前です(質疑応答事例「老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地」)。申請中に死亡し死亡後に認定があった場合は、認定の効力が申請日に遡るため要件を満たすものとして扱えます(質疑応答事例「要介護認定の申請中に死亡した場合」)。
  • 除外規定の「被相続人等」には、入居等の直前に被相続人と生計を一にしていた親族で引き続きその建物に居住している者を含みます。入所後に新たに居住を始めた親族は「被相続人等以外の者」に当たり、その部分は対象外です。
  • 入所していた場合の同居親族要件(措法69条の4第3項第2号イ)と、家なき子の同居相続人要件(同号ロ)の判定時点は、措通・タックスアンサー・申告のしかたに明文がありません。入所前から同居し引き続き居住する親族を同居親族とする取扱いが実務とされますが、入所前後で居住者が変わった事案は個別の確認が必要です。
  • 入居直前に居住していたが、その時点で所有者でなかった宅地等(入居後に配偶者から相続し自宅に戻らず死亡)も対象と解した、東京国税局の文書回答事例があります(2018年12月7日)。
  • 2014年1月1日前の旧取扱いでは、終身利用の介護付き有料老人ホームへの入所を一時的でないとして旧宅を居住用と認めなかった裁決(2008年10月2日)があります。現行の要件を満たせば結論は異なります。
  • 所得税の空き家特例(措法35条3項)の老人ホーム等の取扱い(同条5項、措令23条)は、認定の判定時点が家屋が居住の用に供されなくなる直前(措通35-9の2)で、本特例と異なります。両方の検討が必要な事案では、要件を別々に確認します。
第6章

特定事業用宅地等

個人で商店や工場などの事業をしていた人の土地は、後を継ぐ親族が事業を引き継げば、400㎡まで評価額が80%減額されます。この章では、対象になる事業と土地、引き継ぎと保有の要件、3年以内に事業を始めた土地の扱い、個人版事業承継税制との関係を説明します。

この章の結論

  • 被相続人や生計を一にしていた親族の事業用の土地が対象です。被相続人の事業なら取得した親族が申告期限までに引き継いで営み、生計一親族の事業ならその親族が申告期限まで続けることが条件です。土地も申告期限まで持ち続ければ、400㎡まで80%減額されます。不動産貸付業・駐車場業などは対象外で、貸付事業用宅地等(200㎡・50%)になります。
  • 相続開始前3年以内に新たに事業に使い始めた土地は、原則として対象外です。ただし、その土地の上の建物や機械などの価額が、土地の価額の15%以上あれば対象になります。
  • 個人版事業承継税制(個人の事業用資産の納税猶予)を使うと、その被相続人から取得した特定事業用宅地等には、この特例を使えません。どちらを使うか比べて選びます。

対象になる事業・ならない事業

特定事業用宅地等は、相続開始の直前に「被相続人等」の事業に使われていた宅地等です。被相続人等とは、被相続人と、被相続人と生計を一にしていた親族をいいます。

ここでいう事業からは、不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業が除かれます。事業と呼ぶほどの規模ではないものの、相当の対価を得て継続的に行う貸付け(準事業)も除かれます。これらに使っていた土地は、要件を満たせば貸付事業用宅地等になります。

対象は建物や構築物の敷地です。販売用の土地などの棚卸資産や、農地・採草放牧地は対象外です。

相続開始直前の土地の使い道と区分
相続開始直前の使い道区分限度面積・減額割合
商店・工場など、貸付け以外の事業の店舗・作業場の敷地特定事業用宅地等400㎡・80%
部屋を使わせて食事も出す下宿の敷地特定事業用宅地等(不動産貸付業に当たらない)400㎡・80%
使用人の寄宿舎の敷地(親族だけが使っていたものを除く)特定事業用宅地等400㎡・80%
農機具の収納や農作業用の建物の敷地ほかの要件を満たせば特定事業用宅地等400㎡・80%
アパート・貸家・貸地、駐車場(舗装などの構築物があるもの)、自転車駐車場貸付事業用宅地等200㎡・50%
耕作用の温室や暗きょなどの敷地、農地・採草放牧地対象外(農地等に当たる)―

たとえば、評価額6,000万円の店舗の敷地300㎡が、すべて要件を満たす場合です。減額は6,000万円×80%=4,800万円で、課税価格に算入する額は1,200万円になります。

特定居住用宅地等(330㎡)と併せて選ぶ場合は、合計730㎡まで使えます。貸付事業用宅地等と組み合わせる場合は、面積の調整計算が必要です(限度面積の調整と有利な選び方)。郵便局舎として貸している建物の敷地の特例は、申告手続・分割要件・添付書類の章で扱います。

誰の事業か:被相続人の事業と生計一親族の事業

事業をしていたのが被相続人か、生計を一にしていた親族かで、取得者の要件が変わります。どちらの場合も、取得者は親族で、申告期限まで土地を持ち続けることが必要です。

特定事業用宅地等の取得者の要件
事業をしていた人事業についての要件保有の要件
被相続人取得した親族が、申告期限までにその事業を引き継ぎ、申告期限まで営んでいること(事業承継要件)相続開始時から申告期限まで保有
被相続人と生計を一にしていた親族その親族が取得し、相続開始の直前から申告期限まで自分の事業を営んでいること(事業継続要件)相続開始時から申告期限まで保有

「事業を営んでいる」とは、事業主として事業を行っていることをいいます。会社勤めなどほかの仕事があっても、事業主であれば認められます。学生などでやむを得ず事業主になれない場合は、その人の親族が事業主として営んでいれば認められます。

建物の持ち主にも決まりがあります。建物は、被相続人等が持っているものが原則です。生計を一にしていない親族の建物でも、被相続人等が無償で借りていれば、その敷地は事業用宅地等になります。

建物の持ち主・使い方と区分
建物の持ち主使い方区分
被相続人被相続人が自分の事業に使う被相続人の事業用
被相続人生計を一にする親族が無償で事業に使う生計一親族の事業用
被相続人生計を一にする親族が家賃を払って事業に使う被相続人の貸付事業用(50%)
生計を一にしていない親族被相続人等が無償で借りて事業に使う被相続人等の事業用

申告期限までの引き継ぎと保有の判定

申告期限(相続の開始を知った日の翌日から10か月以内)までに事業をやめたり、土地を売ったりすると、要件を満たさなくなります。判定の考え方は、通達や国税庁の資料で次のように示されています。

  • 事業の一部を同種または別種の事業に転業しても、事業を営んでいるものとして扱います。複数の事業の一部をやめた場合は、残る事業に使っている部分が対象です。
  • 災害で休業していても、再開の準備が進められていれば、事業を続けているものとして扱います。
  • 申告期限までに土地の一部を売ったり貸したりした場合、売った部分は対象外です。残りの部分は、要件を満たす限り対象になります。
  • 申告期限までに建替え工事に着手した場合は、事業用と認められる部分が対象になります。
  • 相続開始の時点で建替え中だった場合や、取得後まだ使っていなかった場合でも、速やかに事業に使うことが確実なら事業用とみなされます。
  • 取得者が申告期限までに亡くなった場合は、その人の相続人が要件を満たせば認められます。

よくある誤り

  • 被相続人のアパートや月極駐車場の敷地を、特定事業用宅地等(80%)とするのは誤りです。不動産貸付業・駐車場業は事業から除かれ、貸付事業用宅地等(50%)になります。
  • 事業を引き継ぐのは「土地を取得した親族」です。土地を取得しない子が店を継いでも、取得した人が事業を引き継がなければ要件を満たしません。
  • 生計を一にする親族に被相続人の建物を貸して家賃を受け取っていた場合は、その親族の事業用ではなく、被相続人の貸付事業用になります。

相続開始前3年以内に事業を始めた土地:15%基準

2019年(平成31年)4月1日以後の相続では、相続開始前3年以内に新たに事業に使い始めた宅地等(3年以内事業宅地等)は、原則として特定事業用宅地等から除かれます施行中。

ただし、その土地の上で事業をしていた被相続人等が、一定の規模以上の事業をしていた場合は除外されません。一定の規模とは、次の算式を満たす場合です。

B(その事業に使っていた減価償却資産の相続開始時の価額)÷A(その宅地等の相続開始時の価額)≧15/100

  • Bに入るのは、被相続人等が持っていた次の資産です。その宅地等の上の建物(附属設備を含む)・構築物と、その宅地等の上で行う事業の業務用の減価償却資産です。事業以外に使っていた部分は除きます。
  • Aは、新たに事業に使った宅地等の相続開始時の価額です。共有なら被相続人の持分に相当する額です。
  • 判定は相続開始直前の現況で、宅地等ごとに行います。

「新たに事業に使い始めた」とは、住まいや貸付けに使っていた土地、または使っていなかった土地を事業に使い始めた場合です。事業に使っていた部分を別の事業に切り替えても当たりません。建替えや災害で一時的に使えなかった期間は「使っていなかった」に当たりません。ただし、建替えで広がった敷地の部分は、新たに事業に使ったものになります。

3年を超えて引き続き事業に使っていた宅地等は、事業の規模にかかわらず除外されません。被相続人が3年以内の相続で事業用の宅地等を取得し、引き続き事業に使っていた場合も、新たに事業に使ったものに当たらないとされています。2019年4月1日から2022年(令和4年)3月31日までの相続に設けられていた経過措置は、終了しています。

計算例:国税庁の記載例による15%基準の判定

前提:被相続人の土地600㎡(評価額2,000万円)の上に、総床面積400㎡の建物(評価額700万円)があります。相続開始前3年以内に建物の1階200㎡で日用雑貨の小売業を始め、その事業に機械装置(評価額100万円)を使っていました。

15%基準の計算
項目計算金額・割合
B 減価償却資産の価額建物700万円×200㎡÷400㎡+機械装置100万円450万円
新たに事業に使った宅地等の面積600㎡×200㎡÷400㎡300㎡
A その宅地等の価額2,000万円×300㎡÷600㎡1,000万円
判定450万円÷1,000万円45%

答え:45%は15%以上なので、3年以内事業宅地等でも特定事業用宅地等に当たります。国税庁の記載例では、相続開始時の価額に相続税評価額を使っています。

申告では「特定事業用宅地等についての事業規模の判定明細」(第11・11の2表の付表1(別表2))を宅地等ごとに作ります。15%未満なら、その宅地等には特例を使えません。

個人版事業承継税制との選択

個人版事業承継税制は、青色申告の個人事業者の後継者が、事業用の資産を贈与や相続で取得した場合の制度です。その資産に対応する贈与税・相続税の全額の納税を猶予し、後継者の死亡などで免除します。対象は、宅地等(400㎡まで)、建物(床面積800㎡まで)、一定の減価償却資産です。いずれも前年分の青色申告書の貸借対照表に計上されていたものに限ります。

この制度と小規模宅地等の特例は、特定事業用宅地等については併用できません。

  • 個人版を使う被相続人の特定事業用宅地等には、小規模宅地等の特例を使えません。生前に個人版で事業用資産を贈与していた場合や、相続で後継者が個人版の納税猶予を受ける場合で、誰が取得しても同じです。
  • 反対に、特定事業用宅地等に小規模宅地等の特例を使う人が1人でもいれば、個人版の相続税の納税猶予は使えません。その被相続人から財産を取得した全員が対象外になります。
  • 特定居住用宅地等・特定同族会社事業用宅地等・貸付事業用宅地等には、小規模宅地等の特例を併用できます。ただし、特定同族会社事業用宅地等や貸付事業用宅地等を選ぶと、個人版で猶予を受けられる宅地等の面積(400㎡)が調整されます。

小規模宅地等の特例(特定事業用宅地等)

  • 相続・遺贈で取得した宅地等が対象
  • 宅地等の課税価格を400㎡まで80%減額
  • 事業の継続が求められるのは申告期限まで
  • 適用期限の定めなし

個人版事業承継税制

  • 贈与・相続のどちらも対象
  • 宅地等(400㎡まで)・建物(床面積800㎡まで)・一定の減価償却資産に係る税額の100%を猶予し、後継者の死亡などで免除
  • 免除事由が生じるまで事業の継続が求められ、3年ごとに継続届出書を提出
  • 個人事業承継計画の提出は2028年(令和10年)9月30日まで、適用は2028年12月31日までの贈与・相続期限あり

小規模宅地等の特例は、申告期限後の事業の継続までは求めません。個人版は、事業をやめるなどすると猶予税額と利子税を納める必要があります。不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業は、個人版でも対象外です。

個人版の計画の提出期限は、令和8年度税制改正で2028年9月30日まで延長されました。適用期限の2028年12月31日は変わっていません。

他の税金・制度との関係

専門家向け:根拠と実務論点

根拠

  • 措法69条の4第3項第1号(特定事業用宅地等。3年以内事業宅地等の除外は同号かっこ書)、措令40条の2第1項(準事業)・第8項(一定規模以上の事業)、措規23条の2。
  • 措通69の4-4(事業用宅地等の範囲)、69の4-5(建築中等の取扱い)、69の4-6、69の4-14〜69の4-20(事業の承継・継続等の判定)、69の4-20の2〜69の4-20の5(3年以内事業宅地等)。
  • 経過措置:平成31年改正法附則79条2項(2019年4月1日〜2022年3月31日の相続は「相続開始前3年以内」を「平成31年4月1日以後」と読み替え)。経過措置は終了しています。

実務論点

  • 15%基準のBは、特定宅地等の上の建物(附属設備を含む)・構築物と、所得税法2条1項19号の減価償却資産で当該宅地等の上で行われる事業の業務の用に供されていたもの(被相続人等が有していたもの)の相続開始時の価額の合計です。事業以外の用に供されていた部分を除き、特定宅地等ごとに相続開始直前の現況で判定します。
  • 国税庁の記載例(資産課税課情報第9号、2021年(令和3年)4月1日、事例10)は「相続開始時の価額」に相続税評価額を用いています。
  • 被相続人が3年以内に開始した相続・遺贈で事業用宅地等を取得し、取得日以後引き続き事業の用に供していた場合は「新たに事業の用に供された」に当たらない旨の措令40条の2の規定があるとされています(現行の条文と項番号を確認してください)。
  • 申告期限までに一部を譲渡・貸付けした場合も、残りの部分は要件を満たせば適用できます(国税庁の申告書記載例)。
  • 個人版事業承継税制との関係は、措法69条の4第6項、措通69の4-26の2、措令40条の7の10第7項によります。特定同族会社事業用宅地等(面積A)を選択した場合、個人版の猶予対象宅地等の限度面積は400㎡−Aになります。貸付事業用宅地等を選択した場合も調整があります。法人版事業承継税制との併用制限はありません。
  • 郵便局舎の敷地(郵政民営化法180条、措通69の4-27〜69の4-37)は、総務大臣が交付した証明書を添付して特定事業用宅地等として適用します。
第7章

特定同族会社事業用宅地等

社長が自分の土地や建物を自分の会社に貸し、会社がそこで事業をしている場合は、一定の要件を満たせば400㎡まで評価額が80%減額されます。この章では、会社の要件、地代・家賃の受け取り方、取得者の要件と、要件を外れた場合の扱いを説明します。

この章の結論

  • 被相続人とその親族などが発行済株式の50%超を持つ会社が対象です。その会社に土地や建物を相当の対価で貸し、会社が不動産貸付業などの貸付事業以外の事業に使っていることが必要です。
  • 取得した親族が申告期限にその会社の役員で、土地を申告期限まで持ち続ければ、400㎡まで80%減額されます。役員でないなど要件を外れても、貸付事業用宅地等(200㎡・50%)に当たる場合があります。
  • 会社に無償や固定資産税程度の地代で貸している土地は、この特例も貸付事業用宅地等も使えません。

要件の全体像

特定同族会社事業用宅地等は、相続開始の直前から申告期限まで、一定の同族会社の事業に使われていた宅地等です。要件は、会社・貸し方・取得者の3つの面から判定します。

特定同族会社事業用宅地等の要件
項目要件判定の時点
会社の株主被相続人と、その親族その他被相続人と特別の関係がある者が、発行済株式または出資の50%超を持っている相続開始の直前
会社の事業不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業・準事業以外の事業に使っている相続開始の直前から申告期限まで
貸し方被相続人等が土地または建物を、相当の対価で会社に貸している相続開始の直前
取得者会社の役員(法人税法上の役員。清算人を除く)である申告期限
保有取得した宅地等を持ち続けている相続開始時から申告期限まで
会社の状態清算中の会社でない申告期限

特定事業用宅地等や貸付事業用宅地等と違い、相続開始前3年以内に貸し始めた土地を除外する規定は、条文上ありません。取得者自身が事業を引き継ぐ必要もありません。ただし、会社がその土地を申告期限まで事業に使い続けていることが必要です。

会社の要件:50%超の判定と会社の事業

株式の保有割合は、被相続人だけでなく、親族などの持ち分を合わせて判定します。たとえば被相続人40%、長男15%なら合計55%で、50%超の要件を満たします。

議決権を行使できる事項のすべてについて制限された株式は、発行済株式の総数に含めずに計算します。申告期限に清算中の会社は対象外です。

会社の事業からは、不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業・準事業が除かれます。会社がその土地をアパート経営や貸駐車場など自らの貸付事業に使っている場合は、貸付事業用宅地等(200㎡・50%)になります。

会社の社宅の敷地は、会社の事業用として扱われます。ただし、被相続人の親族だけが使っていた社宅は除かれます。

貸し方:相当の対価と建物の持ち主

対象になる貸し方は次の2つです。どちらも貸付けが「事業」に当たること、つまり相当の対価を得ていることが条件です。

  • 被相続人が土地を会社に貸し、会社が建物を建てて使っている場合の、その土地
  • 被相続人または生計を一にする親族が持つ建物を、会社に貸している場合の敷地(生計を一にする親族が建物を持つ場合は、その親族が被相続人から敷地を無償で借りていることが必要)
会社への貸し方と特例の可否
土地・建物の持ち主会社への貸し方判定
土地は被相続人、建物は会社土地を相当の地代で貸している対象(400㎡・80%)
土地・建物とも被相続人建物を相当の家賃で貸している対象(400㎡・80%)
土地は被相続人、建物は生計を一にする親族(敷地は無償で借りている)建物を相当の家賃で貸している対象(400㎡・80%)
土地は被相続人、建物は会社土地を無償、または固定資産税程度の地代で貸している対象外(貸付事業用宅地等にも当たらない)

無償で貸している土地は、被相続人等の貸付事業に当たりません。そのため、特定同族会社事業用宅地等にも、貸付事業用宅地等にも当たりません。地代を受け取っていても、相当の対価に満たない金額であれば同じ扱いです。

会社が個人の土地に建物を建てる場合は、借地権の課税関係が問題になります。相当の地代や「土地の無償返還に関する届出書」の扱いで整理し、土地の評価額もこれによって変わります(貸家建付地・借地権・貸宅地・使用貸借)。

取得者の要件と、要件を外れた場合

取得者は、申告期限においてその会社の役員でなければなりません。役員とは法人税法上の役員で、清算人は除かれます。役員かどうかは、相続開始の時点ではなく申告期限の時点で判定します。

役員でない人が取得した場合など、ほかの要件を満たさない場合でも、相当の対価で貸していれば貸付事業用宅地等(200㎡・50%)になり得ます。この場合は、貸付事業用宅地等の要件を満たす必要があります。申告期限までの貸付けの継続・保有と、相続開始前3年以内の貸付けの制限です。

申告期限までに、会社に貸していた建物を建て替えた場合も、建替え後の建物が会社の事業に使われる見込みであれば対象です。会社が持つ建物の建替え中に相続が始まった場合も、貸付けが続いていて、速やかに会社の事業に使うことが確実であれば対象になります。

よくある誤り

  • 会社に無償や固定資産税程度の地代で貸している土地に、80%減額を使うのは誤りです。貸付事業用宅地等の50%減額も使えません。
  • 取得者が申告期限に役員でなければ、80%減額は使えません。役員かどうかは申告期限の時点で判定します。
  • 会社がその土地を貸駐車場やアパートなど自らの貸付事業に使っている場合は、80%ではなく50%の区分になります。
  • 株式の50%超の判定は、被相続人1人の持ち分ではなく、親族などの持ち分も合わせて、相続開始の直前で行います。

計算例:社長の土地に会社の工場がある場合

計算例:社長の土地に会社の工場がある場合

前提:社長(被相続人)が持つ工場用地400㎡に、社長と長男が株式の全部を持つ会社が工場を建てて、製造業を営んでいます。土地の自用地としての評価額は1億円(路線価25万円×400㎡、補正なしと仮定)です。会社は10年以上前から、周辺の相場に照らして相当な地代を払い、「土地の無償返還に関する届出書」を出しています。この場合、土地は自用地としての価額の80%で評価します。

土地の評価額:1億円×80%=8,000万円

取得者と貸し方による違い
ケース適用される区分減額の計算課税価格に算入する額
A 取締役の長男が取得し、申告期限まで役員を続け、保有する特定同族会社事業用宅地等8,000万円×80%=6,400万円1,600万円
B 役員でない長女が取得し、申告期限まで会社への貸付けを続け、保有する貸付事業用宅地等8,000万円×200㎡÷400㎡×50%=2,000万円6,000万円
C 地代を受け取らずに貸していた(使用貸借)適用なし土地は自用地として1億円で評価1億円

答え:要件を満たす長男が取得すれば、算入額は1,600万円です。役員でない長女が取得すると6,000万円、地代なしで貸していた場合は1億円になります。

ケースBは、限度面積が200㎡になるため、400㎡のうち半分だけが50%減額の対象です。ケースA・Bのように、土地を自用地の80%で評価した場合の注意点もあります。残りの20%相当額(この例では2,000万円)は、会社の株式を純資産価額で評価するときに会社の資産に加えます。個人と会社を通じて、土地の価額の全体が評価に反映される仕組みです。

他の税金との関係

被相続人は株式を持たず、長男だけが株主の会社でも対象になりますか。

対象になり得ます。50%超の判定は、被相続人とその親族その他特別の関係がある者の持ち分を合計して行います。親族だけで50%超を持っていれば、この要件を満たします。

社長の家族だけが住んでいる社宅の敷地は対象になりますか。

対象外です。社宅の敷地は原則として会社の事業用として扱われますが、被相続人の親族だけが使っていた社宅は除かれます。

専門家向け:根拠と実務論点

根拠

  • 措法69条の4第3項第3号、措令40条の2、措規23条の2(議決権の全部が制限された株式・出資を総数等から除外)、措通69の4-23・69の4-24。
  • タックスアンサーNo.4124の利用区分では、②(特定同族会社事業用宅地等)と③(同じ利用区分で②の要件を満たさない場合の貸付事業用宅地等)が同じ利用区分を共有します。④(一定の法人の貸付事業用)は貸付事業用宅地等です。

実務論点

  • 3年以内の除外規定は特定同族会社事業用宅地等にはありません。役員要件等を欠いて③の貸付事業用宅地等とする場合は、措法69条の4第3項第4号の3年以内貸付宅地等の規定が適用されます。
  • 宅地等の範囲は、法人に貸し付けられていた宅地等(貸付けが事業に該当するもの)と、被相続人・生計一親族所有の建物等で法人に貸し付けられていたものの敷地です。生計一親族所有の建物は、その親族が敷地を被相続人から無償で借りている場合に限られ、建物の貸付けも事業に該当するものに限られます。社宅は、被相続人の親族のみが使用していたものを除き、法人の事業用です。
  • 申告期限までの建替えは措通69の4-19を準用します(質疑応答事例「特定同族会社に貸し付けられていた建物が建て替えられた場合」)。法人所有建物の建替え中の相続開始は、措通69の4-5によります(質疑応答事例「法人所有建物の建替え中に相続開始した場合」)。
  • 法人版事業承継税制との併用制限は措法69条の4第6項に規定がなく、併用できます。個人版とも併用できますが、特定同族会社事業用宅地等の面積をAとすると、個人版の猶予対象宅地等の限度面積は400㎡−Aに調整されます。
  • 無償返還届出・相当の地代による貸宅地の自用地価額80%評価は1985年(昭和60年)6月5日付課資2-58ほか、純資産価額への20%相当額の算入は1968年(昭和43年)10月28日付直資3-22によります。無償返還届出かつ使用貸借の場合は自用地価額で評価し、本特例の対象外です。
  • 添付書類は、法人の定款の写し(相続開始時に効力を有するもの)と、相続開始直前の発行済株式の総数等と被相続人等の保有株式数等を記載した書類で、法人が証明したものです。
第8章

貸付事業用宅地等:3年以内の貸付け・駐車場

アパート・貸家・貸地・月極駐車場など、貸付けに使っていた土地は、要件を満たせば200㎡まで評価額が50%減額されます。この章では、要件、相続開始前3年以内に貸し始めた土地の除外、事業的規模の判断、空室と駐車場の扱い、親族への貸付けを説明します。

この章の結論

  • 被相続人等の不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業・準事業に使っていた土地が対象です。取得した親族が申告期限まで貸付けを引き継いで続け、持ち続ければ、200㎡まで50%減額されます。事業的規模でない小さな貸付けも対象です。
  • 相続開始前3年以内に新たに貸し始めた土地は、原則として対象外です。被相続人等が相続開始の日まで3年を超えて事業的規模の貸付け(特定貸付事業)をしていれば、例外として対象になります。
  • 構築物のない青空駐車場や、親族への無償・著しく低い賃料での貸付けは対象外です。空室は、すぐ入居できる状態で募集を続けていれば対象に含まれます。

貸付事業用宅地等の要件

貸付事業用宅地等は、相続開始の直前に被相続人等の貸付事業に使われていた宅地等です。貸付事業とは、不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業と準事業をいいます。準事業とは、事業と呼ぶほどの規模ではないものの、相当の対価を得て継続的に行う貸付けです。

規模や設備、営業の形は問いません。アパート1棟や貸家1軒でも、相当の対価で継続して貸していれば対象になります。

貸付事業用宅地等の取得者の要件
貸付けをしていた人貸付けについての要件保有の要件
被相続人取得した親族が、申告期限までに貸付事業を引き継ぎ、申告期限まで続けていること申告期限まで保有
被相続人と生計を一にしていた親族その親族が、相続開始前から申告期限まで自分の貸付事業を続けていること申告期限まで保有

貸付けに使っていたかは、相続開始の時点で現実に貸付事業に使われていたかで判定します。貸すための建物を建築中だった土地や、入居者の募集を始めただけの土地は、原則として対象になりません。

建物や構築物の持ち主は、被相続人でなくても構いません。借地人が建物を建てている貸地(貸宅地)も、相当の対価で貸していれば対象です。同じ土地が特定同族会社事業用宅地等(80%)の要件を満たす場合は、そちらが優先します(特定同族会社事業用宅地等)。

限度面積は200㎡です。ほかの区分と組み合わせる場合は、面積の調整が必要です。特定事業用等の面積×200/400+特定居住用の面積×200/330+貸付事業用の面積を、200㎡以下に収めます(限度面積の調整と有利な選び方)。

計算例:アパート敷地200㎡・路線価30万円

減額は、貸家建付地として評価した後の価額に50%を掛けて計算します。

計算例:アパートの敷地200㎡(路線価30万円)

前提:被相続人が全室賃貸中のアパートを持ち、敷地は200㎡、路線価30万円(奥行価格補正率1.00と仮定)、借地権割合60%、借家権割合30%です。3年を超えて貸している土地で、長男が相続し、申告期限まで賃貸を続けて保有します。ほかの区分の特例は選びません。

自用地としての価額:30万円×1.00×200㎡=6,000万円
貸家建付地の評価額:6,000万円×(1−60%×30%×賃貸割合100%)=4,920万円
減額される金額:4,920万円×50%=2,460万円
課税価格に算入する額:4,920万円−2,460万円=2,460万円

答え:自用地なら6,000万円の土地が、貸家建付地の評価と50%減額で2,460万円になります。

貸家建付地の評価の仕組みは、貸家建付地・借地権・貸宅地・使用貸借で説明しています。

貸付用不動産の評価の見直し(通達案)

2026年(令和8年)9月18日に、国税庁が通達案を公表しました通達案。課税時期前5年以内に購入・新築した一定の貸付用不動産を、「通常の取引価額」で評価する内容です。2027年(令和9年)1月1日以後の相続・贈与から適用する予定で、2026年10月17日時点では意見公募中です。

小規模宅地等の特例の要件を変えるものではありません。ただし、対象になる物件は評価額そのものが変わるため、減額計算との関係は最終的な通達と国税庁の説明で確認する必要があります(2027年からの貸付用不動産・小口化商品の評価見直し)。

相続開始前3年以内に貸し始めた土地

2018年(平成30年)4月1日以後の相続では、相続開始前3年以内に新たに貸付事業に使い始めた宅地等(3年以内貸付宅地等)は、原則として対象外です施行中。

ただし、相続開始の日まで3年を超えて特定貸付事業を続けていた被相続人等の、その貸付事業に使われた宅地等は除外されません。特定貸付事業とは、準事業以外の貸付事業、つまり事業的規模の貸付けです。被相続人の貸付けが準事業にとどまる場合、3年以内に貸し始めた土地は対象外です。

3年を超えて引き続き貸付事業に使っていた宅地等は、準事業でも対象です。2018年4月1日から2021年(令和3年)3月31日までの相続に設けられていた経過措置は、終了しています。

  1. 相続開始時に貸していたか現実に貸付事業に使われていたかで判定します。建築中や募集だけの段階は、原則として対象外です。
  2. 貸付けの期間相続開始前3年を超えて引き続き貸付事業に使っていれば、規模にかかわらず4へ進みます。
  3. 3年以内の場合被相続人等が相続開始の日まで3年を超えて特定貸付事業を続けていれば4へ進みます。準事業だけなら対象外です。
  4. 取得者の要件申告期限まで貸付けを引き継いで続け、保有していれば、200㎡まで50%減額されます。

「新たに貸付事業に使い始めた」とは、貸付け以外に使っていた土地や、使っていなかった土地を貸付事業に使い始めた場合です。賃貸借契約の更新は当たりません。次の場合も、次の入居までほかの用途に使っていないことなどを条件に、「新たに」には当たりません。

  • 続けて貸していた建物で、入居者の退去後に速やかに募集して貸した場合
  • 建替え後に速やかに募集して貸した場合
  • 災害で休業した後、修繕などの準備をして貸付けを再開した場合

建替えで広がった敷地の部分は、新たに貸付けに使ったものになります。3年以内に特定貸付事業として貸し始めても、相続開始までに準事業の規模になっていた場合は、例外の対象になりません。

例外を使う場合は、被相続人等が3年を超えて特定貸付事業を行っていたことが分かる書類を、申告書に添付します。

事業的規模(特定貸付事業)の判断

特定貸付事業かどうかは、社会通念上、事業と呼べる程度の規模で貸付けをしていたかで判断します。所得税の区分が目安になります。

特定貸付事業と準事業の区分
貸付けの形特定貸付事業(事業的規模)準事業
不動産の貸付け不動産所得を生ずべき事業として行われているそれ以外の貸付け
自ら管理運営する駐車場・自転車駐車場事業所得を生ずべきものに当たる雑所得に当たる

建物の貸付けについて、所得税には形式基準があります。貸間・アパートなどは独立した室数がおおむね10室以上、独立家屋はおおむね5棟以上であれば、原則として事業とされます(いわゆる5棟10室基準)。

ただし、実質で判断するのが原則で、この基準は目安です。貸地や駐車場の規模も、実態に即して判断します。

一時的な空室と駐車場の扱い

相続開始の時点で空室があっても、いつでも入居できる状態で管理していれば、空室部分の敷地も対象に含まれます。空室になった直後から、不動産業者を通じて入居者を募集しているような場合です。一方、親族を住まわせる予定で募集をやめていた空室部分は対象外です。

8室中5室が空室で、うち3室は長期の空室、残る2室も仲介の実績がなく広告を放置していた例があります。積極的な募集とはいえないとして、空室部分は対象外とされました(2023年(令和5年)4月12日裁決)。老朽化ですぐには貸せず、募集もしていない空き家も、一時的な空室ではないとされています(2000年(平成12年)12月22日裁決)。

計算例:国税庁の記載例による空室がある場合

前提:土地200㎡(路線価20万円)の上に10室のアパートがあり、うち1室は親族を住まわせるため募集をやめていた空室です。借地権割合70%、借家権割合30%で、自用地としての価額は20万円×200㎡=4,000万円です。

空室部分と賃貸部分の計算
区分計算金額
土地全体の評価額4,000万円×(1−70%×30%×180㎡÷200㎡)3,244万円
空室部分(20㎡)4,000万円×20㎡÷200㎡(減額なし)400万円
賃貸部分(180㎡)の評価額3,600万円×(1−70%×30%)2,844万円
賃貸部分の減額2,844万円×50%1,422万円
課税価格に算入する額400万円+(2,844万円−1,422万円)1,822万円

答え:課税価格に算入する額は1,822万円です。募集をやめていた空室部分は、評価でも賃貸されていないものとして扱われ、50%減額も受けられません。

財産評価で貸家建付地の賃貸割合を計算するときの「一時的な空室」は、空室期間が例えば1か月程度かなど、別の基準で判断します。小規模宅地等の判定とは根拠も基準も異なるため、混同しないよう注意します。

駐車場は、アスファルトやコンクリートの舗装などの構築物があり、相当の対価で継続して貸していれば対象になります。構築物のない青空駐車場(更地のまま)は、建物や構築物の敷地ではないため対象外です。

駐車場の状態と判定
駐車場の状態判定
アスファルト・コンクリート舗装などの構築物があり、相当の対価で継続して貸している対象(3年以内の貸付けの制限、引き継ぎ・保有の要件も確認)
構築物のない青空駐車場(更地のまま)対象外
砂利敷き砂利の状態・管理・帳簿への計上などの事実で判断(否認された裁決あり)
舗装はあるが、親族に相場より著しく低い賃料で、契約書もなく貸している対象外(相当の対価・継続性がない)

砂利敷きの裁決(1995年(平成7年)1月25日)では、約10年前に敷いた砂利の多くが地中に埋もれ、土地の一部のような状態でした。決算書に構築物としての計上も減価償却もなかったため、構築物の敷地ではないとされました。同じ裁決では、アスファルト敷きの土地も事業に当たらないとされています。親族への賃料が周辺相場の約3分の1で、契約書も期間の定めもなかったためです。

所有者が自ら経営する月極駐車場の土地は、評価は自用地としての価額のままです。それでも、貸付事業用宅地等の50%減額は使えます。

親族に貸している土地:無償・低額の貸付けは対象外

相当の対価を受け取らない貸付け(使用貸借)は、貸付事業に当たりません。無償のほか、固定資産税程度の地代しか受け取っていない場合も含みます。親族間の貸し借りでは、次の区別に注意します。

親族・同族会社への貸付けと特例
貸し方判定
生計が別の子が、被相続人の土地を無償で借りて子名義の家に住んでいる対象外(被相続人等の居住用でも貸付事業用でもない)
生計を一にする子が、被相続人の土地を無償で借りて子名義の家に住んでいる生計一親族の居住用として、特定居住用宅地等になり得る
親族に、相当の対価に満たない地代・家賃で貸している貸付事業に当たらず対象外
同族会社に無償で貸している特定同族会社事業用宅地等にも貸付事業用宅地等にも当たらない
生計を一にする親族が、被相続人の建物で家賃を払って事業をしている被相続人の貸付事業用(無償なら生計一親族の事業用)

家賃を受け取るかどうかで、使える区分と減額割合(80%か50%か)が変わります。生計を一にする親族の居住用の要件は、生計を一にする親族・二世帯住宅で説明しています。

よくある誤り

  • 相続の直前に土地を貸し始めたり、更地にアパートを建てて貸し始めたりした場合は、3年以内貸付宅地等として原則対象外です。例外は、被相続人等が3年を超えて事業的規模の貸付けを続けていた場合に限られます。
  • 空室は一律に対象外でも、一律に対象でもありません。すぐ入居できる状態で募集を続けていたかで判断します。
  • 青空駐車場は対象外です。舗装していても、親族に著しく低い賃料で貸していれば対象外です。
  • 固定資産税程度の地代で親族や同族会社に貸している土地は、使用貸借と同じで対象外です。

他の税金との関係

専門家向け:根拠と実務論点

根拠

  • 措法69条の4第3項第4号(3年以内貸付宅地等の除外は同号かっこ書)、措令40条の2第1項(準事業)・第7項(駐車場業等の範囲)・第19項(特定貸付事業)、措通69の4-13(不動産貸付業等の範囲)・69の4-24の2(一時的な空室)・69の4-24の3〜69の4-24の8(3年以内貸付宅地等)。
  • 経過措置:平成30年改正法附則118条4項(2018年4月1日〜2021年3月31日の相続は「相続開始前3年以内」を「平成30年4月1日以後」と読み替え)。経過措置は終了しています。

実務論点

  • 特定貸付事業の判定は措通69の4-24の4によります。不動産の貸付けは所基通26-9、自ら管理運営する駐車場等は所基通27-2を参照し、不動産所得を生ずべき事業・事業所得に当たるかで判定します。
  • 生計一親族が自己の貸付事業の用に供した場合など、「被相続人等の当該貸付事業の用に供された」に当たらない場合があります(措通69の4-24の6)。
  • 前の相続との関係:措令には、第一次相続の被相続人が特定貸付事業を行っていた期間を、第二次相続の被相続人の期間とみなす規定があるとされています。被相続人が3年以内に相続・遺贈で取得した貸付事業用宅地等を引き続き貸付事業に供していた場合は「新たに」に当たらないとする規定もあるとされています(いずれも現行の条文と項番号を確認してください)。
  • 賃借人付きの物件を購入した場合(いわゆるオーナーチェンジ)が「新たに貸付事業の用に供された」に当たるかは、国税庁の明示的な取扱いを確認できていません。個別に慎重な検討が必要です。
  • 一時的な空室は、措通69の4-24の2(本特例)と評基通26(賃貸割合)で根拠が別です。国税庁の申告書記載例「共同住宅の一部が空室となっていた場合」、2023年4月12日裁決、2000年12月22日裁決を参照してください。
  • 構築物の判定と相当の対価については、1995年1月25日裁決が砂利敷きの駐車場と親族への低額賃貸の両方を否認しています。相当の対価は相続開始直前に現実に得ていた対価で客観的に判断します(1997年(平成9年)11月19日裁決)。
  • 他に貸し付けられていた宅地等(措通69の4-4(1))は、建物・構築物の所有者が被相続人でなくても事業用宅地等に含まれます。事業者が舗装したコインパーキング用地の一括貸しへの当てはめは国税庁の明示資料が確認できておらず、相当の対価・3年以内貸付宅地等とあわせて個別判断です。
  • 貸付用不動産の評価の見直し(通達案)は本特例の条文改正ではありません。見直し後の評価額と減額計算との関係は、最終通達と国税庁の解説で確認が必要です。
第9章

限度面積の調整と有利な選び方

特例を使える宅地が複数あるときは、どの宅地を何㎡選ぶかで減額の大きさが変わります。この章では、限度面積の計算方法と減額が最大になる選び方を示し、減額の最大化と税額の最小化が一致しない場面も確認します。

この章の結論

  • 貸付事業用宅地等を選ばなければ、特定居住用宅地等の330㎡と特定事業用等宅地等の400㎡は別枠で、合計730㎡まで使えます。
  • 貸付事業用宅地等を1㎡でも選ぶと、「事業用等の面積×200/400+居住用の面積×200/330+貸付用の面積≦200㎡」で判定します。面積は被相続人ごとに、取得者全員の分を合計します。
  • 貸付事業用宅地等を含めて選ぶときは、「200㎡枠1㎡当たりの減額額」(居住用は単価×1.32、事業用等は単価×1.6、貸付用は単価×0.5)で比べます。ただし配偶者の税額軽減があるため、減額が最大の組合せが、納める税額の最小になるとは限りません。

限度面積の基本:730㎡の完全併用と200㎡の調整式

小規模宅地等の特例には、区分ごとに使える面積の上限(限度面積)があります。特定居住用宅地等は330㎡です。特定事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等(あわせて「特定事業用等宅地等」)は合計400㎡、貸付事業用宅地等は200㎡です。

貸付事業用宅地等を選ばない場合、居住用と事業用等は枠を取り合いません。両方を選べば、合計730㎡まで減額できます。この完全併用は、2015年(平成27年)1月1日以後の相続から認められています施行中。

貸付事業用宅地等を選ぶ場合は、次の調整式を満たす範囲でしか選べません。

A×200/400+B×200/330+C≦200㎡
A:特定事業用等宅地等の面積の合計
B:特定居住用宅地等の面積の合計
C:貸付事業用宅地等の面積の合計

この式は、貸付事業用宅地等の200㎡を共通の物差しにして、居住用と事業用等の面積を換算するものです。居住用は1㎡で200/330㎡分(約0.61㎡)、事業用等は1㎡で200/400㎡分(0.5㎡)の枠を使います。居住用330㎡か事業用等400㎡を選ぶと、それだけで200㎡の枠を使い切ります。

区分ごとの限度面積と200㎡枠への換算(2026年(令和8年)10月時点)
区分減額割合単独の限度面積1㎡が使う200㎡枠200㎡枠1㎡当たりの減額額
特定居住用宅地等80%330㎡約0.61㎡(200/330)単価×80%×330/200=単価×1.32
特定事業用等宅地等80%400㎡0.5㎡(200/400)単価×80%×400/200=単価×1.6
貸付事業用宅地等50%200㎡1㎡単価×50%=単価×0.5

単価は、その宅地の1㎡当たりの評価額です。特定事業用等宅地等は、特定事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等の合計です。

A・B・Cは、被相続人ごとに合計します。相続人や受遺者がそれぞれ330㎡や200㎡を使えるわけではありません。面積の端数は合計が200㎡を超えないように処理し、国税庁の記載例では0.01㎡未満を切り捨てています。

選んだ宅地が限度面積を超えていると、選んだ宅地の全部に特例が使えません。この場合も、期限後申告や修正申告で限度面積の範囲に収めれば、適用を受けられます。

国税庁の記載例で調整計算を確かめる

国税庁の記載例(資産課税課情報第9号、2021年(令和3年)4月1日)を使って、調整計算を確かめます。

記載例1:自宅・貸室・店舗が入った3階建ての敷地

前提:宅地600㎡の上に3階建ての建物があります。3階は居住用(配偶者乙が居住)、2階は貸室、1階は被相続人の小売店です。配偶者乙と子丙が宅地を2分の1ずつ相続し、丙が小売業を引き継ぎました。各階に対応する敷地は200㎡で、乙と丙の持分は各階100㎡ずつです。

乙は小売業を引き継がないので、1階部分は特定事業用宅地等になりません。丙は3階に住んでいないので、3階部分は特定居住用宅地等になりません。そこで、乙の特定居住用100㎡と丙の特定事業用100㎡を全部選び、残りの枠で乙の貸付事業用を選びます。

100㎡×200/400=50㎡、100㎡×200/330=60.606…㎡
200㎡−50㎡−60.606…㎡=89.393…㎡→89.39㎡(0.01㎡未満切捨て)

答え:乙の特定居住用100㎡と丙の特定事業用100㎡に加えて、乙の貸付事業用は89.39㎡まで選べます。

国税庁記載例の調整計算(現行の限度面積による)
記載例先に選んだ宅地貸付事業用に残る枠の計算貸付事業用の面積
記載例1特定居住用100㎡・特定事業用100㎡200−100×200/330−100×200/400=89.393…89.39㎡
記載例2特定居住用160㎡200−160×200/330=103.030…103.03㎡
記載例3特定同族会社事業用100㎡200−100×200/400=150150㎡

2010年(平成22年)の古い記載例には、特定居住用の限度面積が240㎡だった時代の計算が残っています。そこでは記載例1の貸付事業用を66.66㎡としていますが、現行の限度面積(2015年1月1日以後の相続)では89.39㎡です。古い資料の数値は使いません。

どの宅地から選ぶと有利か

減額額は「1㎡当たりの評価額(単価)×減額割合×選んだ面積」です。単価は路線価ではなく、画地調整や貸家建付地の評価減を反映した評価額を面積で割って求めます。

貸付事業用宅地等を選ばないなら、居住用と事業用等は枠を取り合わないので、区分ごとに単価の高い宅地から選びます。貸付事業用宅地等を含めるなら、全員で200㎡の枠を取り合うため、「200㎡枠1㎡当たりの減額額」(上の表)で比べます。

この物差しで比べると、貸付用地の単価が居住用地の単価の2.64倍を超えるとき(0.5×2.64=1.32)は、貸付用を優先した方が有利です。事業用地と比べる場合は、3.2倍を超えるとき(0.5×3.2=1.6)です。それ以外は、減額割合80%の居住用や事業用等を先に選ぶ方が、減額は大きくなります。

貸付用を1㎡でも選ぶと、730㎡の完全併用は使えなくなります。自宅と事業用地をともに持つ場合は、貸付用を選ばない方が減額が大きいこともあります。次の手順で、必ず両方のパターンを計算します。

  1. 候補を一覧にする要件を満たす宅地ごとに、取得者・区分・面積・評価額を書き出します。
  2. 単価を出す評価額を面積で割ります。貸家建付地の評価減などを反映した後の評価額を使います。
  3. 貸付用を選ばない場合を計算する居住用は330㎡、事業用等は400㎡まで、それぞれ単価の高い宅地から選びます。
  4. 貸付用を含める場合を計算する200㎡枠1㎡当たりの減額額が大きい宅地から順に、調整式の合計が200㎡になるまで選びます。
  5. 減額と税額の両方で比べる3と4の減額の合計を比べたうえで、各人の納付税額の合計でも確かめます。

計算例:自宅と貸駐車場のどちらを選ぶか

計算例1:自宅の敷地と貸駐車場(3つのケース)

前提:父が2026年中に亡くなり、相続人は母と長男(別居・持家あり)です。自宅の敷地330㎡(路線価15万円、奥行価格補正率などは1.00と仮定)は母が取得し、評価額は150,000円×1.00×330㎡=4,950万円です。

貸駐車場Aにはアスファルト舗装・区画線・フェンスがあり、父が相続開始の3年超前から、第三者に月極で相当の対価により貸していました。長男が取得し、申告期限まで駐車場経営を引き継いで保有します。所有者が自ら経営する月極駐車場なので、評価は自用地としての価額です。

自宅の200㎡枠1㎡当たりの減額額は、150,000円×80%×330/200=198,000円です。駐車場Aは、単価(路線価×1.00)×50%で求めます。

計算例1:駐車場Aの条件ごとの最適な選び方
項目ケース1ケース2ケース3
駐車場Aの路線価・面積20万円・200㎡60万円・200㎡60万円・100㎡
駐車場Aの評価額4,000万円1億2,000万円6,000万円
200㎡枠1㎡当たりの減額額(駐車場A)100,000円300,000円300,000円
減額が最大になる選び方自宅330㎡駐車場A200㎡駐車場A100㎡と自宅165㎡
減額額の合計3,960万円6,000万円4,980万円
他の選び方の減額額駐車場Aだけ:2,000万円自宅だけ:3,960万円自宅だけ:3,960万円、駐車場Aだけ:3,000万円

ケース1:自宅(198,000円)が駐車場A(100,000円)より大きいので、自宅を選びます。330㎡×200/330=200㎡で枠を使い切ります。減額=4,950万円×80%=3,960万円
ケース2:駐車場A(300,000円)が自宅(198,000円)より大きいので、駐車場Aを選びます。200㎡で枠を使い切ります。減額=1億2,000万円×50%=6,000万円
ケース3:駐車場A100㎡を全部選ぶと、残りの枠は100㎡です。自宅は100㎡×330/200=165㎡まで選べます(165×200/330+100=200)。減額=6,000万円×50%+4,950万円×165/330×80%=3,000万円+1,980万円=4,980万円

答え:減額が最大になるのは、ケース1が自宅330㎡(3,960万円)、ケース2が駐車場A200㎡(6,000万円)、ケース3が駐車場A100㎡と自宅165㎡の組合せ(4,980万円)です。ケース1で自宅の土地を課税価格に算入する額は、4,950万円−3,960万円=990万円です。

構築物のない青空駐車場は、建物や構築物の敷地ではないため特例の対象外です(貸付事業用宅地等:3年以内の貸付け・駐車場)。ケース3のように取得者が違う宅地を組み合わせるときは、母と長男を含む取得者全員の同意が必要です。

複数の宅地から減額が最大になる組合せは、次のツールで試算できます。ツールは減額の大きさを比べるもので、納める税額は相続税シミュレーターで確かめます。

計算ツールを表示するには JavaScript を有効にしてください。

減額が最大でも税額が最小とは限らない

相続税の総額は課税価格の合計で決まり、各人の税額は総額を課税価格の割合で分けて求めます。配偶者の税額が配偶者の税額軽減で0円になる場合、配偶者が取得した宅地を減額しても、配偶者の税額は0円のままです。一方で他の相続人の負担割合は上がるため、減額の小さい宅地を選んだ方が、家族全体の納付税額が少なくなることがあります。

計算例2:減額の小さい宅地を選んだ方が税額が少ない例

前提:相続人は母と長男の2人で、基礎控除額は3,000万円+600万円×2人=4,200万円です。母が自宅の土地(330㎡、評価額4,950万円)、長男が貸駐車場A(200㎡、路線価30万円、評価額6,000万円)を取得し、預貯金1億円は5,000万円ずつ分けます。駐車場Aは貸付事業用宅地等の要件を満たすものとします。

200㎡枠1㎡当たりの減額額は、自宅が198,000円、駐車場Aが300,000円×50%=150,000円です。減額だけを見れば、自宅を選ぶ方が有利です。

計算例2:特例を使う宅地による税額の違い
項目自宅を選ぶ駐車場Aを選ぶ
減額額3,960万円3,000万円
母の課税価格5,990万円9,950万円
長男の課税価格1億1,000万円8,000万円
課税価格の合計1億6,990万円1億7,950万円
相続税の総額2,437万円2,725万円
母の納付税額0円0円
長男の納付税額15,778,100円12,144,800円

自宅を選ぶ:(1億6,990万円−4,200万円)÷2=6,395万円、6,395万円×30%−700万円=12,185,000円、×2人=2,437万円。長男=2,437万円×1億1,000万円÷1億6,990万円=15,778,104円→100円未満切捨て
駐車場Aを選ぶ:(1億7,950万円−4,200万円)÷2=6,875万円、6,875万円×30%−700万円=13,625,000円、×2人=2,725万円。長男=2,725万円×8,000万円÷1億7,950万円=12,144,846円→100円未満切捨て

答え:駐車場Aを選ぶと、減額は960万円小さく、相続税の総額は288万円増えます。それでも長男の課税価格の割合が約65%から約45%に下がるため、長男の納付税額は3,633,300円少なくなります。母はどちらの場合も配偶者の税額軽減により0円です(あん分割合は端数を調整せずに計算)。

このほか、次の点も選び方に影響します。

  • 申告期限までの継続要件:申告期限までに売却や事業の廃止を予定している宅地は、要件を欠くため選べません。
  • 物納:物納を予定している土地に特例を使うと、減額後の価額で収納されます(納付・延納・物納)。
  • 売却:取得費加算の計算に使う「課税価格に算入された価額」は、特例を受けた宅地では減額後の価額です(相続税の取得費加算の特例)。
  • 二次相続:特例の選び方は遺産の分け方とあわせて検討し、配偶者が亡くなったときの相続まで試算します(二次相続まで考えた遺産分割)。

よくある誤り

  • 限度面積を相続人ごとに使えると考えるのは誤りです。330㎡・400㎡・200㎡は、被相続人ごとに全員の選択分を合計して判定します。
  • 貸付事業用宅地等を少し加えても730㎡の併用が使えると考えるのは誤りです。貸付用を1㎡でも選べば、調整式で判定します。
  • 申告後に、より有利な宅地へ入れ替えられると考えるのは誤りです。当初の申告で正しく特例を適用していれば、更正の請求や修正申告での選択替えは原則としてできません。

選択には取得者全員の同意が必要

特例の対象になり得る宅地等を取得した人が2人以上いるときは、どの宅地を選ぶかについて全員の同意が必要です。同意は、申告書の第11・11の2表の付表1にある同意欄に、特例を受けない人も含めた全員が氏名を記入して行います。

同意には例外の規定がなく、遺言の効力を争う訴訟中でも、全員の同意がなければ適用できないとした裁決があります(2014年(平成26年)8月8日)。計算例2のように、特例を受けない人の同意で家族全体の税額が下がる場合もあります。選び方は申告前に全員で確認し、手続は申告手続・分割要件・添付書類で確かめます。

他の税金・章とのつながり

専門家向け:根拠と実務論点

根拠

  • 限度面積と調整式:租税特別措置法69条の4第2項。取扱いは措置法通達69の4-10・69の4-11。
  • 配偶者居住権の目的となっている建物の敷地等:宅地等の面積に、敷地の価額(又は敷地利用権の価額)の合計に占める割合を乗じた面積を、特例の面積とみなします(措令40条の2第6項、2020年(令和2年)4月1日以後の相続から)。
  • 選択の同意:措規23条の2。第11・11の2表の付表1の同意欄で行い、特定計画山林の特例・個人版事業承継税制と併用する場合は付表2を使います。

実務論点

  • 措置法通達69の4-10の国税庁ウェブ版は、算式画像の代替テキストが「≧400平方メートル」と読める表記です。条文・No.4124・申告のしかたはいずれも「200㎡以下」で、判定は条文どおり行います。
  • 面積の端数は、資産課税課情報第9号の記載例で0.01㎡未満切捨てです。資産課税課情報第18号(2010年7月13日)の旧記載例は特定居住用240㎡で計算しており(記載例1の貸付事業用66.66㎡)、現行制度の数値例として引用しません。
  • 減額額は面積に比例し、各宅地を部分的に選べます。そのため貸付事業用宅地等を含むパターンでは、200㎡枠1㎡当たり減額額の大きい順に枠を埋めると減額の最大値が得られます(算式からの導出)。これと、貸付事業用を含まない730㎡パターンの最大値を比べます。
  • 減額最大と税額最小の乖離:各人の算出税額は相続税の総額を課税価格の割合であん分して求めます。配偶者の税額軽減は、配偶者の課税価格(1億6,000万円と法定相続分相当額のいずれか多い金額が上限)に対応する税額を軽減します。このため配偶者取得分の減額は、他の相続人のあん分割合を押し上げます。継続要件の確実性、物納の収納価額(減額後)、取得費加算の分子(減額後の価額)も選択に影響します。
  • 選択替え:当初申告で特例の適用に瑕疵がない場合、更正の請求・修正申告による対象宅地の入替えは原則不可です。遺留分減殺請求(2019年(令和元年)7月1日前に開始した相続)で当初の対象地を取得できなくなった場合等は、選択替えに当たらないとして変更を認めた質疑応答事例があります。
  • 特定計画山林の特例・個人版事業承継税制の猶予対象宅地等とも、面積の調整があります(申告手続・分割要件・添付書類)。
  • 貸付用不動産の評価の見直し通達案は、2027年1月1日以後の相続等から適用予定の評価の取扱いで、措法69条の4の要件や限度面積を改正するものではありません。
第10章

申告手続・分割要件・添付書類

小規模宅地等の特例は、宅地の要件を満たしていても、申告・遺産分割・全員の同意・添付書類のいずれかを欠くと使えません。この章では、特例を確実に受けるための手続を、期限の流れと書類のチェックリストで整理します。

この章の結論

  • 特例を使って税額が0円になる場合でも、申告書の提出が必要です。申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
  • 申告期限までに分割されていない宅地には使えません。「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付し、3年以内に分割すれば、分割の日の翌日から4か月以内の更正の請求で適用を受けられます。
  • 宅地の選択には、対象になり得る宅地等を取得した全員の同意が必要です。添付書類は宅地の区分ごとに決まっており、特定事業用宅地等は個人版事業承継税制と併用できません。

申告が適用の条件:税額0円でも申告する

特例を受けるには、相続税の申告書に特例を受ける旨を書き、計算明細書などの書類を添付して提出します。期限後申告書や修正申告書でも、同じ記載と添付をすれば適用を受けられます。

特例を使うと課税価格の合計が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下になる場合も、申告が必要です。申告が必要かどうかは、特例を使わないで計算した課税価格と税額で判定するためです。

申告期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内です。提出先は、被相続人の住所地を所轄する税務署長です。期限後の申告には、加算税や延滞税がかかることがあります(加算税・延滞税)。

計算例:特例で税額は0円になるが、申告が必要なケース

前提:相続人は配偶者と子の2人です。遺産は自宅の土地(330㎡、評価額4,950万円)と預貯金2,000万円で、自宅の土地は特定居住用宅地等の要件を満たします。

基礎控除額=3,000万円+600万円×2人=4,200万円
特例を使わない合計=4,950万円+2,000万円=6,950万円(基礎控除額を超える)
特例を使った合計=4,950万円×(1−80%)+2,000万円=990万円+2,000万円=2,990万円(基礎控除額以下)

答え:特例を使えば税額は0円ですが、特例を使わない合計が基礎控除額を超えるため申告が必要です。申告書を提出しなければ、特例は受けられません。

申告書を出さなかった場合や、記載・添付が漏れていた場合の救済規定(宥恕規定)もあります。税務署長がやむを得ない事情があると認めるときに、記載をした書類と添付書類を提出した場合に限って適用されます。例外的な救済なので、期限内に正しく申告することが前提です。

申告期限までの遺産分割と「3年以内の分割見込書」

申告期限までに共同相続人や包括受遺者の間で分割されていない宅地には、特例を使えません。分割がまとまらなくても、申告期限内に、民法の相続分や包括遺贈の割合で取得したものとして申告・納税します。

このとき申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、申告期限から3年以内に分割された宅地に特例を使えます。分割した後は、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をします。e-Taxで申告する場合、分割見込書はPDFで添付できます。

3年以内に分割できないやむを得ない事情(訴えの提起など)があるときは、承認の手続をとります。申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月以内に、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を税務署長に提出します。承認を受け、判決の確定などで分割できることになった日の翌日から4か月以内に分割すれば、特例を使えます。

  1. 相続開始亡くなったことを知った日の翌日から期限を数えます。
  2. 10か月以内申告と納税。未分割の宅地は相続分などで計算し、分割見込書を添付します。
  3. 申告期限から3年以内遺産を分割し、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をします。
  4. 3年を経過する日の翌日から2か月以内やむを得ない事情で分割できないときは、承認申請書を提出します。
  5. 分割できることになった日の翌日から4か月以内分割し、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をします。

相続人と財産が確定して分割できる状態なのに、代償金の額などで合意できないだけの場合は、やむを得ない事由に当たらないとした裁決があります(2014年(平成26年)6月2日)。分割の前に共同相続人の1人が亡くなったときは、その人の相続人などによる分割で取得分が確定すれば、亡くなった人が取得したものとして特例を適用できます。

遺言で宅地の取得者が決まっていれば、その宅地は未分割にならず、期限内の申告から特例を使えます。なお、未分割の財産には原則として配偶者の税額軽減も使えません。分割見込書を出して3年以内に分割すれば使える点は同じですが、更正の請求の期限の扱いは異なります(遺産が未分割のときの申告)。

他の章・税金とのつながり

宅地の選択と全員の同意

特例の対象になり得る宅地等を取得した人が2人以上いるときは、どの宅地に特例を使うかについて全員の同意が必要です。特定計画山林の特例や個人版事業承継税制の対象になり得る財産を取得した人も、同意する人に含まれます。

同意は、第11・11の2表の付表1(小規模宅地等についての課税価格の計算明細書)の「特例の適用にあたっての同意」欄に、特例を受けない人も含めて全員が氏名を記入して行います。特定計画山林の特例や個人版事業承継税制と併用する場合は、付表2(同意及び特定計画山林についての課税価格の計算明細書)を使います。

同意に例外の規定はありません。遺言の効力を争う訴訟中で全員の同意書がなかった事案でも、適用は認められませんでした(2014年8月8日裁決)。

当初の申告で正しく特例を適用した場合、更正の請求や修正申告で別の宅地に入れ替える「選択替え」は原則としてできません。また、2019年(令和元年)7月1日以後に開始した相続で、遺留分侵害額の請求に対して宅地で代物弁済した場合、その宅地を受け取った人は特例を使えません。相続・遺贈で取得したことにならないためで、当初の取得者の適用はそのまま維持されます。

令和8年分の申告書様式と添付書類

2026年(令和8年)1月1日から12月31日までに亡くなった人の申告には、令和8年分用の様式を使います。令和8年分は申告書の様式が変わっており、変更前の様式は使わないよう求められています。

小規模宅地等の特例で作成する主な様式(令和8年分用)
様式内容と使う場面
第11・11の2表の付表1小規模宅地等についての課税価格の計算明細書。選んだ宅地・面積・減額を記入し、同意欄に取得者全員が氏名を書きます。
付表1(続)・(別表1)・(別表1の2)付表1の続紙と別表で、必要に応じて作成します。
付表1(別表2)特定事業用宅地等についての事業規模の判定明細。相続開始前3年以内に新たに事業に使い始めた宅地等の15%基準を、宅地等ごとに判定します。
第11・11の2表の付表2同意及び特定計画山林についての課税価格の計算明細書。特定計画山林の特例や個人版事業承継税制と併用する場合に使います。

添付書類は、全員に共通の書類と、宅地の区分ごとの書類に分かれます。複数の区分に当てはまる場合は、それぞれの書類が必要です。下のチェックリストの「被相続人等」は、被相続人と、被相続人と生計を一にしていた親族のことです。

添付書類チェックリスト(国税庁「相続税の申告の際に提出していただく主な書類」2026年7月版による)

  • 【共通】被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本(図形式の法定相続情報一覧図の写し、又はそれらのコピーでも可。養子がいる場合は養子の戸籍の謄本又は抄本も)
  • 【共通】遺言書の写し又は遺産分割協議書の写し
  • 【共通】相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)
  • 【未分割の場合】申告期限後3年以内の分割見込書
  • 【特定居住用で、配偶者以外の同居親族・生計一親族が取得】その親族が自分の居住の用に供していることを明らかにする書類(特例を受ける人がマイナンバーを有する場合は不要)
  • 【家なき子】相続開始前3年以内の住所又は居所を明らかにする書類(マイナンバーを有する場合は不要)
  • 【家なき子】相続開始前3年以内に住んでいた家屋が、自己・配偶者・三親等内の親族・特別の関係がある一定の法人以外の者が所有する家屋であることを証する書類
  • 【家なき子】相続開始時に住んでいる家屋を、相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないことを証する書類
  • 【老人ホーム等に入所】被相続人の戸籍の附票の写し(相続開始日以後に作成されたもの)
  • 【老人ホーム等に入所】介護保険の被保険者証の写しや障害福祉サービス受給者証の写しなど、要介護認定等を受けていたことを明らかにする書類
  • 【老人ホーム等に入所】入居・入所の契約書の写しなど、施設の名称・所在地・種類を明らかにする書類
  • 【特定同族会社事業用】法人の定款の写し(相続開始時に効力を有するもの)
  • 【特定同族会社事業用】相続開始直前の発行済株式の総数等と、被相続人等が有する株式の数等を記載した書類(法人が証明したもの)
  • 【貸付事業用で、3年以内貸付宅地等に当たる】被相続人等が相続開始の日まで3年を超えて特定貸付事業(事業的規模の貸付け)を行っていたことを明らかにする書類
  • 【郵便局舎の敷地】総務大臣が交付した証明書

介護保険の被保険者証の写しは、2026年4月1日以後に申告書を提出するとき、保険者番号と被保険者番号の部分を復元できない程度に塗り潰します施行中。e-Taxでは、添付書類をPDFで提出できます。

他の制度との関係:事業承継税制・贈与・特定計画山林・郵便局舎

個人の事業用資産の納税猶予(個人版事業承継税制)とは、特定事業用宅地等について併用できません。被相続人から取得した特定事業用宅地等に1人でも小規模宅地等の特例を使うと、その被相続人から財産を取得した全員が、個人版の相続税の納税猶予を受けられません。逆に、後継者が個人版の適用を受ける場合、その被相続人(又は贈与者)から取得した特定事業用宅地等には、誰が取得しても小規模宅地等の特例を使えません。

特定居住用・特定同族会社事業用・貸付事業用の宅地等は、個人版と併用できます。ただし個人版の対象になる宅地等の限度面積(400㎡)を調整します。特定同族会社事業用宅地等を選んだ場合は400㎡からその面積を差し引き、特定居住用宅地等だけを選んだ場合は調整がありません。貸付事業用宅地等を選んだ場合は、選んだ面積を200㎡の枠に換算した合計を2倍して、400㎡から差し引きます。

個人版の宅地等の限度面積=400㎡−2×(A×200/400+B×200/330+C)
例(特定居住用宅地等165㎡と貸付事業用宅地等50㎡を選んだ場合):400㎡−2×(165㎡×200/330+50㎡)=400㎡−2×(100㎡+50㎡)=400㎡−300㎡=100㎡

A=特定同族会社事業用宅地等、B=特定居住用宅地等、C=貸付事業用宅地等の面積の合計で、いずれも小規模宅地等の特例で選んだものです。個人版と併用する場合、特定事業用宅地等は選べません。

特定事業用宅地等について、小規模宅地等の特例と個人版のどちらを使うかの比較(減額と納税猶予の違い、事業を続ける期間など)は、特定事業用宅地等の章で説明しています。

個人版の個人事業承継計画の提出期限は、2028年(令和10年)9月30日です。適用対象は、2019年(平成31年)1月1日から2028年12月31日までの贈与・相続等です期限あり。2026年10月時点では、どちらも期限内です。法人版事業承継税制(非上場株式等の納税猶予)には、小規模宅地等の特例との併用制限はありません(事業承継税制と自社株の承継手法)。

被相続人から贈与(死因贈与を除く)で取得した宅地等には、特例を使えません。相続開始前の贈与として相続税の課税価格に加算される宅地等や、相続時精算課税を選んだ宅地等も同じです。死因贈与で取得した宅地等は、遺贈と同じく対象になります(生前贈与加算(7年加算)と相続時精算課税の加算)。

小規模宅地等の選択面積を調整式で換算した合計(A×200/400+B×200/330+C)が200㎡に満たないときは、その差の範囲で特定計画山林の特例を使えます。重複して限度を超えると小規模宅地等の全部が不適用になりますが、是正すれば適用を受けられます。

郵便局舎の敷地には特別な取扱いがあります。対象は、2007年(平成19年)9月30日以前から、旧日本郵政公社との賃貸借契約で郵便局舎として貸していた建物の敷地です。一定の要件を満たすと、特定事業用宅地等(400㎡・80%)として特例を使えます。日本郵便株式会社が相続開始日以後5年以上郵便局舎として借り受ける見込みであることについて、総務大臣の証明が必要です。

よくある誤り

  • 「特例で税額が0円になるから申告しなくてよい」は誤りです。特例を使わない課税価格の合計が基礎控除額を超えるなら、申告しなければ特例を受けられません。
  • 未分割で申告するときに分割見込書を出さないと、3年以内に分割しても救済を受けにくくなります。申告書と一緒に提出します。
  • 分割後の更正の請求の期限は「分割の日の翌日から4か月以内」で、「申告期限から3年以内」ではありません。
  • 対象になり得る宅地等を取得した人のうち、特例を受けない人の氏名を同意欄に書き漏らす誤りがあります。全員の記入が必要です。
専門家向け:根拠と実務論点

根拠

  • 申告要件・宥恕規定、未分割の場合の取扱い(相続税法32条の更正の請求の準用)、個人版事業承継税制との関係:租税特別措置法69条の4。添付書類は措規23条の2。申告期限は相続税法27条。
  • 分割前に共同相続人が死亡した場合:措置法通達69の4-25。未分割の取扱い:措通69の4-26。
  • 個人版との併用制限:措通69の4-26の2、措令40条の7の10第7項、措通70の6の10-17。特定計画山林との調整:措法69条の5、措通69の4-12・69の5-12。
  • 郵便局舎:郵政民営化法180条、措通69の4-27〜69の4-37。

実務論点

  • 申告義務は、特例を適用しないものとして計算した課税価格・税額で判定します(相基通27-1)。
  • 更正の請求:分割の日の翌日から4か月を過ぎた更正の請求を不適法とした裁決があります(2021年(令和3年)6月22日)。分割見込書は申告書と一緒に提出します。
  • 相基通32-2(分割後の更正の請求の期限を「分割の日から4か月を経過する日」と「申告期限から5年を経過する日」のいずれか遅い日とする取扱い)は、配偶者の税額軽減(相続税法19条の2第2項ただし書)に限ったものです。小規模宅地等の特例には及ばず、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をします。
  • やむを得ない事由:訴訟の係属・多忙・分割の努力・共同相続人の通院を理由とする主張を退けた裁決(2007年5月15日)、代償金額等で合意できないだけの場合を退けた裁決(2014年6月2日)があります。
  • 同意:例外規定はなく、遺言の効力を争う訴訟中でも同意書がなければ不適用です(2014年8月8日裁決)。
  • 選択替え:当初申告に瑕疵がなければ原則不可です。遺留分減殺請求(2019年7月1日前に開始した相続)で当初の対象地を取得できなくなった場合等は、選択替えに当たらないとして変更を認めた質疑応答事例があります。
  • 15%基準:判定は付表1(別表2)で特定宅地等ごとに行います。提出書類一覧には、これに伴う追加の添付書類の記載はありません。
  • 個人版の猶予対象宅地等の限度面積:被相続人から取得した宅地等に小規模宅地等の特例を受ける者がいる場合は、400㎡から「小規模宅地等に相当する面積」を控除します(措法70条の6の10第2項1号イ)。その面積は措令40条の7の10第7項が定めています。特定同族会社事業用宅地等を選んだ場合(貸付事業用宅地等を選んだ場合を除く)はその面積です。貸付事業用宅地等を選んだ場合は、措法69条の4第2項3号イ〜ハで計算した面積の合計(A×200/400+B×200/330+C)に2を乗じた面積です。それ以外(特定居住用宅地等のみなど)は零です。
  • 郵便局舎の特例は、同じ宅地等について郵政民営化法180条の特例を既に受けていないこと(賃貸人一代限り)、2007年10月1日前から相続開始直前まで引き続き所有していたこと等が要件です。
  • 遺言で取得者が指定された宅地は未分割になりません。割合だけを指定する包括遺贈では、包括受遺者を含めた分割が必要です。
  • 物納:特例を適用した土地は、特例適用後(減額後)の価額で収納されます。
第11章

誤りやすい論点と事例

小規模宅地等の特例は減額が大きいため、判定を誤ると税額への影響も大きくなります。この章では、実務で誤りやすい論点を早見表と一問一答で確認し、判断の分かれ目になった裁決事例を整理します。

この章の結論

  • 誤りの多くは「生計や住まいを共にしていたか」「無償か有償か」「申告期限まで居住・保有・事業を続けたか」の3点で起きます。
  • 二世帯住宅は構造ではなく区分所有の登記の有無で、駐車場は舗装などの構築物の有無で、空室は募集の実態で判定します。
  • 贈与(相続時精算課税を含む)で取得した宅地や、選択について全員の同意がない宅地には使えません。申告期限までに分割されていない宅地も、分割見込書を出して3年以内に分割するなどしなければ使えません。

誤りやすい論点の早見表

まず、よくある思い込みと正しい扱いを一覧で確認します。要件の詳しい説明は、右の列の章にあります。

小規模宅地等の特例のよくある思い込みと正しい扱い(2026年(令和8年)10月時点)
よくある思い込み正しい扱い詳しく
「配偶者も申告期限まで住み続けないと使えない」配偶者には取得者の要件がなく、居住や保有の継続も不要です配偶者と同居親族
「限度面積は相続人ごとに使える」被相続人ごとに、全員の選択分を合計して判定します限度面積の調整
「税額が0円なら申告は不要」特例を使わない合計が基礎控除額を超えるなら、申告が必要です申告手続
「親の土地を無償で借りて家を建てた子の敷地も対象」生計が別なら対象外です(生計一なら対象になり得ます)生計一親族
「玄関が別の二世帯住宅は同居にならない」区分所有の登記がなければ、一棟の建物として判定します二世帯住宅
「老人ホームに入ったら自宅は対象外」要介護認定等・施設の種類・入所後の利用状況で判定します老人ホーム入所
「持ち家がなければ家なき子になれる」親族や同族法人の所有する家に住んでいた人などは対象外です家なき子特例
「青空駐車場も貸付事業用宅地等になる」構築物のない土地は対象外です貸付事業用宅地等
「3年ルールは事業用と貸付用で同じ」例外の基準が違い、特定同族会社事業用には条文上ありません特定事業用、貸付事業用
「生前贈与(精算課税)でもらった土地にも使える」贈与で取得した宅地は対象外です他の制度との関係
「申告後に有利な宅地へ入れ替えられる」正しく適用した後の選択替えは、原則としてできません有利な選び方

居住用宅地等の一問一答

生計を一にしていたかは、どのように判定しますか。

相続税法や租税特別措置法に定義はなく、同じ生活単位に属し、日常生活の費用を共通にしていたかを社会通念で個別に判断します。区分登記された二世帯住宅の2階に住む子について、生計一を否定した裁決があります(2016年(平成28年)9月29日)。水道・ガス・電気の契約と支払が別で、基本的な生活費を各自が負担していたことなどが理由です。

別居後に独立した生活を送っていた親族について、否定した裁決もあります(2008年(平成20年)6月26日)。詳しくは生計を一にする親族・二世帯住宅で説明します。

同居していたかどうかは、住民票の住所で決まりますか。

住民票だけでは決まりません。同居親族は、相続開始の直前にその家屋で被相続人と共に起居していた人で、生活の拠点の実態で判定します。国税庁の質疑応答事例でも、住民票の所在は判定の要素に挙げられていません。申告では居住を明らかにする書類の添付が求められますが、特例を受ける人がマイナンバーを有する場合は不要です。

亡くなる前に子の家へ移っていた場合や、入院していた場合はどうなりますか。

子の家に移って生活の拠点が移っていれば、元の自宅は相続開始直前の居住用ではなく、対象外です。退院後に長女の家で暮らし、所得税でも長女の夫の扶養親族とされていた事案では、旧宅は居住用でないとされました(2002年(平成14年)12月5日裁決)。一方、入院は一時的な滞在と整理されています。退院すれば住める状態で他の用途に使っていなければ、空家の期間の長短にかかわらず居住用です。

老人ホームに入所していた場合、元の自宅に使えますか。

使える場合があります。条件は次の3つです。

  • 相続開始の直前に、要介護認定・要支援認定(又は障害支援区分の認定)を受けていたこと
  • 入所先が、法令で定める老人ホーム等であること
  • 入所後に、自宅を事業用や新たな他の人の住まいにしていないこと

入所時に認定がなくてもよく、申請中に亡くなり後で認定された場合も認められます。入所前から一緒に住んでいた生計一の親族が住み続けるのは差し支えありませんが、一般のマンションなどへの転居は対象外です(老人ホームに入所していた場合)。

持ち家がなければ「家なき子」として使えますか。

それだけでは使えません。2018年(平成30年)4月1日以後の相続では、次の要件をすべて満たす必要があります施行中。

  • 被相続人に配偶者がいないこと
  • 被相続人と同居していた相続人がいないこと
  • 相続開始前3年以内に、本人・配偶者・三親等内の親族・特別の関係がある法人が所有する国内の家屋に住んだことがないこと(相続開始の直前に被相続人が住んでいた家屋を除く)
  • 相続開始時に住んでいる家屋を、過去に所有したことがないこと
  • 申告期限まで宅地を保有すること
  • 制限納税義務者のうち、日本国籍のない人でないこと

親が所有する家に住む孫、自分の同族会社が所有する家に住む子、持ち家を売った後もその家に住み続ける子は対象外です(家なき子特例)。

二世帯住宅で玄関が別なら、同居になりませんか。

現在の取扱いでは、建物の構造ではなく区分所有の登記の有無で判定します。区分所有の登記がなければ、構造上分かれていても一棟の建物として扱い、敷地全体が被相続人の居住用になります。子の居住部分に住む子が取得すれば、同居親族の要件(申告期限までの居住と保有)で対象になります。

区分所有の登記があると、対象は被相続人の居住部分の敷地だけです。別の区分に住む子は同居親族に当たらず、生計一でなければ対象外です。

同居していた子が、申告期限前に自宅を売ったらどうなりますか。

その子が取得した宅地には特例を使えません。同居親族は、相続開始の直前から申告期限まで住み続け、申告期限まで宅地を保有することが要件です。要件は申告期限までのものなので、申告期限より後の売却はこの要件に影響しません。

配偶者が取得した場合は、この継続要件自体がありません。同居していた相続人が申告期限前に転勤で家を離れても、配偶者や子が住み続け、転勤が終われば戻って家族と暮らす家であれば、居住を続けているものと認められます。

自宅のほかに別荘やセカンドハウスがある場合は、どちらに使えますか。

被相続人の居住用の宅地等が2つ以上ある場合、特定居住用宅地等の対象は、主として居住していた一つの宅地等に限られます。生活の拠点かどうかは、日常生活の状況や建物の構造・設備などを総合して判断し、主に趣味・娯楽・保養に使う建物は生活の拠点といえません。複数の居住用宅地を持っていても、相続開始直前に現に住んでいた部分に限るとした裁決があります(2006年(平成18年)6月6日)。

自宅の一部を店舗や貸室にしていた場合はどうなりますか。

特定居住用宅地等の対象は、居住用に使っていた部分だけです。店舗部分は事業用として、貸室部分は貸付事業用として、それぞれの要件で別に判定します。区分ごとに減額割合と限度面積が違うため、どの部分を選ぶかは限度面積の調整と有利な選び方の方法で比べます。

事業用・貸付用宅地等の一問一答

子や同族会社に土地を無償で貸していた場合はどうなりますか。

貸付事業用宅地等になりません。無償や、固定資産税程度など相当の対価に満たない地代での貸付けは、貸付事業に当たらないからです。生計が別の子が親の土地を無償で借りて自分名義の家に住んでいた場合、その敷地は被相続人等(被相続人と、生計を一にしていた親族)の居住用でも貸付事業用でもなく、対象外です。

生計を一にする子なら、生計一親族の居住用として、その子や配偶者が取得し要件を満たせば特定居住用宅地等になります。同族会社に無償で貸している土地は、特定同族会社事業用にも貸付事業用にも当たりません。

月極駐車場の土地にも使えますか。

アスファルト舗装やコンクリート舗装などの構築物があり、相当の対価で継続して貸していれば、貸付事業用宅地等(50%減額)の対象になります。構築物のない青空駐車場は対象外です。

砂利敷きは状態や帳簿への計上などの事実で判断されます。砂利の多くが消えて土地と一体のようになり、構築物の計上もなかった月極駐車場を否認した裁決があります(1995年(平成7年)1月25日)。所有者が自ら経営する月極駐車場の評価は自用地としての価額ですが、50%の減額は使えます。

アパートに空室があった場合、空室部分の敷地はどうなりますか。

空室になった直後から不動産業者を通じて入居者を募集するなど、いつでも入居できる状態で管理していれば、空室部分の敷地も貸付事業用宅地等になります。親族を住まわせる予定で募集をやめていた空室は対象外です。8室中5室が空室で、長期の空室や広告の放置など積極的な募集とはいえない事案では、空室部分の敷地が対象外とされました(2023年(令和5年)4月12日裁決)。貸家建付地の評価で使う「一時的な空室」は別の基準なので、混同しないようにします(貸家建付地・借地権・貸宅地・使用貸借)。

事業を引き継いだ子が、申告期限前に土地の一部を売った場合はどうなりますか。

売った部分は保有継続の要件を欠くため対象外ですが、残りの部分は要件を満たす限り特定事業用宅地等になります。申告期限までに同種や別種の事業へ一部転業しても、事業を営んでいるものとして扱われます。災害で休業していても、再開の準備が進められていれば、事業を続けているものとされます(特定事業用宅地等)。

相続開始前3年以内に始めた事業や貸付けの土地はどうなりますか。

特定事業用宅地等と貸付事業用宅地等には、相続開始前3年以内に新たに事業や貸付けに使い始めた宅地等を除く規定があります。ただし例外の基準が違います。

特定事業用は、その宅地等の上の建物や事業用の減価償却資産(被相続人等が有していたもの)の価額が、宅地等の価額の15%以上なら除外されません。貸付事業用は、被相続人等が3年を超えて事業的規模の貸付け(特定貸付事業)を続けていれば除外されません。特定同族会社事業用宅地等には、条文上この3年ルールはありません。

共有の土地、私道、マンションの数戸を持っている場合はどう考えますか。

共有持分の権利は、共有物全体に均等に及ぶと考えます。被相続人の持分が80%の300㎡の土地(持分相当240㎡)に、居住用の建物(敷地200㎡)と貸家(敷地100㎡)がある場合を考えます。居住用に対応する面積は240㎡×200/300=160㎡、貸家に対応する面積は240㎡×100/300=80㎡です。

自宅の維持や効用に欠かせない私道の共有持分も対象になります。マンションは、区分所有された部屋ごとの敷地を一つの宅地等として判定します。

取得の経緯・登記・信託の一問一答

建物が未登記でも特例を使えますか。

条文の要件は「建物又は構築物の敷地」であることと利用の実態で、建物の登記は要件に挙げられていません。登記の有無が結論を左右するのは、二世帯住宅などで区分所有建物に当たるかどうかの判定です。ただし未登記の建物は登記で所有関係を示せないため、固定資産税の課税明細などで所有と利用の状況を説明できるようにしておきます。

相続時精算課税で贈与を受けた土地にも使えますか。

使えません。被相続人から贈与(死因贈与を除く)で取得した宅地等は、相続時精算課税を選んだものや、生前贈与加算で相続税の課税価格に加わるものも含めて対象外です。死因贈与で取得した宅地等は、遺贈と同じく対象になります。自宅の土地を生前に贈与すると、特例を使う機会がなくなる点に注意します(暦年課税と相続時精算課税の選び方)。

家族信託をした自宅の土地にも使えますか。

使える場合があります。信託に関する権利を相続・遺贈で取得した場合です。その信託財産に属する宅地等が、相続開始の直前に被相続人等の居住用や事業用だったときは、特例の対象に含まれます(家族信託・遺言・認知症対策と税務)。

古い解説・記載例に注意

  • 特定居住用宅地等の限度面積240㎡、事業用等との併用上限400㎡は、2014年(平成26年)12月31日以前の相続の数値です。現在は330㎡で、事業用等と併用すれば730㎡です。
  • 家なき子は、2018年4月1日以後の相続から要件が厳しくなりました。「本人と配偶者の持ち家に3年以内に住んでいなければよい」という旧要件で判定しないようにします。
  • 3年以内の貸付け・事業を除外する規定の経過措置は、貸付事業用が2021年(令和3年)3月31日、特定事業用が2022年(令和4年)3月31日で終わっています新規適用終了。

他の税金・章とのつながり

専門家向け:根拠と実務論点

判断が分かれた主な裁決(国税不服審判所の公表裁決)

小規模宅地等の特例に関する主な裁決
裁決日論点判断の要旨
1995年1月25日砂利敷きの月極駐車場、親族への低額賃貸砂利が地中に埋もれ、構築物の計上や減価償却もない駐車場を、構築物の敷地に当たらないと判断。アスファルト部分も、賃料が周辺相場の約3分の1(1㎡当たり年約4,825円対約13,447円)で契約書も期間の定めもなく、相当の対価と継続性を欠くとして否認
1997年(平成9年)11月19日相当の対価相続開始直前に現実に得ていた対価で客観的に判断
2000年(平成12年)12月22日老朽化した空家直ちに賃貸できず募集もしていない空家を、一時的な空室に当たらないと判断
2002年12月5日長女宅への転居生活の拠点が移っているとして、旧宅を居住用でないと判断
2006年6月6日複数の居住用宅地特例は相続開始直前に現に居住していた部分に限ると判断
2008年6月26日別居親族の生計一独立した生活を送り、入院費等も被相続人名義の口座から支払われていたとして、生計一を否定
2008年10月2日終身利用の有料老人ホーム(改正前の取扱い)一時的な入所でないとして旧宅を否認(現行の要介護認定等の要件を満たせば、結論は異なります)
2015年(平成27年)6月25日共有地の利用区分利用区分ごとの面積に、要件を満たす取得者の持分を乗じて判定
2016年9月29日区分登記された二世帯住宅(2010年(平成22年)の相続で改正前)被相続人の家屋を1階のみとし、2階に住む兄を同居親族にも生計一親族にも当たらないと判断
2023年4月12日長期の空室積極的な募集がないとして、空室部分の敷地を対象外と判断

根拠と実務上の注意

  • 生計を一にする:措法69条の4に定義規定はありません。所得税基本通達2-47が実務で参照されますが、上記の裁決はこれを正面から判断していません。
  • 同居の判定:措置法通達69の4-21は、一棟の建物が構造上区分された独立部分からなる場合、被相続人の家屋をその独立部分とします(家なき子の同居相続人の判定)。一方、同居親族の「一棟の建物に居住していた親族」は、区分所有の登記の有無で範囲が異なります(措法69条の4第3項第2号イ、措通69の4-7の4)。
  • 使用貸借:措通69の4-4・69の4-7・69の4-23。生計一親族が被相続人所有の建物で無償で事業をしていれば生計一親族の事業用、家賃を払っていれば被相続人の貸付事業用です。
  • 老人ホーム:措令40条の2第2項・第3項、措通69の4-7の3。要介護認定等の有無は相続開始の直前で判定します。
  • 空室:小規模宅地等は措通69の4-24の2、財産評価の賃貸割合は評基通26で、根拠と基準が別です。
  • 共有家屋(貸家)の敷地:生計一の妻が夫の家屋持分と宅地を相続して貸付けを続ける場合、妻自身の家屋持分に対応する部分(自用地評価の部分)も貸付事業用宅地等の対象です(質疑応答事例)。
  • 信託:措通69の4-1の2(相続税法9条の2第6項ただし書の権利等を除く)。
  • 未登記建物や家なき子の「所有」は、登記の有無ではなく実質で判定されると解されます。固定資産税の課税明細など、所有関係を示す資料で立証できるようにします。
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ジェイスタート会計事務所は、公認会計士・税理士の事務所として、生前対策から相続税の申告、不動産の売却、会社・事業の次世代への引き継ぎまでを支援しています。ご相談の内容は守秘義務のもとで取り扱います。

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  • 土地の評価(不整形地補正・小規模宅地等の特例)
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  • 生前対策・相続時精算課税の活用
  • 不動産売却における特別控除の適用
  • 事業承継税制のご提案と活用

相続税の申告期限は10か月。特例の適用は期限内申告が前提です。まずは期限とご状況をお知らせください。初回のご相談は無料です。お問い合わせには原則として翌営業日までにお返事します。

このページの出典・参考資料(69件)

このページは、2026年10月17日時点で確認できた法令・通達・国税庁などの公表資料にもとづく一般的な解説です。税制や運用は改正されることがあり、個別の事情によって取扱いが異なる場合があります。実際の申告・手続の際は、最新の公表資料を確認するか、税理士などの専門家にご相談ください。

計算例・設例の数値は説明のための仮定です。計算ツールの結果は概算で、正確性や個別の結果を保証するものではありません。確定度ラベル(施行中・成立・施行待ち・通達案・検討中・要望段階など)は2026年10月17日時点の状態を示します。

最終確認日:2026年10月17日 作成:ジェイスタート会計事務所(公認会計士・税理士)

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