相続した不動産や株式を売るときは、亡くなった人の取得費と取得時期を引き継ぎ、相続税の取得費加算や空き家の3,000万円控除などの特例を使えることがあります。分け方による課税の違い、自社株を会社に売る場合の特例まで解説します。
相続税・贈与税 総合ガイド|相続・贈与と譲渡所得
相続税と譲渡所得は、取得費の引継ぎと取得費加算の特例でつながっています。売る時期・分け方・特例の選び方で手取りが大きく変わるため、相続税の申告の段階から見通しておくことが大切です。
譲渡所得の仕組み:土地建物と株式
相続や贈与で受け継いだ不動産や株式を売ると、そのもうけに所得税と住民税がかかります。この章では、土地建物と株式を売ったときの税金の骨組みを、計算式・長期と短期・税率の順に説明します。
この章の結論
- 土地建物の譲渡所得は「収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除」で計算し、給与などの所得とは分けて税額を出します(分離課税)。
- 長期か短期かは、売った年の1月1日に所有期間が5年を超えているかで決まります。相続や贈与で取得した資産は、亡くなった人や贈与した人が取得した日から数えます。
- 税率は長期20.315%、短期39.63%です。2027年(令和9年)分以後も合計の税率は変わらず、内訳だけが変わります。
譲渡所得は売った金額ではなく「もうけ」にかかります
譲渡所得とは、土地・建物や株式などを売って得たもうけのことです。税金は売った金額そのものにはかかりません。売った金額から、買ったときの費用と売るためにかかった費用を差し引いた残りにかかります。
課税譲渡所得金額=収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額
- 収入金額
- 売買代金です。買主から受け取る固定資産税・都市計画税の精算金も含めます。
- 取得費
- 買ったときの代金や仲介手数料などです。建物は、持っていた期間の減価償却費に当たる額を差し引きます。分からないときは収入金額の5%(概算取得費)を使えます。
- 譲渡費用
- 仲介手数料や売るための測量費など、売るために直接かかった費用です。修繕費や固定資産税は含みません。
- 特別控除額
- マイホームの3,000万円控除など、特例の要件を満たすときだけ差し引ける金額です。特例がなければゼロです。
取得費と譲渡費用の範囲は取得費と譲渡費用の章で詳しく説明します。相続や贈与で取得した資産の取得費は、亡くなった人や贈与した人が買ったときの金額を引き継ぎます。相続税の評価額ではない点に注意してください。
相続した不動産を売るときに使うことの多い特別控除は、次のとおりです。特別控除の合計額は、1年で5,000万円が限度です。
| 特別控除 | 控除額 | 主なポイント |
|---|---|---|
| マイホームの3,000万円控除 | 最高3,000万円 | 売る人自身が所有者として住んでいた家に限ります。期限の定めはありません。 |
| 空き家の3,000万円控除 | 最高3,000万円(家屋と敷地を取得した相続人が3人以上なら2,000万円) | 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築され、亡くなった人が一人で住んでいた家屋などに使えます。2027年12月31日までの譲渡が対象です期限あり。 |
| 収用等の5,000万円控除 | 最高5,000万円 | 公共事業のための買取りなどで、最初に買取りの申出を受けた日から6か月以内に売った場合などです。 |
| 低未利用土地等の100万円控除 | 100万円 | 譲渡価額800万円以下(区域により500万円以下)などの要件があります。2028年(令和10年)12月31日までの譲渡が対象です期限あり。 |
分離課税:給与などとは分けて税額を計算します
土地建物の譲渡所得は、給与所得や年金などとは合算しません。別枠で税額を計算する分離課税です。そのため、譲渡所得の税率は給与の多い少ないで変わりません(極めて高額な所得がある人への特別な措置を除きます)。
土地建物を売って損(譲渡損失)が出たときは、同じ年に売った他の土地建物のもうけとだけ差し引きできます。差し引ききれない損失はなかったものとされ、給与などの所得とは相殺できません。翌年に繰り越すこともできません。
例外は、マイホームを売って損が出た場合の2つの特例です(買換え・低未利用土地・収用・交換の章)。どちらも2027年12月31日までの譲渡が対象です期限あり。なお、土地建物の損益と株式の損益も、互いに相殺できません。
土地建物を売ってもうけが出たときは、売った年の翌年の確定申告で申告し、納税します。取得費加算や空き家の特例などは、確定申告で計算明細書や確認書を添付して適用を受けます。
長期と短期:売った年の1月1日に5年を超えているか
土地建物の譲渡所得は、所有期間によって長期と短期に分かれます。判定の基準日は、売った日ではなく売った年の1月1日です。この日に所有期間が5年を超えていれば長期、5年以下なら短期です。
| 取得した時期 | 区分 | 合計税率 |
|---|---|---|
| 2020年(令和2年)12月31日以前 | 長期譲渡所得 | 20.315% |
| 2021年(令和3年)1月1日以後 | 短期譲渡所得 | 39.63% |
相続・贈与で取得したものは、亡くなった人・贈与した人が取得した日で判定します。
目安として、取得した年に6を足した年の1月1日以後に売れば長期です。2020年中に取得したものなら、2026年1月1日以後の売却が長期です。
実際に持っていた期間が5年を超えていても、短期になることがあります。たとえば2021年3月15日に買った土地を2026年4月20日に売ると、持っていた期間は5年1か月余りです。しかし2026年1月1日の時点では4年9か月余りのため、短期になります。
相続や贈与で取得した資産は、亡くなった人や贈与した人が取得した日から数えます。相続した日から数え直すのではありません(取得費と取得時期の引継ぎの章)。売った日をいつとするかは引渡日が原則で、契約日を選ぶこともできます(取得費と譲渡費用の章)。
税率:2027年分以後も合計の税率は同じです
土地建物の税率は、所得税(復興特別所得税などの上乗せ分を含む)と住民税を合わせて、長期20.315%、短期39.63%です。所有期間が10年を超えるマイホームを売った場合には、さらに低い軽減税率があります。
| 区分 | 所得税 | 住民税 | 合計(上乗せ分を含む) |
|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得(一般) | 15% | 5% | 20.315% |
| 短期譲渡所得(一般) | 30% | 9% | 39.63% |
| マイホームの軽減税率(所有10年超・課税長期譲渡所得6,000万円以下の部分) | 10% | 4% | 14.21% |
| 同(6,000万円を超える部分) | 15% | 5% | 20.315% |
| 上場株式等・一般株式等の譲渡所得等 | 15% | 5% | 20.315% |
2027年分からは、所得税額の1%の防衛特別所得税が新たにかかります成立・施行待ち。同時に、復興特別所得税の税率が所得税額の2.1%から1.1%に下がり、課税は2047年(令和29年)分まで続きます。上乗せの合計は2.1%のままなので、合計の税率は変わりません。
| 区分 | 2026年分まで | 2027年分以後 |
|---|---|---|
| 長期・株式等(合計20.315%) | 所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5% | 所得税15%+復興特別所得税0.165%+防衛特別所得税0.15%+住民税5% |
| 短期(合計39.63%) | 所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9% | 所得税30%+復興特別所得税0.33%+防衛特別所得税0.3%+住民税9% |
| 軽減税率(合計14.21%) | 所得税10%+復興特別所得税0.21%+住民税4% | 所得税10%+復興特別所得税0.11%+防衛特別所得税0.1%+住民税4% |
税額の計算では、課税譲渡所得金額の1,000円未満を切り捨てます。所得税と復興特別所得税の合計額は、100円未満を切り捨てます。
株式の譲渡所得:上場株式等と一般株式等は別枠です
株式を売ったときのもうけも、他の所得と分けて計算する分離課税です。税率は土地建物の長期と同じ20.315%で、2027年分以後も合計は変わりません。土地建物と違い、株式には長期・短期の区別がありません。
株式等は「上場株式等」と「一般株式等」の2つに分かれ、それぞれ別枠で計算します。相続でよく出てくる非上場の自社株は、一般株式等に当たります。
上場株式等
- 上場株式、ETF・J-REIT、公募投資信託、特定公社債など
- 証券会社などを通じて売った損失は、上場株式等の利子・配当(配当は申告分離課税を選んだもの)と相殺できます
- 相殺しきれない損失は翌年以後3年間繰り越せます(毎年の確定申告が必要)
一般株式等
- 非上場株式(自社株など)、合同会社などの持分、私募公社債など
- 一般株式等の中で相殺しきれない損失は、なかったものとされます
- 上場株式等のもうけとは相殺できず、繰越しもできません
株式の損失を、給与や土地建物のもうけと相殺することもできません。相続した株式の取得費や相続口座は、株式の譲渡と相続した株式の章で説明します。自社株を発行会社に売る場合は、金庫株とみなし配当の特例の章をご覧ください。
計算の流れと計算例
- 売った年分を決める引渡日が原則で、契約日も選べます。年末年始の売却では、申告する年分や長期・短期が変わることがあります。
- 収入金額を確かめる売買代金に、固定資産税などの精算金を加えます。
- 取得費と譲渡費用を差し引く相続・贈与で取得した資産は、前の所有者の取得費を引き継ぎます。相続税を納めた人は取得費加算も検討します。
- 特別控除を差し引くマイホームや空き家の3,000万円控除などの要件を確認します。
- 長期・短期を判定して税率を掛ける売った年の1月1日に所有期間が5年を超えていれば長期です。
- 翌年の確定申告で申告・納税する特例を使うときは、必要な書類を添付します。
計算例:相続した土地を5,000万円で売った場合(長期)
父が2005年(平成17年)に2,000万円で買った土地を、2024年(令和6年)に長男が相続しました。相続税はかかっていません。長男は2026年にこの土地を5,000万円で売り、仲介手数料などの譲渡費用が100万円かかりました。特別控除は使わず、相続登記の費用は省略します。
取得費は、父の購入代金2,000万円を引き継ぎます。所有期間も父が買った2005年から数えるため、2026年1月1日の時点で5年を超え、長期になります。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 課税長期譲渡所得金額 | 5,000万円−(2,000万円+100万円) | 2,900万円 |
| 所得税 | 2,900万円×15% | 435万円 |
| 復興特別所得税 | 435万円×2.1% | 9万1,350円 |
| 所得税と復興特別所得税の合計 | 444万1,350円の100円未満を切捨て | 444万1,300円 |
| 住民税 | 2,900万円×5% | 145万円 |
| 合計 | 444万1,300円+145万円 | 589万1,300円 |
答え:税額は合計589万1,300円です。合計税率で概算すると2,900万円×20.315%=589万1,350円です。100円未満の切捨てにより、実際は50円少なくなります。仮に短期なら2,900万円×39.63%=1,149万2,700円となり、約2倍です。
住民税は5%で概算しています。2027年分以後に売った場合、上乗せ分9万1,350円は2つに分かれます。復興特別所得税4万7,850円と防衛特別所得税4万3,500円で、合計は同じです。
よくある誤り
- 「2027年から防衛特別所得税で譲渡所得の税率が上がる」は誤りです。長期20.315%・短期39.63%・軽減税率14.21%は、2027年分以後も同じです。
- 「相続してから5年以内に売ると短期」は誤りです。亡くなった人が取得した日から数え、売った年の1月1日で判定します。
- 「土地の売却損を給与と相殺できる」は誤りです。相殺できるのは同じ年の土地建物のもうけだけで、例外はマイホームの譲渡損失の特例に限られます。
他の税金との関係
- 相続・贈与で取得した資産は、前の所有者の取得費と取得時期を引き継ぎます:相続・贈与で取得した資産の取得費と取得時期
- 相続税を納めた人は、その一部を取得費に加算できます:相続税の取得費加算の特例
- 相続した株式を売るとき:株式の譲渡と相続した株式
- 土地建物の税額を試算する:土地建物の譲渡所得・税額の計算ツール
専門家向け:根拠と実務論点
根拠
- 譲渡所得の計算:所得税法33条・38条。土地建物等の分離課税:租税特別措置法31条(長期)・32条(短期)。居住用財産の軽減税率:措置法31条の3。株式等:措置法37条の10(一般株式等)・37条の11(上場株式等)。
- 上乗せ税:復興財確法13条(基準所得税額×2.1%、2027年分以後は1.1%、2047年分まで)。防衛財確法(基準所得税額×1%、2027年分以後当分の間)。合計税率が変わらないのは、15%×(1%+1.1%)=0.315%となるためです。
- 端数処理:課税長期(短期)譲渡所得金額は1,000円未満、申告納税額は100円未満を切り捨てます(国税通則法118条・119条)。復興特別所得税は1円未満を切り捨てます。
所有期間の判定
- 措置法31条1項・32条1項により、譲渡年の1月1日において所有期間5年超かで判定します。相続・贈与による取得は所得税法60条1項で前所有者の取得日を引き継ぎます。
- 取得の日は所基通36-12に準じ、引渡日が原則で、契約の効力発生日も選択できます。自ら建設した資産は完成日、請負で建設させた資産は引渡しを受けた日です(所基通33-9)。
税率の細目
- 軽減税率で課税長期譲渡所得金額Aが6,000万円超の場合、所得税は(A−6,000万円)×15%+600万円、住民税は(A−6,000万円)×5%+240万円です。
- 短期譲渡所得でも、国等に対する譲渡などは所得税15%・住民税5%の軽減税率です。
- 優良住宅地の造成等のための譲渡(措置法31条の2)は、課税長期譲渡所得2,000万円以下の部分が所得税10%・住民税4%です。2028年12月31日までの譲渡が対象です期限あり。
損益通算・特別控除
- 土地建物等の譲渡損失は、措置法31条1項・3項2号、32条1項・4項により他の所得と通算できません。例外は措置法41条の5・41条の5の2です。
- 株式等は2016年(平成28年)1月1日以後の譲渡から2区分です。一般株式等の区分内の損失は生じなかったものとみなされます(措置法37条の10第1項後段。特定中小会社株式の損失は例外)。上場株式等の損失の通算・繰越しは措置法37条の12の2で、相対取引やNISA口座内の損失は対象外です。
- 特別控除の年間上限は5,000万円です(措置法36条)。控除は次の順に行います。収用等、居住用・空き家、特定土地区画整理、特定住宅地造成、平成21・22年取得土地、農地保有合理化、低未利用土地です。
- 土地建物・株式等以外の資産(配偶者居住権など)の譲渡は総合課税で、50万円の特別控除など別の計算になります。
高額所得者の措置
- 極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置(措置法41条の19)に注意します。基準所得金額には、土地建物等や非上場株式等の分離課税の譲渡所得も含まれます。2026年分は(基準所得金額−3億3,000万円)×22.5%−基準所得税額です。2027年分以後は控除額1億6,500万円・税率30%に改正されています成立・施行待ち。大型の土地売却の年は確認が必要です。
取得費と譲渡費用:概算取得費5%と減価償却
譲渡所得の税額は、取得費と譲渡費用をどれだけ正しく差し引けるかで大きく変わります。この章では、収入金額・譲渡費用・取得費の範囲と、建物の減価償却を説明します。取得費が分からないときの概算取得費と、売った日の決め方も扱います。
この章の結論
- 収入金額には、売買代金のほか、買主から受け取る固定資産税・都市計画税の精算金も含めます。譲渡費用は仲介手数料など売るために直接かかった費用だけで、修繕費や固定資産税は入りません。
- 建物の取得費は、購入代金から減価償却費に当たる額を差し引いた額です。自宅など業務に使っていない建物でも差し引きます。
- 取得費が分からないときや、実際の取得費が売った金額の5%未満のときは、売った金額の5%を取得費にできます(概算取得費)。実際の取得費が分かり、5%より大きければ実額を使います。
収入金額:固定資産税の精算金も含めます
収入金額は、原則として売買代金です。不動産の売買では、その年の固定資産税・都市計画税を日割りで精算し、買主から精算金を受け取ることがあります。この精算金も収入金額に含めます。
固定資産税は、1月1日の所有者に1年分が課されます。年の途中で所有者が変わっても、買主に納税の義務は生じません。そのため、買主から受け取る精算金は、実質的には売買代金の一部として扱われます。
たとえば売買代金3,000万円とは別に精算金6万円を受け取ったときは、収入金額は3,006万円です。なお、離婚の財産分与や代償分割で不動産を渡したときは、渡した時の時価が収入金額になります(換価分割・代償分割の章、財産分与の章)。
譲渡費用:売るために直接かかった費用だけです
譲渡費用は、土地や建物を売るために直接かかった費用です。持っている間の維持や管理にかかった費用は、譲渡費用になりません。
譲渡費用になるもの
- 売るときの仲介手数料
- 売主が負担した売買契約書の印紙税
- 売るために行った土地の測量費
- 貸家を売るために借家人に払った立退料
- 土地を売るために建物を取り壊した費用と、その建物の損失額(売るための取壊しであることが明らかな場合)
- より有利な条件で売るため、すでに結んでいた売買契約を解除して払った違約金
- 借地権を売るときに地主に払った承諾料(名義書換料)
譲渡費用にならないもの
- 修繕費
- 固定資産税・都市計画税
- その他、資産の維持や管理にかかった費用
- 売却代金を取り立てるための弁護士費用など
同じ測量費や立退料でも、時期によって扱いが変わります。買ったときに払ったものは取得費、売るために払ったものは譲渡費用です。取り壊しで出た資材に価値があるときは、その価額を差し引きます。
取得費:買ったときの代金と付随費用
取得費は、土地や建物を買ったときの代金や建てたときの建築代金に、購入時の仲介手数料、設備費・改良費を加えた額です。建物の場合は、ここから減価償却費に当たる額を差し引きます(次の見出しで説明します)。
業務に使っていない土地建物では、次の費用も取得費に含めます。
- 買ったときや相続・贈与で取得したときに払った登録免許税(司法書士報酬などの登記費用を含む)、不動産取得税、印紙税
- 買ったときに借主を立ち退かせるために払った立退料
- 埋立て・土盛り・地ならしなどの造成費用と、買ったときの測量費
- 所有権を確保するための訴訟費用や和解の費用(相続した土地の遺産分割をめぐる訴訟費用などは含みません)
- 最初から土地を使う目的で建物付きの土地を買い、おおむね1年以内に建物を取り壊したときなどの建物の購入代金と取壊し費用(土地の取得費になります)
- 購入資金の借入金の利子のうち、使い始めた日までの期間の分
- すでに結んでいた購入契約を解除して別の物件を買ったときの違約金
賃貸物件など業務に使っている資産では、登記費用や不動産取得税は取得費に入れず、その年の必要経費になります。また、事業所得などの必要経費に入れた費用は、取得費に重ねて入れることはできません。まとめて買った土地の一部を売るときは、原則として面積の割合で取得費を分けます。売った時の価額の割合で分ける方法もあります。
建物の取得費:減価償却費相当額を差し引きます
建物は年数がたつと価値が減るため、購入代金から減価償却費に当たる額を差し引いた残りが取得費になります。自宅や空き家のように、業務に使っていない建物も差し引きます。業務に使っていたかどうかで、計算方法が変わります。
- 業務に使っていた期間
- 賃貸などに使っていた期間は、毎年の減価償却費の合計額を差し引きます。必要経費に入れなかった年があっても、償却したものとして差し引きます。
- 業務に使っていない期間
- 自宅などの期間は、耐用年数の1.5倍の年数(1年未満は切捨て)に対応する旧定額法の償却率で計算します。
減価償却費相当額(業務に使っていない建物)=建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数
経過年数は、6か月以上の端数を1年とし、6か月未満の端数は切り捨てます。差し引く額は、建物の取得価額の95%が限度です。
| 建物の構造 | 償却率 |
|---|---|
| 木造 | 0.031 |
| 木骨モルタル造 | 0.034 |
| 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 | 0.015 |
| 金属造(軽量鉄骨で骨格材の肉厚3mm以下) | 0.036 |
| 金属造(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) | 0.025 |
計算例:自宅だった木造住宅を売った場合の取得費
2009年(平成21年)5月20日に、新築の木造住宅を土地1,600万円・建物2,400万円で買い、自宅として使ってきました。2026年(令和8年)9月30日に、土地と建物を3,800万円で売り、引き渡しました。仲介手数料などの譲渡費用は130万円です。購入時の仲介手数料などは省略します。
| 項目 | 計算 | 金額など |
|---|---|---|
| 償却率 | 業務に使っていない木造建物 | 0.031 |
| 経過年数 | 2009年5月20日から2026年9月30日まで17年4か月余り。6か月未満を切捨て | 17年 |
| 減価償却費相当額 | 2,400万円×0.9×0.031×17年 | 1,138万3,200円 |
| 建物の取得費 | 2,400万円−1,138万3,200円 | 1,261万6,800円 |
| 取得費の合計 | 土地1,600万円+建物1,261万6,800円 | 2,861万6,800円 |
| 譲渡益 | 3,800万円−2,861万6,800円−130万円 | 808万3,200円 |
答え:建物の取得費は1,261万6,800円、取得費の合計は2,861万6,800円です。差し引く額は取得価額の95%(2,280万円)に届かないので、計算どおり差し引きます。概算取得費(3,800万円×5%=190万円)より大きいため、実際の取得費を使います。
売るときまで住んでいた自宅なら、要件を満たせばマイホームの3,000万円控除により、この譲渡益には税金がかかりません(マイホームの3,000万円控除の章)。
相続や贈与で取得した建物は、亡くなった人や贈与した人の取得価額と取得時期を引き継ぎます。前の所有者が引き続き持っていたものとみなされるため、減価償却費相当額も前の所有者が取得した時から通して計算します(取得費と取得時期の引継ぎの章)。
取得費が分からないとき:概算取得費(売った金額の5%)
先祖から受け継いだ土地や、ずっと昔に買った土地では、購入時の代金が分からないことがあります。この場合は、売った金額の5%を取得費にできます。これを概算取得費といいます。たとえば3,000万円で売った土地の取得費が分からなければ、150万円を取得費にします。
実際の取得費が分かっていても、それが売った金額の5%未満なら、5%を使えます。逆に、実際の取得費が5%を上回るなら、実額を使ったほうが税金は少なくなります。前の計算例では、実額の2,861万6,800円が概算取得費の190万円を大きく上回っています。まずは購入時の売買契約書や領収書など、代金が分かる資料を探してください。
概算取得費は、短期譲渡所得にも使えます。ただし、相続や贈与で取得した資産に概算取得費を使うと、相続人や受贈者が払った登記費用を上乗せすることはできません。
土地と建物をまとめて買い、契約書に内訳が書かれていない場合もあります。この場合、国税庁の手引きは「建物の標準的な建築価額表」(建築年・構造別の1㎡当たりの単価)を使って建物の取得価額を求める方法を示しています。土地の取得価額は、全体の代金から建物の分を差し引いて求めます。
手引きの例では、1986年(昭和61年)築の鉄筋コンクリート造マンション80㎡の単価は1㎡当たり149,500円です。建物の取得価額は、149,500円×80㎡=1,196万円になります。中古で買った建物は、建築から取得までの年数に応じた減価額をここから差し引きます。
売買契約書などがないまま取得費を推計して申告するときは、その根拠を慎重に検討する必要があります。国税庁が取得費の分からないときの方法として案内しているのは、概算取得費です。
売った日の決め方:引渡日が原則、契約日も選べます
譲渡所得をいつの年分で申告するかは、売った日で決まります。原則は資産を引き渡した日です。ただし、売買契約の効力が生じた日(契約日)を選んで申告することもできます。
引渡しの日は、登記に必要な書類を買主に渡すなど、支配が移った事実で判断します。通常は、登記に必要な書類を渡して残代金を受け取った日です。原則として、代金の決済を終えた日より後になることはありません。
年末に契約し、年明けに引き渡す売却では、どちらを選ぶかで結果が変わります。申告する年分だけでなく、長期・短期の判定日(1月1日)や、特例の期限の判定にも影響します。
| 項目 | 引渡日基準(原則) | 契約日基準(選択) |
|---|---|---|
| 売った日 | 2027年1月の引渡日 | 2026年12月の契約日 |
| 申告する年分 | 2027年分 | 2026年分 |
| 長期・短期の判定 | 2027年1月1日に所有5年6か月余り→長期 | 2026年1月1日に所有4年6か月余り→短期 |
| 合計税率 | 20.315% | 39.63% |
この例では、原則どおり引渡日で申告すれば長期になり、税率がおよそ半分になります。売る時期が年末に近いときは、契約と引渡しの日程を決める前に試算しておくと安心です。
よくある誤り
- 固定資産税・都市計画税の精算金を収入金額に入れ忘れる誤りがよくあります。精算金は売買代金の一部として収入金額に含めます。
- 「自宅は事業に使っていないので建物の減価償却は関係ない」は誤りです。業務に使っていない建物も、耐用年数の1.5倍の年数で計算した減価償却費相当額を差し引きます。
- 修繕費や固定資産税を、売るための費用として譲渡費用に入れるのは誤りです。資産の維持や管理のための費用は譲渡費用になりません。
- 取得費の資料を探さずに概算取得費(5%)で申告すると、実額より取得費が小さくなり、税金を多く払うことがあります。
他の税金との関係
- 相続・贈与で取得した資産の取得費・取得時期と登記費用:相続・贈与で取得した資産の取得費と取得時期
- 相続税を納めた人は、取得費に相続税の一部を加算できます:相続税の取得費加算の特例
- 相続した空き家を売るとき(2027年12月31日までの譲渡が対象期限あり):空き家の3,000万円控除
- 取得費・譲渡費用から税額まで試算する:土地建物の譲渡所得・税額の計算ツール
専門家向け:根拠と実務論点
収入金額・譲渡費用
- 未経過固定資産税等相当額は譲渡所得の収入金額に算入します(質疑応答事例。所得税法33条・36条、地方税法343条・359条)。
- 譲渡費用の根拠は、所得税法33条3項、所基通33-7・33-8です。取壊し費用と損失額は、取壊しが譲渡のためであることが明らかな場合に限られ、発生資材の価額を控除します。譲渡価額を増加させるため譲渡に際して支出した費用も含みます。修繕費・固定資産税などの維持管理費用、譲渡代金の取立てに要した弁護士費用は含みません。
取得費
- 根拠は、所得税法38条、所基通38-1(取得後おおむね1年以内の建物取壊し)、38-1の2(一部譲渡の按分)、38-2(訴訟費用等)、38-8〜38-8の8(借入金利子)、38-9の3(違約金)、38-10(造成費・測量費)、38-11(立退料)です。業務用資産の登録免許税・不動産取得税等は必要経費です(所基通37-5・49-3)。
- 業務用と非業務用の併用資産は、所有期間を通じて非業務用部分がおおむね90%以上なら全部を非業務用として扱えます(所基通38-3)。
減価償却費相当額
- 根拠は、所得税法38条2項、所得税法施行令85条です。業務用期間は実際の償却費累計額を控除し、必要経費に算入しなかった年分も含めます。非業務用期間は耐用年数の1.5倍の年数に対応する旧定額法の償却率で、取得価額の95%が限度です。業務用期間の償却累積額と合わせて95%を超える場合の扱いは所基通38-9の2によります。
- 国外中古建物の不動産所得の損益通算の特例(措置法41条の4の3)を受けた建物は、別途の調整があります。
概算取得費
- 措置法31条の4第1項は、1952年(昭和27年)12月31日以前から所有する土地建物等の規定です。措通31の4-1により、1953年(昭和28年)1月1日以後取得のものにも準用できます。短期譲渡所得にも適用して差し支えない旨の質疑応答事例があります。
- 土地建物以外の総合課税の資産も、収入金額の5%を取得費とすることが認められています(所基通38-16。土石等・借家権・漁業権等を除く)。
- 相続・贈与で取得した資産に概算取得費を用いると、相続人等が支払った登記費用は加算できません(タックスアンサー3270)。
- 土地建物を一括購入し区分がない場合は、建物の標準的な建築価額表で建物の取得価額を算定する方法が示されています(令和7年分の申告のしかた)。表の単価は原本で確認してください。
譲渡の時期
- 所基通36-12により、引渡日が原則で、契約の効力発生日も選択できます。引渡日は支配の移転の事実で判定し、原則として代金決済日より後にはなりません。
- 農地法の許可・届出が必要な農地等で契約日を選ぶ場合の基準は契約締結日です。許可前に契約が解除されたときは、解除日の翌日から2か月以内に更正の請求ができます(国税通則法23条2項)。
- 空き家特例(2027年12月31日までの譲渡が対象期限あり)の「譲渡の日の属する年の翌年2月15日」も、この選択に従って判定します(措通35-9の4)。
相続・贈与で取得した資産の取得費と取得時期
相続や贈与で受け取った不動産や株式を売るとき、取得費は相続したときの価額ではありません。亡くなった人や贈与した人が買ったときの金額と日付を引き継ぎます。この章では、その原則と例外を整理します。
この章の結論
- 相続・遺贈・個人からの贈与で取得した資産は、亡くなった人や贈与した人の取得費と取得時期を引き継ぎます(所得税法60条1項)。相続税の評価額は取得費になりません。
- 相続人や受贈者が払った登記費用(贈与なら不動産取得税も)は取得費に加えられます。ただし、概算取得費(売った金額の5%)を選ぶと加えられません。
- 限定承認による相続や法人への遺贈・贈与は例外で、その時の時価で売ったものとみなされます。代償分割や離婚の財産分与で受け取った財産も、受け取った時の時価が取得費です。
原則:買ったときの金額と日付を引き継ぎます
相続・遺贈・贈与で取得した資産を売るとき、税法上は、相続人や受贈者がそれまで引き続き持っていたものとみなされます(所得税法60条1項)。そのため、亡くなった人や贈与した人が買ったときの代金(取得費)と、買った日(取得時期)をそのまま使います。
長期・短期の判定も、亡くなった人や贈与した人が取得した日から、売った年の1月1日までの期間で行います。親が長年持っていた土地なら、相続してすぐに売っても長期です。反対に、親が亡くなる少し前に買った不動産を相続後に売ると、短期になることがあります。
| 状況 | 取得費 | 長期・短期 |
|---|---|---|
| 父が1990年(平成2年)に3,000万円で買った土地を、2025年(令和7年)に相続 | 父の購入代金3,000万円 | 長期(父の取得から5年超) |
| 父が2022年(令和4年)に買ったマンションを、2024年(令和6年)に相続 | 父の購入代金(建物は減価償却費相当額を差し引く) | 短期(父の取得から5年以下)。2028年(令和10年)1月1日以後に売れば長期 |
| 祖母が買い、母が贈与を受けた土地を、子が母から相続 | 祖母の購入代金(祖母から母、母から子と引継ぎ) | 祖母が取得した日で判定 |
建物の減価償却費相当額も、前の所有者が取得した時から通して計算します。株式も同じ考え方で、亡くなった人の取得価額を引き継ぎます(株式の譲渡と相続した株式の章)。
相続税の評価額は取得費になりません
相続税の申告では、土地を路線価などで評価します。しかし、この相続税評価額は相続税を計算するための価額です。譲渡所得の取得費とは関係がなく、取得費はあくまで亡くなった人が買ったときの代金です。
先祖代々の土地や何十年も前に買った土地では、購入時の代金を示す資料が残っていないことがあります。相続が何代も続くと、契約書などが見つからないこともあります。その場合は売った金額の5%を取得費とする概算取得費を使うことになり、譲渡益が大きくなりやすくなります。
資料が見つかっても、昔の購入代金が今の売却額の5%に満たないこともあります。その場合も、5%の概算取得費のほうを使えます。
計算例:祖父が1975年(昭和50年)に買った土地を、父を経て相続した長男が売る場合
祖父が1975年に土地を買いました。1995年(平成7年)に祖父が亡くなって父が相続し、2024年に父が亡くなって長男が相続しました。父の相続では相続税はかかっておらず、その際のこの土地の相続税評価額は2,400万円でした。
長男は2026年にこの土地を3,000万円で売り、仲介手数料などの譲渡費用が120万円かかりました。祖父の購入代金を示す資料は見つかりません。
| 項目 | 考え方・計算 | 金額など |
|---|---|---|
| 取得時期 | 祖父の購入(1975年)を父、長男と引き継ぎ、2026年1月1日に5年超 | 長期 |
| 取得費 | 祖父の購入代金を引き継ぐが資料がないため、概算取得費3,000万円×5% | 150万円 |
| 課税長期譲渡所得金額 | 3,000万円−150万円−120万円 | 2,730万円 |
| 所得税 | 2,730万円×15% | 409万5,000円 |
| 復興特別所得税 | 409万5,000円×2.1% | 8万5,995円 |
| 所得税と復興特別所得税の合計 | 418万995円の100円未満を切捨て | 418万900円 |
| 住民税 | 2,730万円×5% | 136万5,000円 |
| 合計 | 418万900円+136万5,000円 | 554万5,900円 |
答え:税額は合計554万5,900円です。相続税評価額2,400万円を取得費と誤ると、譲渡所得は3,000万円−2,400万円−120万円=480万円になります。本来より2,250万円も少なく計算してしまいます。
祖父の購入代金が分かっても、売った金額の5%(150万円)未満なら概算取得費を使えます。概算取得費を使うため、長男が払った相続登記の費用は加算できません。住民税は5%で概算しています。
相続税を納めた人は、期限内に売れば相続税の一部を取得費に加算できます(相続税の取得費加算の特例の章)。亡くなった人が一人で住んでいた1981年(昭和56年)5月31日以前の建築の家とその敷地なら、空き家の3,000万円控除も検討します(空き家の3,000万円控除の章)。空き家の特例は2027年(令和9年)12月31日までの譲渡が対象です期限あり。
相続・贈与のときに払った登記費用と不動産取得税
業務に使っていない土地建物を相続や贈与で取得したとき、相続人や受贈者が払った登記費用(登録免許税や司法書士報酬など)は取得費に含めます。贈与で取得した場合は、受贈者が払った不動産取得税も含めます。
相続(包括遺贈や相続人への遺贈を含む)による不動産の取得には、不動産取得税がかかりません。そのため、相続で取得費に加えられるのは主に登記費用です。
| 取得の原因 | 相続人・受贈者が払った登記費用 | 不動産取得税 |
|---|---|---|
| 相続・包括遺贈・相続人への遺贈 | 取得費に加算(実際の取得費を使う場合) | かからない |
| 贈与 | 取得費に加算(実際の取得費を使う場合) | 取得費に加算(実際の取得費を使う場合) |
ただし、概算取得費(5%)を選ぶと、これらの費用は加えられません。上乗せできるのは、実際の取得費が分かり、それを使う場合だけです。
賃貸アパートなど業務に使っている資産では、登記費用などは取得費に入れず、必要経費として扱います。株式を相続したときに相続人が払った名義書換手数料も、株式の取得費に含めます。
例外:時価で取得したことになる場合
次の場合は引継ぎのルールが使われず、亡くなった人や財産を渡した人が、その時の時価で売ったものとみなされます(所得税法59条1項)。亡くなった人などの含み益に、譲渡所得の税金がかかります。
- 限定承認による相続(限定承認に係る包括遺贈を含みます)
- 法人への遺贈や贈与
- 法人に対する、時価の2分の1に満たない金額での譲渡
限定承認や法人への遺贈の場合は、相続人が亡くなった人の準確定申告(相続の開始を知った日の翌日から4か月以内)で、この譲渡所得を申告します。限定承認で取得した相続人は、相続の時の時価で取得したものとされ、取得時期もその時になります。また、限定承認で取得した資産は取得費加算の対象になりません。
相続や贈与とは別の原因で取得した財産も、前の所有者の取得費を引き継ぎません。代表的なものを表にまとめます。
| 取得の原因 | 取得費 | 取得時期 | 詳しい章 |
|---|---|---|---|
| 相続・遺贈(限定承認を除く)、個人からの贈与 | 前の所有者の取得費を引継ぎ | 前の所有者の取得日を引継ぎ | この章 |
| 限定承認による相続 | 相続の時の時価 | 相続の時 | みなし譲渡の章 |
| 代償分割で受け取った代償財産 | 受け取った時(履行時)の時価 | 履行時 | 換価分割・代償分割の章 |
| 離婚の財産分与で受け取った資産 | 分与を受けた時の時価 | 分与を受けた時 | 財産分与の章 |
| 特別縁故者への相続財産の分与で取得した資産 | 分与を受けた時の時価 | 分与を受けた時 | この章 |
| 個人から時価の2分の1未満で買い、売主に譲渡損失が出た場合 | 売主の取得費を引継ぎ | 売主の取得日を引継ぎ | みなし譲渡の章 |
| NISA口座から相続した上場株式等 | 相続の日の最終価格 | 相続の日(株式には長期・短期の区別はありません) | 株式の章 |
代償分割では、代償金を払って不動産を取得した人も注意が必要です。払った代償金は、相続した不動産の取得費に加えられません。
株式・NISA口座・特別縁故者への分与
相続や贈与で取得した株式も、亡くなった人や贈与した人の取得価額を引き継ぎます。同じ銘柄を何回かに分けて買っていた場合は、平均した1株当たりの金額で計算します。証券会社の特定口座に相続で移した上場株式等は、亡くなった人の取得価額と取得日を引き継いで管理されます。
一方、NISA口座で持っていた上場株式等を相続した場合は、引継ぎになりません。相続の日の最終価格で取得したものとみなされます。そのため、相続の日までの値動きは、相続人の譲渡所得の計算には含まれません。
相続人がいない場合などに、家庭裁判所の審判で特別縁故者が相続財産の分与を受けることがあります。相続税では、この分与は遺贈により取得したものとみなされます。しかし所得税法には遺贈とみなす規定がないため、所得税法60条1項の引継ぎは適用されません。国税庁の質疑応答事例は、分与を受けた時に、その時の時価で取得したものとして譲渡所得を計算するとしています。
よくある誤り
- 「相続した不動産の取得費は相続税評価額(相続時の時価)」は誤りです。亡くなった人が買ったときの取得費を引き継ぎます。時価で取得したことになるのは、限定承認・代償財産の受取り・財産分与などの例外だけです。
- 「相続してから5年以内に売ると短期」は誤りです。亡くなった人が取得した日から、売った年の1月1日までで判定します。
- 「概算取得費(5%)に相続登記の費用を上乗せできる」は誤りです。登記費用を加えられるのは、実際の取得費を使う場合だけです。
他の税金との関係
- 取得費の範囲・減価償却・概算取得費:取得費と譲渡費用
- 相続税を納めた人は取得費を上乗せできます:相続税の取得費加算の特例
- 限定承認・法人への遺贈で時価課税になる場合:みなし譲渡:限定承認・法人への贈与・低額譲渡
- 限定承認の手続と期限:相続放棄・限定承認
- 亡くなった人の譲渡所得を申告する:準確定申告
専門家向け:根拠と実務論点
引継ぎの根拠
- 所得税法60条1項1号:贈与、相続(限定承認に係るものを除く)、遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く)で取得した資産は、引き続き所有していたものとみなします。公益信託の受託者への贈与・遺贈は除かれます。
- 同項2号:個人に対する時価の2分の1未満の譲渡で、譲渡損失がなかったものとされた場合(所得税法59条2項)も、譲受人が引き継ぎます。
- 1972年(昭和47年)12月31日以前の贈与等による取得には旧法が適用され、取得時の時価で取得したとされる場合があります(所基通60-1)。相続が何代も続く土地では、各取得の時期を確認します。
- 長期・短期は被相続人・贈与者の取得時から譲渡年の1月1日までで判定します(タックスアンサー3270)。相続取得建物の減価償却費相当額も、60条1項のみなし規定により前所有者の取得時から計算します。
付随費用
- 非業務用の土地建物を相続・贈与で取得した際の登記費用・不動産取得税は取得費に算入します(所基通60-2、タックスアンサー3270)。概算取得費を用いる場合は加算できません。
- 相続(包括遺贈・相続人に対する遺贈を含む)による不動産の取得は不動産取得税が非課税です(地方税法73条の7第1号)。
- 株式の名義書換手数料は取得費に含まれます。同一銘柄を複数回取得している場合は、総平均法に準ずる方法で1単位当たりの金額を計算します(所得税法施行令118条)。
時価課税・時価取得の例外
- 所得税法59条1項・所得税法施行令169条:次の場合は時価による譲渡とみなします。限定承認に係る相続・包括遺贈、法人に対する贈与・遺贈、法人に対する時価の2分の1未満の譲渡です。
- 所得税法60条4項:59条1項1号の事由による取得者は時価で取得したものとみなします。措置法39条7項により、59条1項または60条の3第1項の適用を受けた資産は取得費加算の対象資産から除かれます。
- 代償財産:交付者は履行時の時価で譲渡したものとされ(所基通33-1の5)、受領者は履行時の時価で取得します(所基通38-7)。代償債務の額は相続財産の取得費に算入しません(同)。財産分与は所基通33-1の4・38-6によります。遺留分侵害額請求に対し資産を移転した場合、受けた側は消滅した債権の額に相当する価額で取得します(所基通38-7の2)。
- 特別縁故者に対する相続財産の分与(民法958条の2第1項)は、相続税法4条1項により、分与時の時価(評価に特別の定めがあればその評価額)相当額を遺贈により取得したものとみなされます。所得税法には同様のみなし規定がないため、所得税法60条1項1号の遺贈に当たらず、分与を受けた時にその時の時価で取得したものとして計算します(質疑応答事例「相続財産の分与により取得した資産の取得費等」。税務大学校論叢109号も同旨を紹介)。
株式・信託
- 相続等で取得した上場株式等を特定口座に移管した場合は、移管元で計算される取得費等の額で取得したものとみなされます。取得日は、移管元で先入先出とした場合の日です(措置法施行令25条の10の2)。
- NISA口座から相続・遺贈・贈与で取得した上場株式等は、原則として相続等の日の最終売買価格で取得したものとみなされます。
- 受益者等課税信託の質疑応答事例があります。被相続人の死亡で受益者となった相続人が、信託終了で取得した非上場株式を発行会社に譲渡する事例です。遺贈により取得したものとみなされ(相続税法9条の2)、措置法9条の7と39条の両方を適用できるとしています。
相続税の取得費加算の特例
相続税を納めた人が相続した土地や株式を期限内に売ると、相続税の一部を取得費に加えられます。加えられるのは売った財産に対応する部分で、相続税と譲渡所得をつなぐ代表的な特例です。
この章の結論
- 相続や遺贈で財産を取得し、相続税額がある人が使えます。売る期限は、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです(目安は相続開始から3年10か月)。
- 加算額は「その人の相続税額×売った財産の相続税評価額÷その人の課税価格(債務控除前)」で、譲渡益が上限です。小規模宅地等の特例を受けた宅地は、減額後の価額で計算します。
- 空き家の3,000万円控除(2027年(令和9年)12月31日までの譲渡が対象期限あり)とは、同じ財産では併用できず選択です。マイホームの3,000万円控除や自社株の金庫株特例とは併用できます。確定申告で計算明細書の添付が必要です。
特例のしくみと使える人
相続した財産を売ったときの譲渡所得は、亡くなった人の取得費を引き継いで計算します。この特例を使うと、その取得費に、納めた相続税のうち売った財産に対応する部分を加算できます。取得費が増えた分だけ譲渡益が減り、所得税と住民税が少なくなります。
適用期限のない制度で、2026年(令和8年)10月時点でも使えます施行中。使うには、次の条件をすべて満たす必要があります。
取得費加算を使える条件
- 相続・遺贈(死因贈与を含む)で財産を取得した人であること。相続時精算課税や生前贈与加算で相続税の課税価格に含めた贈与財産も対象です。
- その相続について、その人に相続税額があること。
- 相続税の課税価格の計算に含めた財産を売ったこと。土地・建物・株式など、種類は問いません。
- 相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売ったこと。
- 売った財産に譲渡益が出ていること。
- 同じ財産について、空き家の3,000万円控除を使っていないこと。
- 確定申告書に、計算明細書などを添付すること。
限定承認で取得した財産は、法律で対象から除かれています。事業所得や雑所得になる株式等の売却にも使えません。相続した財産と交換したり買い換えたりして取得した財産も、原則として対象外です。相続した部分と自分で買った部分が混じっているときは、相続した部分だけが対象になります。
売却の期限:相続開始から約3年10か月
売る期限は「相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日」です。相続税の申告期限は、原則として相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。そのため、期限の目安は相続開始から3年10か月になります。
- 2024年(令和6年)6月10日父が死亡(同じ日に相続の開始を知った)。翌日からの売却が対象です。
- 2025年(令和7年)4月10日相続税の申告期限(10か月以内)。
- 2025年4月11日申告期限の翌日。この日を1日目として3年を数えます。
- 2028年(令和10年)4月10日取得費加算を使える売却の期限です。
亡くなる前に売った財産には使えません。相続時精算課税などで生前に贈与を受けた財産でも、贈与した人が生きているうちに売った場合は対象外です。反対に、相続税の申告をする前に売った場合は対象になります(このあとの「申告の手続」で説明します)。
「相続から3年以内」と覚えていると、10か月分を見落とします。一方で、期限を1日でも過ぎると使えません。売った日を契約日と引渡日のどちらにするかで、期限内かどうかが変わることもあります。
加算額の計算:分母・分子・相続税額
取得費加算額=その人の相続税額×売った財産の課税価格算入額÷その人の課税価格(債務控除前)
(上限:この特例を使わずに計算した譲渡益=収入金額−取得費−譲渡費用)
- 相続税額
- その人が納める相続税額です。贈与税額控除・相次相続控除・相続時精算課税の贈与税額控除で差し引いた額があれば、足し戻します。配偶者の税額軽減・未成年者控除・障害者控除は足し戻しません。延滞税などの附帯税も含めません。
- 分子:売った財産の課税価格算入額
- 売った財産が相続税の課税価格に算入された額です。小規模宅地等の特例を受けた宅地は、減額した後の額になります。
- 分母:その人の課税価格(債務控除前)
- その人の相続税の課税価格に、差し引いた債務・葬式費用を足し戻した額です。生前贈与加算や相続時精算課税で加えた贈与財産を含みます。相続税がかからない財産(非課税財産)の価額は含めません。
分母は、相続人全員の合計ではなく売った人自身の課税価格です。加算額は売った財産ごとに計算します。譲渡損失が出た財産では使えず、その分を他の財産に回すこともできません。相続した土地を1か所売っても、加算できるのはその土地に対応する相続税だけです。
配偶者は特に注意が必要です。配偶者の税額軽減で納める相続税がゼロになった配偶者は、相続税額がないため、この特例を使えません。一方、贈与税額控除で納付額がゼロになった人でも、控除がないものとして計算した相続税額があれば使えます。
計算に使う相続税額は、原則として売った年の12月31日に確定している額です。その時点で相続税の申告期限が来ておらず、まだ申告していない場合は、申告書を出した時に確定した額を使います。
計算ツールを表示するには JavaScript を有効にしてください。
計算例:相続した貸駐車場の土地を約2年後に8,000万円で売った場合
父が2024年6月10日に亡くなり、長男が父の貸駐車場の土地を相続しました。父は1985年(昭和60年)にこの土地を買いましたが、購入代金は分かりません。長男の相続税の課税価格(債務控除前)は1億円で、うちこの土地は6,000万円です(小規模宅地等の特例は使っていません)。長男の相続税額は1,200万円で、贈与税額控除や相次相続控除はありません。
長男は2026年9月30日に、この土地を8,000万円で売って引き渡しました。仲介手数料や測量費などの譲渡費用は300万円です。売却の期限は2028年4月10日なので、期限内です。
| 項目 | 計算 | 金額など |
|---|---|---|
| 長期・短期 | 父の取得(1985年)を引き継ぐ | 長期 |
| 取得費 | 購入代金が不明なため概算取得費8,000万円×5%(相続登記の費用は加算できない) | 400万円 |
| 特例を使う前の譲渡益(加算額の上限) | 8,000万円−400万円−300万円 | 7,300万円 |
| 取得費加算額 | 1,200万円×6,000万円÷1億円(上限の7,300万円以下) | 720万円 |
| 課税長期譲渡所得金額 | 7,300万円−720万円 | 6,580万円 |
| 所得税 | 6,580万円×15% | 987万円 |
| 復興特別所得税 | 987万円×2.1% | 20万7,270円 |
| 所得税と復興特別所得税の合計 | 1,007万7,270円の100円未満を切捨て | 1,007万7,200円 |
| 住民税 | 6,580万円×5% | 329万円 |
| 合計 | 1,007万7,200円+329万円 | 1,336万7,200円 |
答え:税額は1,336万7,200円です。取得費加算を使わないと、7,300万円に対して1,482万9,900円(所得税と復興特別所得税1,117万9,900円、住民税365万円)になります。差額は146万2,700円で、おおむね加算額720万円×20.315%に当たります。
住民税は5%で概算しています。概算取得費を使う場合も、取得費加算を使えます。措置法39条は取得費に相続税額を加算する規定で、同条・施行令・措置法通達には、概算取得費の場合を除く定めがないためです。概算取得費を選ぶと加えられない相続登記の費用とは、この点が異なります。
生前贈与や代償分割があった場合
生前贈与加算(7年加算)施行中や相続時精算課税で課税価格に加えた贈与財産も、分子・分母に含めます。これらの財産を相続開始後に売れば、取得費加算の対象になります。制度の詳細は生前贈与加算の章と相続時精算課税の章をご覧ください。
2024年1月1日以後の贈与財産は、算入する価額に注意します。相続時精算課税の財産は、贈与時の価額から年110万円の基礎控除を差し引いた残りの額です。暦年課税で相続開始前3年超7年以内に受けた贈与は、その合計額から100万円を差し引いた残りの額です。
相続時精算課税で同じ年に複数の財産をもらったときは、110万円を各財産の価額で按分します。600万円のA土地と500万円のB土地なら、A土地の算入額は540万円です(600万円−110万円×600万円÷1,100万円)。
代償分割で他の相続人に代償金を払って取得した財産を売るときは、計算を調整します。代償金を払った人の課税価格は、代償金の分だけ小さくなっています。そのまま計算すると、加算額が相続税額を超えることがあるためです。
調整の方法は租税特別措置法通達39-7に定められており、算式は次のとおりです。通達のページでは算式が画像で示されていますが、この項を最後に改めた2015年(平成27年)7月7日付の改正通達の新旧対照表で、文字で確かめられます。申告の際は、計算明細書の裏面の注記もあわせて確認してください。
取得費加算額=相続税額×〔A−C×A÷(B+C)〕÷B
A:売った財産の相続税評価額 B:代償金を払った人の課税価格(債務控除前) C:払った代償金の額
通達の注書きによると、払った代償金の額(C)は、相続税の計算で使った代償金の額です。代償金を時価をもとに決めた場合は、相続税評価額の水準に調整した額になります。この調整の計算例は換価分割・代償分割の章にあります。
ほかの特例との関係
| 特例 | 取得費加算との関係 | ポイント |
|---|---|---|
| 空き家の3,000万円控除 | 同じ財産では併用できない(選択) | 当初の申告で選ばなかった空き家特例を、後から修正申告や更正の請求で使うことはできません。 |
| マイホームの3,000万円控除 | 併用できる | 相続人自身が所有者として住んでいた家を売る場合などです。 |
| 自社株の金庫株特例(みなし配当課税の特例) | 併用できる | 相続した非上場株式を発行会社に売る場合です。 |
| 小規模宅地等の特例(相続税) | 併用できる | 減額後の価額が分子になるため、加算額は小さくなります。 |
空き家特例と取得費加算のどちらが有利かは、相続税額と譲渡益の大きさで変わります。両方を試算して選びます(比較の計算例は空き家の3,000万円控除の章)。空き家特例は2027年12月31日までの譲渡が対象です期限あり。延長と拡充は、令和9年度税制改正で要望されている段階です要望段階。
店舗兼住宅では、居住用部分に空き家特例、店舗部分に取得費加算を使える場合があります。
宅地を相続税の申告期限より前に売るときは、相続税への影響も確かめます。小規模宅地等の特例では、同居親族や家なき子が取得した宅地は、申告期限まで持ち続けることが要件です。事業用や貸付事業用の宅地も同じです。配偶者が取得した宅地には、この保有の要件はありません(特定居住用宅地等の章)。
申告の手続と、相続税の申告前に売った場合
この特例は、確定申告で適用を受けます。確定申告書に適用を受ける旨を書き、「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」と譲渡所得の内訳書を添付します。株式の場合は、株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書などを添付します。計算には相続税の申告書の控えが必要です。
証券会社の特定口座(源泉徴収あり)で相続した株式を売った場合も、この特例を使うには確定申告が必要です。2つ以上の財産を売ったときは、財産ごとに計算します。
相続税の申告前に売った場合は、次のように扱います。所得税の確定申告期限までに相続税を申告すれば、その相続税額で最初から適用できます。相続税の申告が間に合わないときは、所得税はいったん加算なしで申告します。
その後、相続税を期限内に申告すれば、更正の請求で取得費加算を受けられます。請求の期限は、相続税の申告書を出した日の翌日から2か月以内です(日付の例は売却の税金シミュレーターと申告の注意の章)。
あとで相続税の修正申告や更正があったときは、修正後の相続税額で加算額を計算します。相続税の更正の請求で相続税が減ったときは、加算額も減るため、所得税の修正申告が必要になります(修正申告・更正の請求の章)。
令和9年度税制改正に向けて、金融庁が取得費加算についての要望を出しています要望段階。株式等のみなし譲渡(収入金額とみなされる場合)も対象になることを、法令上明確にする内容です。2026年12月の大綱で決まる予定で、10月時点では未確定です。
配偶者も取得費加算を使えますか?
配偶者の税額軽減で納める相続税がゼロになった場合は使えません。軽減を受けても納める相続税額が残る場合は、その相続税額をもとに計算できます。
相続税の申告をする前に売っても使えますか?
使えます。所得税の確定申告までに相続税の申告が間に合わなければ、相続税の申告後2か月以内に更正の請求をして適用を受けます。
よくある誤り
- 「相続から3年以内に売れば使える」は不正確です。期限は相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日(目安3年10か月)で、亡くなる前の売却は対象外です。
- 分母を相続人全員の課税価格の合計や、債務控除後の課税価格にする誤りがよくあります。分母は売った人自身の課税価格で、債務控除前の額です。
- 小規模宅地等の特例を受けた宅地で、減額前の評価額を分子に入れる誤りがあります。分子は課税価格に算入された減額後の額です。
- 空き家の3,000万円控除と同じ財産で併用することはできません。当初の申告でどちらを使うか決めます。
他の税金との関係
- 相続した空き家を売るときは選択になります:空き家の3,000万円控除(被相続人の居住用財産)
- 納税資金のために相続財産を売る:納税資金の準備:延納・物納・売却・金庫株
- 土地を売って相続税を払う・分けるケース:土地を売って相続税を払う・分ける
- 相続した自社株を発行会社に売るときの併用:相続した自社株を会社に売る:金庫株とみなし配当の特例
- 取得費加算額を計算する:相続財産の取得費加算の計算ツール
専門家向け:根拠と実務論点
根拠
- 租税特別措置法39条、同施行令25条の16、同施行規則18条の18、措通39-1〜39-7・39-11・39-12。
算式の構成要素
- 分母:相続税法11条の2の課税価格に、19条・21条の14〜21条の18による加算・算入額を含めます。13条(債務控除)は適用しません(措令25条の16第1項2号)。非課税財産は含めません(措通39-3)。
- 分子:「課税価格の計算の基礎に算入された価額」のため、措置法69条の4の適用宅地は減額後の価額です。
- 相続税額:納付すべき相続税額に、相続税法19条・20条・21条の15第3項・21条の16第4項による控除額を加算します(措置法39条6項、措令25条の16第1項1号・3項、措通39-4)。農地等の納税猶予の適用者がいる場合は、措置法70条の6第2項の額によります。
- 確定時期:譲渡年分の所得税の納税義務の成立時に確定している額です。申告期限内で未申告なら、申告書の提出時の額です(措令25条の16第1項1号、措通39-1・39-2)。修正申告・更正の後は修正後の額によります(同条2項)。
個別論点
- 譲渡損の資産には適用がなく、他の資産に転用できません(措通39-5)。
- 同一銘柄の株式を相続分以外にも持つ場合、期間内の一部譲渡は相続取得分の譲渡として扱えます(措通39-12、タックスアンサー3267)。相続株式と贈与株式がともに算入されている場合は、1株当たり算入価額の高い方から譲渡したものとできます(質疑応答事例)。
- 交換・買換え等の特例を受けた資産などは、措通39-6の算式で割合を調整します(算式は通達原文・計算明細書で確認)。
- 措通39-7の注書き:相続税額は措令25条の16第1項1号(修正等があれば2項)の額です。Cは相続税法基本通達11の2-10による代償財産の価額です。計算明細書には、遺留分侵害額に相当する金銭を支払った場合は、この算式に準じて「支払代償金」を「遺留分侵害額に相当する価額」として計算する旨の注記があります。
- 代償金を控除して取得費に加算する相続税額を計算した更正処分を、適法とした裁決があります(1997年(平成9年)1月21日裁決、裁決事例集No.53。当時の措置法通達39-14によるもの)。
- 措通39-7の算式は、通達のページでは画像ですが、同項の最終改正である2015年7月7日付課資3-4ほかの新旧対照表(改正後欄)に文字で掲載されています。「確定相続税額×(譲渡をした資産の相続税評価額B−支払代償金C×B÷(A+C))÷その者の相続税の課税価格(債務控除前)A」で、本文とはAとBの記号が逆です。式を整理すると、確定相続税額×B÷(A+C)と同じ値になります(代償金を差し引く前の課税価格で按分する形)。改正前の39-14は、土地等を譲渡した場合に、相続等で取得した全ての土地等の評価額を使う算式でした。
- 概算取得費との関係:措置法39条1項は所得税法33条3項の取得費に相続税額を加算する規定です。同条・措令25条の16・措通39-1〜39-15には、措置法31条の4(概算取得費)を適用する場合を除く定めはありません。
- 第1次相続の申告期限前に第2次相続が開始し、第1次相続人が申告せずに死亡した場合の特則があります。第2次相続人の申告期限(相続税法27条2項)の翌日以後3年以内の譲渡まで適用できます(措通39-11)。
- 更正の請求:措置法39条4項1号は、相続税の期限内申告書の提出日の翌日から2か月以内です。国外転出(相続)時課税や遺産分割等の事由による修正・更正は、その翌日から4か月以内です(同項2号・3号)。相続税の減額で所得税を修正する場合は、延滞税の計算期間の特例があります(同条9項)。
- 売買契約中に売主が死亡し、相続人が引渡日基準で申告する場合も適用できます。計算明細書のA欄は残代金請求権と受領済み手付金相当額の合計です。前受金債務相当額はC欄(債務控除額)に加算します(質疑応答事例)。
- 当初申告で35条3項を適用しなかった譲渡に、修正申告・更正の請求で適用することはできません(措通35-18)。
マイホームの3,000万円控除と軽減税率
自分が住んでいる家や、住んでいた家を売るときは、譲渡益から最高3,000万円を差し引ける特例と、所有期間が10年を超えると税率が下がる特例を使えます。相続した家に使えるかどうかは、売る人自身が所有者として住んでいたかで決まります。
この章の結論
- 自宅を売ると、譲渡益から最高3,000万円を控除できます。住まなくなった家も、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば対象です。所有期間や所得の制限はありませんが、親子・夫婦など特別の関係がある人への売却には使えません。
- 売った年の1月1日に家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えていれば、控除後の6,000万円以下の部分に14.21%の軽減税率を併用できます。2027年(令和9年)分以後も合計税率は変わりません。
- 相続した家は「売る人自身が所有者として住んでいたか」が分かれ目です。住んでいなければ3,000万円控除は使えないため、空き家特例や取得費加算を検討します。
3,000万円控除の対象になる売却
居住用財産の3,000万円特別控除(以下「3,000万円控除」)は、マイホームを売ったときの譲渡益から、最高3,000万円を差し引ける特例です。譲渡益とは、売った金額から取得費と譲渡費用を引いた利益のことで、3,000万円未満ならその金額まで控除します。所有期間の長短は問わず、売る人の合計所得金額の制限もありません。
| 売るもの | 主な条件 |
|---|---|
| 今住んでいる家(敷地・借地権を含む) | 主として住んでいる1つの家に限る |
| 以前住んでいた家(敷地を含む) | 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る(その間の用途は問わない) |
| 家を取り壊した後の敷地 | 取壊しから1年以内に売買契約を結び、上と同じ期限までに売る(取壊し後、契約までに貸駐車場など他の用途に使っていないことも必要) |
| 災害で滅失した家の敷地 | 一定の期限までに売る |
住まなくなった後に人に貸していても、期限までに売れば対象です(相続した親の家に使う空き家特例は、貸すと対象外になる点が違います)。一方、この特例を受けるためだけに入居した家、新築中の仮住まいなど一時的に住んだ家、別荘は対象外です。2つ以上の家に住んでいる場合は、主として住んでいた1つだけが対象になります。
「3年を経過する日」は、住まなくなった日を1日目として数えます。2026年(令和8年)中に売るなら、2023年(令和5年)1月2日以後に住まなくなった家が対象です。
| 住まなくなった日 | 売却の期限 |
|---|---|
| 2023年1月2日〜2024年(令和6年)1月1日 | 2026年12月31日 |
| 2024年1月2日〜2025年(令和7年)1月1日 | 2027年12月31日 |
| 2025年1月2日〜2026年1月1日 | 2028年(令和10年)12月31日 |
よくある誤り:更地にすれば、いつ売っても対象になる
家を取り壊した後の敷地は、取壊しから1年以内に売買契約を結ぶことが条件です。取り壊した後に貸駐車場などに使うと対象外になります。取壊し後に新しい建物を建てて一緒に売る場合も対象外です。
特別の関係がある人への売却など、使えない場合
3,000万円控除は、次の人への売却には使えません。
- 配偶者と、親・子・孫などの直系血族
- 生計を一にする親族と、売った後にその家で一緒に暮らす親族
- 内縁関係にある人と、その人と生計を一にする親族
- 売り手から受け取るお金などで生計を立てている人(使用人を除く)と、その人と生計を一にする親族
- 売り手やこれらの親族、使用人などが支配する同族会社など
過去の特例の使い方にも制限があります。売った年の前年・前々年に、この3,000万円控除や、マイホームの譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例(2027年12月31日までの売却期限あり)を受けていると使えません。マイホームの買換え・交換の特例は、売った年・前年・前々年に受けていないことが条件だと国税庁は案内しています。前年に空き家特例を使ったことは、この制限に含まれません。
同じ家に交換の特例、収用等の特例、事業用資産の買換えの特例などを受ける場合も使えません。マイホームの買換え特例(2027年12月31日までの売却期限あり)とは、どちらか一方を選びます(その他の特例の章)。
よくある誤り:親子間の売買でも3,000万円控除が使える
親子・夫婦の間の売買には、3,000万円控除も軽減税率も使えません。時価より著しく安く売ると、買った側に差額のみなし贈与(贈与税)がかかることもあります。土地や家屋の時価は、相続税評価額ではなく通常の取引価額で考えます(親子間の売買の章、低額譲渡の章)。
共有の家と、家屋・敷地の名義が違う場合
夫婦などで共有している家を売る場合、その家に住んでいる共有者は、自分の家屋の持分と、自分が持つ敷地について3,000万円控除を使えます。たとえば甲の土地の上に甲と乙が2分の1ずつ共有する家があり、甲だけが住んでいた場合、甲は家屋の2分の1と敷地の全部に特例を使えます(国税庁の質疑応答事例)。
所得税は一人ひとりに計算する税金です。このため、要件を満たす共有者は、それぞれ最高3,000万円を控除できると整理されています(具体的な適用は税務署等で確認してください)。
家屋と敷地の持ち主が違う場合、家屋の譲渡益が3,000万円に満たなければ、控除しきれない分を敷地の所有者の譲渡益から差し引けます。条件は、家屋と敷地を同時に売ること、2人が親族で生計を一にしていること、敷地の所有者も家屋の所有者と一緒にその家に住んでいたことの3つです。
たとえば夫(家屋)の譲渡益が500万円、妻(敷地)の譲渡益が4,000万円なら、夫が500万円、妻が残りの2,500万円を控除できます。2人の控除の合計は3,000万円までです。
相続した家を相続人が売る場合
相続した家に3,000万円控除を使えるのは、売る相続人自身が、その家に所有者として住んでいた場合です。亡くなった人の住まいだったというだけでは使えません。国税庁の質疑応答事例では、夫と同居していた妻が、夫の死亡後に家を相続した例が示されています。妻は相続後に別の家に住み、所有者として住んだことがないため、適用できないとされています。
| ケース | 3,000万円控除 | あわせて検討する特例 |
|---|---|---|
| 同居していた子が相続し、相続後も住んでから売る | 使える(所有者として住んでいたため) | 軽減税率、取得費加算(併用できる) |
| 同居していた配偶者が相続したが、相続後は別の家に住み、所有者として住んだことがないまま売る | 使えない | 取得費加算(相続税額がある場合) |
| 親が一人で住んでいた家を、別に住む子が相続して売る | 使えない | 空き家特例(2027年12月31日までの売却期限あり)か取得費加算のどちらか |
| 親が売買契約を結び、引渡し前に亡くなった | 契約日で申告すれば、亡くなった親の特例として使える | 準確定申告(申告の注意の章) |
相続した家の所有期間は、亡くなった人が取得した日から数えます。軽減税率の「10年超」も亡くなった人の取得日で判定します。親が10年を超えて持っていた家なら、相続人が所有者として住んだ期間が短くても、所有期間の要件は満たします。
他の税金との関係
- 同居していた子が相続した自宅は、相続税の申告期限まで住み続け、持ち続けないと小規模宅地等の特例(特定居住用)を使えません。申告期限前に売ると特例を失います。配偶者にはこの継続要件がありません。→特定居住用宅地等の章
- 相続税を納めた人が、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売る場合は、取得費加算を3,000万円控除と併用できます。→取得費加算の章
- 相続人が住んでいなかった親の家は、空き家特例の対象になるかを確認します。→空き家の3,000万円控除の章
所有期間10年超の軽減税率
売った年の1月1日に、家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えていれば、軽減税率の特例を使えます。3,000万円控除と併用でき、控除後の課税長期譲渡所得金額のうち6,000万円以下の部分の税率が14.21%になります。2026年中の売却なら、2015年(平成27年)12月31日以前に取得した家と敷地が対象です。
- 国内にある居住用財産であること(対象になる売却は3,000万円控除と同じ。取り壊した後の敷地は、取壊しの時点についても所有期間の要件があります)
- 前年・前々年にこの軽減税率の特例を受けていないこと
- 同じ家に買換え・交換の特例などを受けていないこと(3,000万円控除とは併用できます)
- 特別の関係がある人への売却ではないこと
| 区分 | 所得税 | 住民税 | 合計税率(復興特別所得税を含む) |
|---|---|---|---|
| Aのうち6,000万円以下の部分 | 10% | 4% | 14.21% |
| Aのうち6,000万円を超える部分 | 15% | 5% | 20.315% |
| (参考)軽減税率を使わない長期譲渡所得 | 15% | 5% | 20.315% |
Aが6,000万円を超える場合
所得税=(A−6,000万円)×15%+600万円
住民税=(A−6,000万円)×5%+240万円
所得税には別に復興特別所得税(所得税額の2.1%)がかかります。たとえばAが8,000万円なら、所得税900万円・復興特別所得税18万9,000円・住民税340万円の合計1,258万9,000円です。軽減税率を使わない場合(1,625万2,000円)より366万3,000円少なくなります。
2027年分以後は、復興特別所得税が1.1%に下がり、防衛特別所得税成立・施行待ち(所得税額の1%)が加わりますが、上乗せの合計は2.1%のままです。合計税率は変わらず、14.21%の内訳は所得税10%+復興特別所得税0.11%+防衛特別所得税0.1%+住民税4%になります。
住宅ローン控除との関係
3,000万円控除や軽減税率を受けると、新しい家で住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)を受けられないことがあります。新居に住み始めた年とその前2年・後3年のいずれかの年に、これらの特例を受けている場合です。住宅ローン控除は2030年(令和12年)12月31日までの入居が対象です期限あり。買い替えでは、どちらが有利かを事前に比べます。
計算例と申告の手続
計算例:16年住んだ自宅を1億円で売る
前提:2010年(平成22年)4月に、土地3,000万円・木造の建物2,000万円で自宅を買って住んできました。2026年3月に第三者へ1億円で売り、仲介手数料などの譲渡費用が300万円かかりました。他の所得や所得控除はないものとします。
①建物の減価償却費相当額=2,000万円×0.9×0.031×16年=892万8,000円
②建物の取得費=2,000万円−892万8,000円=1,107万2,000円
③譲渡益=1億円−(3,000万円+1,107万2,000円)−300万円=5,592万8,000円
④課税長期譲渡所得金額=5,592万8,000円−3,000万円=2,592万8,000円
⑤所得税=2,592万8,000円×10%=259万2,800円
⑥復興特別所得税=259万2,800円×2.1%=5万4,448円(1円未満切捨て)
⑦⑤と⑥の合計=264万7,248円→264万7,200円(100円未満切捨て)
⑧住民税=2,592万8,000円×4%=103万7,120円
①の0.031は、自宅など業務に使っていない木造建物の償却率です(耐用年数の1.5倍で計算)。取得から売却までの15年11か月は、6か月以上の端数を1年として16年とします(計算方法は取得費と譲渡費用の章)。2026年1月1日時点で所有期間は15年を超えるため、軽減税率の要件を満たします。
| 使う特例 | 課税長期譲渡所得金額 | 所得税+復興特別所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 特例なし | 5,592万8,000円 | 856万5,300円 | 279万6,400円 | 1,136万1,700円 |
| 3,000万円控除のみ | 2,592万8,000円 | 397万800円 | 129万6,400円 | 526万7,200円 |
| 3,000万円控除+軽減税率 | 2,592万8,000円 | 264万7,200円 | 103万7,120円 | 368万4,320円 |
答え:3,000万円控除と軽減税率を併用すると、税額は合計368万4,320円です。特例を使わない場合の1,136万1,700円より767万7,380円少なくなります。
住民税は合計の税率で概算し、内訳や均等割は省略しています。
3,000万円控除と軽減税率は、売った年の翌年に確定申告をして受けます。税額がゼロになる場合でも、特例を使うための申告が必要です。申告書には譲渡所得の内訳書を添付し、軽減税率を受けるときは登記事項証明書(不動産番号を書けば省略可)なども添えます。売買契約日の前日の住民票の住所と、売った家の所在地が違う場合は、戸籍の附票の写しなども必要です。
譲渡所得の特別控除は、空き家特例や収用の5,000万円控除なども含めて、1年間の合計で5,000万円が上限です。同じ年に自宅と相続した空き家の両方を売った場合、2つの3,000万円控除の合計は3,000万円までになります。税額の試算には土地建物の譲渡所得・税額の計算ツールを使えます。
3,000万円控除を使う前の確認
- 売る人自身が所有者として住んでいた家か(相続した家は特に確認)
- 住まなくなった家なら、3年を経過する日の属する年の12月31日までに売るか
- 買い手が配偶者・直系血族・生計を一にする親族・同族会社などではないか
- 前年・前々年に3,000万円控除や譲渡損失の特例を受けていないか
- 売った年の1月1日に家屋・敷地とも所有期間10年超か(軽減税率)
- 新居で住宅ローン控除を受ける予定がないか
相続した家に住んでいた相続人が、相続税の申告前に売ってもよいですか。
所有者として住んでいれば、3,000万円控除は相続税の申告と関係なく使えます。取得費加算も相続税の申告前の売却に使えます。ただし同居していた子は、相続税の申告期限までに売ると小規模宅地等の特例を使えなくなるため、売る時期を先に検討します。
売って損が出た場合はどうなりますか。
土地建物の譲渡損失は、原則として給与所得など他の所得と相殺できません。例外として、一定の要件を満たすマイホームの譲渡損失には、損益通算と繰越控除ができる特例があります(2027年12月31日までの売却期限あり)。詳しくはその他の特例の章をご覧ください。
専門家向け:根拠と実務論点
根拠
- 3,000万円控除:租税特別措置法35条1項・2項、同施行令20条の3・23条、措置法通達35-2・31の3-2。特別関係者の範囲は措令20条の3第1項(35条2項で準用)。家屋と敷地の所有者が異なる場合は措通35-4。
- 軽減税率:措法31条の3、措通31の3-5・31の3-14・31の3-15。6,000万円超の所得税はタックスアンサーNo.3305、住民税は「令和7年分 譲渡所得の申告のしかた」参考2の早見表によります。
- 特別控除の年間限度額5,000万円と控除の順序:措法36条、措令24条、措通36-1。同一年の自己居住用と被相続人居住用の合計限度:措通35-7。
実務論点
- 期限の数え方:住まなくなった日を初日とします(令和7年分の手引きの「令和4年1月2日以後に居住しなくなった家屋」からの当てはめで、2026年分は2023年1月2日以後)。
- 取壊し後の敷地(措通35-2):取壊し後に新たな建物を建てて一緒に売る場合や、家屋を引き家して敷地を売る場合は対象外です。軽減税率では取壊し時点の所有期間10年超も必要です(No.3305)。
- 共有家屋:居住する共有者は自己の家屋持分と自己所有の敷地全部に適用できます(質疑応答事例)。共有者ごとに最高3,000万円とする整理は、個人単位課税と措通35-4の「各人3,000万円が限度」からの帰結で、国税庁の一般的な明示文言は確認できていません。
- 措通35-4の生計一・同居の要件は原則として譲渡時で判定します。住まなくなった後3年以内の譲渡では、生計一は居住しなくなった時から譲渡時まで、同居は居住しなくなる直前で判定します。敷地所有者が複数なら控除不足額を按分します。
- 相続人の居住:譲渡者が所有者として居住していた家屋に限ります(質疑応答事例「相続人が譲渡する被相続人の居住用財産」)。被相続人が契約を締結し引渡し前に死亡した場合、契約日基準(所基通36-12)で被相続人の譲渡として準確定申告すれば被相続人の特例を適用できます(質疑応答事例)。
- 取得費加算(措法39条)との併用:35条2項の適用除外に39条は含まれず、39条側にも35条1項を除く規定はありません。35条3項(空き家特例)とは選択です。
- 前年・前々年要件(35条2項):対象は35条1項(3項を除く)、36条の2・36条の5、41条の5・41条の5の2です。No.3302は買換え・交換の特例について売った年も含めて記載しています。
空き家の3,000万円控除(被相続人の居住用財産)
親が一人で住んでいた古い家を相続して売るときは、要件を満たせば譲渡益から最高3,000万円を控除できます。2027年(令和9年)12月31日までの売却に限られ、相続後の使い方や売り方で使えなくなることもあるため、売る前の確認が欠かせません。
この章の結論
- 対象は、亡くなる直前に被相続人だけが住んでいた家(老人ホーム入所の特例あり)とその敷地です。家は1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられ、区分所有登記がないものに限ります。家と敷地の両方を相続した人が、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ2027年12月31日までに、1億円以下で売ることが条件です。
- 耐震リフォームして売るか、取り壊して更地で売ります。2024年(令和6年)以後の売却は、買主が翌年2月15日までに耐震改修か取壊しをする形でも使えます。家と敷地を取得した相続人が3人以上なら、控除は1人2,000万円です。
- 相続後に貸したり住んだりすると使えません。取得費加算とは同じ資産で併用できないため、有利な方を選びます。市区町村の確認書をとり、税額がゼロでも確定申告をします。期限の延長は要望段階で、2026年(令和8年)10月時点では決まっていません。
特例のしくみと売却の期限
被相続人の居住用財産の3,000万円特別控除(以下「空き家特例」)は、相続した空き家とその敷地を売ったときに、譲渡益から最高3,000万円を差し引ける特例です。遺贈(死因贈与を含む)で取得した場合も対象です。控除は要件を満たす相続人ごとに受けられ、2人で相続すれば各最高3,000万円です。2024年1月1日以後の売却では、家と敷地を相続した相続人が3人以上いると、控除額は1人2,000万円施行中になります。
使えるのは、次の2つの期限を両方満たす売却です。
- 適用期限:2016年(平成28年)4月1日から2027年12月31日までの売却期限あり。令和8年度税制改正では改正されていません。
- 売却期限:相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。亡くなった日を1日目として数えます。
| 相続開始日(亡くなった日) | 売却の期限 |
|---|---|
| 2023年(令和5年)1月1日以前 | 期限切れ(2025年(令和7年)12月31日までに終了) |
| 2023年1月2日〜2024年1月1日 | 2026年12月31日 |
| 2024年1月2日〜2025年1月1日 | 2027年12月31日 |
| 2025年1月2日以後 | 2027年12月31日(本来の期限より先に適用期限が来る) |
2023年1月2日から2024年1月1日までに亡くなった方の家は、2026年12月31日が期限です。2025年以後に亡くなった方の家も、現行の法令では2027年12月31日までに売る必要があります。
令和9年度税制改正要望では、国土交通省が、2028年(令和10年)1月1日から2031年(令和13年)12月31日までの4年延長を求めています要望段階。あわせて、1981年5月31日以前の建築という要件の見直し、民事信託による取得の対象化、確認書の手続の改善も要望しています。2026年12月の税制改正大綱で決まる予定で、現時点では未確定です。
よくある誤り:期限は「相続から3年以内」
売却期限は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日です。2024年2月15日に亡くなった場合、3年を経過する日は2027年2月14日なので、2027年12月31日まで売れます。一方、適用期限の2027年12月31日を過ぎると、相続から3年以内でも使えません(延長は未確定)。
対象になる家と、使える人
対象は、相続開始の直前に被相続人が住んでいた家(被相続人居住用家屋)と、その敷地です。家は次の3つをすべて満たす必要があります。
- 1981年5月31日以前に建築されたこと
- 区分所有建物の登記がされていないこと(分譲マンションは対象外)
- 相続開始の直前に、被相続人以外に住んでいた人がいないこと(親族だけでなく賃借人なども含みます)
被相続人が主として住んでいた1つの建物に限られ、店舗兼住宅は居住用部分だけが対象です。母屋と離れや倉庫のように用途上切り離せない建物が複数ある土地は、床面積の割合で按分した部分だけが敷地になります。
使えるのは、家と敷地の両方を相続や遺贈で取得した相続人(包括受遺者を含む)です。家だけ、敷地だけを相続した人は使えません。父から土地、母から家を相続したように、別々の被相続人から取得した場合も対象外です。相続前から自分が持っていた持分にも使えません。
2,000万円になるかを決める「相続人の数」は、国土交通省の資料では、家と敷地の両方を取得した相続人の数と説明されています。人数は相続で取得した時点で判定し、その後にほかの相続人が持分を売ったり贈与したり、亡くなったりしても変わりません。
老人ホームなどに入所していた場合
亡くなる直前に老人ホームなどにいた場合でも、次の条件をすべて満たせば、入所の直前まで住んでいた家が対象になります。
- 要介護認定・要支援認定(または障害支援区分の認定)を受けて、老人ホームなどに入所していたこと。特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、認知症グループホーム、介護老人保健施設、介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅などが対象です。認定の有無は、家に住まなくなる直前で判定します。
- 入所から亡くなる直前まで、家が被相続人の荷物の保管などに使われていたこと
- その間、事業や貸付けに使われず、被相続人以外の人も住んでいなかったこと
- 入所後の主な住まいが、亡くなる直前までその施設だったこと(親族の家や一般の賃貸住宅に移った後に亡くなった場合は対象外)
- 入所の直前に、被相続人以外に住んでいた人がいないこと
売り方の3つの型と、相続後は使わないこと
売り方は次の3つのいずれかです。①と②の型では、相続から売るまで(②は取壊しまで)家を事業・貸付け・居住に使っていないことが必要です。③の型でも、確認書の申請で電気・ガス・水道の使用中止日が分かる書類などを出し、相続後に使っていないことを示します。
| 売り方 | 主な条件 | 札幌市の確認書の様式 |
|---|---|---|
| ①耐震リフォームして家と敷地を売る | 売る時に家が耐震基準に適合していること(耐震基準適合証明書などが必要) | 様式1-1 |
| ②家を取り壊して更地を売る | 相続から取壊しまで家を、相続から売るまで敷地を使っていないこと。取壊し後に建物や構築物の敷地にしていないこと | 様式1-2 |
| ③家付きで売り、翌年2月15日までに耐震改修か取壊し(2024年1月1日以後の売却) | 売った年の翌年2月15日までに、耐震基準に適合させるか全部取り壊すこと(通常は買主が工事) | 様式1-3 |
③の型では、売買契約に「翌年2月15日までに耐震改修または取壊しをする」旨の特約を入れることを国土交通省が勧めています(特約がなくても確認書は発行されます)。耐震改修なら翌年2月15日までに工事を終える必要があり、耐震基準適合証明書をとっただけで工事をしていなければ使えません。工事の完了後、確定申告書を出す日までに、耐震基準に適合することを証明するための調査も終えておきます。
③の「翌年2月15日」の基準になる売った日は、譲渡所得の収入の時期に合わせます。引渡日で申告するなら引渡日、契約日で申告するなら契約日です。
よくある誤り:少しだけなら貸しても大丈夫
相続後に家を貸したり、住んだり、事業に使ったりすると空き家特例は使えません。無償で貸した場合や、一時的に使った場合も同じです。取り壊した後の土地を貸駐車場などに使うのも対象外です。売るまで空き家のまま管理し、電気・ガス・水道を止めた日が分かる書類を残しておきます。
1億円以下の判定と、ほかの特例との関係
売却代金は1億円以下でなければなりません。この判定では、家や敷地を相続したほかの相続人(家だけ・敷地だけを相続した人を含む)が売った分も合計します。対象は、相続の時から、特例を使う売却の日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却です。共有なら相続で取得した持分に相当する金額、店舗兼住宅なら居住用部分に相当する金額で判定します。
特例を使う人は、ほかの相続人に、売ったことや売った日などを通知します。通知を受けた人も、自分が売ったときは遅滞なく通知します。通知がなくても合計が1億円を超えれば特例は使えず、特例を使った後の売却で超えた場合は、その売却の日から4か月以内に修正申告をして納税します。
親子・夫婦・生計を一にする親族・売却後に同居する親族・内縁関係者・同族会社など、特別の関係がある人への売却には使えません。範囲はマイホームの3,000万円控除と同じです。
相続税を納めた人が使える取得費加算とは、同じ資産に両方は使えないため、どちらかを選びます。最初の確定申告で空き家特例を選ばなかった売却を、後から修正申告や更正の請求で空き家特例に切り替えることはできません。なお、店舗兼住宅の店舗部分に取得費加算、住宅部分に空き家特例を使うことはできます。同じ年に自分の自宅も売ってマイホームの3,000万円控除を使う場合は、2つの控除の合計が3,000万円までになります。
実務のコツ:扶養や配偶者控除への影響
配偶者控除や扶養控除の対象になるかを決める合計所得金額は、特別控除を差し引く前の譲渡益で判定します。空き家特例で税金がゼロでも、売った人が配偶者や親族の扶養から外れることがあるため、事前に確認します。
他の税金との関係
- 空き家になった親の家の敷地は、持ち家のない子などが相続すると、小規模宅地等の特例(家なき子特例)の対象になることがあります。この特例は相続税の申告期限まで土地を持ち続けることが条件なので、申告期限前に売ると使えません。→家なき子特例の章
- 取得費加算とどちらが有利かは、相続税額と譲渡益の大きさで決まります。→取得費加算の章
- 兄弟で売って代金を分ける換価分割なら、家と敷地を取得した各相続人がそれぞれ空き家特例を使えます。→換価分割・代償分割の章
- 住む・貸す・売るを比べるなら→実家を相続したときのケース
計算例:取り壊して売る場合と取得費加算の比較
計算例:母の家を取り壊し、兄弟2人で更地を売る
前提:母が2024年2月15日に亡くなりました。母は札幌市内の木造平屋(1975年(昭和50年)建築、区分所有登記なし)に一人で住んでいました。子A・Bが家と敷地を2分の1ずつ相続し、その後は誰も使っていません。
土地は亡父が1972年(昭和47年)に取得したもので、取得費は分かりません(父から母への相続で取得費と取得時期を引き継いでいます)。2026年6月に家を取り壊し(費用180万円)、10月に更地を4,200万円で第三者に売りました。仲介手数料などは150万円です。
期限などの確認:3年を経過する日は2027年2月14日なので、売却期限は2027年12月31日です。適用期限の範囲内で、売却代金も1億円以下です。札幌市の確認書は様式1-2で申請します。
1人分の収入金額=4,200万円×2分の1=2,100万円
概算取得費=2,100万円×5%=105万円
譲渡費用=(取壊し費用180万円+仲介手数料など150万円)×2分の1=165万円
譲渡益=2,100万円−105万円−165万円=1,830万円
空き家特例の控除額=1,830万円(3,000万円以内なので譲渡益の全額)
課税される譲渡所得=0円
比べるため、空き家特例の代わりに取得費加算を選んだ場合と、特例を使わない場合も計算します。取得費加算は、Aの相続税額を100万円、Aの課税価格(債務控除前)に占める土地(Aの持分)の割合を40%と仮定し、100万円×40%=40万円とします。
| 項目 | 空き家特例 | 取得費加算 | 特例なし |
|---|---|---|---|
| 収入金額 | 2,100万円 | 2,100万円 | 2,100万円 |
| 取得費(概算)+取得費加算額 | 105万円 | 145万円 | 105万円 |
| 譲渡費用 | 165万円 | 165万円 | 165万円 |
| 特別控除 | 1,830万円 | ― | ― |
| 課税長期譲渡所得金額 | 0円 | 1,790万円 | 1,830万円 |
| 所得税+復興特別所得税 | 0円 | 274万1,300円 | 280万2,600円 |
| 住民税 | 0円 | 89万5,000円 | 91万5,000円 |
| 税額の合計 | 0円 | 363万6,300円 | 371万7,600円 |
答え:空き家特例を使うと、A・Bとも税額は0円です。取得費加算を選ぶと1人363万6,300円、特例なしなら1人371万7,600円(2人で743万5,200円)で、この例では空き家特例が有利です。
所得税は課税長期譲渡所得金額×15%、復興特別所得税はその2.1%(1円未満切捨て)、両者の合計は100円未満切捨て、住民税は5%で概算しています。取壊しによる家屋の損失額は、家屋の取得費が不明なため計算に入れていません。
計算例:相続人が3人の場合(上限2,000万円)
前提:条件を変えて、家と敷地を子3人が3分の1ずつ相続し、取り壊して9,000万円で売った場合です。1人あたりの譲渡費用は160万円、取得費は分からないものとします。
1人分の収入金額=9,000万円×3分の1=3,000万円
1人分の譲渡益=3,000万円−概算取得費150万円(3,000万円×5%)−160万円=2,690万円
課税長期譲渡所得金額=2,690万円−2,000万円(3人以上なので上限2,000万円)=690万円
所得税=690万円×15%=103万5,000円、復興特別所得税=2万1,735円(合計105万6,735円→105万6,700円)
住民税=690万円×5%=34万5,000円
答え:1人あたりの税額は140万1,700円です。控除の上限が2,000万円になるため、譲渡益のうち690万円に税金がかかります。
確認書と確定申告の手続(札幌市の場合)
- 相続直後家を使わずに管理し、電気・ガス・水道を止めた日が分かる書類(閉栓時の領収書など)を残します。
- 売り方を決めて契約耐震リフォーム、取壊し、買主による工事のどれにするかを決めます。買主が工事をするなら特約を入れます。
- 工事と引渡し買主が工事をする場合は、売った年の翌年2月15日までに終えてもらいます。
- 確認書の申請家があった市区町村に、被相続人居住用家屋等確認書を申請します。
- 確定申告売った年の翌年に、確認書などを添付して確定申告をします。
確認書は、家の所在地(取り壊した場合は、あった場所)の市区町村が交付します。札幌市の窓口は、都市局建築指導部 建築安全推進課(空き家対策担当係)です。所在地は札幌市中央区北1条西2丁目の札幌市役所本庁舎2階、電話は011-211-2808です。申請は郵送か窓口への持参で行い、交付まで数日かかります。
申請書は相続人全員の分を出します。札幌市の様式1-3のチェックシートで求められる主な書類は次のとおりです。
- 被相続人の除票住民票と、相続人全員の住民票(売った日以後の日付のもの)
- 売買契約書の全ページの写し
- 土地・家屋の登記事項証明書(取り壊した場合は閉鎖登記の証明書)
- 電気・ガス・水道の使用中止日が分かる書類か、仲介業者の広告の写し(札幌市水道局は「水道の使用廃止届出書」を発行していないため、閉栓時の領収書や請求書で代用します)
- 耐震改修をした場合は耐震基準適合証明書などと、工事完了日が分かる書類
- 老人ホームなどに入所していた場合は、介護保険の被保険者証や施設の入所契約書など
確定申告の時期(2月16日〜3月15日)は窓口が混み合うため、早めに申請します。詳しくは札幌の空き家と確認書の章で説明しています。
確定申告書には次の書類を添付します。税額がゼロになる場合でも、申告しなければ特例は使えません。
- 譲渡所得の内訳書(土地・建物用)
- 登記事項証明書など(相続で取得したこと、1981年5月31日以前の建築、区分所有登記がないことを示すもの。不動産番号を書けば省略可)
- 被相続人居住用家屋等確認書
- 耐震リフォームした家を売る場合は、耐震基準適合証明書か建設住宅性能評価書の写し(売った日の前2年以内に調査・評価したもの)
- 売買契約書の写しなど(売却代金が1億円以下であることを示すもの)
取り壊す型や買主が工事をする型では、取壊しの登記事項証明書など、型ごとに追加の書類があります。
相続税がかからなかった場合でも、空き家特例は使えますか。
使えます。空き家特例の要件に、相続税が課されたことは含まれていません。取得費加算は、原則として相続税額がある人だけが使える特例です(贈与税額控除で納める額が0円になった人は、控除を足し戻した相続税額で判定します)。相続税がかからなかった人は、空き家特例が主な選択肢になります。
分譲マンションに一人で住んでいた親の部屋は対象になりますか。
区分所有建物の登記があるマンションは対象外です。1981年5月31日以前に建てられたものでも使えません。
兄弟3人で共有して相続した家を売る場合、控除はどうなりますか。
家と敷地の両方を相続した3人が、それぞれ空き家特例を使えます。ただし2024年1月1日以後の売却では1人2,000万円が上限です。売却代金が1億円以下かどうかは、3人の売却分を合わせて判定します。
専門家向け:根拠と実務論点
根拠
- 租税特別措置法35条3項(譲渡類型は同項1号〜3号)・4項(相続人3人以上の2,000万円)・5項(被相続人居住用家屋・敷地等、老人ホーム等の特定事由)・6項〜10項(1億円判定・通知・修正申告)・12項(申告要件)、同施行令23条、同施行規則18条の2(確認書の添付)。
- 措置法通達35-7・35-7の2(同一年の自己居住用との調整)、35-8(取得費加算との区分適用)、35-9(家屋と敷地の両方の取得)、35-9の2・35-9の3(老人ホーム等)、35-9の4・35-9の5(翌年2月15日の判定と耐震工事)、35-9の6(人数の判定時期)、35-10〜35-15(家屋・敷地の範囲)、35-16(無償貸付け・一時利用)、35-17(敷地の一部譲渡)、35-18(当初申告要件)、35-20・35-21・35-25(1億円判定)。
実務論点
- 期限の起算:相続開始日を初日とします。東京国税局の令和6年分チェックシート(令和3年1月2日以後に死亡)からの当てはめで、2026年分は2023年1月2日以後の相続開始です。
- 相続人の数:条文は「家屋及び敷地等の取得をした相続人の数が3人以上」です。国交省資料は両方を取得した相続人の数と明示していますが、国税庁の明示文言は確認できていません。判定は取得時です(措通35-9の6)。
- 1億円判定:居住用家屋取得相続人には、家屋のみ・敷地のみの取得者を含みます(措通35-21)。適用後譲渡で超過した場合は、譲渡の日から4か月以内に修正申告が必要です(35条9項)。通知がなくても超過なら適用されません(措通35-25)。
- 3号の譲渡:「譲渡の日」は所基通36-12の選択に従います(措通35-9の4)。耐震は、翌年2月15日までの工事完了と、完了日から確定申告書の提出日までの調査終了等が必要です(措通35-9の5)。
- 老人ホーム等:対象は認知症グループホーム、養護・特別養護・軽費・有料の各老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅(有料老人ホームを除く)、障害者支援施設(施設入所支援)、共同生活援助の住居です。認定の有無は居住の用に供されなくなる直前で判定します(措通35-9の2)。
- 家屋が被相続人と第三者の共有でも、被相続人が全部に居住していれば敷地全部が対象になり得ます(質疑応答事例)。家屋と敷地を別々の相続で取得した場合は適用できません(質疑応答事例)。
- 敷地の一部譲渡:家屋がある間は家屋と同時の譲渡のみ対象となり、取壊し後は取得した敷地全体で要件を判定します(措通35-17)。同じ被相続人から取得した財産に重ねて適用することはできません。
- 計算例の取得費加算は概算取得費に上乗せしています。措法39条は「取得費に加算」する規定で概算取得費を除外していないことによる整理で、国税庁が併用できると明示した資料は確認できていません。
- 合計所得金額(配偶者控除・扶養控除等の判定)は、特別控除前の譲渡益によります(東京国税局チェックシート)。
換価分割・代償分割・遺留分の支払と譲渡所得
遺産の分け方によって、所得税(譲渡所得)がかかる人と金額が変わります。売って代金を分ける換価分割、1人が取得して代償を払う代償分割、遺留分の支払、共有の解消、分割のやり直しについて、誰にどんな課税が生じるかを整理します。
この章の結論
- 換価分割では、売った不動産の譲渡所得が相続人それぞれに持分の割合で生じ、各人が確定申告をします。取得費加算や空き家特例も一人ひとり判定します。
- 代償分割で払った代償金は、取得した不動産の取得費になりません。代償として自分の不動産を渡すと、渡した人はその時の時価で売ったものとみなされて譲渡所得がかかり、受けた人はその時価で取得したことになります。
- 遺留分侵害額をお金の代わりに不動産で払うと、渡した人に譲渡所得が生じます。一つの共有地を持分どおりに分けるのは譲渡になりませんが、別々の不動産の持分の入替えや遺産分割のやり直しは、課税されるおそれがあります。
分け方で変わる課税関係
相続した不動産をそのまま受け取るだけなら、限定承認の場合を除き、相続の時点で所得税はかかりません。売ったときに初めて譲渡所得が生じ、取得費と取得時期は亡くなった人のものを引き継ぎます(取得費・取得時期の引継ぎの章)。一方、分け方によっては、分ける段階で譲渡所得が生じたり、受け取った財産の取得費が時価になったりします。
| 分け方 | 譲渡所得が生じる人 | 取得費・取得時期のポイント |
|---|---|---|
| 現物分割(不動産をそのまま相続) | なし(売ったときに課税) | 亡くなった人の取得費・取得時期を引き継ぐ |
| 換価分割(売って代金を分ける) | 相続人それぞれ(持分の割合で) | 売る不動産の取得費・取得時期は亡くなった人のものを引き継ぐ |
| 代償分割(代償金を現金で払う) | なし | 払った代償金は、取得した不動産の取得費にならない |
| 代償分割(自分の不動産を代償として渡す) | 渡した人(渡した時の時価で売ったとみなされる) | 受けた人は時価で取得し、取得日は渡された日 |
| 遺留分侵害額を不動産で払う | 渡した人(消滅した債務の額で売ったとされる) | 受けた人は消滅した債権の額で取得 |
| 一つの共有地を持分どおりに分ける | なし(譲渡はなかったものとされる) | 元の取得費のまま(分割費用は取得費に加える) |
| 別々の不動産の持分を入れ替える | 双方(持分の交換として課税) | 交換の特例の要件を満たせば、譲渡はなかったものとされる |
| 遺産分割のやり直し | 贈与や交換などとして課税されるおそれ | ― |
換価分割:相続人それぞれが申告する
換価分割は、遺産を売り、その代金を分ける遺産分割の方法です。分割の対象は売却代金になり、譲渡所得は売った時点の所有割合に応じて相続人それぞれに生じます。各相続人が、自分の持分について確定申告をします。
申告する割合は、売った時点で取得割合が決まっているかどうかで変わります。
- 売る前に取得割合を決めていた場合:その割合で申告します。特に取り決めがなく法定相続分で取得する場合は、法定相続分で申告します。
- 取得割合が決まらないまま売った場合(代金を後で分割の対象にすると合意した場合や、家庭裁判所の審判による換価分割など):原則として法定相続分で申告します。ただし、所得税の確定申告期限までに代金を分割し、相続人全員がその割合で申告すれば認められます。
確定申告期限までに代金を分けられず、法定相続分で申告した後に分割が決まっても、譲渡所得の申告は変わりません。更正の請求や修正申告で割合を直すことはできないため、売る時期と分割の時期をあわせて考えます。
特例も一人ひとり判定します。取得費加算は、原則として相続税額がある相続人だけが使えます。配偶者の税額軽減で納める相続税がゼロになった配偶者は使えず、贈与税額控除でゼロになった人は控除を足し戻した相続税額で判定します。空き家特例(2027年(令和9年)12月31日までの売却期限あり)は、家と敷地を相続して要件を満たす各相続人が使えます。家と敷地を取得した相続人が3人以上なら、1人2,000万円が上限です。
注意:1人の名義で売って代金を分けるとき
手続を簡単にするため、相続人の1人の名義で相続登記をして売り、代金を分けることがあります。国税庁の質疑応答事例は、調停で換価分割をすることになり、この方法をとった場合を取り上げています。1人の名義での登記が単に換価のための便宜のもので、代金が調停の内容どおりに実際に分配されるなら、贈与税の課税は問題にならないとしています。
協議で分ける場合も、名義が便宜上のものであることと各人が代金を取得する割合が分かるように、遺産分割協議書に書いておきましょう。代金は、その割合どおりに分配します。
代償分割:代償金を払う人と受け取る人
代償分割は、1人の相続人が不動産などを取得し、ほかの相続人に代わりのお金や財産(代償金・代償財産)を渡して分ける方法です。
代償金を払った人は、払った代償金を、相続した不動産の取得費に入れることはできません。後でその不動産を売るときの取得費は、亡くなった人から引き継いだものだけです。代償金を払った分だけ譲渡益が小さくなるわけではない点に注意が必要です。
相続税では、代償金で課税価格を調整します。代償金を払った人は取得した財産の価額から代償金の価額を差し引き、受け取った人は代償金の価額を加えます。代償金の価額は、原則として代償債務の額(相続開始時の金額)です。ただし、代償金の額を代償分割の時の不動産の時価をもとに決めた場合は、次の算式で計算します。
代償財産の価額=代償債務の額×相続開始時の相続税評価額÷代償分割の時の通常の取引価額
たとえば、相続税評価額4,000万円・時価5,000万円の土地を甲が取得し、時価をもとに決めた代償金2,000万円を乙に払うとします。代償財産の価額は2,000万円×4,000万円÷5,000万円=1,600万円です。課税価格は甲が4,000万円−1,600万円=2,400万円、乙が1,600万円になります(国税庁タックスアンサーNo.4173の例)。相続人全員の協議で、これに準じた合理的な方法で計算して申告することも認められています。
代償金を払って取得した不動産を、取得費加算の期限(相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日)までに売って取得費加算を使う場合は、代償金の分を調整した計算が必要です。調整しないと、加算額が自分の相続税額を超えることがあるためです(計算方法は取得費加算の章)。
他の税金との関係
- 分け方ごとの遺産分割協議書の書き方→遺産分割協議書の作り方と税金への影響の章
- 代償金で調整した後の各人の課税価格の計算→課税価格の計算の章
- 土地を売って相続税を払う・兄弟で分けるときの比べ方→土地を売って相続税を払う・分けるケース
- 換価分割で実家を売るときの空き家特例→空き家の3,000万円控除の章
代償として自分の不動産を渡す場合
代償金の代わりに、相続人がもともと持っていた自分の不動産を渡すことがあります。この場合、渡した人は、渡した時の時価でその不動産を売ったものとみなされ、譲渡所得の申告が必要です。現金は入ってこないのに税金がかかるため、納税資金も考えておきます。長期か短期かは、渡した人がその不動産を取得した日から判定します。
代償として不動産を受けた人は、渡された時の時価で取得したことになり、取得日も渡された日です。亡くなった人の取得日は引き継がないため、売った年の1月1日に所有期間が5年を超えていなければ、短期譲渡所得(税率39.63%)になります。
計算例:自宅を相続した長男が、自分の土地と現金を代償として渡す
前提:父の遺産は自宅の土地建物だけで、相続税評価額は6,000万円、分割時の時価は8,000万円です。相続人は長男Aと次男Bの2人です。2026年(令和8年)の遺産分割でAが自宅を取得し、代償の額は時価の2分の1にあたる4,000万円と決めました。
Aは、2010年(平成22年)に2,000万円で買った自分の土地(分割時の時価3,000万円)と、現金1,000万円をBに渡しました。土地を渡す際の費用はなく、小規模宅地等の特例は考えないものとします。
Aの譲渡所得=時価3,000万円−取得費2,000万円=1,000万円(長期)
所得税=1,000万円×15%=150万円
復興特別所得税=150万円×2.1%=3万1,500円
住民税=1,000万円×5%=50万円
Aの譲渡所得の税額=150万円+3万1,500円+50万円=203万1,500円
相続税の課税価格は、時価をもとに代償の額を決めているため、代償財産の価額を4,000万円×6,000万円÷8,000万円=3,000万円とします。Aは6,000万円−3,000万円=3,000万円、Bは3,000万円です。
遺産に係る基礎控除額=3,000万円+600万円×2人=4,200万円
課税遺産総額=6,000万円−4,200万円=1,800万円
法定相続分(各2分の1)に応じた取得金額900万円×10%=90万円
相続税の総額=90万円×2人=180万円→課税価格の割合(各2分の1)でA・B各90万円
答え:Aには、渡した土地について203万1,500円の税金がかかります。Bが受け取った土地の取得費は3,000万円で、取得日は渡された日です。Aが後で自宅を売るときの取得費は父の取得費を引き継ぐだけで、代償の4,000万円は加えられません。相続税はA・Bとも90万円です。
遺留分侵害額を不動産で支払う場合
遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められた最低限の取り分です。2019年(令和元年)7月1日以後に開始した相続では、遺留分を侵害された人は、遺贈や贈与を受けた人に、侵害額に相当するお金の支払を請求できます(遺留分侵害額請求)施行中。それより前に開始した相続は、旧制度の遺留分減殺請求の対象です。
請求を受けた人が、お金を払う代わりに自分の土地などを渡すと、代物弁済(お金の代わりに物で支払うこと)にあたり、渡した人に譲渡所得が生じます。原則として、消滅した債務の額で土地を売ったものとされます。渡した土地が、請求の原因になった遺贈や贈与で取得したものでも同じです。
土地を受け取った人は、原則として消滅した債権の額で取得したことになります。お金で支払う場合は資産を手放さないため、この譲渡所得は生じません。
計算例:遺留分侵害額1,500万円を土地で支払う
前提:長女Cは父の遺言で土地を取得しました。父はこの土地を1990年(平成2年)に300万円で買っています。長男Dから遺留分侵害額1,500万円を請求され、2026年にお金の代わりにこの土地を渡しました。費用はなく、取得費加算などの特例は考えないものとします。
Cの譲渡所得=1,500万円(消滅した債務の額)−300万円(父の取得費を引継ぎ)=1,200万円(長期)
所得税=1,200万円×15%=180万円、復興特別所得税=3万7,800円
住民税=1,200万円×5%=60万円
答え:Cはお金を受け取っていませんが、譲渡所得の税金243万7,800円がかかります。Dが受け取った土地の取得費は1,500万円です。
他の税金との関係
- 遺留分侵害額の支払額が確定したら、支払った人は、確定を知った日の翌日から4か月以内に相続税の更正の請求ができます。→修正申告・更正の請求の章
- 遺留分の支払として宅地を受け取った人は、相続や遺贈で取得したことにならないため、その宅地に小規模宅地等の特例を使えません。もとの取得者の特例は失われません。→小規模宅地等の申告手続の章
- 遺留分の割合や請求できる期間(知った時から1年など)→遺留分の章
共有の解消と、遺産分割のやり直し
共有で相続した不動産を後で分ける場合、課税は分け方で変わります。一つの土地を、共有者の持分に応じて現物で分ける場合は、譲渡はなかったものとされ、所得税はかかりません。分割にかかった費用は、その土地の取得費に加えます(業務用で必要経費にした分を除く)。
分けた後の面積の割合が持分と違っても、分けた後の各土地の価額の割合が持分の割合とおおむね等しければ、持分に応じた分割にあたります。分割前の持分を超えない部分には、不動産取得税もかかりません。
これに対し、別々の不動産の持分を入れ替えて単独所有にする場合は、持分の交換として課税されます。たとえばA不動産を甲・乙が2分の1ずつ、B土地を甲が5分の3・乙が5分の2で共有していて、A不動産を乙の単独所有、B土地を甲の単独所有にするケースです。価値が等しくても課税関係が生じますが、固定資産の交換の特例の要件を満たせば、その特例を使えます(その他の特例の章)。
いったん成立した遺産分割をやり直して財産を分け直す場合も注意が必要です。当初の分割で各相続人のものになった財産を、やり直しで再配分した場合について、相続税の通達に定めがあります。その再配分で取得した財産は、「分割」により取得したものにならないとされています(相続税法基本通達19の2-8)。このため相続による取得とは扱われず、贈与や交換などとして課税される可能性があります。
よくある誤り:共有で相続しておけば、後で自由に分けられる
共有で相続した不動産を後で分けるとき、譲渡にならないのは一つの土地を持分どおりに分ける場合です。複数の不動産の持分を入れ替えると交換として課税され、遺産分割をやり直すと贈与とされるおそれがあります。誰が何を取得するかは、遺産分割協議の段階で決めておくのが基本です。
実家の売却代金を兄弟で分けると、贈与税がかかりますか。
換価分割は遺産分割の方法の一つです。遺産分割で取り決めた割合どおりに代金を分けるなら、遺産分割による取得なので贈与にはあたりません。各相続人は、自分の持分について譲渡所得を申告します。取り決めは遺産分割協議書に書いておきます。
代償金を受け取った人に、譲渡所得はかかりますか。
かかりません。代償金を受け取った人は不動産を手放していないためです。代償金は、受け取った人の相続税の課税価格に加わります。代償として不動産を受け取った場合は、その不動産の取得費が受け取った時の時価になる点に注意します。
遺留分をお金で払うために、相続した土地を売った場合はどうなりますか。
第三者に売った代金で払う場合は、通常の売却として、売った人に譲渡所得が生じます。相続で取得した土地なら、亡くなった人の取得費と取得時期を引き継ぎ、要件を満たせば取得費加算も使えます。
専門家向け:根拠と実務論点
根拠
- 換価分割:所得税法33条・36条、国税通則法23条2項。質疑応答事例「未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告とその後分割が確定したことによる更正の請求、修正申告等」。1人の名義での相続登記と贈与税は、質疑応答事例「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」(関係法令は相続税法1条の4)。
- 代償分割:所得税基本通達33-1の5(代償財産の交付者の譲渡)、38-7(1)(代償債務は取得費に算入しない)・38-7(2)(代償財産の取得者は履行時の時価で取得)、相続税法基本通達11の2-9・11の2-10(代償財産の価額)、タックスアンサーNo.4173。
- 遺留分:民法1046条1項、所基通33-1の6・38-7の2、質疑応答事例「遺留分侵害額の請求に基づく金銭の支払に代えて土地を移転した場合の課税関係」。相続税の更正の請求は相続税法32条1項3号。
- 共有物の分割:所基通33-1の7、質疑応答事例「共有物の分割」、所得税法58条、地方税法73条の7第2号の3。遺産分割のやり直し:相基通19の2-8ただし書。
実務論点
- 換価時に取得割合が未確定の場合、所得税の確定申告期限までに代金が分割され、全員がその割合で申告すれば認められます。期限後の分割確定は譲渡所得に異動を生じさせないため、更正の請求・修正申告の事由になりません。
- 換価の都合で共同相続人の1人の名義で相続登記をしても、それが単に換価のための便宜のもので、代金が分割に関する調停の内容に従って実際に分配されれば、贈与税の課税は問題になりません(質疑応答事例。調停による換価分割の事案で、2025年(令和7年)8月1日現在の法令等による)。
- 代償金を支払って取得した資産の取得費加算(措通39-7)の算式は、確定相続税額×〔A−C×A÷(B+C)〕÷Bです(A=譲渡資産の相続税評価額、B=代償金支払者の課税価格〔債務控除前〕、C=相基通11の2-10による支払代償金の額。通達ではAとBの記号が逆です)。計算例でAが期限内に自宅を売れば、90万円×〔6,000万円−3,000万円×6,000万円÷(3,000万円+3,000万円)〕÷3,000万円=90万円です(譲渡益が限度)。調整しなければ180万円となり、相続税額を超えます。通達のページでは算式が画像のため、同項の最終改正である2015年(平成27年)7月7日付の改正通達の新旧対照表で文字を確認しています(取得費加算の章)。
- 代償財産の受領者は取得日も履行時となり、被相続人の取得時期を引き継ぎません。
- 遺留分侵害額の代物弁済で移転する資産には、請求の基因となった遺贈・贈与で取得した資産も含みます(所基通33-1の6)。事後認知者(民法910条)への遺産の土地の交付も代物弁済に当たります。ただし、最終的な遺産分割協議書等で被認知者が現物分割で取得したと認められる場合は、譲渡所得課税を行わないのが相当とされています(質疑応答事例)。
- 遺留分侵害額請求に対し宅地で代物弁済した場合、受領者は相続・遺贈による取得でないため小規模宅地等の特例の適用はなく、当初の取得者の適用は失われません(質疑応答事例)。
- 共有物の分割は、一つの土地の分割でない場合は等価でも交換となり、所法58条の要件を満たせば同条を適用できます(質疑応答事例)。
- 相基通19の2-8ただし書は「分割により取得したものとはならない」までを定めています。贈与・交換としての具体的な課税関係は個別の判断となり、当初の分割に無効・取消しの原因がある場合は別に検討が必要です。
みなし譲渡:限定承認・法人への贈与・低額譲渡
財産をただで渡したり安く売ったりしても、税法上は「時価で売った」とみなされる場合があります。相続では限定承認、会社がからむ場面では法人への贈与や安値での売却が代表例です。
この章の結論
- 限定承認による相続、法人への贈与・遺贈、法人への時価の2分の1未満での売却は、時価で売ったものとみなされ、渡した側に譲渡所得の税金がかかります(所得税法59条1項)。
- 限定承認では亡くなった人の含み益に課税され、相続人が4か月以内に準確定申告をします。相続人は相続開始時の時価で取得したことになり、所有期間も相続の時から数え直します。
- 個人どうしの安値の売買には、みなし譲渡はありません。ただし買った人には時価との差額に贈与税がかかり、土地建物の時価は相続税評価額ではなく通常の取引価額です。
みなし譲渡とは:対象になる4つの場面
譲渡所得の税金は、持っている間に値上がりした利益(含み益)に、資産が手を離れる機会にまとめて課税するものです。ただで渡すと代金がないため、そのままでは含み益に課税できません。そこで所得税法59条1項は、一定の場面で「その時の時価で売った」とみなして課税します。これをみなし譲渡といいます。
対象は次の表の上の4つです。いずれも、渡した側(亡くなった人を含む)に、時価を収入金額とする譲渡所得が生じます。
| 取引 | みなし譲渡 | 課税される人と申告 |
|---|---|---|
| 限定承認による相続(限定承認に係る包括遺贈を含む) | 対象 | 亡くなった人。相続人が準確定申告 |
| 法人への贈与 | 対象 | 贈与した人。翌年の確定申告 |
| 法人への遺贈 | 対象 | 亡くなった人。相続人が準確定申告 |
| 法人への時価の2分の1未満での売却 | 対象 | 売った人。翌年の確定申告 |
| 個人への贈与、通常の相続、個人への遺贈 | 対象外 | 課税なし。受けた人が取得費と取得時期を引き継ぐ |
| 個人への安値での売却 | 対象外 | 実際の代金で計算(損失は否認される場合あり) |
個人への贈与や限定承認をしない通常の相続では、課税が先送りされます。受けた人が前の持ち主の取得費と取得時期を引き継ぎ、売ったときに課税されます(相続・贈与で取得した資産の取得費と取得時期)。
なお、国や地方公共団体への寄附と、国税庁長官の承認を受けた公益法人等への寄附は、譲渡がなかったものとみなされます(租税特別措置法40条)。
限定承認:亡くなった人の含み益に課税される
限定承認は、相続で得た財産の範囲内でだけ亡くなった人の借金などを支払うことを条件に、相続を受け入れる方法です。相続人全員が共同で、相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します(手続は相続放棄・限定承認)。
限定承認をすると、亡くなった人が相続開始の時の時価で財産を売ったものとみなされます。土地や株式に含み益があれば、亡くなった人の譲渡所得として課税されます。相続人は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に準確定申告をして納めます(準確定申告)。
この所得税は亡くなった人に課される税金なので、相続税の計算では債務控除の対象になります(債務控除と葬式費用)。
相続人の取得費と所有期間
- 相続人は、相続開始時の時価で取得したものとみなされます(所得税法60条4項)。すぐに時価で売れば、譲渡益はほとんど出ません。
- 所有期間は相続の時から数え、亡くなった人の所有期間は引き継ぎません。土地建物は、売った年の1月1日時点で所有期間5年以下なら短期譲渡所得(税率39.63%)です。
- みなし譲渡の対象になった財産は、相続税の取得費加算の特例(取得費加算)の対象から除かれます(租税特別措置法39条7項)。
計算例1:限定承認で土地にみなし譲渡課税がかかる場合
前提:父が2026年(令和8年)に死亡し、子2人が限定承認をしました。父が1975年(昭和50年)に買った土地があり、買った金額は分かりません。相続開始時の時価は5,000万円です。
| 項目 | 金額 | 計算 |
|---|---|---|
| 収入金額 | 5,000万円 | 相続開始時の時価 |
| 取得費 | 250万円 | 概算取得費:5,000万円×5% |
| 課税長期譲渡所得金額 | 4,750万円 | 5,000万円−250万円(1975年取得なので長期) |
| 所得税 | 7,125,000円 | 4,750万円×15% |
| 復興特別所得税 | 149,625円 | 7,125,000円×2.1% |
| 納める税額 | 7,274,600円 | 合計7,274,625円の100円未満切捨て |
答え:相続人は準確定申告で727万4,600円を納め、この額は相続税の債務控除の対象になります。相続人は土地を5,000万円で取得したことになり、取得日は相続開始日です。
住民税は1月1日に住所がある人に課されるため、亡くなった年の所得には翌年度の住民税はかからないとされています(売却の税金シミュレーターと申告の注意)。
法人への贈与・遺贈
個人が自分の会社などの法人に財産を贈与したり、遺言で法人に遺贈したりすると、時価で売ったものとみなされます。遺贈のときは、亡くなった人の譲渡所得として相続人が準確定申告をします。
一般財団法人を設立するための財産の拠出も「贈与」に含まれます(所得税基本通達59-1)。名目が贈与でも、法人に借入金を引き受けてもらうなどの経済的な利益があれば、対価のある譲渡として次の「2分の1」の基準で判定します(同59-2)。
受け取った法人と株主の課税
- 株式会社などの法人:贈与税はかかりません。無償で受け取った資産の時価は、受贈益として法人税の対象になります。
- 同族会社の株主:贈与で会社の株式の価値が上がると、その増加分を、贈与した人から株主が贈与で取得したものとみなされます(相続税法9条、相続税法基本通達9-2)。
- 一般社団法人など持分の定めのない法人:贈与した人の親族などの税負担が不当に減ると認められる場合は、法人を個人とみなして贈与税が課されます。遺贈の場合は相続税です(相続税法66条4項)。
法人側・株主側の扱いは法人と個人の間の贈与で詳しく説明しています。
法人への低額譲渡と「時価の2分の1」
法人に時価の2分の1に満たない金額で売ると、実際の代金ではなく時価で売ったものとみなされます(所得税法59条1項2号、所得税法施行令169条)。社長が自分の会社に土地を安く売る場面で問題になります。
2分の1以上の代金なら、この規定は適用されません。ただし同族会社との取引で、税負担を不当に減らす行為と認められると、時価で計算し直されることがあります(所得税法157条、所得税基本通達59-3)。2分の1以上なら安全、という基準ではありません。安いかどうかは契約ごとに判定し、1つの契約で複数の資産を売ったときは合計額で判定します(同59-4)。
計算例2:時価6,000万円の土地を安く売った場合(売り先による違い)
前提:父が2006年(平成18年)に1,000万円で買った土地(時価6,000万円)を、2026年中に売ります。譲渡費用はないものとします。時価の2分の1は3,000万円です。
| 売り先と代金 | 収入金額 | 譲渡所得 | 父の税額 | 買った側の課税 |
|---|---|---|---|---|
| 父の会社に2,000万円 | 6,000万円 | 5,000万円 | 1,015万7,500円 | 時価との差額が受贈益(法人税) |
| 父の会社に3,000万円 | 3,000万円 | 2,000万円 | 406万3,000円 | 差額が受贈益。行為計算否認の可能性も |
| 子に2,000万円 | 2,000万円 | 1,000万円 | 203万1,500円 | 差額4,000万円に子の贈与税 |
会社に2,000万円:(6,000万円−1,000万円)×20.315%=1,015万7,500円
内訳:所得税750万円+復興特別所得税15万7,500円+住民税250万円
子に2,000万円:(2,000万円−1,000万円)×20.315%=203万1,500円
答え:会社に時価の2分の1未満で売ると、代金は2,000万円でも6,000万円で売った扱いになり、父の税額は子に売る場合の5倍になります。子に売る場合は父の税額が小さい代わりに、子に4,000万円のみなし贈与が生じます。
2027年(令和9年)分以後も合計の税率20.315%は変わりません。内訳が所得税15%、復興特別所得税0.165%、防衛特別所得税0.15%成立・施行待ち、住民税5%になります。
非上場株式を法人に売る場合の時価
自社株などの非上場株式を法人に売るときの時価は、所得税基本通達59-6で求めます。財産評価基本通達の方法をもとに、株主の区分を売る人の売る直前の議決権で判定する、中心的な同族株主なら会社を小会社として扱う、などの修正を加えます。詳しくは所得税・法人税上の時価:所基通59-6と最高裁令和2年判決で説明しています。
個人間の低額譲渡:売った人と買った人の課税
個人どうしの売買には、法人のようなみなし譲渡はありません。売った人は、実際に受け取った代金で譲渡所得を計算します。ただし、次の2点に注意が必要です。
売った人:損失が「なかったもの」とされる場合
個人に時価の2分の1未満で売り、代金が取得費と譲渡費用の合計に満たない(譲渡損失が出る)ときは、その損失はなかったものとみなされます(所得税法59条2項)。この場合、買った人は売った人の取得費と取得時期を引き継ぎます(同法60条1項2号)。2分の1未満でも譲渡益が出る場合や、2分の1以上の代金の場合は通常の売買で、買った人の取得費は実際に払った代金です。
買った人:時価との差額に贈与税
著しく低い価額で買った人は、時価と代金の差額を、売った人から贈与で取得したものとみなされます(相続税法7条)。土地・借地権・家屋などの時価は、相続税評価額ではなく通常の取引価額です。それ以外の財産は相続税評価額が時価になります。
「著しく低い」かどうかは事案ごとに判断され、法人への売却の「2分の1」の基準は使えません。親子間の売買の注意点は親子間の金銭貸借・土地の貸し借り・売買で説明しています。
よくある誤り
- 「親子間なら時価の2分の1以上で売れば贈与税はかからない」は誤りです。2分の1は法人への売却でみなし譲渡になるかの基準で、個人間の贈与税の判定基準ではありません。
- 「路線価(相続税評価額)で親子間の売買をすれば問題ない」とは言えません。土地建物の時価は通常の取引価額で、差額がみなし贈与とされるおそれがあります。
- 「会社に2分の1以上の代金で売れば差額は問題にならない」は誤りです。行為計算否認、法人の受贈益、株主へのみなし贈与を検討する必要があります。
- 「限定承認なら税金の心配はない」は誤りです。含み益のある土地や株式があると、4か月以内の準確定申告で所得税がかかります。
他の税金との関係
- 限定承認の手続と3か月の熟慮期間:相続放棄・限定承認
- 低額譲受けのみなし贈与(相続税法7条):みなし贈与
- 法人の受贈益と株主へのみなし贈与:法人と個人の間の贈与
- 非上場株式の所得税上の時価:所基通59-6と最高裁令和2年判決
- 社長が会社に土地を安く売るケース:法人と個人の取引
- 借金が多い相続で限定承認を検討するケース:特殊なケース
個人に安く売った場合、売った人の税金も時価で計算されますか。
いいえ。個人への売却は、実際に受け取った代金で計算します。ただし時価の2分の1未満で売って譲渡損失が出た場合は、その損失はなかったものとされます。買った人には時価との差額に贈与税がかかります。
限定承認で納めた所得税は、相続税の計算で差し引けますか。
差し引けます。準確定申告で納める所得税は亡くなった人に課される税金として、相続税の債務控除の対象になります。
専門家向け:根拠と実務論点
根拠条文・通達
- 所得税法59条1項1号(法人への贈与・遺贈、限定承認に係る相続・包括遺贈、公益信託の受託者への贈与・遺贈)、2号(法人への著しく低い価額の対価による譲渡。所得税法施行令169条で時価の2分の1に満たない金額)。
- 所得税基本通達59-1(一般財団法人設立のための拠出)、59-2(債務引受け等の経済的利益)、59-3(行為計算否認)、59-4(契約ごとの判定)、59-6(株式の時価)。
- 所得税法60条4項(限定承認等による取得は時価)、60条1項2号(59条2項の場合の引継ぎ)、租税特別措置法39条7項(59条1項の適用資産は取得費加算の対象外)。
- 租税特別措置法40条(国等に対する寄附)。同法40条の3の2:中小企業者の取締役等が債務処理計画に基づき2028年(令和10年)3月31日までに行う事業用資産の法人への贈与は、一定の要件で非課税期限あり(国税庁タックスアンサーNo.3105)。
- 所得税法125条1項(準確定申告)。被相続人に課される所得税は債務控除の対象(国税庁タックスアンサーNo.4126)。
- 相続税法7条、相続税法基本通達7-1・7-2・7-4・7-5、平成元年3月29日付の負担付贈与通達(土地等・家屋等は通常の取引価額)。
- 法人税法22条2項(受贈益)、相続税法9条・相続税法基本通達9-2(4)(株主へのみなし贈与)、相続税法66条4項。
実務上の論点
- 限定承認の検討では、債務の額に加え、含み益のある資産の準確定申告の税額と債務控除の効果を試算に入れます。申告期限は熟慮期間3か月の直後に来ます。
- 法人への売却は2分の1以上でも、行為計算否認・受贈益・株主へのみなし贈与の問題が残ります。時価の根拠資料を残してください。
- 最高裁令和2年3月24日第三小法廷判決は、所得税法59条の時価の判定で、配当還元方式の適用を譲受人の議決権割合で判断した原判決を破棄し差し戻しました。59-6は2020年(令和2年)8月28日付で明確化のため改正されています。
- 個人間では、譲渡損失の否認(時価の2分の1未満という数値基準)と、譲受人のみなし贈与(個別判定)とで基準が異なります。
負担付贈与・離婚の財産分与・配偶者居住権の消滅
ローンの残る不動産の贈与、離婚による財産分与、配偶者居住権を手放す見返りの対価の受取りは、どれも「売った」という意識がないまま譲渡所得の税金が生じる取引です。
この章の結論
- 住宅ローンなどを引き継がせる負担付贈与では、贈与した人に「引き継がせた債務の額」で売った譲渡所得が生じます。受けた人の贈与税は、土地建物の通常の取引価額から債務を引いた額にかかります。
- 離婚の財産分与で不動産を渡すと、渡した人が分与時の時価で売ったものとされます。受けた人には原則として贈与税はかからず、取得費は分与時の時価です。
- 配偶者居住権を合意解除・放棄して対価を受け取ると、配偶者に総合課税の譲渡所得が生じます。対価がなければ建物所有者に贈与税がかかり、配偶者の死亡や期間満了で消えるときは課税されません。
3つの取引の共通点:代金がなくても譲渡所得
譲渡所得は、現金の代金を受け取らなくても生じることがあります。債務を引き継いでもらう負担付贈与、財産分与としての不動産の引渡し、権利を消す見返りの対価の受取りは、いずれも譲渡所得の対象です。
この章の3つの取引では、渡した人の譲渡所得、受けた人の贈与税、受けた人がのちに売るときの取得費を、セットで確認することが大切です。
| 取引 | 譲渡所得 | 贈与税 |
|---|---|---|
| ローン付き不動産の贈与(負担付贈与) | 贈与した人。引き継がせた債務の額が収入金額 | 受けた人。通常の取引価額−債務の額 |
| 離婚の財産分与 | 分与した人。分与時の時価が収入金額 | 原則としてなし(過当な部分などを除く) |
| 配偶者居住権の合意解除・放棄(対価あり) | 配偶者。対価が収入金額(総合課税) | 対価が著しく低くなければなし |
| 配偶者居住権の合意解除・放棄(対価なし) | なし | 建物所有者。居住権の価額相当 |
| 配偶者の死亡・期間満了による消滅 | なし | なし |
負担付贈与:ローン付き不動産の贈与
負担付贈与は、受ける人に一定の債務を負担させることを条件にした贈与です。親が住宅ローンの残る家を子に贈与し、子がローンを引き継ぐ場合が典型です。
贈与した人:負担額で売ったことになる
贈与した人は、引き継がせた債務の額(負担額)で財産を売ったものとされます。負担額が取得費と譲渡費用の合計を上回れば、その差額に譲渡所得の税金がかかります(国税庁タックスアンサーNo.4426)。負担額が時価の2分の1未満で譲渡損失になる場合は、その損失はなかったものとされます(所得税法59条2項。みなし譲渡・低額譲渡)。
受けた人:通常の取引価額から負担額を引いて贈与税
受けた人の贈与税は、土地・借地権・家屋・構築物などについては、贈与時の通常の取引価額から負担額を差し引いた額にかかります(1989年(平成元年)3月29日付の負担付贈与通達)。路線価などの相続税評価額から債務を差し引く計算はできません。それ以外の財産は、相続税評価額から負担額を差し引きます。
受けた人がのちに売るときの取得費
負担額が時価の2分の1未満で、贈与した人の損失が否認された場合は、受けた人が贈与した人の取得費と取得時期を引き継ぎます(所得税法60条1項2号)。それ以外の場合、贈与した人に経済的な利益が生じる負担付贈与は、取得費などを引き継ぐ「贈与」に当たりません(最高裁1988年(昭和63年)7月19日判決)。受けた人は贈与した人の取得費と取得時期を引き継がないため、取得費の具体的な計算方法は、売却の前に税務署や税理士に確認してください。
計算例1:住宅ローン付きの家を子に贈与した場合
前提:2026年(令和8年)中に、母が10年超所有する家(土地・建物)を子に贈与し、子が住宅ローン残高2,600万円を引き継ぎます。家の通常の取引価額は5,000万円、相続税評価額は3,000万円です。母の取得費(建物の減価償却費相当額を差し引いた後)は2,000万円、譲渡費用はないものとします。
| 項目 | 金額 | 計算 |
|---|---|---|
| 母の収入金額 | 2,600万円 | 引き継がせたローンの額(時価の2分の1以上) |
| 母の譲渡所得(長期) | 600万円 | 2,600万円−2,000万円 |
| 母の税額 | 121万8,900円 | 600万円×20.315% |
| 子の贈与税の課税価格 | 2,400万円 | 5,000万円−2,600万円 |
母の税額の内訳:所得税90万円+復興特別所得税1万8,900円+住民税30万円=121万8,900円
答え:母には121万8,900円の譲渡所得の税金がかかります。子の贈与税の課税価格は2,400万円で、相続税評価額で計算した400万円(3,000万円−2,600万円)ではありません。贈与税の計算は暦年課税の計算を参照してください。
2027年(令和9年)分以後も合計の税率20.315%は同じで、内訳に防衛特別所得税成立・施行待ちが加わります。
実務のコツ:賃貸アパートの贈与と敷金
賃貸アパートを贈与すると、入居者に返す敷金の返還債務も移ります。敷金の返還債務だけを引き継がせると負担付贈与になり、建物は通常の取引価額で評価され、贈与した人に譲渡所得が生じることがあります。敷金に相当する現金を同時に贈与すれば、実質的な負担がないため負担付贈与通達は適用されない、とする国税庁の質疑応答事例があります(賃貸アパート・マンションを持っているとき)。
離婚の財産分与
離婚に伴う財産分与で土地や建物を渡すと、渡した人(分与者)は、分与した時の時価で売ったものとされます(所得税基本通達33-1の4)。財産分与は贈与ではないため、みなし譲渡ではなく、通常の取引価額を収入金額として計算します。現金を受け取っていなくても税金がかかる点に注意が必要です。
- 分与で譲渡損失が出た場合は、同じ年のほかの土地建物の譲渡益と通算できます。個人間の低額譲渡のような損失の否認はありません。
- 分与を受けた人の取得費は、分与を受けた時の時価です(所得税基本通達38-6)。取得日も分与の日で、元の配偶者の購入価額や所有期間は引き継ぎません。
- 分与を受けた人には原則として贈与税はかかりません。分与額が過当な部分や、離婚を手段として税を免れようとしたと認められる場合は、贈与税の対象です(相続税法基本通達9-8。贈与税がかからない財産・場合)。
計算例2:離婚に伴い土地を財産分与した場合
前提:2026年中の離婚に伴い、夫が2006年(平成18年)に2,000万円で買った土地(月極駐車場として貸していたもの。分与時の時価4,000万円)を妻に財産分与します。譲渡費用はないものとします。
夫の譲渡所得:4,000万円−2,000万円=2,000万円(長期)
夫の税額:2,000万円×20.315%=406万3,000円
内訳:所得税300万円+復興特別所得税6万3,000円+住民税100万円
答え:夫は代金を受け取っていなくても406万3,000円を納めます。妻には原則として贈与税はかからず、妻の土地の取得費は4,000万円、取得日は分与の日です。妻がこの土地を売ると、売った年の1月1日時点で所有期間5年以下なら短期譲渡所得になります。
自宅を分与する場合の3,000万円控除
居住用財産の3,000万円特別控除は、配偶者への譲渡には使えません(特別の関係がある人への譲渡に当たるため)。配偶者に当たるかどうかは、譲渡(分与)をした時の関係で判定します。そのため、離婚が成立した後の分与は配偶者への譲渡に当たらず、ほかの要件を満たせば3,000万円控除を使えます(要件はマイホームの3,000万円控除)。ただし、離婚後も事実上の夫婦として暮らす元配偶者や、分与した人から受ける金銭などで生計を維持している元配偶者への分与は、引き続き対象外です。
配偶者居住権が消滅したときの課税
配偶者居住権は、亡くなった人の家に住んでいた配偶者が、その家に無償で住み続けられる権利です。2020年(令和2年)4月1日以後に開始した相続で、遺産分割や遺贈により取得できます。存続期間は原則として配偶者の終身で、他人に売ることはできません(民法のルールは配偶者居住権・配偶者短期居住権・特別寄与料、評価は配偶者居住権の評価)。
売れない代わりに、建物の所有者と合意して権利を消滅させたり(合意解除)、配偶者が権利を放棄したりして、見返りに対価を受け取ることがあります。課税は、消滅の理由と対価の有無で次のように分かれます。
| 消滅の理由 | 配偶者 | 建物(敷地)の所有者 |
|---|---|---|
| 合意解除・放棄で対価を受け取る | 対価が譲渡所得の収入金額(総合課税) | 課税なし(対価が著しく低い場合を除く) |
| 合意解除・放棄で対価なし | 課税なし | 消滅直前の配偶者居住権の価額相当に贈与税 |
| 配偶者の死亡・存続期間の満了・建物の全部滅失など | 課税なし | 課税なし |
配偶者が対価を受け取る場合の計算
配偶者居住権(敷地を使う権利を含む)を消滅させる対価は、配偶者の譲渡所得の収入金額です(所得税基本通達33-6の8)。土地建物の分離課税ではなく、年金などほかの所得と合算する総合課税の譲渡所得になります。
- 長期か短期かは、亡くなった人がその建物(敷地)を取得した時から数えて判定し、5年を超えていれば長期です。
- 総合課税の譲渡所得には50万円の特別控除があり、長期の場合は控除後の金額の2分の1が課税の対象になります。
- 取得費は法令の方法で計算しますが、収入金額の5%としてもかまいません(所得税基本通達60-5)。
計算例3:配偶者居住権を合意解除して600万円を受け取った場合
前提:夫が30年前に建てた自宅について、相続で妻が配偶者居住権を、長男が建物と敷地を取得しました。2026年に妻が施設に移るため、長男と合意して居住権を消滅させ、長男から対価600万円を受け取ります。取得費は収入金額の5%を使います。
取得費:600万円×5%=30万円
長期譲渡所得の金額:600万円−30万円−50万円(特別控除)=520万円
総所得金額に算入する額:520万円×2分の1=260万円
答え:妻は260万円を年金などほかの所得と合算して所得税・住民税を計算します。長男には、対価が著しく低くなければ贈与税はかかりません。
配偶者居住権付きの建物を売るときの取得費
配偶者居住権の目的となっている建物と敷地を相続した人(建物所有者)が売るときは、取得費の計算に特別なルールがあります(所得税法60条2項)。
- 居住権が付いた建物を売る場合:居住権がなかったとした場合の建物(敷地)の取得費から、居住権が消滅したとした場合の居住権(敷地利用権)の取得費を差し引いた額が取得費です。
- 配偶者の死亡などで、対価を払わずに居住権が消滅した後に売る場合:居住権の設定がなかったものとして取得費を計算します(所得税基本通達60-8)。
- 建物所有者から贈与や相続で建物を取得した人にも、同じルールが適用されます(同60-3)。
- 相続で建物(敷地)を取得した人が、対価を払って居住権を消滅させた後に売る場合:支払った対価を建物(敷地)の取得費に含めます。一方、消滅した居住権の取得費として所得税法60条3項で計算される額は、建物(敷地)の取得費から差し引きます(所得税法施行令169条の2第5項・6項)。
対価を払って居住権を消滅させるときは、支払った額が分かる契約書などの記録を残しておきましょう。
よくある誤り
- 「ローンごと贈与すれば、相続税評価額からローンを引いた額にしか贈与税はかからない」は誤りです。土地建物は通常の取引価額から負担額を引き、贈与した人にも譲渡所得が生じます。
- 「親の自宅をローンごと子に贈与すれば3,000万円控除が使える」は誤りです。子など直系血族への譲渡は、3,000万円控除の対象外です。
- 「財産分与はお金をもらっていないので税金はかからない」は誤りです。分与した人に時価で譲渡所得が生じます。
- 「財産分与で受け取った土地の取得費は元の配偶者の購入価額」は誤りです。分与時の時価で、取得日も分与の日です。
- 「配偶者居住権の消滅の対価は土地建物の譲渡として20.315%」は誤りです。総合課税の譲渡所得です。対価なしで放棄すると、建物所有者に贈与税がかかります。
他の税金との関係
- 消滅直前の配偶者居住権の価額の計算:配偶者居住権の評価
- 財産分与で贈与税がかからない場合:贈与税がかからない財産・場合
- 負担付贈与通達と低額譲受けのみなし贈与:みなし贈与
- 配偶者居住権を使った遺産分割と二次相続:配偶者の相続と二次相続
- ローン付きアパートを子に贈与するケース:賃貸アパート・マンションを持っているとき
配偶者が亡くなって配偶者居住権が消えたら、子に贈与税はかかりますか。
かかりません。配偶者の死亡による消滅は贈与税の対象外です。配偶者居住権は配偶者の死亡で消滅するため、二次相続で相続される財産にはならないとされています(配偶者の相続と二次相続)。
ローン付きの家を子に贈与すると、親にも税金がかかりますか。
引き継がせたローンの額が親の取得費と譲渡費用の合計を上回れば、親に譲渡所得の税金がかかります。子には、通常の取引価額からローンの額を引いた額に贈与税がかかります。
専門家向け:根拠と実務論点
負担付贈与
- 贈与者は負担額を収入金額とする譲渡所得(国税庁タックスアンサーNo.4426)。負担額が時価の2分の1未満で譲渡損失となる場合は所得税法59条2項で損失なしとされ、受贈者は同法60条1項2号で取得費等を引き継ぎます。
- 受贈者がのちに譲渡する場合:最高裁1988年7月19日第三小法廷判決(集民154号443頁)は、所得税法60条1項1号の「贈与」には贈与者に経済的な利益を生じさせる負担付贈与を含まないとしています(国税庁の税務大学校論叢109号による引用)。東京高裁1985年(昭和60年)12月17日判決も、受贈者が経済的利益を給付することを付款とする負担付贈与は59条1項1号・60条1項1号の贈与に含まれず、受贈者に取得価額の引継ぎによる課税の繰延べを認める余地はないとしています。受贈者の取得費の額(負担額によるかなど)を示した国税庁の資料は確認できていません。
- 受贈者の課税価格は負担がないものとした価額から負担額を控除(相続税法基本通達21の2-4)。土地等・家屋等は平成元年3月29日付直評5・直資2-204により通常の取引価額。贈与者の取得価額が課税時期の通常の取引価額に相当すると認められる場合は、取得価額(家屋等は償却費相当額を控除)によることができます。
- 負担額が第三者の利益になる場合は、その第三者が負担額相当を贈与で取得したものとされます(相続税法基本通達9-11)。
財産分与
- 所得税基本通達33-1の4(分与者は分与時の時価で譲渡)、38-6(取得費は分与時の価額)。贈与ではないので所得税法59条は適用されず、譲渡損失は他の土地建物等の譲渡所得と通算できます(質疑応答事例)。
- 贈与税は相続税法基本通達9-8。3,000万円控除の対象外となる特別の関係がある者は、租税特別措置法施行令23条2項・20条の3第1項各号です(1号は配偶者・直系血族、3号は事実上婚姻関係と同様の事情にある者など、4号は個人から受ける金銭等で生計を維持している者など)。
- 特殊関係者に対する譲渡に当たるかは、譲渡をした時において判定します(措置法通達31の3-20。措置法35条2項の判定は35-6で準用)。離婚成立後の分与は、1号の配偶者に対する譲渡に当たりません。
配偶者居住権
- 消滅の対価は所得税基本通達33-6の8により総合課税の譲渡所得。取得費は所得税法60条3項・所得税法施行令169条の2で計算し、所得税法38条2項は適用しません。所得税基本通達60-4(取得した時は設定の時)、60-5(収入金額の5%も可)。
- 建物(敷地)所有者の取得費は所得税法60条2項。所得税基本通達60-3(その者から贈与・相続で取得した者にも適用)、60-8(対価を支払わずに消滅した後の譲渡)、60-9(購入後に対価を払って消滅させた場合)、60-10(配偶者が建物を贈与・相続で取得して消滅した場合)。
- 相続・遺贈で建物(敷地)を取得した者が、配偶者居住権等の消滅後に譲渡する場合は所得税法施行令169条の2第5項(建物)・6項(敷地)によります。消滅につき法60条3項により取得費とされた金額は取得価額等から控除し(1号。配偶者が60-5の5%や60-6ただし書で計算していても、法60条3項で計算した額による=所基通60-7)、消滅につき支払った対価の額は取得価額等に含めます(2号)。60-9は、その者から建物等を購入した者が対価を支払った場合に同項2号を準用するものです。
- 相続税法基本通達9-13の2:合意解除・放棄(民法1032条4項による消滅を含む)で建物所有者が対価を支払わない(著しく低い)場合は、消滅直前の配偶者居住権(敷地利用権)の価額相当を贈与で取得したものとされます。存続期間の満了、配偶者の死亡、建物の全部滅失等による消滅は対象外。
- 民法1028条〜1036条。配偶者居住権は譲渡できません(民法1032条2項)。
その他の特例:買換え・低未利用土地・収用・交換
マイホームの3,000万円控除や取得費加算のほかにも、売る理由や売り方によって使える譲渡所得の特例があります。期限のある特例が多いため、2026年(令和8年)10月時点の期限とあわせて整理します。
この章の結論
- 特例は「特別控除」「課税の繰延べ」「損失の通算」の3タイプです。繰延べの特例では新しい資産が古い資産の取得費を引き継ぐため、税金がなくなるわけではありません。
- マイホームの買換え・譲渡損失の特例は、2027年(令和9年)12月31日までの譲渡が対象です期限あり。低未利用土地の100万円控除と優良住宅地等の軽減税率は、2028年(令和10年)12月31日までの譲渡が対象です期限あり。2026年10月時点ではいずれも期限内です。
- 特別控除は1年間の合計で5,000万円が上限です。同じ売却に重ねて使えない組合せが多いため、有利な特例を選びます。
特例の全体像と適用期限
譲渡所得の特例は、効果によって3つに分かれます。譲渡益から一定額を差し引く「特別控除」、買い換えたときに課税を先送りする「課税の繰延べ」、譲渡損失をほかの所得と差し引きできる「損益通算・繰越控除」です。
土地建物の譲渡損失は、原則として給与などほかの所得と通算できません(譲渡所得の仕組み)。マイホームの譲渡損失の2つの特例は、その例外です。
| 特例(租税特別措置法) | 効果 | 適用期限 | 状態 |
|---|---|---|---|
| 特定の居住用財産の買換え・交換(36条の2・36条の5) | 課税の繰延べ | 2027年12月31日までの譲渡(令和8年度改正で2年延長) | 期限あり |
| マイホームの買換え等の譲渡損失(41条の5) | 損益通算・3年間の繰越控除 | 2027年12月31日までの譲渡 | 期限あり |
| 住宅ローンが残るマイホームの譲渡損失(41条の5の2) | 損益通算・3年間の繰越控除 | 2027年12月31日までの譲渡 | 期限あり |
| 低未利用土地等の100万円控除(35条の3) | 特別控除 | 2028年12月31日までの譲渡(3年延長) | 期限あり |
| 優良住宅地等のための譲渡の軽減税率(31条の2) | 税率の軽減 | 2028年12月31日までの譲渡(3年延長) | 期限あり |
| 特定の事業用資産の買換え(37条) | 課税の繰延べ | 原則2029年(令和11年)12月31日まで。国内の土地建物等への買換えは2029年3月31日までの譲渡 | 期限あり |
| 2009年(平成21年)・2010年(平成22年)に取得した土地の1,000万円控除(35条の2) | 特別控除 | 期限の定めなし | 施行中 |
マイホームの買換え・交換と譲渡損失の特例
特定の居住用財産の買換え・交換の特例
長く住んだマイホームを売って買い換えるとき、売った代金が買換え資産の購入代金以下なら、売却はなかったものとして課税を繰り延べます。売った代金の方が多いときは、その超える部分だけに課税されます。
- 売る家:譲渡価額1億円以下、売った年の1月1日で所有期間10年超、居住期間10年以上
- 買換え資産:床面積50㎡以上(敷地は500㎡以下)で、売った年の前年から翌年までに取得し、期限までに住むこと。2024年(令和6年)1月1日以後に住む新築住宅は、省エネ基準への適合などが必要
- 2028年1月1日以後に住む新築住宅のうち、災害危険区域等に建てられたものは対象外(2026年1月1日以後の譲渡から。建築確認の時点で敷地の全部が区域外なら対象)
買換え資産は売った家の取得費を引き継ぐため、将来その家を売るときに、繰り延べた分も含めて課税されます。その家を相続した人が売る場合も、取得費はそのまま引き継がれます(取得費と取得時期の引継ぎ)。3,000万円控除や軽減税率とは選択で、併用はできません(マイホームの3,000万円控除と軽減税率)。
マイホームの譲渡損失の損益通算・繰越控除
マイホームを売って損が出たときは、次の2つの特例で、損失を給与所得などと差し引き(損益通算)、引ききれない分を翌年以後3年間繰り越せます。
買い換える場合(41条の5)
- 売った年の1月1日で所有期間5年超の家を、特別の関係がある人以外に売ること
- 前年1月1日から翌年12月31日までに床面積50㎡以上の家を取得し、取得した年の翌年12月31日までに住むこと
- 取得した年の12月31日に、償還期間10年以上の住宅ローンがあること
- 敷地のうち500㎡を超える部分の損失は対象外。住宅ローン控除との併用は可能
住宅ローンが残る場合(41条の5の2)
- 売った年の1月1日で所有期間5年超
- 売買契約日の前日に、償還期間10年以上の住宅ローンの残高があること
- 譲渡価額がローン残高を下回ること
- 通算できる損失は、ローン残高から譲渡価額を引いた額まで。買換えは不要
どちらも、繰越控除は合計所得金額が3,000万円を超える年には使えず、連続して確定申告をする必要があります。前年・前々年に3,000万円控除などを受けている場合も使えません。
低未利用土地等の100万円控除
空き地や空き家の敷地のように使われていない土地(低未利用土地等)を、低い価格で売るときに、長期譲渡所得から100万円を差し引ける特例です。相続した郊外の空き地を売る場面などで役立ちます。主な要件は次のとおりです。
- 都市計画区域内の低未利用土地等で、売った年の1月1日で所有期間5年超
- 譲渡価額(土地と建物の合計)が、市街化区域・用途地域が定められた区域・所有者不明土地対策計画を作成した市町村の区域では800万円以下、それ以外の区域では500万円以下
- 親子・夫婦など特別の関係がある人への譲渡でないこと
- 売った後に土地が利用されることについて、市区町村の確認書を受けること
- 前年・前々年に、同じ一筆から分筆された土地でこの特例を受けていないこと。ほかの譲渡所得の特例を受けていないこと
控除額は100万円(譲渡所得が100万円未満ならその金額)です。令和8年度改正で期限が延長され、価額の要件は変わっていません。
計算例:相続した空き地を500万円で売った場合
前提:2026年中に、相続した市街化区域内の空き地を親族以外に500万円で売り、市の確認書を受けました。亡くなった父が1980年(昭和55年)に買った土地で、取得費は分かりません(所有期間は父の取得日から数えるので長期)。譲渡費用は25万円です。相続税はかからなかったため、取得費加算はありません。
| 項目 | 特例なし | 特例あり |
|---|---|---|
| 譲渡所得(500万円−概算取得費25万円−譲渡費用25万円) | 450万円 | 450万円 |
| 特別控除 | 0円 | 100万円 |
| 課税長期譲渡所得金額 | 450万円 | 350万円 |
| 所得税+復興特別所得税(100円未満切捨て) | 689,100円 | 536,000円 |
| 住民税(5%) | 225,000円 | 175,000円 |
| 合計 | 914,100円 | 711,000円 |
特例あり:所得税350万円×15%=525,000円、復興特別所得税525,000円×2.1%=11,025円
合計536,025円→100円未満切捨てで536,000円。住民税350万円×5%=175,000円
答え:100万円控除を使うと、税額は合計で20万3,100円少なくなります(914,100円−711,000円)。
2027年分以後も合計の税率は同じで、内訳に防衛特別所得税成立・施行待ちが加わります。
収用等の5,000万円控除
道路の拡張など、土地収用法などで収用権が認められた公共事業のために土地建物を売ったときの特例です。5,000万円の特別控除(措法33条の4)か、代替資産を取得した場合の課税の繰延べ(措法33条)のどちらかを選べます(同じ事業で両方は使えません)。5,000万円控除の主な要件は次のとおりです。
- 売った資産が固定資産であること
- 最初に買取りなどの申出があった日から6か月以内に売ること
- 最初に申出を受けた人が売ること。その人から相続・遺贈で取得した人も含みます
- 同じ年に同じ事業で売った資産の全部について、代替資産の特例を受けていないこと
- 同じ事業の売却が2年以上にわたるときは、最初の年の売却だけが対象
確定申告では、事業の施行者から受け取る買取り等の申出証明書、買取り等の証明書、収用等の証明書を添付します。
事業用資産の買換えと固定資産の交換
特定の事業用資産の買換え
事業に使っている土地建物などを売り、売った年の前年から翌年までに特定の資産を取得して、取得から1年以内に事業に使うと、譲渡益の一部の課税を繰り延べられます(措法37条)。原則として譲渡価額の20%を収入金額として計算し(区域や類型により10〜40%)、残りの課税を繰り延べます。
- 代表的な類型:所有期間10年超の国内の土地建物等から、300㎡以上の土地等や特定施設の建物等への買換え
- 買い換える土地は、売った土地の面積の5倍以内
- 買換え資産は、売った資産の取得価額を引き継ぎます
- 期限までに届出書を提出すること
固定資産の交換の特例
土地と土地、建物と建物のように同じ種類の固定資産を交換したときは、次の要件を満たせば譲渡がなかったものとされます(所得税法58条)。
- 交換に出す資産も受ける資産も、1年以上所有していた固定資産であること(相手が交換のために取得したものは不可)
- 受けた資産を、交換前と同じ用途(宅地なら宅地、居住用なら居住用など)に使うこと
- 交換する資産の時価の差額が、高い方の時価の20%以内であること
交換差金として金銭などを受け取った部分には課税されます。受けた資産は、交換に出した資産の取得価額を引き継ぎます。共有している別々の不動産の持分を入れ替えて単独所有にするときも交換として扱われ、要件を満たせばこの特例を使えます(換価分割・代償分割・遺留分の支払と譲渡所得)。
1,000万円控除・優良住宅地等と特別控除の上限
2009年・2010年に取得した土地の1,000万円控除
2009年1月1日から2010年12月31日までに取得した国内の土地等を売ると、譲渡所得から1,000万円を差し引けます(措法35条の2)。2009年取得分は2015年(平成27年)以後、2010年取得分は2016年(平成28年)以後の譲渡が対象で、期限の定めはありません。
ただし、親子・夫婦など特別の関係がある人からの取得や、相続・遺贈・贈与・交換などによる取得は対象外です。親がこの期間に買った土地を相続して売っても、この特例は使えません。
優良住宅地等のための譲渡の軽減税率
優良な住宅地の造成のための譲渡など一定の場合は、長期譲渡所得のうち2,000万円以下の部分の税率が14.21%に下がります(措法31条の2)。内訳は所得税10%・住民税4%と復興特別所得税です。2028年12月31日までの譲渡が対象です。
特別控除の1年間の上限
特別控除は各特例の譲渡益が限度で、1年間の合計で5,000万円が上限です。5,000万円に達するまでは、次の順に差し引きます。
- 収用等(5,000万円)
- 居住用・空き家(3,000万円)
- 特定土地区画整理事業等(2,000万円)
- 特定住宅地造成事業等(1,500万円)
- 2009年・2010年取得の土地(1,000万円)
- 農地保有の合理化等(800万円)
- 低未利用土地(100万円)
よくある誤り
- 「買換え特例を使えば税金はかからない」は誤りです。課税の繰延べで、買換え資産が取得費を引き継ぐため、将来売るときに課税されます。
- 「低未利用土地の100万円控除は500万円以下の売却だけ」は誤りです。市街化区域などは800万円以下が対象です。
- 「親が2009年に買った土地なら、相続して売っても1,000万円控除が使える」は誤りです。相続・遺贈・贈与で取得した土地は対象外です。
- 年末に売るときは、引渡日と契約日のどちらを譲渡の日とするかで、特例の期限や所有期間の判定が変わります(取得費と譲渡費用)。
他の税金との関係
- 相続した土地の取得費加算:交換・買換え・収用等の特例で一部だけ課税される場合も、割合を調整して計算します(措置法通達39-6)。相続税の取得費加算の特例
- マイホームの3,000万円控除・軽減税率との選択:マイホームの3,000万円控除と軽減税率
- 2027年からの貸付用不動産の評価見直し通達案:案では、次の資産を原則として「5年以内の取得」の対象から除きます。収用等の代替資産や一定の事業用資産の買換えで取得した資産(取得価額が譲渡価額の120%以下のもの)と、交換の特例を受けた資産です。貸付用不動産・小口化商品の評価見直し
- 買換え特例の試算:買換え特例の計算ツール
相続した実家(自分は住んでいない)を売って損が出ました。給与と相殺できますか。
できません。マイホームの譲渡損失の特例は、自分が住んでいた家を売った場合の特例です。土地建物の譲渡損失は、同じ年のほかの土地建物の譲渡益とは差し引けますが、給与などほかの所得とは通算できません(譲渡所得の仕組み)。
専門家向け:根拠と実務論点
- 措法36条の2・36条の5(措令24条の2):令和8年度改正で適用期限を2025年(令和7年)12月31日から2027年12月31日に延長。2026年1月1日以後の譲渡から、2028年1月1日以後に居住の用に供する建築後未使用の家屋で災害危険区域等内のものを買換資産から除外(41条の5も同じ)。措法35条1項・31条の3とは選択。
- 措法41条の5・41条の5の2(措令26条の7・26条の7の2):2027年12月31日まで2年延長。
- 措法35条の3(措令23条の3):2028年12月31日まで3年延長、価額要件の変更なし。一団の土地が区域をまたぐ場合は措置法通達35の3-2の2。
- 収用等は措法33条・33条の4、措令22条、措置法通達33の4-6。
- 措法37条・37条の4(措令25条):原則2029年12月31日まで延長(3号は2029年3月31日、船舶は2028年12月31日)。2026年4月1日以後の譲渡から、市街地再開発事業による買換えの繰延割合を一定区域以外で80%から60%へ、3号の建物・構築物を特定施設の用に限定するなどの見直し。土地等の5年超保有要件の停止は2029年3月31日まで。届出書は、同年取得なら三月期間の末日の翌日から2か月以内、先行取得なら取得の翌年3月15日まで。
- 所得税法58条・所得税基本通達58-6。措法35条の2(措令23条の2)は、ほかの譲渡所得の特例と重複して適用できません。
- 措法31条の2:2028年12月31日まで3年延長。2,000万円超の部分の住民税は超過部分の5%+80万円。
- 特別控除の上限と順序は措法36条・措令24条・措置法通達36-1。取得費加算との調整は措置法通達39-6。
- 令和9年度税制改正要望では、特定住宅地造成事業等の1,500万円特別控除(措法34条の2)の延長が要望されています要望段階(2026年12月の大綱で決定予定)。
株式の譲渡と相続した株式
相続や贈与で受け取った株式を売ると、元の持ち主の買値をもとに譲渡益を計算します。上場株式と非上場株式は別々に計算し、互いの損益は差し引けません。
この章の結論
- 株式等の譲渡益は「上場株式等」と「一般株式等(非上場株式など)」に分けて、それぞれ20.315%の申告分離課税です。2つのグループの損益は差し引けず、給与などの所得とも通算できません。
- 相続・贈与で取得した株式の取得費は、被相続人・贈与者の取得費を引き継ぎます(相続税評価額ではありません)。取得費が売った金額の5%未満なら5%を使えます。NISA口座から相続した株式は、相続日の最終価格で取得したものとみなされます。
- 相続した上場株式は特定口座に移せば取得費も引き継がれますが、取得費加算を使うには確定申告が必要です。1億円以上の有価証券などを持つ人から海外に住む相続人などに移ると、国外転出時課税の対象になることがあります。
株式等は2つのグループに分けて課税されます
株式や投資信託を売って得た利益(譲渡所得等)は、給与などと分けて税額を計算する申告分離課税です。2016年(平成28年)1月1日以後の譲渡からは、「上場株式等」と「一般株式等」の2つのグループに分け、別々に計算します。
税率はどちらも20.315%(所得税15%、復興特別所得税、住民税5%)です。土地建物と違い、所有期間による長期・短期の区別はありません。
| 区分 | 主なもの | 税率(合計) |
|---|---|---|
| 上場株式等 | 金融商品取引所に上場している株式(ETF・J-REITを含む)、店頭売買登録銘柄、公募投資信託、特定公社債など | 20.315% |
| 一般株式等 | 上場株式等以外のもの。非上場株式(同族会社の自社株など)、合同会社などの持分、私募公社債など | 20.315% |
譲渡所得等の金額=売った金額−(取得費+委託手数料など)
2027年(令和9年)分以後は内訳が変わり、所得税15%、復興特別所得税0.165%、防衛特別所得税0.15%、住民税5%となります成立・施行待ち。合計の20.315%と、特定口座の源泉徴収の税率(所得税等15.315%、住民税5%)は変わりません。
損益の通算は同じグループの中だけです
株式等の譲渡損失は、給与所得や不動産所得など、ほかの所得と通算できません。ほかの所得の赤字を株式等の利益から差し引くことも、土地建物の譲渡損益と差し引くこともできません。
さらに、上場株式等と一般株式等の間でも損益を差し引けません(エンジェル税制の対象となる特定中小会社の株式の損失には例外があります)。一般株式等の計算で最後に残った損失は、なかったものとみなされ、翌年に繰り越すこともできません。
上場株式等の譲渡損失(証券会社などを通じて売ったもの)は、確定申告をすれば上場株式等の利子・配当と通算できます。配当は申告分離課税を選んだものに限られ、残る損失は翌年以後3年間繰り越せます。
| 損失の種類 | 差し引ける | 差し引けない |
|---|---|---|
| 上場株式等の譲渡損失 | 同じ年の上場株式等の譲渡益・利子・配当(配当は申告分離課税を選んだもの)、翌年以後3年間の上場株式等の譲渡益・配当等 | 一般株式等の譲渡益、給与・不動産所得など、土地建物の譲渡益 |
| 一般株式等の譲渡損失 | 同じ年の一般株式等の譲渡益 | 上場株式等の譲渡益・配当、給与など、土地建物の譲渡益、翌年以後への繰越し |
繰越しには、損失が出た年に付表などを付けて申告し、その後も株式を売らない年を含めて毎年確定申告をします。相対取引やNISA口座内の損失は、配当等との通算や繰越しの対象外です。
相続・贈与で取得した株式の取得費は元の持ち主の買値です
相続・遺贈・贈与で取得した株式は、被相続人や贈与者が買ったときの取得費(取得価額)を引き継ぎます(限定承認による相続などは除きます)。
相続人などが払った名義書換の手数料は、取得費に加えられます。同じ銘柄を何回かに分けて買っていた場合は、総平均法に準ずる方法で1株当たりの取得費を計算します。
例外はNISA口座の株式です。NISA口座から相続などで取得した上場株式等は、原則として相続などの日の最終価格で取得したものとみなされ、被相続人の買値は引き継ぎません。
取得費が売った金額の5%に満たないときは、売った金額の5%を取得費にできます。国税庁の通達は、売った株式の銘柄ごとに、売った金額の5%を取得費として計算することを、特に条件を付けずに認めています。そのため、取得費が分からない場合もこの5%で計算できます(措置法通達37の10・37の11共-13)。
よくある誤り
- 「相続した株式の取得費は相続税評価額」→誤りです。被相続人の取得費を引き継ぎます。値上がりした株式では、譲渡益を大幅に少なく計算してしまいます(下の計算例)。
- 「源泉徴収ありの特定口座で売ったから申告は不要」→取得費加算を使うなら確定申告が必要です。
- 「上場株式の損失を非上場株式の利益と相殺できる」→できません。
相続した上場株式を特定口座に移す(相続口座)
被相続人が証券会社に預けていた上場株式等は、相続人の特定口座に移管して受け入れることができます。移管できるのは、被相続人の特定口座・NISA口座・相続等一般口座などにある株式です。
- 受入れ先の口座を決める相続人名義の特定口座を受入れ先にします。
- 移管依頼書を出す移管元の証券会社に「相続上場株式等移管依頼書」を提出します。
- 同じ銘柄は全部移す相続・遺贈の場合は、同じ銘柄の全部を移管することが要件です。相続等一般口座から移すときは、被相続人の取得日と取得額を証明する書類などを付けます。
- 取得費が引き継がれる移管した株式は、被相続人の取得費をもとにした金額で取得したものとみなされます。
- 売却と確定申告源泉徴収ありの口座なら、売るときに所得税等15.315%と住民税5%が差し引かれます。取得費加算を使うときは確定申告をします。
計算例:相続した上場株式を売る
例:父から相続した上場株式を2026年中に売った場合
- 父は2010年(平成22年)にA社株式10,000株を1株800円(800万円)で買いました。
- 父は2025年(令和7年)6月10日に亡くなり(同日に死亡を知った)、長男が相続して自分の特定口座(源泉徴収あり)に移しました。相続税の申告期限は2026年4月10日です。
- A社株式の相続税評価額は1株1,900円(1,900万円)、長男の課税価格(債務控除前)は1億2,000万円、長男の相続税額は600万円です。
- 長男は2026年9月に全株を1株2,000円(2,000万円)で売りました。委託手数料などは2万円です。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 取得費 | 父の買値を引継ぎ:800円×10,000株 | 800万円 |
| 加算前の譲渡益 | 2,000万円−800万円−2万円 | 1,198万円 |
| 取得費加算額 | 600万円×1,900万円÷1億2,000万円 | 95万円 |
| 譲渡所得等の金額 | 1,198万円−95万円 | 1,103万円 |
| 所得税 | 1,103万円×15% | 165万4,500円 |
| 復興特別所得税 | 165万4,500円×2.1%(1円未満切捨て) | 3万4,744円 |
| 所得税等の合計 | 上の2つの合計の100円未満切捨て | 168万9,200円 |
| 住民税 | 1,103万円×5% | 55万1,500円 |
| 税額の合計 | 168万9,200円+55万1,500円 | 224万700円 |
税額は合計224万700円です。取得費加算を使わない場合(243万3,700円)より19万3,000円少なくなります。
売却は取得費加算の期限(相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日=2029年(令和11年)4月10日)より前なので、加算を使えます。特定口座では加算を考えずに源泉徴収されるため、加算を受けるには確定申告をします。
相続税評価額の1,900万円を取得費にすると税額は19万9,000円となり、正しい税額より204万1,700円も少なくなります。買値が分からず5%(100万円)を使うと加算前の譲渡益は1,898万円に増えるため、購入時の記録を探しておくことが大切です。
国外転出時課税:海外に住む相続人・受贈者に移るとき
多額の株式などを持つ人が海外に移住すると、その時に売ったものとみなして含み益に所得税がかかります。これが国外転出時課税で、2015年(平成27年)7月1日以後の国外転出から適用されています。
対象は、有価証券(株式・投資信託など)や未決済のデリバティブ取引などの価額の合計が1億円以上の人です。さらに、国外転出の日前10年以内に日本に住所・居所があった期間が、合わせて5年を超えることが要件です。同じ仕組みは、贈与や相続で非居住者(海外に住む人など)に株式などが移る場合にもあります。
非居住者に贈与した場合
- 贈与の時に対象資産が1億円以上などの要件を満たす人が対象です。
- 贈与した資産の含み益に、贈与した人の所得税がかかります。
- 贈与した年分の確定申告で申告します。
非居住者が相続した場合
- 相続開始の時に要件を満たす被相続人が対象です。
- 相続開始の時に売ったものとみなし、相続人が被相続人の準確定申告(相続の開始を知った日の翌日から4か月以内)で申告します。
- 遺産分割などで非居住者が取得する分が変わったら、4か月以内に修正申告や更正の請求をします。
どちらも、担保の提供や納税管理人の届出などの手続をすれば5年(延長で最長10年)の納税猶予があり、期間内に帰国した場合などは課税が取り消されます。相続の場合のこの所得税は、相続税の計算で被相続人の債務として差し引けます。一方、この課税を受けた資産は、取得費加算の対象から外れます。
他の税金とのつながり
- 上場株式の相続税評価額(取得費とは別物):預貯金・上場株式・投資信託などの評価
- 相続税額の一部を取得費に加える特例:相続税の取得費加算の特例
- 非上場株式を発行会社に買い取ってもらう場合:金庫株とみなし配当の特例
- 海外に住む相続人がいる場合の相続税の手続:国際相続:海外資産と海外在住の相続人
- 取得費・取得時期の引継ぎの全体像:相続・贈与で取得した資産の取得費と取得時期
専門家向け:根拠と実務論点
区分と税率
- 一般株式等は措法37条の10、上場株式等は措法37条の11で、事業所得・雑所得に当たる株式等の譲渡も含みます。
- 2027年分以後は、基準所得税額に防衛特別所得税1%と復興特別所得税1.1%(2047年(令和29年)分まで)が課され、上乗せの合計2.1%と源泉徴収の合計税率(所得税率の102.1%)は変わりません。
損益通算と繰越控除
- 一般株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上生じた損失は、生じなかったものとみなされます(措法37条の10第1項後段)。
- 上場株式等の譲渡損失の損益通算と繰越控除は措法37条の12の2・措令25条の11の2です。金融商品取引業者等を通じた譲渡等による損失が対象で、国外転出時課税で譲渡とみなされた上場株式等の損失も含みます。
取得費
- 所法60条1項・所令118条(総平均法に準ずる方法)。名義書換手数料とNISAの扱いは国税庁「株式等の譲渡所得等のあらまし」によります。
- 取得費は所法37条1項・38条1項・48条・61条で計算しますが、譲渡した同一銘柄の株式等について収入金額の100分の5相当額を取得価額(譲渡所得では取得費)として計算しているときは認めて差し支えないとされています(措通37の10・37の11共-13)。取得費が不明な場合に限る定めはありません。
- 取得費加算は譲渡所得に限られ、事業所得・雑所得となる株式等の譲渡には適用できません(タックスアンサー3267)。相続分以外にも同一銘柄を持つ場合に、期間内の一部譲渡を相続取得分の譲渡として扱える取扱いもあります(同、措通39-12)。
- 相続取得株式と、贈与で取得して課税価格に算入された株式の両方がある場合は、1株当たりの算入価額が高い方から譲渡したものとして扱えます(質疑応答事例)。
相続口座
- 措令25条の10の2第14項3号・4号が相続等による受入れを定めます。相続・遺贈は同一銘柄の全部の移管が要件で、贈与による一部移管は受入先に同一銘柄がないことが要件です。
- 受け入れた株式は、移管元で計算される取得費等の額で、移管元で先入先出法によった場合の取得日に取得したものとみなされます(同条12項)。源泉徴収されていても、措法39条の適用には確定申告が必要です(同条2項の申告要件)。
国外転出時課税
- 国外転出は所法60条の2、贈与・相続・遺贈による非居住者への移転は所法60条の3です。国外転出の場合の価額は、納税管理人の届出をした場合などは転出の時の価額、それ以外は転出予定日の3か月前の日の価額です。
- 国外転出の納税猶予には担保の提供と、毎年3月15日までの継続適用届出書の提出が必要です。所法60条の3第1項の適用を受けた資産は、措法39条7項により取得費加算の対象から除かれます。
- 令和8年度改正では、株式等の譲渡所得課税の税率・基本構造、国外転出時課税とも改正はありません。
相続した自社株を会社に売る:金庫株とみなし配当の特例
相続した自社株(非上場株式)を発行会社に買い取ってもらう方法は、いわゆる金庫株と呼ばれ、相続税の納税資金づくりにも使われます。原則は一部が配当とみなされて総合課税になりますが、相続税を納める人が期限内に売れば、全額を20.315%の譲渡所得にできる特例があります。
この章の結論
- 非上場株式を発行会社に売ると、原則として、受け取った金額のうち資本金等の額を超える部分が「みなし配当」になります。みなし配当は総合課税で、支払時に20.42%が源泉徴収されます。
- 納付すべき相続税額がある人が、相続税の課税対象になった株式を期限内に発行会社に売れば、全額を譲渡所得(20.315%)にできます(租税特別措置法9条の7)。期限は相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までで、取得費加算とも併用できます。
- 特例を受けるには、売る時までに届出書を発行会社経由で税務署に出します。売る価格は所得税の時価(所得税基本通達59-6)が基準で、時価の2分の1未満なら時価で売ったものとみなされます。
原則:みなし配当と株式の譲渡所得に分かれます
個人が非上場株式を発行会社に売る(会社が自己株式を取得する)と、受け取った金額は2つに分かれます。売った株式に対応する資本金等の額(株主が出資した元手に当たる金額)を超える部分は、配当とみなされます。残りが株式の譲渡収入です。
1株当たりの資本金等の額=資本金等の額÷発行済株式数(自己株式を除く)
みなし配当=受け取った金額−1株当たりの資本金等の額×売った株数
株式の譲渡収入=受け取った金額−みなし配当
種類株式を発行していない会社の場合です。資本金等の額と株式数は取得の直前のものを使い、資本金等の額がゼロ以下ならゼロとします。
みなし配当は配当所得として総合課税になり、ほかの所得と合計して、所得が多いほど税率が上がる累進税率で課税されます。会社は支払うときに20.42%(所得税20%と復興特別所得税。2027年(令和9年)以後も合計の率は同じ)を源泉徴収します。譲渡収入の部分は、一般株式等の譲渡所得として20.315%の分離課税です。
特例:相続人なら全額を譲渡所得にできます
相続で取得した非上場株式を、一定の期間内に発行会社に売った場合は、みなし配当として課税しない特例があります(租税特別措置法9条の7)。受け取った金額の全額が株式の譲渡収入となり、取得費などを差し引いた利益に20.315%がかかります。期限の定めのない恒久的な特例です。
| 項目 | 要件 | 注意する点 |
|---|---|---|
| 売る人 | 相続・遺贈(みなし取得を含む)で財産を取得し、その相続で納付すべき相続税額がある個人 | 基礎控除以下や配偶者の税額軽減で相続税がゼロの人は使えません。暦年課税分・相続時精算課税分の贈与税額控除でゼロになった人は、控除を足し戻した相続税額で判定します |
| 売る株式 | 相続税の課税価格の計算に入った非上場会社の株式 | 店頭売買登録銘柄の会社などの株式は対象外です |
| 売る相手 | その株式の発行会社 | 会社法の手続も必要です(後述) |
| 売る時期 | 相続開始の日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで | 目安は相続開始から3年10か月です。相続税の申告前の売却も対象です |
| 金額 | 受け取った金額が、売った株式に対応する資本金等の額を超えること | 超えなければ、もともとみなし配当は生じません |
| 手続 | 売る時までに届出書を発行会社経由で提出すること | 相続税の申告前なら、相続税額の見積額を書いて出せます |
この特例は、相続税の取得費加算(相続税額のうち売った株式に対応する部分を取得費に加える特例)と併用できます。売却の期限も同じです。
手続:届出書は売る時までに会社経由で
- 届出書を作る「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例に関する届出書」を使います。氏名・住所・個人番号、被相続人の氏名・死亡時の住所・死亡年月日などを書きます。納付すべき相続税額(申告前なら見積額)、課税価格に入った株数と売る予定の株数も書きます。
- 売る時までに会社に出す届出書は発行会社を経由して、会社の本店所在地の税務署長に出します。会社が受け取った時に、税務署長に出したものとみなされます。
- 会社が税務署に提出する会社は、買い取った株数・1株当たりの金額・買い取った日を書いた書類を作り、買い取った年の翌年1月31日までに届出書と一緒に提出します。写しは会社が保存します。
- 売った人が確定申告をする一般株式等の譲渡所得として申告します。取得費加算を使うときは、計算明細書と相続税の申告書の控えを用意します。
特例の対象になる部分はみなし配当ではないため、会社はみなし配当としての源泉徴収をしないことになります(条文の構造からの整理です)。
計算例:特例を使う場合と使わない場合
例:相続した自社株4,000株を発行会社に売った場合
- X社のオーナーである父が2025年(令和7年)8月1日に亡くなり、長男AがX社株式10,000株(相続税評価額は1株15,000円)を相続しました。
- Aの課税価格(債務控除前)は3億円、相続税額は6,000万円です。相続税の申告期限は2026年(令和8年)6月1日で、特例と取得費加算を使える売却の期限は2029年(令和11年)6月1日です。
- 父の取得価額は1株500円です。X社の資本金等の額は5,000万円、発行済株式は50,000株(自己株式なし)で、1株当たりの資本金等の額は1,000円です。
- Aは2026年11月、X社に4,000株を1株20,000円(8,000万円)で売りました。この価額は所得税の時価と同じとし、会社法の手続と届出書の提出は売る前に済ませています。
| 項目 | (a)特例を使わない | (b)特例を使う |
|---|---|---|
| みなし配当 | 8,000万円−1,000円×4,000株=7,600万円 | なし |
| 株式の譲渡収入 | 400万円 | 8,000万円 |
| 取得費 | 500円×4,000株=200万円 | 200万円 |
| 取得費加算 | 計算上は1,200万円ですが、加算前の譲渡益200万円が上限 | 1,200万円 |
| 株式の譲渡所得 | 400万円−200万円−200万円=0円 | 8,000万円−200万円−1,200万円=6,600万円 |
| 税金 | 7,600万円がほかの所得と合わせて総合課税(支払時に1,551万9,200円を源泉徴収) | 所得税990万円、復興特別所得税20万7,900円、住民税330万円 |
取得費加算額は、6,000万円×(15,000円×4,000株=6,000万円)÷3億円=1,200万円です。源泉徴収税額は、7,600万円×20.42%=1,551万9,200円です。
特例を使うと、8,000万円の全額が分離課税の譲渡所得になり、税額は合計1,340万7,900円です。特例を使わないと、7,600万円が累進税率で課税されます(最終的な税額はほかの所得や配当控除などで変わるため、ここでは計算していません)。
2027年分以後に売った場合も、合計は1,340万7,900円で同じです。内訳は、復興特別所得税10万8,900円と防衛特別所得税9万9,000円に変わります成立・施行待ち。
父の取得費200万円は売った金額の5%(400万円)に満たないため、5%を取得費にする方法もあります。その場合の譲渡所得は6,400万円、税額は合計1,300万1,600円です。ただし、5%の取得費と取得費加算を同時に使えると国税庁が明示した資料は見当たらないため、申告前に確認してください。
X社は2027年1月31日までに、届出書と書類を税務署に提出します。この日は日曜日なので、余裕をもって準備します。
売る価格と会社法の手続
個人が法人に、時価の2分の1未満の価額で資産を売ると、時価で売ったものとみなして譲渡所得を計算します(所得税法59条1項2号)。発行会社への売却もこの判定を受けます。2分の1以上でも、同族会社の行為・計算の否認により、時価で計算されることがあります。
非上場株式の時価は、所得税基本通達59-6により、相続税の評価方法(財産評価基本通達)をもとに次の4点を修正して求めます。
- 同族株主に当たるかどうかなどは、売る直前の議決権の数で判定します。
- 売る人が中心的な同族株主なら、会社を常に「小会社」として評価します。
- 会社が持つ土地や上場株式は、売る時の時価で評価します。
- 純資産価額の計算で、評価差額に対する法人税額等相当額を差し引きません。
このため、所得税の時価は相続税評価額より高くなることがあり、「相続税評価額で売れば安全」とは限りません。計算方法は所得税・法人税上の時価で説明しています。
会社法では、自己株式を取得するときに株主に渡す金銭などの帳簿価額の総額は、分配可能額(配当などに回せる額)を超えてはならないという財源規制があります(会社法461条)。特定の株主から買い取るには、株主総会の特別決議も必要です。買取価格と手続は、税理士と司法書士・弁護士などが連携して確認します。
よくある誤り
- 「相続人なら誰でも特例を使える」→納付すべき相続税額がない人(配偶者の税額軽減でゼロになった配偶者など)は使えず、原則どおりみなし配当になります。
- 「期限は相続から3年」→相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです(目安は3年10か月)。
- 「届出書は確定申告のときに出せばよい」→売る時までに、発行会社を経由して出します。
- 「特例で得た譲渡益は、上場株式の損失と相殺できる」→一般株式等の譲渡所得なので、上場株式等の損失とは差し引けません。
相続税の申告前に会社に売っても、特例を使えますか。
使えます。売却できる期間は相続開始の日の翌日から始まり、届出書には納付すべき相続税額の見積額を書いて出せます。
会社が買い取った後、残った株主の株価の評価に影響はありますか。
影響することがあります。会社が持つ自己株式には議決権がないため、残る株主の議決権割合が上がり、評価方式の判定が変わる場合があります。判定の方法は評価方式の判定:株主の区分で確認できます。
他の税金とのつながり
- 買取価格の基準になる所得税の時価と最高裁令和2年判決:所得税・法人税上の時価
- 相続税の納税資金をどう準備するか:納税資金の準備:延納・物納・売却・金庫株
- 自社株を後継者に渡すときの全体像:自社株を後継者に渡すとき
- 取得費加算の要件と計算:相続税の取得費加算の特例
- 一般株式等の損益通算のルール:株式の譲渡と相続した株式
- みなし配当の金額を試算する:みなし配当の計算ツール
専門家向け:根拠と実務論点
原則(みなし配当)
- 自己株式の取得(市場での購入などを除く)による交付金銭等のうち、対応する資本金等の額を超える部分は配当所得とみなされます(所法25条1項5号)。種類株式がない場合の対応額は、取得直前の資本金等の額÷直前の発行済株式等の総数(自己株式を除く)×取得株式数です(所令61条2項6号イ)。
- 譲渡所得等の収入金額は、交付額からみなし配当部分を除いた額です(措法37条の10第3項5号)。みなし配当には所得税20%と復興特別所得税が源泉徴収されます(所法182条2号)。
措法9条の7と届出
- 要件・効果は措法9条の7、手続は措令5条の2です。届出書は譲渡の時までに発行会社を経由して提出し(2項)、発行会社が受理した時に提出されたものとみなされます(5項)。発行会社は翌年1月31日までに書類を提出し(3項)、写しを保存します(4項)。
- 取得費加算(措法39条)との併用は、国税庁タックスアンサー1477が案内しています。受益者等課税信託で、被相続人の死亡で受益者となった相続人が信託終了に伴い非上場株式を取得し発行会社に譲渡した場合も、相法9条の2により遺贈による取得とみなされ、両特例を適用できます(質疑応答事例)。
- 令和9年度税制改正要望で、金融庁が、株式等の「みなし譲渡」(収入金額とみなされる場合)も取得費加算の対象となることの法令上の明確化を求めています要望段階。2026年12月の大綱で扱いが決まる予定です。
時価と株価への影響
- 法人への時価の2分の1未満の譲渡は所法59条1項2号・所令169条です。時価は所基通59-6によります(2020年(令和2年)8月28日改正。最高裁令和2年3月24日判決を受けた明確化で、国税庁は取扱いの変更ではないと説明)。2分の1以上でも所法157条の適用があり得ます(所基通59-3)。
- 自己株式の議決権は0です(評基通188-3)。自己株式の取得によるみなし配当は、類似業種比準方式の1株当たりの配当金額に含めません(質疑応答事例)。
会社法(概要)
- 合意による有償取得は、あらかじめ株主総会の決議で、取得する株式数、交付する金銭等の内容と総額、取得できる期間(1年以内)を定めます(会社法156条1項)。特定の株主から取得する場合はこの決議を特別決議で行い(160条1項、309条2項2号)、他の株主は自己を売主に加えるよう請求できます(160条2項・3項)。特定の株主は、原則としてその総会で議決権を行使できません(160条4項)。
- 株主の相続人等から、相続等で取得した株式を取得する場合は、160条2項・3項(売主追加請求)を適用しません。ただし、公開会社である場合と、相続人等がその株式について株主総会等で議決権を行使した場合を除きます(162条)。
- 定款で、相続等で譲渡制限株式を取得した者に売渡しを請求できる旨を定めることができます(174条)。請求の都度、株主総会の特別決議で株式数と相手を定め(175条1項、309条2項3号。相手は原則として議決権を行使できません=175条2項)、会社が相続等があったことを知った日から1年以内に請求します(176条1項ただし書)。価格は協議で定めるほか、請求の日から20日以内に裁判所へ価格決定を申し立てることができ、期間内に申立ても協議の成立もなければ請求は効力を失います(177条)。
- 財源規制:156条1項の決定に基づく取得(163条・165条1項の場合)、157条1項の決定に基づく取得、176条1項の請求に基づく買取りなどで交付する金銭等の帳簿価額の総額は、効力発生日の分配可能額を超えてはなりません(461条1項2号・3号・5号)。
売却の税金シミュレーターと申告の注意
相続・贈与で取得した土地・建物を売ったときの税額の目安を、シミュレーターで試算できます。あわせて、売買契約の途中で売主が亡くなった場合など、迷いやすい点を整理します。
この章の結論
- シミュレーターは、売った金額・取得費・譲渡費用・所有期間・取得費加算・特例・軽減税率・年分から税額の内訳を表示します。特例の要件は判定しないため、各章で確かめてから選びます。
- 売買契約後・引渡し前に売主が亡くなったら、契約日なら被相続人の準確定申告、引渡日なら相続人の申告です。前者は被相続人の自宅なら居住用の特例、後者は取得費加算を使えます。相続税の対象は土地でなく残代金の請求権です。
- 相続税の申告前に売っても取得費加算は使えます。所得税の申告期限に相続税の申告が間に合わなければ、相続税の申告書を出した日の翌日から2か月以内に更正の請求をします。
シミュレーターの使い方
計算ツールを表示するには JavaScript を有効にしてください。
土地・建物の譲渡所得と税額を試算します。次の項目を入れると、所得税・復興特別所得税・防衛特別所得税・住民税の内訳と合計を表示します。
- 売った金額
- 売買代金に、買主から受け取った固定資産税・都市計画税の精算金を加えた金額です。
- 取得費
- 被相続人・贈与者から引き継いだ購入代金などです(建物は減価償却費相当額を差し引いた後の額)。分からなければ5%を選びます。
- 譲渡費用
- 仲介手数料、売るための測量費や建物の取壊し費用などです。
- 取得費加算額
- 取得費加算の章の計算ツールで求めた金額です。加算前の譲渡益が上限です。
- 所有期間
- 売った年の1月1日に、被相続人などが取得した日から5年を超えていれば長期、5年以下なら短期です。
- 特例
- 居住用財産の3,000万円、空き家の3,000万円(家屋と敷地を相続した人が3人以上なら2,000万円)、低未利用土地の100万円の各控除から選びます。
- 軽減税率
- 居住用財産の3,000万円控除を選び、家屋と敷地の所有期間がともに10年を超える長期の場合に使えます。
- 年分
- 2026年(令和8年)分か、2027年(令和9年)分以後かを選びます。
住民税は長期5%、短期9%、軽減税率の部分4%で計算します。空き家特例を選ぶと、取得費加算は0として計算します(同じ資産で両方は使えないため)。ほかの所得や所得控除、複数の特例の合計上限(5,000万円)は反映しません。株式は株式の譲渡と金庫株の章を見てください。
計算例:取得から5年の境目で税額が変わる
例:父が2021年(令和3年)に買った土地を相続して売る場合
- 父が2021年3月に買った土地(購入代金と仲介手数料などの合計4,000万円)を、2025年(令和7年)に長男が相続しました。
- 売却額は5,000万円、譲渡費用は200万円です。
- 取得費加算額は150万円です(長男の相続税額450万円×土地の課税価格算入額4,000万円÷長男の課税価格(債務控除前)1億2,000万円)。売却は取得費加算の期限内とします。
課税される譲渡所得は、5,000万円−4,000万円−200万円−150万円=650万円です。所有期間は父の取得日から数えます。2026年1月1日ではまだ5年以下なので2026年中の売却は短期、2027年1月1日には5年を超えるので2027年中の売却は長期です。
| 項目 | 2026年中に売る(短期) | 2027年中に売る(長期) |
|---|---|---|
| 所得税(短期30%、長期15%) | 195万円 | 97万5,000円 |
| 復興特別所得税(所得税の2.1%、2027年分以後1.1%) | 4万950円 | 1万725円 |
| 防衛特別所得税(2027年分以後、所得税の1%) | なし | 9,750円 |
| 所得税等の合計(100円未満切捨て) | 199万900円 | 99万5,400円 |
| 住民税(短期9%、長期5%) | 58万5,000円 | 32万5,000円 |
| 合計 | 257万5,900円 | 132万400円 |
2027年1月1日以後に引き渡すと長期になり、税額は125万5,500円少なくなります。
年末に契約して年明けに引き渡すなら、原則の引渡日で申告すれば2027年分(長期)です。長期どうしなら2026年分でも合計は132万400円で、年分による違いはありません。
2026年中の譲渡で使う境目と期限
2026年中に売る場合の主な境目と期限です(2026年10月17日時点)。相続・贈与で取得した資産は、被相続人・贈与者の取得日で判定します。
| 論点 | 2026年中の譲渡での境目・期限 | 状態 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 2020年(令和2年)12月31日以前に取得 | ― |
| 居住用財産の軽減税率 | 家屋・敷地とも2015年(平成27年)12月31日以前に取得 | 恒久措置 |
| 居住用3,000万円控除(住まなくなった後の売却) | 2023年(令和5年)1月2日以後に住まなくなった家屋 | 恒久措置 |
| 空き家の3,000万円控除 | 2023年1月2日以後の相続開始で、2027年12月31日までの譲渡 | 期限あり(期限内) |
| 空き家特例で買主が耐震改修・取壊しをする場合 | 2027年2月15日までに完了 | ― |
| 取得費加算・金庫株の特例 | 相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで | 恒久措置 |
| 居住用財産の買換え・譲渡損失の特例 | 2027年12月31日までの譲渡 | 期限あり(期限内) |
| 低未利用土地の100万円控除 | 2028年(令和10年)12月31日までの譲渡 | 期限あり(期限内) |
| 2026年分の確定申告 | 原則として2027年3月15日(月)まで | ― |
| 税率の内訳 | 2027年分以後は防衛特別所得税1%と復興特別所得税1.1%(合計は不変) | 成立・施行待ち |
空き家特例の延長と拡充は、令和9年度税制改正で要望されている段階です要望段階。2026年12月の大綱で扱いが決まる予定で、2026年10月時点の期限は2027年12月31日です。
売買契約の後、引渡し前に売主が亡くなったら
譲渡の時期は引渡しの日が原則で、契約の効力が生じた日を選ぶこともできます。売主が契約後・引渡し前に亡くなると、この選択で申告する人が変わります。
契約日で申告する
- 被相続人の譲渡所得として、相続人が準確定申告をします(相続の開始を知った日の翌日から4か月以内)。
- 被相続人が住んでいた家なら、被相続人の3,000万円控除と軽減税率を使えます。
- 準確定申告で納める所得税は、相続税の計算で債務として差し引けます。
- 相続人は取得費加算を使えません。翌年度の住民税はかからないと考えられます。
引渡日で申告する
- 相続人が相続した資産を売ったものとして、各相続人が確定申告をします。
- 相続人は取得費加算を使えます。
- 居住用の特例は、相続人自身が所有者として住んでいた場合に限られます。
- 相続人に住民税(長期なら5%)がかかります。
どちらが有利かは、特例・相続税額・住民税を含めて両方を試算して決めます。
相続税の課税財産も変わります。売主の相続では、相続財産は土地ではなく、相続開始の時の残代金の請求権(未収入金)です。買主の相続では、土地の引渡しを求める権利(原則として売買契約の金額で評価)が財産、残代金の支払債務が債務です。買主側は、土地として財産評価基本通達の評価額で申告することも認められています。
相続税の申告前に売った場合のタイムライン
取得費加算は、相続税の申告前に売った場合も使えます。売った年の12月31日にまだ相続税を申告していなければ、相続税の申告書を出した時の相続税額で計算します。注意したいのは、所得税の確定申告に相続税の申告が間に合わない場合です。
- 2025年6月10日父が死亡(同日に知った)。相続税の申告期限は2026年4月10日(金)です。
- 2025年12月長男が相続した土地を売却(引渡し)。2025年分の譲渡です。
- 2026年3月16日(月)2025年分の所得税の確定申告期限(3月15日が日曜日のため)。それまでに相続税を申告していれば、取得費加算を入れて申告できます。
- 2026年3月27日(金)相続税を期限内に申告。所得税は取得費加算なしで申告済みなので、更正の請求をします。
- 2026年5月27日(水)更正の請求の期限(相続税の申告書を出した日の翌日から2か月以内)。
- 2029年(令和11年)4月10日(火)取得費加算を使える売却の期限(相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日)。
この2か月の更正の請求は、所得税の申告期限の翌日から相続税の申告期限までに相続税を期限内申告した人の手続です。後で相続税額が修正申告などで変わったら、変わった後の額で計算し直します。
住民税と準確定申告の注意
住民税は、その年の1月1日に住所がある人に、前年の所得をもとに課税されます。年の途中で亡くなった人は翌年1月1日に住所がありません。そのため、死亡した年の所得(準確定申告の譲渡所得を含む)には、翌年度の住民税はかからないことになります。地方税法の定めからの整理なので、市町村の扱いも確認してください。
一方、亡くなった年度の住民税(前年の所得の分)は、その年の1月1日に住所があれば課税され、相続人が納めます。未納の分は相続税の債務控除の対象です。準確定申告の期限は相続の開始を知った日の翌日から4か月以内で、手続は準確定申告の章で説明しています。
申告前のチェックリスト
- 取得費を被相続人・贈与者の購入時の資料で確認した(分からなければ5%)
- 長期・短期を、被相続人などの取得日と売った年の1月1日で判定した
- 引渡日と契約日のどちらで申告するかを決めた
- 取得費加算の期限内か確認し、相続税の申告書の控えを用意した
- 空き家特例と取得費加算のどちらを使うか、最初の申告で決めた
よくある誤り
- 「売買契約中に売主が亡くなったら、相続税は土地の路線価で申告する」→売主側の相続財産は残代金の請求権です。
- 「2027年から防衛特別所得税で譲渡所得の税率が上がる」→合計の20.315%(長期)・39.63%(短期)・14.21%(軽減税率)は変わりません。
- 「相続税の申告が済むまで取得費加算は使えない」→申告前の売却も対象です(間に合わなければ更正の請求)。
- 「空き家特例を使わずに申告し、後で更正の請求で切り替える」→当初の申告で選ばなかった空き家特例を、後から適用することはできません。
他の税金とのつながり
- 亡くなった人の所得税の申告:準確定申告:亡くなった人の所得税
- 取得費加算の要件と計算ツール:相続税の取得費加算の特例
- 空き家を売るとき:空き家の3,000万円控除
- 自宅を売るとき:マイホームの3,000万円控除と軽減税率
- 相続後の期限の一覧:相続が起きたら:期限カレンダー
- より詳しい計算:土地建物の譲渡所得・税額の計算
専門家向け:根拠と実務論点
収入すべき時期と契約中の相続
- 収入すべき時期は引渡日が原則で、契約の効力発生日も選択できます(所基通36-12)。引渡日は支配の移転の事実で判定し、原則として代金決済日より後にはなりません(同通達注)。
- 質疑応答事例は、売買契約後・決済前に売主が死亡した場合に、被相続人の譲渡として申告すれば居住用の特例を受けられるとしています。引渡日基準で相続人の譲渡とする扱いは、取得費加算に関する質疑応答事例の記載によります。
相続税の課税財産と取得費加算
- 売主の相続では残代金請求権(評基通204で評価)、買主の相続では引渡請求権等(原則として取得価額)と残代金支払債務が対象です(質疑応答事例)。同事例は最高裁昭和61年12月5日判決と最高裁平成2年7月13日判決を関係判例として掲げています。
- 売主の相続人が引渡日基準で取得費加算を受ける場合、計算明細書のA欄は残代金請求権と受領済み手付金相当額の合計とし、前受金債務相当額をC欄(債務控除額)に加算します(質疑応答事例)。
申告前の譲渡と相続税額の変動
- 相続税額は、譲渡年分の所得税の納税義務の成立時、未申告なら申告書の提出時に確定しているものによります(措令25条の16第1項1号、措通39-1・39-2)。2か月の更正の請求は措法39条4項1号です。
- 相続税の修正申告・更正後は修正後の相続税額で計算し(措令25条の16第2項)、相続税の更正の請求で加算額が減る場合は延滞税の計算期間に特例があります(措法39条9項)。空き家特例を後から適用できないのは措通35-18です。
住民税と端数処理
- 住民税の賦課期日と納税義務者は地方税法294条1項・318条です。準確定申告の所得税と死亡年度分の未納の住民税は、相続税の債務控除の対象です(タックスアンサー4126)。
- 課税譲渡所得金額は1,000円未満、申告納税額は100円未満を切り捨てます(国税通則法118条・119条)。2027年分以後の上乗せは防衛特別所得税1%と復興特別所得税1.1%で、合計2.1%は変わりません。
ジェイスタート会計事務所は、公認会計士・税理士の事務所として、生前対策から相続税の申告、不動産の売却、会社・事業の次世代への引き継ぎまでを支援しています。ご相談の内容は守秘義務のもとで取り扱います。
- 相続税・贈与税・譲渡所得税の申告
- 土地の評価(不整形地補正・小規模宅地等の特例)
- 非上場株式の評価・同族会社の自社株集約
- 生前対策・相続時精算課税の活用
- 不動産売却における特別控除の適用
- 事業承継税制のご提案と活用
相続税の申告期限は10か月。特例の適用は期限内申告が前提です。まずは期限とご状況をお知らせください。初回のご相談は無料です。お問い合わせには原則として翌営業日までにお返事します。
このページの出典・参考資料(141件)
- 国税庁 タックスアンサー3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)
- 国税庁 タックスアンサー3208 長期譲渡所得の税額の計算
- 国税庁 タックスアンサー3211 短期譲渡所得の税額の計算
- 国税庁 タックスアンサー3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
- 国税庁 タックスアンサー3223 譲渡所得の特別控除の種類
- 国税庁 質疑応答事例 分離譲渡所得と他の所得との損益通算
- 国税庁 令和7年分 土地や建物の譲渡所得のあらまし
- 国税庁 タックスアンサー1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
- 国税庁 タックスアンサー1465 株式等の譲渡損失の取扱い
- 国税庁 タックスアンサー1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除
- 財務省 令和8年度税制改正の大綱 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置
- 国税庁 防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし
- 国税庁 極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置
- 国税庁 タックスアンサー3255 譲渡費用となるもの
- 国税庁 タックスアンサー3252 取得費となるもの
- 国税庁 タックスアンサー3258 取得費が分からないとき
- 国税庁 タックスアンサー3261 建物の取得費の計算
- 国税庁 タックスアンサー3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期
- 国税庁 質疑応答事例 未経過固定資産税等に相当する額の支払を受けた場合
- 国税庁 質疑応答事例 短期譲渡所得の計算上控除する取得費と概算取得費控除
- 国税庁 質疑応答事例 譲渡代金の取立てに要した弁護士費用等と譲渡費用
- 所得税基本通達 第33条関係
- 所得税基本通達 第36条関係
- 所得税基本通達 第38条関係
- 租税特別措置法通達 31の4-1
- 国税庁 令和7年分 譲渡所得の申告のしかた
- 国税庁 令和7年分 譲渡所得の申告のしかた 参考2(建物の標準的な建築価額表など)
- 国税庁 建物の標準的な建築価額表
- e-Gov 所得税法60条
- e-Gov 所得税法59条
- 所得税基本通達 第60条関係
- e-Gov 地方税法73条の7
- 国税庁 タックスアンサー3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法
- e-Gov 租税特別措置法39条
- 国税庁 令和7年分 株式等の譲渡所得等のあらまし
- e-Gov 租税特別措置法施行令25条の10の2
- 国税庁 質疑応答事例 相続財産の分与により取得した資産の取得費等
- 国税庁 税務大学校論叢109号 所得税法におけるみなし贈与等の取扱いについて
- e-Gov 相続税法4条
- 国税庁 質疑応答事例 信託と措置法9条の7・39条
- 国税庁 タックスアンサー3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
- e-Gov 租税特別措置法施行令25条の16
- 租税特別措置法通達 39-1〜39-5
- 租税特別措置法通達 39-6・39-7
- 租税特別措置法通達 39-8〜39-15
- 国税庁 2015年7月7日付 措置法通達の一部改正(課資3-4ほか)
- 国税庁 同 新旧対照表(山林所得・譲渡所得関係 本文。39-7の算式)
- e-Gov 租税特別措置法31条の4
- 国税庁 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書(令和7年分)
- 国税不服審判所 平成9年1月21日裁決
- 東京国税局 相続財産の取得費加算の特例チェックシート
- 名古屋国税局 取得費加算の特例チェック表
- 国税庁 質疑応答事例 第1次相続の申告期限前に第2次相続が開始した場合の譲渡の期限
- 国税庁 質疑応答事例 相続税の修正申告があった場合における譲渡所得の取得費加算
- 国税庁 質疑応答事例 相続開始時点で売買契約中であった不動産の譲渡と取得費加算
- 国税庁 質疑応答事例 相続により取得した株式と贈与により取得した株式の取得費加算
- 国税庁 質疑応答事例 相続時精算課税の適用を受けた財産が複数ある場合の取得費加算
- 国税庁 タックスアンサー3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 租税特別措置法通達 35条関係
- 国税庁 タックスアンサー1477 相続財産である非上場株式を発行会社に譲渡した場合の特例
- 国税庁 タックスアンサー4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
- 金融庁 令和9年度税制改正要望 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(取得費加算)
- 国税庁 タックスアンサーNo.3302(マイホームを売ったときの3,000万円特別控除)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法35条
- e-Gov法令検索 租税特別措置法施行令20条の3
- 国税庁 質疑応答事例「共有で所有している家屋とその敷地を譲渡した場合」
- 国税庁 質疑応答事例「相続人が譲渡する被相続人の居住用財産」
- 国税庁 質疑応答事例(居住用財産の譲渡契約後、代金決済前に売主が死亡した場合)
- 国税庁 タックスアンサーNo.4423(低額で財産を譲り受けた場合)
- 財務省 令和8年度税制改正の大綱(個人所得課税:住宅ローン控除の延長など)
- 国税庁 タックスアンサーNo.3307(空き家特例:老人ホーム等に入所していた場合)
- 東京国税局 被相続人の居住用財産の特例のチェックシート(令和6年分)
- 国税庁 資産課税課情報第20号(令和5年12月18日)
- 国土交通省 空き家の発生を抑制するための特例措置
- 札幌市 被相続人居住用家屋等確認書の発行について
- 札幌市 必要書類一覧チェックシート(様式1-3)
- 財務省 令和9年度税制改正要望(国土交通省:空き家の発生を抑制するための特例措置)
- 国税庁 質疑応答事例(被相続人と第三者が共有していた家屋の敷地)
- 国税庁 質疑応答事例「家屋と敷地等をそれぞれ別の相続等により取得した場合」
- 国税庁 質疑応答事例(未分割遺産を換価した場合の譲渡所得の申告と、その後の分割確定)
- 国税庁 タックスアンサーNo.4173(代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算)
- 国税庁 質疑応答事例「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」
- 国税庁 質疑応答事例「遺留分侵害額の請求に基づく金銭の支払に代えて土地を移転した場合の課税関係」
- 国税庁 質疑応答事例「遺産分割後に認知を受けた者に遺産の一部を給付した場合」
- 国税庁 質疑応答事例「共有物の分割」
- 国税庁 相続税法基本通達(第19条の2関係)
- 国税庁 タックスアンサーNo.3502(土地建物の交換をしたときの特例)
- 国税庁 質疑応答事例(遺留分侵害額の請求に伴い取得した宅地と小規模宅地等の特例)
- 国税庁 相続税法基本通達(第4章)
- e-Gov法令検索 民法
- e-Gov 所得税法施行令169条
- 国税庁 所得税基本通達 第59条関係
- 国税庁 タックスアンサーNo.4126 相続財産から控除できる債務
- 国税庁 相続税法基本通達 第9条関係
- 裁判所 相続の限定承認の申述
- 国税庁 タックスアンサーNo.4426 負担付贈与
- 国税庁 負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び家屋等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適用について
- 国税庁 質疑応答事例 賃貸アパートの贈与に係る負担付贈与通達の適用関係
- 国税庁 質疑応答事例 財産分与に伴う譲渡損失の他の土地譲渡益との通算
- e-Gov 租税特別措置法施行令23条
- 国税庁 租税特別措置法通達31の3-11〜31の3-20(特殊関係者に対する譲渡の判定時期)
- e-Gov 所得税法施行令169条の2
- 裁判所 東京高裁昭和60年12月17日判決(負担付贈与と所得税法59条・60条)
- 国税庁 税務大学校論叢109号「所得税法におけるみなし贈与等の取扱いについて」
- 法務省 民法(相続法)の改正
- 国税庁 令和8年度 税制改正のあらまし(譲渡所得)
- 国税庁 No.3355 特定のマイホームの買換え
- 国税庁 No.3370 マイホームの買換えと譲渡損失
- 国税庁 No.3390 住宅ローンが残るマイホームの譲渡損失
- 国税庁 No.3226 低未利用土地等の特別控除
- 国税庁 No.3552 収用等の特例
- 国税庁 No.3405 事業用資産の買換え
- 国税庁 No.3225 平成21年・22年取得土地等の特別控除
- 財務省 令和9年度税制改正要望
- e-Gov 貸付用不動産の評価について(案)
- 国税庁 タックスアンサー1476 特定口座の源泉徴収
- 国税庁 措置法通達(株式等に係る譲渡所得等関係)37の10・37の11共通関係
- 国税庁 タックスアンサー1478 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例
- 国税庁 タックスアンサー1467 非居住者への贈与と国外転出時課税
- 国税庁 タックスアンサー1468 非居住者の相続と国外転出時課税
- e-Gov 租税特別措置法37条の10
- e-Gov 租税特別措置法9条の7
- e-Gov 租税特別措置法施行令5条の2
- e-Gov 所得税法25条
- e-Gov 所得税法施行令61条
- e-Gov 所得税法182条
- 国税庁 所得税基本通達59-6 新旧対照表(令和2年改正)
- 国税庁 財産評価基本通達188-3〜188-6
- 国税庁 質疑応答事例 1株当たりの配当金額(自己株式の取得によるみなし配当)
- e-Gov 会社法156条
- e-Gov 会社法160条
- e-Gov 会社法162条
- e-Gov 会社法174条
- e-Gov 会社法175条
- e-Gov 会社法176条
- e-Gov 会社法177条
- e-Gov 会社法309条
- e-Gov 会社法461条
- 国税庁 質疑応答事例 売買契約中の不動産の相続税の課税
- e-Gov 地方税法318条
- 国税庁 タックスアンサー2022 準確定申告
このページは、2026年10月17日時点で確認できた法令・通達・国税庁などの公表資料にもとづく一般的な解説です。税制や運用は改正されることがあり、個別の事情によって取扱いが異なる場合があります。実際の申告・手続の際は、最新の公表資料を確認するか、税理士などの専門家にご相談ください。
計算例・設例の数値は説明のための仮定です。計算ツールの結果は概算で、正確性や個別の結果を保証するものではありません。確定度ラベル(施行中・成立・施行待ち・通達案・検討中・要望段階など)は2026年10月17日時点の状態を示します。
最終確認日:2026年10月17日 作成:ジェイスタート会計事務所(公認会計士・税理士)
